ホームに戻る > スレッド一覧 > 記事閲覧
[4993] 【2016年度】お題小説スレッド【お題「去る」作品投稿期間】
   
日時: 2016/01/12 23:57
名前: 企画運営委員 ID:7PNV346o



『お題小説スレッド』へようこそ。こちらはあるお題に沿って読みきり小説を書き、その作品をみんなで批評し合う場です。
 初心者も上級者も関係ありません。うまくなりたいとお思いの方であれば、だれでも自由に参加することができます。一生懸命執筆し、一生懸命批評して、小説の技術を高め合いましょう。
 皆様のご参加をお待ちしております。

――――――――――――――――――――

>>002 【ルール説明】:必ず熟読して下さい。(※内容、一言の箇所を訂正しました。ご確認ください)
>>003 【批評のポイント】:批評をする際のポイントをまとめたものです。
>>004 【イベントルール説明】:イベントに関するルールです。必ず熟読してください





▼お題:第32回のお題は「種」です。
 二月に種をまくのか? と思いましたが、調べてみるとじゃがいもは二月にまくそうですね。……さらに調べてみると一年中、なにかしらの種をまいてるみたいです。
 そんなことは置いといて。「種」というお題には「たね」以外にも色々な解釈があると思います。みなさんがどのような作品を投稿してくるのか、楽しみにしております。
※第30回の作品投稿期間は2月1日(土)からです


▼お題:第33回のお題は「姫」です。
 三月なので(笑)
 というのはよくわかりませんが(ひなまつりだから?)「ひめ」というのは可愛らしい語感ですよね。私は緑の黒髪をした和服姿が思い浮かびます。桃色が似合いますよね。桃色……やはりひなまつりでしょうか。それでは、みなさんの作品お待ちしております。
 
※第31回の作品投稿期間は3月1日(土)からです


▼お題:第34回のお題は「嘘」です。
 嘘でした。


▼お題:最終回のお題は「魔法」です。
 奮ってご参加ください。


▼お題:第36回のお題は「友情」です。
 ネタでした。


▼お題:第37回のお題は「音」です。
 奮ってご参加ください。



▼日程(第32回)

1月1日       :お題発表
2月1日〜15日   :作品投稿期間
2月16日〜28日  :批評提出期間


▼日程(第33回) 

2月1日     :お題発表
3月1日〜1月15日 :作品投稿期間
3月16日〜30日 :批評提出期間


▼日程(第35回) 

6月1日     :お題発表
6月1日〜7月31日 :作品投稿期間
8月1日〜   :批評提出期間



▼注意もしくは削除対象となるお書きこみ
・荒らし
・荒らしへの反応
・自分や他人の小説の宣伝
・雑談、チャット化
・ルールに反するもの
・管理人が不適切と判断したもの

――――――――――――――――――――

>目次 >>001


>第32回 お題『種』参加作品(敬称略)

>>404 sakana:シロハの辻褄
>>405 伊達サクット:赤い種、青い種

================================================================================

▼リンク
小説講座/雑談所』(お礼や言い訳等はこちらへ)
旧お題小説スレッド』(前スレはこちらから)
ツイッター』(朔乱のアカウントです。お題の告知などをしています)

管理人:If 空人 朔乱  補佐:伊達サクット
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

Re: 【七月期のお題は「擬音」】お題小説スレッド【六月期お題「魔王」:批評提出期間】 ( No.160 )
   
日時: 2012/06/26 00:01
名前: 空人 ID:yESCzdmg

今回ふとした思い付きから、ある変わった事を実行してみたわけですが。
まぁ、失敗ですね。
もうしないので、許して欲しいわけです。はい。
批評はいつもどおり(?)ですよ。
(敬称略)


>>152If:なりそこない

 国の繁栄の陰に、それは小さな楔となって育っていく、強く確かな想い。
 しっかりと構成された人間ドラマの中に『魔王』という要素が上手く絡まっていて、素晴らしいと思いました。
 イゼアが目指した希望。ハルヤが叶えたかった夢。ティーナが見たかった未来。同じ物を見ていたはずなのに、その視線は少しずつすれ違い。たどり着いた結末に彼らの姿は無い。
 強く心に絡みつくような哀しいストーリーが素敵だったと思います。
 未来を予感させる序盤。激しく展開する終盤に対して、中盤が淡々と進みすぎているようにも感じました。三人とも努力や悩みはあったのでしょうけど、概ね順調に進めてしまったためにそれを失ったときの反動はやや薄れてしまったような印象です。ティーナの想いについて行けなかった読者も居たのではないでしょうか。
 シメの言葉で優しさが弱さだとしているのも、やや納得がいかない感じです。彼らはけして弱くはなかったと思います。もう少し良い表現が有ったのでは無いでしょうか。
 結局王国が滅びたことは虚しさを冗長させていて良かったです。
 魔王は確かに存在したと、そう思わずにはいられない。そんな作品でした。


>>153にゃんて猫:少女

 歪んだ愛の中で育った少女は、悲劇の中で覚醒する。自分の世界を破壊する為に。
 愛憎入り混じるストーリーは衝撃も強く、色濃く印象に残った作品でした。
 ただ、設定に説明不足も目立ったように感じます。
 火事の中で生き残った方法、彼女の力の源、能力、父親の行く末、等々。
 素養はあったのでしょうが、少女がそこに至った経緯は作者にしかわからないので、多めに描写が有っても良かったのではないかと思いました。
 物語の主役が魔王ではなく、両親の不倫から始まった一連の事件になってしまっている印象です。最後の新聞記者の語りも、必要だったのか疑問に残ります。
 書きたいこと、伝えたかった箇所の文章の配分は難しいですが、気をつけなければ作品として破綻してしまう事もあるので、頑張りましょう。


>>154空人:中二病な俺とノリのいい彼女と最終回

 日常を犯し、自らをも躍らせる妄想は、やがて想いを伝える原動力になる。
 自分をユウシャとして語ったり、マオウをデートに誘うという戦い、武器となるけんがチケット、打ち切り的な終わり方など、誤認を促す要素を散りばめた手法は面白かったと思います。
 でも、それに頼りすぎていて、肝心のストーリーはパッとしない感じでした。
 マオウのキャラクターも少し掴みにくかったと思います。
 急いで終わらせた感じは打ち切りっぽくて、そういう風に書きたかったのだとしたら成功していると思います。でも作品としてみると、ただ粗い文章なだけです。丁寧に書けばもっと深く物語を語られただろうと思います。
 ワンアイデアに頼らずに、読ませる文章に出来るよう頑張りましょう。


>>155アリス:穏やかな午後のエピタフ

 突然の告白から始まる、夫婦の間で起こった熾烈な戦い。
 互いに相容れない部分をぶつけ合い、時にはからめ手、時には実力を行使して戦いは激しさを……。
 うん。いやこれ、普通に新婚さんの結婚生活ですよね。互いに不満を見つけては文句を言い、言葉を尽くして理解を深め合う。そこに有るのは深く強い絆で。とても微笑ましい作品でした。
 話としてのまとまりは、素晴らしいの一言です。ただ『魔王』だとすると少し物足りないかなっていう感じです。
 夫に魔王たる素養が垣間見えると面白かったかも知れないですね。
 「俺の世界の半分を君にあげるよ」とかね。
 何だろう、会話文が多めなのに、二人がイチャイチャする風景がよぎります。
 ハッピーエンドで良かった。心からそう言える作品でした。


>>156ジッタ隣人:その存在を喰らいて

 彼女の存在は日常を破壊し、少しずつ世界をその身に取り込んでいく。
 悲劇は呪いのようにまとわりつき、終に深淵にてその真打と邂逅を果たす。
 物質を破壊する事で得られるというエルゴ。それを過剰に摂取してしまうという主人公の体質など、RPGのような設定は面白かったと思います。
 だけど、彼女以外の人にそれがどう作用するのかが不明瞭なため、解りにくく説明不足な感じでした。
 魔王の登場も唐突で、それまでの話から浮いてしまっているように思います。
 なぜ深い洞窟の奥に居たのか、いつの頃から続いている事なのか、語ろうと思えばいくらでも出来ると思うので、もっと描写を増やしても良かったのでは無いでしょうか。
 「化け物」という言葉を繰り返し、「化け物の王」におさめる顛末は良く考えられていたと思います。


>>154自作:中二病な俺とノリのいい彼女と最終回

 タイトルでネタバレしたらダメだろうっていうね。
 ノリだけで書き始めた割には、いろいろ考えすぎて失敗しています。
 作品に集中していない感じとか、もうダメダメです。
 ところで、この学校が「さくら」の時と同じだって誰か気がついたのかなーとかね。


>>156自作:その存在を喰らいて

 おちゃらけた作品ばかり書いているのが嫌になって、急遽仕上げたものでございます。
 推敲も満足にしないで上げるとか、追い詰められてる感じですね。
 主人公の名前間違ったらダメだろうっていうね。
 何だよエルゴって、解りにくいよ。
 パッと出て消えていく魔王とかナニソレ。
 うん、愚痴しか出ません。
 ゴメンナサイです(涙)


 そんな訳で、ジッタ隣人こと空人です。
 一つのお題に二作書くとか、正気とは思えませんね。
 案の定二つとも失敗です。
 皆さんは一つ一つ丁寧に仕上げましょう。

 さて、今回は『魔王』でしたが、ファンタジーの王道的な魔王はあまり出てきませんでしたね。
 その分、工夫を凝らした作品が多かったと思います。
 とても面白かったです。ありがとうございます。

 次回は『擬音』ですか……。
 難しいですが、楽しそうでもあります。
 皆さんがどんな音を奏でるのか楽しみにしつつ、また。
 あでゅー
メンテ
Re: 【七月期のお題は「擬音」】お題小説スレッド【六月期お題「魔王」:批評提出期間】 ( No.161 )
   
日時: 2012/06/28 19:15
名前: にゃんて猫 ID:2PZro37w

皆様投稿お疲れ様でした。思ったよりも数が少なかったので批評がらk(ぉぃ
改めて自分の力の無さを実感しました。どの作品も独特のオーラを放っていて感想書くのに困らな……ぉっと批評だったねw




If◆なりそこない(>>152

魔王=凶悪にして強大。国を滅ぼす存在。少年達にとっては憧れの存在。
勇者=少年達。

もう、その、あの、If様。如何すればそのような眩しくも哀しい話をお書きになることができるのですか?(蹴
いつもながらその文章力や構成には感嘆するばかりです。一見すると台詞が占める割合が多いのも主人公達の未熟さを表しているように感じました。会話も平仮名が多め。細かいところまでよく気遣いがされているなと思いました。
唯一足りないと思ったのは少年達の成長描写が足りないところでしょうか。『始めは棒切れ〜ついに起った。』までの部分だけ既成事実を述べるような淡々とした口調になってしまっていて、それはそれで良いんですが。個人的にはその間の、例えばイゼアとティーナの恋愛話とか、もう少し描写を足しくれないかなー、と。
一気に義勇軍結成まで話が飛んでしまい、若干置いて行かれました。
それにしてもIfさんは台詞で心情を表すのが本当に上手いっ!!
ティーナとイゼアの心境が地の文が無くても十二分に理解できました。
あえて他に言うことがあるとすれば、展開がありがちだったことですかね・・・・・・予想しやすかったかと聞かれればYesの範疇に入る作品だったと思います。
でも展開的には突出していないにも関わらずここまで楽しめたということ=If様の描写力の賜物、ってことですね!(黙
次作も楽しみに待ってます!




空人◆中二病な俺とノリのいい彼女と最終回(>>154

魔王=クールにデレ・・・・・・てくれない、転校してきたばかりの優等生。ユウシャにとっては何としても“けん”を渡したい相手。
勇者=何としてもマオウに券を・・・・・・なユウシャ。主観者。

またこんなタイトルを・・・・・・と思っていざ読んでみると大爆笑。最近はシリアスな作品が多かったので『またタイトルホイホイかな』と高を括っていましたごめんなさい。
初めの入り出しからやけに平仮名やカタカナが目だっていたので「おや?」とは思ったのですが、まさかこんなオチを用意していたとは・・・・・・個人的にはIfさんの作品と対照的に仕上がっていたので続けて読むと吹きましたw
それでいてやっぱり描写には隙がない。私みたいな未熟者から見れば完璧の二文字です。本当に。
マオウ側の描写が足りないかな?とも思いましたがよくよく考えてみればこれは完全ユウシャ視点で語られてましたね。やっぱり完璧です!
次回作、楽しみにしてます!というかこんな良作なら打ち切り最終回なんて無い気が・・・・・・w





アリス◆穏やかな午後のエビタフ(>>155

魔王=夫。いつか世界を滅ぼす。妻を嫌いになりたいのに優しくしてしまう。好きだから。

勇者=妻。いつか魔王を聖なる剣で倒す。夫に嫌われようと嘘ばかり吐いてしまう。それでも好きだから。

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん(泣(号泣(すすり泣き(ハンカチ、ハンカチは無いカァー!!
畜生お題小説でここまで泣いたのは初めてな気が。誰一人死んでないよ?ハッピーエンドだよ?なのにどうしてこんなに涙が・・・・・・。
アリスさんの真価を見た気がします・・・・・・正直舐めてました。ごめんなさい。感動?そんなもんじゃない。それくらいの感動を有り難う。
台詞が多いのも納得できる。二人のやりとりがまた何とも哀しく・・・・・・そして吹っ切れた後の二人の何てリア充っぷり・・・・・・!
あれ、ラストで泣く要素が無いような・・・・・・否、ありました。安心感。そう、全部丸く収まった時のような安心感。それが濁流のようになだれ込んできてハンカチを一つ涙で染め上げたんです。そうです。そういうことにしよう。
次回作が待ち遠しい・・・・・・楽しみに待ってます。





ジッタ隣人◆その存在を喰らいて(>>156

魔王=輪廻する最強の生物。運命に逆らう事の敵わない世界の一部。

勇者=敢えて言うならルイザ。但し彼女自身も結局は魔王となるので存在しない役割とも言える。

魔王輪廻モノは私も考えて結局止めて・・・・・・ってあれま、みんな同じこと考えてたんですねーハハハ(書かなくて良かった・・・・・・ボソ
作品としてはよくまとまっていて比較的読みやすかったし、純粋に楽しめました。
ただ、ルイザが魔王に会いに行く下りは少し描写が足りなかった気がします。『自分を殺してもらうため』というのは何となく分かるのですが
魔王という単語の出現があまりに唐突で・・・・・・できたら初めの方に伝説的な感じでもいいから魔王を登場させて欲しかった。そうすれば最後で『フラグ回収!』っていう感じになって良かったんじゃないかなぁと。
魔王を化け物的に捉えているのは自作と似ていてビクリとしました。だってこっちの方が化け物描写上手い・・・・・・w
今回が初お題なんですかね?物凄く上手かったですっw
次回作お待ちしております。次のお題も是非。

後日談:批評読んでなかった……(汗 空人さんだったんですね。二作投稿お疲れ様です。





・・・・・・そして言い訳タイムに入ります。ごめんなさい。

自作◆少女(>>153

魔王=少女であり、幼子であり、恨みであり、憎しみであり、愛嬌であり、何かを待っているようであり、ただ一人を喰らうために残された存在。そんな噂話。

勇者=存在し得ない。医者は諦め、父は逃亡。母は死に、勇者たる器の者は姿を消した。

無理矢理お題を消化しようとした結果がこれだよ!どうか存分に罵ってください><
定期考査があったり欠点取って補習したり大会あったりで多忙の中書いたと言い訳してもこれはヒドすぎると自分でも思いました。
推敲するとか言っておきながら相変わらずしてません・・・・・・前回の『歴史』からになりますが、どうしてこうも描写が薄いんでしょうね。
この文章を書いている時点で既にIf様に指摘されていますが、別視点から一つの事象を描くのはかなりハードルが高く、違いを出さないとテンポを悪くするだけ〜と聞いていました。
知っていながら敢えて挑戦してみたわけですが、やはりテンポを悪くしてしまっただけみたいです・・・・・・不快に思われた方がいたらごめんなさい。
何か、その、都市伝説みたいな化け物=魔王って感じで書き始めたんですがこれが中々上手くまとめられず、結局中途半端な状態で投稿する形になってしまいました。
(おまけに改行がおかしいのを気づいて修正したのは二日後)
色々不備をさらけ出した感じの6月のお題でした。これも経験と思い、今は羞恥心に絶えながら皆様の批評を聞いていたいと思います・・・・・・!




総評

魔王とくれば→勇者でしょう!っていう作品がやっぱり多かった。
似通った作品が無く、各々が違った話を書けていたので純粋に楽しんで読めた。
ここのところ参加者が減少傾向にあるのが残念。(批評は楽・・・・・・ボソ
書く人のレベルは上昇傾向にある。批評についても書いている身としては参考になるものが多い。
結論として、参加者のレベルは次第に上がっているが、参加人数は減少&停滞傾向にあり、ストテラ閲覧者が増える時期になっても
参加者が増えないようなら今後のお題に悪影響が出るかも・・・・・・と言った具合、なの、かなぁ?(汗
あれ、何で今月の枠組みを超えた批評をしてるんだろう……?

sakanaさんがお題を引退し、益々寂しくなっているお題小説。私もいつまで続けられるか不透明。特に最近はお題作品投稿者以外の方の批評が全く無い。
SF・ファンタジー板を盛り上げていく為にも、積極的な参加が必要なのではと思っていたり思わなかったり。(本音:もっと皆で集まってワイワイしたらいいのに)

来月は『擬音』ですか。これは一時期擬音だけで戦闘描写をしたことのある私にとって最高のッ!(黙(殴(蹴(絞

次回こそは推敲をしよう、そうしよう。

でわでわ。




メンテ
Re: 【八月期のお題は「過去のお題から三つ選択!」】お題小説スレッド【七月期お題「擬音」:作品投稿期間】 ( No.162 )
   
日時: 2012/07/01 03:05
名前: 企画運営委員 ID:zCukUF4M

【第十四回総評】

 参加者が少なかったのが残念ではありましたが、話を動かしてみようとする意志が強い作品が揃っていて、非常に読み応えのある回となりました。似たような作品もなく、オリジナリティ溢れる作品ばかりで楽しめました。「魔王」の使い方もそれぞれ工夫してあり興味深かったです。
 ストーリーや展開に関しては全体的にとても良かったため、今回は文章について書きたいと思います。地の文を効果的に使えればもっと見せ場が映えただろうと思われる作品や、説明不足で読者が登場人物の感情に同調しきれなかった作品があったりと、文章の書き方によってさらによくなったのではと思われるものが見受けられました。物語展開が良かったからこそ発見された部分ではないかなと思います。過不足なく書く、ということは非常に難しく、書き手として物語を書く場合永遠に向き合い続けなければならない課題ではありますが、文章を丁寧に書くことで読者をよりいっそう楽しませられれば、物書きとしては喜ばしいことです。時には読み手のサポートをし、時には読み手の感情を高ぶらせる、そんな文章が書ければなと、書き手の一人として思います。
 次回のテーマは「擬音」ですね。一風変わったテーマではありますが、書き手の皆さんがどうやってこのテーマを料理されるのか、非常に楽しみです。夏休みにも入りますし、たくさんの方の参加があればと思います。
メンテ
Re: 【八月期のお題は「過去のお題から三つ選択!」】お題小説スレッド【七月期お題「擬音」:作品投稿期間】 ( No.163 )
   
日時: 2012/07/01 09:36
名前: 企画運営委員 ID:nvY.wh1c

第15回「擬音」の作品投稿期間となりました。
作品投稿期間は7月1日(日)〜7月15日(日)までとなります。
ルール説明>>002 を熟読の上、ご参加ください。
皆様の力作お待ちしております。
メンテ
不協和音 ( No.164 )
   
日時: 2012/07/11 21:55
名前: にゃんて猫 ID:MQvvEfbs
























ソド



キャハハハ……


レファ

ドレミファソシレ

ミファラドレソド

ドミファソシファソラ
ソシレファソラドミファ
レファラドレソラド
ミソシドレミファソラドレミソシ
ラドレミソシレファ
      ミソファレドミレドシ
レソラシドレミソ
ミファソシド
ファソシドレファソラシドレミ
レファ――――――


何をしてるの、止めなさい

ミファソラ――――――


止めなさい!

う……ぅ、うわあああああああああああん、いやあだああああ、ひくううう……
バタン ダン 

オゥン ドンドン
バン バン バン バン バッ

うわあああああああああああん

そんな風にピアノを扱う子にわ弾かせません!

うえっ……ふ、ぅ  ヒック……ヒック……

パタ パン  …ゴトリ

ちゃんと弾くって、約束できる?

コクン

じゃあ教室に入って弾きましょう。ここだと迎えに来た人の迷惑になるからね」

ゎかった……

さあ、行きましょ

コクン トン トン トン トン トン

ギィ……  グン ガチャリ



「…………」



毎度毎度息子がお騒がせしてしまってすみません……

いえいえそんなこと……活発なお年頃ですし、元気が無いよりわよっぽど

でわ、今日もレッスンありがとうございました……ほらケンタ、挨拶わ?

センセ、さよぉなら――――いでっ

『さようなら』の前に『ありがとうございました』でしょ。はい、やり直し

……ありがとぅございました

はい、よく出来ましたね

ナデナデ 

じゃあ先生、お疲れ様でした

はい、また来週もお願いしますね

センセイ……えっと、えっとね

どうしたの、ケンタくん

ドン ドドトン

えっと、えっとね。その、ピアノばんばんしてごめん、なさぃ……

もうしないって約束できる?

うん

それじゃあ来週ね

ばいばい、センセイ

じゃあね、ケンタくん

ウィーン  トン トン     シュー ゥン

佐江ちゃんお疲れ様

あ、南美さん。そちらこそお疲れ様です

私なんてまだマシよ−。中学生アンサンブル二つ持ちに個人レッスンが二つだけだもの。特に中学生なんて、放っておいても勝手に練習してくれるから楽よ楽

私アンサンブル一つに個人レッスン三つなんですけど……

ある程度の歳になってくると分かるよぉ個人の難しさが。今わアンサンブルで手一杯でしょう?

はい、7歳児なんですけど、中々上手くいかなくて……

そっかぁ、佐江ちゃんの持ってる個人は大学生とか高校生ばっかだもんねぇ。中学生以下わ持ったことない?

はい……まだ

佐江ちゃんまだ若いからねぇ。受け持たせないようにしてくれてるのかな、まぁ今のうちに小さい子の教え方は身につけておいた方がいいよ? 後々楽になるかもだし

そうなんですか

立ち話も何だし、控え室行かない?

そうですね

トン トン トン ガチャ ヒュー  バタン



 眼は、まだ閉じたままだった。

「中岡さん、時間ですよ」

突然耳の上からかかった声。一瞬の動揺。その幻滅。物腰の優しい印象を与える口調。僅かな息づかいが聞こえてくる。一回、二回。
眼は閉じられたまま顔を上げる。周囲の音の聞こえ方が僅かに変わる。救急車のピーポー音が左右で変わる感じ。そう、そんな感じ。
「もう、時間だったんですか」
私の声、完全な人の声、当たり前か。どことなく緊張した響き。
ちょっとだけ呆れたような鼻息。安心した感じも漂ってる。相手の服に染みついたコーヒーの香りがふわりと鼻をついて和ませた。
「えぇ。どうしたの? いつもは早め早めの部屋に入っているのに」
「……音を」
言葉足らずの回答が口から零れた。慌ててそれを補足する。
「聞いてたんです。不協和音」
「不協和音?」
「男の子が、鍵盤を無茶苦茶に叩いて遊んでいたので」
非難めいた響きが出ないよう押さえて事実を述べる。嘆息。そう、不協和音。
無垢な子どもが奏でた音。弾き出された音達はざらついた風味で混ざり合い、耳障りな音階の羅列を作り出していた。
「健太君かな? 遊び足りない年頃だし、勘弁してあげてね」
先生のフォロー。にっこりと微笑んで私を見てる。そんな気がする。
「はい」
あっけらかんと、そう答えた自分が受付前のソファーにちょこんと座っている。
尻を少し動かすと、それに呼応してソファーが蠢くようにして僅かに形を変えた。
「じゃあレッスンを始めましょう」
「分かりました」
立ち上がる。潰されていたソファーがゴムボールのように弾んで戻る。ぼよよんって。この感触が結構好き。
壁の感触の違いを指先でなぞりながら前へ前へ。左手に提げた鞄に誰かが当たった。反動でよろけそうになるのを右足で踏ん張る。
フラッシュバック・ミュージック。あぁ思い出したら気づいちゃった。
分かってる。本当は分かってる。
不協和音だなんてちっとも思っていなかった。少なくともあの時は。
耳障りな音の連続が、濁りきった心を掻き乱す様な感触に、歓喜にも似た高揚を覚えていたのだ。
重い扉が開く音。防音用につくられた二重窓つきの分厚い金属の扉。間に指を挟んだまま閉じてしまった時はあまりの痛みに泣き疲れるほど泣いたっけ。
開いた扉を跨ぐ。段差で躓くのはもう沢山だ。先生が背後で扉を閉める。ゆっくりと。
部屋に入ると、ロビーよりもやや低めに設定された冷房の風が首筋を撫でるように流れた。ちょっと寒いか、どうせすぐ慣れる。自問自答、馬鹿みたい。
扉がロックされ、ガチャリと鍵のかかった音がする。破砕音のような、それでいて調和を満たす感じ音。牢屋の扉もこんなのかな。
頬が熱い。頬が紅潮しているのか。いつもの感覚。一週間ぶりのサイクル。それでいて止むことのない期限付きの永久運動。
鞄を下ろしてエレクトーンの上に投げ出す。手触りで楽譜を取り出し、左手で手をつきながら鍵盤の蓋を開けた。
眼は閉じたままだった。真の永久。未来永劫に光を喪失。
だから心の瞳をうっすらと開いた。鋭敏になる感覚。指先が自分の意思と完全に同化した感覚。
爪の先まで研ぎ澄まされた。瞳を完全に開いた私が座っている。
「始めましょう」
合図の声。いつもより五分遅いレッスンの開始。
指慣らしにハノンを弾きながら、私はさっき聴いたあの耳障りな音を思い出せていた。
ぐちゃぐちゃに掻き混ぜられてバラバラになった音達。現実もそうなってしまえばいいのに。
みんな、死んじゃえばいいのにな。



 レッスンはいつも通り一時間で終わった。つまり、五分の延長。
「お疲れ様。先週よりも格段にうまくなってたわよ」
先生の声。滲む満足感。ちょっと褒めすぎかも。でも気分がいいからいいや。
「ありがとうございました」
部屋を出て礼をする。ちょっと温いロビーに出て、もう一度頭を下げる。丁重に。意味もなく低頭に。
「また来週ね。それじゃあ」
「はい、また来週」
身を翻す。感覚の帰化。ばいばい鋭利な指先。おかえり緩慢なワタシ。また下らない日々の始まり。
エレベーターのボタンを押す。ツルツルした、滑りやすい壁を押してる感覚。
改装してから、やけに不便。階に来ても音が小さいから聞こえにくい。それだけ。でもそれが不便に結びつく。可笑しな話じゃん。
非常階段へ行く扉がいつも開いてたらいいのに。
絨毯をひいた床を踏みしめるようにしてぶら下がった鉄の箱に乗る。ガタンと揺れる。これを吊してる糸が切れたら私も死ねるかな。
憂鬱。憂鬱。憂鬱。ダンスパーティーで踊りたい。踊ったことなんて、一度も無いけど。
金属製の扉が閉まる。機械音。ウィーンってロボットアーム的な。でも凄く小さい。だから最新の機械設備とか言うのは好きになれない。
馬鹿みたいに機械感を出してくれたら楽しいよきっと。多分私だけだろうけどね。
振動音。箱の中身がぐらぐらゆらゆら。私足首細いんだから止めてよね。
ここはビルの十一階だから、もし誰かが私の入ったこの箱を吊るしてる糸を切ったら、余裕で死ねるかな。
ぺちゃんこになって、顔も分からないほどマッシュされて、そんな私の入った棺桶を見てみんな嘘泣きしてくれるんだろうなぁ。
行き先は一階。地下まで落ちたらマイナスになっちゃうから、そこは丁度ゼロにあたる地点。そう言えば何で地上零階って無いんだろ。
上下にしか動かない箱が落下を始めた。途中で止まることなく、速度を上げてひたすらゼロへ。
落ちていく。墜ちていく。堕ちていく。やがて止まった。
気の抜けた鉄琴の音に突き動かされるようにして扉が左右に開く。
私の体が潰されることは遂に無かった。
「畜生」
馬鹿みたいに呟いて、私は息苦しい箱を、更には重苦しいビルを出た。
音の無くなった途端全てが鬱陶しいものに見えて、私は瞳をきつく閉ざした。



 騒がしい日常。その真っ只中、七月。昼下がり。
乾いたチャイムの音が、蒸されたような熱気の教室に響いて反響する。
「イチ、ニ、サン、シ、イチ、ニ、サン、シ。はい、このテンポをしっかり覚えておくこと。本番まであと二週間しか無いんだから」
尖った声。無駄に大きな声量。見えなくても分かる、絶対太ってる。デブ。消えなさいよ。
嫌みの様に皆唱えてる。「イチ、ニ、サン、シィ」あぁ退屈だ。義務教育の音楽なんて所詮この程度。欠伸が出ちゃう。
「知っての通り我が貴金武中学の合唱祭まで残り二週間を切りました。今年は例年とは違い、夏休み直前の七月十九日火曜日にあります。
 テストの関係もあって大変だとは思うけど、頑張って成功させましょう。大丈夫。あなたたちなら絶対素晴らしい合唱ができるわ」
自己満足の声。皆聞いてない。私も聞いてない。正確には聞いてないフリ。でもどうせすぐ忘れる。だから聞いてないことと変わりない。
退屈でしょ? 目的のない日々なんて。消えてしまえばいいのに。



「中岡さんってピアノ習ってたっけ」
 帰り際、誰かが声を掛けてきた。変声期を過ぎたのにまだちょっと高い。女子に混じってアルトくらいなら唱えるんじゃないかな。
腰に鍵でも提げてるのか、チャラチャラと金属音がする。
この音は『千里裕太』だっけ。クラスの学級委員長。一応仕事はこなしてるっぽい。たまに忘れてることがあるのが玉にキズだけど。
不機嫌な顔ってどうしたらいいか分からない。知ってた気もするし、知らなかったのかもしれない。どっちでもいいや、結局いつもの表情のまま私は振り向く。
無色透明で味気のない演出が出来ていますか? いいえ。だってそんな余計なこと考えてる時点でアウトでしょ。
「そうだけど、」
何か続けて言おうとして、思わず口が二の足を踏んだ。何て言う? 言葉が見つからない。何て言おうとしたんだっけ。そもそも決めて無かった気もする。
気まずい空気。相手も何か言おうとして躊躇したのか、変なため息を零している。可笑しい。笑えちゃう。あはは。
「そこで、頼みがあるんだけどさ……」
気弱。もっと強引に迫ったらどう? ここに来て、私は相手が何を言おうとしているのか。自分がどんな回答を用意していたのかを一瞬のうちに思い出した。
思わず口元が吊り上がってにやり。どんな顔をしているのかなんて分からないけど、今の私は他人に対して凄く正直になっていた。
嫌みな気持ち。それそのままなんだから、やっぱり私正直者。万歳。
「悪いけど、合唱の伴奏はしないから」
憮然とした態度で言い放ったつもり。向こうが僅かに息を呑む。ざまぁみろ。見えない左手で薬指を突き上げる。ざまぁみろ。もう一度。
「あ……待って!」
そのまま悠然とした態度(彼の目にそう映ったかどうかは定かではないが)でその場を立ち去ろうとすると、後に振った右腕が引かれた。
突然の重心移転に体がついて行けず、私の四肢が後方に倒れ込む。足がもつれる。地面から足裏が遠のく感触。
そのまま失墜の波に押し倒されるような感覚を、誰かの掌が支えて止めた。
脈動。波打つ二の腕。それを掴む大きな掌。声。誰の? 多分、自分の。高いソ。悲鳴のような、金切り声のような。
「大丈夫?」
耳元より少し上から声がする。頭にかかる僅かな吐息に、うざったい程に身体が敏感に反応した。
心臓が一瞬だけ高鳴る。私どんな表情してるのかな。数秒だけ桃色に近いときめきのような何かを覚え、それは次の瞬間には真っ赤な怒りへと変貌していた。
「離して!」
二の腕を掴んでいた掌を羽虫を払うように除ける。走り去ろうと踏み出した右足に重心を移そうとすると、また体が後ろに引かれた。
今度は肩を掴まれている。止めてよ。離せ離せと心の底から思っているにも関わらず、体はぴくりとも動かせなくなっていた。
まるで彼の掌によって私の身体が操作されているような、気づいた時にはまた桃色に染まった心臓の自分が居た。
「お願いだよ。あと二週間しかないんだ」
「……何で私なの」
当然の問いで言い返す。そう、クラスには私の他にもピアノを習ってたり、習ったことのある上手い人間は居る。おそらく両手の指を使わないと数え切れないくらいには。
それがどうして私なのか。全会一致で伴奏者に決まった木村さんが居るというのに、どうして私なのか。
「この『旅立ちの夕焼け』の伴奏、お前じゃなきゃ出来ない。絶対」
「そんなに難しい伴奏には思えなかったけど?」
正直に答える。それが命取りになった。
「―――――お前、あれを難しく思わないのか?」
「えっ……あ」
慌てて口元を手で抑えるがもう遅い。千里が私の肩を強引に揺さぶって半回転させる。私は丁度千里と向かい合って見る形になった。
奴め、どんな顔をしているだろうか。自ら墓穴を掘った自分をさぞ嘲笑っているのか。
否。彼のような気弱な人間のことだ。素直に喜んで私に再び頼むだろう。そして私は次こそ断れずに、嫌々引き受けてしまうことになるのだ。
「それじゃあ…………あぁ、でも」
「でも、何?」
とっくの昔に自分への叱責や憤怒の感情を放出し、それを受け入れることを決定と捉えていた脳がその言い淀んだ声に反応した。
躊躇っている? 何を。後は全て私に押しつけてしまえば、彼はもうクラスから伴奏者不在について糾弾されることはない。
誰かが批判を受けるとすれば、それは私が期限までに伴奏が出来ずに天手古舞いになることくらいだろう。
「……今、クラスでもちょっと微妙な雰囲気だしさ。中岡さんに無理に頼んで嫌な思いもさせたくないし」
一瞬、相手が何を言っているのか分からなかった。その意味を初めて理解した時、全身の血が彷彿する感覚に襲われた。
「何よ、それ。そんなことで尻すぼみするくらいなら、初めから頼んだりなんてしないでよ」
「……引き受けてくれる?」
目眩がする。を超えて、虫唾が走る。何言ってんのこの変態。蛞蝓みたいにダラダラした物言いで。私を試しているのか? 素でやられているよりはその方が数段マシだ。
肩を掴んでいた彼の手を咄嗟に握り返す。爪が食い込むかもしれない力の入れ方に、彼が少し驚いたように息を呑んだ。
言ってやる。鼻を突き出して。言ってやる。その気弱な態度丸出しであろう顔面めがけて、唾を飛ばして汚してやるくらいの気概で。言ってやる。言ってやる。

「――――――引き受けるわ」

言い放って数秒、動きのないそのひょろっこい体を少し力を入れて突き飛ばす。
そのままの勢いで後方へ座標を変換。走り出す。重心移動。走る。走る。敵前逃亡? 別にいいわ。一撃喰らわせてやったもの。ざまぁみろ。
耳の遙か後ろから声がした。「ありがとう」だって。ふざけんな。
何を勘違いしてるんだか。私はあんたの気色悪いくらいに白黒はっきりしない態度に苛立って引き受けてあげたまで。
「バッカじゃないの!」
青空か曇天か分からない空へ向かって大声で吠える。叫んでる?喚いている?違う、『吠える』。私は吠えた。犬とか猫みたいに獣臭丸出しの、実に私らしくない醜態で。

私は吠えた。



渡された楽譜は読まずに、代わりに音楽担当教師から貰ったCDを家にある音楽再生機器で聴いてみた。
『旅立ちの夕焼け』は、確か九十年代に若手の作詞家が書いた詩を、当時人気だった歌手が歌って大ヒットになった曲だ。
第何回かの合唱コンクールの課題曲で合唱用に編曲された。合唱の方はよく分からないけど、伴奏はそこそこ難しい。
『そこそこ』って言うのは、私からしてみればあんまし難しくないレベル。
音を三回くらい聞いた後、空鍵盤で指を動かす。大体の音は把握した。
「バッカじゃないの」
気がつくとまた呟いてしまっている。意味の無い言葉の反芻。羅列羅列。
停止命令。応答拒否。私の中で白と黒が対立している。言うことを聞かない私は口元付近に存在している模様。
「全軍突撃。抹殺せよ。抹殺せよ」
呪文のように口から零れ出す。私が抹殺しようとしているのか、口元に潜むもう一人の私が抹殺しようとしているのか。
「抹殺せよ。抹殺せよ」
まだ溢れ出している命令。意味ナシ。阿呆らしくなって、私は部屋を出た。
駆け下りる。補給所まで残り二メートル。慎重に進め。ラジャー。アイサー。
そのまま洗面所へ滑り込むように進む。シャワールームに人の影。察知されていない。セーフ。
「補給開始。抹殺せよ。抹殺せよ」
コップに水を汲み、それを口の中へと一気に流し込む。殲滅中。殲滅中。
ガラガラゴロゴロと雷雲が口内で発生中。大雨洪水警報発令。遅いってば気象庁さん。
「何やってんだよ姉貴」
電撃のない積乱雲もとい濯ぎ水を口の中で発生させていると、隣から思わぬ敵が襲来した。
「口濯いでんの」
「風邪? バッカじゃねーの」
「うっさい」
空になったコップを『血の繋がった弟』に投げつける。ミス。ダメージなし。
「そんなんだから、精神年齢がいつまで経っても低いんだよ」
弟の攻撃。発言によるダメージ発生>>微少 反撃→歯ブラシを投げつける。回避。弟逃走。敵を殲滅した! 全っ然嬉しくないんだけど。
「何馬鹿やってんの二人とも」
呆れた声。台所遠くから。思わぬ所からの攻撃に面食らう。弟は逃走済みなので結果的に全ダメージは私に。
ふざけんな。拾い上げたコップと歯ブラシを乱暴に元の場所に戻して、私も逃走劇を始めた。部屋へと続く階段を駆け上るまでの所要時間およそ5秒。
電撃のような終幕を迎える。拍手? そんなのいらない。あぁ馬鹿馬鹿しい。こんな事してる自分が馬鹿馬鹿しい。本気に思ってる周りも馬鹿馬鹿しい。
死んじゃえ。死んじゃえ。死んじゃえ。みーんな仲良く。巨大隕石でも落っこちたらいいんだ。
落ちるなら、落下の中心は私にしてね。痛いの嫌だから、一瞬で灰になりたいもん。



時は巡る。遡りはしないけど。進むだけ進んで私を乱暴に引っ張る。そこで私がどう足掻いても大した結果の変更はあり得ない訳で。
「へぇ、中岡さん伴奏するの? 二週間後って随分急ね。大丈夫?」
「大丈夫?」のところだけ心配する風な響きがあった。ちょっぴりですけど。他は、まぁ、それっぽい反応。
「はい。級長に無理矢理頼まれて……」
事実と僅差で違う言い訳。何か文句ある? 引き受けてやったんだから、ちょっとくらい事実ねじ曲げても許しやがれ。
「『旅立ちの夕焼け』かぁ。先生も実は一度だけ弾いたことがあるんだけど、中岡さんならそこまで難しく感じないと思うわ」
分かってるじゃない。ちょっと鼻が高くなった気分。本気で高くなられたら困る。なので高く思うのも程々に。
「Dの部分からの左手のタイミングが掴みにくいんです。弾いてくれますか?」
練習済みであることをアピール。課題で出されている曲が犠牲になってることを隠し通すため。それもあったりする。
「サビの前後かしらね。分かったわ、ちょっと弾いてみるわね」
椅子から立ち上がる。選手交代。つい先ほどまで私と一体になっていたはずの鍵盤は一瞬で相方を乗り換えた。嫉妬? するほどの仲じゃない。
先生の指から奏でられるピアノの旋律が滑らかに鼓膜に響いてくる。「滑らかに響く」ってちょっと変かもしれないけど、本当にそんな感じなんだから仕方ない。
私には出来ない演奏。きれいな球が緩やかな斜面を下ったり登ったり、たまに弾んだりする。
この軽快かつ優美な響きが、気がつけば私の全能を支配してしまっていた。ずっと聴いていたい。ふとそんな欲求に駆られてしまう。
でもこれは私のレッスンであって先生の演奏会じゃない。先生は必要な部分だけ弾いたらプツリと弾くのを止めてしまった。残念。
レールの先の無くなった球が驚いて雲隠れしてしまう。そして誰も居なくなった的な。あぁ、もっと聴いていたかったな。この音の奔流。
「メッゾフォルテだけど、出だしはちょっと大きめがいいかな。ほら、合唱だと皆ピアノ聴いてから入るでしょ? 出しゃばり過ぎない程度に強く弾いてあげた方が思い切り声が出せるはずだから」
的確なアドバイス。本当に無駄がない。八方美人。あ、それは違うか。
「あと、ここは伴奏も複雑になってるから集中しがちだと思うけど、なるべく指揮の方を見るといいかもね。声とピアノがズレちゃったら、どっちかが引っ張られて酷い事になるから」
「分かりました。ありがとうございます」
お辞儀。礼。にっこり微笑んだのかな。無音。あぁまた何か忘れてる。
そうだ課題。全然やってない。進んでないのバレたらどうしよう。
先生たまに怒ると声が怖い。恐怖。通算過去一回だけ怒られたことがある。恐かった。声は全然穏やかなのに。幸い、すぐ収まってくれたけど。
「課題は……」
先手を取って言っておく。伴奏の譜読みをしていてできませんでした。大嘘だ。多分バレる。この程度の曲私なら一発楽勝じゃん。実際そうだったのが仇になってるけど。
「あ、今週は仕方ないわね。来週も休んでいいから、今は伴奏の方に集中しましょう」
息を呑む。誰? 私が。不意を突かれた感じ。鳥肌が立ったみたいに皮膚が泡立ってる。部屋にかかった冷房からの冷風がやけに敏感な感触を伴って肌を撫でた。
「何で……ですか。だって、そんなに練習の居要る曲でもないし」
「貴重な経験よぉ。合唱の伴奏なんて、今しか出来ないことだし。それに、多分声と合わせるようになったらそうそう「簡単だ」なんて言ってられなくなるかも」
押し黙る。黙秘。疑問。初めてのことだから分からない。声と合わせるのって、そんなに難しいのかな。
「中岡さんは完璧な演奏をしたがるから、合唱の伴奏みたいに兼ね合いが要る様なものにはあまり向いてないかもしれないけど。でも、これも経験の内って思って頂戴」
何となく発せられた単語が心の隅に痛々しい音を立てて突き刺さる。「完璧」? 私はそんな演奏をしている様に、先生の目には映ったのだろうか。
私はただ譜面通りに音を拾って、譜面通りに弾くだけの演奏が好き。ではない。否定。
「私は完璧な演奏がしたいわけじゃないんです」
自己主張。なのに食い違い。これじゃまるで「完璧にしてる」という事実を認めてるみたいじゃない。
自己否定。あぁもう訳わかんない。回答を。完璧な解答をプリース。please give me.バッカみたい。
「じゃあ中岡さんはどんな演奏をしたいの?」
傷ついた心が一瞬で今度はフリーズされた。凍結。過度の冷却は思考回路の緊急停止を誘います。ご注意下さい。
どんな演奏? 他人の、うまい人の猿真似ぐらいしか考えたことがない。先生やCDのパクり。まんま。
完璧な解答以前に、私は質問すらまともに用意できていなかった模様。私の演奏。私の出したい音。今まで、一瞬でも考えたことがあっただろうか。ノー。
「自分のしたい演奏が、見つかるといいわね」
黙秘を、了解と見なした言葉掛け。反駁しかける。中断。断念。的を射た発言に抗う術なし。バッドエンド。
したい演奏。純粋で無垢な、あの不協和音が思い起こされた。あんな音を私は出してみたいのだろうか。惹かれているだけに過ぎないのなら、あの音も違う?
だとすれば、私は一体どんな音を出したいのだろう。何より、見つけ出したその音を出せるのだろうか。
先生の言葉に黙って頷く。ただ、それだけ。心に軽く誓ってみた。伴奏を頑張ってみよう。何か見つかるかもしれない。
これがもし賭け事なら見つからない方に絶対掛賭ける。それでも賭けてみようと思った。当たるはずのない方向へ。
アイゴーバッドエンド。何か違う。英語の教職に聞いてきな。何かを間違って、そこから何かを学ぶんだって、どっかの偉い人も言ってたでしょ。
全身が震える感覚。秒針が揺れる。ハトの声。終わりを告げる時計の音。ジ・エンド。
「それじゃあ。来週はお休みだから、さ来週に。合唱の結果、楽しみにしてるわ」
付け加えたような声。あくまで私を伴奏に集中させたいらしい。
ならば乗ってやる。たとえ滝の底へ落ちようとも、やってやる。そしてあの憎たらしい級長に、千里に言ってやる。どうだ、私はできたぞ。ざまぁみろって。

……ちょっと、何であんな奴のこと思い出してんの。馬鹿みたい。何よ、何で。あぁもう。
「馬鹿!」
罪無きエレベーターの堅い扉を革靴で蹴って、その日は終わった。



残り時間七十時間です。
聞いていた話以上に、合唱の伴奏は難航した。
私の演奏は、先生の言葉を借りると、いわゆる「完璧」なものだった。自分で言うのも何だが。
だが、声と合わせてみると、まるで違った。期待はずれとか、そんなレベルじゃない。スタート地点にも立ててない奴らと同列にされた。そんな気分。
「中岡さん、テンポ早くない? ちゃんと指揮に合わせてよね」
誰かが不満げにそう洩らす。ふざけんな。私はテンポ通りに弾いてる。おかしいのは手前等だろ。
サビの部分だけ勝手に突っ走って、そこをベースに全体のテンポを合わせて弾いたらそれ以外の部分で度々ピアノが一人歩きしている。
指揮も飾りだ。一応は私に合わせてくれてるみたいだけど、ほとんど皆見ていない。すぐに周りの声の速度に流されていっちゃう。
四拍子も取れない馬鹿の群れにぶち込まれた。最悪。頑張るとか言ってたけど、私が頑張っても骨折り損なだけ。意味無い。畜生。畜生。
「まぁまぁ、中岡さんも頑張ってるんだから。僕たちの方がテンポ遅いだけかもしれないしさ」
千里の声だ。こういう時のフォローは上手いくせに肝心の合唱では声が小さい。
ちゃんとテンポ守って唱ってる数少ない人間なのに、声が小さいから周りを引っ張れていない。
さりげなく、気弱なフォローにほっとした自分が一瞬で馬鹿らしく見えてくる。もう、こんな奴しか味方についてくれないの。ホントどうかしてる。
「……もう一度、いってもいい、かな?」
千里に負けず劣らず気弱な性格の女級長が言う。
クラス立候補が一人も出なかったため、仕方なく指揮者になった。
その経緯や日々の雑用務ばかりこなしている立場上の事もあって、クラスの指揮者に対する団結力は皆無に等しい。
お飾りのコンダクターが苦笑してこちらを見つめてくる。お前が決めろと一閃したいけど、それすら言わせない気弱さ。嗤っちゃうね。
「もう一回通しするよ!」
仕方なく、私が全員に声をかける。僅かな舌打ちや愚痴が鮮明に聞こえてくる。あなた達に良い事教えてあげる。
地獄耳じゃなくっても、意外と聞こえる物のよ。こういうのに限ってだけど。
「それじゃ、さん、はい、イチ、ニノ、サン!」
かけ声が分かりにくいのよ。ったく、仕方ないわね。半数が仕方ないで運用されてるクラス。もう一回嗤ってみようかな。
千里が男子の中でほぼ唯一まともに唱っている。罪滅ぼしのつもりか。って何のよ。馬鹿。
食い違う旋律。声。響き。不協和音を醸し出す。あの子供が弾いてた不協和音に方が百倍マシ。
始めから無茶苦茶って分かってる音よりも、要所要所でキモいズレ方した音の方が数千倍気色悪い。吐き気がする。
鋭敏な指先と鍵盤が一体になっている感覚までもが淀んだものに変わっていく。
もうヤだ。さっさと終わりたい。だから早めにスパート。文句たらたらのくせに、こういう時はサビメロで付いてくる。
ちょっと男子またソプラノ唱ってるじゃん。アルト弱すぎ。ソプラノは音外しすぎなのよ。いつもキーキー超音波で喋ってるくせに。
最後にピアノだらだら弾いて終了。怠い。怠い。怠すぎて死んじゃうんじゃない? 死んだらクラスで責任取ってよね。
「中岡さん、本当にごめんね」
千里が鍵盤に突っ伏して死んでる私に声をかけてくる。うるさい。てめーも消えろ。うざったい。てか、頼んだのアンタでしょ。今更謝るな、もう手遅れだって。
「別に……」
死にかけのカエルみたいな声で答える。皆帰った後だから、声が音楽室に反響している。開け放した窓から吹く僅かな風が心地良い。
「やっぱり、こんな直前に頼むべきじゃなかったよね」
「別に……」
イライラゲージ絶賛上昇中。その辺で止めとキきな。吹っ切れたら私も恐いよ、多分。
「でも、やっぱり中岡さんに頼むしかなかったんだよね。でも、それで中岡さんが苦しむのならやっぱり頼まない方が良かったのかもしれない。
 俺が弾いたら良かったんだよね。自分にはそんな技術無いからって言い訳して逃げてきたけど、頑張ったらちょっとくらいなら弾けたかもしれないよね。
 でも頼んじゃったってことは、まだ俺には勇気が足りないって証拠だよね。だから―――――」
「うるさいなこの馬鹿!」
鍵盤を思い切り叩いて顔を上げる。不協和音。初夏の涼しい風と混ざって阿鼻叫喚。耳が不幸せです。
顔を上げて初めて気づいた。千里の顔が思った以上に近い。というか、鼻息が感じ取れるくらいに近い。ちょっとどんだけ近づいて喋ってたのよあんた。
「――――っ」
息を驚いて吸ったフリをして顔を前へ近づける。鼻先を何かが擦った。続いて上唇。カサカサしたゴムみたいなものが当たる。違う、千里の下唇。
目を閉じる。一瞬。息を吐く寸前に押しつけた唇を一気に離した。目を開ける。呆然としてこちらを見つめている千里の人形が立ってる。違った、本物だ。
赤面。頬が上気しているのが鏡を見なくても分かる。彼の瞳に映った自分の輪郭が見えた瞬間、逃走劇が開始された。
「…………ぁ、待って!」
私が最初の一歩を踏み出してから声が耳に届くまで約五秒。音速が急に遅くなったのかな。そうじゃなかったらよほど鈍感な猿ね。そんな猿とキスしちゃったわけだけど。
過去最高速度で階段を駆け下り、荷物を教室に置いたままなのも忘れて無我夢中で逃げ出した。逃走。
この場から逃げ出したかった? そうじゃない、あの馬鹿猿にこんなおかしな行動ばかりとってしまう自分に嫌気がさして逃げ出した。
きっと、そう。本心からしたんだとしたら、私も立派な馬鹿の仲間入りだしね。



そして起爆装置もとい本番までのタイムリミットはいつの間にか三十分に迫っていた。
飛んだ六十九時間は何をしていたのかって? 運よく平日二連休だった。ほんと奇跡。何かの振替休日だったと思う。感謝してもし足りないくらい。
だってあんな事して次の日も学校行かなきゃいけないとか、できるわけないじゃん。
あの後クラスで騒ぎになってたらどうしよう。あの気弱な奴のことだし、自分からバラすことなんてあり得ないだろうけど。
それで、本番はどうするのかって言うと、考え中。全然決めてなかった。心の高鳴りが止まらなくなってもう不協和音と美旋律の区別もつかないくらいの状態が六十八時間くらい続いてた。
今になって今日これから本番だって気づいたけど、何か行こうかどうか迷ってる。
合唱祭自体はとっくの昔、一時間前にもう始まってる。私のクラスは最後の方になってるから、まだ猶予があるって話。
でも、家から学校まで急いでも十五分はかかるから、どんなにギリギリでもあと十五分で決めないといけない。
思考。思考。思考。あぁ頭ぐるぐるして気色悪い。水飲もう。
一階に下りて水を汲む。それを飲む。コップを漱いで洗う。以上の動作を合計して二分かかったので残り十三分です。
あー、あー、アー、アー。もうどうすればいいのか分かんない。そもそもあの馬鹿が悪いんじゃん。そう、全部あいつのせい。あいつが帰り道にあんな相談持ちかけてからだよ。こん畜生が。
「…………ばーか」
私以外誰もいない寝室でぼやく。やっぱり真っ暗なまま。桃色の光が見えているのは二人の時だけだった。鍵盤に触れている時よりも一体になってる感覚が沸き起こっていた。反芻。思い出す。
「……ばぁか、ばか、バカ、馬鹿」
意味もなく、ただ、ツレツレナルママニ。私ってばアホか。自分の方がよっぽど馬鹿みたいじゃない。
「馬鹿、馬鹿、ほんとに馬鹿、私も馬鹿、やーい馬鹿、私も馬鹿、やーい、やーい……」
不思議と空しい気持ちとか、そんなのにはならなかった。あら不思議。心の中の黒い霧がちょっとずつ霞んでく。目は閉じたままだけど、今なら何か垣間見ることができそうな気がした。

だから、気が付いたら全力で自転車を漕いで学校に向かっていた。



本番二分前になって私が到着した時のクラスメイトの顔が今でも忘れられないね。特に指揮者の女級長のあの顔。私は地球滅亡を救った英雄かっての。愛は地球を救うって? 馬鹿馬鹿しい。
頭の中が馬鹿ばっかで構成されてる。本当にお馬鹿さんね。でももう知らない。どうせ皆馬鹿の集まりなんだから、自分も馬鹿な方が溶け込んじゃって目立ちにくいでしょ。
私にとって今世紀最大の馬鹿とは視線を合わせないようにした。あちらも声をかけてこなかったから好都合。リハも無しに、ぶっつけ本番でやる。

全校生に教師陣、それから思ったよりも多い保護者の群集に監視されて入場。パチパチ。御飾の拍手はお済になった?
指揮を一瞬見る。あの気弱な顔の女級長が、今日は何だか心強く見える。気迫、ムードが違うって。肌で感じてる。本番に強いのかな。
コンダクター・ミッションスタート。目標は特にない。多分、報酬も無い。だから突っ走る。ひた走る。見えないゴールめがけて。それだけ。それだけのこと。
周りの音も聞こえない。ただただ熱中。何時から? きっと、横目で盗み見たあいつの音が真っ直ぐ過ぎたから。
ごく平凡で無色透明だった私の演奏に、訳の分からない色が映えた瞬間だった。
そして気づいた時には終了の拍手が鳴り終わっていた。お辞儀、礼。そういえば始めの時にしてなかったっけ。まぁいいや。
終わって、退場して、皆緊張が解けて頬が緩んでる時に、もう一度だけ彼を見た。
たまたま、あっちも私を見ていた。交錯。絡み合う視線。艶めかしい表現に見える? 案外ドライでさっぱりしてるよ。
手招きされて、体育館裏で壁を背にして並ぶ。心拍数が跳ね上がっていた。本番の時の二倍くらい。これで早死にしたら責任とってよね。
「今日は、さ。ありがとう」
「何が」
「来てくれて」
「あんたが頼んだんでしょ。当たり前じゃん」
「うん……ありがとう」
「……えっと、私も遅れて来てごめんね。心配かけたよね?」
「ううん。クラスの皆も、ちょっと反省したみたい。声、練習の時より出てただろ」
「そ、そうだね……」
「…………」
「…………っあのさ!」
「な、何!」
「……察しなさいよ馬鹿!」
「え―――――」
唇が触れ合った。もう一度だけ。今度は瞳は開いたまま。直視する。その瞳奪ってやるわ。いつか。気弱な子羊さん。
そういえば、いつから目を開けてたんだっけ。随分前からだった気がする。太古の昔のことだから忘れちゃったよ。でも、今でも覚えてる。あの鼓動の高鳴りを。

一体になった感触を噛み締めた。なんて馬鹿な不協和音。それでもいい。私にお似合いの色を、ようやく見つけた。



end.
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

題名 スレッドをトップへソート
名前
パスワード (記事メンテ時に使用)
コメント

   クッキー保存