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[5374] 起床ラッパ(仮題)
   
日時: 2018/04/02 10:30
名前: 無線衝突 ID:wW1tAOPM

起床ラッパが鳴った。いつも通りの朝になるはずだった。俺は天幕の中でモゾモゾと迷彩の戦闘服を着込み、物ぐさしたせいで汚れきった半長靴を履くと我先にと外に飛び出した。この間わずか一分半。
 空は鈍い灰色。今にも降り出しそうだ。八月の割には涼しすぎると思い「やはり山の中は寒いな」と独り言を言い、思わず肩をすくめる。いくつかの天幕群の横に広がった広い空き地にノソノソと我々の班員が集まってきた。
 点呼が取られた。当直担当の中年の陸曹が今日の予定を伝えた。10時からこの山のどこかにいる米軍と空砲を使っての演習だ。
 
 昨今緊迫するアジア情勢において、自衛隊は米軍と密に蓮権を取ることを余儀なくされた。今回我々が北海道の山の中で行なっている合同演習はその計画の一環として行われていた。俺は普段はそれなりにのんびり生きている元自衛官のフリーターなのだが、即応予備自衛官にも演習の出頭が命令された。即応予備自衛官とは、元自衛官の人間だけが参加できるプログラムであり、普段は民間企業等で働きながら、年間30日は自衛隊の訓練を受け、有事の際は現職自衛官と共に前線に出るという訳だ。日当は決して悪くなく、最低でも一万円ほども貰える。いい小遣い稼ぎだと思って志願したものの、訓練は想像を絶するほどに過酷だった。現職の時はしがない燃料補給所の事務作業がメインだったので、まるで新隊員教育に戻ったかのようにキツかった。
 そうこうしているうちに朝食のラッパが鳴った。俺は班員全員分のパック飯を持ってくるように仰せつかった。
メンテ

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