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[40] 【現在開催中】お題制、一時間小説祭り【お題『生』】
   
日時: 2016/08/22 20:32
名前: ポメロ ID:KI0WGvi6

○企画説明
 お題により一時間で小説を書く企画です。
 参加者同士で読みあい、感想の書きあいもします。
 感想だけのご参加も大歓迎です。

○日時
 8月13日(土)の21:00から

○お題
 お題は『生』です。
 「せい」でも「いきる」でも「なま」でも、あるいは生地や生薬や衆生など広く使われる『生』という漢字。
 どう扱うかは自由です。好きに書いちゃってください。

○ほか詳細
・一時間を過ぎても大丈夫
・未完でも大丈夫
・一言感想でも大丈夫(でも一作くらいは感想を書きましょう)
・字数制限なし

 どうぞお気軽にご参加ください。


○作品一覧
 >>1 「持ちつ持たれつ」ポメロ
 >>2 「赤い記憶」伊達サクット様
 >>3 「あたしはまだ生きている」茶野様
 >>4 「月みればかこち顔」飯田様
 >>6 「限界締切領域」如月五十嵐様

○感想一覧
 >>5 茶野様
 >>7 ポメロ
 >>8 伊達サクット様
 >>9 飯田様
メンテ

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Re: 【現在開催中】お題制、一時間小説祭り【お題『生』】 ( No.5 )
   
日時: 2016/08/14 15:33
名前: 茶野 ID:KVywXhAg

開催ありがとうございました! 短いですが感想です。


>>1 「持ちつ持たれつ」ポメロさん
 彼女と彼のやりとりにひきこまれました。雰囲気にのみこまれるようでした。「先生は、冷たいな」のくだりがとても好きでした。はっと目が覚めるような感覚。心にぐっときたところに、「冷血動物だからね」「じゃあ俺もそうなんだな」」素敵な文章だなあと思いました。なぜだか自分でもよくわからないのですが、この雰囲気がたまらなく好ましかったです。
 人物の呼吸を感じられるような作品でした。この人たちは「生きている」と私は感じました。静かに物語は進んでいましたが、彼女たちの生はけして安らかなものではなく、生きづらさのようなものがうごめいていて少し苦しかったです。すごいなあ、と思いました。

>>2 「赤い記憶」伊達サクットさん
 流行ネタをうまく小説に取り入れていてすごいなあと思いました。赤をやりこんだ世代ではないので、細かいネタは共感できない部分もあったのですが、ニヤニヤしながら読み進めました。
 二十年前に大事に隠しもっていた幻のポケモンは、今の新しい世界ではもう存在できない、という発想がとにかくうまいです。「傷を負うこと」と「無傷のミュウ」の対比がよかったです。 

>>3 「あたしはまだ生きている」茶野
 世界を滅ぼす力を持つ主人公と、なんの力も持たない双子の姉が、南北に分かれて対立する世界を生き抜いていく……という長編の設定を練って遊んでいたところ、イベントの開催を知り、ためしに書いてみたかんじのものです。
 収拾がつかなくなったのでオチや細かい設定は違っているのですが、いつかどこかで形にできたらよろしくお願いします(宣伝)

>>4 「月みればかこち顔」飯田さん
 「彼女は眠りたいだけさ」が好きです。作品全体にただようねっとりとしたまとわりつくような空気感が素敵でした。においさえも感じてしまったと錯覚するような作品。
 これまた人物が生きづらそうだなあと思いました。人物たちにはっきりとした自覚はないかもしれませんが……。僕も彼女も似ているんじゃないかなと思いました。見えないなにかが似ているから、かかわりあってしまうんじゃないかなあ、と。「死」を語るふたりの関係の終わりが見えないところが「生」だなあと思いました。
 
  
メンテ
Re: 【現在開催中】お題制、一時間小説祭り【お題『生』】 ( No.6 )
   
日時: 2016/08/15 00:18
名前: 如月五十嵐 ID:QrznCWmY

「限界締切領域」


「生がテーマだからといって、生きるとか死ぬとかを題材にしたくはないんだ。安直な発想は作家として失格だよ」
 揺られる列車に乗りながら、先生は私の前でペンを回してカッコを付ける。私は先生の向かいに座って外の風景を眺めなながら言う。
「モノが間に合わないからって編集さんからの逃走を図って、締め切りを大幅に過ぎてからこんな所でようやく仕事をする先生も随分と作家として失格だと思います」
「時間がなかったんだ。これは避けられない選択だった」
「逃げずに素直に謝ればいいのに」
 列車は一直線に進み続ける。先生が切符を買ってそのまま乗り込んだので、実は私はこの列車の行き先を知らない。
「ところで先生は、どこまで逃げるつもりなんですか? どこまで行っても、編集さんに捕まると思うんです。この前なんて何か凄く名前の長い街まで逃げたのに、三日も保たなかったじゃないですか」
「スリジャヤワルダナプラコッテだね。まさかあんなに早々に見つかるとは正直私も思っていなかった。国外に飛べば大丈夫というのはそれこそ安直な発想だったらしい。で、今回の行き先だけど、前回よりも確実に彼女は私を追うのを苦労するだろう。私たちは今『最果』に向かっている。つまりそこから先はない。極限まで遠い場所だね」
「そこ、列車で行けるんですか」
「列車だから行けるとも言うね。目的地までの線路が敷かれている限り、列車はどこへでも行ける。見知らぬ風景が外を流れていき我々を未知の場所へと連れて行ってくれる。いいものだろ? 列車の旅は」
「確かにそれだけ聞くと幻想的ではありますね。銀河鉄道の夜みたいで」
「ああ、直接を題名を言ってしまうのか。そのものズバリだからせっかく遠回しに言ったのに。しかしまあ、そういう認識で間違いない。おっと、一つだけ先に言っておくが、私達は死へ向かっている訳じゃないぞ。これはしっかり保証しておく。生と死がテーマで死に向かって列車に向かうなんて、あんまりにもあんまりな展開だ。そういう事はあらかじめ無いと言っておこう」
「それは安心しました」
 この列車には、私達以外にも幾人かの客が乗っている。静かに眠る老夫婦、人生に疲れた風なサラリーマン、ぬいぐるみを胸に抱えた孤独な少女、ジョバンニとカンパネルラのコスプレをした二人の少年。私は見回した後、少し考えて小声で先生に囁く。
「……ここに乗っている人、如何にも最果でポックリ安らかに逝きたそうな人たちばかりですけど、本当に大丈夫ですか?」
「見た目で人を判断するのは、私の弟子として識が足りないな。安心しなさい。そういうファンタジーな展開にはならない」
「既に状況が結構なファンタジーなのにですか?」
「ファンタジーというのは、気づいて窓の外を見たら、宇宙だったり想像もつかないような異世界だったりするような突拍子もない時の事を言うんだ」
 先生と私は窓を見る。想像もつかないほどに美しい、宇宙の風景だった。先生と私は真顔でお互いの顔を見る。
「どうにも、ファンタジーな展開になってきたね」
「ダメじゃないですか。というより、目的地が最果な時点でこの状況想像出来たでしょう」
「何かの比喩か洒落だと思って……」
「そう解釈する気持ちは分かりますが、どうするんですか。途中下車して引き返すとか」
「これは直行便だ。途中で止まると編集さんに捕まる可能性が高いからね」
「どうするんですか。このままじゃ私達。最果っていう字面にトキメイて、ウッカリ死の直行便に乗ったバカ二人ですよ」
「落ち着き給え。ここまでおかしな状況なんだ。逆に言えば、常道でない手段での解決も可能なはずさ」
「例えば?」
「実は夢でした」
「夢オチなんて最低ですよ」
 だがこの状況は、確かに実は夢でしたというのが納得のいく展開であるのは確かだ。ならば果たしてそれは私の夢か、先生の夢か。
「夢オチは最後の手段だ。それこそ、最後三行で夢オチに出来る。その前にまず、生のテーマを消化すべきだね。テーマを消化できないまま、オチはつけれない」
「今まさに刻一刻と私達に死が近づいてるのは?」
「死は生と近いが遠い存在だ。死に近づいてるのは生から遠ざかっていると言えるが、それはテーマ消化としてどうかと思うね」
「消化の目処は?」
「たってないね。今から生物とかナマモノの話にでも変えようか」
「路線変更は難しいでしょうね」
 どうやってこの最果へと向かうエセ銀河鉄道でそういう話に持っていけるか難しい所だ。
「なら新キャラだね」
「新キャラ?」
「新しくこの会話劇に登場する者が出てきて、話が進み、テーマを消化される」
「なるほど。しかしここにいる人たちはもう、話を進める力を失った人たちばかりですよ」
「大丈夫さ。然るべき時、話を進める新キャラはいっそ唐突に現れる。新キャラはカンフル剤だからね」
 その時、車両の扉が威勢よく開いてスーツ姿の女が私と先生を指差す新キャラ……否、担当さんだ! 
「先生! いくら現実逃避とはいえ、こんな列車に乗るなんて! ですが、締め切りの概念そのものである私から逃れる事はままなりませんよ!」
「カンフル剤としての新キャラとはいったが、まさか君が来るとはね。うん、予想外だが、話は進むか。逃げるよ」
「あ、逃げるんですね」
 先生に手を引かれて、私達は編集さんに挨拶も無しに走りだす。
「まさか既に乗ってきているとは予想外だった。編集恐るべし」
「どうします先生。編集さんは強敵です。私達では絶対に勝てません」
「大丈夫だ。制限時間がある」
「制限時間?」
「そうだ。実は今回の私の仕事にはテーマとしての『生』ともう一つあった。制限時間だ。これは1時間以内にやらなくてはならない。逆に言えば一時間は我々の時間なのだ」
「とっくに締め切り過ぎてるじゃないですか」
「こういうものは、私が筆を動かしてからカウントすべきなのさ」
 先生がニッコリ笑って腕時計を私に見せる。
「で、後何分あるんですか? その制限時間だ」
「十分くらい前にもう一時間経っちゃったよ」
「締め切りオーバーしているじゃないですか!」
 突っ込む私の後ろで、編集さんの怒号が聞こえる。
「先生! 締め切りを守れない者に、物書きを名乗る資格は無いのですよ! それは最果であっても同じ事です!」
「ふむ、事ここまで来ては手段を選べないな」
「先生? どうなさるつもりです」
「何、生を実感するのに最も簡単なことは、それが何であれ闘争さ」
 先生は私を握っていた手を離し、振り返る。
「君もいずれ、編集に追われる者になるならば、見ておくといい。締め切りを過ぎ、制限時間を過ぎた時、物書きが行う究極の戦闘方法。先延ばしの交渉をね」
「先生! そんな碌なものじゃない方法を若者に教えるべきじゃありません!」
 編集さんが姿を表わす。先生は構えた。私が見守る中、限界締切領域での戦いが始まろうとしていた。

 次回十月号に続く。


 私は出来上がった原稿を見て、先生を見る。
「次回に続くって、夢オチと同等に酷いオチですよ。それで、生のテーマは?」
「次回で全てが明らかになるんだ」
「いや、それダメでしょ」
「もちろん冗談だ。そして生のテーマは消化されているのさ。このオチによってね」
 先生は私に笑いかけて、次の高飛びの算段を立てるのだった。
 
メンテ
Re: 【現在開催中】お題制、一時間小説祭り【お題『生』】 ( No.7 )
   
日時: 2016/08/15 23:12
名前: ポメロ ID:6dAVqp2I

>>1 「持ちつ持たれつ」自作
 PTSD軍人とPTSD女医のカップリング超最高っていう話(クソ不謹慎)


>>2 「赤い記憶」伊達サクット様
 現在進行形の風刺になっていてやはり基礎がしっかりしている人は書くものに現れるのだなあと思いました。これを一時間半で書けるというのがすごい。
 私はスマホユーザーではないためPokemon GOはプレイしておらずよく知りもしませんが、伊達さんも未プレイ勢でありながらきちんと調べている辺り、本当にそのコンテンツが好きであることを窺わせて、真摯な姿勢に他人事ながら嬉しくなりました。また初代のナンバリングの豆知識など、はじめて知ったこともあり、あらためて伊達さんの知識の深さに脱帽する次第です。
 さて『生』の扱い方ではありますが、デジタルデータのような半永久的に劣化しないはずのものでも時代の流れによって(存在しているにも関わらず)疑似的に殺されていく、というのは古いゲームに限らず、むしろ昨今のスマホゲーなどの制作側からして一過性の消費物扱いで売り出しているものにこそ当てはまるものだろうと思います。デジタルもそんな扱いなら、受け取り手の人たる脳は言わずもがな。情報の賞味期限が加速度的に短くなっているにも関わらず人間はいまだ肉体的に未成熟で、最早弔うことなく次なるオモチャに飛びついては集団でもてあそんで捨てる毎日。そこに嫌味な上司のような、流行に流されない俺KAKKEEEEEEする結局は世評に流されてるだけの天邪鬼が加わればケイオスの態はさらに収集つかぬ現代のオルギアとなり。SNSのなかでもツイッターは特にその最たるものでたまにその狂乱ぶりに引くこともありますが、一旦騒ぐ側に転じれば楽しいことは確かであり所詮人界なんてえのは自然以上に非情なる諸行無常なのだろうと思ってもみたり。
 「年月を重ねるとは豊かになることと同時に傷を負うこと」首がもげるほど同意です。だんだん慣れて傷を負うことにも麻痺していく。不感症にならないと生きてけませんからね。


>>3 「あたしはまだ生きている」茶野様
 普通に読み進めていたところ「魔術」の単語がでてきて少々驚くと同時になるほどこういう世界観かとすぐに納得して再び物語に入っていけました。この「魔術」という想定内の平手にも関わらず、しかし何でもない当然のことのように提起することで、すぐに読者に受け入れさせる手腕はいつもながら見事です。またその後の展開により、「魔術」という一見現実離れしたものでも万能ではないと理解することで、「魔術」がその世界に根差した、荒唐無稽な神の法ではない技術のひとつであるのだと読み取ることもでき、この自然さは本当に読んでいて気持ち良いですね。無駄なきことは美しい。
 個人的な感想ではありますが自分も劣った人間なため、できが悪い妹の描写にはグサリとくることが多かったです。リボンが燃えてしまったくだりとか似たような経験があり……。なので単に「できが悪い」と記すのでなく書き連ねることでまさしく手のつけようがないできの悪さが表現されていますね。その要領の悪さが人並み以上に才を受け継いだ結果だった、と判明する点も、それまでの丁寧な積み重ねによりしっかり生きてきています。
 できが悪い、と言い捨てていることから姉は妹の世話を焼きつつやや見下していたのでしょうが、自分がほしくてたまらない才能を妹が独占していると判明したとき、妹を攻撃するのではなくやさしく騙すという方向にシフトしたのが、たぶん書き手の人柄の違いなのだろうなあと痛感しました。自分はたぶんここで姉妹骨肉相食む血みどろの争いさせてしまうことでしょう。でもそれは非常に安直かつ悪趣味な手法であり、普通マトモに生きてきた人間は憎悪や殺意を抱えていようがすぐ行動に移せるわけではなく(それだとただのサイコパスでしかない)。
 応援しているずっとそばにいると言って慰めつつ、妹からも必要とされることで自己肯定を得ながら、「この先ずっと、なりたくもなかった魔術師として、周囲を警戒したまま、友達も仲間もできないで生きていくのだろう」という頭の良さ。いやーヒヤリとしました……おねいちゃんこあい。でも理解できます。着地の仕方も冒頭の技巧に違わず美しかったです。ありがとうございました。


>>4 「月みればかこち顔」飯田様
 タイトルからして好きだし最初の一文からして好きです。あまりに心に響くものだと好きです以外の何も言えなくなりますね。それだと何の役にも立たないので、稚拙ではありますがなんとか文章に書き起こしてみたいと思います。
 相変わらずこういう人いるいる、こういう会話あるある、という生活の一場面を鋭利に抉り取る怪腕が凄まじいです。加えて今回は百人一首という日本古来の美を張り巡らせることで、うまく卑俗さの対比となって作品全体の空気を幻想的に昇華させている。でありながらあくまで現代小説として読み心地が良い意味で軽やかなのが見事です。まったく衒学になっていない。下手をすればただただ読みにくいだけの鼻持ちならない文章になりかねないところを、知識とセンスと気遣いのバランスでスマートに読者をリードしていますね。しかもそのことも、読者に意識させないというスマートさ。鮮やかです。
 死にたいと周りに口に出す輩は嫌いですが、そうさせる心理はわからなくもないのがまた嫌悪感を煽ります。「僕」はやさしいので適当にあしらってはいますが、彼女の望みに向きあってやるような義理もなければ突き放した対応を取ることもなく、この有様は不毛ながらもでも現実的に考えて他にどーすりゃいいんだよという場面でもあり。死にたいなら死ね、と言えるなら人間関係に悩むものか。まだ「彼」の方が「彼女」に理解があれども「彼」は「僕」以上に「彼女」に親切を焼く義理はない。「彼」は非常にシンプルな人間なのだろうと思います。切り捨てるべきものと手元に置いておくものとの区別が判然としていて、「僕」のようになあなあ周囲に同調する性質ではない。無論どちらが良いだとか正しいだとかの話でなく、生き方の違いですね。ゆえにこその「彼の生を、僕はすする」なのだろうかと思ったり。
 煙草の味を希望の味(「HOPEだから?」のやり取りめっちゃ好きです)と表現する様が超オシャレです。たぶんこれ下手すると私が大嫌いな村上春樹的なポエミィになるんでしょうけど、それまでの生死の対比の記述により唐突なオシャンティーアンブッシュではなく明確に意味のある描写となっていますから、すっと受け入れられました。
 死にたいとあんまし同情向けてこない相手に対しても何度も繰り返したり、完全自殺マニュアル愛読書でしょみたく自殺方法にやたらに詳しかったり、死を語るとイキイキする様子や殺されそうになって泣くとことか、終始彼女がメンヘラクソ女なのがかえって好感持てました。


>>6 「限界締切領域」如月五十嵐様
 最初の台詞からしてエンジン全開ですね。あいすみません、と頭を下げつつ奇をてらうばかりが能でもなかろうと言い訳じみた反発心も覚えたり。しかしその反発も想定内に織り込む話作り、大いに笑わせていただきました。メタフィクショナルは簡単なように見えて取り扱いが難しい代物ですから、ここまでメタにメタを重ねてメタでコーティングしたメタ作品はやはりセンスがものを言いますねー。極力地の文を排した台詞だけで展開されていく手法も、やはり簡単そうでかなりレベルが高いものですからそれを子気味良く書ききってみせたのには拍手を送りたくなります。もったいぶった先生と冷静な書生の漫才大変面白かったです。
 ところで列車というせまいなか、しかも席に座ったままですから場が動かず展開させにくいと思ったのですが、よくよく考えれば車窓という絶えず変化する便利なアイテムがありましたね。列車を舞台に選んだことがないためいまさら気づいた点です。話を戻します。
 安直を嫌う先生の言葉ぶりに反して書生の危惧通りに話が転がり落ちていくのには皮肉を感じつつ、まったくめげない先生のメンタル強さにさすが締切破りの常習犯だけあるなと思わされました。破られる方がたまったもんじゃないだろうと読んでいたら編集の登場にまた笑い。「締め切りを守れない者に、物書きを名乗る資格は無いのですよ!」真理だと思います。プロでもアマでもきちんと期間を設けたならその範囲内で完成させるべきですよね。明確な期間があるからこそ意地でも完成させられるというのもありますからねえ。趣味で書いているものとかいつか投稿しようとあたためていても期間が定められていないから、結局日の目を見ないままフォルダの肥やしになっているパターン、誰でもあるのではないでしょうか。この編集さんも、着地どころがわからずああだこうだと論争するのに決着をつけに現れたわけですから、物語的にも作者側にとってもありがたい存在ですよね。しかし先生は書き上げておいてなお高跳び前提に執筆するおつもりのようで……先生締切守れ。
 少々文句を言わせてもらうと、「ジョバンニとカンパネルラのコスプレ」に!?となりました。原作に挿絵なんてありましたっけね…? それとも有名になりすぎたますむらひろし版銀河鉄道の夜ですか? ちょっとここあまりにも意味不明すぎてしばらく引きずってしまいせっかく固めてきた物語の空気が霧散して非常に邪魔だったので、「そのものズバリ」にタイトル出したならもうそこで打ち切っておくべきだと思います。一度出してぶっ殺したのにまた再登場させるのはちょっと、生死をテーマにした割には安直にしておきたくないと嘯く割には「あんまりにもあんまりな展開」ではないでしょうか。
メンテ
Re: 【現在開催中】お題制、一時間小説祭り【お題『生』】 ( No.8 )
   
日時: 2016/08/18 11:51
名前: 伊達サクット ID:Nj0HJHQ.

>>1 「持ちつ持たれつ」 ポメロ様

 戦争に参加したことで、肉体的にも精神的にも傷を負った男と女がこれからどう生きていくのか、という話だと感じました。
 戦争が終わっても、いや、まだ彼らが戦場から離れただけで、まだ地元では続いているのかもしれませんね。
 戦地での体験が後を引きずり、その後の人生まで引きずってしまう。肉体の傷に関しては、「彼」と先生が傷を舐め合う場所に事欠かないくらいに爪跡を刻んでいて、「彼」は飛行機の音に怯え夜は銃の安全装置を外しっ放しの状態。
 先生も、「豊かな情緒と細かな気遣いを持つヘテロの男性は、滅多にいるものではない。まして彼は軍隊の出である」という彼女の価値観を現した地の文、「彼」同性愛を疑われる点、「男たちの下卑た欲望を受けていないとき」という記憶から、戦場で男の兵士達にどんな目に遭わされていたかは想像できる。
 特に、自分の勝手な推測ですが「男たちの下卑た欲望を受けていないとき」という表現は、つまりは受けているときと受けていないときがスイッチのように戦地の日常で切り替わっているわけであり、例えば「敵に捕まって捕虜になったときやられた」とか「敵の敗残兵に出くわし道端でやられた」とかの、一過性の暴行事件の性質ではなかったのではないか。
 もしかしたら、戦地の生活において下卑た欲望を受けていないときと受けているときが断続的に切り替わっている。つまりは、先生は味方の陣営の中にあって、女医とは別の役割を日常的に、なし崩し的に求められていたのでは? 
 前述した戦場でのアクシデントをきっかけとした事件性を帯びるものなら、あるいは敵として憎めばそれで済むのかもしれませんが、共に戦う同志であるはずの友軍からそういう仕打ちを受け、更にそれが戦地での生活の一部として定着させられていたのであったら、その憎しみは「敵」ではなく「男」に向けられて然るべきだと思ったり。
 長編の構想をされているようなので、本当のところはどのような設定かはわかりませんが、もしそうだとしたら、先生の軍医としての誇りや理想が味方の兵によってどれだけ踏みにじられたか、裏でそういう仕打ちを受けながらも、いわゆる「受けていないとき」は普段通り軍医としての務めは気丈に果たさねばならない。戦地での医者はそうそう代わりがいて気軽に辞められるポジションでもないでしょうから。
 その先生の苦しみは察するに余りあります。そんな状況の中で、唯一の安息がその親友だったのでしょう。
 本来人をカウンセリングするはずの先生が心に傷を負って寄り添える存在を求めるというのは皮肉という他ありません。本文に出てくる「わかるわ」というフレーズ。これは同じ戦場で傷を負った者同士だからこそ分かり合えるのであって、それは「彼」だけでなく「先生」にとってもそうなのだということが分かります。
 互いに依存して傷を舐め合うといっても、片方が一方的に暴力を振るったり、片方が一方的にお金や時間を提供し続ける、支配被支配の形でなければ、互いに傷を癒し合う依存はとても心地よい関係だと思います。
 個人的には、先生と「彼」は、このまま医者と患者という関係を建て前に、お互いが死にたくないと思えてくるぐらい、今の寄り添い合う関係を深めていってほしいと思いました。


>>3「あたしはまだ生きている」 茶野様

 茶野様の文章を久しぶりにみて、茶野様の日本語の無駄のなさ、バランス感覚、完成度の高さを改めて思い知らされました。いい意味で女の子らしい表現をされていて、それでいてファンタジー感というか、物語的な臭いを強く感じさせられます。
 短い中でしっかりと構築された世界観が絶妙です。自分のように執拗に設定や世界観を解説する文章を勢い余ってぶち込んでしまう悪癖を持つ身としては、学ぶべき所が多々あります。
 あたしは「まだ」生きている。
 姉が辛うじて精神的優位に立てる、妹が自分を必要としているのだという点。「まだ」の言葉通り、妹も成長して大人になっていくのだから、この関係性は脆く、いつかは崩れるものだと思います。
 そのとき、姉妹の関係が崩れるか、互いを認め合った上でまた違う形に変遷していくか。それは姉にかかっているのだろうと思います。
 心のどこかで妹をできが悪いと見下している姉ですが、魔術の才能あるなしに関わらず、妹へのコンプレックスを自身の中で克服しようともせず、寧ろそれを主軸に「人生全体を賭けた妹への逆恨み」に生きることを選択し、「魔術師の才」という呪縛から逃れた自分自身の道を見つけようともしない姉こそが、できが悪いというか子どもっぽいというか。
 何にせよ、幼くして導き手となるべきであった母を失ったことが、この姉妹の悲劇であると思います。
 姉は気づいていないかもしれませんが、「この先ずっと、なりたくもなかった魔術師として、周囲を警戒したまま、友達も仲間もできないで生きていくのだろう」、こういう生き方は、寧ろ精神的に非常に成熟した賢い大人がやる芸当です。
 妹だって鈍臭いなりに、世の中で散々嫌な思いをして大人になっていくはずです。自我に目覚めた妹を、姉がどれだけ受け入れらるか。それがこの姉妹の新たな試練になるのであろうということを感じされられる一作でした。


>>4「月みればかこち顔」 飯田様

 こんな面倒な女なら彼女なんかいなくってもいいや、ってのはただの僻みですかねwww
 日頃のツイート見てると作者様も多分そんな気持ちで書いているはず(笑)。
 アンニュイな現代の若者の空気感ヤバいです。煙草とかの小道具がもの凄い使い方がうまいです。HOPEの煙がまたこの作品のモヤモヤした、何も解決も結論をみないこの話とマッチしている。
 死にたい死にたいっていう人ほど死なないもの。死がファッションか何かになっているんでしょうか。自分は正直言って死にたくないです。単純に死がとても怖いです。
 彼女はいつまでも自分が被害者で悲劇のヒロインであるという状態で居続けたく、同情と愛情、そしてそんな自分の寛容な理解者を欲しているんでしょう。もしそれを口に出して彼女に言ってしまったが最後、躍起になって怒りそうですが。
 彼女の光明になりたい「僕」、愛想を尽かしている酷薄な「彼」。「彼」は、たとえヘレン・ケラーやマザー・テレサのような偉人に中にだっているはずです。
「彼」の言った通り、彼女の本当に求めているものが何となく分かったそのとき、今後の「僕」が最後に灯った希望の火に一体いかほどの価値を見出すことができるのか。そこは興味深いところだと思います。


>>6「限界締切領域」 如月五十嵐様

 メタ的な発想が面白いです。締め切りが過ぎて、それでも一時間と時間を区切って書いたのでしょうか? メタな中でリアルな心境が綴られているのが実況じみていて面白いです。
 生のテーマも少々反則的な形で落としているところにニヤリとさせられます。
 やはり「先生! 締め切りを守れない者に、物書きを名乗る資格は無いのですよ!」というフレーズにはグサリときます。今回の自作も一時間以上かかりましたし。
 新キャラかと思ったら編集さんだったのが面白かったです。編集さん最強ですね。五十嵐さんっぽいキャラクターだと思います。
 何はともあれ、今月号はなんとか先生の原稿も仕上がって一安心ですが、また来月も締め切りとの戦いが繰り広げられるのでしょうね。これも作家によって様々で、原稿を決して落とさない作家もいるのでしょうが。
メンテ
Re: 【現在開催中】お題制、一時間小説祭り【お題『生』】 ( No.9 )
   
日時: 2016/08/17 23:31
名前: 飯田 ID:5uA9NYjw

>ポメロさん
 彼も彼女も、自分の職務や役割に忠実に生きた結果がこれなんだろうなあとおもいました。欠落した心が、人間味を求めて合う。彼らが求めているのは果たして人間らしさなのかなとも、はじめはおもいました。
 軍人も医師も悔恨をもちよって生きている。両者の間には医療としての回復よりむしろ幼く無垢なころへの憧憬がある。変容してしまう前の精神をお互いの傷の陰に探してる。希望とさえ呼べないでしょう。似たような人がいる、と彼らがおもい、理解できない者同士ながらともにいるのは、暗い安寧の中に相手を再び喪失したときの失意をみているような気がしました。きっと傷よりも罰せられなければならないという観念が、二人を結び付けた。
 初夏の雨の日のような清涼な空気感の中に、過去がにおいたつようなよい作品でした。楽しく読めました。ありがとうございました。

>伊達サクットさん
 ポケットの中にはモンスターが現実になりましたね。ポケモンGOをやってみておもったのはこんなものかという失望でした。ゲームの中では主人公でも、ARを導入したソーシャルゲームでは有象無象のトレーナーと同じ。軽く蹴散らしてきた短パン小僧やミニスカートと似たような手持ちのモンスターで、時間と金が有り余る別なトレーナーにエースのピジョットがこてんぱんにされる。
 幼少時代の神秘や秘密というものは、振り返ってみればなんてことのないありふれた事象であることがつね。僕らはいったいなにをおもって、大人になんてなってしまうのでしょうかと、考えてしまいました。ありがとうございました。

>茶野さん
 もしもペットが人と同じように言語を話すようになれば、たちまちペットなど飼おうと思う人間はいなくなるだろう、と中学校の頃の社会の先生がいっていました。絶対的な優位、明日の命すら自身が握っている状況がよいのだ。彼らがもし、人間と同じ待遇を求めてればどうなるか。
 客観的にみれば、この先妹が魔術師として優秀になれば、姉よりも妹のほうが優位な存在にみえることでしょう。しかし、妹にとって姉は絶対の存在である。あこがれた魔術師が自分を必要としている。それによって姉は満たされる。一時間小説なのでお姉ちゃんのほうが後ろ暗さのある?決意をして終わってしまいましたが、長編のひな型ということでぜひもっと二人の関係性を読んでみたいなとおもいました。ありがとうございました。

>自作
クソメンヘラ女絶対殺す小説。
「ここを過ぎて」は太宰治『道化の華』の「ここを過ぎて悲しみの市」という文のもじりです。人間失格より面白くて僕はすきです。

>如月五十嵐さん
 メタネタって塩梅がめちゃくちゃ難しくてちょっと間違えるとただただ鼻につく面白くもない奇をてらったようですべってる作品になってしまいがちですけど、五十嵐さんはそういうバランス感覚やセンスすごいなあと思いました。語り口が筒井康隆や森見登美彦っぽくて軽妙。
 死に向かって走る列車に乗りながら、生のテーマをそこに絡めていかないところに五十嵐さんっぽいひねくれを感じました。ありがとうございました。
メンテ

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