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[5362] 星殺しの英雄譚
   
日時: 2015/10/24 20:23
名前: 茶野 ID:dssss0Zw




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   ――ただ、生きたいと思った。




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 ▼目次

 プロローグ
  英雄の不在 >>1

 第一章 世界を知った日 
  



 ▼リンク
 ブログ
 ┗落書きとかあてにならない裏話とか。



 リハビリがてら立てました。剣と魔術の異世界ファンタジーです。全六章予定。
 目標は60レス、1年以内の完結。
 今まで書いたものとは特に関係ないので、はじめましての方もさらっとどうぞ。
 よろしくお願いします。

 since:2015/10/24
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0-1 英雄の不在 ( No.1 )
   
日時: 2015/10/24 20:25
名前: 茶野 ID:dssss0Zw

 <プロローグ 英雄の不在>


 町を飲み込むように炎が広がっていく。逃げまどう民衆に流されるがまま門の外へ押し出され、気づけばひとり見知らぬ場所に立っていた。
「水を……」
 足元でうめき声がした。見下ろすと、男とも女とも知れない黒い塊がこちらに向かって手を伸ばしていた。首を振り、焼けただれた手をそっと握ってやると、その人間だったものは生を諦めるように目を閉じ、動かなくなった。
「ごめんな」
 着の身着のまま焼け出された自分に、助けるすべはなかった。いや、全財産をかき集めたとしても、全部の力を振り絞ったとしても結果は同じだったに違いない。ただの流れ者にすぎない彼は無力だった。
 振り返れば、それまで歩いてきたと思しき道に点々と黒いものが転がっている。中には息のある者もいただろうが、それも長くはもたないだろうと知れた。彼らと自分の運命を分けたのは、かつて戦火に追われたという経験の差か、それとも別の理由か。とにかく、彼はたいした怪我を負うこともなく、数年前に来たときと同じ身ひとつであの町を出てきたのだった。
 彼らをしかるべき場所に埋葬してやるべきかという考えが脳裏をよぎったが、延々と続く死者の道に断念させられた。代わりに彼の心に芽生えたのは、自分の無力さに対する怒りと後悔だった。腰の剣の重さが、ずしりと心にのしかかる。
 ――もっと、俺に力があれば。
 護身用にと、かつてどこかの国の兵士から奪った剣は使う機会を与えられず、まだ彼の手になじんでいなかった。
 くそ、と彼は毒づき、拳を握りしめる。
「次はもう、こんなことさせねえよ」
 野良犬同然の扱いをされることが常だったが、それでも数年暮らした町だ。賑やかな市場、教会の鐘の音、春になると花が咲く木――そういうひそかに好きだったものたちが破壊される光景は、彼に大きな傷を残した。
 絶対に強くなる。心に誓い、彼は死者に背を向け歩き出した。
 そう――まずは、生き延びなくてはいけない。

 
 *


 あてもなくさまよい続けてどれだけの時間が経っただろうか。
 とうとう彼は運命の地に至る。


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