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[5375] ウェイベル家の受難
   
日時: 2019/04/09 11:25
名前: じょ ID:howujlbw

ロージアン大陸歴1568年ーーー

大陸一の軍事力を誇るサザラント王国は、大陸内の国家間で締結されたヘイスター軍事協定を突如破棄し、国王ヘドヴァル王の指揮の元に周辺諸国への侵略を開始した。

それからおよそ十年、戦いは次第に泥沼化して行った。
大陸の北東にある小国、セントナム公国はサザラントとの戦いの末、降伏を決定した。
セントナム公国は小国ではあったが、かねてより吟遊詩人や音楽家などの芸術家を多く輩出した他、国内各地の自治領における宮廷文化が盛んであった。

ロージアン大陸歴1580年、とうとう公国はサザラント王国に強制併合の憂き目にあった。

戦前はセントナム公国といえば、大陸中の宮廷人や貴族の憧れの土地であったが、宮廷文化は戦時下にそぐわないという理由で次第に禁止された。
貴族たちは己の命、または領民たちの命を守るために、サザラント王国の軍門に降った。

しかしその貴族群の中で、ウェイベル家が唯一、サザラント王国に対しての徹底抗戦の構えを取った。
ウェイベル家の当主、ドルファー・ウェイベル公爵は僅かながらの兵力を城内に配置し、サザラント・セントナム連合軍と最終決戦を開始した。

結果は語らずとも知れていた。およそ数百万人もの差がある連合軍にウェイベル家はわずか数時間で敗北した。
当主ドルファーとその近親者は拘束され、一家分離の命令が降った。

物語はここから始まる。
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Re: ウェイベル家の受難 ( No.1 )
   
日時: 2019/03/13 21:07
名前: じょ ID:vWdscaL.

エイミリアは泣き疲れていた。
城の門前で父と母が別々の監獄馬車に乗せられ、遠くまで見えなくなってもずっと泣き続けていた。
わずか数日前までは城の中で悠々自適に生活していた少女にとって、この数日間はあまりに酷とも言える出来事が立て続けに起こった。
両親はあえて彼女に戦争のことを教えていなかった。
ウェイベル家に女性として生まれたからには、幼い頃から厳しい作法と教養を身につけて、社交界の憧れの花になることが義務のようなものだったからだ。

拘束された時、彼女は自室で気に入りの宮廷服をしつらえ、召使に髪を整えさせていた。
窓から見える光景は、年に数度の収穫祭の乱痴気騒ぎとしか思っていなかったのである。

今もその時の服を着たままだった。
横には6歳年上の兄、オーブラムが手枷をされたまま歯ぎしりを続けている。

 「次は兄上、お前だな。」
サザラント軍の憲兵がオーブラムを連れて行き、またも監獄車に乗せた。

 「妹君と今生の別れだ。最後に少しだけ話させてやるよ」

 「エイミリア!!」
 「お兄様!!」

エイミリアはその時、兄の顔はなんて美しいのだろうと思った。
まるで少女のように長いまつげに青い目。
兄には以前より、兄弟愛を越した感情を持っていたことにエイミリアは今になり気がついた。

 「いつか・・・ 助け出してあげる。そして、父上、母上とも・・・。またこの城で一緒に暮らそう」
 エイミリアは泣きじゃくり、言葉を発しようと思っても出てこなかった。

 「時間だ」
憲兵はオーブラムを無理やり馬車に押し込めると、エイミリアに不敵な笑みを浮かべた。
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