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[22] 短編集
   
日時: 2013/02/24 11:40
名前: ちくわ ID:01hZ0mII

二次創作では原作者の意思を尊重してください。
メンテ

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おひっこし ( No.1 )
   
日時: 2013/03/01 16:11
名前: ちくわ ID:kqtqlvyA

1

「なんと天気のいい日には……じゃじゃーん! 富士山が見えます!」

 無言のわたし。
 つられて無言の不動産。

「……まあ、今日はちょっと見えませんけどね」
「見えないですね」

 ちょこちょこと不動産のあとについてまわりながら階段をのぼる。
 五階立てのビルの五階。かどっこ。さっき紹介してもらったブースに仕事場を決めよう、と思った。
 富士山は見えても見えなくてもいいけど。

「屋上でときどきバーベキューしてるらしいですよ」
「(うわめんどくせえ)」
「参加はしてもしなくてもいいみたいですよ」

 わたしの表情に不動産は一言、つけくわえる。
 あ、そうなんですかーと適当に笑う。よかった。

 ギュッ ギュッ ギュッ

 一通りビルの中を見学し、最後に不動産がキラキラした顔で、「なぜ東京に?」とわたしを見た。「以前住んでいたので」と答えると、「あ、そうっすか」とテンションが落ちた。
 そして入居時期やいろいろのことを不動産と話しながら、下を通る車道を眺め、一年前、実家に戻ったときのことを思い出していた。

 ギュッ ギュッ ギュッ

 後ろを振り返る。

「さっきから何してんの、花ちゃん」

 花ちゃんはわたしの顔を見て、いや、雪が積もってるの久しぶりに見たから、と答える。
 花ちゃんはわたしの小中の同級生で、すっごい仲がいいわけでもないけれど、嫌いでもない、本当にただの同級生だ。
 その花ちゃんとわたしが一緒のホテルに泊まって東京にいる。
 不動産が、東京でも久しぶりにこれだけ積もって、なんて話していたけれど、だんだん、耳の奥で車や電車の音が強くなっていって、プツン、と消えた。


2

 五ヶ月前、わたしは健二くんと向き合っていた。
 東京に戻ろうと思うの、と言うと、健二くんは、あ、そうかと言って、麺をくるくるとフォークに巻き付けていた。
 意外と淡泊なもんだな、と思っていたけれど、それから健二くんは無言で食べ終わって、近くを通った店員さんに煙草が吸える場所を聞いていた。
 あ、やっぱいつもと違うな。そうだよな。って思った。
 煙草を吸いに行った健二くんは、それからいつも通りに喋って、いつも通りに別れて、いつも通りに仕事の準備をしていたんだ、と思う。
 けれど、夜に「俺たちどうなんの?」とメールが来た。

 流に身を任せる。
 まあそう思ってたけれど一応、相手の意見を聞いてみようと思った。
 返事は返ってこなかった。

3

「いいね、ここ。自由業っていいなー。あたしも仕事行きたくない」

 ここでわたしは仕事をするんですけど、と口に出かかってやめた。
 花ちゃんとわたしはそこまでの仲じゃない。
 そこまでの仲じゃないけれど、一緒にホテルに泊まってる。

 数ヶ月前、健二と一緒に東京旅行もかねて仕事場を探そうと思った。
 それがポシャって、健二の代わりに地元にいる幼なじみの麻衣ちゃんを誘った。
 麻衣ちゃんも
メンテ

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