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[38] ハロウィン特別イベント板1時間小説祭!
   
日時: 2014/11/01 02:21
名前: 偶々老師 ID:t8UPTBa6

【ハロウィン当日! イベント板一時間小説祭】

◆企画説明:一時間でお題に沿った小説を執筆し合い、みんなで感想の書きあいをします!
◆参加資格:誰でも参加できます! どんどん参加してください!
◆日時:10月31日(金)、23:00開始
その後チャット会・感想提出、遅れて提出されても全然大丈夫です!

◆場所:このスレッドです!

◆お題:もちろん“ハロウィン”!


字数制限は一切ありません。

◆感想:このスレッドにご自由にご投稿ください。


◆提出作品目次:
>>1 『仮装に潜む』小丹丸
>>2 『私の目には、こう見えた』とうもろ腰
>>3 『ハロー・スウィート・ナイトメア』爆薬
>>4 『浪速のジャックオーランタン』偶々老師
>>5 『ハッピーハロー』知床
>>6 『水底の血祭』無理子
>>7 『おばけなんてないさ』えろににげたよ
>>8 『暮れゆく十月の喧噪に踊る』バーニング
メンテ

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ハッピーハロー ( No.5 )
   
日時: 2014/11/01 00:44
名前: 知床 ID:LfXHgrak

 それは、わたしが小学生になったばかりの頃の話だ。
 数人の友達と一緒に町内企画に参加したわたしは、その夜小さな魔女になっていた。
 ご近所の家々をまわり、魔法の呪文を唱えれば、おいしいお菓子がもらえるのだ。
 今よりかは僅かに純真だったわたしは、その不思議な夜に興奮し、あきらかに調子に乗っていた。
 おもちゃのステッキを振り回し、サイズの合わないとんがり帽子を目深にかぶって、くるくると踊りながら月明かりの街を我がもの顔で行進していた。
 そして、気付いたときには周囲に友人たちは居らず、欠けた月だけがこちらににやけた顔を浮かべているのだ。
 もちろん焦ったし、大声で叫んで知り合いを探した。
 ひょっとしたら、泣いていたかも知れない。
 走って走って、走りつかれてしゃがみこんで。
 滲んだ月を見上げたわたしに、それはそっと差し伸べられた。


「大丈夫? みんな向こうで君の事を探していたよ?」


 月の逆光に照らされてふわりと揺れるやわらかそうな短い髪。
 線は細く、だけど背の高いシルエット。
 黒いマントと鋭い牙が少しだけ怖かったけど、それがヴァンパイアっぽい何かの仮装だという事はすぐに思い当たった。
 差し出された手をつかむと暖かくって。
 おずおずと立ち上がったわたしを見て、その子はかわいらしく微笑むのだ。



 それからの事はあまり覚えていない。
 頭はぼーっとしてたし、手を引かれて何とか歩いている状態だったらしい。
 ただそれが、わたしの初恋だったのだと。
 それだけはハッキリと記憶しているのだ。








「だからそんな格好をしていると?」

「うん、そう」


 呆れ顔で見つめる中学からの友人は、あの時の衣装とよく似た魔女姿のわたしを見てため息を吐く。


「あれから毎年この格好をして、ハロウィンに参加してるの」

「その、初恋の相手を見つけるために。ね」

「うん、そうっ」


 思わず握りこぶしを作る私を、なんだか生暖かい視線で友人は見つめている。
 もちろん、わたしにだってわかっているのだ。
 さすがに、中学生で『とりっく・おあ・とりーと』などと言って、家々をまわる人なんて他に居ないだろう事も。
 こんな事をしたって、おそらくあの子がわたしを見つけてくれることは無いだろう事も。
 それでも、あれから毎年やってきた仮装をやめるきっかけも無く、こうして今年も一夜限りの小さな魔女をやっている。


「まぁ、あんたがそれで良いならいいけど」


 あの時のように泣きそうなわたしを見て、優しい友人は、大きな帽子を取って頭にそっとあたたかい手を置くと、かわいらしく笑ってこんな事を言うのだ。


「でもその子。案外あんたが思っているより、ずっと近くに居るのかもよ?」


 短い髪がやわらかそうに揺らめいて。




____
メンテ
水底の血祭 ( No.6 )
   
日時: 2014/11/01 00:54
名前: 無理子 ID:IXkESBHo

 面白いのは水底の死体たちもハロウィンを楽しみにしているということである。


 私の友人に血祭さんという人がいて、えらく物騒な名前だなあと思っていたら趣味までなかなか物騒で、休み時間にいったい何を読んでいるのかなあとちらりと本の題名を盗み見たら、殺人百科だった。そんな彼女は当然友達がいない。当然、というのは失礼だったかもしれない。血祭さんは授業が終わったら、まるでそういうアルゴリズムが組み込まれているかのように瞬時に教室を出ていく。あまりの早さに誰もがびっくりする。片付けも歩くのも早い。
 ある日のこと、さあて帰ろうと廊下を歩いていたら担任に呼び止められ、お前、血祭と同じ方向に住んでいるよな? だったらこれ、血祭の忘れ物を届けてやってくれないか、と鍵を渡された。タグに『血祭』と書かれていた。どうも廊下に落ちていたらしい。家の鍵だろうか。だとしたら、今頃血祭さんは家の前で立ち往生している可能性が高い。あの血祭さんが困っている姿というのはぜひ拝んでみたかったので、私は依頼を承り、そのまま彼女の家の方向へ向かった。何度もストーキングしたことがあるので場所は知っていた。
 だが、血祭さんはどこにもいなかった。家の前にもいなかったし、近所の書店にもいなかった。十月がもう終わるので寒かった。こんなに寒いのに外をうろついているはずもあるまいと家のドアを何度かノックするが、電気は付いていないし、誰も出てくる気配はない。きっと寄り道していて、今帰路に立っているところなのだろう。私はすたこらと血祭さんが普段使っているであろう通学路を逆走した。そこで、血祭さんが森の方へ逸れていくのを発見したのである。
 血祭さんはしばらく森を進み、あまり人が寄り付かない池で足を止めた。綺麗な池だ。ちょうど森が池の形とまったく一緒の円形に切り取られていて、空がすっかり露出している。月も見える。いい夜だなあと私は少し後ろで、そして血祭さんはとても美人で、水辺が似合うなあと思っていた。すると、血祭さんはなんとそのままの足取りで池の中に歩み始めたのである。私は茂みに隠れて、まさか入水だろうか、人が入水するのを見るのなんて人生に何度あるのだろうこりゃ珍しいと思わず手を叩きたくなったが、隠れているので音は鳴らせない。血祭さんは静かに池に入り、水紋は広がる。ぴしゃりぴしゃりと音がする。血祭さんの体は足から少しずつ池に入っていき、最終的には身体、首、頭まですっかり池に浸ってしまった。あ、死んだと思った。なるほど殺人百科はこの伏線だったかと感心しながら、救急車を呼べばいいのか警察を呼べばいいのか非常に迷った。でもまだ死んでいないかもしれない、いやむしろ死んでいることを確認した方がいいと、素早く茂みから飛び出して、血祭さんの沈んだところを見た。私はぶったまげた。なんとそこには誰もいなかったのだ。池は浅いところはまだ水が透明の様な感触だが、深いところは淀んで濁り、見えない。ということは、血祭さんはその深いところにどんどん沈んでいったということなのだ。沈むって、そんな風に自分で無理やり沈んでいけるものなのか、錘でもつけてないと無理じゃないの、と冷たい水に冷や汗掻きながら思考していると、水面に白い手が伸びて、私の首を掴んだ。うっ、と言ってしまった。
 私が目覚めると、そこにはジャックランタンのかぼちゃを頭にかぶった男(女?)が立っていたが、どうにも視界がぶれにぶれていて、そして時折足元から泡がぷかぷかと湧き立っている。ちょうど、プールの授業でゴーグル忘れたら「ゴーグルなしでもいける」と言われてそのまま水の中で目を開けたような、そういった視界である。プールのような青さではなく、もう少し濁っていて群青だが、そこに立っている誰かの姿はよく見えた。ああ、なるほど私は死んだな、なぜジャックランタンが目の前にいるのやら、これはあちらの世界なんですねというようなことを考えていたら、左に魔女の恰好をしたお姉さんがいた。そして右に、ドラキュラの恰好をした男がいた。その向こうには狼男の恰好をした男が、向こうにはゾンビ、でかい注射器を持ったナースの格好の女の人もいる。その向こう、その向こう……あれれ、私の周りに大量のお化けが。
「あーん、なんてことなの、まさか私がつけられていたなんて」
 ジャックランタンが喋った。誰だお前。ひどく棒読みだけど。空気が淀んでいる――というか、明らかに様子がおかしいので、随分と声が反響して聞こえたが、女の子の声だった。あれ、この声は。なんとジャックランタンの正体は血祭さんだった。ばかでかいかぼちゃの中にその顔が入っているのかと思うと噴飯ものだったが、それ以上に状況が意味不明だった。
「血祭さんなの?」
「ええ、そうよ」
「何をしているの?」
「あのね、この人たちはこの池に沈んで死んでしまった人たちなのね、それでね、今日はハロウィンでしょう? だから、こうしてみんなで仮装パーティをしているのよ」
「ちょっと待って。ここはどこなの?」
「池の底よ。ほら、ちょうど水の中に沈んでいるみたいでしょう? あなたも沈んできたんだから。声もやたら反響するし」
「でも、息ができるよ」
「あなた、死んでるもの。例えば、水ってコップで掬うと『一杯、二杯』って数えられるけれど、基本的には数えられない名詞でしょう。ナイフでは切り分けられないし、一杯って、コップを数えているだけで、水を数えているわけじゃない。つまり、水ってとても曖昧で、境界の無いもの……そして普通は触れることができないものなのね。あらあら、この性質はどこかで耳にしたことがあると思ったら、幽霊も同じだわ。幽霊はよく足が無くて、浮いていて、なんだか霞んでいるような存在。人間には触れられない。水と幽霊はとても相性がいいのよ。だから、幽霊やお化け、死んだ者は水の中で息ができる。あなたは今、ここで呼吸ができる。あなたは死んだわ。溺死……」
「じゃあ、皆さんは水死体なんですね……そして、ここは水底ってこと?」
「そういうこと、もう少し、もう少し異界に近いところだけど、普通に池を潜れば辿り着くような水底ね」
「で、なんでハロウィンパーティやってるの?」
「死体もパーティしたいのよ」
 幽霊は途轍もなく暇、水底で眠っている水死体たちは、もっともっと暇。基本的に現実の視点から見れば、水死体は水底で沈んで、発見されるのを待っている。だから、動けない。暇で暇で仕方がない。魂だけは自由に動けて、だけど体はそのままだから楽しくない。だったら、水底でパーティをやろうと計画したのだそう。でも、楽しめる行事なんて死体にはない。運動会をやるには水の中は体が重く、そしてお祭りをするには屋台も用意はできない。では何が用意できるかと言うと、仮装だった。この池は不法投棄もたくさんされているので、ぽんぽーんと誰かが要らないものを捨てる。ある日、どうにも不良がかぼちゃを盗んだものの警察に見つかり「やべっ捨てろ捨てろ」とこの池に捨てられた。それを見た水死体たちは、それじゃあハロウィンに使えるじゃないかということで、捨てられ水底に沈んだかぼちゃを、やっぱり捨てられた鉈やナイフで切り分け、捨てられた服を捨てられた針で縫い直し、捨てられた黒いビニールでマントを作り、捨てられたウィッグや捨てられたコートのファーで狼の毛皮を造った。ここはそういう池なので、随分と用意が捗ったのだ。血祭さん渾身のダジャレはスルーしたが、どうにもこの人たちは、さあて今からパーティだと大はしゃぎだったようである。なぜか捨てられたホールケーキが中央に据えられていた。形もぐっしゃぐしゃだが、今の私はそれでもいけると思う程度には死んでいるようだった。
「それで、どうして血祭さんがここに? 死にたかったの? 沈んでいくのを見たけど」
「いいえ。死にたくなんかないわ」
 ジャックランタンが嗤った気がした。
「あなたを殺したかったの」
 ――私――殺――えっ。
「あなた、私をストーキングしてたから、多分池に私が沈んだらあなたもついてきて死んでくれると思ったのよ」
 私は汗をかいた。水の中で汗なんて掻くかは知らないけど。
「え? え? え?」
「私、死んでいないわ。私には幽霊と交信する能力があるけれど……。あなたのストーキングがうざかったので、あなたを殺したかった。でも、なかなか死んでくれないので、私が池に沈めば、多分ついてきてくれると思った。そしてあなたは勝手に溺死する。もし入らなくても、ここにいる『友達』が白い手で引きずり込んでくれる。つまり、私は生きている。そしてあなたは死んだ。あなたはこれから幽霊として、水死体として、このハロウィンパーティの仲間入りだわ。私は地上へ帰るけどね」
「えっ? 血祭さん、ずっとしゃべってるよね? それは息が出来てるってことで、死んでるんじゃないの」
「このかぼちゃ、潜水ヘルメットなのよ。上手に作れているでしょう?」
 
メンテ
おばけなんてないさ ( No.7 )
   
日時: 2014/11/01 01:10
名前: えろににげたよ ID:7veEgcRU

 ベッドにあがって三分近くゴソゴソとやってりゃ嫌でも気が向くもんで、また馬鹿なこと始めたかとツイッターから目を離せばベッドから剥いだシーツを被ってるバカがいて、もう日もまたぐという時間ベッドはぐちゃぐちゃで、軽く苛立ちを覚える。金曜の夜、酒も入ってて夜更かしの怠惰な贅沢に浸っていたけども、自主的にそうしないのと、他人によって妨げられるのとでは感じ方も違ってくる。おいなにしちゃってくれてんの寝れねーじゃん。なんていえばバカはシーツの下から両手をつのみたくおったててとりっくおあとりーとなんて抜かしやがる。アホ。
「もう日付過ぎたし」
「ざんねんー本場の欧米はまだ全然三十一日ですしーセーフですー」
 日本だしおまえ英語しゃべれねえじゃん何が本場だアホ。型落ちのガラケーカチカチカチカチいじくって何やってたかと思えばようやっと昨日がハロウィンってことに気づいたのか、はたまた苦しい屁理屈のため世界時間でもぐぐってたのか。
「お菓子くれないと悪戯するぞー」
「夜食べると太るっつったのおまえじゃん」
「それとこれとは別。今食べるわけじゃないし」
 二本の角らしきがわきわきと動いている。食べる気満々じゃん。そもそもこいつは買い置きと称して大量に買ってくるが大概その日のうちに貪り食う俺以上に怠惰なデブだ。デブって時点で骨の髄からだらしがないって証拠だし。包み隠さず言うと、おふざけというには強すぎる力で叩いてくる。スマホをテーブルに避難させる。
「やめーや」
「菓子よこせばやめてやる」
「悪戯ってか暴力じゃねーの。悪戯しろ悪戯」
「どういう?」
「性的な」
「ぎゃーおっさんくさい」
 相手はシーツ被っててよけるのは簡単だ。適当にシーツの裾をひっぱってバカがデブらしく転べば、引き網の要領で自由を奪うも容易い。シーツおばけって小学校の学校祭でももっとマシなの作るわ。本場言うなら本場よろしく何か月も前から時間かけろて作れよ、なめんなよてめえ。海外ドラマで得た知識を、頭のなかでまくしたてつつ、シーツの上から覆いかぶさる。布を隔ててもわかる豊満な肉の感触。
「全然おばけっぽくねーし」
 体温も脈動も押し返してくる腕も裏腹に絡みついてくる足も、ちゃんと生身だし。
 シーツのないベッドで事に及んで後始末を面倒にする気はなく、ハロウィンバカの網に自らかかってふたり繭のようにドロドロ溶ける。蛹はかたそうに見えても内部は変化のため内臓を溶解させててどうのこうのとか、いつ知ったんだっけ? 教科書に載ってた断面図の写真を思い出し、授業の一環で飼った蚕を思い出し、一匹逃げ出して外で繭になって、知らずに潰してしまったときを思い出す。べちゃべちゃと糸を引いていた。乳のように白いものが出た。負けじと胎内に白をぶちまける。お互い結合部がまだ熱くて、このまま同化して一匹に成っちまいそうな、でも繋がりったって所詮内臓をかき回してるだけで赤ん坊みたく本当の意味で繋がってるわけじゃねえよなって、何となく足りないものを感じながら萎えたもんを思惟なく動かしてたら頭のなかも白くなる。腕のなかで早鐘を打っていた鼓動が徐々に落ち着いてくる。それと共に蛇の喉のようだった膣が緩んでくる感じがして、おら怠けてんじゃねーぞデブっつって自分の欲よりも相手の満腹感を得させるために動く。
「結局エロ漫画オチっぽくなったじゃん」
 口が回るうちに批難してくるのを、舌を絡めて封じ唾ごと飲み下させる。どんなイベントだって口実に過ぎねーし。頭のなかではまだ蛹の妄想が渦巻いていて、シーツのなかはふたり分の息で苦しいながらも肌寒さを欺く心地で、だらだらと成り果てちまえばいいと思って、結局おばけより人間が一番怖いとかよぎって、うっそり笑う。射精をこらえる歯をむき出した表情が好きだと、いつだか言われたのを思う。
 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。
 それなんか高尚っぽいね、とおばけも神も信じぬまま恩恵を得ようとする二重の意味での厚顔女が、死にそうもない赤らんだ顔で言った。
メンテ
暮れゆく十月の喧噪に踊る ( No.8 )
   
日時: 2014/11/01 01:49
名前: バーニング ID:yY7fwA7Q

 街へ出るまで全く気づかなかったけれど、街へ出るとすっかりハロウィンだった。朝起きてから掃除、洗濯、それから来週の弁当の下ごしらえをこなしたあと、昼からはパソコンに向かってずっと仕事をしていたから、外の世界のことなんて今日の天気と仕事の締め切りのこと以外なんにも気にしてなかった。
 夜に大学時代のサークルの友達何人かと飲むということになっていたので、服を着替えてから夕方ごろに家を出た。お昼過ぎにはあんなに晴れていてあったかかったのに、もうずいぶんと外は真っ暗で、そして肌寒かった。週末は天気が崩れるらしいと、地下鉄の中で開いたスマートフォンが教えてくれた。
 目的の駅に着いて地下鉄を降り、地上へ出ると見事にハロウィンだった。ゾンビメイクやかぼちゃをかぶったたくさんの人たちや、戦隊ものや魔法少女もののコスプレをした人たち。仮装ってコスプレのことだったっけ、と頭をひねりながら、着飾った人たちの間をぬうように歩くのだけで、気分が少し浮かれた。みんな楽しそうだな、と素朴に思った。
 サークルの中でも仲のよかった友達3人と合流してから、女4人で飲みに行った。飲み屋の店員さんまでちゃっかりハロウィン仕様の仮装をしていた。
「飲み会、新宿にしてよかったね」
 あかねが言ったその言葉の意味が分からなかったので、どうして、と聞きかえした。
「わたし、今回の言い出しっぺじゃん。渋谷にしようか新宿にしようか考えてたけど、渋谷の駅前すっごい人らしいよ。ハロウィンだから」
「この時間の渋谷ならいつものことなんじゃないの?」
「いや、それはそうだけど、いつものことなんじゃないんだって。ほんとすごいんだって」
 そう言いながら慌ててiPhoneの画面を見せてきた。
「さっきNAVERまとめを開いたらすごくてさ」
 まとめられた画像の数々を見ていると、有象無象、魑魅魍魎、あるいは百鬼夜行といった四文字熟語がやたらに頭に思い浮かんだ。
「でも、新宿もすごかったよ。さっき駅降りてから、靖国通りまで出てくるまでだけでもすごい人の数だったよ。仮装してる人の」
「いや、絶対渋谷のほうがすごいと思う」
 横から顔を出してきたのは彩香だった。
「わたし、乗り換えで渋谷使うからさ。渋谷の地下から地上に出て山手線に乗り換える時、ハチ公口のほうとか人がぱんぱんで改札通れないくらいだったよ。あんなの見たことないって」
「へ〜。というか、むしろ、そのまま地下鉄で来れば良かったのに。乗り換えたら余分にお金かかっちゃうじゃん」
 あかねが彩香の判断の誤りを指摘するように言う。 
「いや、それはね……ほら、新宿出るなら山手線かなあと思って」
 彩香はこういうおっちょこちょいなところが昔からあって、そういえばサークル合宿の集合場所を間違えて駅の反対側に行ってたことがあった。大学三年生の、夏の合宿だった。遅れて集合場所へ到着したあと、長野へ向かうために借り切ったバスの運転手さんに、何度も何度も謝っていた彩香の顔を思い出すと、少し笑ってしまう。
「まあ、いいじゃん。今日は飲もうよ! みんなの積もる話楽しみだよ〜」
 一番脳天気そうなのは、たいてい集合場所には一番早く来ている理美だった。
「そうだね、飲もう。そしてたらふく食べよう」
「その調子だとまた太るぞ〜」
 そう言いながらわたしのおなかから胸のあたりをつねってきた彩香は、本当に昔からやっかいだけど、憎めないところがかわいい。
 それから二時間ほどかけて、たらふく飲んで、しこたま飲んだ。あかねらしく、指定した先は梅酒が豊富なお店で、女子会プランなるものもしっかり用意していた。半個室のような形で他のお客さんにも見える席だったけれど、暖色の明かりがやさしくて、お店の内装も全体的に和風テイストの黄土色の壁紙が貼られていた。注文を頼んだときに話を聞くと、女性店員の来ていた和服はコスプレでも仮装でもなく、お店の制服のようだった。女性客より男性客のほうが喜びそうだな、と思った。

 お店を出てから歌舞伎町の路地を靖国通り方面に歩きながら、そう言えば次はどうするんだろうと気になって、あかねに声をかけた。
「二次会は特に考えてないよ。HUBにでも行って飲み直すか、カラオケでもするか、そんな感じでどう? みんな」
 そうかあ、どうしようかなあと考えていたら彩香が手を挙げていた。
「はい、彩香さん。意見を述べてください」
「なにそれ、学校の先生みたい」
「一応というか、わたし学校の先生だからさ……」
 あかねは去年の教員採用試験に無事合格して、都内の公立高校で国語を教えているはずだ。
「今日ってハロウィンなんでしょ? 渋谷ほどじゃないけど新宿も人いっぱいいるじゃん。で、ここは歌舞伎町でしょ? ということは靖国通りまで出ればおっきいドンキホーテがあるよね? あそこって、普段からコスプレの衣装たくさん置いてるよね?」
 えー、マジかー、と言ったような驚きと嘆きの声が両方聞こえてくる。わたしも驚いているけど、少し楽しみにしているところがある。
「こういうオチになるとは思わなかった……いや、彩香がいる時点で何かが起きると予測しておくべきだったんだ……」
 あかねから漂う拒絶感が、とてつもなく重たく見えた。
「いいじゃん、やろうよ」
 いつのまにか、わたしは彩香を立てる側になっていた。暮れゆく十月のどことなくおかしい街のテンションが、わたしにとって単調な日々の生活にはとても新鮮だった。
「裏切られた!」
 あかねが怒って言う。
「そうだね、今日くらいはいいんじゃないかな?」
 理美はなんだか、いつも通りって感じがした。昔とたぶん、一番変わってないのはこの子なんだろうなって思う。
 ドンキホーテまで歩いてから、お店周辺のあまりもの人の多さにびっくりして、みんなで作戦を立てることにした。あかねの提案で、とりあえず二人ずつ店に入って衣装を選んでくることになった。四人全員がばらばらに入ってしまうと、合流すること自体が難しそうだから、いい案だと思った。先に入った二人が店の中の情報を後の二人に伝え、後発組の二人は効率的に回れるように、というのもあかねの提案の意図だった。
 先に理美と彩香が入り、わたしとあかねはお店の外で待つことにした。
「で、どうなの、仕事のほうは。ちゃんとやっていけてるの?」
 公立の学校の先生をやっているあかねは、フリーライターという食えない職業を選んでしまったわたしを心配してくれた。プライベートでも先生みたいだ。
「いまのところはなんとか、大丈夫。大学時代にバイトしてた編プロから仕事をもらったりしてるし、他の仕事のつながりというか、ツテみたいなのを頼ってなんとかなってるよ。なんとかなってる、って言うくらいの稼ぎしか、いまのところはないけど。お先真っ暗なのは変わりないというか」
 はあ、と息をついてあかねが言う。
「まあ、好きなことを仕事にしてるんだから、わたしはなにも言わないよ。ただ」
 言いかけて、少しよどんだ。
「ただ?」
「ただ、ちゃんと、この先の自分の人生は大事にしたほうがいいと思うよ。女の20代なんて、あっという間なんだからさ」
 あかねらしいとは思うけど、ちょっと説教くさい気がする。
「あかね、なんかあった? 結婚でもするの?」
「いや、ちが……そういうわけじゃないけど、学校の先生やってるといろいろと考えないといけないことが多くてさ……生徒の進路って形で、人生の一部を担っちゃってるわけだしさ」
「たいへんだ」
「そうだよー、たいへんなんだよわたしの仕事は」
 真っ暗な天を仰いで、あかねはつぶやいた。学生時代とは、生き方そのものがまるで違っている。
「そんなたいへんな仕事をしているうちに、あかねがどんどん先生っぽくなっていくの、わたしは楽しみにしてるよ?」
 何かうまいことを言えたらと思いながら、下手に励ますのでもなく持ち上げるのでもなく、わたしはあかねに言った。楽しみがこれから増えていけば、生きることがちょっとだけ楽になる気がする。
「ありがと。なんか、地味にちゃっかりしてるよね。仕事自体はものすごく不安定なくせに」
「あ、言ったな? そのうち何十万部を売り上げる本を書くからな?」
 無理無理、そんなの。だって出版不況じゃん。そんな風に持ち上げたり下げたりする会話をしているうちに、先発組の理美と彩香が帰ってきた。
「じゃじゃーん」
「ねえ、どうかな?」
 濃いピンクのナース服と、淡いブルーの競泳水着。
「だからハロウィンはコスプレ大会じゃないんだって言ってんじゃん!」
「えーいいじゃん別に」
 あかねの大声に、彩香のいつも通りの声が返ってくる。かつては日常で、いまは非日常になってしまったこうした日々は、非日常だから楽しいことがきっとあるんだろうな、とわたしは思った。
 十月がものすごい勢いで終わっていく。新宿の夜の喧噪の中、わたしたちは踊るように街を歩く。
メンテ
Re: ハロウィン特別イベント板1時間小説祭! ( No.9 )
   
日時: 2014/11/01 02:28
名前: えろににげたよ ID:7veEgcRU

 思ってたよりホラーが少なく全体的にほのぼのしてました。肌寒い季節ですし、作者さんもあったまる話が書きたかったのかもしれませんね。
 短いですが感想。


>>1 『仮装に潜む』小丹丸さま
 うまくまとまっていました。怪奇系雑誌のショートショートにありそうな感じです。日本のお盆があっちで言うハロウィンですから、よからぬものが紛れてるのはまあ普通なんですが。
 ただ誰でも考え付く話であるだけに、欲を言えば合間かオチかにもうひとひねりほしかったところです。文字数も少ないだけに若干の肩透かしを食らいました。

>>2 『私の目には、こう見えた』とうもろ腰さま
 ネットによくある「猫を監禁拷問した→単にかわいがってるだけ」系のネタですね。
 「恐れ慄くあまりに笑いをこらえて震えていた」って、徹底的に『こう見えた』と書くなら「笑いをこらえて」はいらないんじゃないでしょうか。カボチャにハリボテ感をもたせたいなら「なかでも南くんの持つカボチャの籠はとりわけ奇怪に崩れ果てており顔と識別するのも難しく〜」とかなんとか描写すればよかったんじゃないですかね。
 そこもですが「Trick or Treat――日本語に直訳するならば、「生か死か」といったところだろうか」も直訳になってないので変。ばっさり切って「生か死かといったところだろうか」だけでいいと思います。
 それ以外はほのぼの系で、話運びも楽しく読ませていただきました。

>>3 『ハロー・スウィート・ナイトメア』爆薬さま
 最悪最悪いってるわりにはタイトルがハロースウィートって辺り心底マザコンなんやなって思いました(小並感)
 精神病っていうのは自分から治したいって努力しない限り改善するもんじゃないらしいので、全編通してみるにいやだと苦悩してるけど治したいとは思ってないんですよね。精神科にも行ってるけど「ないよ」っていわれてそうですかって諦めちゃってる辺りどうしょうもない。っていうかンなこと患者に面と向かって言う精神科医なんてヤブ越して本当に医師課程受けてるのか疑問なレベルだからさっさとセカンドオピニオンしろと。結局ママと会えるなら悪夢でもいいって思っちゃってるんじゃないですかやだー。

>>4 『浪速のジャックオーランタン』偶々老師さま
 企業が消費を加速させたいがため押しに押してるハロウィンだけど日本では気風の問題もあってか中々浸透せずにいるハロウィンですが(実際やってるとこ見たことない)、英会話教室のイベントという設定は自然でいいですね。
 妖怪ウォッチとかいうのが大ブームならパックマン似のジャックオーランタンくらい「すげー!」って感じに受け入れそうですが、主人公がそういう単純な子でないのも面白さに繋がってると思います。
 ただラストの台詞はおまえそれ入れたかっただけちゃうんかと。お友達にお菓子ねだってどーする。

>>5 『ハッピーハロー』知床さま
 百合。終始やわらかい雰囲気でうまくリードさせられました。この後の展開がどうなるか気になるところで切られてるのがもどかしくもあり良くもあり。
 ところでハロウィンって地域の協力が必須なので、日本だと事前に回覧板とかで参加者募るのが一般的だと思うんですが、こーいうお菓子系イベントって中学生以上が参加できるんですかね? 自分の地元は子供用神輿かつぐのにも中学生以上は禁止って感じだったんですが。
 まあお菓子ねだらず自主的にコスプレする程度ならいいのかな。

>>6 『水底の血祭』無理子さま
 「私」のキャラ軽っ! 血祭さんが死んだと思っても興奮してたり自分が死んだと自覚しても他人事のようなのに、血祭さんから「殺したかったの、わたし生きてるけどね」って言われて動揺するのか。よくわかんない人だなあ。
 バッドエンドっぽく終わってますがこんなに順応性の高い主人公なら割とうまくやっていけそうですね。意外と物資にも恵まれた環境のようですし。
 ホラー好きとしては「幽霊はよく足が無くて」は日本独自の発想で西洋起源のハロウィンに用いるにはやや和洋折衷。まあ舞台が日本ですし死人も日本人っぽいから、宗教観の問題で誤差の範囲内でしょうけどね。

>>7 『おばけなんてないさ』拙作
 原作版ウォッチメンのハロウィン回が好きなんですがそんなものが自分にしかも一時間かそこらで書けるわきゃないのでエロに逃げました。でも直接的な描写はしないというダブルチキンぶり。もうすぐクリスマスですね。

>>8 『暮れゆく十月の喧噪に踊る』バーニングさま
 そういえば池袋で仮装しよう企画があったらしいですね。行ってないからどんなだったかわかりませんが。
 バーニングさんはこういう自然な会話がいつもうまいですよね。企画中で最も登場人物が多いながらも、一話のなかでそれぞれの性格によってうまく役割分担されて見事に読者に情報を伝えている。素晴らしいと思います。
 あと現実にはほとんど耳にしたことないのに企画内では使われすぎて飽きた「トリックオアトリート」が一言も出てないのが個人的に気に入りました。大体からして夜の渋谷や新宿にいるの、子供じゃないですもんね。
メンテ

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