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[1900] 追放【短編集】
日時: 2013/01/06 03:55
名前: 日向◆jKZfYQtnM. ID:qO3cmF..


おわり


     【モクジ】


>>2  1201号室
>>7  猫の呪い
>>11 走る男
>>14 歩道橋の上
>>15 こっくりさん
>>16 そこには……
>>17 雪の山小屋
>>18 お人形さん
>>22 三本脚のリカちゃん
>>30 もういいよーっ
>>33 真夜中のプール
>>36 髪の毛
>>40 愛する人の殺し方
>>41 開けてはいけない、井戸
>>44 足、いりませんか?
>>52 花子
>>47 齧られた林檎@
>>54 齧られた林檎A
>>55 幸せメリー
>>57 山びこ

    【来て下さった方たち】

美菜美様・かな様・ネッシー様・卯月様・鏡花様・麒麟様
メンテ

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Re: 追放【短編集】 ( No.54 )
日時: 2009/10/31 15:49
名前: 日向◆jKZfYQtnM.

  齧られた林檎【中編】

 ―― 2 ――


 私には幼い頃に亡くなった双子の妹がいたらしい。そういう話はよく聞くし、私自身その子のことを何一つ覚えていなかったので意識していないが、両親はその子の分まで私を愛そうと躍起になっているようだ。私とその子は全く違う人間で、私を精一杯可愛がったところで何も変わりはしないのに。妹のことは名前すら教えてもらっていない。罪滅ぼしだなんて馬鹿らしい。昔そう両親に告げたことがあったが、父に「お前に言われる筋合いはない」と生まれて初めて怒鳴られたことしか覚えていない。母はそのときまた泣いていたと思う。

「あら薫子ちゃん。おかえり。今日は薫子ちゃんの大好きなチーズハンバーグよ。恵介叔父さんが東京からチーズ送ってきてくれたのよ」
「おかえり薫子。早く手洗ってきて食べよう」

 台所に直結している裏口から入ると、肉の焼ける良い匂いがした。母は未だ眼の赤いままだったが、結構落ち着いているように見えた。父は母の肩に手をかけ笑っていたが、余所余所しさは消えずそこに漂っていた。
 いつからこんなに冷え切った家庭になってしまったのだろう。私が幼い時は、幸せだった? 分からない。思い出せない。絡まった記憶をゆっくりと解いていくのに、ぽっかりと幼い頃の以前の思い出が抜け落ちてしまっていた。散り散りになった映像がコマ送りのように脳内を流れていく。「あーかいりんごは、ちのいろりんごー。ゆきどけみずにーさらわれてー」この声は。
 「どうした薫子?」父の声が右から左へするりと抜けていった。

「ねえ何で桜子のこと教えてくれないの?」

 そう呟いた途端、母の息を呑む音とともにフライ返しが床に落ちた。

「……薫子?」
「ねえ、どうしてよ」
「すべて思い出したの……?」
「思いだしてないから教えてほしいの。なんで桜子は死んだの、なんで母さんたちは私に怯えるの、なんでこの村から出ていかないの。私、今日桜子にあったんだから。歌ってた。林檎の歌を。ねえ教えてよ、早く、早く、早く!」

 母に詰め寄り叫ぶと、両親とも血の気の引いた真っ青な顔をしていた。自分が自分ではないようだった。もうひとりの自分が私を操っているように感じた。桜子に会っただなんて、分かるはずないのに。昔にもこんな感覚を味わった気がする。ずうっと昔。記憶が消えてしまうくらい。叫び声と大きな何かが水に落ちる音が頭の中でガンガンと響く。ぐらぐら、守られていたものが壊れていくようだった。



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メンテ
Re: 追放【短編集】 ( No.55 )
日時: 2011/05/21 08:17
名前: 日向◆jKZfYQtnM. ID:jB5r4s..

 幸せメリー


 幸せメリー。幸せメリーにメールを送ると、一生幸せでいられるらしい。彼女の早苗から教えてもらった話だ。彼女も親しい友人からこっそりと教えてもらった話で、実際にそういう出来事が起こるかわからない。ただの噂話だろうが、信じたってなにも減らないし、俺は早速その幸せメリーとやらにメールを送ってみることにした。

「happy.meri-@aaaっと。送信」

 送信ボタンを押すと、送信中のアイコンがつきパーセンテージがぐんぐんと上がっていき、画面には送信しましたという六文字だけ。噂話だと思っていただけに届くとは予想していなかった。早苗に教えたらきっと喜ぶぞ。「祐樹ったらすごいね」とか大袈裟に驚くんだ。彼女の表情を思い浮かべると笑みがこぼれた。と、携帯からメールを受信したメロディが流れ始め、開く。幸せ、メリーだ。『今から行くね。待っててね』絵文字ひとつない簡素な文がそこに綴られている。今から行く? やはり誰かのイタズラだったのだろう。早苗に自慢しなくてよかった。と、またメロディ。
 「はいはい。ったく誰だよ」受信ボックスを開くと、また幸せメリーからのメール。本当にこいつ暇人だな。ニートかよ。軽く抱いた嫌悪感を消すように、その文を口に出して読む。

「今、あなたの街に、来たよ。ちょっと電車に轢かれちゃったけど、大丈夫……。すぐ、行くよ」

 電車に轢かれて無事なわけない。きっと相手は液晶越しに震えてる俺を想像して笑ってるんだろうが、そんな容易く引っかかる奴なんていない。ユーモアセンスがないにもほどがある。嘲笑を浮かべ、リモコンを拾いテレビの電源をつけた。ぷつんという独特な音がして、ニュースキャスターの声が耳に滑り込む。民放のニュース番組だ。「たった今入ってきたニュースです。○○県○○市の東線湊駅四時三十二分発車の快速が、中央―港駅間で三十四分、何かに接触し、脱線しました。先頭の二車両が側面に衝突するという大事故ですが、奇跡的に死者ゼロでした。また、負傷した一五八名は――警察は線路に物を置くなどの愉快犯の犯行と見ており、テロの可能性も含め、不審者がいなかったかどうか捜査を――」

「――せ、しょく?」

 ○○市の湊駅といえば家から一番近い駅だ。そこで幸せメリーからのメールを思い出す。電車に轢かれちゃったけど――。いや、きっとそのニュースを見た奴がイタズラでやってるんだ。そうに違いない。かなりの矛盾点から眼をそらし、そう思いこもうとした瞬間、俺の心を見抜いたように携帯が鳴る。予想通りの、アイツ。『今あなたの家の前にいるよ』

「……は?」

 窓から外をのぞくが誰も居ない。また鳴るメロディ。大好きな歌手の最新曲なのに、何故か呪いのメロディに感じられる。震える手でメールを開くと『今あなたの部屋の前にいるよ』と綴られている。それと同時に強い寒気とメールが送られてきた。身体が、動かない。ディスプレイには『今、あなたの後ろにいるよ』と一文。

「……嘘、だろ?」
「       」


+++++++++++++++++++++++++++++++++++

 昔書いて削除した幸せメリーさんをリメイクしてみた。
 ちょっと見にくくなったかも^^;
メンテ
Re: 追放【短編集】 ( No.56 )
日時: 2011/05/21 08:37
名前: 日向◆jKZfYQtnM. ID:jB5r4s..

  いつだって、一緒


 彼女と私は、互いを言葉じゃ表せないほど信頼し合っていたし、彼女がもしいなくなったら、私も死んでしまうんじゃないかと思うくらい、慕いあっていた。いつも一緒よ、なんて笑いながら話したりして。「もし私が死んだら、優香ちゃんどうする?」彼女が時折そう尋ねたりしてきたので、私はこれ以上ないというくらいの満面の笑みで「いつも一緒って言ったでしょ? 私は離れないよ」と返していた。そうすると彼女は安心した顔をして、私の手を握った掌にきゅっと力をこめたのだった。私は年頃の女の子であれば、誰だってそんな約束すると思っていたし、結婚しても、お婆ちゃんになっても親しい仲でいられると思っていた。所謂、世間知らず。
 そんな日々を変わらず送っていた、中学二年の冬。私は学年で一番スポーツが出来るという高井くんに告白されたのだ。勿論、交際とかには憧れをもっていたし、今だから暴露するけれど、私は高井くんのことが前から好きだったのだ。彼女に相談しようかと思ったことも何度かあったけれど、この想いだけはどうしても自分の胸の中だけに留めておきたかった。「私も、高井くんのこと好きだよ」そう告げようと開いた口は彼女の怒り狂った顔によって思わず塞いでしまった。

「高井くん、優香ちゃんに手を出さないで! 優香ちゃんと私はずっと一緒だって約束したんだから! 優香ちゃんと私を引き離そうとするなら、本気で怒るよ! 早く優香ちゃんから離れて! 離れて! このっ!」

 ヒステリックに叫ぶ彼女を見て、高井くんは酷く怯えた顔をして身を震わせた。いつも温厚な彼女の面影がないほど、その表情は怒りに満ちていた。まるでお寺とかにある怖い顔の仏像。いや、あれよりも憤怒を浮き出させていたと思う。周りの机や椅子を蹴り倒し暴れる彼女に「違う、違うんだよ!」と、宥めようと近付いた私を彼女は刺すような視線で睨んだ。

「何が違うの。私と一緒って言ったよね」
「い、一緒だよ。それと高井くんは関係ないよ、ねえ」
「こいつは私たちの仲を引き裂こうとしてるの! 私から優香ちゃんを奪おうとしてる! 悪魔だ離れろ悪魔! 優香ちゃんに近付くな!」

 あまりの剣幕に高井くんは顔を真っ青にしているし、私も怖くて涙が止まらなかった。このままだったら私も高井くんも殺されてしまう。本能が激しくそう伝えていた。高井くんもそう悟ったのか、悲鳴を上げ、教室から転げるように走り去っていった。残されたのは、私と彼女。もう駄目だと思った瞬間、般若の様な顔から一変、彼女がいつもの温和な笑顔を浮かべ「優香ちゃん、そんな怖い顔してどうしたの?」なんて今までのことが嘘だったように話しかけてくるから、混乱して頭の中がぐちゃぐちゃになった気分だった。反論しようかとも思ったのだが、また突如彼女が怒りだしたらと思うと口には出せなかった。私はその日のことをなかったことにした。
 それから数日、彼女はいつも通りだったが、周りの反応はからりと変わってしまった。多分、高井くんがあの日のことを喋ってしまったのだと思う。私はあの後から高井くんと接する機会はなくなったし、高井くんも私を避けているようだった。最初は、どうせ短い間のことだし、私であってもあんなことがあったら同じことをしてしまうだろうからと軽く見ていたが、次第にこの状況を生み出した彼女に怒りを持ち始めてしまった。よく考えてみれば、私は避けられるようなことなど一度もしていないし、悪いのは全部彼女なのだ。なぜ私がこんな肩身の狭い思いをして暮らさなければいけないのかと。妹からも彼女と離れることを勧められ、私はすっかり彼女のことを嫌いになっていたのだ。

「優香ちゃん、優香ちゃん。どうしたの? 私何か悪いことした?」

 彼女を避け始めてから二日目。やっと私の異変に気付いたようで、彼女は眉を八の字に垂らし、悲しそうに尋ねてきた。いつもならその時点で許しているのだけど、今日の私は違った。彼女をきつく睨みつけ、いなくなっちゃえばいいのにと呟いた。その日から彼女は学校に来なくなった。
 私の所為ではないと言い聞かせていたけれど、次第に罪悪感は大きくなっていった。どちらかというと、人懐っこい性格であったから、学校で話す友達はいるのだが、私は今まで彼女にべったりだった。いつも一緒だった。数学の問題が分からないとき。体育で二人組を作るとき。昼休み。移動教室。必ず彼女を探してしまう私がいた。元はと言えば、私が言いだしたことではないか。一緒にいるって。いつも優しくて、困ったときには必ず手を貸してくれる彼女に、私は自分の保身だけのために、なんてことを言ったのだろう。
 クラスメイトもさすがに自分たちのイジメのせいで不登校者がでるのはまずいと思ったのか、私にしきりに彼女を何とか学校に来させてくれないかと頼んできた。




「ああ、優香ちゃん」

 あの若くて綺麗だった彼女の母も、かなり憔悴した顔立ちで眼の下は真黒だ。いつも玄関には趣味だという生け花が飾ってあったが、今日は生け花どころか、物が散らばっている。

「ごめんなさいね。片づけに手が回らなくて」
「法子ちゃんは……」
「部屋に籠りきりなの。声をかけても返事がないし、ご飯も食べてくれなくて。成績だって良いままだし、前日まで学校楽しいって言ってたのに、なんでこんなことに……」



 すみません、イチホ
メンテ
追放【短編集】 ( No.57 )
日時: 2010/12/15 02:17
名前: 日向◆jKZfYQtnM. ID:tSThiDVs


  山びこ

 僕はむしゃくしゃするたび、家の裏の山から、向かいの山に目がけて叫ぶ癖があった。有難いことに我が家は世間的に言う田舎にあったし、周りも子供が成人して独り立ちしてしまった老夫婦ばかりだったから、文句を言うものは誰もいなかった。まずこの癖に気付いているかどうかすら不明だ。大体は些細なことであった。「テストなくなれー」だとか「学校面倒くせー」だとか他愛もないもの。そうしたら、山びこは僕より少し低めの声で繰り返す。ぼあんぼあんとそれは跳ねながら、僕のもとにたどり着いた。「君は嫌われてなんかないよ、聡一」ぼあんぼあん。「君は嫌われてなんかないよ、聡一」跳ねかえる。
 ある日、僕は片思いの女の子が本当は僕のことを嫌っていて、影で酷く悪口を言っていることを親友から聞いてしまった。見ない方がいいよ、と顔を歪めた友人の手に握られていたキャラものの手紙を奪うようにして拝借すると、それはもう、酷いものだった。僕は逃げ去るようにその場を離れた。
 内臓に溜まったドロドロが摂氏百度を超え、煮えたぎっている感覚がした。僕は震える足で山を駆けのぼり、大きく息を吸う。憎しみがすべて吐き出てしまうように山に向かって腹の底から叫んだ。

「あーしねしねみんな死ね!」
「ならさっさとおまえが死ね」

 それは跳ねかえるときの独特のリバーブ音もなく、まるで耳のそばで呟かれたようであった。転げ落ちるようにして僕は家に逃げ帰った。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++

聞いた話。
メンテ
Re: 追放【短編集】 ( No.58 )
日時: 2011/05/21 07:59
名前: 日向◆VXgvBvozh2 ID:jB5r4s..


  赤い目


 この度、志望していた私立大学に見事受かり、わたしは東京へと越してきた。生まれも育ちも都会とは無縁の田舎であったため、小さなころから上京に憧れており、また、中学に入ったあたりから性格の似た母親との折り合いが悪くなり、望んでいた一人暮しであった。無理を言っての受験、ましてや私立大学ということで、親にはかなり負担をかけている。専業主婦だった母がわたしのためにパートを始めたのも知っている。そのため、アパートは出来るだけ安いところを探そうと思っていたのだ。

 そのアパートは築四十年近く経っているにしては、小ざっぱりとしたいい雰囲気の持てる物件であった。二階建てで、駅から徒歩五分。
 「ここが唯一今空いてる部屋ですね」不動産屋が扉を引くと、すこしばかり軋んだ音がした。しかし、中はきちんと掃除もしてあり、学生がひとり住むには十分と言える広さで思わず感嘆の声が漏れる。「いいですね」トイレや風呂も勿論ついており、クーラーや冷蔵庫などの基礎電気機器もついているらしい。
「でも高いんでしょ? 駅にも近いし」
 こんな良物件が安いはずがない。わたしが怪しげに見やったからだろうか、彼は乾いた笑い声を洩らした。
「ええ、管理も行き届いてますし、普通だったら池田さんが提示なされた額よりお高くなってしまうのですが、昨年お隣にマンションが出来たせいで日当たりが悪くなったため、安くさせていただいているんですよ。また二階ですが、すぐ横に木が立っているため、下着泥棒を気にする方は嫌がられまして……」
 窓から外を見ると確かに隣に大きなマンションが建っているため、日当たりがよいとは言えないが、そこまで値下げするレベルではない気がしたが、都会の人間はかなり選りすぐりするのだな、と妙に納得した。
「お幾らなんですか?」






「大丈夫なん? そんな安いとこ。あんまり安いのはオススメせんね。裏があるかもしれん」
「大丈夫やってー。住人の人にも今日挨拶してきたけど、皆若い人ばっかやったし、変な人なんておらんかったよ。それに、心霊系だったとしてもわたし霊感ないし。大丈夫大丈夫」
「そういう問題やないんやて。お母さんは止めたがいいと思うけどなー。あ、今月の仕送り明日振り込んどくけん、チェックしといてね」
「オーケー」


イチホ
メンテ

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