ホームに戻る > スレッド一覧 > 記事閲覧
[4993] 【2016年度】お題小説スレッド【お題「去る」作品投稿期間】
   
日時: 2016/01/12 23:57
名前: 企画運営委員 ID:7PNV346o



『お題小説スレッド』へようこそ。こちらはあるお題に沿って読みきり小説を書き、その作品をみんなで批評し合う場です。
 初心者も上級者も関係ありません。うまくなりたいとお思いの方であれば、だれでも自由に参加することができます。一生懸命執筆し、一生懸命批評して、小説の技術を高め合いましょう。
 皆様のご参加をお待ちしております。

――――――――――――――――――――

>>002 【ルール説明】:必ず熟読して下さい。(※内容、一言の箇所を訂正しました。ご確認ください)
>>003 【批評のポイント】:批評をする際のポイントをまとめたものです。
>>004 【イベントルール説明】:イベントに関するルールです。必ず熟読してください





▼お題:第32回のお題は「種」です。
 二月に種をまくのか? と思いましたが、調べてみるとじゃがいもは二月にまくそうですね。……さらに調べてみると一年中、なにかしらの種をまいてるみたいです。
 そんなことは置いといて。「種」というお題には「たね」以外にも色々な解釈があると思います。みなさんがどのような作品を投稿してくるのか、楽しみにしております。
※第30回の作品投稿期間は2月1日(土)からです


▼お題:第33回のお題は「姫」です。
 三月なので(笑)
 というのはよくわかりませんが(ひなまつりだから?)「ひめ」というのは可愛らしい語感ですよね。私は緑の黒髪をした和服姿が思い浮かびます。桃色が似合いますよね。桃色……やはりひなまつりでしょうか。それでは、みなさんの作品お待ちしております。
 
※第31回の作品投稿期間は3月1日(土)からです


▼お題:第34回のお題は「嘘」です。
 嘘でした。


▼お題:最終回のお題は「魔法」です。
 奮ってご参加ください。


▼お題:第36回のお題は「友情」です。
 ネタでした。


▼お題:第37回のお題は「音」です。
 奮ってご参加ください。



▼日程(第32回)

1月1日       :お題発表
2月1日〜15日   :作品投稿期間
2月16日〜28日  :批評提出期間


▼日程(第33回) 

2月1日     :お題発表
3月1日〜1月15日 :作品投稿期間
3月16日〜30日 :批評提出期間


▼日程(第35回) 

6月1日     :お題発表
6月1日〜7月31日 :作品投稿期間
8月1日〜   :批評提出期間



▼注意もしくは削除対象となるお書きこみ
・荒らし
・荒らしへの反応
・自分や他人の小説の宣伝
・雑談、チャット化
・ルールに反するもの
・管理人が不適切と判断したもの

――――――――――――――――――――

>目次 >>001


>第32回 お題『種』参加作品(敬称略)

>>404 sakana:シロハの辻褄
>>405 伊達サクット:赤い種、青い種

================================================================================

▼リンク
小説講座/雑談所』(お礼や言い訳等はこちらへ)
旧お題小説スレッド』(前スレはこちらから)
ツイッター』(朔乱のアカウントです。お題の告知などをしています)

管理人:If 空人 朔乱  補佐:伊達サクット
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

さくらのいろは ( No.125 )
   
日時: 2012/04/12 00:08
名前: 空人 ID:qyrunHIY

「ねぇ、亮くん。どうして貴方は毎日ここに来るの?」
「えっ?」
「だって、ここは亮くんの教室からは遠いし、毎日変わり映えしない風景しかないでしょう?」

 小首を傾げ、長めに整えられた前髪から見え隠れしている大きな瞳で、八重先輩は俺の目を覗き込むように見つめてくる。それだけで、俺の心臓は全力疾走した後のように酸素を求め始めるのだけれど、彼女の質問はそれ以上の過酷を強いる。
 彼女が言うように、ここは俺のクラスがある校舎の東側とはほぼ反対の西側、しかも階まで違う場所にある。放課後の、しかも上級生が往来している階層に毎日のように通ってきているのでは、疑問に思わないほうがどうかしている。
 その答えは自分でも明確に理解できている。ここに来る理由なんて一つしかない。彼女に、会いたいからだ。

「あっ、え……と。それは、ですね」

 しかし、それをストレートに伝えてしまって良いのだろうか。先輩と出会ってからまだ一ヶ月も経っていない。そんな俺から告白まがいの、というかそれは告白と言って良いであろう言葉を聞いても、彼女を困らせてしまうだけなのではないだろうか。とぼけてしまうのは簡単だ。この教室からよく見える校庭の桜を見に来ているのだと、言葉を濁せば良い。だけど――。
 西日差す教室には沈黙の風が流れ、開いた窓から散り舞う桜のはなびらは彼女の艶やかな黒髪に身を寄せる。小さな春の訪れに誘われるように手を伸ばせば、こちらを見上げる先輩の表情がはっきりと眼に飛び込んでくる。
 こぼれそうに潤う瞳。春の彩に染められた頬。小さな唇はわずかに振るえ。悩ましげに寄せる眉はまるで、俺の答えに期待しているような、そんな風に思えて。
 言葉を飲み込むこともままならず、美麗に飾る暇も無く、ただ口から吐き出した。

「貴方に、会いに。貴方が好きだからです。先輩」

 血の逆流は、言い終えてから感じられた。込み上げる熱は脳を沸かせ、思考をも止める。
 再び訪れた沈黙が長い。そう感じてしまうのは、血流が俺の脳を活性化させているからなのか、それともうつむいた先輩が、息を飲み込んでいるからなのか。
 黒髪がひとふさ流れ落ちるのを掬い取ろうとして、手を止める。

「名前……」
「え?」

 聞き返した声が震えていたのは、彼女の声もまた震えていたからで。

「名前で呼んでくれないの?」
「八重……先輩?」
「うん」

 呼ばれた自分の名を愛しむように抱きしめて、八重先輩は満開の笑みで伸ばしかけていた俺の手を包み込んだ。



 彼女との出会いは、まだ俺が入学したてで校舎内の配置ですらろくに把握していない頃の事だった。
 その日、一緒に帰ろうと約束したくせに部活のミーティングにだけ出るから待っていろなどと横暴な事をぬかした幼馴染のおかげで、俺はぶらぶらと校舎内を徘徊していた。どこかの部活動を見学しても良かったのだが、幼馴染のようにこれという情熱を傾けられるものは持っていなかった為、どこか腰を落ち着けられる場所を探して彷徨う事になってしまったのだ。
 校舎内には運動部の元気な声がどことなしに響いている。周りを見回せば俺と同じのようにさすらう影は無く、襲い来るのは酷い焦燥感と、孤独感。
 だからかも知れない。
 俺は、彼女を見つけた。
 クラスの縮小で置き去りにされた教室は、西日に燃やされていて。頬をかすめた花びらが、桜だとわからないほど一面の橙。もしも彼女が声を聞かせてくれなかったなら、俺は誰かがそこに居る事にすら気が付かなかっただろう。

「誰?」

 振り向けばたなびく長い髪。

「君は……新入生かな?」
「は、はい」

 鼻にかかった甘い声。返事をするのがやっとの俺に、返される優しい笑顔。立ち振る舞いにもどこか上品さを感じられるこの学校の先輩らしきその女性は、高校に上がりたての自分よりも背が低く、制服を着ていなければ桜の精霊だと思っていたに違いない。

「君もお花見しに来たの?」

 息を飲み込むのを止められなかった。小さく首を傾げる仕草は可愛らしく、妙に型にはまっていて。俺はこの学校に入学できた事を神に感謝した。
 その日以来、俺は放課後の空き教室に足しげく通いつめた。八重先輩はこの学校の行事や出来事を面白おかしく話してくれる。俺は専ら聞き役だったが、話し好きの彼女とは良く馬が合った。時折訪れる沈黙の時間すら心地よく感じられた。話をする時の輝くような顔に、窓の外にある桜をうっとりと眺める横顔に、自分が好意を寄せているのだと気付くのに、それほどの時間はかからなかった。



 そんな可憐な先輩が、いまや俺の彼女なのである。だから授業中にニヤニヤと思い出し笑いをしていても、頭を叩かれるような謂れは無いはずだ。

「痛いぞ、遊羽」
「亮が気持ち悪い顔してるのが悪い」

 どうだろう、この横暴な言い草は。しかしこれが腐れ縁の極みこと、我が幼馴染様なのである。
 叩かれた部分を撫でつけながら視線を上げると、ショートカットを揺らし、顔をそらしたまま、幼馴染の眉はつり上がる。

「昨日の放課後からニヤニヤしっぱなしだぞお前。今度はいったい何をやらかしたんだ?」

 彼女の中では、俺が何かをやらかした事は決定事項らしい。しかし、そんな心外な言葉をも許容して余りある心の広さが今の俺にはあるのである。

「だいたいなんで部活あがりの私と下校時間が重なるんだよ。毎日放課後に何をやっているんだ」
「随分と信用が無いんだな。俺は何もやってないし、これからやるつもりも無い。放課後やっていたのは……そうだな、あえて言うならお花見、かな。あと顔は生まれつきだ」

 優羽が言ったことを一つ一つ訂正していくと、瞬きを数回繰り返したあと、彼女の眉は壮大に歪む。

「一人でお花見かよ。さみしい奴だ」
「一人じゃねえよ。か、彼女と一緒だし……」

 言った後で顔が熱くなる。あらためて口に出すとなかなか恥ずかしいものだ。
 しかし、言及する台詞が返ってくると思っていた幼馴染の口は、続く言葉をつむげないまま固まっている。

「……本当なのか?」
「え? ああ、嘘じゃねえよ。昨日告白して。ニヤニヤしていたとしたら、そのせいだ。許せ」
「チッ」

 舌打ちで返事をした幼馴染は苦々しい表情で再び視線をそらす。せめて形だけでも祝ってくれたら良いのにさ。

「後で、写メ寄こしな。そしたら、納得してやる。そしたら……」

 なんともおさまりの悪い台詞でその場をしめた優羽は、振り向きもせずに教室を後にした。
 あんな調子では、彼女に恋人が出来るのは当分先のことだろう。幼馴染の未来を案じ、溜め息を落とした。



「そんなわけで、写真を取らせてください」

 携帯を片手に空き教室へ飛び込んだ俺は、咲き乱れる桜を背景に振り向く先輩を写し取る。許可を得ずにシャッターを切ったことに苦笑いする先輩が俺の携帯に納まっている。残念ながら少し逆光気味だったが。

「それは良いんだけど、亮くんそれ、変なことに使わないよね?」

 八重先輩は可愛らしい笑顔を浮かべたまま俺の素行を疑う。もう一度携帯を構え構図を模索しながら、俺はどうにか信用を取り戻させようと言葉を探すことにした。

「変なことって、どんな事ですか?」
「え?」

 質問に質問を重ねると、先輩は少し考えるような仕草をした後に、視線を外し頬を赤らめる。

「そ、そんな事、言えないよ」
「……どんな事考えたんすか。本当に」

 紅く染まったまま、あははと誤魔化すように笑う先輩は、俺が思っている以上に耳が達者らしい。

「まあ、良いですけどね。何もしませんよ。友達が先輩を見たいと言うので、撮らせてもらったんですよ。……えと、写真にキスくらいはするかも知れませんが」

 大事な恋人の写真だ、それくらいしても罰は当たらないだろう。もちろん他人に見られるようなところでやるつもりも性癖もない。
 俺の言葉を聞いて、先輩は携帯のレンズに近寄ってくる。まだほんのりと桜色の頬が可愛らしく、思わず撮影ボタンを押した。携帯をどけるとその顔は至近距離にあって、鼓動は跳ねる。

「本物がここに居るのに、写真にしかしないの?」
「え、あっ」

 そんな大胆なお誘いに、乗らない理由も見つからなかった。先輩のふっくらとした唇に自分のを重ねる。触れるだけの口付けは、互いのぬくもりで熱くなり、離れてもなお残る。目を開ければそこには潤んだ瞳があって、おれは思わずその細い体を抱きしめた。

「亮く……んん」

 名前をつむごうとする唇をもう一度ふさぐ。もっと強く、もっと深く彼女を感じたくて奥へ。存分に味わい、離した後も溢れ出す想いを首筋へとあてた。零れ落ちる小さな悲鳴に、俺の情熱は昂っていく。仰ぎ見た先輩の表情に、思わぬところから出た声に対する驚きと羞恥が見て取れる。彼女がうつむくとぶつかる額。互いの熱を交換するように。三度目のキスは、先輩の方から押し当てられた。



 なんだか夢心地のまま、今日は授業にも集中できないでいた。昨日の先輩を思い出すと頭がボーっとして、幼馴染に叩かれても動じないほどだ。

「大丈夫か、お前。顔が変だぞ?」
「優羽か……」

 俺の挙動を不審に思ったのだろう、仁王立ちの幼馴染は心配そうに眉を寄せる。しかしそれならば頭を叩いたのは何故なのかと問いたい。

「何でもないよ、ちょっと疲れが出ただけさ。あと顔は生まれつきだ」

 本当の原因を話す訳にもいかず、適当にありがちな理由をつける。優羽もそれほど気にしていないらしく、すぐに話題を変えてきた。

「まあ、いいや。それよりお前、昨日の写メ。あれは何なんだ」
「何って、俺の彼女だよ。可愛いだろ?」
「可愛いって言うか、まぁ綺麗だとは思うけど。これがお前のお花見の相手ってことだよな?」
「ん? ああ、そうだな」

 俺が可愛い恋人を得た事が信じられないのだろうが、それにしても年上に対してちょっと敬意が足りていないんじゃないのだろうか。まあそれがコイツの良い所でもあるのだが。

「あんまり言いふらすなよ。二人の時間を邪魔されたくないしな」
「……ま、お前が変態なのはわかっていたけどな」

 酷い言い草だ。そりゃあ昨日の自分の行動は、少し行き過ぎたところはあったかも知れないが。――と、昨日の先輩を今思い出すのは、いろいろな事がいろいろとマズイ。湧き出る青春の奔流を押さえ込むため、俺は反論をあきらめて無言を貫く事にした。豪胆な幼馴染は俺の口答えなんて期待すらしていなかったようだがな。

「なぁなぁ、そんなに綺麗なら、私にも見せてくれよ。その、お前の恋人? とやらをさ」
「疑問系はやめろよ。あと、ついさっき邪魔するなと言ったはずだぞ」
「かたい事言うなよ。ちょっと見たらすぐに帰るって」

 優羽は何が楽しいのか、ニヤニヤと笑っている。こんな面白半分の奴を愛しの先輩に会わせたくはないが、今断っても隠れて覗きに来るに違いない。
 渋々了承を伝える俺に、優羽は嬉しそうな笑顔で答えた。



「こんにちは、八重先輩」

 いつもの場所に立ち、いつもの笑顔で振り向く八重先輩。薄紅に彩られたその姿は儚くも可憐で。

「今日も素敵ですね」

 お世辞なんかじゃない素直な気持ちでそう伝えると、はにかんだ様にクスクスと肩を揺する。風に揺れる髪の毛一本に至るまで愛おしく。思わず胸にたぐり寄せてしまいたくなって、伸ばしかけた腕を慌てて止めた。
 今日は邪魔者を招いてしまっているのだという事を思い出したのだ。

「そうそう、今日は友人を連れてきたんですよ。幼馴染なんですけどね」

 視線はまだ動かせないままで、話題を変える。すると先輩の瞳は困惑に揺れて、表情は悲哀に沈む。先輩も自分と同じように、二人っきりでいられなくなる事を残念に思ってくれているのなら、俺は世界一の果報者だと思って間違いないだろう。
 先輩の細い指を手に取り、安心させるようにそこへ唇を落とす。見物客が居るので少し恥ずかしいわけなのだが、視線を元に戻すと彼女は驚きの表情で目を見開いていたので、俺の目論見は成功したと言えるだろう。
 彼女の頬が緩んだのを見て安心した俺は、ゆっくりと景色を反転させた。



 予想された位置に幼馴染の姿は無かった。空き教室の入り口に立ちつくし、硬直しているその姿にいつもの優羽の威勢は無い。両の足を振るわせ、顔色を白く染め、瞳は恐怖に揺れる。
 いったいどうしたというのだろうか。

「優羽?」

 呼び声に、ようやくその怯えた視線を動かす。彼女が何に怯えているのか解らずに首を傾げる俺を見て、幾分か恐慌を緩和させたかと思うと、今度はそれを怒りの色に染める。

「何をしてるんだ、お前は!」
「何って、俺の彼女を紹介しようと……?」

 ますます訳がわからない。これではまるで俺が悪いみたいじゃないか。と言うより、俺の先輩が彼女の恐怖の元だとか。そんな訳が無い。見た目内気な少女のようである八重先輩を、長身で威圧感のある幼馴染がどうして恐怖しなければならないと言うのだろう。
 訳がわからず首を反対側にひねる俺を見て、優羽は苛立ちを強めながら俺の後方に指を向けた。

「……良く見ろ」

 はっきりと告げられない回答に釈然としないまま、俺は視線を元に戻した。
 そこにはいつもの儚げな少女が立っている。いや、その姿はいつも以上に儚げだった。今にも泣きだしそうな表情。震える指先。何かを告げようとして唇は開かれ、なのに届かない、声。
 先輩の影はうすれ、形が揺らめく。ゆるやかに存在を消していく俺の恋人は、最後にゴメンねと囁いた。



 風に飛ばされ桜の木の枝にひっかかったプリントを取ろうと手を伸ばし、あの教室の窓から転落して亡くなった女生徒が居た事を、俺はあの後人伝に聞いた。詳細を聞き出し調べた素性から、その女生徒が八重先輩である事は間違いなかった。
 一生のものだとさえ思っていた俺の恋は、桜が散るよりも早く終わってしまったのだ。

「とにかくお前は、もうあの教室に近付くな。まったく。ぼーっとしてるからあんな物に絡まれるんだ、シャンとしろシャンと!」

 人の命を喰らう恐ろしい魔物から俺を救ったのだと思い込んでいる幼馴染様は、いつも以上の上から目線で俺に言い聞かせてくれている。なんでも、彼女に送った写真には桜しか写っていなかったのだと言う。桜を恋人だと言いだした憐れな俺と一緒に花見をしてあげるために、彼女はあの教室へ向かったのだと。
 結果だけを見れば、優羽の言う通りなのだろう。しかし、本当に八重先輩は俺を連れて行こうとしていたのだろうか。いまだに信じられないのは、俺がまだ、彼女に恋をしているからだろう。

「いや、もう一度だけ行くよ。ちゃんとお別れを言わないと、スッキリしないし」

 それに、感謝の気持ちも伝えたい。今まで付き合ってくれてありがとう、と。まだ未練が残っている事は自分でも解っているし、我ながら女々しいとは思っている。
 結局俺は、もう一度彼女に、八重先輩に会いたいのだ。

「……そう、か。まぁ、正体が知れているのに迂闊に手を出しては来ないとは思うが。ついて行ってやろうか?」

 過保護に聞こえる発言は、俺を心配してくれている証拠なのだろう。だが俺は首を振った。

「いや、大丈夫だ。泣き顔を見られたくはないからな。先に帰って良いよ」
「そうか……わかった」

 渋々ではあったが了承してくれた幼馴染に、俺は余裕の笑みを返そうとした。本当にそう出来たかはわからないが。

「優羽」
「なんだよ」
「ありがとう」

 心からの感謝の言葉を伝えると、照れ笑いを浮かべながら優羽は踵を返す。そして、俺も幼馴染に背を向けると、件の空き教室へ足を運ぶのだった。



 夕焼けに染まった教室。窓に映る満開の桜。俺にとっては見慣れた風景。それは何一つ欠ける事無く、そこにあった。

「ねぇ、亮くん。どうして貴方はまたここに来てるの?」

 長めに切りそろえられた前髪を揺らし、先輩は俺の顔を覗き込む。それは少し怒ったような表情で、俺の心を痛めつける。

「わかりませんか?」

 自分でも調子に乗っているとは思う。会いたい人が以前と変わらない姿でそこに居たのだ。素直に嬉しいと思っても、罰は当たらないだろう。
 質問を質問で返した俺に、八重先輩はその可愛らしい唇を尖らせる。すぐにでも吸い付きたくなるから、やめて欲しいです。

「私は君と同じ世界の住人じゃないの。精気を吸って、君を連れて行こうとしたんだよ?」

 先輩は俺を言及するようににらみつける。その顔は以前には見たことの無いもので、不覚にもそれを嬉しいと感じてしまう俺がいた。

「連れて行ってくれないのですか?」
「な、何言ってるの? 君は死んじゃうって事なんだよ? わかってる?」
「ええ、わかってますよ」

 俺が微笑むとますます彼女の怒りは濃くなる。でも、わかっていないのは、どうやら先輩のほうのようだ。ならば、伝えれば良い。

「今日俺は貴方に会いに来ました。貴方が、好きだからです。先輩」

 いつかの告白を思わせる言葉は、彼女に届いたのだろうか。睨みつけていた瞳は大きく見開かれ、戸惑いにゆれ、困ったように眉を寄せ、零れそうに歪む。しばらく目を瞑り、顔を上げて見せてくれた時、彼女は哀しそうに微笑んだ。

「名前……」
「え?」

 聞き返した声が震えていたのは、彼女の声もまた震えていたからで。

「名前で呼んでくれないの?」
「八重……先輩?」
「うん」

 呼ばれた自分の名を愛しむように抱きしめて、八重先輩は満開の笑みで伸ばしかけていた俺の手を包み込んだ。

 忘れられた教室に、散り始めた桜の影だけが静かにゆれた。
メンテ
赤色桜 ( No.126 )
   
日時: 2012/04/14 21:06
名前: 菊桜◆KIKU/p2anM ID:nQkb5vu6

 この町の桜には人の血を吸って薔薇のように真っ赤になった花弁が一つだけあるという。僕がこの噂を知ったのは中学三年の冬の事だった。根拠もないただの噂だ。僕はその噂に興味を示し、図書館で桜にまつわる本を読んだりインターネットで検索したりと自分なりに調べた。だが、この町の歴史や桜についてはある程度分かったが、肝心の真っ赤な花弁についてはいくら調べてもでてこない。一か月ほどで僕は調べるのをやめた。我ながらよく続いたものだと思う。どこの誰が言い出したのかは知らないが、よくこんな噂が広まったものだ。そういえば調べている最中に気になる話を見つけた。桜の根元には死体がある、桜は人骨を吸って育つなどの不吉な話ばかりだ。その話に気になりはしたが、何か嫌な予感がして調べはしなかった。そして、僕の嫌な予感というのは後々当たる事になる。
 春になり、高校生になった僕は噂の事をすっかり忘れていた。その事を思い出したのは部屋の窓を開けっ放しにしていたら、桜の花びらが入ってきたのがきっかけだった。その花びらが普通の、あの桃色の花びらなら僕は噂を思い出さなかっただろう。まるで僕の事を探していたとでもいう様に足元に落ちたその花びらは薔薇のように真っ赤だった。桜の根元には死体がある、桜は人骨を吸って育つ――不吉な噂が頭の中を駆け巡り、僕は家を飛び出した。……噂は本当だったのか。どこに咲いているんだ。町に咲いている桜を徹底的に調べた。だが、真っ赤な花弁は出てこない。疲れ果てて家に戻ると空はオレンジ色になっていた。夕飯を食べ自分の部屋に戻った僕は部屋に落ちっぱなしになっていた花びらを手に取って眺めた。花びらは誰かの血を吸ったかのように真っ赤。いたずらのようでもなさそうだ。何で僕の足元に落ちてきたんだ? 僕に何かを伝えたかったのか? そんな事を考えていると、壁に掛けてあった時計が十一時を告げた。明日考える事にしよう。そう思い窓の近くにある机の上に花びらを置き、ベッドに横になり眠りについた。

「月見里(やまなし)様……月見里様」

 僕の名前を呼ぶ声がする。僕が聞いた事がない声だ。誰だろう。僕は目を開けた。

「やっと、目を開けて下さった」

 そこにいたのは線が細い、優しそうな目つきをした青年だった。白地に桃色の桜模様の綺麗なはおりを羽織っている。紺色の、腰まではありそうな長い髪を後ろで一つに束ねたその青年は嬉しそうな、でも少し泣きそうな顔をしていた。

「誰なんだ、君は。なぜ、僕の名前を知っている?」

 僕がそう言うと、青年は泣きそうな顔をさらに強め、突然僕に抱きついた。力が強く、僕の力では抜け出せそうにない。彼は僕の耳元で呟く。温かい吐息が僕の耳にかかった。

「やはり、覚えていませんか……」
「お、おい……! 何なんだ、君は」

 今にも泣き出しそうな声だった。僕が早く抜け出したい気持ちを押さえて言うと、彼は我に返ったように僕から手を離した。そして、僕の足元にひざまずく。何だ、この男は。まるで僕につかえているみたいじゃないか。僕が困惑していると彼が口を開いた。

「月見里様。あなたは今、幸せですか?」

 どう答えるか。僕はそんなに友達も多い方ではない。仕事の都合で別々に暮らしている両親とは時々手紙のやり取りをするし、うまくいっていると思う。一瞬迷ったが幸せだと言った。彼はその答えを聞いて、嬉しそうに微笑んだ。

「それより、君は誰なんだ。なぜ僕の名前を?」

 彼は僕の質問にハッという顔をした。どうやらすっかり忘れていたようだ。

「失礼しました。私の名は桜魔奏(さくらまかなで)といいます。あなたに伝えたい事があってきました」
「僕に伝えたい事? 何だ、それは」
「あなたが調べていた真っ赤な桜の事です。この事について、話さなくてはなりません。私についてきてほしいのです」

 彼がそう言った瞬間、僕は目を覚ました。壁の時計が九時を告げる。今日は休みだからよかったが、もし学校の日だったら大変な事になっていた。朝ごはんを食べ、着替えるために部屋に戻る。適当な服を出して壁を向き着替え始める。先ほどのは夢だったのか。体温や呼吸など、やけにリアルな夢だった。着替えながらそんな事を考えた。着替え終わって、今日は何をするかを考える。そうだ、昨日机に花びらを置いたはずだ。昨夜のように手に取ってよく見ようと思い、机のあるほうに振り返った。

「おはようございます、月見里様」

 夢に出てきた青年、桜魔奏といったか。彼がひざまずいていた。優しそうな顔つきは崩れ、苦しそうに肩で息をしている。半透明で今にも消えてしまいそうなその姿に驚いた。君は夢の世界に住んでいる人ではなかったのか。なぜ、半透明なんだ。なぜ、そんなに苦しそうなんだ。いつ、僕の部屋に入ってきた。僕が質問する前に彼は立ち上がり、僕の右手を引きながら走りだした。階段を降り、リビングを通り過ぎ、玄関のドアを開ける。

「お、おい……!」
「時間がないのです。月見里様」

 僕が戸惑っていると、彼はすみませんと呟き、僕を横向きに抱えた。彼は、僕の背面から腕を回して僕の胴体を支え、膝の下に差し入れた腕で僕の足を支えている。お姫様抱っこの図だ。彼は僕を抱えたまま、思いきり跳躍した。地面が遠くなっていく。風で僕たちの髪がなびく。ふわり、ふわりという体が浮く感覚は昨夜見た夢の続きかと錯覚してしまいそうだ。僕は、自分を抱えたままで跳ねながら移動している彼を見た。苦しそうな表情。彼の額を汗が一滴流れ落ちる。彼は屋根の上を跳ねながらどこかへと向かっているようだった。どこに向かっているんだ。僕をそこへ連れてきてどうするんだ。三十分ぐらいでそこに着いたようで、彼は僕を地面に下ろした。

「着きました。月見里様」

 そこは今まで見た事がない、美しい場所だった。ここには四季という概念がないのか、色とりどりの季節の花が咲き誇っており、何より目を引くのは一本の大きな桜だった。十メートルはあるだろうか。淡い桃色の花が美しい。大きく肩で息をしながら、その木に近づいていく桜魔さん。歩くのもつらそうな彼を支え、一緒に木の根元へと歩く。すみませんと申し訳なさそうに彼は言った。君は謝ってばかりだな。木の根元に着き彼がその幹に触れる。その瞬間、彼の半透明だった体が濃くなった。彼はいったい何者なんだ。人間ではないのか。

「君は……」
「あなたが調べていた真っ赤な桜について話します。その前にまず、私の事から話さなくてはなりません。私はこの桜の精霊です」
「え……」
「この桜の幹をよく見て下さい。この桜は一本のように見えますが、実は二本の木が絡み合っているのです。私はそのうちの一本です」

 彼は幹に背中を預け、淡々と話した。体調が回復したのか、体を預けるのをやめ、正座になおる。彼が正座になったので僕もなんとなく正座で聞くことにした。

「私はあなたの前世である、月見里桜(やまなしさくら)様に仕えていました」
「僕の前世だって? 僕と名前が……偶然だろう? 君がなぜそんな事が分かるんだ?」
「名前や姿、稀に記憶を受け継いで生まれてくる人がいるのです。その人たちの事を先祖返りといいます。私も、桜様も同じ先祖返りでした」
「先祖返り……僕が」
「私は同じ先祖返りという事で、桜様に仕えることになりました。私たちは親交を深め、主人と護衛以上の関係になっていったのです。この桜の木の下で桜様に告白されました。僕は君を好きになった、付き合ってくれと。その時は嬉しさで体がちぎれそうでした」

 彼は本当に嬉しそうな顔をしながら言った。僕の前世はそんな事を……。僕の前世は幸せだったのか。僕もそんな風になれるだろうか。僕がそんな事を考えていると、彼の顔が嬉しそうな顔から泣き出しそうな顔に変わっていった。どうしたんだ。僕が声をかけようとすると、彼は話し出した。とてもつらそうな声で。

「付き合いだしてから二年がたち、私たちはこの桜の木の下に行こうという事になりました。ですが、その桜には強力な悪霊が住み着いていたのです。その悪霊は最初に桜様を狙いました。桜様は浄化の力を持っていたからです。今までの幸せを奪われてたまるかと、私は全身全霊で戦いました。ですが、その悪霊はあまりにも強くて――私は致命傷を受け、動けなくなってしまいました。その時、桜様が私の前に立ち、自らを悪霊に取り込ませたのです。最期に桜様はこう言い残して悪霊とともに消えました。僕は君を愛していた、会えたらまた来世で、と……その時の桜様の顔が、声が、頭から離れません。本来は守る側なのに、私は主人を……守れなかった……!」

 耐えきれなくなったのか、左手で顔を覆いうつむく奏。彼の頬を流れる涙を見たとき、僕は反射的に彼を抱きしめていた。彼のつらそうな顔が見ていられなかったからだ。

「や、月見里様……?」
「泣くな。君がそんな風では、前世の僕が悲しむ」

 背中をさすってやり、彼が落ち着くまで待つ。彼は十分ぐらいで落ち着きを取り戻すと、もう大丈夫ですと言った。僕は彼から手を離し、彼の話の続きを聞く。

「悪霊との戦いで流れすぎた血を吸って、桜の花びらは赤く染まりました。やがて、その赤い色もだんだんと抜けていき、一輪だけが赤く染まったまま残りました。それが一つだけある赤い桜の噂のもとです」

 彼は前世の僕が消えたその後を話さなかった。致命傷を負った彼は動けないままで、おそらくは……。
 赤い桜の話をした後彼は僕をお姫様抱っこすると、木のてっぺんまで飛び上がった。突然の事に僕は戸惑ってしまう。僕は木のてっぺんの枝に咲いている赤い桜を見た。一輪だけ、たった一輪だけ他の花弁と違い、鮮やかな色をしている。その鮮やかな色を見た途端、僕の脳に次々と映像が浮かんできた。僕の隣を歩く桜魔さん。僕の手を握り、ひざまずく桜魔さん。僕を抱きしめる桜魔さん。その顔はとても幸せそうだった。ああ……これは、前世の僕の記憶か。僕には前世の記憶があったんだな。誰かを愛するという事は、こんなにも幸せな事なのか。僕を守るために傷ついた桜魔さん。僕はこれ以上、彼に傷ついてほしくなかったんだ。最期に彼を守れた事が、僕には誇りだ。五分ぐらいその桜を眺めた後、地面へと着地した。

「桜魔くん……」

 思わず転生前に呼んでいた呼び方をすると、彼は驚いたように目を見開いた。そんな彼に僕はにこりと笑いかける。

「全部、思い出した。辛い思いをさせてすまなかっ――」
「桜様! やっと、やっと思い出してくれたのですね。寂しかった……また会えてとても嬉しいです」

 僕の謝罪の言葉は最後まで言い終わらずに、彼にきつく抱きしめられた。僕が彼と過ごした時間の中で最もきつい抱きしめ方だった。無理もない、僕と彼は今まで長い間離ればなれだったのだ。

「桜魔くん、くるし……」
「愛しています! 愛しています、桜様。もう離れたくありません」

 背中に当たっている彼の両腕が震えているのが分かった。声も震えて、涙声になっている。あの桜を見てから、前世の僕の記憶がよみがえった。彼は寂しがりやで、甘えたがるし、泣き虫で……でも僕にとってはすごく大切な人だから。僕も、しばらくこのままで。

  *

 桜魔くんが手を離したのは、夕方になってからだった。オレンジ色の空にほんの少しだけ雲がかかり、とても美しい空だ。もうじき星が出て、暗くなるだろう。彼と離れる時間が迫りつつあった。

「桜様。もう、帰る時間ですね……」

 少し赤くなった瞳で、名残惜しそうに、でも優しい笑みを浮かべながら桜魔くんが言う。彼の気持ちも分かる。だけど、僕も寂しいんだ。だから……。

「あ、明日も、ここに来ていいか?」

 目をそらし、一息に言う。なかなか反応が返ってこないので、彼を見上げると驚いた顔がだんだんと幸せそうに微笑む顔になるところだった。はいと幸せそうに僕に返事を返した。

  *

 翌日になって、僕が桜の木のもとへ行くと、そこには誰かが立っていた。紺色の、背中の中ほどまである長い髪を一つにくくっている。桜魔くんだろうか。でも、桜模様のはおりを羽織っていないし、彼の髪はもう少し長かったはずだ。僕は恐る恐る彼に声をかける。

「桜魔くん、か?」

 振り向いたその顔は確かに彼の顔だった。幸せそうな微笑みを浮かべている。

「桜様。来世でも会えてよかったです」

 転生した彼だと分かった。前世の記憶もあるようだ。彼がプレゼントです、といって僕に花束を渡した。その中身は色とりどりな薔薇と、ホトトギスという小さな花、桜の花びらが。

「桜様。薔薇の花言葉とホトトギスの花言葉はご存知ですか」
「いや、知らないが」
「では桜の花言葉は?」
「君が教えてくれただろう? 『優美』だと」
「そうでしたね」
「薔薇の花言葉とホトトギスの花言葉はなんて言うんだ?」

 僕が尋ねると、彼は照れ臭そうに花言葉を言った。

「薔薇は『私はあなたを愛する』、ホトトギスは『永遠にあなたのもの』……です」

 つまり直訳すると、桜魔くんは永遠に僕のもので、僕を愛している、と……恥ずかしくなってきた。

「桜様。これからもずっと一緒ですよ」
「うわ! いきなりお姫様抱っこするな! 恥ずかしいだろう!」
「誰も見ていませんよ」

 にこりと微笑む桜魔くん。確信犯だ。そのまま歩き出すので、僕は焦る。

「ど、どこに行くつもりだ」
「ナイショです」
「いい加減降ろせ! 恥ずかしい!」
「赤くなっている桜様も大変可愛らしいです」
「そうじゃない!」

  *

「悪霊の力が強すぎて、なかなか戻って来られなかったんだ、やっと会えたな、桜魔くん」
「私は幸せ者ですね、来世の桜様にも会えましたし、もう会えないと思っていました」
「君は、本当に泣き虫だな……これからもこの桜を守っていこう、この桜の精霊として」
「はい、桜様……」

 桜の木の上で、腰まである紺色の長い髪を一つにくくっている青年と、腰まである黒髪の少し幼さが残る少女が、来世の自分達を見ていた。青年は白地に桃色の桜模様の綺麗なはおり、少女は桃色の生地に白の桜模様の膝までの着物だ。来世の自分達に、彼らは同時につぶやいた。

「今度は、どうか幸せに。桜魔くん」
「今度は、どうか幸せに。桜様」

 木のもとを離れていく二人の顔はとても幸せそうに笑っていた。

(終)
メンテ
お前と花見がしたいんだ ( No.127 )
   
日時: 2012/04/15 22:48
名前: 朔乱 ID:Sjvr1.i2

「ねぇ、あたしお花見に行きたい!」
 朝早く、桃は祖父の部屋に転がり込むなり満面の笑みでねだる。桃が小学生になるからと、その晴れ姿を見せるために桃と桃の家族は、父方の実家に遊びに来ていた。けれども、六歳の子供にとって田舎とは案外退屈なもので、何か退屈しのぎになるものはないかと探しているうちに、近くの山にとても桜が綺麗な場所があると教えられ、誰と行こうかと考えて、桃は大好きな祖父を誘うことにした。
「おぉ、桃か。桃はいつ見ても可愛いのう。顔立ちやしぐさなんかが若いころのばあさんによう似ている」
 これが祖父のいつもの口癖。祖父は桃の姿を見る度にそう言って頭を撫でてくる。桃には姉が二人いるが、桃はその中でも特別お気に入りらしい。
「だーかーら! お花見、いこ!」
 桃がぷくうと頬を膨らませるしぐさも、祖父は大好きだった。桜餅みたいだと、年甲斐もなく桃の頬をつまんで嬉しそうに笑う。そこでふと、何かに気がつく。
「そうか、お花見か。お花見。うーむ……もうワシも歳だから……花見は危険だのう……」
「危険? どうしてお花見が危険なの?」
 一つ、間を置いてから、祖父は真剣な眼差しで桃を見る。こころなしか空気が冷たいものになる。幼い桃はその空気を純粋に受け取り、硬く縮こまってつばを飲む。
「いいか、よく聞くんだよ。あの山に咲く桜へ行く道は大変危険なんだ。桜が咲く時期になると、美しい桜を愚かな人間共に見せないようにと地獄から魔王がやってくる。地獄に住まう魔獣たちの王ベヒモス、地獄の異端児暗殺王フラウロス、桜の管理者で大の人間嫌いデュナミス。どいつも強力な魔物たちだ。とてもワシと桃だけじゃ敵わない」
「何それ、そんな最近お姉ちゃんがはまりだしたアニメに出てきそうな生き物がいるなんて、初めて聞いたよ」
 祖父は冗談が好きな人だった。結局は自分がお花見に行くのが面倒なだけ。幼い桃にはそれがわからず「いつか桃がもっと強くなったとき、一緒にお花見に行こう」という祖父の言葉を信じて、我が家へと帰って行った。


 ☆


 それから毎年、お正月に実家へ帰る度に今度の春にはお花見に行こうと桃は祖父を誘うが、同じような理由で断られた。断るたびに祖父の身体はどんどん衰え、ついには六回目の誘いを聞く前に逝ってしまった。
 時はすぎて、桃が十七歳になろうという春。全身にプロテクターを付けた制服姿に木刀を携えた桃は、桜の咲く山へと繋がる道に立っていた。
「ベヒモス……三年前まではあなたの存在なんか信じてなかったけど。今日は……リベンジさせて貰います!」
 二メートルは超える巨体に醜い顔。急所だけをカバーした簡単な防具に身を包んだベヒモスは、ヴーと低いうなり声をあげて返事をする。桃が歩みを進めると、ベヒモスは両手に握る大斧を後ろに構えて、自らの巨体で大斧を隠す。桃は目の前に立つ巨大な化け物に恐怖を覚えながらも木刀を構える。恐怖で体が縮こまるのを感じて、力を抜こうと落ち着きなく体を動かす。
 一歩進む。ベヒモスとまだ距離がある。桃の出方を待っているのか、ベヒモスは動かない。
 一歩進む。ベヒモスの大斧はどれくらいの大きさだっただろうか。桃は不安になる。もしかしたら、思ってるより大きいかもしれない。この距離からでも届くかもしれない。
 もう一歩。不安から歩幅は小さくなる。ベヒモスは動かない。
 さらに一歩。焦りから歩幅が大きくなる。勢い余って体の重心が前へ傾く。それを狙っていたかのように、ベヒモスの肘が上がる。
――今しかない!
 迷う暇もなく、前傾姿勢を利用してベヒモスに飛び込む。横腹を突く、剣先をあげて鼻を打つ。捻った体を戻すように木刀を横に振る。木刀はベヒモスのこめかみを直撃、ベヒモスは倒れた。
 普段の特訓に比べると、対したことのない運動量にも関わらず、桃の呼吸はこれ以上ないくらいに乱れた。
 桃は自分が化け物を倒すという現実をなかなか受け入れられない。握られた木刀には不必要に力が込められて震える。倒れたベヒモスを見つめ、なんとか脳を理解させて気を静めると、木刀を下げて道を進んだ。
 ーーおじいちゃんのために、私は進む。

 三年前、桃がこの道を通ったときもベヒモスは現れた。そのときの桃は、祖父と見れなかった桜を一目見ようと、何の装備もせずに来ていた。当然敵うはずもなく、逃げ帰ることになった。
 帰ってみて気がついたのは、自分が無傷だったこと。ベヒモスは桃の姿を見るなり大斧を振り回した。しかし、一度もベヒモスの大斧が桃に当たることはなかった。桜の元へ行く意志のなくなったものを必要以上に攻撃しないとも考えられる。けれども、桃にはもう一つ、考えられることがあった。
 祖父は桃が小さい頃から桃が強くなることを求めた。強くなって、自分の力で桜の元へ行くことが祖父の望んでいることだとすれば、ベヒモスが桃の強さを調べるための試練になる。ベヒモスが桃を傷つけなかった理由も、桃が逃げた時点で失格になっていたからと説明ができる。


 ☆


 ベヒモスを倒してから少し歩いた所で人影を見つける。
「バルバドス……」
「ハウラスだ」
 豹が衣を纏って二足歩行をしたような魔物、ハウラスは獣が喉をならすような太い声ですかさず反論する。言葉を返されたことに桃は驚く。
「あれ、おじいちゃんが最後に言っていたのはバルバドスだったよ。最後だけ違ったから、ボケたのかと思ってたけど。やっぱりボケていたんだ」
「ハウラスだ」
 祖父が最初に言っていたものとも違うが、桃もそこまでは覚えていない。
 ふーん。と納得している桃をよそに、ハウラスは地面に刺さっている剣を二本引き抜くと、桃に襲い掛かる。桃が戦闘態勢に入った時には遅く、ハウラスはもう目の前にいた。振り上げた剣が桃の目に映る。
 咄嗟の判断で桃は下から剣を叩いた。剣と木刀がぶつかり、衝撃で手が痺れる。同時に、桃が胴体につけていたプロテクターが砕ける。プロテクターがあるとはいえ、痛さに意識が遠のく。うずくまった桃に、今度は下からすくい上げるようにしてハウラスの剣が飛んでくる。痛みに耐えながら、なんとかハウラスの剣を捉えると横から弾く。痛みで力が入らないものの、剣の軌道を桃の体から反らすことには成功した。同時に、右腕のプロテクターが砕ける。衝撃で桃の体は飛ばされる。地面につくよりも早く意識が追いつく。なんとか受け身をとって起き上がろうとするも、勢い余って体がふらつく。そんな隙もハウラスは見逃さなかった。剣を真横に振りかぶると、桃に飛びかかってくる。流石に、桃も気が付いていた。ハウラスは攻撃するとき、同時に別方向から別の剣で攻撃をしていた。急接近することで、上手く一つの剣に意識を集中させてもう一つの剣を隠す。そして、視界外から攻撃する。
 桃はふらついた勢いに身を任せて倒れる。頭上すれすれをハウラスの剣が二本かすめる。すぐにハウラスのスネを木刀で叩くと起き上がり、膝立ちになったハウラスの脳天に思いっきり木刀を振り下ろした。
 
 一息ついた所で痛みを思い出す。息をするのも辛く、右腕はほとんど動かすことができなくなっていた。それでも、桃の意志は揺るがない。使えなくなったプロテクターを外すと、左手だけで木刀を持ち、前へと進んだ。祖父の言葉が正しければ、残る敵は一人。


 ☆


 桜色と緑色の境界線。日本らしい風景の中に、不釣り合いなものが立っていた。いかにもギリシャ神話なんかに出てきそうな筋肉質の中年男性。背中には大きな翼が生えている。
「何をしにきた」
 男は無表情に、口すらも動かさずに声を発する。その姿は違和感を覚えさせ、恐怖心を煽るものだった。もっとも、体を動かすだけで精一杯の桃には恐怖心など覚える余裕はない。
「花見を……お花、見を……しに、きました」
「ならば我を、デュナミスを倒さねばならない。あのベヒモスやバルバドスと同じように。だが、そんな体では無理だろう?」
「ハウラスよ……おじいちゃん!」
 桃は左手でしっかりと木刀を握り直すと、叫び声をあげて走り出す。叫び声は桃の痛みを吹き飛ばし、直ぐに右手も動かせるようになる。
 桃は木刀を振り下ろす。何度も何度も、頭、肩、腕、翼、胴、足。ところ構わず打ちつける。デュナミスは身動き一つせず、全ての攻撃を受けた。デュナミスの反応がないまま、桃の体は限界に達し、倒れる。砂を吸い、咳き込む桃を前にして、デュナミスは手を差し出す。
「さぁ、帰るがいい。今のお前では、我を倒すことはできない」
 地面に這ったまま、最後の力を振り絞って、桃は握ったままになっている木刀を突き上げる。柔らかい感触が伝わり、液体が木刀をつたう。デュナミスがどうなったかを知る前に、桃の意識は消えて行った……


 ☆


 気がつくと、桃は桜の中にいた。咲き乱れる花が空を、舞い落ちる花びらが空気を、落ちた花びらが地面を桜色に染めている。痛みは消え、壊されたはずのプロテクターも元通り。散々酷使した木刀も傷一つついていなかった。
 桃は辺りを見渡す。延々と続く桜の中に、人影を見つける。それは、桃が初めてお花見をねだったときの元気な祖父の姿。
「おじいちゃん!」
 人影が祖父だとわかると、すぐに祖父の元へと駆け出す。祖父は昔と変わらずに、微笑んで頭を撫でる。
「桃か。こんなに大きくなって……ますます婆さんの若い頃に似てきたわい」
「でも、どうしておじいちゃんがこんなところに?」
 成長した桃でも、祖父よりは背が低い。上目遣いで桃が聞くと、祖父は嬉しそうににやける。
「ワシが死んだとき、神様に桃とお花見ができるよう、お願いをしたんだ」
「それじゃあ、どうしてあんな魔物を?」
 祖父は楽しそうに桜を仰ぎ見る。そんな祖父を見て桃にも、笑みがこぼれる。
「ワシが桃とのお花見を許されたのは一回だけだった……」
 桃は首を傾げる。桃には、祖父の言っていることと、魔物を出現させたことは繋がらない。
「ワシが丁度桃ぐらいのとき、ワシは気弱で丈夫じゃなかった。だから、よくやんちゃな同級生にいじめられていた。ある日、そうだな。あの日もこんな風に桜が見事に咲いていた。桜なんて関係なく、ワシはやんちゃな同級生たちにボコボコにされていたわけだが……。だが、その日はいつもと違ったんだよ。突然、同級生の手が止まったんだ。見てみると、木刀を持った女学生が同級生たちを蹴散らしていたんだ。美しかったぁ……。花びらが舞うように木刀を振り回すその姿は桜の精霊かとも見間違えるほどだった。それから、ワシの手を取って、大丈夫? と看病をしてくれた。その姿はさっきとは打って変わって可愛らしく。そのギャップがなんともたまらんかった。その後、一緒に花見をしたんだが、本当に楽しかった」
「そ、そうなんだ……」
 何を言い出すんだこのジジイは……という思いがなるべく表にでないようにと耐えながら、桃は相槌を打つ。
「まぁ、その女学生が今の婆さんなんだが。ワシはもう一度、婆さんと花見がしたくってしたくって……死んでも死にきれん。だから神様に頼んで、婆さんにそっくりな桃と花見をさせて貰ったんだ」
「え、いや。おばあちゃんまだ生きてるし、元気だよ。おばあちゃんとお花見すればいいじゃん」
「嫌じゃ! ワシは女学生のときの強くて美しい婆さんと花見がしたいんだ!」
 桃は何も言えなかった。孫娘を自分の記憶にいる理想の恋人に育てる。そんな壮大計画。思えば、小さい頃に花見を断ったのも楽しみを取っておきたかったのかもしれない。
「さくら、ワシは……お前と花見がしたいんだ」
 桃を見つめる祖父の目はもう、孫娘を見る目ではなかった。
「……それで、おじい……あなたは満足するの?」
 うん! と祖父は元気よく首を縦に振る。はぁ、とため息を一つつくと、桃は祖父の手を握った。
「それじゃあ、お花見をしましょう。でも、えっちなことは、しないでね」
メンテ
Re: 【オリキャラ投票受付中! 詳しくは雑談所へ!!】お題小説スレッド【四月期:作品投稿期間】 ( No.128 )
   
日時: 2012/04/16 10:59
名前: 企画運営委員 ID:sol8ZDAs

作品のご投稿お疲れ様でした。
16日(月)〜30日(月)は批評期間です。作品をご提出なされた方は必ず全作品の批評を行ってください。批評だけのご参加もお待ちしております。


>第12回『さくら』参加作品(敬称略) >>119-127

>>119黒猫:神様メモリー
>>121にゃんて猫:蕾桜
>>122アリス:いつかの死、いつかの生
>>123白鳥 美李亞:千代に八千代に
>>124ナルガEX:「バーチャル」
>>125空人:さくらのいろは
>>126菊桜:赤色桜
>>127朔乱:お前と花見がしたいんだ
メンテ
Re: 【オリキャラ決定! 詳しくは雑談所へ!!】お題小説スレッド【四月期:作品批評期間】 ( No.129 )
   
日時: 2012/04/21 18:30
名前: アリス ID:qfXsQfr6

 こんにちは。批評書きました。
 案の定感想文に成り下がっていますが、皆様のお役にたちますように。
 

>>119黒猫:神様メモリー

 哀愁漂う感じが素敵でした。一年中咲き続ける桜という設定も思いつきそうで思いつかない、それでいて上手く物語に密着している感じがよかったと思います。タイトルも秀逸。主人公のキャラクターも崩しすぎず真面目すぎずで好感が持てました。
 気になったのは、導入部分ですね。風景描写→桜神様の話、という地の分での長い語りが結構退屈に思えてしまいました。もちろんその両方が必要なものだとは思うのですけど、桜神様の話や、一年中咲いてるなどの話は、物語の中で少しずつ語っていくほうがよかったと思います。例えば、その桜が観光名所として名を馳せているようなので、主人公が観光客に対して桜神様の説明をするシーンを最初に入れてみるとか。ただ引っ切り無しに設定などを冒頭から書かれると理解しづらいです。
 主人公が進路に悩むところから始まり桜神様の一連の流れを通して進路決定、という流れが素晴らしかったなって思います。特に最後の一文に持っていくあたりがとてもよかったです。読ませていただいてありがとうございました。
 

>>121にゃんて猫:蕾桜

 後半が好きでした。些細なきっかけで人が変わっていくというお話は読んでいて清々しいです。おじいさんが重要な立ち位置にいて、最終的に亡くなっているのは悲しくて胸が締められました。
 気になったのは、お話の長さの割に主人公が家でダラダラ生活している描写が多いことですね。ネットが苦手、というだけで四行。他にも話の本筋に関係ない部分がたくさんあるのに、それが簡潔にまとめられていないのでやっぱり冗長な感じが否めません。もっとチロとの散歩の中でいろいろと思いを巡らす主人公の心理描写に力を入れた方がよかったかなって思いました。主人公の一人称が曖昧だったのも惜しいですし、冒頭の事実を基にしたフィクション、という注が果たして必要だったのかなあとも思いました。
 それでもよかったのが、随所に入る桜の描写ですね。「蕾が枝についていた」「蕾が割れて中のピンク色が〜〜」という感じに、主人公の気持ちが晴れやかになっていくにつれて桜も少しずつ階下に近づいているという情景描写がよかったです。また次回以降も楽しみにしてますね。


>>122アリス:いつかの死、いつかの生


 前回非常に悔しい思いをしてしまったので、今回は「物語を書くこと」を目標に頑張りました。頑張ったのはいいんですけど、今読み返したらすごく詰めが甘いしお題の「さくら」も消化不良だし、削れるところや膨らますべきところもたくさんあって心残りです。至らなさを痛感しました。
 冒頭の文章は梶井基次郎の『桜の樹の下には』から引用いたしました。今回のお題を聞いて真っ先に思い浮かんだのがこのお話でした。

>>123白鳥 美李亞:千代に八千代に


 描写が綺麗でとても感動しました。雰囲気もとてもよかったです。夫婦の愛もさることながら、地の文が本当によかったです。精霊という設定も好きでしたし、何より残り三日間を過ごす二人の様子と、それを包む暖かな空気感が伝わってきて、切ないような微笑ましいような、そんな気持ちになりました。
 気になったのは、主人公と妻の時間的な設定でしょうか。あれからまだ六年、というのが最初は婚約を交わしたのが六年前かと思ったのですけど、軍人としての幕を下ろしたのが六年前と書かれていて。でも、六年という答えは「またこの季節が訪れた」という言葉からのものはずですから、軍人として幕を下ろした季節がまた巡ってきた、と回想するのはどうも違和感があります。私の読みが甘いのかもしれないですけど……それとも、妻との余生を二人っきりで過ごすと決めて六年ということでしょうか。だとしたらいいんですけど、そちらを強調された方が理解がスムーズだったかなって思います。
 とてもいいお話でした。二人の悟ったような、それでいて入り込む隙間がないような愛には温かい気持ちにさせられました。「これからも、よろしく」というセリフを盛り込んだのもすごく良かったと思います。読ませていただいてありがとうございました。


>>124ナルガEX:「バーチャル」

 前回よりはお話らしくなってるなあって印象でした。出会ったものは幻のように消えていくけれど、桜だけは消えないというのはとても素敵だと思います。
 しかしながら、主人公の言動に一貫性がないのが読んでてよくわかります。この星に降りてきたのは二十六年前……という部分では、主人公はこの星の全ては嘘だと否定的な意見を持ってますが、文章の後半では、主人公は「ここが俺の居場所だ」と肯定的です。多分時間軸的には後者→前者なのでしょうが、二十六年で何があったのか、桜の木はどうなったのか、というような部分がすっぽり抜け落ちてるように思います。全体的に読者に不親切な部分が多いように思いました。誤字も目立ったので推敲などをされるといいと思います。
 上司のキャラクターはよかったなって思いました。次回以降楽しみにしてます。


>>125空人:さくらのいろは


 すごくよかったです。重すぎない軽やかな文体はさることながら、ミスリードには完全に騙されました。伏線もあったのにまったく気付かなかったです。幼馴染に写真を見せて桜しか写っていない、というのは一見ありがちですがなかなか使えない展開だと思います。それを綺麗にストンとあてはめたお話がすごく感動しました。その割にキャラクターも立ってるし、描写も綺麗。一か所誤字があったのは気になりましたが、それを補って余りあるお話でした。
 惜しい点は、すごく個人的なことなんですが幼馴染が報われなかったことでしょうか。いや、単に私が幼馴染という関係が好きだってだけなんですが、この優羽という子、絶対主人公のこと好きですよね。それだけに悲しい。いや本当に個人的なことなのでスルーしてください。すいません。
 でもだからこそよかったんだと思います。序盤と終盤のセリフの重複は巧いなあと唸りました。先輩の言葉の「名前で呼んでくれないの?」「本物がここに居るのに〜〜」というセリフは本当に可愛かった。面白かったです。読ませていただいてありがとうございました。


>>126菊桜:赤色桜

 桜をベースにした愛の物語というのはよくあるのですが、ここまで作品全体に登場人物同士の愛を貫いているというのは結構新鮮で面白く読めました。
 いくつか気になるところはありました。途中で一度、桜魔と話した後「リアルな夢だった」と言って目が覚める場面がありますが、あれは果たして必要だったのかなあということ。起きてすぐに隣にいるのであれば、わざわざ目覚めさせて着替えなどの間を置くよりも、夢ではなく現実のことだとして話を進めればよかったと思います。もう一点は、悪霊は浄化の力を持っている桜を狙った、と書かれているのですが、浄化の力を持っている方を先に狙うのでしょうか。悪霊としては、そのような特殊能力のない桜魔の方を狙う方がより都合がいいはずです。
 とはいってものの、後半のラブラブっぷりには読んでるこっちが恥ずかしくなるぐらい伝わるものがありました。花言葉の部分もよかったし、木の上でお話してる場面も個人的に好きでした。なんというか、綺麗な桜が頭に浮かんでくるような、そんなお話でした。読ませていただいてありがとうございました。
 
>>127朔乱:お前と花見がしたいんだ


 これは面白い。切ない感じのお話かと思ったんですが、本当に魔物が出てくるとは思いませんでした。しかも本編の主眼をほとんどそれに置いているあたりにセンスを感じます。ところどころに挟まっている小さい笑いどころもよかったです。
 気になったのは、祖父が桃に強くなることを求めた、とあるのですけど、過去の場面でもっとそれを強調してほしかったなあって思います。あと、バルバドス。「おじいちゃんが最後に言ってたのはバルバドス」とのことですが、一瞬理解が追いつきませんでした。過去の場面で言っていたのが、桃の言う「最初」で、バルバドスの名前が出たのはおじいちゃんが亡くなる前のことだったってことですよね? あれ、違うかな。そう解釈したのですけど、一瞬よくわからなかったです。それがわかればバルバドスとハウラスの食い違いの部分、もう少し笑えました。
 最後の敵がおじいちゃんだったのもよかったですし、序盤に若い頃の婆さんに似ている、というのも伏線だったとわかって、巧さを感じました。描写に関してはほとんどいうことはないですし、途中のバトルシーンも激しさがよく伝わってよかったです。読ませていただいてありがとうございました。





 今回のお題もとても楽しく参加させていただきました。皆さんお疲れ様でした。
 また次回も楽しみにしてます。


※敬称略
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

題名 スレッドをトップへソート
名前
パスワード (記事メンテ時に使用)
コメント

   クッキー保存