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[4705] そんな俺の御伽噺 
日時: 2018/04/26 00:49
名前: くたくたのろく ID:3z/x9yDY

 歌うことの知らない動物は、地上で踊る。

 踊ることの知らない羽鳥は、空を舞う。

 舞うことの知らない魚は、海面で跳ねた。


 人は、そんな“地”と“空”と“海”と手を取り合って平和を願って謡った。




 そんな絵本の中の世界に憧れて、

 俺は動かなくなった父の横顔に言ったんだ。


「とうさんっ、おれは“じんどうし”になる!」









*****

はじめまして、くたくたのろく、です。
ジャンル的には学園ファンタジー、……シリアスだけどギャグだって忘れてないぜ仕立てです。
感想や指摘、誤字脱字がありましたらご報告くださいm(_ _)m


長らく放置してすみませんでした;
更新再開したので、よろしければまたよろしくお願いします!

現在鈍足更新中ー

以下、目次です。




 ‐CONTENTS‐

○第一章「宙に浮く道化師」(全12話)
>>1-10 >>12-16

○第二章「熟れた林檎と錆びた十字架」(全27話)
>>22-32 >>38-44 >>46-48 >>53-65

○第三章「壊したものと壊されたもの」←準備中

 ・番外編
 「そんな僕とアイツの関係」(時間系列 一章5話目辺り)
  >>11
 「そんな私の思い出話」(時系列 特になし)
  >>20
 「そんな俺の、いつかの日常」(時系列 一章より前の話)
 >>37
 「そんな二人の必然的出会い」(時系列 一章より前の話) ←準備中

 「そんな気まぐれ王子と変人とキミの話」 (時系列 特になし) ←準備中

 ・参照1000人突破記念小説 「あの頃の私」
  >>35



 ◇

 ・ねじれ話シリーズ

僕はただ、君の側で君の笑顔を見ていたかっただけだった。
それが叶わないのであれば、こんな世界消えてしまえばいいと願った。
――それはまだ、この世界に「魔石晶」があった頃の話。
 
 「ねじれた御伽噺の話をしようか」←本編と同時進行中
 0:プロローグ >>45
 1:泡沫の夢 >>49 >>52
メンテ

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Re: そんな俺の御伽噺  ( No.62 )
日時: 2013/07/30 20:04
名前: くたくたのろく ID:jZBUsy6g

<其の24話目>

 駆け出したタイミングは、エレナとキート同時ではあったが、アクセレスによって強化された肉体はあっという間にその差を開く。
 よって、フィルト・ノーツへ先に近付いたのはエレナだった。
 宙で体を捻り、左回し蹴りを繰り出すも、二人の間に咄嗟とばかりに出現した鏡によって憚れる――が、
「その程度で私を止められるわけがないだろう!」
 エレナの一蹴に耐えられなかった鏡がぱぁあああんっ、と砕け散る。
 これには驚いたようなフィルト・ノーツの表情に、逆にエレナが驚かされた。

 ――まだ、完全に意識が持っていかれていないのか?

 エレナが知る限りパラサイト・ストーンを使用した者は、必ずと言っていいほど自我を失っていた。
 ならば助けることも出来るのか?
 しかし、どうやって?
 
 その逡巡が、隙を見せた。
 フィルト・ノーツの頭上に浮かんでいた黒い天使の輪――パラサイト・ストーンが「ひぎっ」と悲鳴をあげた。
 ――そうだ、まさしくそれは、“悲鳴”だ。

《ひぎぃぁぁあああああああああああああっああああああっぁぁああああああぁぁあああっ!!!!》
 それと共鳴するようにフィルト・ノーツも悲鳴をあげる。
 その不協和音のアンサンブルにエレナは思わず耳を塞ぎ、蹲る。
 苦しい辛い助けて悲しい大丈夫言い聞かせてでも辛くて息が出来なくてでも大丈夫だよって言ってそれでも闇に潰されて呑まれてしまいそうで。
 それは、後悔と憎悪と羨望と悲しみと絶望と畏怖と苦しみ。
 もう嫌だ止めろとエレナも口にしかけたとき、

「――――愚かですね。そんな石屑に頼る前に、そうやって叫べば良かったんですよ」
 頭上に影が差す。
 きらりと光に反射した眼鏡の奥に、愉悦が歪み現れていた。
「そうしたら僕が、キミのその歪んだ心ごと、この闇で“食って”あげられたのに………、残念です」
 私の真上でキートがモーゼルの鎌を振りかざす。
 グォッとその軌跡の影がフィルト・ノーツの全身を蛇のように絡みつく。

「今のうちですよ、エレナ会長!」
 影に口元と、パラサイト・ストーンを抑えられたフィルト・ノーツは我武者羅に暴れ狂う。
 再び鏡を出現されては面倒だと、震える足を叱咤し、右手に力を込めて「はぁあああっ!」打ち込んだ。

 ブッとギョロついた目を裏返し、ひっくり返るフィルト・ノーツ。
 しかし、その反動で影の拘束から解けた天使の輪が彼から離れ、ヤヤラのいる方へと飛んで行く。
「っアクセレス!」
《分かってるですよ!――防御力を最低数値まで下げる代わりに、攻撃力・瞬発力を極限まで引き上げるですよ!》
 グッと足の裏に力を込める。
 それを解き放った瞬間、私は鳥にでもなったような錯覚に陥った。
《邪魔ヲするナぁぁあああああああああ!》
 歪なノイズのような声が頭に響く。
 それでも私は空を駆けた。

 速さはこっちの方が速い。
 だけどどうしても届かない!
「くそっ、ヤヤラ逃げろ!」
 普段の口調とは崩れたその物言いに、キートも焦っているのが分かる。
 しかしヤヤラはパラサイト・ストーンから目を離せず、その場で硬直したままだ。
 まずい、このままじゃまずい!

 手を延ばす。
 ――いつだって私は、間に合わなかった。

「頼む! 届いてくれ!」

 望み。願い。切望。哀願。
 私は願った。
 私は望んだ。

 だからなのか、パラサイト・ストーンが急に止まった。
 標的をヤヤラから私に移したのか。
 それとも別の原因があったのか。
 何にせよ好都合だ!
「うおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
 大きく振りかぶって、懇親の一撃。
 私の青白い炎をまとった右拳がヒット。

 そして石は、そのまま砕け散った。


・・・其の25話目に続く。
メンテ
Re: そんな俺の御伽噺 ( No.63 )
日時: 2013/08/11 18:02
名前: くたくたのろく ID:Ujj9v1Gs

<其の25話目>

 フィルト・ノーツと、彼女――アスカ・リスティルの出会いは、一方的なものだった。
 同じクラスメイトだった彼女が僕に絡んできた、という一言で終わる。
 アスカはいつも独りでいる僕を同情したらしい。
 まぁ、実際は僕がそう仕向けただけだったのだけれど。

 それでも、いつの間にか彼女に惹かれていた。
 好きだ、と思ったけど、それでもそれを口にはしなかった。
 そうすることでこの関係が崩れてしまうような気がしたから。
 だけど僕は、それを後悔するハメになるなんて……思いもしなかったんだ。

「……ねぇ、どうしよう。私、殺される」
 アスカは言った。
「見ちゃった、と思う。――人殺しの現場」
 そして、その内の一人と目が合ったとか。
 僕は彼女を守るために、すぐに行動に移した。
 だから僕はすぐに―――へ助けを求めた。
「助けてください!」「このままじゃアスカが“消される”!」「アスカを保護してください!」「お願いします!」
 僕は、弱いから。
 頭が良くても、知識があっても、この学園の魔術師ランクとしては一番下だから。

 そしたら、“彼”が言ったのだ。
「残念だけど、保護は出来ないんだよねぇ。確証もないしぃ? こっちも“そんなことで”人員は割けないからさぁ」
 そんな、と絶望に突き落とされた僕は、泣きそうになって。
「でも大丈夫!――そんなキミのために『コレ』があるのだから」
 “彼”が、くれたモノ、は。
「パラサイト・ストーン、とは、まぁちょっと違うけど。これならキミの願いを確実に叶えてくれるでしょー。……それがキミの本音と本質を引き出してくれるよ」
 さぁ! それを使うといい!
 キミの大切なモノを引き裂くような“害畜”なんて、コワシテしまえばいいんだよ!

 そして、そして、僕は。
 僕は、


 * * *


 ――目を覚ましたとき、視界にまず入ってきたのは、少し黄ばんだ白い天井だった。

「ぅおー、俺生きてた」
 まるで予想外、いや、実際本人にとって“予想していなかったこと”に驚きつつも、ルトは痛む胸を抑えながら上体を起こす。
 血を流しすぎたのか、一瞬くらっと眩暈がしたけど、それ以外は特に問題なさそうだ、と判断。
 というか、俺、ホントよく生きてたな。
 あの謎の空間での出来事は、正直途中からあんまり覚えてないけど。
「ふむ、それよりも………ここは保健室?」
 この独特の臭いと雰囲気、部屋の様相からして、病院ではないことにかなり安堵した。
 ――そのときだった。

「やめろ! 彼女に触れるなっ!! お前たちに殺させはしない!」
 ……隣の部屋だろうか、なんか聞き覚えのある声がする。
「この声、……さっきの?」
 ベッドから降りると、上履きも履かずにフラリと保健室から出た。
 そういや保険医いなかったな、とぼんやりと思いながら、未だに喚き散らす声のする方へ歩みを進める。
 まぁ、と言っても隣の部屋なんだけどさ。

 その部屋がなんなのかも確認することなく、ノックもせずに勝手に空ければ、当然ながら大注目を浴びた。
 そこまで広くない部屋に、生徒会長と優等生くんと厚化粧とピンク頭と……あとユーア、だっけ? 生徒会の第二書記、だっけ?
 なんか勢ぞろいしてるなぁと思っていると、その奥に簡素なベッドに横になる少女と、その前に立ちふさがって威嚇してくる少年。
「……ふむ、無理に壊されたのか。それでも動いていられているのは執念なのかな」
「ルト、お前、何言って……」
 一番近くにいたピンク頭のクレードが訝しげにみて、「あの怪我でもう動けるなんて、タフですね」とズレたことを言うキート。

 あとは各々が俺に対して色んな眼差しを向けるのを、まぁ今は全部丸ッと無視して。
「あんたは、何に対して怯えてんだよ」
 俺は、少年に向けて、尋ねる。
 少年は近付いてきた俺に、殺気を込めた睨みで返してくる。
「鏡ってのはさ、色んなモノを映すんだよ。俺がいた“あの空間”は、それこそお前の心そのモノを映してた、そうだろ?」
 あの空間で、俺は記憶を見た。
 そして、俺に対するあの問いは――彼自身の、問い。

「彼女に触るな? 彼女を守りたい?……違うだろ。あんたが怯えてるのは、自分以外の人間に対してだ。そんでもって、守りたかったのはあんた自身だろ」
 なんとなく、あの空間にいたとき感じた違和感。
「あの空間で見た記憶、そんでもってあそこにいた、ゾンビくん。変だと思ったんだよ。最初は鏡が歪ませてるだけだと思ったけど、“あっち”が真実だったんだろ?」
 なあ、そこで狸寝入りしてるお前に言ってんだよ。
「――――アスカ・リスティル」
 俺に牙を剥こうとしている少年を押しのけて、寝そべる少女にそう言えば、

「あはっ、
 あはははははははははははははははははははははははははははっ、あはは、あははははははははははははははははは!!!!」

 笑った。

「すっごいなぁ、よくわかったな」
 感心感心、とふざけた軽い口調で起き上がったアスカは、「んふふっ」と笑いながらフィルト・ノーツの腰に抱きついて引き寄せた。
「すみません、話が見えないのですが」
 わざわざ挙手までして質問してきたキートの隣で、ユーアが壁にもたれながらウトウトしているのをエレナが叩いて起こす。
 ……なんだか雰囲気が緩っこくて、締まらないメンバーだな。
「―――つまり、逆だった、てことだろ?」
「そうっ! エレナ大正解!」
 ピッと親指を立てて向ければ、思いの外真剣な眼差しのエレナに肩がびくりと跳ねた。
 い、いや、別に怖いわけじゃないんだぞ!


・・・其の26話目に続く。

メンテ
Re: そんな俺の御伽噺  ( No.64 )
日時: 2013/08/11 18:03
名前: くたくたのろく ID:Ujj9v1Gs

<其の26話目>

 「私はフィルトが孤独でありつつ、誰かを求めているのに気付いていた。だから、彼が思うように声をかけてやったし、傍にいてやった」
 酷く酷く、傲慢で淡々としてる声音と言葉。
「フィルトが私に惹かれているのは分かっていたし、そう仕向けていたのは私だし。そして、私が彼を好きになるのも、また想定内のことだったんだよ」
 アスカは、自分とフィルトは似た者同士であることを知っていた。
 だからこそ近付いて、なにか関係を築きたかった。
 友達でも、恋人でもいい、傍にいることを許される、そんな関係と絆と。
「最初は……それだけのことだったんだよ」
 その吐き捨てた言葉に、ルトは隣の、未だに威嚇し続けるフィルトを一瞥した。

「アスカ、あんたが『見た』のはなんだったんだよ。俺、それだけは知らないんだよねぇ」
 アスカは“何か”を見た。
 狂わされたのは、きっとソレだ。
 そう踏んで聞いてみたら、「ルト、その話はそこまでだ」と何故かエレナに止められた。
 「すまないが、ルト、ここまでだ。これ以上の話しは『部外者』に聞かせることじゃない」
 ……は? 部外者?
「いやいや、何言ってんの!? ここまできて、ここまで関係してきて、何、部外者って」
 いいから言うことを聞けとばかりに腕を引かれるが、こんな中途半端で終われるわけがない!

「アスカ!」
 フィルトの腰に頬をこすりつけていた彼女が、訝しげに俺を見た。
「あんたが見たことが原因で、フィルト・ノーツが“死んだ”んだろう!」
 血だらけのフィルト・ノーツが頭の中を過ぎった。
 彼はパラサイト・ストーンに願い、望み、そして使ったとしたら――ー
「フィルトは殺されたんじゃねーのか!? そんで、あんたは俺に助けを求めたんだろ!?」
 あのとき、アスカは「この人を助けて」と、俺に、言った。

 エレナに続いて、何故かユーアまでもが俺を部屋から追い出そうと躍起になってる。
 キートたち三人組は何やってるんだと訝しげに俺たちを見てるだけだけど。

「アスカ、お前はこの『現実』を本当の意味で受け止め切れてない! 本当はアスカ、あんたはフィルトのその状態を望んでないんじゃないのか!」

 彼女の目が、大きく見開かれた。
「アスカ、」と傍らで心配そうにフィルトがアスカの頭に手を添える。
「……………私は、フィルト、私は、」
 そのフィルトの手に重ねるように、アスカも自分の手を添えた。
 小さく、呟くようにアスカは何かをフィルトに言うと、彼からそっと離れ、少しだるそうにベッドから出た。
 そして、さっきのフィルト・ノーツのように警戒するエレナとユーアを押しのけて、俺に抱きついた。

 ……。
 ……………………………ぇえええええええええっ!?

「ちょ、なにやって!?」
「――フィルト、私からの“最後のお願い”だよ。そこにいる女二人の足を止めてとけ」
 そこからは速かった。
 フィルトは了解とばかりにエレナとユーアに突っかかり、その隙に俺はアスカに引っ張られて部屋から出ると、そのままゆっくりと、だけど急ぎ足で離れていく。
「あ、あのー、アスカさーん?」
 お、俺の心臓がドキドキ言っているぞ!
 いきなり女の子に抱きつかれて――つか、初めてじゃねぇ!?

 と、一人で興奮する俺に、
「―――お前、“あの”生徒会長とはどんな関係だ」
  え。
「か、会長ってことは、エレナのこと? エレナとは……………」
 あれ、どんな関係だろう。
 幼馴染、ではないな。 
 一度は殺されそうになった仲?……どんな仲だよ。
 旧知の仲!……うーん、なんか違う。
「まぁ、知り合い?」と無難な答えをする俺に、何故か無言なアスカ。
 おい、さっきからどうしたんだよ、この人! 誰か教えて! と心底困り始めていたら。

「……あのとき言ったこと、全部“当たり”だ」
 そして振り返り様、彼女は言った。


「フィルトは殺されたんだ。――生徒会の人間に」


 その言葉に、俺は息を飲んだ。
「そして私が見たのは、清掃部部長――“ルイ・フェルディラ”が、校長を殺した、その瞬間だったんだ!」

 刹那、ドンッ――! という轟音とともに背後で何かが吹っ飛ぶ音と、脇を物凄い速さで通り抜けていった『何か』が廊下をゴロゴロと転がり、目の前で止まるとアスカが「フィルト!」とそれに駆け寄った。
 アスカがフィルトを抱き起こすも、フィルトは彼女の頬を一撫でし、力なく笑うと、それを最後に彼に僅かに残っていた瞳の中の光が消え失せた。
「ぅ、あ、あぁっ! フィルト! フィルト!」
 彼女が彼を力任せに掻き抱くのを見て、それから俺は後ろを振り返った。
「……これはこれは生徒会長サマ。生徒の模範となるべき役職についてるはずの貴方が、こんな荒っぽいことをするなんてねぇ」
 皮肉交じりにそう言えば、フィルトをぶっ飛ばした張本人はフンッと鼻で笑った。
「彼はパラサイト・ストーンの使用者であり、死人だ。……仕方のないことだった」

 なんとでもないように言うエレナ・イルグレンツに、俺はおそらく初めて彼女に対して苛立った。
「エレナ会長、俺を助けてくれたことには感謝しよーじゃないか」
 背後でアスカが咽び泣く、悲痛の声が聞こえる。
「だけど都合が悪いことを消そうとする根性だけは、好きになれねーわ。つか、エレナ、久しぶりに再開したときは変わってないと思ったけど、」
 正義感が強くて、およそ正しいであろう善意を限りなくこなそうとする、というのが、俺のエレナに対する印象。
 つまりは偽善者なのだけど。
「変わったな、最悪な方向に」

 そう言い捨て、無表情のエレナに再び背を向けると、アスカの元へ近付く。
「……アスカ、」
 未だに泣いているアスカの肩を優しく叩けば、ひっでぇ顔で俺を見た。
 その顔に、俺は昔の自分を重ねた。

《アスカ・リスティル、あんたはどうしたい? このままフィルトを眠らせる? それとも、またゾンビにしたい?》
「わたし、は…………そもそもフィルトを死なせたくなんてなかった」
 私のせいだ、私が殺してしまったんだと嘆く彼女に、
《それなら、元に戻せばいい》
 俺はニコリと笑みを浮かべて、フィルトの目の上に左手を、そしてアスカの肩に右手を乗せた。

《――出てこい、異物! フィルト・ノーツとアスカ・リスティルという人間全てを壊し喰らい続ける石!》
 言いながら両手を浮かべると、それに吸付かれるように、石となんらかの破片が彼の目と彼女の肩から出てきた。
 それをエレナの後を追ってきたユーアが目撃し、驚いたようにエレナを咄嗟に窺うと、彼女は眉を顰め、その行為を忌々しげに睨み付けていた。

「化け物め」

 そう呟いたエレナの言葉は、誰の耳にも届くことなく、霧散した。

・・・其の27話目に続く。


よ、ようやくここまで……っ!
第二章は次の27話で終わります!

そしたら少し番外編と「ねじれ」を更新しますよー
メンテ
Re: そんな俺の御伽噺 ( No.65 )
日時: 2013/08/27 00:21
名前: くたくたのろく ID:HPhEcQEk

<其の27話目>



 一部始終を“視た”ランエリシアは、それから目の前の人物に視線を移した。
「……いきなり人のこと呼び出すから何事かと思いきや、あんた性質悪すぎ」
 言いながら自分の橙色の髪を指先で弄ぶ。
「あんま派手なことしてると、番犬に目つけられるよ。……僕は君だけは敵に回したくないと思っているよ―――理事長」
 黒革の高そうな二人がけのソファに座っているランエリシアと、テーブルを挟んだ一人がけのソファに腰掛ける男。
 その後ろには、無表情で佇む(実際は、ここ最近全く出番という出番がなくてむくれている)秘書のノラがいた。

「安心していいよ、ランくん。番犬と対立するような、デメリットでしかない愚かな行為はしないさ」
 穏やかに、ただ淡々と告げる理事長ラバル・エーベスは、どこか愉快そうに口角を上げて笑んでいる。
 それがランエリシアにも、そしてノラですら、不気味だとしか思えなかった。
「わたしはね、生徒会と反生徒会と、清掃部というこの学校の三大勢力の在り方が気に喰わないんだ」
 この学園で権力を持つ、三つの柱。
 そして、彼らの中にだけ存在する“決め事”。

 くつくつと堪らずといったように笑うラバルは、テーブルに置かれたガラスの篭から、一つフルーツを取り出す。
 それは芳醇な、甘ったるい香りを漂わす、熟れた林檎だった。
「“約束”は絶対さ。彼らの決め事とやらだってそう。――でも、わたしはわたしの“契約”に従うまで」
 コトリ、とその林檎をテーブルへ置くと、少し身を乗り出して、ランエリシアの横に立てかけてあった剣を掴む。
 十字架の形をした細剣は、ラバルが手にした瞬間見る見るうちに青黒く錆びていった。

 それを目の前で見たランエリシアは「ちょっ! レプリカと言えど大金はたいて……っ」と顔を青白くして頭垂れ、ノラに至っては感情を押さえ込むように歯を食いしばった。
「そのためなら、わたしは“彼女”ですら利用しよう。――そして、ランエリシア・シェルフィン、ノラ、キミたちにも主を裏切ってもらうことになるだろう」
 
 ダンッッッ!! と林檎の真上に剣を突き落とした。
 林檎とテーブルを貫通した細剣を、ラバルは嘲笑した。

「さて、まずはノラくん。キミに今まで起きた出来事をリアシェテに報告してきて欲しい」
「言われずとも。それが俺の、本来の仕事ですから」
 イライラした様相で、窓から足をかけて飛び去るノラに、ランエリシアはぴゅうと口笛を吹いた。
「おーおー、やっぱすげぇな。僕も飛んでみたーい」
「――ランエリシア、キミには別の仕事を任せる」
 待ってましたとばかりに立ち上がったランエリシアに、ラバルは言葉を続けた。
「リアシェテの暗殺と、引き続きルト・フォールの誘導、そして――清掃部部長の妨害」

 いいですね、と爽やかに微笑む理事長に、ランエリシアは仕事多すぎでしょと乾いた笑いを漏らすも、了承したとばかりに手を振って、部屋から出る。
 一人になったラバルは、唐突に腰のポケットから指輪を取り出した。
 少し錆びた銀色のシンプルな指輪には、内側に文字が刻まれていた。
 かすかに“フェルディラ”という名前がかろうじて読める。

「わたしは大丈夫だよ。まだ、大丈夫。キミの願いも望みも、必ずわたしが叶えてみせる」
 それがどんな結末を辿ろうとも。
 それでも、“最悪の結末”を避けるために。
「……キミが愛したこの世界を、わたしが守る」

 * * *


  突然ですが、あれから10日経ちました。


 とりあえず、パラサイト・ストーンを体内から取り出したアスカとフィルトの二人は理事長に預けることにした。
 現在理事長秘書なんて肩書きのノラは、リアシェテにこのことを報告し、一応この事件はこれで終わりということになった。
 ちなみに、フィルトの体はかなり石に侵食されていたせいか、あれから意識は戻ってないけど。

 ただ、それで元通りとは当然いかなくて。
 他の人がどうかは知らないけど、少なくとも俺の中には確実にわだかまりが残っていた。
 アスカは、フィルトを殺したのは、つまりパラサイト・ストーンを与えたのは生徒会だと言った。
 エレナとは結局あれから話すことも顔を合わせることもない。
 そして、たぶんこれが、一番俺の中で一番くすぶってるのだけれど。

 ――清掃部部長のルイ・フェルディラが校長を殺した。

 その名前が、もし俺の知ってる人物なら、正直笑えない。
 この学園にエレナがいた時点で、その可能性を考えなかったわけじゃないけど。
「んー、なんつーか……」
 ぼんやりと自分のクラスを後ろから眺めながら、俺は思い耽っているのだけど。
 授業がつまらないからって別に現実逃避してるわけじゃないと、一応言い訳してみるけれども!

 フィルト、というかパラサイト・ストーンによって土下座させられていた生徒・教師達は無事で、その当時の記憶はないらしい。
 あそこにいたクローベルも、リアスも、何事も無かったように、今まで通りで。


 ああ、そうだ。
 はっきりと言おう。
 ――――まるで、誰かの掌の上で踊らされているようで、ものすっっっっごく、不愉快極まりない!

「ああっ、もう!」
 バンッと机を叩いて立ち上がれば、驚いたようにクラスメイトたちと、黒板に何やら謎の暗号を書き連ねていた担任の先生が俺に注目した。
「先生! 何書いてんの!」
 そのままの勢いで聞いてみれば、
「え、え、魔術陣の陣形におけるスペルの特性と属性、それに関わる精霊の呼応反応を示した――」
「あ、もういいです。体調不良なんで、早退します。みんな、お疲れ!」
 謎の言語を話し始めた先生の言葉を遮って、クラスメイトに労いの言葉と共に、堂々と教室から出る。
「ルトくん!?」と言う先生の声を無視し、今日はどこ行こうかなと考える。

 ちなみに、入学式の翌日から始まった授業には、まともに参加したことがない俺。
 無理だぜ、まじで、意味不明すぎるもん!
 この学園に入学するために受験勉強したけど、いや、ホント、俺なに勉強してたんだろうとか思ったし。
 
「あ、ルト」
「お、ユーアじゃんか」
 そうだ、変わった事と言えば、これだ。
 生徒会の人間だけど、ユーアとは授業やら仕事やらサボる仲間として、ここ最近は一緒にどこかでいることが多い。
 ユーアはサボった先で寝て、俺はぼんやりとしてるだけだけど。
 ユーアは『サボタージュ同盟』の会員が増えて嬉しいと言ってたけど、今のところ、俺たち二人だけらしい。
「今日はどこで同盟活動するー?」
「図書館、は?」
 お、いいね。
 たまには読書もいいか、と俺は笑った。
 



                                 END「熟れた林檎と錆びた十字架」
                                →NEXT「壊したものと壊されたもの」
メンテ
皆さん、お久しぶりですッ! ( No.66 )
日時: 2018/04/26 00:44
名前: くたくたのろく ID:3z/x9yDY

お久しぶりです、くたくたのろくです!……いや、もう私を知っている人いるんだろうかってくらいお久しぶりです!←

気が向いて久方ぶりにこのサイト覗いて、ついでに自分の作品あるか確かめたら、あったという奇跡☆
………投稿日見ると、あれから5年経ったようで……あ、涙が(´;ω;`)


さて、ここからが本題。

実は自分のこの作品読みながら、ちゃんと完結してあげたいという想いがこみ上げ、ついに別サイトにて加筆修正したものを掲載することにしました!
本当は自分の原点でもある、このサイトでやり直したかったけど……やっぱルビ振りとか、使えると楽じゃん?←

という作者の我儘と願いによって、このサイトの作品は凍結することにします。
完結出来ず、放置してしまい、楽しみにしてくれた読者様方を裏切ったことへのお詫びと、
いまだこのサイトで執筆活動してる作家様方への応援をさせていただきます。


頑張ってください、私も頑張りますっ


※あ、別サイトというのは「小説家になろう」です。
良かったら見に来てくれると喜びます(くたくたのろくが!←)






追伸(個人的な私信とも言う)

見てくれるか分からないけど、K様へ。

「アベライル戦記」執筆活動、お疲れ様です。
もう私のことなんかお忘れかも知れませんが、この「そんな俺の御伽噺」を執筆してた頃、たくさんの読者様に励まされてきました。
その中でも、K様の度々の感想に、毎度口許を緩めていたことを思い出しました。
現に今も、そのやりとりを読み直し、ニヤニヤしてる自分がいる←

5年という長い年月を経て、今更ではありますが、当時この場所で執筆してた私の背中を押してくれていたK様に、特に深く深く謝罪したいと思います。
そして、「アベライル戦記」の完結を願い、常に応援しております。


                            くたくたのろく
メンテ

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