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[4993] 【2016年度】お題小説スレッド【お題「去る」作品投稿期間】
   
日時: 2016/01/12 23:57
名前: 企画運営委員 ID:7PNV346o



『お題小説スレッド』へようこそ。こちらはあるお題に沿って読みきり小説を書き、その作品をみんなで批評し合う場です。
 初心者も上級者も関係ありません。うまくなりたいとお思いの方であれば、だれでも自由に参加することができます。一生懸命執筆し、一生懸命批評して、小説の技術を高め合いましょう。
 皆様のご参加をお待ちしております。

――――――――――――――――――――

>>002 【ルール説明】:必ず熟読して下さい。(※内容、一言の箇所を訂正しました。ご確認ください)
>>003 【批評のポイント】:批評をする際のポイントをまとめたものです。
>>004 【イベントルール説明】:イベントに関するルールです。必ず熟読してください





▼お題:第32回のお題は「種」です。
 二月に種をまくのか? と思いましたが、調べてみるとじゃがいもは二月にまくそうですね。……さらに調べてみると一年中、なにかしらの種をまいてるみたいです。
 そんなことは置いといて。「種」というお題には「たね」以外にも色々な解釈があると思います。みなさんがどのような作品を投稿してくるのか、楽しみにしております。
※第30回の作品投稿期間は2月1日(土)からです


▼お題:第33回のお題は「姫」です。
 三月なので(笑)
 というのはよくわかりませんが(ひなまつりだから?)「ひめ」というのは可愛らしい語感ですよね。私は緑の黒髪をした和服姿が思い浮かびます。桃色が似合いますよね。桃色……やはりひなまつりでしょうか。それでは、みなさんの作品お待ちしております。
 
※第31回の作品投稿期間は3月1日(土)からです


▼お題:第34回のお題は「嘘」です。
 嘘でした。


▼お題:最終回のお題は「魔法」です。
 奮ってご参加ください。


▼お題:第36回のお題は「友情」です。
 ネタでした。


▼お題:第37回のお題は「音」です。
 奮ってご参加ください。



▼日程(第32回)

1月1日       :お題発表
2月1日〜15日   :作品投稿期間
2月16日〜28日  :批評提出期間


▼日程(第33回) 

2月1日     :お題発表
3月1日〜1月15日 :作品投稿期間
3月16日〜30日 :批評提出期間


▼日程(第35回) 

6月1日     :お題発表
6月1日〜7月31日 :作品投稿期間
8月1日〜   :批評提出期間



▼注意もしくは削除対象となるお書きこみ
・荒らし
・荒らしへの反応
・自分や他人の小説の宣伝
・雑談、チャット化
・ルールに反するもの
・管理人が不適切と判断したもの

――――――――――――――――――――

>目次 >>001


>第32回 お題『種』参加作品(敬称略)

>>404 sakana:シロハの辻褄
>>405 伊達サクット:赤い種、青い種

================================================================================

▼リンク
小説講座/雑談所』(お礼や言い訳等はこちらへ)
旧お題小説スレッド』(前スレはこちらから)
ツイッター』(朔乱のアカウントです。お題の告知などをしています)

管理人:If 空人 朔乱  補佐:伊達サクット
メンテ

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魔法少女襲来 ( No.89 )
   
日時: 2012/03/01 00:49
名前: 黒猫 ID:M4XlPArE



 この世界では皆が魔法に頼って暮らしてる。
部屋の明かりもお風呂を沸かすのも料理をするのも全て魔法。
魔法が無くなれば生活ができなくなってしまうと言っても過言ではない程、魔法に頼り切っている。
生まれた時からそうだし、別にそれが不思議とも思わない。
でも魔法を使って全世界に一つの放送が流れた。

「この世界にある魔法の根源である魔力が底を尽きてしまう」

 すぐに受け入れることはできなかった。
生まれてから当然のようにある魔法。それが無くなってしまうなんて想像できないし、したくもない。
もし本当に無くなってしまえば、生活は出来なくなってしまうから人間は全滅に近い状態になってしまうだろう。
人類相続の危機と言える程の出来事。
しかし放送は続いた。

「皆様はこことは別の異世界というものがあるのをご存じだろうか」

 さっきから嘘か本当か分からないような事を連発する放送だ。

「かつて謳われた伝承の中にこんなものがある、枯れた大地に人間の血肉を与えることで大地は生を取り戻す」

 大地から魔力が流れてきているというのは当然の知識で、この場合に言っている大地とは魔法の事だろう。
なんとなくだが解釈すると「魔力が枯渇すれば人間の血肉を大地に与えればそこにある魔力は再び復活する」とかそういうこと。
でも、そんなもの伝承に過ぎなかった。

「異世界への扉は既に開かれつつある、異世界の住人全てを要に世界を復活させようという案が出ているのだ」

 放送はまだまだ続く。
何処の誰がこんな変な宗教染みたことを言っているのか知らないが、こんなことバカげてる。
まともに聞く人間なんて一人もいるわけない。
大体、魔力が枯渇寸前って時点で誰も信じていないと思う。
でもだったら一体何のために世界的な放送をしているのか、大ボラを吹くためにこんなことをするだろうか。
私はふと考えた。
それから月日を重ねるごとに、心なしか魔法の力が弱まってきている気がする。
何故だろう。そう思い始めた人々の中にあの放送が思い出された。
本当に魔力が枯渇しているのだろうか。だとすれば存続のために異世界の扉をくぐり、その住民たちを全て殺してしまわなければならないのだろうか。
様々な想いが全世界に住む民衆の頭を駆け廻る。

 ああ、世界は滅んでしまう――。
全世界、数えきれない程の人間が史上初、同様の事を考えた瞬間であった。
勿論、魔法少女である私も同じことを考えていた。



「と、いう夢を見ました」
「何それ、バカみた〜い」
学校に行く途中、私が話した夢を聞いて大爆笑するユーちゃん。
転校してきて間もない私に話しかけてくれた親友で、今は何でも話せる仲。
夢の話で高笑いをあげながら楽しく学校の校門をくぐり、ユーちゃんは他の友達と会って様々な人に挨拶を交わしていく。
一人で取り残された私。今なら小さく呟く程度誰にも聞こえない。


 ごめんね、私、本当は――――。



メンテ
結末を知らない物語。 ( No.90 )
   
日時: 2012/03/01 12:08
名前: かなちゃん王女 ID:UisG3afU

 昔々で始まる物語。
 それはある国のお話です――。
 その国には一人の王女様がいらっしゃいました。
 王女様は大層お美しくあられて、求婚者が野を越え山を越え、海を越えやってくる程でございます。
 けれども、王女様はどの求婚も断わってしまいました。
 しかし、それで諦めきれぬ男がおりました。
 それは悪い国の王子様でした。
 彼はお抱えの魔女にこう相談しました。

「王女様が私に振り向くようになる魔法をかけておくれ」

 と。
 魔女は言いました。

「人の心を変えてしまう魔法はありません。けれど、そう仕向ける魔法ならございます」

 それで構わないと言う王子様に魔女は続けます。

「それには王子様に、他の求婚者と同じように努力してもらわなければなりません」

 魔女はそう言って、二つの条件を出しました。

「一つ、王女様には永遠の眠りについていただきます。それは運命の者とのキスで目覚める呪いにも似た魔法でございます」

 王子様は頷きます。
 我こそが彼のお美しい王女様の運命の者と疑わずに。
 魔女は二つ目の条件を口に出しました。

「王女様には私が作り出す棘(いばら)に囲われ、ドラゴンが守る城で眠っていただきます。
 棘の森を抜け、ドラゴンを討ち、見事その難関を自力で突破し、王女様を助け出してください。
 そうすれば、彼の王女様は王子様を運命のお人とお認めになられ、晴れて結婚をすることが出来るでしょう」

 王子様はそれで良いを返事をし、魔女は早速お美しい王女様に呪いにも似た魔法をかけてしまいました。
 突然現れた魔女にお美しい王女様がさらわれてしまったので、ある国の人たちは大騒ぎです。
 ある国の王様は、お美しい王女様を助けるために国中、世界中の人たちにこう言いました。

「我が美しき王女を救い出してくれたものに、王女を妃とする権利を与えよう」

 その言葉を聞いた悪い国の王子様はしてやったりと、早速お美しい王女様が眠る城へと出向きました。
 けれど、悪い国の王子様は棘に囲われ、ドラゴンが守る城に辿(たど)り着くことができず、また他の者も辿り着いても助け出すことは叶いませんでした。
 そうして、お美しい王女様は今でも棘に囲われ、ドラゴンが守る城で眠り続けているというのです。


 ――とあるところに、一人の少年がいました。
 彼は特別な力を持っているわけでも、特別な地位を持っているわけでもありませんでした。 
 けれど、とても優しい心を持っていました。

「昔々の物語。棘に囲われ、ドラゴンが守る城には眠れる王女様がいるという」

 ある日、彼の住む村に流れの吟遊詩人がやってきました。
 それはとても年老いた女でした。

「王女様は今でも運命の人を待ち、眠り続けている」

 吟遊詩人は最後の一句を謡いきると、またどこかへ流れて行ってしまいました。

「棘の城の眠れる王女――」

 彼の心に、王女様を助け出すという火が灯りました――。


 昔々で始まる物語。
 それはある国のお話です――。
 その国には一人の王女様がいらっしゃいました。
 王女様は大層お美しくあられて、求婚者が野を越え山を越え、海を越えやってくる程でございます。
 彼女は悪い国の王子様に、永遠に眠り続ける魔法をかけられてしまいました。
 そして彼女はずっと、長い時間を眠りの中で過ごしています。
 ――けれど、いつしかその物語に続きが書き加えられました。
 王女様はキスという魔法で目覚め、幸せに生涯を終えた、と。

 ――終幕――
メンテ
Hannon le. ( No.91 )
   
日時: 2012/03/01 23:07
名前: ATM◆hRJ9Ya./t. ID:DbNl6UQY

Hannon le.


 幼い頃のわたしは魔法なんて一個も使えなくて、それで執事である、あの男に相談をしたの。
 そうしたら、彼は笑顔で言っていた――

「誰にでも使える魔法があります」
「ほんとう?」
「ええ、本当です。それはですねお嬢様。ありがとう、と言う魔法です」
「ありがとう? それは言葉でしょう、魔法なんかじゃないわ」
「いいえ、違いますよお嬢様。ありがとうとは、感謝の言葉です。言われた側も、言った側もぽかぽかする、心が温かくなる魔法です」
「そんなの魔法じゃないわ。魔法っていうのはね、おっきな炎でドーンって敵をやっつけたりするの」
「それは人を傷つけてしまう悲しい魔法です。お嬢様、わたくしはそれを行使するあなたさまを見たくはないのです。お嬢様はお優しいお方です。それはもう聖母のように、慈愛に溢れております。ですから、そんな人々を傷つける魔法を覚えて欲しくはないのです」
「やだわ、わたしもおとうさまみたいな立派な魔法使いになるの」
「左様でございますか……」

 彼の笑顔からは、残念そうな色が少し出ていた。それだけで太陽が雲に覆い隠されたように、輝きをとんと失ってしまった。

「ねぇ、あなたも魔法を使えるのでしょう。わたしに教えてくれない?」
「残念ですがお嬢様、わたくしは魔法などという巧妙な技術は持ち合わせておりません。わたくしがお教えできるのは、ありがとうという言葉のみでございます」
「そう……」

 わたしはそのときの彼の言葉を鮮明に覚えている。まるで昨日の出来事だったかのように、なぜか明澄に。

「お嬢様。ありがとうという魔法は、心が温かくなることもあれば、悲しくなってしまうこともあります」
「?」
「お嬢様はまだ幼いですから、これから十分に経験を積んで答えを見出してください」

 彼はそう言ってその言葉の意味を教えてくれなかった。そして、その後にこうも言った。

「……そうですね。あと少しで意味がわかるのではないでしょうか。わたくしの推測が正しければね」

 まるで悟っているかのように目を細めて言っていた。太陽のような眩しいばかりの笑顔は完全に俤を消して、どこか儚い表情だった。この時わたしは、始めて彼のことを「淋しそうな人だな」と思った。

 その数年後、彼は逝去した。
 わたしは泣いたよ。いつもそばにいてくれて、なんでもお世話をしてくれて、だれよりも優しかったあなたの亡骸の前で。泣きじゃくって、一週間も部屋から出なくて、悲しくて淋しくて食べ物も喉を通らなかった。

 わたし、わかったよ。あなたが黄泉の国へと旅立ったとき、やっとわかったよ。あなたがわたしに教えてくれた唯一の魔法の意味が。あのときの言葉の意味が。
 その魔法を使えば人は自然と笑顔が綻び、嬉しくなる。けど、状況次第で悲しくもなる。
 どれだけ後悔したことか。まだ一度も言ったことがなかったあの魔法(ことば)を伝えられなかったことを。だから今、ここで言うね。

 あなたに最大の感謝を込めて――















――「ありがとう」、と。
メンテ
HAPPY LIFE ( No.92 )
   
日時: 2012/03/03 18:41
名前: 天パ◆5eZxhLkUFE ID:QZyt.0sM

 『平成』と呼ばれた時代よりずっと、ずっと先の未来。広大な宇宙の中にその星――『水球』はありました。星の七割を水が占めることから名前がついたそうです。大昔の『水球』は『地球』と呼ばれていましたが、今となっては知る術はありません。大昔の『水球』を知る者や文献は百年前の全世界核戦争で全て消え去りました。核戦争の終戦後に残ったのは、焼け残った焦土と、全人口百万人にも満たない僅かばかりの人間だけでした。
 ただただ荒廃した都市だけが続く大地で、彼らは悔やみました。「なぜ、また同じ過ちを繰り返してしまったのだ」と。人の歴史は、長々と続く戦争によって作られてきました。それを人は温故知新で分かっていたはずなのに、再び繰り返してしまいました。戦争の後に残るのは深い悲しみと絶望と、朽ち果てた大地だけだということも知っていたのに。
 それから彼らは立ち上がりました。微かに見える希望を捨てずに、僅かな人口と何もない大地で、『地球』再建計画を模索したのです。後に彼らは開拓者の意を込めて『パイオニア』と呼ばれるようになりました。
 『パイオニア』達から生まれた長男、長女の位に位置する通称、『第一世代』は特別な能力――俗に言う『特殊能力』『魔法』を持っていました。『第一世代』の彼らは何も無い所から、鉄や炎などの物を出すことができました。彼らのおかげで、何もなかった大地には簡素なモノや家があふれました。しかし、これだけではまだ『地球』再建とはいきません。
 そこで『第一世代』達から――『パイオニア』の孫に位置する――通称、『第二世代』が生まれました。『第二世代』も『第一世代』同様に特殊な能力を持っていました。それは手先の器用さ。彼らは誰にも劣らない技術力を持ち合わせていました。『第一世代』と『第二世代』は協力して、役に立つ道具や工夫してもっと便利になったモノをたくさん作りました。この『第二世代』が成人する頃には、『パイオニア』は全て死に絶え、『地球』は『水球』へと名前を変えました。
 技術革新の止まることを知らない『水球』で、また新たな生命が誕生しました。通称――ここまで来れば言わなくとも分かりますね――『第三世代』です。彼らもまた、地味ではありますが強大な能力を持って生まれました。それは頭の良さ。彼らは一人一人が神童の如く秀才で、子供の頃から様々な法則や原理を発見していきました。彼らが発見した原理は『第一世代』や『第二世代』が作ったモノに組み込まれ、更に人類の生活は豊かさを増していきました。大地に電波塔や工場、ビルが乱立され整備された道路を自動車が走るのにはそう時間はかかりませんでした。このレベルに達するのに約七十年です。凄まじいスピードで、人類は進化を遂げてきました。
 『第三世代』が生まれて二十年ほどの月日が経ちました。その頃には全ての学問は完成されました。数学、文学、哲学、物理学、経済学、心理学――――神や幽霊の存在は完全否定され、全ての事象は科学によって裏付けされました。そして、産業は誰にも止められないくらいのスピードで進化を遂げていきました。

  ◆   ◆
 
 それから、十年の月日が流れました。『第一世代』、『第二世代』、そして他の世代よりやや寿命の短い『第三世代』が死に絶え、特にこれといった能力を持ち合わせていない普通の人間、『第四世代』が地球を埋め尽くしました。しかし、それでよかったのです。その時には既に、文化という文化は全て完成され、求めるモノが全て手に入る『水球』が出来上がったのですから。
 町はまさにパラダイスでした。流行に振り回されず好きな服を着た『第四世代』が町を練り歩き、空は『浮遊自動車』と呼ばれる乗り物が秩序を守って通行しています。これのお陰で海に切断された大地と大地を自由に移動することが可能になりました。かつては荒れた更地だった場所には、ビルや色々な店、住宅街が並んでいます。
 『浮遊自動車』ができたお陰で外国人同士のコミュニュケーションが盛んになりました。そこで音声自動翻訳装置、略して『音訳』と呼ばれる物が作られました。最初はヘッドフォンのように耳に直接かけて使っていましたが、最終的には小型化して体に埋め込む形となりました。
 発達した科学は、もはや『魔法』と呼べる域まで達しました。
 人類は遂に念願の夢、不老不死を達成することができました。『第三世代』が発見した技術によるものです。異常に発達した医療技術のお陰で人々の健康を脅かすウイルスは完全に駆除され、人々は死の恐怖を忘れてしまいました。同時に、整形手術の技術も異常に発達しました。町には美男美女が溢れかえりました。
 世の中から「浮浪者」「自殺者」という言葉はなくなりました。使う必要性がなくなったのです。『第三世代』が設定した議会政治のマニュアルにのっとって政治を行うことで、社会の安定は保たれました。そのお陰で、浮浪者は絶滅し、誰もがお金に困らない、幸せな生活を送れるようになりました。
 食料にも困りませんでした。核戦争の以前まで『日本』と呼ばれていた大地に大きなドームが設立されました。この世の全ての食料はそこで作られました。
 あらゆる面で不幸な人間は、完全に消えました。争いごともなく、欲しいモノは全て手に入る夢の世界が出来上がったのです。
 
 ――――が、それもそうは長く続きませんでした。
 
 三百年続いた、平穏。平和。そんなある日。世界中に自殺者が増大し、人口が激減しました。「自殺」という考えすらもない時節の中のそのニュースに、人々は恐れおののきました。政府はただちに原因を解明しようと世界中の死者の統計を取りました。統計を取ったことで、ある一つの事実が浮かび上がりました。それは自殺者の大半が三百年以上生きた初期の頃の『第四世代』ということでした。
 彼らの大半は死ぬ前に遺書のような音声による伝言を遺していました。いわば遺言です。『第四世代』の主な自殺動機は、「生きることに飽きた」でした。
 そのニュースを聞いて、人々は思い直しました。「果たして、自分達は本当に幸せだったのか」と。

 ――――幸せは、人々から『希望』を奪っていったのです。

 何もかもが、頂点へと達してしまったために、人々は高みを目指すこと、挑戦することを止めてしまいました。
 学問が大成されてしまったために、人々の頭はどんどん悪くなっていきました。
 『歩く』『走る』以外の移動手段が全て確立されてしまったために、人々は動くことを忘れてしまいました。やがて彼らの体は退化していきました。
 ちょっと手を伸ばせば欲しいモノは全て手に入ります。そのため、人々は努力をすることを止めてしまいました。
 整形技術が発達してしまったために、町には似たような顔の人間があふれかえりました。どんな人でもその人なりの個性があるはずなのに、人々は自らそれを手放しました。
 発達しすぎた医療技術は人々を必要以上に長生きさせました。人々は生きることに退屈してしまいました。

 ――――人々は自らの愚かさに気づきました。
 
 自分の在り方に人々は絶望し、町には自殺者が続出しました。一日で世界の全人口の半分が減りました。人々の一日の大半は死体の回収作業で占められました。二日目には全世界の人口が皮肉にも百万人を下回りました。人々は不満の捌け口がないためにストレスが溜まりました。
 ――どうしてこうなった? 誰のせい? 誰を恨めばいい? こんな世界を作るきっかけを作った『パイオニア』? それとも魔法のような能力を持った『第一世代』? 『第二世代』? 変なニュースを流した政府? 『水球』とは何? 自分は何のために生きてきたの?
 幸せだったはずの世界は、一瞬で絶望に染まりました。どんなに欲しがっていたモノも今は空虚に思えてきました。幸せな生活が霞のように消えていきます。

 ――――何でもかんでも、貪欲に求めすぎた愚かな人々は、やがて世界から消えました。残ったのは、人々が必死の思いで作り上げてきた文明だけ。

 ……あ、いや。すみません。今の話には一つ、訂正すべき所がありました。
 人々は決して完璧などではなかったのです。
 なぜならば――――私が天地を創造した神だからです。
メンテ
ママとお皿と魔法使い ( No.93 )
   
日時: 2012/03/05 21:41
名前: ロブスター×ロブスター ID:POdj6o9g

「あの、お皿を割っちゃったんだけど」
 部屋に入るなりそう言うと、彼女は口元に小さく弧を描いた。見れば、彼女の頬はうっすらと赤く染まり、瞳は奇妙に揺れている。それからしばらくの沈黙があって、僕は読んでいた本をベッドの脇のテーブルに置いた。そして、すこしばかり眉を上げて、忙しなく揺れる彼女の瞳を改めて見つめた。
「お皿を?」
 僕はゆっくりと、噛み締めるかのように言い、ベッドの上で体を動かして座り直した。
「そうなの。またママに叱られちゃうわ」
 そう言って彼女が視線を下に落とすので、僕は目のやり場に困り、仕方なく窓へと視線を向けてみた。すると、夕暮れの暖かそうなオレンジ色の光が町をつつみこんでいくのが目に入った。やがて、その光は町のみならず、僕の薄暗かった部屋までもオレンジ色に染め上げて行った。窓の近くには花が飾られていたのだが、僕はその影が見る見るうちに形を変えて行くのがなぜかたまらなく面白くなった。
「だから、だからね」
 そんな声に我に返った僕は、再び彼女の方へと視線を移した。成る程、よく見れば忙しなく動いていたのは瞳だけでは無かった。お腹のあたりで組み合わされた白く細い指もまた、何度となく組んでは開いてを繰り返していたし、唇はもごもごとおかしな具合に動かされている。
 僕は唇が歪みそうになるのを間一髪咳払いで殺すと、怪訝そうに目を細めた彼女の次の言葉を待った。やがて彼女は元いた場所から二三歩前へ歩みを進め、口を開いた。
「だから、魔法を使って、元に戻してほしいの」
  魔法を使って。彼女は確かにそう言ったようだ。
 僕は今まで膝の上に置いていた手を持ち上げ、顎へと移した。そして、視線を左斜め横へと流し、体をずらして二度目の座り直しを行った。
「お願いよ」
 彼女の声が微かに空気を揺らして、僕の鼓膜を振動させた。視線は流しているので、彼女の顔は見えないが、この声の掠れ具合から推測するにおそらく涙ぐんでいるのだろう。はたまたもう泣いているのか。
 それから十九秒の時を経て、僕は漸く言った。
「いいとも」
 刹那、彼女の表情は劇的な変化を遂げた。いや、それは表情に限ったことでは無く、彼女の身振りも、口ぶりも、はたまた周囲の雰囲気までもが一瞬にして色を変えたようだった。
「本当に! ありがとう。これで、ママに怒られなくてすむわ!」
 まず、そう言って笑う口元に変化が見られた。もはやそれは最初に部屋に入ってきた時に見せた機械的な曲線の一部ではなく、ヒトが喜びを体現する時に見せる完全な笑顔というものに他ならなかった。次に、ピンと張られた糸の様に動かなかった眉が完全に弛緩し、今やハの字を形成している。当然、それの意味するところは安心である。
雰囲気とは、その人自身が創りだすものである。それを証明せよ
 そんな証明問題があったなら、彼女は間違いなく百点の答案を導けるに違いない。
「ねぇ、魔法を使えばすべて元通りかな」
 不意に僕はそう尋ねた。すると、彼女は瞳を丸くし、僕の顔を見つめた。そして、首を三十度程傾けて言った。
 「そうよ。だって、お皿さえ直れば、すべてすむことだもの。ママは怒らないし、あたしは怒られない」
 当然でしょとでも言うかのような瞳が、まっすぐ僕を見据えていた。既にそれは揺れてもいなかったし、涙ぐんでもいなかった。
「じゃあ、こうしよう。今から僕と競争をしよう。僕が魔法でお皿を元通りにする間、お前は自分の部屋に戻って答えを考えてみるといい。いいかい? お皿が直っても、直らないものなぁんだ、だよ」
 僕はそう言って口元に弧を描いた。
「わかった。じゃあ、競争よ」
「うん。はやく行きなさい。ママが戻ってこないうちにね」
 ママがもどってこないうちという言葉が効いたのか、彼女はうっすらと微笑みを浮かべ、しかし足早に自分の部屋へと戻って行った。
「さて」
 僕は一つため息をつくと、ベッドから腰を上げた。そして、コートを羽織ると、魔法を使うべく、デパートへと向かうのだった。(了)
メンテ

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