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[4993] 【2016年度】お題小説スレッド【お題「去る」作品投稿期間】
   
日時: 2016/01/12 23:57
名前: 企画運営委員 ID:7PNV346o



『お題小説スレッド』へようこそ。こちらはあるお題に沿って読みきり小説を書き、その作品をみんなで批評し合う場です。
 初心者も上級者も関係ありません。うまくなりたいとお思いの方であれば、だれでも自由に参加することができます。一生懸命執筆し、一生懸命批評して、小説の技術を高め合いましょう。
 皆様のご参加をお待ちしております。

――――――――――――――――――――

>>002 【ルール説明】:必ず熟読して下さい。(※内容、一言の箇所を訂正しました。ご確認ください)
>>003 【批評のポイント】:批評をする際のポイントをまとめたものです。
>>004 【イベントルール説明】:イベントに関するルールです。必ず熟読してください





▼お題:第32回のお題は「種」です。
 二月に種をまくのか? と思いましたが、調べてみるとじゃがいもは二月にまくそうですね。……さらに調べてみると一年中、なにかしらの種をまいてるみたいです。
 そんなことは置いといて。「種」というお題には「たね」以外にも色々な解釈があると思います。みなさんがどのような作品を投稿してくるのか、楽しみにしております。
※第30回の作品投稿期間は2月1日(土)からです


▼お題:第33回のお題は「姫」です。
 三月なので(笑)
 というのはよくわかりませんが(ひなまつりだから?)「ひめ」というのは可愛らしい語感ですよね。私は緑の黒髪をした和服姿が思い浮かびます。桃色が似合いますよね。桃色……やはりひなまつりでしょうか。それでは、みなさんの作品お待ちしております。
 
※第31回の作品投稿期間は3月1日(土)からです


▼お題:第34回のお題は「嘘」です。
 嘘でした。


▼お題:最終回のお題は「魔法」です。
 奮ってご参加ください。


▼お題:第36回のお題は「友情」です。
 ネタでした。


▼お題:第37回のお題は「音」です。
 奮ってご参加ください。



▼日程(第32回)

1月1日       :お題発表
2月1日〜15日   :作品投稿期間
2月16日〜28日  :批評提出期間


▼日程(第33回) 

2月1日     :お題発表
3月1日〜1月15日 :作品投稿期間
3月16日〜30日 :批評提出期間


▼日程(第35回) 

6月1日     :お題発表
6月1日〜7月31日 :作品投稿期間
8月1日〜   :批評提出期間



▼注意もしくは削除対象となるお書きこみ
・荒らし
・荒らしへの反応
・自分や他人の小説の宣伝
・雑談、チャット化
・ルールに反するもの
・管理人が不適切と判断したもの

――――――――――――――――――――

>目次 >>001


>第32回 お題『種』参加作品(敬称略)

>>404 sakana:シロハの辻褄
>>405 伊達サクット:赤い種、青い種

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▼リンク
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管理人:If 空人 朔乱  補佐:伊達サクット
メンテ

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Re: 【六月期のお題は「魔王」】お題小説スレッド【五月期お題「オリジナルキャラクター」:作品投稿期間】 ( No.135 )
   
日時: 2012/05/01 00:28
名前: 企画運営委員 ID:1GeJwNec

【第十二回総評】

 今回もとても楽しめた回でした。作品も八作集まり、また初参加の菊桜さんを迎えることが出来まして、賑やかな回になったかなと思います。テーマがさくらということで、春らしい作品が多かったですね。
 今回は異世界ものよりも現実世界を元にした作品が多かったですね。ただ、その分少々「らしさ」が出しにくかったのではないかなと思います。どの作品もどこか似通ってしまった部分があり、個性を強く感じさせる作品が少なかったところは残念かなと感じました。また、どちらかというと静的な物語がたくさん集まった印象です。静かな語りは、それはそれで雰囲気を作り上げていて良いものですが、やはり物語には起伏があるほうが読者を引き込むためには効果的かと思います。クライマックスだとか山場では溜めを作ってリズムを崩してみたりと、何か工夫できればさらによいものになるのではないでしょうか。冒頭ももう一歩工夫があればな、と感じる作品も多かったです。
 しかしながら、やはりと言いますか、かなり書かれる方が多く、本当にどの作品もしっかり作られていて読み応えがありました。特に文章にはどの作品にも努力が滲んでいるようでした。また、今回はタイトルにセンスを感じる作品も多かったです。春らしい優しい作品も多く、心が温まりました。魅力的なお話をありがとうございました。
 次回はオリジナルキャラクターということで、私も楽しみにしております。今度もまたたくさんの作品が集まればいいなあと思います。ちょうどゴールデンウィークとも重なっておりますし、皆さんぜひ参加してくださいね!
メンテ
Re: 【六月期のお題は「魔王」】お題小説スレッド【五月期お題「オリジナルキャラクター」:作品投稿期間】 ( No.136 )
   
日時: 2012/05/01 00:58
名前: 企画運営委員 ID:nSJ3MzeQ

第13回「オリジナルキャラクター:ジョブ・ナレーター」の作品投稿期間となりました。
作品投稿期間は5月1日(火)〜5月15日(火)までとなります。
ルール説明>>002 及び「ジョブ・ナレーター」のキャラクター設定(下記参照)を熟読の上、ご参加ください。
皆様の力作お待ちしております。

【名前】 ジョブ・ナレーター
【年齢】 20前後
【髪型/長さ/色】オールバックの黒
【目の色/特徴】茶。特徴無し
【身長/体重/身体的特徴】中肉中背の平均的体重
【肌の色】白人
【よく好む服装】紺のスーツ。仕事でもプライベートでもこの格好が多い。家で着替える時は寝間着のみ。
【その他の装飾品】時計収集が趣味。腕時計と懐中時計を同時に所持している。またその仕事柄、メモ帳とペンを常にポケットに入れている。
【性格】公平性を好む。喜劇的状況にも悲劇的状況にも落ち着いて対応。その一方で必要なら特定人物への感情移入もよく行う。
【口癖/口調】彼にとっての口調とは、小説で言う地の文。ドラマにおけるナレーションのようなものである。彼個人の口癖は「〜という話だったとさ」
【一人称/二人称】一人称は「私」 二人称は「君」 しかし、彼が自分自身を指して何かを言う事は少ない。
【その他】彼は物語に出会いやすい。喜劇であれ、悲劇であれ、彼にとっては等しく物語であり、それに巻き込まれる事で彼はその語り部となる。基本的に彼は物語の鑑賞が主であり干渉を嫌うが、必然性無く人が死ぬのを見るのはやはり好ましいものではなく、助けたりもする。しかし彼が最も優先するのは、自らの命である
メンテ
歴史 ( No.137 )
   
日時: 2012/05/13 11:09
名前: にゃんて猫 ID:tIX3no7U

ある日、一人の男がその国を訪れた。
男は黒いオールバックの髪をした、他にこれといった特徴の無い二十歳前後の若い男だった。
男はその日の昼過ぎに、国の国境にさしかかった。
砂漠の地は徐々に緑の湿地へと変わり、国の内外を隔てる壁につくころには、どこからともなく小鳥のさえずりが聞こえるほどになった。
壁のそばに男が近づくと、青い鋼鉄繊維の防護服を着た兵が男に近づいて質問した。
「入国者ですか」
「そうです」
男は簡潔に答えた。
その目には一切の感情もこもってはいない。これから入る国に対する高揚感すら、男からは微塵も感じられなかった。
「では関所に案内します。こちらへ」
兵は踵を返して歩きだし、男もそれに続いた。
彼は、国境警備兵の同僚に合図をして、鉄製の扉を開けた。
関所の中は殺風景で、長机と椅子が二脚向かい合わせで置かれている他は何もなかった。
「担当の者を呼びますので、しばらくここでお待ちください」
男が無言でそれに頷く。
男を案内した兵が関所の外へ消え、男は背負っていたバッグをおろして椅子に座った。
しばらくそのまま、椅子に座っていると反対側の扉が開き、男が入ってきた。
防弾などはしていない、薄い布地の服を着た男だった。関所の職員であることが随所から窺える。
ペンと書類を机に置き、男が椅子に座って話し始めた。
「入国管理局の職員です。本国への入国を希望されていると聞きましたが、間違いありませんね」
「はい」
男が端的にそれに答える。
担当者の男は眼鏡を取り出してかけると、書類を手に持って言った。
「では入国審査としていくつか質問をします。嘘偽りなくお答えください」
担当者の男はそう言うとペンを握り、男の表情を観察しながら質問を始めた。
「では、始めに。お名前は」
「ジョブ・ナレーター」
「出身は?どこから来ましたか」
「孤児でしたので、生まれは知りません。砂漠を越えて来ました」
「職業は」
「報道局の地方取材班です」
「ということは、この国には取材で?」
「そうです」
「滞在期間は」
「今日を含めて四日です。四日目の昼までには出国します」
「この国へ来るのは初めてですかね、風習やマナーについてはご存知で」
「取材の前準備として、ある程度は」
「武器などは」
「持っていません」
その後も質問は続き、男の舌がぬめりけを無くす直前に、ようやく終わった。
書類をとんとんと整理して、担当者は言った。
「ご協力感謝致します。お疲れ様でした」
「すぐに入国できますか」
「ええ、もちろんです。ただ一つだけ忠告が」
「何でしょうか」
担当者がわずかに目を細めて言った。
「この国では現在、政治の一環として【安全の国10ヶ年計画】というものが発効されています。国内で何か腹の立つようなことがあっても、決して他人に暴行を加えたりなどは絶対にしないよう。ほんの些細なことでも、当局に捕まってしまいますから」
「分かりました。気を付けます」
男の答えに、担当者はにっこりと微笑んで言った。
「では、入国してください。客人用旅館の所在は地図に書いておりますので」
担当者から手渡された地図をポケットにしまい、ジョブは恭しく一礼し、関所を出た。

国の中は、予想以上に人が少なく見えた。
道行く人々はすれ違ってもほとんど喋らず、予想していた国の姿とはかなり違っていた。
病んでいるわけではなく、避けているような雰囲気だ。
近くを通った夫婦に声をかけてみたが、すまなさそうに頭をさげると、そのままどこかへ行ってしまった。
子供や老人にも声をかけてみたが、結果は同じだった。皆どこか申し訳なさそうな顔をして逃げていく。
そして不思議なことに、ほとんどの人が一人でいた。
道行くどの人も、他人と距離をとって歩いている。
夫婦や恋人なども、よく見ると一言も発さずにただいっしょに歩いているだけのようだった。
店や屋台にも喧噪は無かった。
無言で客が品物と金を並べ、店番がそれを確認して終わっていた。声がない。無口。喋れないわけではなく、喋らない。何故。

数多の疑問を抱えたまま、ジョブは指定された旅館にチェックインし、砂漠横断の際についた体の砂を冷水で洗い流した。
その後は、やはり無口な人々に紛れて夕食を食べ、まだ月が昇りきらないうちに部屋のベッドで寝た。
今日見た不可解よりも、三日近い砂漠越えの疲労の方が勝っていたらしく、その日はすぐに寝付いた。

二日目の朝、朝食を食べ紺のスーツに着替えると、ジョブは早速取材を始めた。
しかし、やはり人々は誰一人として喋ろうとしない。
「この国の人たちは、どうして皆喋らないの?」
優しい口調で話しかけたつもりだったが、取材された少年は怯えた顔で逃げ出した。
一向に進まない取材にバテて、旅館内部のレストランで昼食をとっていると、一人の男が彼の背中をとんとんと小突いた。
「ちょっと、あんた」
男が指でマークをつくる。記者や報道官共通の情報交換のサインだった。
ジョブは、すがる思いでマークを返した。

「正直参ったぜ。俺も一週間くらい前にここへ来たんだが、ここの国のやつらときたら、ちっとも喋ろうとしねぇ」
男が憤慨した様子で訴えた。東方の国の報道官だというその男の言葉に、ジョブは深く頷いて応えた。
「関所にいた野郎の忠告とこれとが結び付くのに、五日はかかったぜ。まったくヒドい国だな」
「どういうことですか」
「政府が10年前に発効した法令だよ。「何人たりとも、互いを傷付けてはいけない」だとよ。笑わせやがる」
「国の人たちが喋りたがらないのは……」
「その法令のせいだよ。「口は災いのもと」ってのは知ってるだろ?法令じゃそれを「口は争いのもと」っていじってやがるんだよ」
「それはどういう……」
「つまりだ。安全をより確立させるための手段なんだよ。争いってのは行動の他に、つまんねぇ論争とかから生まれたりするだろ?政府は一切の危険物を取り締まった後、今度は言葉まで規制し始めたのさ」
「言葉を……」
息を呑むジョブに向かって、男が「そうだ」と言って迫る。
「武器や爆弾なら規制されてもいいだろうよ。だがナイフやフォークなどの刃物、スプーンしか出ないのもこのせいだ。自動車などの乗り物、この国じゃベビーカー以外の乗り物は許可されてねぇ。シャンデリアは落ちたら危険って理由でのけられた。他にも大量の規制が行われ、ついには言葉ときた。まったくもって狂ってやがる、そう思わねえか?」
ジョブは、ただ曖昧に頷いた。
「……それで」
「うん?何だ」
男がジョブの目を見る。濁りの無い、ブラウンの瞳を。
「なぜあなたは、取材がほぼ不可能なこの国に一週間も滞在しているのですか?」
男が、一瞬意表を突かれたようになり、次の瞬間豪快に笑いだした。
「はははは……あんた、若いのに鋭いなぁ。参ったぜ」
「何か、あるんですね」
確信をこめて、そう言う。
「明日の正午、中央の噴水広場に来い。すぐに分かるさ」
男とその後もしばらく話し、ジョブは早めに部屋に戻って就寝した。

三日目の朝、昨日聞いたことのメモをまとめつつ、部屋の窓を開ける。
砂の匂いのする風と共に、人の声が流れ込んできた。
遠くからほんのかすかにだが、聞こえてくる。ジョブは驚いて声に聞き入った。
「……す……そうです。今日が投票です。長い十年でしたが、皆さんもう大丈夫です。しつけで子供に手を上げても捕まらない国に、安全ではなく、愛のある国にするのです!私が勝った暁には、酔うと危険だとして禁止された、ウォッカと麦酒を振る舞いましょう!車に乗って国中を駆け巡りましょう!野菜ではなく切って焼いた肉を食べましょう!どうか私に皆さんの一票を!」
沸き起こった歓声が風に乗って聞こえてくる。ジョブは黙って窓を閉めた。
「そういうことか……」
彼の、珍しい独り言だった。

正午の噴水広場は、老若男女入り交じった人々で埋め尽くされていた。
その視線の先にいるのは、熱弁を奮う一人の男。
「10年に一度の国家元首の選挙が、今日あるんだ。おそらく、今あそこで演説している男の圧勝だな」
隣に立つ、報道官の男が言う。
他の候補者の演説が離れたところでされているようだが、大部分の人間は彼のもとに集まっているようだった。
「……挙げ句の果てには言葉だ!私は候補ということで喋ることが許可されているが、多くの人はそれができない!好きな人に愛を告白することも、家族や友人と他愛のない話をすることも、神に祈りを捧げることすらも!愛のない国などあってはならない。私は変えます、変えてみせますよ。この国の未来を!」
人々の間から津波のように歓声と拍手が沸き起こる。圧倒的だ。
「投票はこれからだ。な、いいネタだろ?」
「あぁ、そうですね」
ジョブはそれに頷く。
自分は今、国という巨大な主人公の物語、すなわち歴史の転換点にいるのだ。
押す人波に呑まれながら、そう思った。

次の日、出ていた新聞を手に取ると、開票結果が出ていた。
やはりあの候補の圧勝だった。今の政府は今日付で全員免職され、新政府が明日にも発足するらしい。
「次なる10年計画は……」という副題に目を移し、ジョブは記事を読まずにその新聞をかばんにしまった。

街行く人々は、もう無言ではなかった。正式な権力移行は明日だが、そんなことはおかまいなしである。
「やぁ旅人さん、昨日の投票結果を聞いたかい。もう喋ってもよくなったんだ!」
青年はそう言うと万歳をしてどこかへと駆けていった。他の人々も似たようなもので、あたりはお祭り騒ぎだ。
「よう。あんたも出国かい?」
トランクを持った、報道官の男だった。ジョブは軽く挨拶をして男と話した。
「さっさと出た方がいいぜ。あの候補はガチガチの右翼派らしいからな。きっと明日にでも戦争をおっ始めるだろうよ」
そう忠告して、男は一足先に出国していった。

ジョブは途中、時計店に立ち寄って時計をひとつ買った。アンティーク風の古いデザインの物だ。
「またこんな古いものを、一体どうして」
「この国にしか無い時計だから、記念にと思って」
時計店の主人に金を払い、関所を通って国を出た。
帰り際に、兵士が言った。
「またのお越しを。もっとも、次来たときにはまったく違った国になっているでしょうが」
ジョブは買った時計を眺めつつ、出国した。


「……とまぁ、そういう話だったとさ」
ジョブは全て話し終えると車のシートを後ろに倒して、仰向けになるようにして寝そべった。
「取材お疲れ様。その情報はどうする気?」
運転をしている同期の女が聞く。ジョブは嘆息してそれに答えた。
「私はスパイじゃなくて記者ですよ。政府に報告はしません。私は物語の語り部であって登場人物ではありませんから」
「記事にしたら、どの道告発してるようなものだけどね。その国もご愁傷様ね、下手に戦争を起こしたところで連合国に取り込まれるだけ」
砂漠の上をオープンカーで走りながら、女が聞いた。
「それで、どうだったの」
「何がです」
「二十年ぶりの祖国は」
「覚えてませんよ、赤ん坊の頃なんて」
「確か「孤児難民排除10ヶ年計画」で連合国に流れてきたんでしょ。両親の情報は手に入ったの?」
「それどころでは……ああ、実は一つだけ」
ジョブが思い出したように何かを取り出した。あの古びた時計を 二つ。
「形見の時計と、同じものを見つけたんです」
「ハン、この時計オタクが」
女がそれを一蹴する。
ジョブは苦笑して二つの時計をポケットにしまった。
「……帰るよ。あたしらの国に」
「はい」
ジョブは、はるか後方にある国をちらりと振り返って見た。
歴史を刻み続けるその国は、砂嵐に隠れてもう見えない。

ジョブは、前を向いた。
メンテ
嵐の夜のものがたり ( No.138 )
   
日時: 2012/05/12 03:40
名前: アリス ID:LmodrnHY


「ひどい嵐だな。
 国の南部にある湖のほとりの別荘。その所有者であるジード・バイロンが窓から外を見つめながらそう言ったのは、私が到着して数時間後のことだった。私の大学時代の友人であり、今は高名な小説家の一人である。彼が数年前に買い取ったらしいこの別荘は、別荘というにはふさわしくないほど豪華で大きなものであり、購入に掛かった費用は底知れない。そんな別荘の中央に位置する広間には、私とジードを含む五人の男女が集まっていた。大きな丸いテーブルが部屋の中央にあり、その周りをこれもまた豪華な装飾の施された椅子が並んでいる。私はその内の一つに座っており、ジードが入れてくれたお茶を飲んでいた。しかし午後になって天候が荒れ始め、ジードの言葉通り窓を唸らすほどの嵐となった。
 「やはり止みそうにありませんか、バイロンさん」
 と、穏やかな口調と艶やかな声でそう言ったのは、テーブルの南側が私の席だとすれば東側に座っている女性……東側に女性は二人並んで座っていたのだが、二人のうち私から見て奥側に座る、メイリア・シェリーという女性であった。メイリアはその手前側の女性――クーラ・クレアモントとは姉妹である。二人は大陸を北上する旅行中、以前から親交のあるジードの別荘がちょうど旅行のルートに含まれていると知り訪ねてきたのだそうだ。二人がこの別荘にやってきたのは午前中のことであったので空も晴れていた。しかし午後になって急に嵐である。旅行の予定も大幅に狂ったとのことだ。
 メイリアは終始、妹のクーラを抱き寄せるようにしており、クーラの方も怖さが隠し切れずメイリアの方に身を寄せていた。メイリアは時折クーラの耳元で励ますような言葉を囁き、頭や頬を撫でてやる。二人は年齢も若く、クーラに至ってはまだ高等学校生の身分であるそうだった。となるとこのような嵐を怖がるのは、まだあどけなさの残る少女にすれば至極当然といえるだろう。
 それからジードは窓から目を離しこちらを振り向いた。外を見る窓の位置は部屋を囲うように存在しているが、彼が立っているのはテーブルの西側。女性二人の向かい側であった。
 「諸君、今夜はどうぞこの別荘に泊って行ってくれ。部屋ならたくさん余ってるいるし、やはり無理して旅を進めるわけにもいかないだろう」
 彼は私たちを見渡し、小さく微笑みながらそう言った。
 確かに彼の別荘はもはや貴族の住む屋敷と称しても遜色がないほど大きい。ここにいるジード以外の四人を泊めていくことなど造作もないことだろう。私はそう思った。彼の提案はメイリアとクーラに少しだけ余裕を与えたようで、嵐のための若干の不安は残るものの、少しばかり彼女らの表情に綻びが見え始めていた。
 「そうしてくださるとありがたいです」
 続いてそう返事をしたのは、私が南の席だったとすればちょうど北側、つまり私の向かいに座っていた男性であった。年齢はよくわからないかったが、経験からして二十代辺りだろうか。スーツを着ており、しばらくの間はメモ帳を眺める行動が目立っていた。彼はジードの友人らしく、たまたまここを通りかかったために立ち寄ったのだという。たまたま立ち寄った結果嵐まで来て帰れないとは、よっぽど彼は運がないらしかった。
「となると、全員ここに泊るわけだな? 了解した、すぐに部屋に案内しよう。身支度が終わったら食事としようじゃないか」
 ジードがそう言って、私たち四人は彼の別荘に泊ることになったのだった。
 




 一人ひとり部屋に案内されてから私たちはある程度身支度をし、もう一度広間に集まった。食事をするためである。食事はジードが全て作ったらしく、広間のテーブルを一面に豪華な皿が揃った。そういえばジードは昔から料理を嗜んでいた。しかしながら本職は物書きであるのに、この豪勢さと言ったらない。料理人たちは絶句するだろう。私たちは広間に到着するや否や、テーブルの上をじっくりと見つめて立ち尽くしてしまった。
「何を立ち止まってるんだい。料理が冷めてしまうから席に着きたまえよ」
 ジードは入り口で立ち止まる私たちに、少しだけ口元を釣り上げて言った。私たちは空いたお腹を擦りながら先ほどと同じ席に着くことにする。私の向かいにはやはりスーツにオールバックの黒髪が特徴的な男――しかし、名前を聞いていなかった――が座った。こちらの視線には気付かず、置いてあったお手拭を使用し始める。ジードの友人ということは聞いたが、どのような素性なのだろう。私との年齢も近く見えるし、彼とは気が合いそうな気もするが……しかしなんとなく名前が尋ねにくい雰囲気にあった。
 全員が席に着くなり、ジードが口を開く。
「まあ、ここで諸君が足止めを食らったのも何かの縁だろう。楽しくやろうじゃないか」
 ジードがさらにいくつか言葉を述べ、私たちは促されるまま料理にありつくことにした。私は手始めにすぐ近くにあったチーズフォンデュを食べることにする。女性陣二人は仲よさげに「おいしそうね」と言い合いながら食べ始め、ジードは自分の作った料理だからか、食べ物を見つめながら独り言を漏らしていた。そして最後に名前も知らない向かい側の彼。彼はすぐに料理に手を出さず、腕時計を腕から外すことから始めた。外した時計を鞄に仕舞って初めて彼は食事にありついたのである。私は隙を見て向かいの彼に話しかけようとは考えた。しかし黙々と食事を始めた彼には少しばかり話しかけ辛い。後ほど時間のあるとき、彼の部屋を訪ねるべきだろうか。だが私にはこの別荘に来た目的もある。となると、彼の名前を聞くことはできなさそうだ……私は少しだけ残念に思った。


 食事がしばらく進んだとき、ジードが全員に向かって話を始めた。
「諸君、聞いてくれ。せっかくこうして様々な境遇の者が集まったのだ。ここはひとつ、何か面白いことでもやろうではないか。もちろんこれは私個人の楽しみでもあるし、何かしていた方が嵐の心細さを和らげることにもなるだろうという意図あっての提案である」
「なんでしょうか、お聞きしますわ」
 ジードの向かい側のメイリアがそう答えた。彼女のすぐ隣のクーラも興味深げな瞳を見せている。ジードは悪戯っぽく微笑むと、続きを話し始めた。
「面白い話をしてくれ。今まで出会った話でもいいし、今まさに即興で作った創作話でも構わない。ただこの場にいる者を関心させ、聞き終えた後一息つけるような、そんな話をしてほしいのだ。面白いの定義は様々だが、それは各々に任せよう。笑える話でもいいし、不思議な体験でも構わない。ただ私たちを話に入り込ませてくれればいいのだ」
 ジードは昔から、他人への心配りも忘れないながらも遊び心も持ち合わせている性格であった。確かにこの提案はジード自身のためでもあるだろうが、嵐のために不安な我々を和ませるという意味合いも籠っているというのは本当であろう。その意図が伝わったのか、メイリア、クーラは快く了解した。私もジードに視線を向け「いいだろう」と返事をした。
 最後に私の向かいのオールバックの彼。このような催しには消極的かと思われたが、彼も穏やかに了解した。それだけでなく、彼は一番手を自分から買って出たのだった。「そういうことなら得意ですので」と付け加える彼の表情には、物語を語ることに慣れている節が見えた。その場の四人の視線が彼に集まる。彼はナフキンで口元を拭き、一息吐いた。
「これは私が体験した、というよりただ横で見ていただけなのですが……」



「――という話だったとさ。はい、終わりです。ご清聴ありがとうございました」
 向かいの彼が話し終えると、思わず私は拍手をしてしまった。私、ジード、メイリア、クーラ。向かいの彼以外の全員が、彼の話に聞き惚れ、食事を忘れるほど話に入り込んでしまった。素晴らしい。創作なのだろうか。しかし、普通に生活しているだけでそのような奇異な体験をするものなのだろうか。もし本当の話なのであれば彼は素晴らしい幸運の持ち主なのだろう。なんといえばいいのか、彼は『物語に出会う』才でも持ち合わせているかのような、常人では出会えないなんとも面白い話を聞かせてくれたのだった。それだけでなく、彼の語り口は私たち聞き手を物語に入り込ませるような力がある。最後に自分の命を優先させた、という点もユーモアがあった。女性二人もクスクスと笑い、ジードも大きく頷いている。
「素晴らしいよ。とても面白い話だった」
 ジードがそう言った。しかし向かいの彼は、照れもせず、ただ少しだけ愛想のよい顔をしながらお礼を言うだけであった。謙虚な姿勢を常に突き通している。私は彼の人柄を評価した。それだけでなく、私は彼に大きな関心を示したのだ。





 ――全員の話が終わると私は部屋に戻り、雑務をしながら広間でのことを回想した。食事はとても美味であったし、何よりジードの提案した企画はなかなか面白いものであった。巧妙な作家であるジードは言うまでもなくアイデアに満ちた興味深い話をしてくれたし、メイリア、クーラも思わず微笑ましくなってしまうような快活な話をしてくれたのだ。私としては大満足の企画であったと言えるだろう。特に向かいの彼。彼の話はとても素晴らしく、私の心を深く引き寄せた。彼の部屋に直接赴きもっと話を伺いたい気もしたのだが、あれは彼のあの短い話の中であるからこそ素晴らしかったのであって、それについてこれ以上話を伺うことは少々野暮な気もした。結局私は彼に会いに行くことはしなかった。雑務を終えると私は眠る時の服を鞄から取り出し、別れ際にジードから教えてもらった大浴場へ向かうことにした。
 廊下に出ると、廊下の一番向こうまで部屋が並んでいた。まるでホテルだと私は思った。
 ジードの企画は、メイリアとクーラが部屋に戻ってからも三人だけで続けられた。そのおかげですでに時刻は深夜になっていた。当然女性二人は既に眠っているだろうし、後の二人もすでに寝付き始めた頃合いだろう。そう考え、私は静かに廊下を歩くことにした。
 ところがだった。
 廊下を歩いている途中、うめき声がどこからか聞こえてきたのだ。苦しむような、しかし唸るような低い声。とても普通ではないような、怪奇な声であった。さすがに気になった私はゆっくりと歩みを進め、最終的にある一部屋に行き当たった。廊下の一番端の部屋であり、他の四人とは少し部屋が離れている部屋――つまりは別荘の持ち主、ジードの部屋だった。ここがうめき声の発信源であるのは、ドアの向こうから声が響いていたことからも確定的だった。私は少しばかり緊張しつつもドアを開けた。
 私はその部屋の凄惨な光景に思わず声を上げた。
 私の目に飛び込んできたのは、胸にナイフが刺さったまま血を流しベッドに横たわるジードと、その横に立っているあの向かい側の席の男だった。男は私の介入と同時に部屋の窓ガラスを割り、外に逃げ出した。一瞬の出来事だった。私は危険を感じ彼を追うことはせず、すぐにジードに駆け寄った。だがすでにジードは絶命し、息絶えていた。先ほどの声はジードのものであったのか……と私は悟った。
 ガラスが割れて、風が吹き込む窓に目を向ける。
 あの男は初めからこれが目的だったのだろうか。たまたま立ち寄ったなどと言っていたが、実はこれが狙いだったのではないか? 嵐により帰れない客人がいるならば泊っていくことを提案する、というジードの性格や行動を読んでいたのではないか? だからここまで大胆に殺人を行うことができたのではないか。そう私は思慮した。私は寸前まで彼に関心していたのだが、評価が変わった。これではジードは悔しいであろう。良心が招いた殺人とは、と思った。
 ふと部屋の片隅にあるジードの机を見た。少しだけ荒らされた形跡があるのはもちろんだが、不自然に小説の原稿が一枚だけ置いてあったのだ。続きはあるようで、不自然な部分で途切れているようだった。ということは先ほどの彼は、ジードの未発表小説を盗んでいったのだ。この一枚を残したのは決定的なミスであろうが、彼はそのためにこの屋敷にやってきたのだ!
 それから部屋をよく見渡すと、床にメモ帳が落ちていた。ジードの物ではなかった。よく見れば、昼間向かいの彼が何度も使用する様子が見て取れたメモ帳であった。重要な証拠品であることは間違いない。これで彼の素性は明らかになるだろう。
 私はジードの死体に布を被せ、窓の外を見た。ここは一階だ。彼は簡単に逃げおおせたであろう。外は嵐だが、絶海の孤島でも雪山でもない、ちゃんと陸続きの単なる湖のほとりであり、嵐の中であっても逃げることは可能だ。風や雨にさらされるのと、殺人罪で捕まるのとではやはり前者を選ぶだろう。もう私は、彼に会うことはない。いい友人になれそうだと思ったが残念だ。 
 その後すぐ、私は警察を呼んだ。メイリアとクーラには、怯えさせたくないため事実は伏せておくことにした。自室で警察に電話をし伝えたいことを伝えると、私はそのまますぐに眠りについた……という話だったとさ」
「なるほど、よくわかりました。しかし君、面白い口調で話すね。まるで物語を聞いているようだった。言うなれば、小説の地の文のような」
「ゴホン、申し訳ない。これは私の癖でして、意識しないとそのような口調になってしまうのです」
「いや構わない。大いに参考になったよ。それで、ここにあるのが先ほど君の証言に出てきたユーリ・ポリドーリの残したメモ帳というわけかい」
「ユーリ・ポリドーリ? それがあの向かいの男の名前ですか」
「そうだよ。そうか、君は彼の名前を知らなかったのだね」
「はい」
「君の証言やこのメモ帳は随分と重要なものだよ。協力に感謝する」
「いえ、当然のことです」
「では最後に、君の名前を教えていただこうかな」
「はい、ジョブ・ナレーターと申します」




(終)


メンテ
ゆう⇔かつ 〜普通に勇者が活躍する話を書けば良いのにね〜 ( No.139 )
   
日時: 2012/05/13 00:03
名前: 空人 ID:ApUEY18Q

 『勇者召喚』というものをご存知だろうか。
 世界が闇をまとう時。ひしめく魔物たちを統べる存在、即ち魔王が現われ、世界に脅威をもたらした時に行われる、異世界から最強の戦士を呼び寄せる儀式である。
 これに対して最近では「自分たちの世界の事くらい自分たちで始末を付けろ」などと言う意見が出始めているらしいが、自分たちでどうにかできるのならわざわざ国をあげてこのように大掛かりな儀式を行ったりはしないだろう。手助けが必要な時に素直に他を頼るというのは、けして悪い事ではないのだ。自分たちだけで何とかできると思い込み、失敗した挙句に他に責任を押し付ける事だって、往々に行われている現実だ。おそらく、そんな事を想像したりもしないゆとりな連中が言い出したのだろう。嘆かわしい事である。
 閑話休題。
 さて、そういった観点から見ても、この国は真摯な態度で勇者を迎えたと言える。ここモイライン王国は、異世界のこの大陸において最大の戦力である魔装騎士団を保有する国だった。だが彼らですらも、現出した魔王には手も足も出なかったのだ。
 何でもこの世界では、魔法は力ある魔物から借り受けて発動しているらしく、その際たる魔王には魔法の力が通用しない。と言うより、「貴方を倒す為に貴方の力を貸してください」などと言われて力を貸すのは、相当なマゾヒストぐらいだろう。また、魔王以外から力を借りられたとしても、それは魔王に遠く及ばない程度の力になってしまうのだ。魔装騎士団が使用する魔装もまた、魔法の力が使われている。
 それゆえの異世界の力、それゆえの勇者召喚である。
 自分たちの力に奢らず、すぐに異世界の力に頼る決断をしたこの国の王は賞賛に値すると私は考えている。

 通常の勇者召喚の過程ならば。

 神殿での召喚儀式(魔力が満ちる時機をみて行う)
  ↓
 神官による説明(この国の現状や意思確認、勇者としての資質を確認など)
  ↓
 勇者の準備期間(装備や能力の確認もそうだが、いきなり命を懸けて魔王と戦えと言われても、心の整理がつかないだろう)
  ↓
 王との謁見(ここまで来たら文句は言えないらしい)

 旅立ちまでの過程は以上となり、己を磨き、仲間を得て、能力を高めるための旅をしながら、一歩一歩魔王に近付いていくのが定石らしいのだ。

 しかしどうやら今回は勝手が違う。
 どう違うのかは一目瞭然だった。今、神殿の儀式の間は召喚された勇者たちで溢れかえっているのだ。その数は老若男女入り混じってのおおよそ百人。それは、通勤ラッシュ時の満員電車を彷彿とさせる光景だった。頑張った神官を褒めるべきなのだろうか。それとも魔王の力が強大な為、勇者召喚に必要な魔力が溢れているからなのか。
 『元の世界から居なくなっても大きな影響が無く、異世界への順応性が高い個体』を選んで呼んだのだというのが召喚した者の弁なのだが、そのほとんどが同じ世界から来たらしい事を考えれば、元の世界の方を心配しなければならないところだ。
 不安と期待でざわめく百人の勇者たちを残して、神官たちは協議を始めた。数分も経たないうちに不満を訴え始めた勇者たちをなだめつつ、判断は神官長より下された。即ち――。

「これより、勇者適正試験を開始します!」

 儀式の間を切り裂いたのは戦慄か悲鳴か慟哭か。押し寄せる怒号に不敵な笑みを浮かべて見せた神官長に言い知れぬ恐怖を感じたことは、心の内に留めておこうと思う。


 Σ(゚Д゚;)


 試験は四つの工程で行われるらしい。
 第一の試験は筆記。文字や言葉が解らなければ、いろいろと不便だと考えたのだ。
 しかしこれには、ほとんどの者が合格する。彼らは基本的な会話や読み書きが出来るように、召喚時に神から元の言語を自動で翻訳する能力を授けられていたのだ。読み書きのときも同様で、書いてある文字や、これから書こうとする文字が自動で変換される。これによって、本来言葉が通じないはずの勇者たちの間でも、会話が成立しているのだ。流暢な関西弁とフランス語との対話を耳にした時はさすがに違和感を禁じえなかったが、コミュニケーションが上手く取れずに喧嘩が多発するよりはずっとマシだと言えるだろう。
 試験の内容は子供だましと言って良いような常識問題だったが、答えあわせをしていた神官が、その正解率に驚いていた事から、この世界での一般市民の識字率や学歴はそれほど高くはないものと思われる。

 第二の試験は面接。これは人柄や受け答えの仕方などを見る為だ。各自の意思確認なども含まれる。これだけの人数が居るのだ、勇者になりたく無いと言う者を無理に引き止めておくことも無いだろう。もちろん、余りある才能を持っているならば、話は別だが。
 この試験では半分ほどが脱落となった。礼儀作法にうるさいのは、さすがに聖職者といったところだろうか。しかし勇者になれば、貴族や王族の前に顔を出す機会も与えられるであろう事を考えると、慎重になり過ぎるくらいで丁度良いのかも知れない。
 ちなみに意思確認では、全員が「この世界で勇者をやりたいか」を問われた。この質問に何の考えも無く即答で「はい」と答えた者のほとんどは、次の試験で落ちたらしい。

 第三の試験は実技。勇者には当然、相応の強さが求められるのだ。力と心、両方の面からである。
 試験の内容は、実際に弱い魔物を倒す事。角の付いたウサギのような魔物や二足歩行の犬のような魔物が檻に入れられて運ばれてきた。それを一対一で倒せと言うのだ。
 召喚時、言語能力以外にも異能を与えられてはいる。派手なエフェクトを繰り出す剣技や魔術などを使うものも居たが、加減を知らず周囲に被害を出した者は、合格からはじかれたらしい。
 それに、生き物を殺した事など無いゆとりな連中には堪えたのだろう。試験を終えた後で、急に震えだす者も少なくなかった。
 試験を通過した者は、わずかに数名だけだったようだ。


 ( ゜Δ ゜)ノシ


 この後の最終試験については、当事者にしか知られていない。第三の試験を棄権した私はその先を見学できず、元の世界に送り帰されたからだ。もとより他人の為にかける命など持ち合わせてはいないのだから当然だろう。
 同じように召喚され、勇者として不適切と判断され、帰還したという人の話をネット上で集めてみた。最終試験ではバトルロイヤルが行われたとか、残ったメンバーでパーティを組んだとか、いろいろ言われてはいるようだ。しかし、最終まで残った者達がいまだ帰還していないという事は確かなようで、その真偽の程はうかがい知れない。
 彼らが無事にあの世界を救ってくれた事を願わずにはいられなかった。
 話をしてくれた人の一人は、これから就職活動なのだそうだ。あの世界に残れれば、就職は楽だったのかもなと書かれた言葉は、どこか虚ろだったのを覚えている。

 最近の就職難は異世界まで及んでいるという話だったとさ。



__おしまい
メンテ

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