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[5033] ミスター・グッドバイを探して
   
日時: 2014/10/06 19:02
名前: ID:ejVOwAIc

うわさ〔うはさ〕【×噂】1 そこにいない人を話題にしてあれこれ話すこと。また、その話。 2 世間で言いふらされている明確でない話。風評。(大辞泉より抜粋)


 噂は煙のようだ、とどこかの老人は呟いた。どこからともなく生まれて、俗世を掻き乱しては、記憶の枠からあぶれていく。そのサイクルがゆっくりと流動するのを、私たちは朝ごはんを食べることのように、ごく自然なものとして捉えていた。
 そして、また一つの噂が街中で持ちきりとなった。

「世の中には、なんでも終わらせることができる男『ミスター・グッドバイ』がいる」

 
メンテ

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目次 ( No.1 )
   
日時: 2013/08/22 23:27
名前: ID:hqvrvp7g

序章「ミスター・グッドバイの噂」
>>2 >>3
メンテ
じいさん ( No.2 )
   
日時: 2011/10/22 23:06
名前: ID:fr9XWKa6

「噂はな、煙みたいなものなんじゃよ」と、じいさんは言った。短くなったタバコをなるたけ吹かすと、俺に向かって煙の輪っかを放す。広がっていく煙が身体をすり抜けていくのを感じながら、俺はゆっくりと口を開いた。
「なんで?」
「どこからともなく現われ、さんざん頭の中を掻き乱しておいては、いつのまにか姿を消すからな。まあ、それでも薄らと残っているのが、噂のやっかいなところだがのう」
「ふうん」
「お前も、噂の一つや二つは知っているだろう」
「うん。隣のミセス・パンプキンはほんとうはカボチャが食べれないとか、時計の長針と短針が重なったときに犬が逆立ちして歩くとか、いろんな噂を知ってる」
「そうか。いいか、坊主。噂を信じるのはお前の勝手じゃが、噂でものごとを判断してはいけない。それだけは肝に銘じておけ」
「きもにめいじて、ってなに」
「まあ、いい。とりあえずお前にはそれだけ伝えたかったんじゃ。あとタバコ買ってきてくれ」
「いやだ」

 それから間もなく、じいさんは死んだ。肺がんに冒されてもなおタバコをやめなかったのは、じいさんらしかったと思う。あまりにもしっくりきてしまって、涙は不思議と出なかった。
 じいさんの周りには、肉親がいない。奥さんも子供も昔はいたというが、あの窶れた風貌から気配は感じ取れなかった。けれど、受け継ぐ遺産もなにも、じいさんが持っていたのは、骨張った身体と、丘の上の城の使用人という身分だけだった。
メンテ
使用人ニコ #1 ( No.3 )
   
日時: 2015/11/12 02:31
名前: ID:KD/81QKM

 街の喧噪が感じられないほど閑散とした丘に、その城は立っていた。古くから名を馳せているゼニスキー家が所有しているもので、じいさんはその使用人として昔から隷属されていた。使用人としての話はあまり口には出さなかったが、寄せられた眉間のシワからは忠誠心というものは見られなかった。しかし、思い入れのない所にも生活の跡というものは残るもので、本日はその遺留品を回収しに来させられたのだ。

 年季の入った大きな扉を数回叩くと、軋む音と共にゆっくりと開いていった。暗いエントランスに光が立ちこめると、背の高いやせ細った老人の姿があらわになった。きちんと仕立てられた洋服から察するに、どうやら執事のようだった。
「どちらさま?」と低くどもった声にも臆せず、愛想良く答えた。
「使用人のニコの遺留品を回収しにきました、バサラです」
 分厚い眼鏡を通った視線が全身にめぐらされるのを感じると、「どうぞ」と中に通された。じいさんの暮らしていた部屋は、高く伸びた塔の屋根裏にあるようで、着くのにも相応の時間を要した。
「それではよろしくお願いします」と気持ちのこもっていない挨拶をのこして去っていく老人を横目に、俺は部屋へとつづく梯子に手をかけた。
メンテ

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