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[4993] 【2016年度】お題小説スレッド【お題「去る」作品投稿期間】
   
日時: 2016/01/12 23:57
名前: 企画運営委員 ID:7PNV346o



『お題小説スレッド』へようこそ。こちらはあるお題に沿って読みきり小説を書き、その作品をみんなで批評し合う場です。
 初心者も上級者も関係ありません。うまくなりたいとお思いの方であれば、だれでも自由に参加することができます。一生懸命執筆し、一生懸命批評して、小説の技術を高め合いましょう。
 皆様のご参加をお待ちしております。

――――――――――――――――――――

>>002 【ルール説明】:必ず熟読して下さい。(※内容、一言の箇所を訂正しました。ご確認ください)
>>003 【批評のポイント】:批評をする際のポイントをまとめたものです。
>>004 【イベントルール説明】:イベントに関するルールです。必ず熟読してください





▼お題:第32回のお題は「種」です。
 二月に種をまくのか? と思いましたが、調べてみるとじゃがいもは二月にまくそうですね。……さらに調べてみると一年中、なにかしらの種をまいてるみたいです。
 そんなことは置いといて。「種」というお題には「たね」以外にも色々な解釈があると思います。みなさんがどのような作品を投稿してくるのか、楽しみにしております。
※第30回の作品投稿期間は2月1日(土)からです


▼お題:第33回のお題は「姫」です。
 三月なので(笑)
 というのはよくわかりませんが(ひなまつりだから?)「ひめ」というのは可愛らしい語感ですよね。私は緑の黒髪をした和服姿が思い浮かびます。桃色が似合いますよね。桃色……やはりひなまつりでしょうか。それでは、みなさんの作品お待ちしております。
 
※第31回の作品投稿期間は3月1日(土)からです


▼お題:第34回のお題は「嘘」です。
 嘘でした。


▼お題:最終回のお題は「魔法」です。
 奮ってご参加ください。


▼お題:第36回のお題は「友情」です。
 ネタでした。


▼お題:第37回のお題は「音」です。
 奮ってご参加ください。



▼日程(第32回)

1月1日       :お題発表
2月1日〜15日   :作品投稿期間
2月16日〜28日  :批評提出期間


▼日程(第33回) 

2月1日     :お題発表
3月1日〜1月15日 :作品投稿期間
3月16日〜30日 :批評提出期間


▼日程(第35回) 

6月1日     :お題発表
6月1日〜7月31日 :作品投稿期間
8月1日〜   :批評提出期間



▼注意もしくは削除対象となるお書きこみ
・荒らし
・荒らしへの反応
・自分や他人の小説の宣伝
・雑談、チャット化
・ルールに反するもの
・管理人が不適切と判断したもの

――――――――――――――――――――

>目次 >>001


>第32回 お題『種』参加作品(敬称略)

>>404 sakana:シロハの辻褄
>>405 伊達サクット:赤い種、青い種

================================================================================

▼リンク
小説講座/雑談所』(お礼や言い訳等はこちらへ)
旧お題小説スレッド』(前スレはこちらから)
ツイッター』(朔乱のアカウントです。お題の告知などをしています)

管理人:If 空人 朔乱  補佐:伊達サクット
メンテ

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まだまだ続くよ! ( No.169 )
   
日時: 2012/07/15 23:43
名前: 朔乱 ID:whLMJ2Rw


 コツ、コツ。コツ、コツ、コツ。

 彩乃はハイヒールの音を気にして、立ち止まったり歩幅を狭めたりと、不規則に歩く。
 午前三時。静かな住宅街にハイヒールの音はよく響いた。

 コツ、コツ、コツ。コツ、コツ。

 民家はすでにどこも暗く、街灯だけがぼんやりと彩乃を照らしていた。けれども、数メートル先には周りと違う、ひときわ明るい場所がある。コンビニ、彩乃の目的地。
 明るいとはいっても、コンビニの明かりも街灯と同じぼんやりとしたものだった。
 近くには高校がある。学生たちはよく、部活終わりにこのコンビニにたむろした。客らしい客といえば、それぐらいだった。

 コツコツ、コツ、コツ。コツ。段差。

 彩乃ははっとして立ち止まる。道路とコンビニの駐車場との間には段差があった。慣れた道とはいえ、彩乃はよくこの段差につまずいた。今日もそう。あと少しでつまずくところだった。

 コツコツコツ、コツ、コツ。

 コンビニの前まで来る。やはり誰もいない。店員が一人、ボーッと宙を眺めている。彩乃にはこのほうが都合が良かった。
 彩乃は面倒な客だった。

 ピロンピローン。

 入店を知らせるチャイムがなり、店員が気付く。店員は彩乃だとわかると、肩の力を抜いた。

「いらっしゃいませ、こんばんは。彩乃さん? また、ですか。そんなに面白いんですか?」

「ふふふ。ごめんなさい……でも、ふふふ。でも、ピロンピローンって……何なのよ、ピロンピローンって。いつ見ても面白いわ」

 店員にとっては見慣れた光景。彩乃は入店チャイムの音が大好きで、入るたびに笑った。店員は好青年らしい、一方で営業的とも言える笑みを返すと、彩乃が落ち着くのを待つ。
 彩乃は一通り笑った後、商品には目もくれず、真っ直ぐレジへと向かった。

「そういえば、あなたの名前聞いてなかったわね」

「あれ、そうでしたっけ。何だか今更ですね。でもほら、僕、ちゃんと名札つけてますよ」

 くいっと、店員は名札を持ち上げる。

『小林剛』

「ほんとだ。気づかなかったわ。えーと、こばやしつよしさん?」

「ややこしいですよね。これ、たけるって読むんです。こばやしたける」

「あ、そうなの。ごめんなさい」

「いえいえ、よくあることなんで。一応、ルビ振ってあるんですけど、小さくて読めませんよね」

 剛は名札を外して彩乃に見せる。そこには、小さな文字で『たける』とルビが振っていた。

「さて、今日の注文は何ですか?」

「え? あぁ、そうね。注文ね。すっかり忘れていたわ。……ちょっと待っててね」

 剛は返事をすると、ボールペンと貰われなかったレシートを取り出す。

・薄力粉
・沢庵
・あんぱん(つぶあん)
・ポン酢(前回のとは違うやつ)
・ドレッシング(シーザー)
・チョコレート
・旨味調味料
・お茶
・野菜

「じゃあ、言うわよ」

 いつでもどうぞと剛はペンを構える。

「薄力粉、沢庵、あんぱん、今日はつぶあんでお願い。ポン酢、この前とは違うやつで……」

 カツカツ! カッ! カツ! カツ!

「あら、少し速かったかしら?」

 剛の乱暴なペンの音に、彩乃は注文をやめる。剛は余裕なのを伝えようと笑みを返す。

「もう何度もやっているんで慣れちゃいましたよ。もう少し速くてもいいですよ」

「そう、ありがとう」

「じゃあ、続き言うわよ。シーザードレッシング、チョコレート、旨味調味料、お茶、後は適当に残ってるお野菜を頂戴」

 カツカツカッカッ! カツ!

「はい、確認しますね。薄力粉、浅漬け、あんぱん、かっこつぶあん、かっこ閉じる」

「ふふっ」

「癖なんです! ……続けますよ。前回とは違うポン酢、ドレッシング、旨味調味料、お茶、残っている野菜。以上、八つで大丈夫ですか?」

「うーん、ちょっと待ってね。一、二、三……九。一つ足りない。えーと……チョコレート! チョコレートがないわ」

「え、あれ。ほんとだ。すみません」

「やっぱり、もう少しゆっくり言うべきでしたね」

 イタズラっぽく笑う彩乃に、剛は苦笑いしかできなかった。

「それじゃあ、商品をとってきますね」

 剛はレジを出、カゴをとり、商品棚へと向かう。彩乃はそれを笑顔で見守っていた。

「やっぱり、あの新商品のポン酢、ダメでしたか」

 調味料の置かれた棚の前に来て、剛は言う。

「そう……ね。美味しくなかった」

「そうですよね。すみません。僕もあの後買ってみたんですけど。あ、これは失敗したなーって、変なものをすすめてしまったなーって、後悔しましたよ」

「別にいいわよ。色んな味を知っていた方が料理のレパートリーも増えるし、いい経験になったわ」

「彩乃さん、料理上手そうですもんねー。すごいなぁ、目が見えないのに……あ!」

 しまった! と剛の顔が青ざめる。恐る恐る、剛は彩乃の顔を覗き込むと、彩乃は笑顔を返した。

「いいわよ、それぐらい。事実なんだし。それにね、私は目が見えなくっても、耳が聞こえなくっても、味も、臭いもわからなくっても、こうやって文章が教えてくれるから。別に……いいの」

「そ、そうなんですか……。あれ? 彩乃さん味覚も失っているんですか? それじゃあ……」

「だから、文章が教えてくれるのよ。美味しいものを食べたときはおいしい。まずいものを食べたときはまずいってね」

 彩乃は幼い頃、ある事件に巻き込まれて両親を失った。そのとき受けた心の傷が大きく、彩乃は視覚、聴覚、味覚、嗅覚を失った。それを補うかのように、彩乃の頭には文章が浮かぶようになった。文章が彩乃の身辺を描写することで、目や耳の代わりになった。

「たまに、変な説明が入るんだけどね」

「そうなんですかー。あ、そうだ。彩乃さんレタス好きですよね? 彩乃さんのためにとって置いたんですよ」

「え、本当? 嬉しい。こんな買い方してるとレタスなんて滅多に食べられないから……ねぇ、見せてくれる?」

 コツコツ、コツ。コツ、コツ。

 剛のいる商品棚へと向かう彩乃は、やはりハイヒールの音が気になった。

「そんなに気になるなら、履かないほうがいいんじゃないんですか?」

「……なに? 私はおしゃれをしちゃいけないの……!」

 突然、彩乃に睨まれた剛は驚いて、黙ってしまった。彩乃は文章を読んではじめて自分が感情的になっているのに気付く。

「ごめんなさい。いつも言われてるから……つい」

「いえ、僕のほうこそ、彩乃さんのことを考えずに……」






 ピロンピローン。

「ぷふっ」

「ちょ、彩乃さん!?」

 剛は入ってきた客が自分を笑ったのかと誤解しないか焦った。入ってきた客がガタイのいい、酒の臭いを振り撒いたいかついおじさんだったのが、剛の不安をさらに強めた。

「そんなに慌てると、余計に怪しまれますよ」

「え、あ……はい」

「それじゃあ、私はいつものイスに座っていますね」

 カウンターの中にイスがある。元々は店員が暇なときに座って休むためのものだが、彩乃がここにくるようになってからは、注文を待つ彩乃の席にもなっていた。

「ほぅ、兄ちゃん。楽しそうじゃないか。バイト先に彼女なんか連……


 ☆


 最低だな、私。
 結局、邪魔者になっているじゃないか。
 目が見えなくても、耳が聞こえなくても、文章があるから大丈夫だと。不自由なことがあっても、努力と工夫でなんとかひとりで生きていけると意気込んで……それなのに、今、私は……。

 最低だ。八つ当たりまでしてる。
 人は自分のことしかわからない。他人の痛みや辛さはわからない。そんなこと、ずっと前から知っていたのに……
 だから人と関わるのはやめようと思っていたのに。それなのに、今、私は……


 ☆


「彩乃さん? 彩乃さーん。朝ですよー」

「え、嘘。朝!?」

 ピクッと動く彩乃に合わせて、彩乃を覆う何かも一緒に動いた。それは、彩乃の動きに合わせてパリパリと音を立てる。

「あれ、これは……」

 最近設けられた防災コーナーに置いてある防寒シートだった。

「あぁ、それ。お買い上げありがとうございます!」

 剛の爽やかな営業スマイル。彩乃もそれに応えてにっこりと笑う。

「商売上手ね」

「冗談ですよ。それ、いつも僕が仮眠するときに使っているやつです」

「仮眠……?」

 彩乃はさりげなくカウンター内にあるゴミ箱へ目をやる。そこにはさっき開けたばかりの防寒シートの袋が捨ててあった。

「はい、仮眠です。仮眠。……そうだ! 今日の注文はもう揃いましたよ。後はお会計だけです」

「あ、そうだったわね。ありがとう。そう、あれから大丈夫だった?」

「はい、大丈夫でしたよ。酔っ払いの相手はよくしてますから……はい、どうぞ。五千二百五十八円です」

 剛から商品を受け取ると、彩乃は持ってきた大きめのバッグに入れる。剛もそれを手伝う。一通り詰め終わると、彩乃は硬貨ごと、紙幣ごとに分けられたサイフを取り出す。

「はい、五千二百五十八円丁度いただきますねー。どうぞ、レシートです」

「ありがとう。それじゃあ、またね」

「……あの、彩乃さん!」

 帰ろうとした彩乃を剛は呼び止める。きょとんと立ち止まる彩乃を前に、剛は力んだ。

 少し、間が空く。

「……彩乃さん、本当は見えているんじゃないですか?」

「え?」

 絶対に言ってはいけないことだった。
 幼い頃から彩乃は中途半端だった。
 五感のほとんどを失っている彩乃には不自由なことが多く、他人の助けが必要になることがよくあった。しかし、頭に浮かぶ文章のせいで一人でできることも多かった。
 何ができて、何ができないのか。
 他人にはそれがなかなか理解できなかった。彩乃への関心が低ければ、尚更理解できない。
 そういう奴らは決まって彩乃に「本当は見えているんでしょ?」と言った。
 その言葉はヒ素のように彩乃の心に残り彩乃を傷つけた。いつしか、その言葉は嫌いな人を判断するものさしになった。

「どうして……どうしてそんなことを言うの?」

 理由なんて聞く必要なかった。答えを聞く必要もない。もう、剛は彩乃を傷つける存在でしかない。
 彩乃はハイヒールの音も気にせずに、早歩きで出口に向かった。

「待って! 彩乃さん、何か勘違いしてます!」

「離して!」

 剛は慌ててカウンターを飛び越えると、彩乃の腕を掴む。彩乃はそれを振り払うと、剛を睨みつけた。そんな必要はないのに……。

「彩乃さんの目も耳も、ちゃんと機能しているんです! 彩乃さんの心が、見ることを拒否しているんです。彩乃さんは見たものや聞いたものを、文章というフィルターにかけているんです!」

「あなたは医者なの! それとも私なの!? どうして……どうしてそんなことがあなたにわかるのよ」

「それは……好きだからです。僕が、彩乃さんを、好きだから。だから、わかるんです。ずっと見て来たから……だから、わかるんです!」

「え……?」

 彩乃は固まった。何を言われたのか理解できなくて、何度も文章を読み返す。
 しかし、剛の答えは、答えとしては不十分だった。

「不十分なんかじゃないわ」

 剛が彩乃のことが好きだからと言って、彩乃の辛さがわかるわけじゃない。

「そう、無理かもしれない。でも、でも! 私のために、努力してくれた。わがままだって聞いてくれた。その気持ちを尊重しないなんて、それこそ最低よ」

「えっとー……誰と話しているんですか?」

「え? ……あれ。そういえば私、誰と話しているの? うーん……ちょっと、待っててね」

 彩乃はイスに座ると、目を瞑った。


 ☆

ーーあなたは誰なの?

 私は彩乃の幸せを誰よりも願うもの。

ーーどうして、文章を綴るの?

 彩乃のが幸せになるため。見なくていいものを見なくて済むようにするため。

ーー迷惑よ。

 本当に?

ーー本当。私がどれだけ辛い思いをしたと思ってるの?

 それはよく知っている。でも、見えていたらもっと辛い思いをしていた。そうは考えられない?

ーーそうだったかもしれないわ。でも、もういいわよ。私は、直接この世界を見たい。

 そんなことができるの? 私があなたを守ってきたから、今の彩乃がある。彩乃は、一人で生きていけるほど強くはないよ。

ーー知ってるわ。私が弱いことぐらい分かってる。そうよ、一人では何もできない。

 あ、そう。
 結局、彩乃は剛とくっつきたいだけなんでしょ?

ーーそうよ。それが悪いことなの?


 ☆


「お待たせ」

「あ、大丈夫でしたか?」

 大丈夫、と笑顔で立ち上がると剛の手を取る。

「私ね、さっきの言葉、すごく嬉しかった。さっきは気が動転してて、ひどいこと言っちゃったけど、私も剛さんのこと好きよ。私、剛さんを直接見たい」

「そ、そうですか。でも、今見られるのはちょっと困るかなー。だって、今僕顔真っ赤です」

「ふふっ、私だって真っ赤なはずよ。剛さんは私の真っ赤な顔を見てるんでしょ? そんなの不公平だわ」

「はい、すごく真っ赤です」

「もう……」

 二人は目を閉じると、唇を重ねる。
 長い時間の後、彩乃は目を閉じたまま離れた。

「ん、どうしたんですか?」

「剛さんの最高の表情を見たいと思って」

 照れ笑いをする剛をからかいながら、彩乃は剛への想いを爆発させる。剛を直視したいという想いで頭の中がいっぱいになる。


 ゆっくりと、目を開いた……







ピロンピローン。
メンテ
私がいるから ( No.170 )
   
日時: 2012/07/16 00:20
名前: If◆rf3Ncl3QUs ID:U08WaiXw

「人殺し!」
 きっとあなたは傷ついていました。だって、震えたでしょう。気にしないでください。本当に少しだけだったから、私にしか分からないはずです。
「寄らないで!」
 あなたを睨みつけて逃げていったあの女を、私は恨みます。今度会ったら殺してしまうかもしれません。口があるなら、もっと言うべき言葉があったでしょう。助けられたのに、あんな捨て台詞を残していくなんてあんまりです。信じられません。
「ごめんな。また血塗れだ」
 ひどいことを言われたのに、あなたは悪態一つつかずに、私に優しくしてくれました。あなたはいつもそうです。自分のことはそっちのけで、私や、人のためだけを考えています。
 あなたはとても優しい人です。でも、あなたはいつも独りです。一体誰があなたを犯罪者に仕立て上げたのでしょう。私はあなたを独りにさせたそいつを許しません。絶対に許しません。必ず殺してやります。大丈夫、私は人を殺すために生まれてきたんですよ。仕損じたりはしません。心臓を一突き、それで終わりです。ああ、いけませんね。あなたを苦しめた輩は、存分に苦痛を味わわせてから殺してやらないと。それも任せてください。誤って急所を突くようなミスは犯しません。これでも私、優れものなんです。
 長い間生きてきました。多くの人と旅をしてきました。ですが、あなたほど素敵な人を、私は知りません。人の世界は理解できません。どうしてあなたのような人を独りぼっちにさせてしまうのでしょう。どうしてみんな嘘を簡単に信じてしまうんでしょう。本当は皆みんな、私の力で殺してやりたいです。だって、人を殺すために生まれてきた私には、あなたのためにそうすることしかできないんです。だけど、しませんよ。あなたは悲しむでしょう。私には分かります。あなたはそういう人です。ずっとあなたの傍にいたから、分かるんです。
「あの町には戻れないな。今度はどこに行こうか」
 悲しい声でした。とても辛い声でした。だから私は決めました。ずっと黙っていようと思ったけど、止めにします。受け入れてくれなくたって、後悔はしません。気持ち悪いと捨てられたって、我慢します。恨んだりなんてしませんよ。
「カタ、カタ、カタ」
 好きです、好きです、好きです。
「カタ、カタ、カタ」
 好きです、好きです、好きです。
「カタ、カタ、カタ」
 好きです、好きです、好きです。
「カタタタッ」
 好きなんです。
 長い間生きてきました。多くの人と旅をしてきました。でも、あなたほど好きになった人はいません。そしてこれからも、あなたほどに好きになる人なんていないです。一番傍にいる私が、ちゃんとあなたのことは分かっています。あなたは独りではないんです。私が居ます。
「どうした?」
 決死の覚悟で、声の限りに――私に声はないんですが――叫びましたが、やっぱりあなたには伝わらないようです。だけど、分かってほしい。どうしても分かってほしい。
「カタ、カタ、カタ」
 好きです、好きです、好きです。
「カタ、カタ、カタ」
 好きです、好きです、好きです。
「カタ、カタ、カタ」
 好きです、好きです、好きです。
「カタカタカタタ!」
 大好きです!
「えーと」
 あなたは私の声を考えてくれました。ゆっくり時間をかけて考えてくれました。やっぱりあなたは優しい人です。私を選んでくれたのがあなたで、本当に良かったと思います。
「……励ましてくれてるのか?」
 ちょっと違いましたが、それだけでも伝わったのなら、よしとします。本当は分かってほしかったんですが、私に声はありません、仕方ないですね。あの女よりも私の方がきっと上手く口を使えるのに、神様もお馬鹿さんです。
「ありがとうな」
 あなたが笑ったのが分かりました。それだけで、もう、何だってよくなりました。少しでもあなたが元気になってくれたなら、私は幸せです。
 誰もいなくても、私がいます。人間のように声はかけらてあげられないし、抱きしめてあげることもできないけれど、力の限りあなたを守ります。誰にもあなたを殺させません。

「カタカタ、カタタタッ、タタ」
 人でなくて、ごめんなさい。
「タ、カタタタカタッ、カタタタン」
 でも、私がずっと、傍にいますからね。
メンテ
Re: 【八月期のお題は「過去のお題から三つ選択!」】お題小説スレッド【七月期お題「擬音」:作品批評期間】 ( No.171 )
   
日時: 2012/07/16 22:12
名前: 企画運営委員 ID:PLuaRPfk

作品のご投稿お疲れ様でした。
16日(月)〜31日(火)は批評期間です。作品をご提出なされた方は必ず全作品の批評を行ってください。批評だけのご参加もお待ちしております。


>第15回『擬音』参加作品(敬称略)

>>164 にゃんて猫:不協和音
>>165 空人:オオカミと七匹の子ヤギの童話風アーリオオーリオ 〜時計仕掛けの語りに添えて〜
>>166 風雨:バカ
>>167 sakana:意味知らず記号成る
>>168 四角定規:幽霊が見つけた仕事
>>169 朔乱:まだまだ続くよ!
>>170 If:私がいるから
メンテ
Re: 【八月期のお題は「過去のお題から三つ選択!」】お題小説スレッド【七月期お題「擬音」:批評投稿期間】 ( No.172 )
   
日時: 2012/07/22 08:29
名前: にゃんて猫 ID:Sz3NS9jQ

皆様投稿お疲れ様です。今回はいつになく寂しいお題となりました……って内容の批評原稿書いてたらまさかの最終日怒濤の連続投稿。
もし私一人だけだったらどうしよう、とか思ってたのが阿呆らしくなりましたwよくよく考えたらそんなことあり得ないですよね。
それではいつも通り批評もとい感想というか言い訳の時間に入りましょうか。とっとと言い訳なしで堂々と晒せる作品を書けるようになりたいものです。(汗

※敬称略



空人:「オオカミと七匹の子ヤギの童話風アーリオオーリオ 〜時計仕掛けの語りに添えて〜」
童話をモチーフにした短編という感じが頭から尾先まで一貫していて、雰囲気が安定してたので読みやすかったです。
反復法のような言葉の掛け合い(例「ああ、〜」「はい、〜」)
特に、随所に出てくるチックタック チックタック ボン ボン ボーンはとても楽しかったです。演出としても最高でした。
会話以外の全ての文で空白を設けたのも詩的な感じがして良かったと思います。ラストも後味が悪い風味が出ていて良かったです。
唯一気になったのは、この物語の語り手のことでしょうか。
「この家に来てはじめての私の仕事を、この家の家族が見つめます。」
つまり時計だと言いたいのでしょう。ですが、所々で子ヤギたちと同化しすぎている感じがしたのが気になりました。あくまで「感じがした」だけですけど……。
安心のストーリーテラー。次回も楽しみです。



風雨:「バカ」
車内アナウンスって、地方によって違うんですかね。それとも路面電車と電鉄の違いでしょうか。
私の地方の車内アナウンスと違ってたのでふと気になりました。誰か教えてください(ジブンデシラベロ
セイラちゃん可愛ス。ちょっと惚れそうになりました。リアルでこんなに純粋な恋をしてる女の子を見かけないってこともありますが。
部分部分で描写が足りないかな、と思ったりする所もありましたが、全体の流れや雰囲気がやんわりカバーしてくれているみたいで、あまり気になりませんでした。
むしろ多少描写が薄い方がテンポ良く仕上がって良かったのかな、と。技法に感嘆させられるばかりであります。
私もこんな恋がしたい(殴(蹴(貴様にそんな恋ができるわけ(ry



sakana:「意味知らず記号成る」
思ったよりも早いご帰還で何よりです。皮肉でなく。これは寂しくなるなと思わせておいてフラっと戻ってくるあたりが流石sakanaさん(違
そしてごめんなさい……私にはあんまり内容が理解できませんでした。描写が希薄なのではなく、単に私の読解力不足です……。
ただ、要所から感じられる壮大な時間の流れを汲み取った感じは読み取れました!(思い違いだったらごめんなさい)
次回までに、私も読解力を上げておかなければ……ちなみにsakana様の作品を理解できたことが今までに一度もありません。本当に精進します。ごめんなさい。
もっと真面目な批評ができるよう、頑張ります。



四角定規:「幽霊が見つけた仕事 」
四角定規さんktkr。他の方の作品がどことなく幻想的というかゆったりしているのに比べて、こちらはまるで道を指し示すような真っ直ぐな作品だったので印象深かったです。
幽霊になった「私」がやるべきことを見つける話。何とも心を弾ませてくれました。
気になったのは「理由の3つ目」です。前述されている二つは理解できたのですが、これだけはイマイチ腑に落ちませんでした。というのも、「死んだ記憶」が無くなっているにも関わらず、「死んだ実感」はある。ということが矛盾しているように見えたのです。
実際に死んだことがないので定かではありませんが、仮に矛盾しないとしてもその辺りの描写が足りていない気がしました。
板の登場も唐突で、もう少し何かプラスαが欲しかったです。ただ、込められたメッセージは伝わったので、そういう意味では十分な出来ではないでしょうか。
次回のお題も期待しています。



朔乱:「まだまだ続くよ!」
始めに私が書こうとしていた話ととてもよく似ていたのでビックリしました。まぁここまで上手い構成ではありませんでしたが……(汗
ビロンビローン。やハイヒールの音、何よりも剛クンとの会話が聞こえているにも関わらず、中段で「視覚、聴覚、味覚、嗅覚を失った。」とあるので「おや?」と思ったのですが、後半で納得。
頭の中に文章……私には到底理解できない感覚です。いつかそんな神をも超越した感覚を手にしてみたいものです。
気になったのは前半の「いらっしゃいませ、こんばんは。彩乃さん? また、ですか。そんなに面白いんですか?」の記号二つくらいですか。やはり上手いです。
それにしても本当に似ています。特にラストが(ry



If:「私がいるから」
えーと、主観は殺人に使われた刃物ちゃんってことでいいんですかね。ですよね?
Ifさんの作品は長いイメージがあったので、ちょっと短めなのが意外でした。初めて読んだ時は「何だこれ……」ってリアルで言ってましたが今は多少は、理解、できている、はずだと、信じたいです……(泣
「カタ、カタ、カタ」が「 好きです、好きです、好きです。」とリンクしているのが素敵でした。あぁなんて心暖まる話でしょう!
初っぱなが「人殺し!」だったのが、最後には忘れさせられているのにも感嘆しました。文法的に気になった点? あるわけ無かったw
sakanaさんと同じく、Ifさんの作品も理解が追いつかないことが多いです。(勿論十割私の所為です)
人の作品からもっと沢山のことを感じ取れるようにならなければ。。。次回も期待しています!

 

自作:「不協和音」
とにかくお題の消化が難しく、結局「お題:擬音」→「要は音でしょ?」→「やかましい音とか」→「じゃあ不協和音で」って感じになりました。
始めの音だけの部分は、聞こえる音だけで話を書こうとして失敗したものの名残です。
消そうかとも思いましたが、文章での入りに手間取ったので結局手つかずで残しました。というか、残っちゃいました。
随所に誤字脱字が多数ある通り、今回は勢いだけで書いた作品となっています。小説の基本ルールさえ守っているかどうか怪しいです。
段落始めの空白や「!」「?」の多用など、まだ改善できていない部分は多々とありますが
それらの文法事項については他の方々のご指摘に期待してここではあまり触れないでおきます。(お題ってどちらかというとそこら辺の方を指摘し合う物ですけど)
今回は散文詩みたいな感じでひとつひとつの思考が独立して(「。」で区切って)表現されるようにしました。ほら、思考の擬音化みたいな(何じゃそりゃw
縛りじゃないですけど、何となく長い文章は控えめに。随所に「ちょwwおまwww」みたいに感じる表現も飛び交っております。
主人公の女の子は私が病んでいたころがモデルです。(性別も違うし、恋もしていませんでしたが)
ピアノは今でも習っています。Y○MAHA音楽○室の人にはお世話になりっぱなしです。ちなみに中岡さんほど好きじゃないです。むしろ練習めんどくさ(殴
盲目の女の子かな?と思わせておいて、そうじゃなかったって感じが伝わったならまぁ成功です。(始めは盲目で通す予
でしたが、色々問題になるかと思って止めました)
今回も全然お話にならない自己満足の塊みたいな作品に仕上がりました。皆さんどうぞ好きなだけ罵って馬鹿にしてください。冗談でも褒めないでくださいw
次回は頑張ります。と、この台詞も最早何度目になりましょうか……w
連載やリレー、何よりリアルの事情も多々あって中々まともに推敲できてない日々です。
こんな駄文ばかり投稿することになるのなら、いっそ止めようかとも考え出す今日この頃。
皆様の批評だけが頼りです。相変わらずのmy world暴走小説ですが、どうかよろしくお願いします。





とにかく自分の読解力の無さに悩まされたお題でした。
次回のお題は「過去から三つ」ですか。今まで書いたことのないお題を三つチョイスしようと思っていますが、果たして書けるのやら(--;)
それでは、次回も楽しみにしております。(主に他者様の作品を)
でわでわ。


追伸:22日 改行がおかしかったことの修正
メンテ
Re: 【八月期のお題は「過去のお題から三つ選択!」】お題小説スレッド【七月期お題「擬音」:批評投稿期間】 ( No.173 )
   
日時: 2012/07/22 01:27
名前: 四角定規 ID:mR60VafQ

どうも。

初めての投稿でしたが、書いていて楽しかったです。
ただ、やはり皆様と比べると遥かに見劣りしていてお恥ずかしい。

にゃんて猫様:不協和音
非常に濃い心理描写がとても良かったです。
最初の、男の子が出した不協和音、クラスメートと中岡さんの不協和音。
そして、最後に出てきた二人の不協和音はそれぞれ違う意味があるようで。
同じ言葉でも意味は違う、言葉は面白い。他にも不協和音はあったのでしょうか?私のことなので見逃していそうです。

空人様:オオカミと七匹の子ヤギの童話風アーリオオーリオ 〜時計仕掛けの語りに添えて〜
淡々と静かに進んでいく、独特の味というか雰囲気が心にスタッと入ってくる感じがしました。
恐ろしいことが行われた、はずなのに読み終えた後は妙にすっきりとした気分でした。
なんともいえない奇妙な魅力を感じました。

風雨様:「バカ」
最後の二人のやりとりに静かな暖かさを感じました。
タイトルのバカ、という言葉がこの話にとても似合っていると思います。
勉強や頭のよさなどについての会話等が前半にありますが、高本さんが見ていたのは勉強意外の部活のことだった。
という見ていたものの違いがとても良かったです。

sakana様:「意味知らず記号成る」
アンディー=流暢な日本語を喋る異国人?
アンデー(アンディー?)と会話している二人は、おさげの女性と、男性?
男性が死んでくれてありがとうと言っていうのは男性が既に死んでいる(幽霊)だから?
女性は自分も死んで幽霊になろうとした?
多くのことを想像してしまう話でした。
もう少し登場人物の情報が欲しいと思ってしまう私は想像力不足なのでしょう。
それにしても楽しそうな3人の会話ですね。

朔乱様:まだまだ続くよ!
タイトルの意味は二人の物語がまだまだ続くという意味でしょうかもしそうであるのなら是非読みたいですね。
話を読んでいると、時々小林さんも文章が見えているのでは?と思える場面がいくつかありました。
例えばハイヒールの音を気にする前のほうの場面です。
……深く考えすぎでしょうかw
最後にでてきた文章を綴ってきた「あなた」はもしかして彩乃さん自身なのでしょうか。
文章が見えるという設定が上手く生きている思いました。

If様:私がいるから
読み終えた後に、タイトルはこういう意味かー、と勝手に納得してしまいました。
静かに、しかし確実に狂っている「私」、でも一途なところが少し可愛らしいですね。
話を読んでいると、「あなた」に握られた「私」が人を殺したので「あなた」が疑われている?
とか、「私」はいったいどこから来た何なのか、とか色々なことを想像します。
こういう想像する楽しさがある小説だと思いました。
残念なのは私に想像力がないことです。

自作:幽霊が見つけた仕事
スルーで。

批評というより感想になってしまって申し訳ありません。
初めて参加しましたが、やはり難しいですね。
次回参加するかどうかは未定です。
では。
メンテ

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