さくら、ジュース、毒:カニクリームコロッケ戦争 ( No.193 )
日時: 2012/08/15 23:59
名前: 朔乱 ID:whLMJ2Rw


 ユタヒア王国の王都はいつもより慌ただしかった。隣国マイフェニア王国から王女様が来たからだった。ユタヒアの騎士や将軍は王女様になにかあってはいけないと、貴族や家臣たちは王女様の機嫌をそこねてはいけないと、朝からバタバタとしていた。

 王都に住む庶民たちも例外ではない。将軍や家臣たちは政治的な意味もあって慌ただしかったから、庶民たちの慌ただしさとは全く同じというわけではないが、騒がしいのには変わりがない。
 王都の外れにある酒場でも王女の話題で持ちきりで、昼間から酒に酔ったゴロツキ共が「姫様のきめ細やかな白い肌を俺の不精髭で真っ赤にしたい」「姫様の胸の重さはどれくらいだろう」などと勝手なことを言っていた。


 その酒場の隅っこに二人、変態がいた。

「俺はだな。ミーア王女の手の甲に口付けをしたことがあるんだ」

 旅人の格好に短剣を下げた男は自慢気に言う。この男の名前はアトラス。元々はマイフェニア王国でミーア王女の護衛を任された騎士隊長だった。しかし、王女を愛するあまりに護衛とストーカーの区別が付かなくなり、王城を追い出された。今は旅人のフリをして、こっそりと王女を追いかけ回す生活をしている。


「はいはい。その話は何度も聞きました」


 うんざりとした様子で言葉を返す小柄な男も旅人の格好をしている。この男の名前はロベルト。元々は田舎の農家の生まれで家庭も裕福ではなかったが、地元で戦争が始まるとその血に飢えた本性を表し、各地で虐殺に近い戦闘を繰り返した。ところがアトラスに出会ってからはその全ての感情を王女へと向けている。今はアトラスの従者として、アトラスと共に王女を追いかけている。従者であるロベルトがアトラスへの礼儀がないのはアトラスをただの旅人に見せるための偽装と「ミーア王女を愛する兄弟に上も下もない」というアトラスの意志からである。

「しかし、ユエルのやつはまだ来ないのか?」


「遅いですねぇ。今回はあいつだけがいい思いをしてるからなぁ。さっさと戻ってきて土産話でもしてくれないと、旨い酒が飲めないってやつですよ」


 二人は冷静を装いつつも、身体を忙しく揺らして酒場の出入り口を見つめる。ユエルがやってきたのは丁度そのときだった。ユエルはすぐに二人を見つけると、どこかからイスを持ってきて座った。

「ごめんごめん。遅くなったよ。いやぁ、楽しかった」


 ユエルは太っているわけではなかったが、実践的で引き締まった筋肉を持つアトラスやロベルトと比べるとだらしなかった。
 それというのも、ユエルは元々土埃にまみれる生活とは無縁だったからだ。ユエルは王立魔法学校の准教授だった。

 十六歳のときに史上最年少准教授となり、最近では教授就任の話も出ていた。ところが、ユエルは王女に一目ぼれをした。それからはあらゆる魔法の知識とセンスを使って王女の「研究」に没頭するようになり、気が付くと学校には自分の居場所がなくなっていた。そんなときにアトラス達と出会い、ともに行動するようになった。

 今回の王女の遠征では魔法を上手く使い、王女の荷物を運ぶ人夫として王女の行列に紛れ込んでいた。

「それで、どうだったんだ」

 ユエルが席につくとまもなくアトラスが詰め寄った。

「残念だけど、ミーア王女の私物は運ばせてもらえなかったよ。だけど、ミーア王女の乗る馬車の少し後ろにまではこれたんだ。あぁ、王女様を通り抜けた風が自分に浴びせられると考えると……今でもにやけてしまう」

「くそぅ、なんと羨ましい。それで、王城にも入れたんだろう?」

「うん。それで夢中になっちゃって、遅くなったんだ。食料庫にも入ったよ」

「俺は王城という場所に入ったことはありませんが、そんなにうろうろできるんですかぁ?」

「ふふふ。私の魔法と、王女への愛をなめてもらっては困るよ。ところで、食料庫に珍しいものがあったよ。なんだと思う?」

「食料庫か。つまり今晩のディナーで出されるものだな。王女様の好物はキウイとレタスと浅漬けだな。この中で珍しいものというと、やっぱりキウイか?」

「はずれ。なんとね。カニがあったんだよ。すごいだろ? カニだよ。あんな高級食材を用意するなんて、ユタヒアもよっぽど王女様に好かれたいらしい」

「なんだと、カニだと!?」

 アトラスは急に立ち上がると、大声を出した。突然のリアクションに流石の二人も驚く。

「いやいや。そりゃあ、俺はカニなんて食べたことも見たこともありませんけど。そこまで驚くことですかぁ? 王国なら、それぐらい用意できるでしょ」

「いや……違うんだ。ミーア王女は、王女は……カニアレルギーなんだ!」

「なんだって。そんなこと初めて聞いたよ!」

 聞いて二人も青ざめる。王女がカニアレルギーだということは長年研究をしてきたユエルでもしらないことだった。

「昔一度だけ、王女様が召し上がったことがある。その時は三日三晩寝たきりになった。カニなんて滅多に食べるものじゃないからな。その時もただの体調不良として扱われて、知っているものも少ない」

「でも、毒見役はいるんですよね? いくら知っている人が少ないとはいえ、毒見役なら知っているでしょ」

「いや、それが……」

 ユエルが唇を震わせながら言葉を発する。二人は目を見開いて、早く言えと合図した。

「シェフが楽しそうにホワイトソースを仕込んでいた。揚げ物用の大きな鍋も用意さていたよ」

「おい、まさかそれは……」

「あぁ、今夜のディナーはカニクリームコロッケだ」

「そんな馬鹿なぁ!」

 三人は一斉にテーブルを叩いた。グラスがはね、客の目を引くが三人は気が付かない。

「クリームコロッケにカニが入っているかどうかは、言われなければなかなか気が付かない。ましてや、高級食材であるカニが潜んでいるとは夢にも思わないよ。私は医療分野には詳しくないけど、アレルギーの恐ろしさは本で読んだことがある。最悪、王女様は命を落としかねないよ」

「でも、どうしてカニなんか使おうとシェフは思ったんでしょうね」

「おそらく枢機卿だ。今、マイフェニア王国の内政はよくない。何かしらのイチャモンをつけてユタヒア王国と戦争をしようっていうんだろう。王女様の訪問に枢機卿がついてくるなんておかしいと思ったが、そういうことか」

「王女様を政治の道具にするなんて、許せないですね。コロッケの具にしてやりましょうか……!」

 悲しみから一変、三人は殺気立つ。それでもユエルは冷静だった。

「まずは王女様の安全を確保しないと」

「あぁ、そうだな。それにはまず王城に忍び込む必要があるが……うむ、それはなんとかなりそうだな」

「そうですか。じゃあアトラスに任せましょうか。次はどうやってカニクリームコロッケを王女様に食べさせないようにするか。ですね」

「私たちが食べてはいけないと言ったところで信じてもらえるかどうか……」

「無理だろうな。こういうのはどうだ? 王女の飲み物をこっそりとお酒にすり替える。王女はお酒が弱いから、一口飲んだだけで眠ってしまわれるだろう」

「お酒……いい案かもしれませんが、愛する王女に毒を盛るようなこと、私はできません」

「だが、酒に酔い乱れるミーア王女をみたいとは思わないか」

「なるほど、それはみたい!」

「なんて破廉恥なことを言っているんですか!」

「ミーア王女の外見しか見ていない愚か者は黙ってろ!」

「黙りませんよ! 王女は心の芯から溢れでる清楚さが美しいんです。酒に心を蝕まれた王女など見たくはありません」

「なるほど、それも一理ある」

「なっ!? ユエル、貴様裏切ったなぁ!」


 ☆


 ユタヒア王城の東門。ここは物資を運ぶのに使われる門で、他の門よりも地味だったが、一番大きな門だった。今日はマイフェニア王国の王女がやってきたせいで、いつもより出入りが多く、門番は疲れきっていた。

 今はもう王女の荷物は全て城の中に入り、落ち着いている。そこへ荷車がやってきた。

「こんばんは。お疲れ様です」

 荷車を引く男は愛想良く門番に挨拶をする。それから、慣れた手つきで王女の使いであることを示すカードを門番へ見せた。門番はそれに照合機にあてて、本物であることを確かめる。

「随分と遅い到着だな」

「はい。アルンブルグ公爵が遠出をする王女様のために、急遽自領のりんごジュースを用意されたのです。王女様はこのジュースが大好きなんですよ」

 男はそういいながら、アルンブルグ家の使いを示す紋章の入った証明書を見せる。こちらも本物だった。

「もしや、そのジュースは「ミーア王女の搾りたてアップル」じゃないか?」

「えぇ、そうですよ。はい、どうぞ。王女様はこのジュースが世界中に広まるようにと、出会った人にプレゼントするよう言いつけられています」

 男はビンのパッケージをよく見せてから、門番に渡す。

「おぉ! これは嬉しい。このジュースの噂はユタヒアにも届いている。一度飲んで見たかったんだ。ありがとう。王女様にもお礼を伝えてくれ」

 男は深々とお辞儀をすると、愛想のいい笑いを浮かべながら門をくぐった。門番は荷車を見送ったあと、有難そうにジュースを飲むとすぐに眠ってしまった。

「なんとか入り込めたようですね」

 荷車の中に潜んでいたロベルトとアトラスは顔を出す。

「まだ門をくぐっただけだよ。これからが大変だ」

「しかしジュースといい紋章といい、どうやって手に入れたんですか?」

「ジュースは我が家に常備してあるのをお前も知っているだろう? あれをユエルの転送魔法で持ってきた。紋章は俺が昔使っていたやつだ」

「え、このジュースはアトラスのとこで作っているんですか?」

「俺の叔父が作っているんだ。まぁ、俺はもうアルンブルグ家の人間じゃないけどな。いつか使うだろうと思って紋章だけは持っていたんだ。ところで転送魔法が使えるなら、それで俺たちを城の中に運べば良かったんじゃないか?」

「それはできないんだよ。城の中はどこも魔法探査機がしかけられているんだ。簡単な魔法なら偽装できるんだけど、転送魔法は最近私が発見した高等魔術だから、偽装は難しいんだ」

「やっぱりユエルはすごい人なんですね。何を言ってるのかさっぱりですよ」

「因みに、転送魔法を見つけたことを祝う席で初めて王女様に出会ったんだ」


 ☆

 それから三人は城中を歩き回り、睡眠薬の入ったジュースを配った。

「よし、もういいだろう。予定通り、ユエルとロベルトはできる限りの証拠を集めてくれ。俺は王女がカニクリームコロッケを食べないように時間を稼ぐ」

「結局、アトラスがおいしい役だよね」

「さっさと終わらせましょうよ」

 三人は食堂で集まることを約束すると、別れた。


 ☆


 食堂ではマイフェニアのミーア王女と枢機卿、ユタヒアの王族たちがディナーを始めようとしていた。すぐにシェフが腕によりをかけたカニクリームコロッケが出される。

「まぁ、コロッケね。中身は何かしら?」

「中身は食べてからのお楽しみということでございます。ミーア王女」

 料理を運んできた男は深く頭を下げたまま、丁寧に答える。

「そう、なら少し下品ではあるけれど、切らずに食べたほうがいいのかしら。そう考えると、このコロッケが少し小さいのも意味があってのことなのね」

 予算の問題から材料のカニが少ししか手に入らず、そのためにサイズが小さいことなど、王女は気がつかない。カニクリームコロッケをまるごとフォークで刺し、小さな口を開ける王女を、枢機卿が不気味に見つめていた。

「ミーア王女。そのコロッケを食べてはいけない!」

「なんだお前は!」

 アトラスが食堂の扉を蹴破って入ってくる。自分の呼びかけによって、目を丸くしてアトラスを見る王女に胸が高鳴る。

「お前は……アトラス・アルンブルク。危険人物だ。すぐに追い出せ!」

 枢機卿の言葉を聞いてユタヒア王は衛兵に指示をだす。衛兵たちは数でアトラスを抑え込む。

「ミーア王女。ご無礼をお許しを。ですが、どうか聞いて下さい。そのコロッケには……」

「ミーア王女! 覚えていらっしゃいますか。アトラス・アルンブルグ。以前王女の騎士隊長をしていたものですぞ」

 枢機卿は汗をかきながら、アトラスの言葉が王女に聞こえないように割って入る。

「アトラス……あぁ、あの変態の。こんなところまでつけてきたのね。恐ろしい」

「ミーア王女、決して彼の言葉を聞いてはなりませんぞ。さぁ、飲み物を飲んで、コロッケを食べて、気を沈めましょう。大丈夫です。アトラスはユタヒアの衛兵がすぐに連れ出すでしょう」

 王女はコクリと頷き、りんごジュースを飲む。そして、フォークに手をかける。

「王女おおおおお! 好きだああああああ!」

「流石にこんな状況では何も食べられないわ。飲み物を頂戴」

「チッ……まだ手こずっているのか」

 枢機卿はアトラスのほうを見て一瞬険しい顔したあと、すぐに柔和な表情に戻って王女のグラスにジュースをつぐ。
 アトラスは衛兵たちに押しつぶされていた。

「光よ。汝の輝きをもって全てを白に染めよ!」

 突然カメラのフラッシュのような光が部屋中を満たす。突然の光に脳が驚き、そこにいる全員の思考が止まった。

「あぁ、恍惚としたミーア王女も可愛らしい」

 全員がポカンとしている中で、ユエルが一人幸福感に浸る。

「おや、アトラス。君は男と抱き合う趣味があったのかい?」

 ユエルに呼ばれて、衛兵たちと絡み合った状態になっている自分に気がつく。

「馬鹿を言うな。俺はミーア王女にしか興味はない。ところで、証拠はもう見つかったのか?」

「もちろん。枢機卿、あなたの部屋からミーア王女の診断書と漁師との取引が書かれた帳簿を見つけました。どうやら、カニはあなたが用意したみたいですね」

「何をデタラメなことを。私の部屋にはちゃんと鍵も封印もかけてある。入れるはずがないだろう。王女、聞いてはいけません。あいつらは王女を我がものにしようとしているだけなのです」

「貴様のようにもの扱いなどしない。もっと大事にする! それと、部屋の小細工についてだが、あんなものは私の愛の力にかかれば一瞬で破壊できる」

「おいまてユエル。お前今、診断書って言ったか?」

 アトラスが真顔で割って入る。ユエルは勝者の余裕を見せる微笑を浮かべた。

「あぁ、診断書だ。大丈夫。もう全て暗記したから」

「そういう問題じゃ……! いや、そういう問題か。ふむ。後で写したものをくれないか?」

 ユエルは胸を張って親指を突き立てて答える。アトラスも同じようにして、感謝の気持ちを伝えた。

「まって。あなたたちは一体何の話をしているのでしょうか?」

 王女は首を傾げる。その姿に二人は魅了され、舌が回らなくなってしまった。

「そこにいる枢機卿が、このシェフにカニクリームコロッケを作らせたんですよ。王女様」

 シェフを担いで、決めポーズを取りながらロベルトは言う。しかし、緊張して王女を直視することはできず、床を見ていた。

「そんな……。本当なの!?」

「ミーア王女、あんなやつらのことを信じてはいけません。ほら、何をしている! さっさとこいつらをつまみ出せ!」

 衛兵たちが三人を取り囲む。増援が来ているのか、部屋の外からたくさんの足音が響く。

「へへっ、こりゃあ、久しぶりに暴れるしかないみたいですねぇ」

 ロベルトは凶悪な笑みを浮かべて、愉快そうに話す。アトラスは短剣を抜いて心を落ち着ける。

「あぁ、そうだな。だが、忘れるなよ。誰の血であろうと、ミーア王女には一滴も見せない!」

 二人は宣言通り、誰の血を流すこともなく敵を倒して行った。その戦いの中をうまくすり抜けて、ユエルは王女のところへと向かう。ミーア王女の騎士が立ち塞がった。

「待て、それ以上近寄るな!」

「あなたたちがミーア王女の騎士ですか? それにしては、愛が足りない」

 騎士六人全員の足元に魔法陣が浮かび上がる。騎士たちが気がついた頃にはもう遅かった。

「消えなさい」

 ユエルが指を鳴らすと魔法陣に穴が空き、騎士たちは落ちていった。それを怯えた目で見る王女にユエルは笑いかける。

「安心して下さい。マイフェニアの地下牢へと送っただけです。普通の魔法使いでは一人を百メートル転送するのがやっとでしょうが、ミーア王女への愛に溢れた私なら、数十キロ先に六人を転送することぐらい簡単です。さぁ、こちらにきてください。ミーア王女に危害が及ばぬよう、結界を張ります」

 ユエルは王女を部屋の隅にまで連れてくると、結界を張った。結界は攻撃を防ぐだけでなく、外からも中からも見えないようになっていた。
 結界の中はユエルと王女だけになる。ユエルは結界を張り終えると王女の視界に入らないように数歩下がり、声が出ないように注意してから

「密室きたあああああああ!」

 叫んだ。

「アトラス。ユエルがぁ!」

 ロベルトが慌ててアトラスに報告する。アトラスもそれを確認して焦る。

「クソ、あいつめぇ……だが、これで手加減しなくて済む。さっさと終わらせるぞ!」

「あぁ、でも。二人っきりだなんて……何か間違いでも起きませんかね?」

「今は仲間を信じるしかない! ミーア王女の騎士隊長というものを見せてやる」

 アトラスは剣を突き上げると、身体中に炎を纏った。怒りと嫉妬で燃え盛るその炎は、王城を焼き尽くす。


 ☆


「終わったみたいですね。あーあ。これはまた派手にやっている。修復魔法をかけるので、もう少しそこで待っていてください」

 ユエルが結界から出て、一分もしないうちに結界は解かれた。焼け焦げた王城は全て元に戻っていて、食卓に並ぶ料理もカニクリームコロッケ以外は全て元通りだった。
 そして、王女は縄で縛られた枢機卿を見つける。

「この男はマイフェニアとユタヒアの戦争を望み、ミーア王女がカニアレルギーだということを知っていてわざとシェフにカニクリームコロッケを作らせました。ミーア王女、この男をいかがなさいましょう」

 枢機卿は必死に首を振って王女に訴える。しかし、王女の目は冷たかった。

「形はどうであれ、この三人の愛は本物であると、わたくしは感じました。三人の無礼は決して喜ばしいことではありませんが、わたくしは、三人の言うことを信じます。この男を父上の元へ送りなさい。処分については父上にお任せします」

 ミーア王女の手紙と共に、枢機卿は転送魔法によってマイフェニア王のところへ送られた。
 アトラスが口を開く。

「ところでミーア王女。実は、私たち、少し……いや、かなりやりすぎてしまいまして。その、ここ、制圧してしまいました」

「どうして謝るのです? 褒め称えるべき武功ではありませんか。あなたたちには本当に感謝致します。なにか、わたくしにできることでしたら何でも言ってください」

「それでは、私と結婚してください!」

 三人は声を揃えて、上ずりながら叫んだ。王女は軽く微笑する。

「それはできません。ですが……」

 王女はぐいっと顔を近付ける。王女から出るいい匂いが三人の顔を真っ赤にする。

「わたくしの奴隷になりたいと言うのなら、考えてあげますわよ」

 王女は囁いた。


 ☆

 こうして、三人の活躍により王女の命は救われ、ユタヒア王国はマイフェニア王国の領地となった。これを、カニクリームコロッケ戦争という。
 また、物語としても大変人気があり。
『王女の命を狙おうとする枢機卿と隣国の王子を三匹の犬がやっつける」
 というおとぎ話は大変有名である。