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[4993] 【2016年度】お題小説スレッド【お題「去る」作品投稿期間】
   
日時: 2016/01/12 23:57
名前: 企画運営委員 ID:7PNV346o



『お題小説スレッド』へようこそ。こちらはあるお題に沿って読みきり小説を書き、その作品をみんなで批評し合う場です。
 初心者も上級者も関係ありません。うまくなりたいとお思いの方であれば、だれでも自由に参加することができます。一生懸命執筆し、一生懸命批評して、小説の技術を高め合いましょう。
 皆様のご参加をお待ちしております。

――――――――――――――――――――

>>002 【ルール説明】:必ず熟読して下さい。(※内容、一言の箇所を訂正しました。ご確認ください)
>>003 【批評のポイント】:批評をする際のポイントをまとめたものです。
>>004 【イベントルール説明】:イベントに関するルールです。必ず熟読してください





▼お題:第32回のお題は「種」です。
 二月に種をまくのか? と思いましたが、調べてみるとじゃがいもは二月にまくそうですね。……さらに調べてみると一年中、なにかしらの種をまいてるみたいです。
 そんなことは置いといて。「種」というお題には「たね」以外にも色々な解釈があると思います。みなさんがどのような作品を投稿してくるのか、楽しみにしております。
※第30回の作品投稿期間は2月1日(土)からです


▼お題:第33回のお題は「姫」です。
 三月なので(笑)
 というのはよくわかりませんが(ひなまつりだから?)「ひめ」というのは可愛らしい語感ですよね。私は緑の黒髪をした和服姿が思い浮かびます。桃色が似合いますよね。桃色……やはりひなまつりでしょうか。それでは、みなさんの作品お待ちしております。
 
※第31回の作品投稿期間は3月1日(土)からです


▼お題:第34回のお題は「嘘」です。
 嘘でした。


▼お題:最終回のお題は「魔法」です。
 奮ってご参加ください。


▼お題:第36回のお題は「友情」です。
 ネタでした。


▼お題:第37回のお題は「音」です。
 奮ってご参加ください。



▼日程(第32回)

1月1日       :お題発表
2月1日〜15日   :作品投稿期間
2月16日〜28日  :批評提出期間


▼日程(第33回) 

2月1日     :お題発表
3月1日〜1月15日 :作品投稿期間
3月16日〜30日 :批評提出期間


▼日程(第35回) 

6月1日     :お題発表
6月1日〜7月31日 :作品投稿期間
8月1日〜   :批評提出期間



▼注意もしくは削除対象となるお書きこみ
・荒らし
・荒らしへの反応
・自分や他人の小説の宣伝
・雑談、チャット化
・ルールに反するもの
・管理人が不適切と判断したもの

――――――――――――――――――――

>目次 >>001


>第32回 お題『種』参加作品(敬称略)

>>404 sakana:シロハの辻褄
>>405 伊達サクット:赤い種、青い種

================================================================================

▼リンク
小説講座/雑談所』(お礼や言い訳等はこちらへ)
旧お題小説スレッド』(前スレはこちらから)
ツイッター』(朔乱のアカウントです。お題の告知などをしています)

管理人:If 空人 朔乱  補佐:伊達サクット
メンテ

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Re: お題小説スレッド【第7回:批評提出期間】 ( No.44 )
   
日時: 2011/10/31 22:23
名前: sakana◆092jpOU0d. ID:tQ4eUwJE

企画運営委員さんの総評よりも批評が遅くなってしまいました。
うわわ、ぎりぎりにすみません!

※敬称略

>>32 空人:タイムパラドクスとミドルネームの関係性についての考察
 冒頭部分の説明。これは普通に地の文だと思って読んでみると「〜居るわけです」。何だか良い意味で肝を抜かれました。彼が混乱しているということがよく伝わってきて、何だか可愛らしかったです。それに、博士と直美=コバヤシテクノコーポレーションセタガヤシブインフォメーションマエエントランス=小林(な、長い……)の会話もコントのようで、そして一回一回のものにまとまりがあり、とても読みやすかったです。
 ヒロインが可愛らしい。そして、その執拗な名前への執着の仕方も可愛らしい。というか、可愛らしいとしか私口にしてな(ry
 それに、直美さん(名前が漢字だと、さんを付けたくなります)のセリフに、説明が入って少々長くなっているものがいくつかあるのですが、長くても飽きさせることなく、くどいと感じることもありませんでした。この内容で、すらすらと読める作品となっているのには、本当に感嘆ばかりです。
 地の文よりも、描写やつっこみどころ満載のものがセリフの方に入っているというのも、堅苦しさを全く感じさせず素晴らしいとしか言いようがないです。
 このお話は、幕開けまでのものなのですが、そこで終わりと称しても違和感のないようなまとまりがありました。
 すみません、これ以上どう表現すればいいのか全く分からないという状況。


>>34 If:時守人:第二章一話
 私、先に作品を読んで題名をよく見るということをしているため、その男(ラッセ)こそがレーレアではないのだろうか! と勝手に意気込んで読んでしまいました。偽名か、後に改名でもするのではないのかと、レーレア登場しないと物語として終わらないからなあ、と。……うわわ、ごめんなさい!
 個人的な勘違いは放って置いて……。それにしても、お話の流れがとても丁寧でした。
 会話もすらすらと頭に入ってきて、更に冒頭部分の一生懸命なアンヌと特に気にする様子もないラッセの温度差はリアル。そして、何度も場面が変わっているというのに、読みにくさというものない。
 それに、デュッセルのエピソード。彼の最後が、慌ただしさや混濁の後に訪れた一つの決心。その潔さには、すっと胸に入ってくるものがありました。
 ただ、年号が苦しかった。数少ないというのに、遡って……○○年後で……と、少し理解するのに時間が掛かりました。そして、レーレアを登場させて欲しかった。第二章一話では仕方がないという部分があるのですが、彼女? の謎をちょっくら解明して欲しい! という心境。
 そうして、時間遡上の魔法を覚えたラッセとアンヌは。その長い時代の中で出会った人よりも深い仲でありながら、その魔法を使用すれば二度と会うことのない存在だという、より別れるための魔法なのだと思うと何だか名残惜しくなってしまいました。


>>35 伊達サクット:時と光と
 ちょ、ストテラが語尾のエフバン人がとても素敵なのだけれども。というか、読んだときつい笑ってしまいました。後に、彼等のセリフなどはもう出てこないのですが、冒頭のものだけで物語をいっそう引き立てられていたのだと思います。後々の会話に出てくるエフバン人もすんなり頭に入ってきました。そして、『』内はもう私の中では初めから片言となっていましたし、その場面場面の切り替えがとても分かりやすかったです。
 ただ、宇宙での十年間と地球での十年間が全くおなじ時間として扱われていることに、いくらか違和感を覚えてしまいました。物語としては本当に面白く、スルーしてもいいと思うのですが。小さいときに読んでしまった本の影響で違和感を……ええと「双子のパラドックス」らしいです。ちょっと調べてみました。
 ですが、そんなものを反映させていたら無駄にややこしく……ううん、どうなのでしょう。うわわ、混乱させるようなことを言ってごめんなさい! 聞き流してください!
 松沢さんという名前、官僚として本当にいそう。それに、何気に彼格好いい。心情はないのですが、彼等の言葉の一つ一つに重みがあり、中々のギャグ路線を行っていながらも心に響く作品となっていました。
 

>>36 アリス:ヘッドフォン・マリー
 会話のみといった形式であり、まったく描写はないのですが。読んでいてもの凄く楽しかったです。
 一文字からという会話。そして、登場人物が二人だけなだけに、どちらかがボケれば直ぐさまつっこみが入るというものも、すらすら読める一因となっていたのだと思います。
 ただ、テンポが良く。一気に楽しみながら読める作品だったのですが、温度があまり感じられませんでした。登場人物が何らかの葛藤をしていると、うわああ! 的な感じで熱くなったりするあれです。……あれ、上手く言えない。ううん、個人的に、物語としてはもう少し人物たちの暴走があった方が良かったかもしれません。


>>33 自作:境に佇む彼は
 ただ、今回は時間があまりなかったので。短いもの、短いものを書こうとだけ意識しました。そうしたら、前半(?)は語りのみになってしまったという事態が発生。しかも、一度誤って一番書きたかったシーンを消してしまったという有様。そのため力尽きて、今回投稿したのには反映されていません、うわあ。時間って本当に大切ですね。いつもぎりぎり辺りに様々なものを投稿してしまうと、身をもって感じました。
 そして、自分自身。何だかやってしまったよ! と思えてしまう作品となってしまいました。……やばい、どう改善したらいいか分からない。とりあえず、皆様から頂いた批評で、個人的に書き直ししたいです。上記、言い訳でした。
 ううん、個性的な人物。もの凄く書いてみたくなってきました。あれ、唐突に話がそれた。


最後に
 時間は私たちの側にいつもあり、また目に見えないもの。そのため、目に見える作品にするということは難しい。宝物とか雨とか剣とか、見えて触れて感じれますからね。
 しかし、だからこそ広大で、無限な宇宙に触れた作品が少し目立ちました。かという私も、初めは何らかのうちゅーじんを登場させる作品を書こうとしてまして挫折してしまいましたからね、SFって難しい。

 そして、上記の批評たち。……久しぶりのもののため、何を書けばいいか一向に分からないという中でのものとなってしまいました。
 とりあえず、書きました。的外れなことを言っているような気もします。そのところは、スルーしてくださって構いません! むしろ、スルー推奨しますよ!
 ということで、皆さんお疲れ様でした。どの作品も面白かったです。
メンテ
お題小説スレッド【第8回:作品投稿期間】 ( No.45 )
   
日時: 2011/11/12 23:43
名前: 企画運営委員会 ID:qyrunHIY

 こんにちは。
 第8回「ジュース」の作品投稿期間となりました。
 作品投稿期間は11月1日(火)〜11月20日(日)までとなりました。
 批評期間が短くなってしまう事をご了承くださいますようお願いします。
 ルール説明>>002 を熟読の上、ご参加ください。
 皆様力作待っております。
メンテ
貴方に捧げる果実 ( No.46 )
   
日時: 2011/11/02 00:28
名前: 空人 ID:zWYIgw9U

 流れゆく真紅は指先を伝い。そのしたたかな温かさを感じながら、想いは杯に注がれていく。
 微笑は贈られるべき相手の反応を思い浮かべた故のほころびだった。自らの零落がそのまま想い人の糧となるのならば。それを考える度、背筋を、そして心臓を騒がせるものは歓喜。いや、快楽だったのかもしれない。けれどもそれは秘匿にされるべき感情で。わずかな仕草にさえ示唆を与えようものならば、たちまち露見してしまいそうな危うさを秘めているのだ。しかしそれすらも、二人の関係を楽しむ隠し味にしようという思いに至る。傲慢なのは自覚していた。自分の心はとっくに可笑しくなってしまっているのかも知れなかった。
 それでも、私は――――。



 出会いは感傷や幻想とは程遠いものだった。
 自宅の裏庭に造り上げた果樹園は一人で管理するにはそろそろ大業になってきたほどの広さを誇っている。彼はその片隅で一本の枯れ木に背を預けていた。こけた頬と死を匂わせる表情は、近付くのを躊躇うのに十分な理由だったかもしれない。しかし、彼の背に有る木は枯れてはいなかったはずなのだ。つい昨日までは。ならば彼がその原因を施したのだろうか? 今考えると、答えはその通りだったのだけれど。そんなふうに疑いながらも迂闊に近寄る私に、彼はやさしく微笑んで見せたのだ。
「すいません。木を枯らせてしまいました。ああ、貴女もあまり近寄らない方が良いです。僕は今少々空腹でして、直接触れた生物から精気を吸い取ってしまうのですよ。そういう生き物なのです。ごめんなさい。出来れば新鮮な野菜や果物から採った果汁を一杯いただけないでしょうか? それでここから離れるくらいは出来ると思いますので」
 優しい声だと思った。だから私は彼を家に招きいれるのにそれほど躊躇いなどは無かったのだ。

 客に飲み物を出すのに、外の吹きさらしの中では申し訳ないという私の言葉を、彼は渋々了解した。用意した席に彼は身体をふらつかせながら着座する。手を貸そうという意見は先の理由で却下されたのだ。話を聞くと、彼はヴァンパイアの血を受け継いでいるのだと言う。血筋だという彼の母親にはそれらしい特徴はなかったのだが、自分にはなぜか色濃く受け継がれたのだと。
 彼の、一度も人を襲いその血を飲んだことはないのだという言葉を、私は信じる事にした。しかしそのせいで、まともに動く事も出来なくなっているのなら、それは褒められた行為なのかどうか。私が判断するにはあまりにも知識が足りていない。
 用意した果物の絞りたてのジュースを彼は一気に飲み干す。するとどうだろう。震えていた指は伸び、肌は色身を増し、こけた頬も元通り。新鮮な果物は彼にとって至高の飲み物だったのだ。そんな物を自分で作ることが出来たのだと理解した時、私の胸は今まで感じた事のない感情に震える。そして、よみがえった美しい容姿に微笑を浮かべる彼を見た時、それは別の感情までもを連れてきた。
「本当に良いのかい? 僕は化け物だし、君はここに一人で暮らしているんだろう?」
「ええ、だから良いんじゃない。家族が居たら貴方の事を説明するのが大変だわ。部屋は余ってるし、食費はかからない。それに、私の造った果物が貴方には必要なんでしょう? あ、果樹園の手入れを手伝ってもらえたら助かるわ」
 よほど気に入ったのか彼の体質に合っていたのか、あの後彼は三杯のジュースを飲み干すと、満足そうに一息ついてそのまま倒れこむように眠りに落ちてしまったのだ。その手にしっかりとカップを握り締めたまま。その日はそのまま夜を明かしてもらい、次の日の朝、私は彼にここにしばらく留まらないかという提案を持ちかけたのだ。
 説得は少々熱心が過ぎているようにも感じたが、気が弱いくせに頑固なところがある彼にはそのくらいが丁度良かったのだろう。少し考えた後に彼が口にした『ありがとう』の言葉は、今でも私の記憶の奥に刻まれたままになっている。

 あれから幾日経っただろうか。新鮮な果物の力か、落ち着いて生活できているせいなのか。後これは私の希望的推測なのだが、誰かと一緒に居るという安心感のおかげとか。ともかく彼は見違えるほど元気になったし、果樹園の手入れなら私に劣らないほど上達した。けれどもそれが、今度は私に不安を与えてくる。即ち、元気になった彼に私は必要ないのではないか。この家から――私から離れていってしまうのではないか、と。
 だから私はこの不安の解消にあたり一計を投じる事にした。これが成功すれば彼にとっての私は、より離れ難い存在になるはずなのだと信じて。

「はい、今日の分。濃縮したからちょっと飲みにくいかも知れないけど、ゆっくり飲んでね」
「ああ、いつもありがとう。へぇ、濃縮か、美味しそうな匂いだね」
 心臓が跳ね上がったのは、彼の笑顔のせいではない。その独特の匂いが自分には相容れないものだったからだ。動揺は彼の目に止まっただろうか? だけど彼はそんな私の様子に気付いた様子も無くその杯に口をつける。少しくらい私の反応も気にして欲しいのにと思う事はわがままだとわかっていた。
 杯に満たされていた赤い液体を彼はまず一口だけ含んだ。彼の喉が上下する。それだけの事が私をひどく興奮させた。頬が紅潮するのを抑えられているだろうか、肩は震えていないだろうか。何でもないのを装う事にこれほどの注意を払ったのは、はじめての経験だった。側に居るだけでこんなにもたくさんの新しい感情が芽生えてしまう。その相手が彼のような人だった事を、私はこれ以上無い幸運に思うのだ。
「うん、とっても美味しいよ! 何だろうすごく力が湧いてくる気がする」
「本当? 良かった。そう言ってもらえると私も嬉しいわ。ありがとう」
 微笑見つめ合う二人。ほのかに甘く切ない空気が流れる。互いに想い合っているからこその沈黙。そう信じたかった。傍から見ればそうとしか見えないだろう。だがその片方は自分の出自ゆえ、そしてもう片方は、相手を裏切っているかもしれない行為のため、沈黙は続く。
「うん。美味しいよ、とても……」
「そう……」
 そして言葉は繰り返される。後に続く事はない。
 特別に作った私のジュースを彼はまた口へと運ぶ。その液体を口にしても、彼に思った程の変化は無かった。それが良かった事なのか悪かった事なのか、今はまだわからない。
 だから今は、この瞬間を楽しもう。
 いつか訪れるはずの変化の日のために。



THE END
メンテ
胎児 ( No.47 )
   
日時: 2011/11/13 18:02
名前: かなちゃん王女◆SX.4l2Qrkk ID:2HHLx0QA

 ワンツ・スリー。ワンツ・スリー。
 ワンツ・スリー。ワンツ・スリー。
 お空には、ふわふわもふもふ、綿菓子くらうでぃ!
 そこからぽつぽつ、飴とジュースのシャワーれいん!
 そして、そして。サンサンさにーは、グミが輝き浮かんでいる!
「嗚呼。ここは天国? それーとも。今までいた世界ーが、地獄、だったのかしら?」
 アリス(少女)は歌う。
 飴と、ジュースと、綿菓子と、それにグミを口にして。
 最後にゼリーの川を掬い上げ。
「嗚呼。やっぱりここは、ぱらだいす!」
 口いっぱいの、喜び蓄え。
 ワンツ・スリー。ワンツ・スリー。


「ワンツ・スリー。ワンツ・スリー」
 アリスが歌い、踊っていると、そこには一羽のうさぎさんが。
「こんにちは、ご一緒に、いかがです?」
 かかとを打ってワンツ・スリー。
 楽しい楽しいぱらだいす。
 素敵なダンスでへぶんだわ!
「いやいや、それには及びません。
 私めは、十二分とパラダイスを味わいましたので」
 うさぎさんはどこへ行く?
 待って、待って。
「行かないで!」
「しかし、私は行かねばならない。
 なぜなら私は味わいすぎた。
 虜となっては母を忘れてしまいます」
 アリスは覆う。目を覆う。
 お母さま。お母さま。
「泣かないで。泣かないで。
 ご一緒に、いかがです?」
 貴女のお家。片道の旅
「ええ、行くわ。すぐ行くわ」
「けれども、宜しい、のでしょうか?」
 うさぎさんは綿菓子を、ペロリとすこぉし一舐めし、両の手器に、ジュースをたぷたぷ。
「こんなパラダイスへは、二度と辿り着けませんよ?」
「いいのです。お母さま。私は会いたいお母さま」
「分かりました。では行きましょう。帰りましょう。
 新しき哉、母の元」
メンテ
Re: ジュースと陰謀 ( No.48 )
   
日時: 2011/11/19 11:54
名前: 如月 美織◆8zBdnxDwSc ID:XCzagB1.

『おんなじ世界にもう一つぅ、見えない世界がありましてぇ、そこには魔物が棲んでいるぅ』
『そんな世界に行くためにぃ、真っ赤なジュースがつくられたぁ、別世界との架け橋さぁ、……』


   *


 彼は追ってから逃げながら、子供たちの歌を聴いていた。空は黄昏色、子供たちは手を繋ぎながら元気よく歌っている。酸素を求めて喘ぐ体に、もう少しで撒けるはずだと言い聞かせてテンポよく呼吸を行う。白い肌は赤く熱り、焦げ茶色の髪も汗で肌にまとわりつく。不快感を覚えるが、今はそれどころではない。
 こんな生活になってから何日が経っただろうか。ある日突然、会社をくびになったかと思ったら突然警察がやってきて――そこからはあまり良く覚えていない。どうやら、自分は所謂濡れ衣を着せられているらしく捕まったら最後、処刑されることも決まっているようだ。身に覚えのない罪を着せられ、彼の人生の歯車は大きく狂ってしまった。まったくやりきれないよ、と内心盛大なため息をつきながらも、いつ捕まるか分からないスリルに快感を覚えていたのもまた事実。いずれ事実は明らかになるものさ、と呑気なものだ。もっとも、それは彼が普通の人間であったら味わうことのない感情であろうが……。

「……撒いた、か?」背後の足音は途絶え、辺りには何気ない日常の音が満ちている。「さすがにここまでは追って来れない、か」

 何かの倉庫だろうか。食物が保存されているらしく、匂いが部屋を充満させていた。運命を見放された分、このような点で天は彼を助けているらしかった。
 お試し程度に、近くにある箱を手にとって中身を取り出してみる。中にはハムが入っていた。
 ひゅう、と口笛を吹いてハムを頂戴する。初めはこんな生活が嫌で嫌で堪らなかったのだが、生きる道がこれしかないと分かった瞬間にためらいは消えた。

「さて、なるべく遠くに逃げた方がいいよなぁ」
『――いい場所があるぞ』

 背後からの声、それも若い人間のものだ。さ、っと彼は立ち上がり反射的に身構えていた。相手は自分よりも暗い所にいる。非常に不利な状況だった。
 誰なのだろう、彼は暗闇に目を凝らした。敵とは限らない、それに相手は自分が逃げるのに居場所を知っていると言っていた。罠の可能性もあるが、嘘をついているかどうかはまだ分からない。

(一応信じてみよう)
 
 彼が体の力を抜くと、まるで心の声が聞こえていたかのように相手は「ありがとう」と呟いた。
 パタッ、パタッ、と小気味よい足音を立てて相手は近づいてきた。やっと光に照らされてその正体を確認すると――彼は唖然とした。声こそ若者のものであったが、彼の目に映っているのはもう六十は超えているであろう老人のものであったからだ。着ているものはなかなか高級そうなもので、ロマンスグレーのおじさまだった。

「いい場所とは?」

 彼が尋ねると、今度は老人が驚いた表情を浮かべる。だがそれはすぐに愉快そうなものへと変わり、やんわりと笑みを浮かべて老人は応答せず彼に向かって話し始めた。

「声のことを聞かない人間は初めてだよ。君はなかなか面白い奴だ」
「そりゃどーも」

 そっけなく返事を返し、「で、場所ってどこなんですか」と今度は真顔で質問する。

「覚悟はあるか?」
「……はぁ?」

 見当違いな答えを返された気がして、彼は思わず呟きそれから慌てて「生き抜く覚悟ならとっくに」と言った。

「そうか。なら……」老人は倉庫の奥の方へ行き、何かガサガサとやっていたが目的のものを見つけたのかすぐに戻ってきた。「これを飲みなさい」

 彼の手に渡された真っ赤なボトル。瓶に詰められた、真っ赤な液体。
 
「これはなんです?」
「ジュース」

 老人は真顔で答えた。

「いやそうじゃなくて」
「異世界への扉」

 今度は真剣に答えをくれた。老人の答えで、彼はふと子供たちの歌を思い起こした。そう言えば、歌詞に真っ赤なジュースとか言う言葉があったような気もする。
 異世界へ行ってしまえば、当然捕まることはない。だが――。

「異世界へ行けば逃れられる代わり、魔物に追われることになる。ジュースの効果は一時間。この世界と異世界は同じ大地に重なっている。この倉庫も、異世界に存在する。なるべく遠くへ逃げ、帰ってきたときにずっと遠い場所へいればまずは大丈夫だろう。ただし、魔物に食べられたら最後、君は蒸発することになる。一度扉を開けば、戻るには時間の経過しかない。まあ、生きる覚悟があるなら大丈夫だろう」

 彼は、手にしているボトルを暫く見つめていたがやがてキャップを開けると中身をぐ、っと流し入れた。このままでは、いずれは捕まってしまう。なら、どんな方法でも試してみる価値があると思ったからだった。三口ほど飲んだところで、彼の体に異変が起こり始めた。すぅと体が解けていくような不思議な感覚、時と空間と意識が少しずつ混ざりあい、完全に世界から隔離させるような奇妙なものが彼を襲った。
 瞬間、彼の意識は途切れしかしすぐにまた元に戻った。
 老人の姿は消えていた。




 ジュースのせいか、体温があがっている気がした。
 世界の空気が違う。よく分からないが、老人の言うとおり異世界へやってきたようである。ジュースの力は本物だったのだ。思わず瓶を握る力が強まった。
 ふぅ、と小さくため息をついて倉庫の外に出る。何一つ変わらない景色だが、ただ一つ、賑やかさだけがぽっかりと抜け落ちているような感じだ。逃げ回るうちにこの辺りの地形に詳しくなり今だってどう曲がればどこに出るかが分かっているのに、見知らぬ土地に一人取り残されているような感情になった。ともかく、できるだけこの場所を離れなければならない。
 魔物がいつどこから飛び出してくるか分からない。捕まれば待ち受ける運命こそ人間と同じだが、どういう殺され方をされるか分からないだけ恐怖は倍増だ。体の大きさも、武器も、足の速さも何一つ分からない敵が相手となるとさすがに彼も怖じ気づいた。

「……遠くへ、遠くへ」

 呪文のように呟きながら絶えず辺りを見回し走り始める。挙動不審な行動をしていることに羞恥こそ覚えないが、自分が酷く小さな人間に感じられた。
 しんとした世界に、自分の足音だけが木霊する。
 
「遠く、へ……っ!」

 がさ、と音がして思わず後ろを振り返る。そして安堵の息をついた。風で紙が飛ばされてきただけのことだったのだ。そう、何もここまで怯えることはないじゃないか。必ずしも魔物に見つかるとは限らないのだし……。
 彼は本当に覚悟を決めた。一時間――それだけ逃げ切れば、当分の間は自由を得られる。ふつふつと彼の体に闘志がこみ上げてきた。どう足掻いてもいい、絶対に生き延びて見せようと心に誓った。いずれ真実が明らかになるまで生き延びて見せようと決めた。
 再び、彼は走り始めた。残り時間はあと五十分である。


   *


 一体どこまで走ったのだろうか。辺りには見知らぬ世界が広がっている。あまり遠出をするタイプでなかった彼は、近所の域を超えると途端に土地勘が無くなってしまうのであった。後ろを振り返ると、辛うじて見覚えのある塔が見えている。かなり遠くへ来たらしかった。
 この辺りでいいだろう、と彼は隠れる場所を捜し出した。魔物に見つかる前に、身を隠さねばならない。
 途中何度か奇妙な生物を見たが、どれも足の親指の爪程度の大きさで彼に立ち向かおうとする者はいなかった。魔物といってもこんな小さなものなのか、と油断していたことが原因かもしれない。
 は、と振り返ると自分と同じくらいの大きさの鳥が低空飛行で突撃してこようとしていた。まじかよ、と心の中で呟きながらぎりぎりのところでかわす。だが鳥も諦めず何度も立ち向かってくる。人間なんてめったに食べられないごちそうなのだろう。

「悪いがお前の餌にはならねぇぜ」

 まだ半分以上中身の残っているジュースの瓶で鳥の翼を力いっぱい殴る。確かな手ごたえを感じ、確認するとどうやら偶然にも急所を突いたようであった。魔物の弱点は分からないが、鳥は羽根を攻撃されると弱くなるらしい。飛ぶ力を失った鳥は、地面にぐったりと横たわり――そして消滅した。

「ゲームかよ……」彼は鳥のいた場所をみつめ、「ま、ジュースの力で異世界へ行こうっていう発想もそもそも現実味がないというか……」と苦笑した。

 ともあれ命は助かったのだ。彼は細い路地に入り込み、隠れ家を探し始めた。残り時間はあと三十分である。


   *


 路地に入ると、少しだけ懐かしい匂いがした。あっちの世界の空気と似ている。生物の暖かみが感じられた。
 彼は適当な倉庫を探し始める。奥へ進むほど、暖かさが大きくなってきていた。
 暖かさ。
 暖かさ……?

「あっ……!」

 彼は重大な失敗を犯した。この世界に人間は存在しない。イコール、暖かさは魔物のものである。そのことにやっと気付いたのだ。
 慌ててきた道を引き返すが、時すでに遅し、人間の香りを嗅ぎつけた魔物たちが群がって来ていた。
 大きな牙を持つライオンのような魔物、足一本一本に巨大な爪を持つ蜘蛛のような魔物、人間の顔を持つ馬――。特徴は違えど、よく観察するとどの魔物も目が赤く光っていることに気付いた。細い路地の前も後ろも囲まれてしまったのだから、絶体絶命の状況である。これが映画かなんかなら、主人公に救いが入って魔物をなぎ倒していくのだろうが……残念ながら、彼には助けてくれる人間など存在しない。
 完全に威嚇体勢に入った魔物たちに精一杯の虚勢を張って、そのとき彼はある作戦を思いついた。


   *


「彼は生きているだろうか」

 老人は彼が異世界に消えたことを確認してからそう呟いた。彼は今まで出会ったどの人間とも違っていた。運命を呪わずただ生きていた。彼なら、きっとやってくれると老人は確信した。
 今まで幾度となく作戦は失敗してきた。五十年――五十年だ。何度も夢を託しては失敗し、裏切られてきた。
 
「…………」

 今でも時折思い出すのだ。濡れ衣を着せられ殺された息子のことを。息子の名誉は守られたが、しかしそれは既に息子が死んだ後のことだった……。遅かったのだ、せめて五日早く真実が分かっていれば殺されることはなかったのに。
 静かな怒りがこみ上げてきた。世の中に対する、どうしようもない気持。やり切れない思いで暮らす中、ある日老人は知った。この大地には二つの世界が重なり合っているということを。それから思いついたのがこの真っ赤なジュースだった。飲んだ人間を異世界に送り出す、そんなことが可能か悩ましかったが、けれど二つの世界が混ざり合う状況がどこかにあるはずだと思い研究を続けた。そして遂に、夢は叶った。二つの世界の交点となる場所で、AとBの温度の差が十七度になり湿度が四十三パーセントのときにAを送りだすという法則を見つけ出したのであった。
 その交点となる場所が、この倉庫である。倉庫は常に湿度を四十三パーセントに保ち、室内温度を二十度に設定した。あの赤いジュースは、体温を上昇、もしくは低下させ三十七度にする効果があるのだ。

「やってくれよ……」


   *


 このジュースには、異世界に送る効果がある。人間だけとは限らないかもしれない。あっちの世界が混乱する可能性があるが、けれど自分が生き残ってさえいればいいと彼は思った。かっこよく生きようなんて思いはとうに消えうせている。どっかのどぶにそんな思いは捨ててしまった。とにかく真実が明らかにされるまでは何としてでも生き抜かなければならないのだ。

「消え失せろ!」

 彼はキャップを外しその中身を魔物たちに向かって振りまき始めた。真っ赤な液体が雨のように降り注いでいく。それは自らの体をも濡らし、魔物の体も赤く染め上げた。
 刹那、変化が訪れた。魔物の動きがぴたりと止まり、空間が渦を巻き始めた。それでも、彼は残りが無くなるまでジュースをこぼした。暫くして、言葉にできない叫び声をあげながら魔物たちが消えていった。何体か残っている者もいたが、彼に恐怖を抱いたらしく尻尾を巻いて逃げだした。

「……勝った」

 彼は呟き――再び意識を手放した。


   *


 彼が意識を取り戻したのは、それから三日が経った日のことだった。気が付くと見知らぬ部屋にいてぼんやりとした意識で彼は老人の姿を認めていた。

「ありがとう。礼をいうよ」

 老人はこれまでになく穏やかな表情で礼を告げた。訳の分からない彼は、小さく首をかしげる。記憶が少し飛んでいた。
 その様子を見て老人は部屋の窓を開いた。微笑をたたえる老人と対照的に、彼は驚愕の表情を浮かべる。
 真っ赤に燃える街、破壊されていく建物、降り注ぐ真っ赤な雨。泣き叫ぶ人間の声、そして狂喜乱舞する魔物たちの姿。彼の脳裏に全ての出来事が蘇った。追われ、ジュースを飲み、そしてその液体を魔物に投げつけた。この世界に来た魔物は、当然溢れかえるようにいる人間を襲ったことだろう。あの真っ赤な雨は、おそらく老人が機械かなんかを使って人工的に降らせているに違いない――真っ赤なジュースを。

「これで世界は滅ぼされる。息子を死に至らせた政府も、これで全滅だ」

 無邪気な青年の声が穏やかな笑みを浮かべる。やはり、しわがれた老人の姿とは不釣り合いだ。
 彼は老人に恐怖を抱いていた。この人は、初めからこれが目的だったのだ。自分は世界滅亡計画の片棒を担いでしまったのだ……何という皮肉だろう! 罪から逃れるために起こした行動が大罪に繋がるなんて。

「さあ、これでわたしと君は共犯だ。仲良く暮らそうじゃないか」

 彼の顔は引き攣った。自分は、二度と出ることを許されない見えない鳥籠に捕らわれてしまったのだから。
 これから待ち受けている過酷な運命を思い、彼は酷く絶望した。


 ジュースと陰謀・(了)
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