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[4993] 【2016年度】お題小説スレッド【お題「去る」作品投稿期間】
   
日時: 2016/01/12 23:57
名前: 企画運営委員 ID:7PNV346o



『お題小説スレッド』へようこそ。こちらはあるお題に沿って読みきり小説を書き、その作品をみんなで批評し合う場です。
 初心者も上級者も関係ありません。うまくなりたいとお思いの方であれば、だれでも自由に参加することができます。一生懸命執筆し、一生懸命批評して、小説の技術を高め合いましょう。
 皆様のご参加をお待ちしております。

――――――――――――――――――――

>>002 【ルール説明】:必ず熟読して下さい。(※内容、一言の箇所を訂正しました。ご確認ください)
>>003 【批評のポイント】:批評をする際のポイントをまとめたものです。
>>004 【イベントルール説明】:イベントに関するルールです。必ず熟読してください





▼お題:第32回のお題は「種」です。
 二月に種をまくのか? と思いましたが、調べてみるとじゃがいもは二月にまくそうですね。……さらに調べてみると一年中、なにかしらの種をまいてるみたいです。
 そんなことは置いといて。「種」というお題には「たね」以外にも色々な解釈があると思います。みなさんがどのような作品を投稿してくるのか、楽しみにしております。
※第30回の作品投稿期間は2月1日(土)からです


▼お題:第33回のお題は「姫」です。
 三月なので(笑)
 というのはよくわかりませんが(ひなまつりだから?)「ひめ」というのは可愛らしい語感ですよね。私は緑の黒髪をした和服姿が思い浮かびます。桃色が似合いますよね。桃色……やはりひなまつりでしょうか。それでは、みなさんの作品お待ちしております。
 
※第31回の作品投稿期間は3月1日(土)からです


▼お題:第34回のお題は「嘘」です。
 嘘でした。


▼お題:最終回のお題は「魔法」です。
 奮ってご参加ください。


▼お題:第36回のお題は「友情」です。
 ネタでした。


▼お題:第37回のお題は「音」です。
 奮ってご参加ください。



▼日程(第32回)

1月1日       :お題発表
2月1日〜15日   :作品投稿期間
2月16日〜28日  :批評提出期間


▼日程(第33回) 

2月1日     :お題発表
3月1日〜1月15日 :作品投稿期間
3月16日〜30日 :批評提出期間


▼日程(第35回) 

6月1日     :お題発表
6月1日〜7月31日 :作品投稿期間
8月1日〜   :批評提出期間



▼注意もしくは削除対象となるお書きこみ
・荒らし
・荒らしへの反応
・自分や他人の小説の宣伝
・雑談、チャット化
・ルールに反するもの
・管理人が不適切と判断したもの

――――――――――――――――――――

>目次 >>001


>第32回 お題『種』参加作品(敬称略)

>>404 sakana:シロハの辻褄
>>405 伊達サクット:赤い種、青い種

================================================================================

▼リンク
小説講座/雑談所』(お礼や言い訳等はこちらへ)
旧お題小説スレッド』(前スレはこちらから)
ツイッター』(朔乱のアカウントです。お題の告知などをしています)

管理人:If 空人 朔乱  補佐:伊達サクット
メンテ

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Re: 新・お題小説スレッド【イベント参加申し込み期間】 ( No.15 )
   
日時: 2011/09/10 21:52
名前: かなちゃん王女◆SX.4l2Qrkk ID:39UjxhmM

 参加します。
 F板のでいいのかな? 書き初めだけれど。
>>[5004] 「この物語はノンフィクションです。」

 もしあれなら、ロック中のジェシカの方見てくださいな。
メンテ
Re: 新・お題小説スレッド【イベント期間】 ( No.16 )
   
日時: 2011/09/11 00:50
名前: 企画運営委員 ID:bfWrZ4g6

イベントの参加受付は終了いたしました。
これより投稿期間となります。


☆イベント参加者名簿(敬称略)

  ・空人 >>[4561] 晴れた日は、召喚日和!
  ・If >>[4669]Hearts
  ・茶野 >>[4852] 精霊島の花嫁
  ・すずか  雲の切れ間に君を探して
  ・月音 >>[3998] Raising sun ―ライジングサン―
  ・伊達サクット:Lv.5 >>[2146] やるせなき脱力神
  ・白鳥 美李亞 >>[4985] 翼ある者
  ・アリス 歪みの語り部
  ・暁龍 徐に赴く(ゲーム二次創作/モンスターハンター板)
  ・sakana >>[4870] クロの偶然真理
  ・かなちゃん王女 >>[5004] 「この物語はノンフィクションです。」


以上11名を参加者として承認します。
投稿ルールを守って、期日内に作品を投稿してください。
今回のイベントは“匿名”での投稿になります。
それ故、題名がその人の顔になりますので、題名の付け忘れにご注意ください。

それでは、皆様の投稿お待ちしております。
メンテ
されど光を ( No.17 )
   
日時: 2011/09/18 00:28
名前: 匿名 ID:msDgAINg

 私との縁談が持ち上がった女が殺されと報告を受けた。
 屋敷の自室で死んでいたらしい。これで殺された私の婚約者は5人目だったか、いや、6人目だったかもしれない。
 鋭利な刃物のようなもので首筋を斬られ、毒が身体に流れ込んだのが死因とのことだ。
 しかし、その報告を受けるまでもなく私は既にその事実を知っていた。私が犯人だからではない。ただし、少しばかり前に、殺した張本人からその話を聞いたのだ。



 クロエは、婚約者を殺したそのままの足で私の自室に入り込んできた。彼女は人を殺すときには、決まって夜の闇に身を隠す黒装束に身を包む。そして、人の命を奪った後、決まって私のもとに帰ってくる。
「オルタ様。またあなたの婚約者を殺してしまいました」
 クロエは細め、長椅子に座る私の隣に腰を下ろした。
 そして、沈鬱な面持ちで私の肩に寄り添う。
「やはり、耐えられないか?」
 私は寄り添うクロエの背中にそっと手を回し、彼女を引き寄せる。私はクロエが愛おしくて仕方がない。しかし、望んでもいない政略結婚のために殺されたあの女性に関しては非常に申し訳ないと思う。
「耐えるつもりなんて元々ありません。オルタ様は私にとって光のような存在ですもの。私のオルタ様が他の女のものになったら、私は闇の中で、何も見えなくなってしまいます」
 そう言ってクロエは白く、透き通った肌の、スラリと細長い指が生えそろった手を私の目の前に持ってきた。鋭く伸ばした、紅く塗られた爪が光り、何よりも目を奪う。
「またその爪で?」
 クロエは無言でうなずき、指をくねらせて私にこれ見よがしに爪をちらつかせた。
 クロエの爪には猛毒が塗り込まれている。彼女は剣も魔法も自在に操る実力を持つが、身体の一部であるその爪こそが、暗殺を行う際の最大の武器である。
 私の家が今の地位にまでのし上がっていったのも、その爪のおかげだ。私はこの家の長男として、将来の当主として、父の期待に応えてみせるためにも家を盛り立てていかねばならない。
 私はこの家をより王室に近付けるため、障害となる者達、対立する派閥の者達を次々と闇へ葬っていった。クロエを使って。
 クロエは元々暗殺者だった。昔、とあるきっかけで私は彼女の命を助けることとなった。クロエはそのとき、まだ15歳の少女だった。育ちがいいだけの温室育ちのお坊っちゃまの私とは対極に位置する、闇の世界を生きる少女の生きざまに触れた私は愕然とした。
 こんな理不尽がこの世にあってはならない。何とか彼女の人生に光を与えてやろうと思いった。私は若さに任せ、暗殺者という彼女の経歴を隠して周囲の反対を押し切り、彼女を引き取る決意をした。
 人殺しとは完全に決別し、しかるべき教育を施し、日の当たる世界で生きていけるようにしてやろうと思ったのだ。
 しかし、幼いながらも深い闇の中を生きてきたクロエの心は、とても世間知らずの私が手に負える代物ではなかった。
 祖父が、伯父が、父が、弟達が、我が一族が宮廷で熾烈な勢力争いに火花を散らす中、クロエは自らの意思で嬉々として闇の中へ、人を殺める道へと戻っていった。
 そして、ついには私までもが彼女の意思に同調する形で、邪魔者の排除を命じ、彼女を利用し続けてしまった。
 そして時は流れ、クロエの暗躍のおかげで我が一族は宮廷内部で大きな権勢を得ることができた。その一方、クロエは私への恩義を果たすという純粋な一念で盲目的に暗殺を行う少女から、恩義を恋慕に変え、その成就の邪魔になる存在を暗殺していく狡猾でどす黒い支配欲にまみれた大人の女性へと変貌した。
「何人婚約相手を殺しても、私は君を妻に迎えることはない」
 私はクロエに諭すように、優しく話しかけた。
 この世界には身分というものがある。貴族階級の私と、素姓の知れない暗殺者だった彼女とは相容れない隔たりがある。私が彼女を欲しても、周囲の環境は決してそれを許しはしない。また、仮にクロエが私と政略結婚を結ぶ価値のある一族の出だったとしても、彼女はこの家に入るには血に汚れ過ぎているのだ。
 私の言葉を聞いたクロエはいたずらな表情を浮かべてくすくすと笑う。
「どうした?」
「だって、おかしいんですもの。私に何回も人殺しを命じてきたオルタ様がそんなこと言うなんて」
「私は最初は、君が元に戻らないよう取り計らうのに手を尽くしてきた。でも、君はそんな私の気持ちを裏切って、自分で暗殺を行ったんだ」
「だって、あの人は。オルタ様を陥れようとする悪い人だったから。私が役に立てることって、これしかないんですもの」
 そう言いながら、クロエは両手の爪をそっと、滑らかに、私の首筋に回した。彼女の指の温かみ、爪の冷たくて鋭い硬さが伝わってくる。
「オルタ様は、『君に光を見せてあげたい』って言って下さいましたね。でも、私がオルタ様を闇に引きずり込んでしまいました」
 クロエは熱を帯びて語り始めた。昔クロエを拾った私が、今は彼女の闇を持て余し、彼女の支配下にあると言ってもよかった。
「でも、私、本当はそれを望んでいたんです。オルタ様の考える光なんていらない。だって私にとってあなたそのものが光だから」
 あのとき、彼女を捨てるべきだったのだろうか。クロエが私を愛していることには気が付いていた。そして、私もクロエを愛してしまっていた。だから、私のために人を殺めたクロエが一層愛おしくなり、彼女を手放す気にはなれなかった。叶わぬ愛だということは初めから分かっていたにも関わらず。
 それにクロエを捨てるような真似をしたら、彼女の愛は恨み、憎しみへと変わり、丁度今のようにその毒爪を私へ向けるに違いなかった。
「クロエ、私が憎いか?」
「ええ……。でも、同時に、オルタ様が好きで好きで。もうこのまま殺してしまいそう」
 私の首筋に爪をあてがったまま、クロエは顔を近づけて、私と唇を重ねた。
「じゃあその爪を、私の首に深く埋め込ませてくれないかな?」
 キスを終えた私は彼女の手首を手に取った。死ぬのなら、愛しているクロエの爪にかかって死にたい。彼女が殺してきた犠牲者達と同じように、同じ毒を体内に巡らし、同じ苦しみを味わって死にたいのだ。
 彼女は見る見るうちに、悲しみと怒りを混ぜ合わせたような表情に変わっていく。
「どうしてそんなことを言うのですか? 『君と一緒になるから殺さないでくれ』って言って下さい。私を一人っきりにする気ですか?」
「一緒に死のう。この家の名に傷がつかぬよう。祖父が、父上が築き上げてきた一族の繁栄を失わないよう」
「そんな! オルタ様は家とクロエとどっちが大事なの? 答えによっては、本当に私、この爪を押さえられない」
 クロエは声を荒げる。彼女の瞳に狂気が宿る。その狂愛は私にとってはとても尊く、心地よいものだった。私のような何の取り柄もないつまらない人間をここまで好いてくれるのだから。
「両方大事だ。だから、どちらも失わないために、君と死後の世界で結ばれたいんだ」
 私は正直な気持ちを言った。
「駄目。オルタ様。死んだら意味なんてないんです。生きて結ばれないと」
「でもそれは無理だ」
「オルタ様」
「正直、私は結構疲れていてね。君と同じ闇に堕ちて耐えられるほど心が強くなかったみたいだ」
「だったら、今度は私とあなたで、二人で新しい光を探していけばいい」
 それは昔、私が望んでいたことだった。あのとき、彼女の暗殺をもっと全力で止めていたなら、仮に防げなかったとしても、その後に私が彼女に暗殺を命じたりしなければ、まだ光は見えたかもしれない。でも今は、クロエと共に深い闇の中を泳ぎ、光は見えず、もはやどこに岸があるのか分からなくなってしまったのだ。
「クロエ、もう手遅れなんだよ。私も君も、それをするには罪を背負いすぎてしまったんだ。君は家のためではなく、私を手に入れるために、自分のためにもう何人も殺しているのだから」
 クロエは、顔を落とし、力なく私の首から手を離した。
 そして、再びその身体を私に寄り添える。
「私にとってあなたは闇を照らす存在。あなたに縁談が持ち上がる限り、私はあなたの婚約者を殺し続ける。何人だろうと、ずっと」
「私は君を愛している。でも君を妻に迎えることはできないし、君を手放すつもりもない。しかし、家のため、私は縁談を受けなければならない。君が私を殺してくれるまで、または私と死んでくれる決意をするまで、政略結婚の話は幾度でも出てくるだろう」
「オルタ様」
「クロエ」
 私も、人を何人も殺すほど私を愛してくれるクロエにすがるつもりで、彼女の体を自らの胸に引き寄せた。



 私との縁談が持ち上がった女が殺されと報告を受けた。
 屋敷の中庭で死んでいたらしい。これで殺された私の婚約者は6人目だったか、いや、7人目だったかもしれない。
 鋭利な刃物のようなもので首筋を斬られ、毒が身体に流れ込んだのが死因とのことだ。
 しかし、その報告を受けるまでもなく私は既にその事実を知っていた。
メンテ
【魂の灯(ひ)消ゆ時、俺は】 ( No.18 )
   
日時: 2011/09/18 00:41
名前: 匿名 ID:LNc0beoY

 君へ。
 これを読む頃には、俺は既に君の姿を見ることは出来ない。
 どうやら俺の命もここまでらしい。俺の身体を癌が蝕んでいたようだ。
 以ってあと一ヶ月。医者にそう言われたよ。
 正直、頭が真っ白だった。何も考えられなかった。死ぬ時ってどんな時なのかを真剣に悩んだのは初めてだったよ。
 心臓が止まるのが死ぬってことしか知らなかったからね。
 俺の心臓――灯(ともしび)も消えてしまうと思うと夜も眠れなかった。
 筆が進まなかった日が、この時まで幾度あったことか。
 ……ああそうだ。覚えてるかい。





 高校の時の文化祭。
 君は独りで綿菓子を食べていたね。俺もそこへ君と並んで食ってたっけ。
 その時の横顔が、俺は何故か愛おしく見えた。俺は何時の間にか君に見入っていた。
 俺たちはそれから高校を卒業して、そのまま同じ大学、サークルも一緒に入ったね。文芸で分からない所があると、よく俺を頼っていたのを忘れてないよ。話の作り方や文体等で少し喧嘩もしたな。
 大学四年。
 在学中に君がコンクールで受賞した時は、俺も驚いたよ。自分の事のように嬉しかった。同時に上京って話を聞いたのはショックだった。長い間君とは連絡が取れなくなるからね。

 俺もその後佳作で受賞して、君と同じ道を歩んで一〇年。
 そんな不規則な生活が祟ったのかな。
 身体の激痛を医者に診てもらったら「癌」だって。しかも末期で、それが胃に転移してしまったそうで。
 いつか会おうって空港で誓ったのに、こんな姿じゃ会えないな。帰って気を遣わせる。
 せっかく体を治して復帰しようって時に……。
 俺の小説を愛している者達に顔向け出来ないなぁ。
 俺は、これだけはどうしても叶えたかったんだ。
 でもそんな俺の我侭も、神様は許しちゃくれないらしい。
 
 最近は不便になったもんだよ。
 話を紡ぎたいのに思考が働かない。
 食事をしたいのに手が動かない。
 歩きたいのに脚が動かない。
 景色を見たいのに、いつも病室しか目に映せない。
 けどね、そんなことより、俺は唯一の遣り残しがあったんだ。
 あの時――。

 死ぬ前にせめて……一目君を見たかった。
 死ぬ前にせめて一時、君と二人っきりで話したかった。
 死ぬ前にせめて――君にプロポーズをしたかった。
 死ぬ前にせめて一緒に朝を迎えたかった。

 だけど、それはもう叶わぬ夢となりました。
 遣り残したとしても、俺はそれを悔やまず自身を受け入れます。
 俺はもう前を向けませんが、君はまだ前を向く可能性があります。
 忘れろとは言いません。思い出を棄てろとは言いません。ただ……時々でいいから、挫けそうな時には俺を思い出して下さい。
 そして君は、君の信じた道を歩んで行って下さい。
 さようなら。
 どうか俺を忘れないで。





 西暦××××年 ○月△日   俺より
メンテ
ドラマチック生命体 ( No.19 )
   
日時: 2011/09/19 22:35
名前: 匿名 ID:0J8fvtK.

 僕の部屋にやってきた生命体は、彼女が初めてだった。
 ――あなたが神様ですね。
 僕は、ペンの動きを止めた。もう少しで今日のノルマを達成できるところだった。だがそれよりもっと重要な出来事が、今まさに目の前に立ちはだかったのだ。ノルマどころの話ではない。それは、生命体が入り込むことの出来ないこの部屋に、生命体が入り込んできたということだった。
 ――どうやってここに来たんだい。ここは君の言うとおり、神の部屋だ。普通の生き物が来れる筈が無いんだけどな。
 部屋とはいっても、そこに存在するのは机とイスだけ。全てが真っ白に包まれている立方体の部屋だ。この真っ白い部屋の、机に向かっている僕の真正面にある茶色い扉。そこから彼女は入ってきたのだった。僕はそのイスに座って机に向かい、毎日毎日ノートに文字を書き込む仕事をしている。神っていうのは大変なのだった。
 ――あなたに会いたいと思ったら、来れたんです。神様。
 彼女は長い髪を揺らしながら近づいてきて、机の前に立った。僕は彼女と長く視線を連ねた。凛とした、強い信念を持った目だった。僕の知る限り、ここまで力強い神々しさを感じる生命体は知らない。毎日ただ人の生き死にをノートに書き綴る僕には無縁のことなのだ。
 ――僕に会いに?
 ――そうです。
 ――なぜ?
 ――あなたに怒っているんです。 
 目の前の生命体は、真顔でそう言った。面白いな。生命体というのは怒っている時は怒っている表情をするのではないのか? 例えば、眉を寄せる、口元を曲げる、鼻息を荒げる。そんな風な態度を取ると聞いたが、目の前の彼女はそうではなかった。ただ静かに、僕を見ていた。
 ――怒っている?
 ――はい。
 ――何に対してさ。
 ――私の大切な人たちを奪ったことです。
 大切な人を奪われることなど、生命体にとって日常茶飯事じゃないか。なぜそれを僕に対してぶつけるのだ。もちろん人の生き死には全て僕が決めている。目の前の机に広げてあるノート。ここには人の人生の履歴書が書かれてある。人の一生を、僕が全て最初から終わりまで書くのだ。まるで小説のように。この生命体は西暦何年のあの日に生まれ、どんな親を持ち、どんな青年時代を送り、どんな生活をして。死んでいくか。全て僕がそこに書いている。
 大切な人を奪われた。
 僕はどうやら、目の前の生命体の大切な人を奪ってしまったらしい。正確に言えば、奪ったというより殺してしまったというほうが正しいのか。僕は人の生死を司る。生まれることも、人生の全ても、死に様も全て僕が決めれるのだ。どうやらその神の責務が仇となり、彼女に恨まれてしまったようだ。まったく困ったものだ。
 ――あなたが人の一生を決めているのでしょう。
 ――そうだよ。
 ――ならばなぜ、私の大切な人たちを、あんな風な死に方にさせたのです。惨たらしいではありませんか。
 僕は彼女の大切な人たちを、残酷に殺したようだ。強盗殺人か、それとも天災か、不慮の事故か、病気か、それとも自殺か。僕は様々な形で生命体を下界の人間界に誕生させてやっている。ノートの、ある生命体の枠に『幸せな家庭に生まれる』と書けば、その生命体は幸せな家庭に生まれ、『楽しい人生を送る』と書けば、楽しく愉快な人生を送る。だが僕がその生命体の最後の部分に『事故で死んでしまう』と書けば、その生命体は簡単に命を終えるのだ。そこの慈悲や同情など無い。僕は様々な死因で人を殺した。彼女の言う大切な人の惨たらしい死に方も、そんな何千何億の死の一つ二つでしかないのだ。
 ――僕は神なんだ。人の死に方にいちいち巡らせてたらきりが無い。
 ――あなたは役立たずです。
 ――なんだって?
 ――神様が、人間の幸せを叶えてやら無いなんて、神様じゃありません。
 もっともな意見だがこちとらそんなことを言われても今さらどうしようもない。僕は自ら進んで神を選んだわけじゃなく、気付けば机に向かい、ノートに人の人生の縮図と送り方を書き連ねていたのだ。神は人間の救済をもたらすものだ。そんな神が残虐に人を死に至らしめて構わないのか。
 答えはイエスノーじゃ計り知れない。
 ――どうして、幸せにしてくれないのです。全ての命を、全ての生命を。命の全てを、どうして幸福に導いてくれないのですか。
 全ての生命を幸せにしてやることが、神の勤めなのだろうか。
 だけど、幸せが何かによる。長く生きることだけが幸せだろうか。長生きしたい、長く生きることが幸せア。それならいい。だが早く死にたい人も居るだろう。若いうちに死にたい、人に迷惑掛けたくない。そんな思いで早死を望む人も居る。お菓子をたくさん食べるのが幸せな人もいるし、きっと僕のように一日中机に向かっているだけが幸せなこともあるのだろう。そんな一人一人の幸せのニーズに、神とはいえ応えるのは大変だ。
 ――どうすればよかったんだい。どうすれば君の怒りは収まるのさ。
 やっかいごとは面倒なので、僕は敢えて下手に出た。どうすればよかったか。これは僕が彼女の大切な人をやむを得ず奪ったことを認めているということだ。実際認めてなど居ない。だけど時には相手に譲る言葉を促す事だって大切だろう。それに、喧嘩は嫌いだ。
 彼女は言った。

 無様な死を。
 残虐な死を。
 理不尽な死を。
 悲しい死を。
 無くしてほしいんです。

 全ての生命を、幸せにしてほしいんです。


 僕は返した。
 ――無理だね。
 そんなのわかりきったことだろうに。
 生命体の死は無様だ。ここでいう生命体とは、人のことだ。人の死は無様で、惨めで、理不尽極まりないものだ。死に方はでどうであれ、人の死は残酷で容赦ない。時としてあまりにも惨たらしい死を宣告される人もいるだろう。それらの死に方は、全て僕が決めている。だけど、僕がどのような死に方を書こうとも、人の死は――生命体の死は儚く脆く、崩れやすい。
 ――自ら進んで死んだ人の死は、残虐なのかい。
 僕は問うた。彼女は目を細めた。
 ――悲しい死です。
 ――だけど、それを望んだんだよ。望んで死んだのに、その人はそれが一番だって思ったのに、それを君は悲しいと言えるの。
 ――私が悲しいのです。
 彼女は祈るように、胸の前で指を交互に絡ませた。
 ――誰かが悲しむ死なんて、私は欲しくないんです。
 それから、ぽろぽろと目の端から涙を零し始めた。
 なんて我がままで、自分勝手で、自己中心的な生命体なのだろう。彼女が悲しむから、自分が悲しいから悲しい死を無くしたいなどとは。それでは駄々をこねる子供と変わらない。不都合を排斥したいだけだろう。
 そうは思った。
 だが僕は、この生命体にはどうにも悟りが垣間見えたのだった。ただ悲しいから、悲しみを無くしたいと言っている訳ではないような。水溜りよりも深く、そして空よりも高い、大らかで、そしてあまりにも見透かしづらい心があるような気がした。僕には読めない。彼女の心理が。そして何をもって彼女をこの部屋にやってこさせたのか。神の部屋にやってこれるのは、やはり神に同等するものだけだ。ならば彼女は、悲しみを知りすぎて神といえる存在になったとでもいうのか。
 僕は立ち上がった。
 ――見せてあげるよ。人の死は悲しいけれど、もっと大事なことがある。
 ゆっくりと壁際に向かい、僕は指をパチリと鳴らした。
 ちょっとした余興だ。
 真っ白だった部屋は急激に色を変える。
 部屋は、真っ黒になった。
 真っ暗ではない。真っ黒なのだ。僕と彼女は、姿形がはっきりとお互いに見える。僕らは今、『無』にいた。そこは、僕だけが感じ、そして僕だけが見て触れる世界。生と死の狭間。天国と地獄の狭間。神と生命体の狭間だった。そこに僕らは佇んだ。真っ黒な部屋。それは壁の色が黒いのと同義。だけど、そこは無であって、無限広がる宇宙だった。そこには、果てしない空間がある。空がある。『無』があるのだ。
 彼女は泣きながら、辺りを見回した。
 ――見なよ。
 僕の囁き。彼女がこちらを見た。
 もう一度、指を鳴らした。
 

 暗闇の奥に、ポツリと小さな明かりが灯った。
 そして、また離れたところに、もう一つ明かりがポツリ。
 ポツリポツリ。
 黒の中に、小さな点のような燈がポツリポツリと灯り始めた。
 僕らの周りを、明かりが囲い始める。それはまるで、真っ暗闇の中に灯篭の明かりが灯るようだった。ぼんやりとした、曖昧でおぼろげな光が、少しずつ生まれていった。黒い部屋は少しずつ光に満たされて。ぽつりぽつりと満たされて。
 ――この光は、まさに生まれつつある命だよ。
 僕は言った。
 彼女は、辺りを見回している。その表情は、先ほどの涙に濡れた悲しげなものではなく、少しずつ少しずつ、色を取り戻しているものだった。目の色が輝いていて、それが、目の水分に明かりが跳ね返っているだけにしても、幻想的な風景を見る、確かな驚愕が、感嘆が垣間見えた。
 これは慰めだった。
 全ての正当化だった。
 神として、全ての命を殺す僕の、僕への正当化だった。まさに生まれつつある命があることが、僕と彼女にとっての慰めであり、救いであり、言い訳だったのだ。人の死――生命体の死は、儚く悲しく脆い。そして残酷で、理不尽なものだった。それを創り出すのは僕。僕は酷い神なのだ。
 だけど、こうやって、死に行く生命よりも、遥かな数の生命が生まれているのだ。その生も、僕が創り出した。
 明かりは、世界を包んだ。
 僕らの周りは、明かりによって、真っ白になった。最初とは違う。全てが、生命の色に満たされているのだった。生命の輝きによって、世界が、視界が彩られている。全てが光っているのだった。
 これは慰めなのだ。そして、逃げなのだ。
 僕だってわかっている。神として、生命体の命を自由に出来ることを。
 それでも、新しい命は、きっと死ぬまで幸せなのだろう。
 何言ってんだ僕は。
 ――綺麗、ですね。
 ――うん。
 ――これが、生命なのですか。
 彼女と僕は向かい合っていた。
 泣き止んでいた。
 そして、笑っていたのだった。
 ――僕に怒っていたんじゃないのか。
 ――そうです。まだ怒ってます。
 ――なら、どうして笑ってるのさ。
 ――あなたも、笑っていらっしゃるじゃありませんか。
 僕が?
 ゆっくりと手で、顔に触れてみた。口元が、微妙に釣りあがっていた。
 ――それに。
 ――それに?
 ――命って、素敵だなって思ったんです。
 その言葉が、妙に響いた。僕は神だぞ。全ての生命体の上に立つ概念だぞ。全てを司る存在だ。そんな僕が、彼女の――悲しみを背負った少女の言葉に、共感しているというのか。そして、その笑顔に、僕自身も何か思うところがあるというのか。わからない。わからないけど。
 ――命は、悲しいけど。終わるときは悲しいけど、でも、確かに幸せな一瞬があったんだ。あるはずなんだ。心から笑える瞬間が、幸せな瞬間が、誰の人生にもあるように、僕は人の命を創ってるよ。
 ――私は、今、悲しいですけど、でも。いつかは、そんな風に、幸せになれますか。終わるときは残酷な死に方でも、一瞬でも、幸せになれますか。
 ――そんな言葉が出るってことは、わかってるはずだよ。
 彼女は、笑ったのだった。
 そして笑顔のまま、光の向こうへ歩いていった。


 そうして僕は、机に向かう。
 幸せな最後を迎える人もあれば、不幸な死を迎える人もいる。
 僕はそんな風に、理不尽な世界を創らなきゃいけない。
 だけど、誰の心にも、人生の一瞬でも、幸せな時があるように。
 笑顔が花咲くように。
 素敵な瞬間が実るように。
 全ての生命へ。



メンテ

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