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[16] カバラゥラゲ
   
日時: 2011/04/02 02:08
名前: ss ID:e/0sSglM

カバラゥラゲっていうのは目玉だらけの怪物のことです。

っと森本君が地面にピストルの弾丸でも撃ちつけるように尖って呟く。

なにが森本君をそこまで尖らせたのか。鉛筆削りのような人物にでもバカにされて尖りに尖ったのだろうか。

「その目玉だらけの怪物は人を食べるのかい?」

「いや。草食です。」

森本君は今度は羽毛布団でボクを包み込むような優しい声色に変わっていた。

声に色もクソもあったもんじゃないが、そういう言葉があるんだ。ここは使わせてもらうよ。

「じゃあ。佐々木さんが死んだのはその…なんだっけ?」

「カバラゥラゲ。カバラクラゲと覚えれば覚えやすいですよ」

「あぁ。それはどうでもいいけどさ。そのカバラゥラゲに殺されたってことじゃないんだろうね」

ボクはたまに森本君と話しているとバカにされてるのかと思うときがある。

セックスをまだ経験したことがない学生が「童貞童貞」と囃し立てられた時の様な。

何故だか知らないが恥ずかしさと苛立ちがこみ上げてくるような。そうそんな感じのだ。

森本君は大して頭が良いってわけでもない。所詮は二流大学出の生意気なクソガキだ。

けどなぜか私は彼よりも劣等だと感じることが多い。私は一流大学出なのに。

一流大学出なのに。 お金はないがね。

「断定はできませんよ」

森本君が私の顔の前にヤリが横切るが如く鋭く開口した。

「カバラゥラゲは空腹になりすぎると、仕方なく肉を食い漁ると聞きます」

「はは。ウソつけ」

「ウソじゃないですよ。片岡さんにはウソと聞こえたかもしれませんが。ウソじゃないんです。」

「じゃあさ。佐々木さんはその得体も知れない化け物に食われたってことかい?」

「カバラゥラゲです。カバラクラゲで覚えると―…」

「分かった分かった。カバラゥラゲに食われたのかい?」

「私がですか?」

「違うよ。佐々木さんがだよ」

「あぁ。まぁ一概にそうとは言えませんが。その可能性がゼロっということはないでしょうね」

面倒くさい奴だ。節々にキラリと光るようなコミックスの悪役ご用達の台詞回しが余計にそう思わせる。

にしてもカバラゥラゲとは一体なんだ。覚え方ばかり推してくるコイツは一体なんだ。

「片岡さん。そろそろ移動ですね」

「え?あぁ。そうだな。支度をするよ」

「はい。佐々木さんの件は警察に任せましょうよ」

森本君は一瞬間ニヤリと不気味に笑った。私の親父は酒が入ると時折ニヤリと不気味に笑うときがある。

それを思い出しネクタイを締める手が震えた。

佐々木さんの遺体は頭がなかったそうだ。 先輩の福岡さんの言葉を思い出し目頭が熱くなった。

上瞼が根こそぎ焼き払われたような。とめどなく流れ出る生暖かい、私の意思に従わなかった液体。

森本君が「泣いてるのですか?」と嘲笑しながら言うまで私は永遠にネクタイを締め終わることはなかっただろう。

その夜、森本君は死んだ。
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Re: カバラゥラゲ ( No.1 )
   
日時: 2011/04/02 02:24
名前: ss ID:e/0sSglM

電話があったから出る。

相手は城山君だった。

城山君はずいぶん慌てた様子で森本君が死んでいた旨を話してくれた。あららとしか私は言わなかったんだよね。

あららら。そっか。ふんふん。分かった。それじゃ。また明日。

さっきまでドヤ顔で前髪をきにしながら話していた男性が夜になっていなくなって。

ただただ意味が分からず。ただただ可笑しかった。不思議と涙は出なかった。

遺体は佐々木さんと同様頭がなかったようだ。あぁ。城山君が「佐々木さんと同じように」って言ったときは少し涙ぐんだよ。

あの発音しづらい化け物がやったのだろうか。 そいつにいつかは皆殺されるのだろうか。

「グググゴゲゲ。オレニンゲン、クウ」

多分こんなことでも言ってフラフラしてるんじゃないだろうか。

上手く言いくるめてマイルドセブンを買いに行ってくれないだろうか。

私が今頭を抱えてる課題を何なくこなしてくれるんじゃないだろうか。

チャイムが鳴り響いた。

ドアを開けると、福岡さんが立っていた。

「いきなり来て、ごめんね。片岡くんは大丈夫みたいだね」

「死んでたほうが明日はオレンジ色でしたか?」

「まさか。生きてて良かったよ。それで森本君のこと聞いた?」

一瞬迷ったが、聞いてないっというどうでもいいウソをついた。

福岡さんが事細やかに詳細を明かしてくれた。私はすべて知っているのに初めて聞くかのようなそぶりをしてその内段々疼いた。

知人が死んだのに、私は一つ上の女性と一夜をともにするような余裕のある一流大学出の男だ。

お金はないがね。
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Re: カバラゥラゲ ( No.2 )
   
日時: 2011/04/02 10:53
名前: ss ID:hrL9Xhwc

通勤のバスに乗っているとなにやら訝しげな表情で外を見つめる白髪の青年がいた。

白髪といっても美容の専門学校にでもいって粋がって染めたような腐ったミカンのような感じは受けなかった。

なんだかそれが「地毛なんです。生まれたときからコレなんです。」と無機質な表情で言われても

「へぇ。」と答えてしまいそうなぐらいだった。

けれどやはり白髪なんていうのは珍しいもので、バス内にいる人々は絶えず彼を指差し、彼を横目で見やりうわさをしていたようだった。

私は目的の場所にバスがいつも通りに止まると、いつも通りにバスを降り会社へと足を運んだ。

課題というのはある商品のキャッチフレーズのことだ。本当にそういうセンスしかない人間に今はなっていたい。

ふいに意味もなく後ろを見ると、白髪の彼が私とは違う方向に向かっていた。

「同じところで降りたのか。」と呟いた。それを聞き逃さなかった城山君が「何がです?」と尋ねてきた。

あまりにも不意を突かれたものだったから思わず「うわぁ」っと素っ頓狂な声をあげてしまい赤面した。

そのあと城山君の肩に軽く握りこぶしをぶつけると城山君は「すいません」と頭を下げた。

会社に着くまでは絶えず森本君の話をした。

カバラゥラゲの話は城山君も知っていたらしく、私が「カバラゥラゲ」とひねり出した瞬間「その可能性は大きいですね。」と返事をよこした。

「カバラゥラゲがなんなのかはまだハッキリしませんが。可笑しいですよ。どうも。頭がきれいに無くなってるなんて。」

今日の彼のネクタイはオシャレだなぁ等と思いながら彼の熱弁を聞き流した。

私は別にその得体もしれない化け物についてああだこうだと熱く語るつもりはなかった。

ただその化け物が森本君の想像上の化け物なんじゃないの?的な事を冗談めかして言うつもりだった。

今それを城山君に言うことは、耳を思いっきりハリセンでしばかれて鼓膜が破れるような衝撃を生むだろう。

ここまで熱く語っている途中に急に冷水という冷水を頭からぶっかけるような真似は私には到底できない。

私はそれに少しづつ冷水をかけていって運がよければ鎮火しろっといったことぐらいしかできない。

運が悪かったため会社のロビーに着いても彼の熱弁は収まらなかった。

掃除機に付いてるような、コードがシュルシュルとしまい込まれるボタンがほしかった。

得体の知れない化け物のクソどうでもいい話をシュルシュルと一刻も早くしまいこんでしまいたかった。

それは叶わなかったがね。
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Re: カバラゥラゲ ( No.3 )
   
日時: 2011/04/03 21:16
名前: ss ID:JdmSY2G6


福岡さんが死んだ。

頭がなかった。

全く。どうなってるのだ。

次は私か? はは。やってみろ。

金属バットで殴って、目玉を一つづつ潰して、その死体の上で優雅に紅茶でも飲んでやろうか。

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