ホームに戻る > スレッド一覧 > 記事閲覧
[69] 背徳のハイドランジア
   
日時: 2013/04/22 17:20
名前: 春姫 ID:y9X4xtEA



 ぼくたちは子供で、ぼくたちは弱かった。
 でもぼくたちは正直で、真剣だった。

 だからどんな結末も受け入れられる。




(短編集)
メンテ

Page: 1 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

Re: 背徳のハイドランジア ( No.1 )
   
日時: 2013/04/29 23:13
名前: 春姫 ID:j6jyU.Lg

 背徳の色




 彼女の剥き出しの足をわたしは誰よりも間近に見ました。蛍光灯の下で白く光る彼女の足を、わたしはある種神聖なもののように見つめました。彼女のスカートがすとん、と、落とされ、清楚な下着とともに現れた二本の足をわたしは美しいと、ただ美しいと思いました。彼女の冷めた瞳がわたしを見ました。その口が音もなく動くのをわたしはただ黙って聞いていました。しばらくの無音の後、彼女はゆったりとした動作でブラウスのボタンをひとつ開けました。ひとつ。またひとつ。眩いほどの白く滑らかな肌と、無駄な脂肪のない細い体はまるで精巧な彫像のようでした。人が生み出した芸術作品。彼女はまさしく人ならざる美しさを包有していたのです。

「カガリ」

 擬音のようなわたしの名前を彼女は呼びました。まるでわたしの肌をなぞるような妖しい色気を含んだ声色でした。今のわたしはまるで犬。いえ、まさしく犬でした。彼女が与える餌をただ待つだけの愚かな犬でした。与えられるものを待つだけの愚図なわたしだけれど、それでも彼女はわたしを愛してくれるのです。愛を与えてくれるのです。わたしは彼女を神のように思う気持ちと同等に、女として欲深く欲していました。そして男のように彼女を犯したいと思っていました。わたしは耐え切れず一歩彼女に近づきました。

「カガリ」

 再度わたしの名前を呼ぶ彼女に、わたしは歓喜の涙を零しました。例え世界が滅びても、きっと彼女だけは必ずそこにあるような、そんな尊さを感じました。彼女は涙を流すわたしの眦に指を這わしました。涙を掬い取るとそのまま唇に運びました。ちゅ、と、軽いリップ音とともに、わたしの涙は彼女の一部になったのでした。その瞬間わたしの体はまさに電流が走ったような衝撃を受け、はしたない快楽を味わいました。

「カガリ、」

 これは背徳です。
 わたしは彼女の白いキャンバスに、浅ましい背徳の色を重ねるのです。それは快感。それは恍惚。それは愛なのです。







 柔らかい人の肌は心地よく。生の足と足を絡め、お互いの肌と肌を味わうのは安寧の証だった。
 いつもあたしは感じる。あたしはカガリを愛してる。あたしはそう何度も確信する。可哀想なカガリはあたしから逃げられない。背徳と知りながら、カガリはこの鳥籠から逃げ出せない。だからあたしがいらない羽を手折ってあげる。心変わりなんて出来ないように、逃げ道を塞いであげる。だからカガリ、――ここにいて。
メンテ

Page: 1 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

題名 スレッドをトップへソート
名前
パスワード (記事メンテ時に使用)
コメント

   クッキー保存