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[5371] 破天荒王イェスペル
   
日時: 2017/07/12 20:46
名前: 高地人◆s2Lqqp1yqY ID:VbEkUbLU

<あらすじ>
 戦乱が続くオリュン大陸の北方に位置するスヴェンインゲロ王国は長年、南方からの侵攻勢力と長年に渡り防衛戦争を繰り返し己の領土を死守してきた歴史を持つ。
 かつては『蛮族の集団』と南方人に蔑視されていた北方諸民族をまとめ上げ、一つの王国として建国した初代国王ゴッドフリッド・イッターシュトレームから数えて十八代目となるカール国王が防衛戦争の最中、流れ弾に心臓を射抜かれ急逝。
 カール国王は民衆からの支持と、各北方部族からの信頼が厚く、戦乱続きで血に濡れた北方の地に安寧を齎さんと奔走する王であった為彼の死を知った人々は誰もが嘆き悲しんだ。国葬の際には十万人もの人々が参列し一人ひとりがカール国王の棺に花を添えた。
 そして第十九代目スヴェリイゲロ王国としてカール国王の嫡子イェスペル・イッターシュトレームが即位することになった。
 王国軍が保有する兵力の半数の師団を収容可能と謳われる広大な王宮庭園で執り行われた戴冠宣誓式にて、官僚や北方部族長、王国軍将兵を前に新国王イェスペルはこう言い放った。

「今日限りで王国軍は解散します。お疲れ様でした〜。あ、故郷に帰りたい人は帰っていいよ?家族を安心させてあげてね。この後閣僚会議やるんでぇ、大臣と部族長たちは集合!あ、将軍たちは来なくていいから」

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<前書き>
ついムラっときて脳内に湧いてきた妄想を文章化しました。後悔はしていない。
不定期で更新していきます。
よろしくお付き合いください。 by高地人
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メンテ

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破天荒王イェスペル ( No.1 )
   
日時: 2017/07/12 22:08
名前: 高地人◆s2Lqqp1yqY ID:NQyufR3Q

【第1話−1 王国動乱】

「おっすおっす。皆の衆、戴冠宣誓式お疲れ様さーん。んじゃあ、閣僚会議始めまーす」
 力のこもらない喋り方で行儀悪く机に足を乗っけてながら、つい先程戴冠宣誓式にて王国軍の将兵たちを目の前に「王国軍は今日限りで解散」と言い放った新国王イェスペルは冷ややかな目を向ける各閣僚、官僚、部族長を前にしても怖気づくこともなく淡々と閣僚会議開催の指揮を執る。
 
 そして侍女たちが運んできた書類の紙の山から徐に一枚取り出し、目を通す。

「えっとお、まず本日の議案第一号。『対リョシャナ帝国との最終決戦に際しての大量兵員動員』。うん、無理!」
「お、お待ちくだされ!」
「はい何でしょうか。えっと…」

 顔は覚えているが名前が出てこない。「ちょっとごめんよ」と断りを入れ、イェスペルは自分の後ろに控えている侍女に目配せし、耳打ちさせる。

「あの冴えない顔をした小太りのキモい貴族はイーゴッド公爵です。すでに何人もの王宮内の侍女たちに手を出しています。中には望んでいないのに子を孕んでしまい、王宮を去ることになった侍女もいます」
「えっぐいなあ…」
「中でもまだ十代の侍女たちに被害が集中しております。かく言う私も…」
「…辛かっただろうな、マーユ」
 
 侍女のマーユが悔しそうに唇を噛み締め、肩を震わせる。余程あんな脂がギトギトの小太りのキモい貴族と寝るのが嫌だったのだろう、と案じイェスペルは彼女に慰めの言葉をかける。

「胸を触られましたが、残念そうな顔をされたので、ついカッとなってイーゴッド公爵領内に『イーゴッド公爵は幼女好き』という噂を流してしまいました。申し訳ありません」
「何してんのお前。俺の慰めの言葉返して」

 改めてイーゴッド公爵に向き直ったイェスペルは、公爵が唱える国内領土での兵員大動員による一大決戦にて勝利し、長年の宿敵であるリョシャナ帝国と和睦しようという主張に耳を傾ける。

 イーゴッド公爵は熱心に、精強な王国軍と自らが保有する亜人種のケンタウロスを主にしたケンタウロス騎兵隊を持ってすれば、貧農出身者が大半を占めるリョシャナ帝国軍を粉砕することができると主張する。公爵の主張を聞いて思わず口に含んだ水を吹き出してしまう大臣たちと、失笑する元王国軍出身の者たち。

「であるからして、是非、決戦の際には、我がイーッゴッドケンタウロス騎兵連隊をお使いくだされ!」
「いや、だからさ、それ無理だってイーゴッド公爵」

 殆どが自画自賛の内容であった主張に中身などない。所詮、金の力でイーッゴッド領の土地と自治権を手に入れた成り上がり貴族。
 己の身を案ずることに一生懸命。俺が描くこの国の未来には必要ない。ていうか見れば見るほどこのおっさんキモいわぁ。
 イェスペルは先程の巫山戯た態度から一変し、冷徹な表情を浮かべ、得物を狙う猟兵の如く鋭い眼光でイーゴッド公爵を射抜く。

「そもそも天然の要害であるミケッタ峡谷があるからこそ、リョシャナ帝国の得意とする大軍の突撃を無効化できているだけだ。ミケッタ峡谷を突破されたら、この王都まで一直線だぞ」
「ミケッタ峡谷を抜ければ後は平原が続くだけですぞ!まさに、騎兵隊の為に有るようなものではありませぬか」
「イーゴッド公爵、帝国がたった二ヶ月という短い期間で一度に五十万の兵卒を動員できるか知っているのか?」

 ここで初めて熱弁を振るうイーゴッド公爵の言葉が止まった。
 なるほど。知らないのか。
 この閣議室にいる誰もがイーゴッド公爵の無知に勘付く。

「馬車だよイーゴッド公爵。リョシャナ帝国は大量馬車を使って兵員と物資を輸送できる力を持っている。」
「ば、馬車ですか」
「それも我が王国内で主流の馬車とは二回りも大きい馬車を何千、何万台も使っている。ああ、イーゴッド公爵の領地は王国でも端の端であるから知らなかったか」

 イーゴッド公爵は顔を真赤にしてグラスに注がれていた水を一気に飲み干し、それ以降は口を開くことはなかった。
 己の無知を曝け出してしまったのだ。羞恥に震えるのは仕方が無い。

「諸君にも改めて言っておくが、俺は王国軍を本日限りで解体する。兵士たちには故郷に帰るように通達しろ。自ら残る決心をした者に対しては、後日処遇を決める」
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Re: 破天荒王イェスペル ( No.2 )
   
日時: 2017/10/14 09:32
名前: Κ ID:xBjWjRE.

はじめまして、Κといいます。

読ませていただき、うれしくてコメントしました。迷惑でしたらお伝えください。

はじまりから王国軍が解体? 国はどうなるの? この後が気になって仕方ありません。

次話を心からお待ちしています。失礼しました。
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