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[25] 第四回イベント板一時間小説祭【恋愛小説三番勝負2】
   
日時: 2012/08/22 12:31
名前: 屈強の戦士田中 ID:CUgJIJ9Q

【夏だよ! 第四回イベント板一時間小説祭 恋愛小説三番勝負】

企画説明:一時間でお題に沿った小説を執筆し合い、みんなで感想の書きあいをします!
参加資格:誰でも参加できます! どんどん参加してください!
日時:8月22日(水)、0:00〜01:00その後チャット会(F板チャットをお借りします)・感想提出、遅れて提出されても大丈夫です!
場所:このスレッドです!

お題:今回はテーマです。

「恋愛お題ったー」
投稿時のHNで診断(http://shindanmaker.com/28927)を行い、作品の最後に診断結果を記載してください。

診断結果記載例:「お題:屈強の戦士田中さんは、「昼の居酒屋」で登場人物が「嫉妬する」、「友情」という単語を使ったお話を考えて下さい」

各自の診断結果に沿った短編を執筆してください。
字数制限は一切ありません。

感想:このスレッドにご自由にご投稿ください。

提出作品目次(敬称略):

 >>01 かなちゃん王女『秋風のお便り』
 >>03 アリエス佐野『遠くなっていく』
 >>05 ホモ好き『箱庭の君』
 >>06 If『黒い証』
 >>07 風雨『Two Kinds』
 >>09 春夏冬『ヤミナベ』
 >>10 修羅雪姫『魔法にかけられて』
 >>11 宮塚『Give me your blood.』
 >>12 エシラ『グッドナイト・ゲームセンター』
 >>18 文旦『スリーピーホロウはラブストーリーを語る』
 >>19 優月『オレンジ・ラプソディー』
メンテ

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Re: 第四回イベント板一時間小説祭【恋愛小説三番勝負2】 ( No.15 )
   
日時: 2012/08/22 02:42
名前: かなちゃん王女◆SX.4l2Qrkk ID:IexbniHI

感想


 >>03 アリエス佐野『遠くなっていく』

 展開がまったく読めませんでした!
 なんだか、ヒーロー(?)っぽいのが出てきますし、どうやって恋愛に絡めた話にするんだろうかと、とても不思議に思いました。
 ギャグっぽいと感じましたが、最後の吉田が妙に可愛らしくて、とても好きな作品でした!


 >>05 ホモ好き『箱庭の君』

 言葉の一つひとつが、幻想的できれいだなと思う反面。
 落ちがどうにも汚らしくあり、あまり好きにはなれなかったです・・・・。
 鬱エンドやだぁ>△<;


 >>06 If『黒い証』

 終わり方がとても悲しくて、まるで身分違いの悲恋を見ているかのようでした。
 短編なのに、一時間なのに、まるで練りに練ったかのように、当たり前の世界観がとてもすごいなと思いました。
 ファンタジーチックで、ドキドキして、初恋のような甘い話でした//


 >>07 風雨『Two Kinds』

 なんか、嫌な話でした。
 鬱エンド・・・・ぇ。。。。
 途中で落ちがなんとなく読めてしまい、そのまま突っ切ってしまったので余計に残念に思ってしまいました。


 >>09 春夏冬『ヤミナベ』

 ごめんなさい。黒い塊のくだりがよく分からなかったです。
 男性恐怖症に陥りそうです・・・・。
 とても恐怖心をあおられました。怖かった!


 >>10 修羅雪姫『魔法にかけられて』

 途中まではすごくありそうだなと思いましたw
 ゆったりとした文体から、急くような印象に移り変わっていったのが、私的にとても好きでした。
 ……ただ、時の巻き戻しについて、最後結局ほったらかしにしちゃったように思えたので、そこが残念に感じました。


 >>11 宮塚『Give me your blood.』

 すごく続きが読みたい!
 と思いました。
 ただ、きっちり完結していないので、すごく嫌な気持ちになります・・・・。
 この話の最終回は永遠に訪れないのですね・・・。


 >>12 エシラ『グッドナイト・ゲームセンター』

 素直に「良いな」と思える恋愛模様でした!
 ただ、夜の廃ゲームセンターなんて私にはとても行けないです・・・・。
 それほどまでに切羽詰っていたのでしょうか・・・? と感じました。
 恋愛作品として、一番好きです!
 きゅんとしてステキでした♪




 抽象的は感想でごめんなさいです。
メンテ
Re: 第四回イベント板一時間小説祭【恋愛小説三番勝負2】 ( No.16 )
   
日時: 2012/08/22 02:56
名前: エシラ ID:JiomuIuM

>>01 かなちゃん王女『秋風のお便り』

 字の文が素敵すぎて悶えました。主人公可愛いです。敬語気にしたり、彼女気にしたり。
 それでもやっぱり二人がなんだか長い間一緒にいるだけある、という雰囲気出してて最高。
 遅れた青春なんてそんなことないよ。でもこの締めがとてもよかったです。

>>03 アリエス佐野『遠くなっていく』

 マヨネーズ吉田すごいなあ。でもなんだかかっこいいじゃないか。そう思えてしまった。
 しかし突っ込みどころが多くてすごく楽しかったです! なのにちょっと切なくて、でも暖かい。
 好きな男の人を嫌いになろうとするけど、やっぱり好き。そんな女の子が可愛いです。素敵。


>>05 ホモ好き『箱庭の君』

 ああ切ない。好きな人ともう会えない痛みは本当に苦しいですよね。悲しい。
 君が嘘をついていたということ、君も姫を好きだったということ。とっても胸が痛いです。
 姫には待っていて欲しいなって思いました。最後のティーカップのくだりが素晴らしかったです。

>>06 If『黒い証』

 二連続で切ない。主人公の語りから主人への想いがひしひしと伝わってきて悲しいです。
 主人が本当に主人公を守るためにお暇を出したのか、微妙にわからないところが泣けてきます。
 もしかしたら想い過ぎた為に歪んでしまった主人公の物語、だったのかもしれませんね。最高でした。

>>07 風雨『Two Kinds』

 これまたダークサイドな感じで、いつもの風雨さんと違った雰囲気で楽しかったです。
 実は誘拐オチはわかってたんですが、まさか名前まで偽ってるとは思いませんでした。
 狂気、という言葉がこれほど似合う作品はそうないと思います。主人公やばい。面白かったです。

>>09 春夏冬『ヤミナベ』

 怖いです。恋愛って、いや確かに恋愛だけど! これも恋愛の形なのか……ホラーだ。
 最初から描写に徹していてとても纏まりがあるように思えました。最後もぞわっと来ますね。不気味です。
 この短さだからこそいい意味での気持ち悪さがありました。とても面白かったです。

>>10 修羅雪姫『魔法にかけられて』

 いいなあ、時間を戻ったけど結局自分に返ってきちゃうオチが最高でした。
 修羅場がいろいろと酷くて、だけどなんだか笑っちゃいました。主人公のキャラが最高です。
 浮気だってわかったままデートなんて大変ですよね。時間を戻した罰って感じかな。面白かったです。

>>11 宮塚『Give me your blood.』

 なんてハードな話なんだ。明仁さんが本当にかっこよくて、最後の展開は呆然としてしまいました。
 この一時間でヤクザとか杉山やらなんやらを考え付くその発想がまず驚きです。
 続きが読みたいなあと思いました。優子、権藤。彼女たちの結末が見たい。それほど魅力的な物語でした。

>>12 エシラ『グッドナイト・ゲームセンター』

 心残りなのは、お母さんのこと解決してないじゃんということ。主人公は篠原。





 今日も幸せでした。いい夢見れそうです。ご馳走様でした。お疲れ様です。
メンテ
Re: 第四回イベント板一時間小説祭【恋愛小説三番勝負2】 ( No.17 )
   
日時: 2012/08/22 03:12
名前: 宮塚◆tdu/XtyVrs ID:2fLK5LuY

 短めでも感想をば。


 >>01 かなちゃん王女『秋風のお便り』
 微笑ましいやり取り。恋はまだはじまってないのかもしれませんが、これは立派に恋ですよね。
 たったの一場面ですが、キャラの心情がうまく書けていたように思います。
 でも、一文一分が短くて読みにくかったのは内緒(笑)

 >>03 アリエス佐野『遠くなっていく』
 マヨネーズ吉田は不滅です。
 何度か町の危機を救ったってすごくないですか、ただのアホのヒーローじゃないんですね。
 ちょっとこれはマヨネーズ吉田の活躍が見たいです。悪者どもにマヨネーズをぶっかける吉田。普通に恋をする吉田。
 ただ、食べ物は大切にね。

 >>05 ホモ好き『箱庭の君』
 舞台がちょっとわかりづらかったかな。
 けどみなさんが言われる通り、幻想的な雰囲気はとても美味しくいただきました。
 待ち続ける女性ってなんかいいですよね。 

 >>06 If『黒い証』
 ファンタジー書かせたらストテラで右に出る者はいないですね、とか。
 キャラ造形が素晴らしかったです。長編ファンタジーのとある登場人物にスポットを当てた感じの短編だなあと思いました。
 この女性には幸せになって欲しい。

 >>07 風雨『Two Kinds』
 この犯罪者め!
 というのは置いておいて、風雨さんやっぱ掌編うまいですよね。もっと色々と読みたいです。
 誘拐犯と誘拐された幼女。世間から見たら、幼女を殺したのはこの誘拐犯、ということになってしまうのかな。でもその裏の事実はちょっと切なくて。
 そんな怖さに身震いしました。

 >>09 春夏冬『ヤミナベ』
 これはホラー。
 風雨さんのとは違う意味で背筋寒くなりますね。うう、寒い寒い。
 まあでもこのテーマは難しかったと思いますw お疲れ様でした。

 >>10 修羅雪姫『魔法にかけられて』
 過去かあ。戻りたい過去ってのは誰にでもあるんだろうけど。
 けど、愛理が選んだ戻る過去は決して輝くものではありませんでした。
 まごうことなき嫌な女です。

 >>11 自作『Give me your blood.』
 なんでこれを一時間で書こうとしたのか。少し前の自分に説教したいです。
 でもこの設定で長編か中編書くと面白そうだなー。

 >>12 エシラ『グッドナイト・ゲームセンター』
 これは、いい!
 今回の投稿作品で一番恋愛してて一番ほんわかする!
 文章もなかなかに手堅くて、読んでいて本当にニヤニヤしました( ̄∀ ̄)
 これぞ青春ですねえ( ´∀`)
 篠原がいいやつすぎるw お前、自分のカノジョもちゃんとつくれよ。
メンテ
スリーピーホロウはラブストーリーを語る ( No.18 )
   
日時: 2012/08/22 05:10
名前: 文旦 ID:Oxm00cWk

文旦さんは、「昼のキッチン」で登場人物が「迷う」、「眼鏡」という単語を使ったお話を考えて下さい。



 忙しい博文のため食材片手に奴の自宅にお邪魔するのはよくあることで、日曜日、久しぶりに映画でも誘おうかと考えながら築二十六年のアパートの鉄錆階段昇ってた。したらなんかわちゃわちゃ音がして、というのも総じてボロアパートの壁薄いから。博文の部屋は階段を昇って五歩行ったところでドアがあってどうもその奥で何か起きてるらしく、博文、なんて呼んだけど返事がなく。奴がいるとき鍵はいつも空いていて(部屋の主は何も盗られるものないから別にいいって、上京しても抜けない田舎の習慣引きずって)、私はドアを開け奴と対面しわあっと悲鳴あげた。それもそのはず奴の、永見博文と視認するに必要な顔というか頭部がまるごとなかったのだ。正しく付け加えれば首もろとも。画竜点睛というけど目以前に頭がなかったらそれは存在してないも同然だ。あとじさったところ博文どういう理屈でか声で私を認識したらしい。耳もないのにどうやって?←骨伝導?
 どしたのその頭、いや頭ないけど、どしたの何で頭無いの。博文答えない。答えようとしてるのかもしれなけど発声に要する声帯ないからわたわたしている。この状態では何を言っても無駄だろうと思い、ひとまず中に入った最早勝手知ったる恋人の家だ。八月も半ばであるがまだまだ熱気と湿気は地表に重く垂れあらゆるを蝕んでいく。廊下と一体化したキッチンのなかでも一番腹を突き出してる冷蔵庫にビニール袋で遊んでた色々を詰め、手持無沙汰な博文頭なしを背後に感じながらひとまずは麦茶をついだ、一人分。食道から直に流し入れるのにはどうにも抵抗感じたからだ。椅子なんてないからいつものようにベットに座って麦茶飲む。博文は頭ないけど私がいるのはわかるようで一緒に座ってそれを見ていた(?)。博文、ねえ頭どこにやったの。訊いてもしかたないけど訊いてみる。麦茶片手に結局は私も手持無沙汰なのだ。
 すぐ脇には扇風機があって、無意味にぬるい空気を掻き混ぜた名残を倦怠感と共に感じつつ私は眼前のちゃぶ台に眼鏡が置き去りにされてると気付いた。中学の頃から博文の相棒だったというに今やひとりさびしくフレームを抱えている。用無しのコップと決別し眼鏡を招いた私の指は慣れない感触のせいか取りこぼしかけ、レンズをひどく汚してしまった。視力だけはいい私は眼鏡と縁がなく、よくレンズを汚してはごめんねと言ってその辺の布やティッシュで拭こうとしては叱られてた。眼鏡は専用の布でないと傷むそうで、私は博文、レンズ汚しちゃったんだけどと言ってみたが博文は緩慢に肩をすくめるのみで。そもそもが頭、ないんだから眼鏡なんて必要なかった。眼鏡はさみしそう。
 私はそいつを持ったまま博文はそういえばどんな顔をしていたっけと思い描こうとしてみた。私はいつも眼鏡の奥の博文を見てた。十四歳からすっかり眼鏡くんだった博文と違い私は眼鏡と縁がない人生を送って、眼鏡単体を見るのはそういえばはじめてかもしれない。セックスのときも博文眼鏡外さなかった、あきらか邪魔っぽかったけどそうじゃなきゃほとんど見えないって。両目とも1.5の私には0.01の視界なんて想像すらできず大変そうだなあって思ってた。コンタクトは怖いから試したこともないらしい。つまりは私は眼鏡と一体化した博文以外を博文と認識しないのが当たり前であったので、眼鏡と離別した博文を描くは困難を極めた。どうしようね、あんたの顔が迷子だよ。博文は何も言わずっていうか言えず、私の腿に手を置いた。手さぐりしつつ。不安なときや調子が悪いとき身体のどこかを触る猫みたいな癖は全然変わってない。貧相な胸板に浮いた骨や内側で震える鼓動、もっと言えば元気な下半身もまごうことなく博文そのもの。博文、博文と呼んでもいつもの声は帰ってこない、わかっていても名前を呼び続けた、ある種の強迫観念で。きちんと認めなければ今度は本当に博文が消えてしまいそうで私は何度も博文と息を漏らした。博文、博文、ひろふみーぃ。いくら細くとも確かな男の力でもって博文は私を抱きしめ、そうすることで応えているみたいだった。
 余計に上がった体温はしかし気怠さの波に揺られて存外心地良く感ぜられ、私は博文の鎖骨の間に唇を寄せた。肌の下で肉がそぞめくのがわかる。博文、と呼べばやはり手さぐりで肩甲骨に触れられた。その間をゆっくり這われると背にぞくぞく快感が這い上がるのを博文もとうに知っていて、時にはやめてと言ってもやめてくれない。そんなところまで博文なのだ。博文はいつも眼鏡越しに私を見てた。本当の顔なんてお互い知らないのかもしれない。でもキスができないのは大きな問題だった。

(了)
メンテ
オレンジ・ラプソディー ( No.19 )
   
日時: 2012/08/22 21:04
名前: 優月◆FzpwtMZ0rM ID:Ogyqxk4E

 時間を超過した上に長いです。スルーされても構いません。そしてもはや恋愛じゃない。


 ぱらぱらと、分厚い本をめくり、深いため息をつく。
「……はあ」
 こういう動作を繰り返したこと四時間。元をたどれば、この状況を招いたのは唐突に言ったあいつの一言だった。
 ――あたし、明日誕生日なんだよね。
 何気なく言った一言だろうが、付き合い始めて二ヶ月、何一つ聞かされていない俺にとってそれは衝撃の事実だった。普段は俺の私生活やら家族構成やら友達のことなど根掘り葉掘り聞くのに、あいつはあまり俺に自分の事を話さない。俺が聞こうとしないせいでもあるが、それでも何か教えてもいいのではと、改めて思った。
 特に、誕生日は。
 あいつの好物がオレンジとかいうから、せっかくだからオレンジで何かケーキを作ろうとして本を開いた。が、それとともに不安が生じる。
 俺、本より重いもの持ったことないんだよな。フライパンなんて論外。だから初心者でも『超』簡単に作れるオレンジケーキを探しているんだが……。
「ない」
 ただ材料ぶち込んでオーブンで焼けばいいんだなとか思っていたが、まずオレンジのシロップ煮なるものを作らなくてはいけないらしく。
「……はあ」
 日付が変わって何度目か分からないため息が、口から漏れた。
「ええい、意地でも男の中の男を見せてやる」
 そう言うと、おもむろに携帯を取り出し、登録している二つの電話番号に電話をかけた。
 一つはここの館長、もう一人は、姉だ。

「……で、何この残骸」
 失敗してもいいように材料を余分に購入し、今から帰宅しても間に合いそうにないので、図書館にあるカフェコーナーの小さな厨房で本を見ながら作る。幸い、図書館は今日は休館日だったし、館長からも許可が下りたので早速作業に取りかかった。それに、近くに店もあるから失敗してもなんとか……なる。エプロンを着用し、見ながら作るんだから失敗しないだろと思いつつ、まずシロップ煮を作る。しかしそれがうまくいかず、何度も何度も焦がしては捨て、焦がしては捨て、の繰り返しで、気がつけばお天道様が俺に挨拶をしていた。そして現在、この凄まじいという一言だけでは表せないこの惨状を、図書館の厨房で格闘していると聞きつけ、馳せ参じた姉に見られたのである。
「何って……オレンジケーキ……の上に乗っけるシロップ煮だよ」
「ったく図書館で頑張ってレシピ本と格闘しながら朝ご飯作ってるって聞いて期待してきたのに……何、これが今日の朝ご飯?」
「んなわけねえだろ朝からこんなに糖分とるか普通」
 つーか朝ご飯作ってるなんて一言も言ってねえぞ俺は。
「何よ、可愛い弟の作る料理を美味しく食べようと思って朝ご飯食べずに来たのに……」
「じゃあ食いに行くか買いに行けよ」
 ぶつぶつ言いながら、四度目のシロップ煮を作る下準備に取り掛かる。お腹すいたんだけど、と文句を言いながら冷蔵庫を開け、持参していた麦茶が四分の一ほど入ったボトルを取り出し、それを一気に飲み干した姉が、俺の隣に並ぶと、突然うめき声をあげた。
「ちょっと何よ、この失敗作全部果実潰れてるじゃないの。ってあんたオレンジ支えるのに力入れすぎ」
「うるせえなあ。黙ってろよ」
「包丁も満足に使えないあんたに言われたくないわよ。貸しなさい」
 俺から強奪した包丁を握り、正面にあるもう一つのオレンジをまな板の上で器用に切り出す。輪切りにするだけだというのに、俺が切ったオレンジより、遥かに綺麗だ。
「さすが、慣れてるな」
「あたしが料理しないとあんた今頃骨壷の中よ」
 そう言ってるあいだに薄く輪切りにされたオレンジをまな板の上に綺麗に整列させ、鍋に調味料を入れだした。
「おい、煮詰めるのは俺がやるよ」
「シロップ煮もろくに作れないあんたに任せておいたらいつまで経っても朝ご飯にありつけないわよ」
「じゃあさっさと朝飯作ればいいじゃねえか」
「うるさいわねえ。あんたの朝ご飯この残骸でいいの?」
「誰も姉貴に頼んでねえだろ」
「誰もシロップ煮作るななんて言ってないでしょ」
 いつの間にオレンジを鍋に入れ、気がついたときには鍋の中で甘い香りを醸し出しながらオレンジは踊りだしていた。頃合だな、と姉が火を止め、バットに移して冷蔵庫に入れ、生地作りは自分でやれと俺に押し付けて近くの椅子に腰掛けた。
「ところでさあ」
 姉が机の上に、これも持参したクッキーをリスのように頬張りながら俺に話しかけてきた。
「何だよ」
「そのオレンジケーキ、誰かに渡すの? あんたが食べそうにもないし、あたしにもあげそうにもないし」
「渡すために作るに決まってるだろ」
「誰に渡すのさ?」
「……彼女」
 姉が珍しく真剣な表情で聞くから、少しためらいながらも、小さな声で答えた。それを聞いた姉が、うつむいたかと思うと、いきなりけらけらと馬鹿でかい声で笑い出した。
「な、何よそれ、こんな残骸乗せたケーキを彼女にわ、渡すとか、い、一発で嫌われるわよ」
 目に涙浮かべながら、姉は言う。
「仕方ねえだろ、本より重いもの持ったことねえんだから」
「わ、私だってマスカラとかリップより重いもの持ったことないわよ。あー、可笑しい」
「前から思ってたんだけど、さっきからけなしてばっかで初心者に言うか普通?」
「これでもなぐさめてやってるのよ。感謝しなさい」
 ……どう聞いたってなぐさめにもならねえよ。
 いつまで経っても笑いが止まらない姉を睨みながら、ボウルに材料を加えて混ぜる。そんな光景を、やっと笑いが止まった姉は物珍しそうな表情で見つめていた。気がつけば、時計の針はすでに十を指していた。彼女との待ち合わせの時間は二時。この調子なら何とか間に合いそうだ。型に生地を流し入れ、空気を抜いてオーブンへと向かう。
 ここで重大なことに気がついた。
「あ」
「どうしたのよ」
「……ラッピングの材料、買い忘れた」
「はあああ?!」
 蜜柑一個が丸々口の中に入りそうなくらいでかく口を開け、呆れた顔で俺を見た。あまりにも衝撃的すぎたせいか、床に姉がクッキーを落とし、その破片が点々と散らばっていた。
「あんたなんでプレゼントで二番目に大切なものを買い忘れてんのよ!」
「わ、忘れてたんだよ。プレゼントとか、初めてだし……」
「あー、もう」
 頭をぐしゃぐしゃと掻きむしり、立ち上がると、クッキーの隣に置いてあった車の鍵を握って俺に言った。
「今から買ってくるから、何かあったら連絡しなさいよ。買い忘れたやつ、他にない?」
 周りを見て、俺は首を横に振る。それを確認すると、じゃあ行ってくると一言残し、買い出しに向かった。姉が買い出しに出かけ、俺は冷蔵庫で待機しているシロップ煮の出来を思い出してつぶやいた。
「姉貴、あそこまで料理作れるのなら、彼氏の一人や二人いてもいいんだけどな」

 何とか生地を焼き終えて粗熱を取り、熱が冷めたシロップ煮を乗せようとしたちょうどその時、姉がレジ袋をぶら下げて帰ってきた。袋の中には、ラッピングの材料と、本日の朝飯らしきおにぎりと瓶に入った焼酎が入っていた。
「何だよその焼酎」
「あんたの祝初料理と初プレゼントを祝うために買ってきたのよ。感謝しなさい」
 ……ここでお祝いする気なのか?
 焼酎を『図書館の』冷蔵庫に入れ、これもあるのよと、真ん中の列の奥を指差す。そこには、刺身とツマがこれでもかというくらい入った大皿が鎮座していた。俺はため息をついて、シロップ煮を生地の上に乗せ始めた。
「それ、姉貴が一人食いたいがために買ったんだろ」
「げ、ばれた?」
「あんまり食っちゃ寝してると相撲取りになるぞ」
 ばつが悪い表情から怒った姉の表情を横目に見ながら、できるだけ見栄え良く乗せてゆく。螺旋状になってしまったが、何列に並べるよりか幾分かましだろう。アイシングもしたことで、シロップ煮の見栄えの良さがより引き出されている。
「お、できた?」
 買ってきたおにぎりを頬張りながら、姉がキッチンに向かう。冷蔵庫の中にある二本目の麦茶を開栓して一口飲んだ後、乱暴にラッピングの材料の包装紙を破って俺に差し出した。
「さあ、あんたの手の器用さと美的センスが問われるわよ」
 姉がリボン片手ににっこりと微笑んだ。

「……はあ」
 姉がため息をつく。
「あんたねえ、ラッピングくらいしたことあると思ったのに……。バイトとかでしたことないの?」
「俺、司書だし」
 当然ラッピングをやったことない。正直、リボンを結ぶだけで終わりという考えしか持っていなかった。そんなことを姉に言うと、頬をつねられた。そんなの、猿でもできる、と一言付け加えられて。結局姉の手を借りてラッピングをすると、俺がよく店で見かけるような出来に仕上がった。
「やっと出来たー……。うん、なかなかの出来じゃないの」
「さすが俺」
「何寝言言ってんの。あんたシロップ煮はおろか、ラッピングすらろくにできなかったじゃない。あーあ、せっかくの休みなのに、疲れたわ」
 確かにそうだ。姉の言葉を聞いてからどっと疲れがたまってくるのと、空腹感が俺を襲う。とりあえず姉の向かい側に座って、俺の分のおにぎりを口に入れた。一仕事したおかげで、いつもよりおにぎりが美味しく感じられる。おにぎりから目を離し、ふと姉を見ると、食べ足りないのか、片手にクッキーをつまんで満面の笑みを浮かべてこちらを見つめていた。
「何だよ、にやにやと気持ち悪い顔で俺の顔を見て」
「失礼な」
 こつんと、額をつつかれる。
「ただね」
「何だよ」
 俺から視線をそらし、間を置いて呟くように言った。
「あんたが彼氏だったらいいなって」
 瞬間、口に入れようとしたおにぎりを机の上に落とした。机に散乱した具が、今の俺の心の中を表していた。
「……は?」
「あんたみたいに料理もまともにできないしラッピングすらできないようなのを支えることができたらなっていうことよ」
「じゃあ支えてよ」
 冗談のつもりで言ったが、今度は姉がクッキーを喉につまらせた。むせる姉に慌てて麦茶を差し出して背を叩く。落ち着いた姉が俺を一目見るなり、乙女のように顔を赤らめた。
「馬鹿じゃないの? あんたには彼女が……」
「じゃあ別れたら支えてくれ」
「あんた、あたし達姉弟なのよ」
「知ってるさ。だけど……」
 姉の耳元で囁いた。
「誘ったのはあんただ」
 その冗談一言で一気に耳まで赤くした姉に殴られながら、あまりの可笑しさに笑い続けたせいで、約束の時間が迫ってくることすら忘れていた。

 ケーキ片手に、出来る限りのお洒落をして、あいつの元へと向かった。そして、あいつにケーキを渡し、あいつの家で一緒に誕生日を祝った。あのオレンジケーキは好評で、シロップ煮の甘さが絶妙だの生地がふわふわしているだの言われると、俺も嬉しかった。
 ――そういや。
 ラッピングの材料の買い忘れよりも大切な事を、俺は忘れていた。彼女の家を出て、真っ先に店に向かう。正直、買い忘れはないかと訊ねられた時は忘れていて本当によかったと、本当に思う。

 帰りは図書館ではなく、自宅へとまっすぐ帰った。買い物の付き添いに来たあいつも、姉に会いたいとか言っていたが、どうせ酒に酔ってるだろうから別の日にしてくれと言って断った。
 まあさっきの冗談の事もあるからな。
「ただいま」
「ん、おかえり」
 ひらひらと手を振る姉を見て、そしてテーブルを見た。俺のお祝いと称して買ってきた刺身が乗った皿と、残り半分以下になった焼酎の瓶と熱燗が、姉と共に俺の帰りを待っていた。机に突っ伏していた姉が起き上がり、俺に取り皿と醤油を差し出す。
「食べなよ。お腹すいたでしょ」
「いただきます」
「酒は熱燗がいい?」
「熱燗でいいよ」
 姉がお猪口に並々と注いだ熱燗を、一気に口に流し込む。ほどよい温度のおかけで、体が温まる。そんな俺を、姉は穏やかな目で見つめていた。
「そういえばさ」
「何?」
「今日、あんたの誕生日でもあっただろ?」
 刺身を取り分けようとした手がぴたりと止まる。
「何で言わなかったんだよ。忘れてたじゃないか」
「彼女のためにケーキ作ってんだから、邪魔しちゃいけないでしょ。空気を読んだのよ」
「メールでも何でも言えばいいじゃないか。ほら」
「別にいいでしょ姉の誕生日とか――って何よこれ」
「ケーキ買ってきてもらって何よこれはないだろ」
 あいつに送ったケーキのラッピングと互角の華やかさの中にあるのは、真っ白なケーキだった。これに合いそうな皿を一枚取り出し、移し替えてフォークと共に差し出した。冷やした紅茶はないかと、冷蔵庫をあさると、目が移った先に見つけた物をみて驚いた。それは早朝に作ったシロップ煮の残骸で、それを手に取り、紅茶ではなくその残骸を姉に見せると、姉は目を丸くして俺を見た。
「残骸と罵ったこのオレンジと一緒に食ってみろよ」
 姉は顔をしかめて言った。
「このケーキの風味を損ないそうだから嫌よ」
「食ってから言えよ。ほら」
 なぜかまだ捨てられずに皿に乗せられて冷蔵庫に入れてあったシロップ煮の残骸を姉に押し付け、再び熱燗に口をつけた。嫌々ながら姉が、もはや栗色のそれをいくつか取り出し、フォークで器用にケーキと共に口に入れた。数秒、咀嚼して飲み下すと、首をかしげて俺に向かって言った。
「にが、あま」
「どっちだよ」
 苦笑しながら姉に言うと、姉も笑いながらフォークを皿の上に乗せた。
「あたしに完全に甘いと断言させたかったら、あたしよりも遥かに美味いシロップ煮を作ってみなさい」
「勝ったら、何かあるのか?」
「あんたを物で釣られるような性格にした覚えはないけどねえ」
 と言いつつも、首をかしげたまま黙り込む。しばらくして、俺の顔をまっすぐ見つめて口を開いた。
「あんたの支えになってやるわよ」
 ……冗談で言ったつもりなんだけどな。そして、あまりにも真顔で言うものだから、俺は思わず吹き出した。
「何が可笑しいのよ」
 強く頭を叩かれ、頭を机にぶつけてしまった。その痛さは、本気で言っていたのだなということを示しているようだった。姉の顔を見ようにも、うつむかれているせいで表情はうかがえない。ただ、耳まで真っ赤にしているのが見えて、俺は口の端をつり上げた。
「じゃあ、いつかあんたを越えてやる」
 やれるもんならやってみなさいと、朱に染まった頬と耳を俺にさらけ出したまま、姉が言う。それが負け惜しみのように聞こえて、俺と姉は同時に笑い出した。


 優月さんは、「朝の図書館」で登場人物が「なぐさめる」、「オレンジ」という単語を使ったお話を考えて下さい。
メンテ

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