ホームに戻る > スレッド一覧 > 記事閲覧
[4993] 【2016年度】お題小説スレッド【お題「去る」作品投稿期間】
   
日時: 2016/01/12 23:57
名前: 企画運営委員 ID:7PNV346o



『お題小説スレッド』へようこそ。こちらはあるお題に沿って読みきり小説を書き、その作品をみんなで批評し合う場です。
 初心者も上級者も関係ありません。うまくなりたいとお思いの方であれば、だれでも自由に参加することができます。一生懸命執筆し、一生懸命批評して、小説の技術を高め合いましょう。
 皆様のご参加をお待ちしております。

――――――――――――――――――――

>>002 【ルール説明】:必ず熟読して下さい。(※内容、一言の箇所を訂正しました。ご確認ください)
>>003 【批評のポイント】:批評をする際のポイントをまとめたものです。
>>004 【イベントルール説明】:イベントに関するルールです。必ず熟読してください





▼お題:第32回のお題は「種」です。
 二月に種をまくのか? と思いましたが、調べてみるとじゃがいもは二月にまくそうですね。……さらに調べてみると一年中、なにかしらの種をまいてるみたいです。
 そんなことは置いといて。「種」というお題には「たね」以外にも色々な解釈があると思います。みなさんがどのような作品を投稿してくるのか、楽しみにしております。
※第30回の作品投稿期間は2月1日(土)からです


▼お題:第33回のお題は「姫」です。
 三月なので(笑)
 というのはよくわかりませんが(ひなまつりだから?)「ひめ」というのは可愛らしい語感ですよね。私は緑の黒髪をした和服姿が思い浮かびます。桃色が似合いますよね。桃色……やはりひなまつりでしょうか。それでは、みなさんの作品お待ちしております。
 
※第31回の作品投稿期間は3月1日(土)からです


▼お題:第34回のお題は「嘘」です。
 嘘でした。


▼お題:最終回のお題は「魔法」です。
 奮ってご参加ください。


▼お題:第36回のお題は「友情」です。
 ネタでした。


▼お題:第37回のお題は「音」です。
 奮ってご参加ください。



▼日程(第32回)

1月1日       :お題発表
2月1日〜15日   :作品投稿期間
2月16日〜28日  :批評提出期間


▼日程(第33回) 

2月1日     :お題発表
3月1日〜1月15日 :作品投稿期間
3月16日〜30日 :批評提出期間


▼日程(第35回) 

6月1日     :お題発表
6月1日〜7月31日 :作品投稿期間
8月1日〜   :批評提出期間



▼注意もしくは削除対象となるお書きこみ
・荒らし
・荒らしへの反応
・自分や他人の小説の宣伝
・雑談、チャット化
・ルールに反するもの
・管理人が不適切と判断したもの

――――――――――――――――――――

>目次 >>001


>第32回 お題『種』参加作品(敬称略)

>>404 sakana:シロハの辻褄
>>405 伊達サクット:赤い種、青い種

================================================================================

▼リンク
小説講座/雑談所』(お礼や言い訳等はこちらへ)
旧お題小説スレッド』(前スレはこちらから)
ツイッター』(朔乱のアカウントです。お題の告知などをしています)

管理人:If 空人 朔乱  補佐:伊達サクット
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

お題「旅」総評 ( No.381 )
   
日時: 2013/09/30 02:13
名前: 企画運営委員 ID:SHUhIe2M

 今回、色々書けそうな「旅」というお題でしたが、参加者が少数に留まったのは残念でした。まあ、どんな企画にも必ず黄昏の時期というか、賞味期限はありますし、波もあります。しかし、ファンタジー小説が好きな書き手がいれば細く長くやっていけるので、そこまで心配はしてません(笑)。
 どの作品も真っ向から「旅」を前面に押し出した作品でした。個人的に、こういう傾向の方が好きです。風雨さんは結果的にいい旅で、自作と空人さんは悲しい旅といったところでしょうか。風雨さんの旅は思い返せて、自作と空人さんの旅は思い返せない。ただ、心情的に訴えるものがどの作品にもあったと思うので、決して単なる「移動」では終わらなかったのがよかったです。
 次回は「フリー」です。お題無しでいいと捉えるか、それとも「フリー」という概念をお題として捉えるか、参加者の自由です。
 みなさまの投稿、お待ちしております。
メンテ
Re: 【十月期お題「フリー」】お題小説スレッド【九月期お題「旅」作品投稿期間】 ( No.382 )
   
日時: 2013/09/30 22:04
名前: 空人 ID:wVQJbDSw

おつかれさまでした。


>>376 伊達サクットさま:風の旅人

 その土地に暮らす人々の営みに、温かな風を運ぶ精霊の旅。
 しかしそこにあったのは、柔らかな表情ばかりではなくて。
 旅人の肩の上を渡り旅をする精霊という設定が、とてもほほえましかったです。
 でもその顔に笑顔はなく、人と深く関わるほどに悪くなっていくというのは少し悲しいですね。
 序盤にでも柔らかな表情を見せてくれていたら印象的だったかもしれないです。その果てが悲しい結末だったとしても。
 視点を変え、オムニバスに展開する物語がとても楽しかったです。
 時代ごとにしっかりした世界の背景もあって、人類の発展と衰退が描かれているのが素晴らしいと思いました。
 結末は悲劇だったかもしれないですが、語りがやわらかく、どこかやさしいお話になっていたと思います。


>>377 風雨さま:融解の温もり

 探していたぬくもりは、しかし旅人が目指した先にはなくて。
 戻った道に、しかして探し物はあったのだと気付く。
 冷たい景色の中に浮かび上がる、人々の温かさが素敵でした。
 でも、すべての文が断定、もしくは過去形で書かれているため、一瞬時間が戻ったのかなと勘違いしてしまいました。
 名前がついている登場人物が少なく、特に女性に見られたのですが、同じような口調やリアクションをしていたのにも理由があるのかも知れません。
 同じ冬でも変化を付けて、時間を感じさせることができたら読みやすくなったかも知ませんね。
 

>>378 自作:ノアがはこぶね

 設定を語りきれてません。
 それなのにごちゃごちゃと説明が続いてしまい、解りにくかったと思います。
 せめてリオがどうなったかを書くべきだったのかも知れないですね。
 あと、ノアを人間っぽく書きすぎ、とか……。


お題が『旅』ということで、長い時間の流れを描いたものが集まったように思います。
ゆっらりとした気分で読むことができました。
ご参加ありがとうございます。

さて、次回は『フリー』どんな作品が集まるのか楽しみにしたいと思います。
ではー。
メンテ
Re: 【十月期お題「フリー」】お題小説スレッド【九月期お題「旅」作品投稿期間】 ( No.383 )
   
日時: 2013/10/02 21:33
名前: 企画運営委員 ID:SQT52vhs

第29回の作品投稿期間となりました。
作品投稿期間は10月1日(火)〜10月15日(火)までとなります。
ルール説明>>002 を熟読の上、ご参加ください。
皆様の力作お待ちしております。
メンテ
あなたの好きな色の橋 ( No.384 )
   
日時: 2013/10/15 00:00
名前: 白江 ID:/Iwv/aCs

 わたしの住んでいる村のはずれには、村から外へ出ていくには必ず通る、小さな橋があった。
 浅い小川に架かっているその橋は、都会よりも随分寂れて見える村の風景に馴染まない、水色の石材で造られていた。
 村の家々に使われている石材は、大抵灰色。しかし、その橋だけは水色で、村に初めてやってくる商人たちも珍しがった。水色の石材とは珍しい。さらに、その石材で橋を架けるとは。彼らは口々にそう言ったが、わたしにはその珍しさがわからなかった。むしろ、変だと思った。水色の石で造られた橋なんておかしい。橋の手前までは明るい茶色の土の道が続いていたのに、突然水色がそこに現れている。それは珍しいというよりも、明らかに異質な感触がした。
 なんでも、わたしの村に昔住んでいた有名な建築家が、その小川に橋が架かるともっと便利になるからと建築を依頼され、どうせなら前衛的な橋を造ってやろうと息巻いたらしい。よせばいいのに、当時の村人たちも、珍しい橋ができればこの村にもっと人がやってくるかもしれないぞなんて興奮してしまったのだ。そうして出来上がったのが、水色の橋。できた頃はそれはもう、都会からも人がやってきて、素敵だとか、珍しいだとか、そういう瞳であの橋を取り囲んだ。けれど、そんなものは一瞬だった。人はやってくれば、帰っていく。ただ珍しい橋のために、例えば廃れゆくこの村に移住を決め込むような人はいない。やってくる商人や村人が、少し言葉を残して帰っていくだけだ。前衛的な建築も、長い年月が立てば、珍しさだって損なわれていく。たったそれだけの要素が、長生きするはずがないのだ。それから橋は村に存在し続けたけれど、造った建築家はずっと昔に亡くなってしまったし、造られた当初のことを覚えている人も、もう随分老齢になってしまっている。生まれた頃からあの橋を見ているわたしには、やっぱりそれは珍しくは見えない。
 そんなある日のこと、村に旅人がやってきた。
 徒歩でやってきた旅人は、わたしより少し年上くらいの男の人らしかった。荷物は多くなかったが、身に着けている薄い茶色のローブは、高原を歩いてきた証にかなり日に焼かれてしまっているらしい。――らしいというのは、実際に見ていないからだった。旅人が村長の家に招かれているという情報を耳にしたのも、そんなことは知らないまま、家で家事をこなしていた時だった。
「あんたも、旅人さんに挨拶してきなさい」
 お母さんが言った。村にやってくる旅人は、大抵手厚くもてなされる。最初に村長の家に招かれて、そのまま夜まで宴会だ。その間、村人たちは旅人のところへいって挨拶を軽く済ます。もう村の総人口だって多くない。村自体がもう大きな家族みたいなものだったから、そこにやってくる旅人は、例え村長の家にいたとしても、こちらがもてなしているとして挨拶をすべきだというのだ。その感覚はなんとなく理解できたけれど、ちょっと面倒だった。
 井戸に水を汲みに行くついでに挨拶をしてくるつもりだったが、結局行かなかった。井戸から水を汲んだ後、しばらくゆっくりして、さも村長の家に行ったかのような顔で家に戻った。お母さんは、村人さんの様子を問うてきたが、村長と深く話をしていて、ほとんど話せなかったと言っておいた。どうせすぐに出ていくんだから、別にいいだろう。





 次の日、お昼頃にあの橋の傍を通りかかると、橋の上に人がいた。明らかに古びたローブ。旅人さんだ。
 彼は橋の真ん中あたりの欄干に肘を乗せ、小川の流れをじっと見つめていた。しばらく眺めていたが、こちらに気付かず、また動く気配もなかった。ただ橋の上で、ただ川を見つめているだけ。何か川に珍しい魚でもいるのだろうか。しかし、水色の橋の上にいる旅人さんというのも、なんだか新鮮な心地がする。普段はあれだけ変にしか見えない橋も、その上に立つ人が見慣れない人だと、ちょっとは違った感じに見えるものなのかもしれなかった。
「旅人さんですよね」
 わたしは気になって、結局話しかけてしまった。
 彼はわたしに気付くと、ふっと顔を上げ、きょとんとした顔をした。
「ああ、僕のことか。うん、昨日この村にやってきた旅人です」
「昨日は、村長が無理なことをしたりしませんでしたか?」
 随分前だが、旅人がやってきて大層喜んだ村長が、宴会を盛大にもてなしたのはいいけれど、もてなしの度が過ぎて、旅人さんに酒を飲ますわ無理に食べさすわで、旅人さんが怒ったことがあったのだ。嬉しくて酒を飲んだために酔った村長さんが悪いのだし、それから反省もしていたので、まあ大丈夫だとは思うけれど。でも、再び起こる可能性もなくはない。目の前にいるこの旅人さんも、随分久しぶりの来客なのだ。
 しかし、わたしの心配ははずれもいいところだったようだ。
 旅人さんは微笑んで首を振る。
「いいや、特に。いい人だね、村長さんは。とても良くしてくれたよ。食べ物もおいしい」
「そうですか。それはよかった」
「君は村の人?」
「はい。ちょっといったところに住んでます」
「まあ君に限らずこの村の人は、誰でもちょっといったところに住んでるだろう」
「それを言ったら、ここにいる時点で村の人なのはわかるはずでしょう」
「違いない」
 変な人だなあ、と思った。
「この川は綺麗だね。やっぱり、都会や王都と違ってのどかだ。こうしているだけでも時間が潰せる」
「暇なんですか?」
「君ね、旅人に暇なんですかなんて無粋な質問はしちゃいけないよ」
「どうしてです?」
 実際、暇なのでは? 心の中で呟く。
「旅人に暇なんてないさ。というよりも、大忙しだよ」
「川を眺めているだけなのに?」
「川を眺めることに一生懸命なのさ。夢中っていうのかな……確かに、時間は有り余ってると言えばそうかもしれないけど、でも、それは別にやることがないからじゃない。旅人って、その場その場がみんな新鮮なものじゃないか。だから、こうしている間も、とにかく楽しんでみようかなと、時間を費やしているというわけ」
「呆れます。旅をするっていうのは、そんなに楽しいことなんですか」
「楽しいさ。こんな風に、珍しくて綺麗な橋に出会えると、特にそう思う」
「綺麗?」
 彼は石造りの欄干に、ぽんぽんと手を叩いてみせた。
「うん。綺麗じゃないかい? この色。僕は好きだよ」
「水色が好きなんですね?」
「水色? そうか、水色か……なるほどなあ……」
 旅人さんは、わたしを見てくすくすと笑った。それから、気を取り直したように口を割る。
「好きな色はたくさんあるよ。面白いのは、この色が橋に使われているというところさ」
「面白いんですか? それって、水色が好きで、その水色が使われているのが好きってだけなんじゃ」
「なんか君、すれてるね」
「すれてる?」
「理屈っぽいと言うか、冷めてるよね」
「よく言われます」
 冷めてると言うか、情熱がないとは言われる。
 しかし、この小さな村で育ったわたしに、何か熱中できるものを見つけろと言うのも難しい話だ。それはもちろん、勉強して王都へ行くもよし、家事や牧畜をするもよし、家業を継ぐもよしと選択肢はあるけれど、どれもまあ、そのうち決める時期が来るだろうとなんとなくの気持ちでいる。まだわたしは十六である。あと四年くらいだろうか。それくらいになったら、もう少し大人になって、彼が評価したような、理屈っぽいとか冷めてるとか、そういう自分とはおさらばできているといいのだが。しかし、おさらばできる未来がどうしても予想できない。こういう感傷が、むしろ冷めているなによりの証とも言えるけれど……でも、具体的なところがいつまでも見えないのだから、きっとおさらばするのも難しいんだろう。
 旅人さんは身を翻して、橋全体に目配せした。
「僕は旅をしてきたんだけど、大抵の橋が、まあほとんど灰色の石で造られていた」
「まあ、それが普通でしょうね。ここのがおかしいだけです」
「誰がこの橋を造ったのか、君は知っている?」
「知っています……建築家、ですね。この村出身の」
「そうさ。僕は彼の写真集を王都の図書館で見たことがある。その中に、この橋の写真も、小さいけれど載っていた」
「へえ。じゃあこの橋、有名なんですね」
「有名であってほしいかい?」
「いえ、別に……というか、この橋ってそんなにすごいのかなあとは思いますが」
「珍しいって皆言うよね」
「まあ、珍しいのかもしれませんが……でも、飽きると思います」
 生まれた瞬間からこの橋を視界に入れてきた、わたしのささやかな意見である。
「飽きるか。はっはっは、なるほど。飽きるのかもしれないなあ」
「毎日家を出れば、この水色の橋が架かっている。そりゃ見慣れますよ」
「確かにそうかもね。毎日見てると、外からやってくる人が『珍しい!』と言っても、ああそうですかーとしか思わなくなってしまうかもしれない。こちとら全然珍しくなんかない、毎日見てるんだから……と、そういう感じなのかなあ」
「そういう感じでしょうね。というよりも、変、です」
「変」
「珍しいっていうか、変ですよ。どうして水色の石なんか使ったんだろう」
「それは当然、あの建築家に意図があったからさ」
「意図」
「そう、意図。込めた想いとか……願いとかかな。それが何か知ってるかい」
「前衛的にしたかったって、話は聞きました」
「それもあるかもね。うん、確かに前衛的だ」
 旅人さんは、うんうんと頷く。
 しかし、わたしはこの橋に、先ほど彼が言った『想い』とか『願い』とか、そんな仰々しくて、すっかり綺麗な言葉があてはまるようには思えなかった。滑稽だからだ。そして、不思議なものでしかないからだ。そんな肯定感の溢れる言葉を使うには、この橋は妙にいかがわしくて、異様で、取り留めもない存在すぎる気がして。だから、何もわからない。
「そういう意図は……理解もできるんですけど……なんというか、前衛的にするなら、もっとふさわしい形式があったと思いませんか。何も水色にしなくても……橋の両端に装飾をつけるとか、独創的な形にするとか。どうして、『色』を前衛的にしたのかと」
「まあね、色って普遍的だからね。特に、言語が同じだと。そうすると、色自体に独創は生まれないだろう」
「色を変えるということに前衛さを見出そうとしたところが理解できないのかも」
「色を変えるんだったら、形やらを変える方がいいって?」
「そうですね」
「まあ一理あるといえば一理ある」
 旅人さんは、わたしから顔を逸らして、もう一度小川に視線を落とした。横顔が綺麗だった。
「ポストって知ってる?」
「ポスト? ああ、都会で使われている郵便制度の箱みたいなやつですよね?」
「そう。あれ、何色か知ってる?」
「赤でしょう。常識じゃないですか」
「僕は、黄色いポストを見たことがある」
「黄色いポスト……」
「紫色のポストも」
「はあ。なんか、気持ち悪いですね」
「でも、珍しいだろう」
「まあ、珍しいとは思いますけど……」
「変かい?」
「変ですよ。この橋と同じです。色を変えることに、意味があるんですか」
 変えなくたっていいものを、どうして変えるんだろう。
 旅人さんが見つめている川に、わたしも目を向けた。
 せせらぎの内側に、陽光のきらめきがひそひそと囁き合っているような、そんな輝きが流れていく。
 少しの間。
 旅人さんは、どうだろうねと息を吐くと、それからやっと、言葉を紡ぎ始めた。
「……色って変わっちゃうものだからなあ。でも、形よりはずっと、あとに残るものだと思う。それに、変わっていくところに意味があって、そこに意味を見出すことができて……それが、色なのかもね。あはは、なんだか自分で言っててわけがわからなくなってしまったな」
 穏やかな言葉が、わたしの内側に入り込んでいく。
 旅人さんは、続ける
「でもね、きっとこの橋は、そこにある固定的な色を、あえて不自然な色にしたことに意味があるんだ。そうすることで、珍しいとか、変だとか、奇妙だとか、そういう言葉を浴びせられる。それが肯定でも否定でも、そこにある存在っていうのは、十字砲火みたいな言葉に傷ついてこそ輝くものだからね」
「よく、意味が分かりません」
「『それが当たり前』っていうのを、別の色に塗り替えてみたらってことじゃないかな」
「そういう意図が、建築家にあったと?」
 旅人さんは笑った。
「君は、建築家がどうしてこの橋を建てたか知ってるって言ったね」
「はい」
「さっきのでおおむね正解だ。でもね、あの写真集に載ってたこの橋の写真に、ちょっとしたコメントがついていたんだ。その建築家のね」
「それが、なにか?」
「誤解しているということを、教えてあげようと思ってね」
「…………」





 多くの人が勘違いしているけれど、あの橋は水色じゃないんですよ。
 空色なんです。
 あの橋を越えると、村から出て高原に行くことになるじゃないですか。そこに、羽ばたくようなイメージを連想した。僕はあの村が故郷だ。でも、こうしてあの村を出て外に飛び出して、今は王都にいる。でも、いつかは必ず帰ってくることになると思う。あの村に戻ることになると、直感でわかるんだ。なんとなく低空飛行な感じはするけどね。まあ、言うなればあの村は、鳥の巣みたいな感じだ。あの橋を渡って空に羽ばたく。で、空を泳いで、また帰ってくる。そういう象徴になればいいなって思ったんだ。いやね、本当は村長に橋を造れって言われただけなんだけど、でも、まあいつか未来まで残るっていうなら、まあそういう趣向があってもいいと思ってね。
 空色。僕は好きだな。空に羽ばたいていく。他にも、晴れのイメージもある。未来が青空みたいに晴れ渡っているといいね。その中を飛んでいく、村の子どもたちっていうのも素敵じゃないかな。そしてまた彼らも、村に戻る。その繰り返し。空色って、そういう心地のする色だと僕は思う。珍しいとか、変な色の橋だって言われるかもしれないけど、まあそれも愛嬌だ。
 羽ばたく未来の誰かに、澄み切った空色があらんことを!





「わかりません」
「わからないかい」
「誰がこの色を、空色だと考えます?」
 水色じゃなくて、空色だなんて。
 誰が、そんなことを。
 わたしは初めて、旅人さんの隣に並ぶようにして、橋の欄干に手を乗せた。それから、光をいっぱいに浴びて輝く、ささやくような小川の流れを見つめる。小さな魚が、水辺の砂利の傍に集まって、水草に鼻先を突きあっていた。
「その建築家の言ってることも、単にかっこいい言葉を並べただけかもしれないじゃないですか」
 旅人さんは、何も言わなかった。
「空色とか、取っ手付けた欺瞞です」
 何を焦っているのか。
 言葉が。
 口を割り裂く。
「色を変えたのだって、そんな理由だったはずがない」
「そんな理由じゃなかった方が、君にとって都合がいいのかい」
 旅人さんは、風に髪をなびかせる。
 その通りだ。
 何も、何もむきになることなんてない。
 なのに。
 腹立たしいのだ。
「橋なんて、渡れればいい」
「色はどうでもいいって?」
「何色でもいいじゃないですか」
「じゃあ、なんで空は青いの」
「知りません」
「草木はどうして緑なの?」
「……」
「海は?」
 わたしの頭の内側に、彼の口から聴こえてくる、ありありとした自然を想った。
「……そういうものだから……空も、草木も、海も……そういう色だから、そういう色なんです」
「そういう色って、誰が決めたの」
「神様か、きっと決めることのできる誰かです」
「だったらこの橋を空色だと決めるのは、彼でもよかったはずだ。造ったのは彼で、変えることができたのも彼だ」
「…………」
「色なんて、自分で決めればいいんだ。変えるのも、変えないのも自由。この橋は、この橋が造られる運命の中で、この色が決まった。彼は変えようとしたのさ。そこに意志があった。変えないという選択肢があったのかもしれないけど、それでも、空色であることに意味を見出そうとした。それって、結構価値のあることだと僕は思うなあ」
「…………」
「このローブも、最初はもっと深い茶色だったんだけどねえ」
 わたしは、彼のローブを見た。
 色がすっかり落ちている。
 彼が自分のローブを訝しそうに見下ろしているのを見て、わたしは思わず笑ってしまった。
「それも、あなたが決めたこと――なんですね」





 旅人さんは、それから二日ほど村に滞在した後、再び旅立つとのことだった。
 時間はすぐに過ぎた。村人全員でお見送りしようと決まったので、今度は行った。あの不可思議な色の橋の前で、村人たちと握手を交わしている最中だった彼は、わたしがやってきたことに気付くと、柔らかく口元を吊り上げた。わたしは立ち止まって、また言葉を失った。何かを用意していたわけじゃない。お別れの言葉とか、考えていることとか、そういうものを準備してここにやってきたわけじゃないのだ。だから、どうしてここに来たんだろうって思った。お母さんに言われたからだと言い訳もできる。お見送りしろって言われたから、来たのだと。でも、そうじゃないと自覚していた。今度は、村人さんのところへ行こうと言われた時、家事の途中であっても、自分の腰がすんなり動いたことに、わたしだって気付いていたのだ。
「旅人さん」
 他の村人の群れをかきわけて、彼の前に躍り出た。
「やあ、来てくれたのか」
「はい」
「楽しかったよ。またいつか来たいね」
「その時は、ローブに色なんて無くなっているかもしれませんね」
「そういう旅人、なんかかっこいいな。魂をすり減らして旅をしているみたいだ」
「次はどちらへ?」
「とりあえずは西に行って、その後は王都かな。王都で用があるんだ」
「王都は、どんなところですか?」
「知りたいの?」
「はい」
「そうだなあ」
 彼は空を仰いだ。
「すごく不自由で、そして、それよりずっと自由だ。意志に溢れていて、恐ろしい。だけど、そこが美しい場所だ」





 旅人さんは、帰って行った。
 あの橋を渡り切って、もうこちらに手を振らなくなって、背中だけをただ荒野の向こうへ歩ませていこうとする。そのローブの色が、太陽にじりじりと焼かれ行く様を、どことなく想像した。それが土色に同化するというのなら、彼はまだ旅を続けていた証明になるのだ。彼が歩んだその道なりを、その色たちが覚えている。彼はその道を歩んだ。旅を続けるのだ。
 わたしと一緒に橋の手前で村人を見送っていた人たちも、彼が背中だけを見せているようになると、少しずつ自分の家へ戻っていった。お母さんも、わたしの頭を少しだけ撫でた後、暗くならないうちに戻りなさいねと言った。暗くならない、うちに。それを意識した時、彼の背中が少しずつ小さくなっていくのと同じように、空の色も、真っ青な姿から、緩やかな紫へと変わっていくことを思い出した。荒野の先々に見える山の向こうに、日が沈んでいく。わたしは胸に手を当てて、旅人さんの姿が、小さな点になっていくのを見届けた。そして、彼の姿が見えなくなるより先に、日が落ちて、群青が闇に降りてきた。空を仰いで瞳をあちらへ向けると、旅人さんの背中は見えなくなって、そして、それ以外の視界もやっと、真っ暗になりつつあった。
 わたしは家に帰って、お母さんの温かいシチューを食べた。
「お母さん」
「なあに」
「わたし、いつか王都へ行くよ」




メンテ
水金火木土天海冥 ( No.385 )
   
日時: 2013/10/15 01:04
名前: 伊達サクット ID:68egKSWY

 西暦500X年。日本経済は崩壊寸前で、史上最悪の大恐慌に陥っていた。
 与党の極限党がいかなる経済政策を打ち立てても、回復の兆しを見せなかった。
 そこで、極限党党首であり総理大臣の膝栗毛道中(ひざくりげ・みちなか:東海大卒)は、野党の爆裂党の反対を押し切り『クリゲミクス』の最終手段として埋蔵金発見委員会を発足。
 委員会の仕事は、日本中の地面を調べて秘密の埋蔵金を探すことである。見つかった暁には国の財政が潤い、経済危機を脱することができるというのが、第十七次膝栗毛内閣のビジョンであった。
 埋蔵金発見委員会を結成した日の夕方、委員会はそこら辺にあった備品のコンピューターを駆使して早速埋蔵金を発見した。場所は山梨県甲府市の地底深くの一帯である。コンピューターの推測によると、金額は約二京円。天文学的な価値である。
 そして、財務省はこの埋蔵金をどのようにして活用するかを議論し始めた。その結果、財務大臣の東方見丸子(とうほうけん・まるこ)は埋蔵金大噴火計画を発表した。これは、百日後に大噴火が予想されている富士山を利用した画期的な経済政策である。
 まず、山梨県の近くにある富士山の火口をコンクリで塞ぐ。すると、富士山が噴火する際、穴が詰まっているのでマグマが地底に向かって凄まじいエネルギーで逆流する。逆流したマグマは、そのまま富士山近辺地域の地底深くを驀進し山梨県の甲府等の地域で、地表を突き破って噴火する。そのときに、マグマは埋蔵金を一緒に空高く打ち上げてくれる。そして、遥か天空より二京円の金が日本中に雨のように降ってくるのである。そして日本中は金に溢れ、景気がよくなるという計画なのだ。
 この空前絶後の一大プロジェクトに日本国民は度肝を抜かれた。爆裂党は埋蔵金大噴火計画の欠点を指摘するなどして難色を示したが、世論は計画を指示していた。
 そしてついに計画が実行された。まずは富士山の火口をコンクリートにて埋める。しかし、これではマグマが突き破って来そうなので、一応コンクリの中に鉄筋を通しておいた。そして富士山の半径百キロの住民は全員疎開。以上で全工程終了。あとは噴火を待つのみとなった。
 富士山は大噴火した。予想通りマグマは富士山周辺の地面の下を爆走し、甲府市のあちこちから怒竜のごとくマグマの柱が無数にせせり立つ。
 飛び出てきたマグマに押し上げられた埋蔵金は遥か上空に飛び散り、これから金の雨となって落下してくるはずである。人々は金を拾おうと火山弾で彩られた青空を見つめる。餌を求めて巣でさえずる小鳥達のように。
 しかし、金は降ってこなかった。どうやら、余りにも噴射されたマグマの勢いが強すぎて埋蔵金は地球の重力圏外まで吹き飛ばされてしまったらしい。
 計画はまさかの失敗に終わった。しかし、それだけでは終わらなかった。激しいマグマ噴射の力で地球が押され、公転軌道がずれてしまったのだ。こうなると地球全体がパニックである。軌道をはずれた地球はマグマに押されて宇宙を進みだし、スピードを上げてお隣さんの太陽系第四惑星、火星に突っ込もうとしているのだ。
「膝栗毛総理! 地球は壊滅しますけど現在のお気持ちは?」との問いに対し、膝栗毛道中は「ヒャーッハッハッハ! 自由の国・NIPPON! フヒヒ……ヒェーッヘッヘッヘ!」と語り、感動の涙を流したという。
 案の定、地球と火星は大激突した。そして地球は木っ端微塵に砕け散り滅亡した。火星の方は砕けはしなかったが、激突したときの爆発の炎でいつまでも激しく燃え上がる。
 一方、宇宙へ投げ出された埋蔵金は、天の川のように輝きながら宇宙を漂流し、最終的にはお隣さんの太陽系第二惑星の金星に辿り着いた。金星に二京円の埋蔵金が霧雨のように降り注ぎ、星全体が金色に輝くようになってしまった。
 千年後、太陽系に宇宙人のUFOが偵察にやってきた。
 太陽系の様子を調べたところ、二つの興味深い星を見つけた。一つは惑星なのに恒星のように燃え上がっている星、もう一つは全体が金に覆われた黄金の星。
 宇宙人達は、前者の惑星を火星、後者を金星と命名した。
 この太陽系に水と緑に包まれた惑星があったことなど、遠い昔の話である。
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

題名 スレッドをトップへソート
名前
パスワード (記事メンテ時に使用)
コメント

   クッキー保存