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[5] 善と悪の物語
   
日時: 2011/04/23 21:47
名前: 哀愁 ID:slZmpOYk

-----------------これは「ただの人間」の物語である。






>挨拶

初めまして、こんにちは。哀愁といいます。
新たなジャンルが増えており、やってみたいという軽い挑戦心でやってしまいました。
はい、おかげさまでこのストテラで書いてる小説がなんと6つになりました。キャー。
6つなんて全てを当然管理できるはずもありませんが、なるべく地面に這い蹲ってでも頑張りたいと思っております。
応援よろしくお願いいたします。
ちなみに、
この小説はわたくしのブログで作詞したものが元となっております。以上。





>目次

□第一章■
OP >>1
1.  >>2
2.  >>3
3.  >>4
4.  >>5

□第二章■
OP >>6
1.  >>7
2.  >>8
3.  >>9






>来場者





メンテ

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□第一章■ 4. ( No.5 )
   
日時: 2010/01/16 20:48
名前: 哀愁 ID:EBSVVJuw

「……ママ?」

 それは翌朝のことです。早速、姉が起きました。姉は目を擦りながら眠そうな瞳で母親を見ます。すると横には父親の姿もありました。普通ならば今の時間は父親は仕事に出かけて姉の目の前にはいるはずがないのです。姉は何かおかしいと感づきました。

「ママ、パパ、どうしたの?」

 彼女の母親や父親はただ沈黙にして何も答えようとはしません。その上、視線を彼女と合わせないようにしています。
 この空気の中、弟も目を覚ましました。弟は静かに姉の後ろへ立つと、今の現状を何も言わずにただ見つめておりました。

「……ごめんなさい、××。私たちはあなたの親失格ね……」

 視線を合わせぬまま、母親は呟きました。その言葉の意味を知るのはこのあとすぐのことでした。

「邪魔するぜ!」

 ボロボロの木製の扉を強く叩きながら開けて誰かが家に入ってきました。それは彼等にとっては誰も知らない男でした。髭を生やし、いかにもいかつい顔をした大男でした。

「……ほぉ、こいつか。じゃあこれが約束の金だ。」
「……すまない、××。」

 大男は姉と弟を見るなり、ズボンのポケットからジャラジャラと音がする袋を取り出し、父親に渡しました。父親はその袋をゆっくりと受け取るなり、小さく子供の名前を呟きました。その声はまるで後悔して、今にも涙がこぼれてしまいそうな弱気な声でした。

「よし。それじゃあガキ!こっちに来るんだ!!」
「い……いや!!パパ!?ママ!?」

 大男は姉の細腕を掴み、強制的に外へと連れ出そうとしました。ですが姉は状況を上手く理解したいないのに加え、必死にそれを拒みました。父親や母親に助けを求めますが、父も母も一向にその場から動きません。父親に関しては、先ほど大男から受け取った袋を強く強く握り締めています。

「うるせぇなぁ……何も伝えてねぇのかよ!」

 大男は嫌がる姉に対して、怒りを親に向けました。

「……伝える勇気がなかったのです…申し訳ありません……!」
「ったく……ちゃんとそういう大事なことは伝えておかなきゃ駄目だろうが……」

 必死に謝る母親をよそに、大男は姉に向かって言いました。


「いいか!?お前は俺に売られたんだよ!だから俺のために働くこと!いいな!?」


 ついにはその言葉を聞いて、母親は泣き始めました。それを父親は支えます。弟はその光景をじっと見ていました。姉は言葉にショックを受けて嫌がることさえも止まってしまいました。

「ほら、行くぞ!さっさと歩け!」

 大男がそう命令し、隣で静かに涙を流し仕方なく足を進める姉と、いつもと変わらぬ無表情で姉の隣にいる弟は外へと出て行きました。
 母親と父親は大男が家を出たなり、泣き喚きました。母親に関しては父親以上に泣き狂いました。
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□第二章■ OP ( No.6 )
   
日時: 2010/03/23 22:47
名前: 哀愁 ID:slZmpOYk

 大男は「彼等」を自分の仕事場へと連れて行きました。大男の仕事場は土埃や煙の多い工場でした。
 そしてその仕事場には「彼等」以外にも別の子供たちが働いていました。子供たちは皆、やつれて頬の扱けた子供たちが多く、明らかに元気な子達は一人もおりませんでした。

「お前たちはここで俺のために働いてもらう。」

 大男は「彼等」に言いました。ですが、姉はまだ知らない大男に連れて行かれ、尚且つ親に売られたことに対してショックで泣いていました。
 その反面、弟は当然のように、分かっていたかのように、真っ直ぐに何の変哲も無い表情で大男を見つめていたのでした。
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□第二章■ 1. ( No.7 )
   
日時: 2010/05/15 16:07
名前: 哀愁 ID:I/mzvvoc

 大男は彼等に部屋を与えました。
与えた、と言ってもそこには他の子供たちもいました。部屋、といってもただのコンクリートで囲まれ、檻のついてる部屋でした。
 大男は泣き叫ぶ姉を無理矢理部屋に押入れ、言いました。

「明日朝早くから早速働いてもらうからな。それまでに泣き止んでおかねぇとただじゃすまさねぇからな。」

 脅しをかけるように怖い形相をしたまま姉の顔に近付き、言いました。それが恐ろしく、さらに姉は泣きました。
そのとき、弟は何も言わず、ただただ、無を貫き通しておりました。
 大男がその部屋から去ったのを確認すると、姉は泣きながら弟に聞きました。

「……××、どうしてアナタは泣かないの?パパとママとお別れしちゃったのに……」

 弟は姉の顔も見ず、コンクリートの床を見て答えました。

「家が貧乏だったからこうなることはある程度予想はついてた。だから悲しくもないし、辛くもない。」
「でも……!」
「……パパとママのために売られたんだから、パパとママのために働けばいい。」

 弟の最後の言葉を聞いて姉は泣き止みました。
言葉に感化されたのもありましたが、なにより、弟がいつもより優しく言っている気がしたのです。

「……そうだね。頑張って働けばきっとパパとママのところに戻れるよね!だってパパとママのために働くんだもん!」

 先ほどまで泣いてた顔は笑顔で満ち溢れていました。
その表情を見て、弟は姉に聞かれない程度に、

「……戻れるわけないじゃん。」

と、小さく呟きました。
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□第二章■ 2. ( No.8 )
   
日時: 2010/09/01 11:05
名前: 哀愁 ID:S.V173xs

 次の日から姉は必死に働きました。
例え重労働であっても、例え休憩時間が数分しかなくても、例え大男に罵られ続けても、姉は必死に働きました。
それも全て彼女の父親と母親の為だと信じていたからです。
 ですが、弟は姉のようには頑張って働くことはしませんでした。姉のことを遠くから眺め、ゆっくりと作業し、なんともマイペースでありました。
そんな弟に姉はいつも元気付けていました。何故なら、両親と離れて元気が無くなったからだと思っていたからです。

「××、大丈夫。頑張って働こう。そうしたらきっと家に帰れるから!ね!」

元気に励ます姉に対して、弟は常に「うん」や、「そうだね」としか言い返しませんでした。
それもそのはず、弟が元気が無いのは両親と離れたからではなかったからです。
勿論、そのことを姉は知りません。


 そうやって励ましていると、今日もまた一枚のパンが運ばれてきました。
大男は「さっさと食って働け」と言ってすぐにその場から離れていきました。
一枚の食パン、これが一日分の食料でした。

「……お腹すいた。」

弟は呟きました。
そんな弟に姉は微笑んで、

「そんなこと、言っちゃだめ。」

と小さく反論しました。
そして姉はそのパンを半分にして弟に渡しました。

「これが××の分ね。」
「これじゃ足りない。お腹すいた。」

弟は姉がパンを渡そうとした瞬間、そう本音を言いました。
姉は弟の言葉に少し悩み、自分の分を全て差し出して、

「じゃあ私のあげる。」

と笑顔で言いました。
弟はその笑顔を見る間も無く、瞬時にそのパンを受け取って口に詰め込みました。
躊躇いなど、弟にはありませんでした。
弟がパンを口に詰め込む様を見て姉は笑顔になりました。
力があるようで、無いような笑顔になりました。
その表情を見て弟はいつもどおり呟きます。

「馬鹿みたい。」
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□第二章■ 3. ( No.9 )
   
日時: 2011/04/23 21:47
名前: 哀愁 ID:slZmpOYk

 それは毎日でした。
過酷とも呼べる重労働も、大男から罵られることも、食事が一枚の食パンということも。
そして、そのことに対して弟が不満を言い、姉がそのために尽くすことも。
毎日毎日、同じことの繰り返しでした。

「……食べないの?」

 弟はある日姉に聞きました。
これまでは弟が食事の量に文句を言うたびに姉が笑顔で全てを与え、それを遠慮なく食べていたものを、ある日弟が突然姉に向かって聞き返したのです。
 ですが、姉はその質問に対しても笑顔で答えます。
その笑顔は前よりも痩せこけた笑顔でした。

「私はいいわ。××もおなかがすいているんでしょう?」

そう姉は言います。
ですが、弟は食パンに手をつけませんでした。
その代わりしばらくして弟は頷きました。

「おなかすいた。でも、おなかすいてるでしょ?」

さらなる質問に、姉は笑顔のままで答えます。

「遠慮することはないわ。私はあなたが笑顔になってくれさえすればいいの。」

弟はおなかを鳴らして、しばらくしていつもと同じように一枚すべてを口の中へ押し込みました。
ですが、おなかの音は鳴りやみません。
弟はその理由を知っていました。
だけども、その理由を姉へとは教えようという気はさらさらありませんでした。
言ってしまったあとのことも弟は分かっていたのです。
なので弟はただ寡黙の少年のように、一言も喋らずに姉の傍にいたのです。
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