最初の幕その三 ( No.3 )
日時: 2013/06/24 11:27
名前: すらむ〈SRM〉 ID:049eQt4.

保健室にたどり着き、保健室のドアをノックするが返答はない。
先生はいないのかと思いつつドアを開けるとベットのカーテンが2つかかっていて、奥のベットからL乃が出てきた。

「大丈夫か?」
「…うん、だいぶ落ち着いた…。」

…のようには見えないが。
だいぶ顔色悪いけど、これがいつものL乃。
すると手前のベットから出てきたのは7組の『活動』メンバーのX理だった。
X理は根暗、陰湿な男子。いかにも文化系という感じの奴。眼鏡に度が入っていないのか、いつも睨みつけるように見ている。
…眼鏡買え変えろよな…ったく。

「X理も居たのか。昼休み、旧校舎だから一緒に行くか?」
「……行く。」

初夏なのに上着を羽織っているX理に俺は暑くないのかと思いつつも旧校舎の体育館へと向かう。
先生に見つからないように旧校舎へと向かうとすでにほぼ全員が体育館にそろっていた。
二人いないがその二人は今日午後登校と言っていたから問題はないのだが。
辺りをきょろきょろしていると腹部に衝撃。何となく誰かは予測ついたために、目線を下におろすのに戸惑う。

「A夜遅かったね!待ってたんだよっ。」
「…P奈…。」
「P奈!アンタ、いい加減にしなさいよ。人の恋人にくっつかないで!」

始まった…毎度毎度やめてほしい。
そしてL乃、イヤミったらしく笑うなむかつく。X理もそんな目で見るな。
俺は避難するようにH谷たちの所に行くとH谷も「お主も悪よのぅ」とか言ってきやがった。お前は一昔の殿様か。
そんなH谷を膝に乗せてビクビクしながら俺にH谷は悪気はないよと謝ってくるのがJ葉。
J葉は臆病で…よくいるだろ?アニメとかでいじめの標的にされそうな男子。そんなタイプだ。おまけに優しくて天然、お人よし、と来たもんだ。
こいつの隣にいるのがO歌。彼女はいいとこのお嬢様でJ葉の許嫁。というか、J葉が一目ぼれしたんじゃなくてO歌が一目ぼれしたんだと。
どこの恋愛アニメだ。少女マンガじゃあるまいし。
ちなみに、H谷、J葉、O歌、Y兎は2組。言い忘れていたが俺たちは5組だ。
未だに言い合いを続けてるF子とP奈を制裁したのがQ子。
Q子は4組の女子のリーダー格。男勝りで可愛げのない奴。彼女の姉貴、行方不明なんだよな…。
その後ろにいるくすくすと笑っている女の子はR音。
R音は…博愛主義の女の子。俺らが皆、男女構わず好きという変わった奴。
…話しかけるには勇気がいる。特にS茂に興味があるようで執拗にくっついている。憐れなり。

「え、A夜!た、助けてくれっ。」
「S茂さん逃げないで下さいよー。」

ほら、この通り。
S茂はまあ、この通り不憫なやつ。かわいそ過ぎて俺が優しくしていたらこんな感じで何かあれば俺にすがるようになった。
俺はめんどくさいんでR音にS茂を差し出してB十たちの所に座る。
いつもはこうして昼休みを皆で過ごした後は、午後の授業をさぼる。それが俺たち『活動』メンバーの日程。
そのたびに先生に叱られるが、『活動』を行うためだ。
刹那、いきなり体育館の扉が開いて、8組のU絵、V雫、W斗と中等部1年のT崎が入ってきた。
U絵は近くにある寺の子で、T崎とよく一緒にいるからみんなにロリコンと言われてる。というか絶対ロリコンだろ。
V雫はヤンキーみたいなやつ。口も悪いし態度も悪い。W斗とよく一緒にいて悪いことをすればW斗の鉄拳で制裁されてるざまあ。
W斗は無口、無表情のマフラー野郎。人に声をかける時もその人の服を引っ張って話すという子供っぽいところもある。
T崎は俺ら『活動』メンバーの中での最年少の女の子。
コミュ障…コミュニティー障害で俺らと彼女の数少ない友達以外にはコミュ障が炸裂する。

「ごめんね、遅くなった。コレお詫びね。」
「ん、態々お詫びなんていらねーよ?」
「いえいえ。待たせてしまったんだからお詫びぐらい…ね?」
「ねー。」
「あ、俺からも!ほい、土産!」
「……オレからも……うちのばあちゃんの、おはぎ…。」
「お、サンキュ。」

パーティーみたいだがこれが普通。
W斗の持ってくるおはぎ、すごくうまいんだよな。V雫の家の果物も。
ざっと家柄を説明すると…まず、俺は一般家庭のごく普通の家庭。
B十は金持ち家庭で主に農業、漁業に力を入れてる家柄。
C美は少し裕福な家庭、本家分家があって彼女は分家。
D保は一般家庭で漁業専門の家柄。
E太は少し貧乏な家庭、アルバイトをかなりやってる。
F子は一般家庭のマンション住。
G真は一般家庭でごく普通の家庭。
H谷はものすごい金持ち家庭。王子様気分のウザさ。
I良は一般家庭で本家分家があって彼は本家。
J葉は少々裕福な家庭、彼の父は運搬業の社長とか。
K李は一般家庭でごく普通の家庭。
L乃は一般家庭で少々裕福。
N代は少し貧乏な家庭。
M吾は少し貧乏な家庭、N代とは双子なんで同じ。
O歌は金持ち家庭。色々な事業を成功してるとか。
P奈は貧乏な家庭。生活をやりくりするのだけでもやっととか。
Q子はかなり貧乏な家庭。
R音は一般家庭で父親と暮らしてる。
S茂は親に捨てられて孤児院暮らし。家族、というのが分からない。
T崎は一般家庭でごく普通の家庭。
U絵は一般家庭でお寺の子。
V雫は実家が農園の一般家庭。
W斗は一般家庭で、本家分家があって彼は本家の長男。
X理は一般家庭で電気工業専門の家柄。
Y兎は裕福な家庭で、酪農専門の家柄。
こうして考えるとやっぱりすごいよな…うん。
…え?アルファベットの『Z』がないって?…嗚呼、これにはわけがあってな……。

「……もう、すぐ……Z水、の…一周忌、だよね…。」

…そうだな、と俺はW斗のささやきに相槌する。
Z水は1年前の終焉神楽に、投身自殺をした。しかも、俺たちの目の前で。
アイツの家は普通の家庭だったし、虐めとかもなかったのに自殺したから俺たちは大変だった。
特にW斗は彼女とは幼馴染だったし、俺も病院で知り合ったから二人で事細かく調べた。
そして、原因と思えるものを見つけて二人で始めたのが『活動』だった。
元々『活動』の内容も原因と酷似しているし、俺らも興味があったから前々から『活動』はしていた。それに原因と思えるモノを追加した。

「な、どうせだし…今から『活動』始めようぜ。」
「何言ってんだ、今始めて先生が来たら大変だろ。」
「大丈夫だよ、ここは先生でも近寄らないあの旧校舎だぜ?心配ねえよ!」

な、A夜!…と俺に振ってくるV雫。
俺にふるな、と言いつつも確かにこいつの言い分も一理ある。
少し考えてから俺は「今日だけだぞ。」と許可をする。その許可と同時に皆は食事を片づけ始める。
片付けが終了と同時に『活動』が始まった。

「今日はもうすぐある『終焉神楽』の打ち合わせについて。それともう一つ、これは俺が考えてたことだ。」

俺の話を聞いてくれるこいつらは、いい奴らだ。
全く、いい仲間に巡り合えたもんだ。
ざっと終焉神楽の打ち合わせを済まし終え、当日の活動内容が決まった。
最後、俺が考えていたことを切り出す。
実はこの田舎にだけ伝わる、ある言い伝えという都市伝説がある。
それが『終焉遊戯』と『26』。
『Z水』の自殺の原因と思われるのが『26』という都市伝説。
俺とW斗が昔から調べていたのが『終焉遊戯』という都市伝説。
この2つを同時に行うと『陰影八卦』という都市伝説へとつながる。
今日はこれをもう一度やってみようということだ。
この話をして反応したのが俺のクラスの連中。

「本気…?」
「でもアレ、失敗したらみんな死んじゃうんじゃ…?」
「…僕は賛成だな。興味もあるし。」
「私も。前のが失敗だったから成功させてみたいわ。」
「わ、私はどちらでも…。」

多数派で賛成が多かったな。
他の面子も行うということになって、日が暮れるのを待つ。
その間、『陰影八卦』を行う方法を説明する。
まず、こっくりさんを行う。
こっくりさんは普通は3〜4人で行うのが妥当だが、この地域のこっくりさんは違う。
俺らは25人いるため、十円玉に指は乗せない。
つまり、『こっくりさん』が居たら十円玉が自然に動くのだ。
順番に質問をしていく、勿論失礼のないように。
そして最後の人はこっくりさんに、『陰影八卦、終焉遊戯、26、集結』と言う。
すると『陰影八卦』がスタートする。『陰影八卦』は次の日に誰かに電話、または手紙が届くことによって始まる。
手紙は各自それぞれ順番に届き、そこにはある『内容』が記されている。
その内容を5日以内にクリアしないと、その人は死ぬ。
全員が死んだらゲームはおしまい、俺たちの負けになる。
ただし、このゲームにはその場にいなくてももう一人の参加者が居る。その参加者は何があろうとも生き残る。
つまり『裏切り者』になる。
その裏切り者を、手紙を受け取った人が殺さなければゲームは終わらない…というものだ。
漸く日が暮れて、体育館のカーテンを閉める。
中央に50音と鳥居、鳥居の左右に『はい』、『いいえ』と書かれた紙の上に十円玉を置いて準備は完了。
蝋燭に火をつけたら『こっくりさん』をはじめる。

「こっくりさん、こっくりさん。いらっしゃいましたら、合図お願いします。」

B十がそういうと十円玉が鳥居の周りをぐるぐると動き出す。
それだけでこの場の空気が重くなる。
順番に質問をしていく。一番手は俺だ。
最後以外は何でも好きな質問をしていくのが『終焉遊戯』へのステップ。

「…終焉神楽の日は晴れますか?」

特に質問したいことがなかったから、1か月先の日の天気を聞いてみた。
…何人か笑ってるなむかつく。
すると十円玉は『はい』、で止まった。流石に俺も冷や汗が出てくる。
これが本当だったら恐ろしいな…ホント。
次はB十の番だ。するとこいつはオドオドしながらこういった。

「えっと…A夜の昨日の夕食は和食である?」
「なんでだよ。」

すると十円玉は再び『はい』へと移動した。
……確かに和風だったけどさ、なんか見られてるみたいで家にいたくなくなるんだが…。
B十とF子に何食べたの、と聞かれたから俺は昨日食べたものを正確に伝えるとやっぱり驚いてた。
どういうものなのか知っててもやっぱり怖いよな。
次はC美。でもどうせ、私は美人ですかとか聞くんだろうな…。

「じゃあ…B十くんとD保ちゃんはくっつきますか!?」
「「え!?」」

B十とD保が顔を真っ赤にして驚いてる。
C美にしてはいいこと聞いたな。十円玉は『はい』に動いた。
皆で二人を祝福する。二人にとってはこれが告白と言うものなのだからリンゴのように真っ赤だ。面白いな。
次はD保なのだが真っ赤にしてめちゃめちゃ噛みながら「し、私事ですみませんっ、お母さんの病気は治りますか…?」と言った。
…めちゃめちゃいい子じゃねえか。
十円玉は残念ながら『いいえ』に移動した。あ、D保悲しそう。
次はE太。何を聞くのかと思えば、「都市伝説は本当にありますか?」と聞いていた。
おい、活動内容。
すると十円玉は『はい』を何週もして止まった。
それに俺も含めた全員が、顔色が悪くなった。
次はF子。すると彼女は少し悩んでこう言った。

「…双子たちの仲は良くなりますか。」

彼女の弟と妹は双子と聞いたことがある。しかも仲がかなり悪い、と。
すると十円玉は『はい』、と動いた。
F子は少し嬉しそうにホッとした様子で十円玉の返事を見ていた。
こんな感じでG真、H谷、と質問をしていく。
皆やはり、質問は私事だったり、どうでもいいことだったりと様々で面白い。
I良が質問する番になって俺は自分でもわかるほどに興味津々だった。だって、あの問題児がどんな質問するんだろう。な、興味あるだろ?
すると彼は予想の斜め上の質問をした。

「…俺の、双子の弟は…元気にしてますか。」

そこにいた全員が驚いた。
I良に双子の弟がいたなんて初めて聞いたし、こいつは元気にしてますかと尋ねたってことは一緒に暮らしてないのだろう。
十円玉は一瞬止まりかけたが『はい』に向かった。
それを見て彼の表情が一瞬優しそうな顔になったのを俺は見ていた。
その表情が初めて見る表情のはずなのに、頭の中でフラッシュバックが起こり、昔の映像が俺の脳内で再生されてる。
『見たことある。』と直感で分かった。しかもものすごく幼いころ。
「A夜。」記憶と共に写っている大きな家。まるで屋敷のようで「A夜ったら。」その家の中を俺と俺にそっくりな同い年の男の子が走り回っていて…俺が転ぶとその子が困ったように手を差し伸べてくれて…それで…。

「A夜ってば!」
「…!え、あ…ごめん、何?」
「「何?」じゃないよ!どうしたの、I良の方見て吃驚したような顔で。」

嗚呼、あのまま固まってたのか。I良も少し驚いてる…じゃあこう返した方がいいな。
「I良らしくないこと聞いてたからビビった。」「うるせ。」これでまあその場は収まるだろう。
…E太がにやにやしてるから多分後で聞かれるだろう、しつこく。
そんなこんなでとうとうW斗だけになった。
俺も含め、皆顔をこわばらせてW斗の質問を待つ。彼は深呼吸をした後、ルール通り、こう言い放った。

「陰影八卦、終焉遊戯、26、集結。」

シーン…と静まり返る。
何もないのか、と安心した直後だった。十円玉が動き出した。
まず一文字目が『い』、次が『ん』、そのまた次が『え』、と文字を示していく。最後が『と』で、十円玉は鳥居の前に戻り止まった。
全部を合わせると…『いんえいはっけ げーむすたーと』…『陰影八卦 ゲームスタート』…?
驚いて何人かはつないでいた手を離してしまった。
刹那、体育館の真ん中に置いてあった古いブラウン管のテレビにノイズが走りだし、音声が入った。
ここにあのテレビのリモコンなんてないし、あれは廃棄になって使えないテレビなのだ。だから点くことなんてありえない。
ザザザ、と酷いノイズの後に言葉が入った。


――――終焉遊戯ノ開幕デス。


テレビはそういうとプツンと切れた。デス、ゲーム…。
始まった…終焉遊戯が始まったんだ…!俺はこの上ない優越感に浸っていた。
他のみんなは怖がってたり、青ざめてたりしてる。それもそうだろう、コレはゲームオーバーになると待ち受けているのは『死』なのだから。
実際、俺だって『死』は嫌だ。死にたくないさ、まだ若いのに。
ゾクゾク、と凄い感情が湧き出てくる俺にW斗が近づいてきた。

「…A夜…。」
「大丈夫、心配ない。…これで真相も掴めるだろうさ…。」

その時の俺の顔はどこぞの映画の悪人にも負けないゲス顔だったと思う。



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