ホームに戻る > スレッド一覧 > 記事閲覧
[4993] 【2016年度】お題小説スレッド【お題「去る」作品投稿期間】
   
日時: 2016/01/12 23:57
名前: 企画運営委員 ID:7PNV346o



『お題小説スレッド』へようこそ。こちらはあるお題に沿って読みきり小説を書き、その作品をみんなで批評し合う場です。
 初心者も上級者も関係ありません。うまくなりたいとお思いの方であれば、だれでも自由に参加することができます。一生懸命執筆し、一生懸命批評して、小説の技術を高め合いましょう。
 皆様のご参加をお待ちしております。

――――――――――――――――――――

>>002 【ルール説明】:必ず熟読して下さい。(※内容、一言の箇所を訂正しました。ご確認ください)
>>003 【批評のポイント】:批評をする際のポイントをまとめたものです。
>>004 【イベントルール説明】:イベントに関するルールです。必ず熟読してください





▼お題:第32回のお題は「種」です。
 二月に種をまくのか? と思いましたが、調べてみるとじゃがいもは二月にまくそうですね。……さらに調べてみると一年中、なにかしらの種をまいてるみたいです。
 そんなことは置いといて。「種」というお題には「たね」以外にも色々な解釈があると思います。みなさんがどのような作品を投稿してくるのか、楽しみにしております。
※第30回の作品投稿期間は2月1日(土)からです


▼お題:第33回のお題は「姫」です。
 三月なので(笑)
 というのはよくわかりませんが(ひなまつりだから?)「ひめ」というのは可愛らしい語感ですよね。私は緑の黒髪をした和服姿が思い浮かびます。桃色が似合いますよね。桃色……やはりひなまつりでしょうか。それでは、みなさんの作品お待ちしております。
 
※第31回の作品投稿期間は3月1日(土)からです


▼お題:第34回のお題は「嘘」です。
 嘘でした。


▼お題:最終回のお題は「魔法」です。
 奮ってご参加ください。


▼お題:第36回のお題は「友情」です。
 ネタでした。


▼お題:第37回のお題は「音」です。
 奮ってご参加ください。



▼日程(第32回)

1月1日       :お題発表
2月1日〜15日   :作品投稿期間
2月16日〜28日  :批評提出期間


▼日程(第33回) 

2月1日     :お題発表
3月1日〜1月15日 :作品投稿期間
3月16日〜30日 :批評提出期間


▼日程(第35回) 

6月1日     :お題発表
6月1日〜7月31日 :作品投稿期間
8月1日〜   :批評提出期間



▼注意もしくは削除対象となるお書きこみ
・荒らし
・荒らしへの反応
・自分や他人の小説の宣伝
・雑談、チャット化
・ルールに反するもの
・管理人が不適切と判断したもの

――――――――――――――――――――

>目次 >>001


>第32回 お題『種』参加作品(敬称略)

>>404 sakana:シロハの辻褄
>>405 伊達サクット:赤い種、青い種

================================================================================

▼リンク
小説講座/雑談所』(お礼や言い訳等はこちらへ)
旧お題小説スレッド』(前スレはこちらから)
ツイッター』(朔乱のアカウントです。お題の告知などをしています)

管理人:If 空人 朔乱  補佐:伊達サクット
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

Re: 【十月期のお題は「ジャンケン」】お題小説スレッド【九月期お題「  」:作品投稿期間】 ( No.205 )
   
日時: 2012/09/03 00:15
名前: 企画運営委員 ID:VI/BkkEE

第17回「  」の作品投稿期間となりました。
作品投稿期間は9月1日(土)〜9月15日(土)までとなります。
ルール説明>>002 を熟読の上、ご参加ください。
皆様の力作お待ちしております。
メンテ
(再投下すいません)九月期お題「  」:思い出のパン ( No.206 )
   
日時: 2012/09/16 11:37
名前: ステハン太郎 ID:Jzy3psVY

 テレビ番組が終わった後、俺はテレビを凝視した。

 ◇

 中学2年生の夏、親の仕事の関係で引越しをすることになりました。全く違う地域で、方言も全く違い、うまくなじめるか心配でした。
 転校生は前で挨拶して先生に「○○の隣があいてるから座りなさい」と言われるのがおきまりです。ただしそんなに都合よくあいてる席などあるのかと考えると不安でした。
「よ、よろしくおねがいします……」
「そ、そうやな……席が空いてないから机用意するわ、△△の後ろに座れ」
 あいてませんでした。「あ、はい」と答えたあと今更ながらクラス中の視線を感じて恥ずかしくなりました。

「どこから来たん?」
 授業終了後、クラスメイトからそう訊かれました。私はそっけなく「東京」と答えると「へえーそうなんやあ」と笑いながら相槌を打ちました。そのままの笑顔で「よろしく」と言われると、なんだか嬉しい気持ちになりました。
 嬉しいのは、そこまででした。

 クラスにも馴染んできたと思ったある日、突然クラスメイトが話しかけてきました。
「お前、東京やからって調子乗っとるんとちゃう?」
 何のことか分かりませんでした。ただ彼はそう一言私に静かに話しかけた次の日、クラスは一転して私をいじめにかかりました。
「この仕事よろしくー」
 私は引き受けました。これ以上いじめられないようにしたいという思惑がありました。仕事と言っても雑用で、私がやっているのは「パシり」に近いものでした。
 ただ私がやるというのが相手にとってみれば非常に気持ちのいいものらしく、仕事を快く引き受ければ引き受けるほど相手は調子に乗っていきました。しかし私には「あなたこそ調子に乗っているんじゃないですか?」などと訊く勇気は到底ありませんでした。
 いじめはどんどん加速しました。
「スリッパが……ない……」
 クスクス笑う声。哀れに見られている。笑われている。哀れだと笑われている。私以外が全て敵に転じました。笑うなッ! と心で叫んでも届くはずがありません。かといい口に出す勇気もありません。
 結局一日靴下のまま過ごしました。担任もスリッパ無くしただけだな、と見ていただけで何も動きませんでした。クラスメイトには「東京から来とんのにスリッパもない貧乏人?」と嘲笑されました。
 教室からでたあとは嗚咽で声も出せませんでした。声を出そうとすると嗚咽が同時に漏れひどく情けないからです。
「――ウゥッ……!」

 数日たったある日、状況は一転し、担任がいじめに気付き私を除くクラスメイト全員を一喝しました。私は何故だろうと思いました。とりあえず救われた、それだけで胸がいっぱいで嗚咽が漏れそうになりました。
 誰だろうと思い帰り道を歩いていると、一人の生徒が来ました。最初に話しかけてくれた子でした。いきなり謝罪すると、いじめをとめられなかったことや自分も一緒に見ている側になっていたこと、ものすごい勢いで語り始め泣いたものだから、私は「いいよいいよ」と肩をたたきました。
 そうすると、あの子はコンビニで温めたパンを私にくれました。とても温かくて、おいしくて、忘れられません。

 いじめはなくなりました。孤立はしていましたが、いじめられることはありませんでした。
 先生に言ってくれたあの子に感謝です。今も感謝しています。
 私は中学を卒業し、地元の進学校に通いました。この学校に通っているクラスメイトはいないので、とりあえずよかったです。あの子とも離れましたが、これでよかったのかなあと思います。

 あの子がくれたのは私の好きなパンでした。そして、ちょうどいい温かさでした。
 おいしすぎて、とても温かくて、涙がこぼれました――。
 彼女の気持ちもありがたかったです。しかしそれよりも。あのパンのおいしさは今も忘れません。
 そんな温かいパン、おいしいパン……。それは――ハスコの熟成パン! 一斤100円!

 ◇

 思わずテレビを凝視するぐらい、考えさせられる、深い内容のCMだった。だが……。
「パンの会社がいじめという題材をあつかうのはいけないだろ……」
 俺はそう思った。
メンテ
ロリ体型宇宙人系美少女を手懐けるにはカップ麺に粉末唐辛子を盛れ ( No.207 )
   
日時: 2012/09/15 23:51
名前: にゃんて猫 ID:tYs9nnSo

 それは、或る残暑の厳しい夏の暮の出来事――――
「    」
 少女が口を開いた。
「何だ?」
 その姿を見た少年がいかにも「面倒くさい」表情をしてそちらを見る。二人の外見年齢差は小学校高学年と高校生くらいある。現役高校生とおぼしき少年が顔を上げて振り向いたのを見て、小学校高学年並の背丈をた少女が不満げに口をへの字に曲げた。その首にはネックレスをかけた痕のような、少し赤い環ができている。
「(……お腹すいた)」
「顔に出てるぞ」
しばしの無音の後、少年の声だけが部屋に響く。少女は自分の脚の前に「紀州みかん」と書かれた空のダンボール箱を持ってくると、箱の上面をばんばんと叩きながら口を開いた。
「(……カニクリームコロッケ食べたい)」
「ンな上等なモンを俺にせがむたぁ、いい度胸じゃねぇか」
大仰に溜息を吐きながら少年が言う。少女は口こそ動かしているが声は発さない。第三者にはそこに会話があるようには思えない。
「(む……ならカニクリームスパゲッティ)」
「知らん」
即答。
 その瞬間、少女を乗せてダンボールが浮いた。磁石の同極が反発した時のように、無音で浮遊を始めた。くるくる廻る「紀州みかん」の文字。いっしょになって廻る少女が部屋の天井に頭から激突し、ぐわりぐわりと揺れて高度を下げた。
「(……カニクリームパイ)」
「お前どんだけカニクリームにこだわってんだよ」
こだわりは大事。
「(……カニクリームパフェ原寸大タワラカニ殻付き大盛り)」
「いやいや絶対無いだろそんな料理……今は市販のカップ麺で我慢しろ」
それを聞いて、それまでばんばんと鳴っていた空き箱を叩くような音が途絶えた。代わりに、ダンボール少女がふよふよと急降下し、少年の頭の上に激突して跳ねた。跳ねたダンボール箱はそのままビーチボールのように落下していき、部屋の隅にぴちょんと着地した。
「(むぅ……)」
「そんな顔しても無駄」
「(我をいじめて楽しいか!)」
少女がダンボールを持ち上げて少年に投げつける。あまりに非力なその腕力故、「紀州みかん」は2メートル離れた少年に届く前にぼとりと畳の上に落ちた。
「いじめてねえし。……文句あるんなら食わなくてもいいんだぜ?」
それを聞いて、少女が一瞬言葉に詰まる。が、すぐに余裕を取り戻し、どこか達観視したような態度で口を開いた。
「(ふん、我は寛大だから。その変なぬるぬるした『かっぷめん』でも我慢できるもん)」
少女の方をじろりと睨み、少年がまた溜息を吐いて言った。
「お前みたいな奴を世間じゃ『居候』っつーんだよ」
「(……いそーろー……?)」
目に見えて言葉の意味が分かっていない様子で少女が首を傾げる。
「あー、いや……もういいや。とにかく飯にするぞ」
そう言って少年はカップ麺を二つ、ちゃぶ台机の下から取り出した。お湯はもうすでに沸かしてある。開け口を五分の一くらい開けて、やかんでお湯を流し込む。雑誌や薄い参考書でフタをし、少女にストップウォッチを渡す。このロリっ子少女はこういう物に対しては純粋で、糞真面目に三分計ってくれるのだ。読みさしの漫画の続きを読んでいると、少女がダンボールをばんばんばばん! と叩いた。三分経ったのだろう。
「(三分経った!)」
少女がうれしそうに飛び跳ねる。くるくる廻る「紀州みかん」。何故か非常にウザい、やめろ。
「はいはい、そんじゃまいただくとしますか」
「(いただきますっ)」
何だかんだ言ってうれしそうに、少女はカップ麺を食べている。箸が使えないのでスプーンを使っているが、掬うたびに自重で落ちていくのを見て涙目になっている。見ていて非常に気味が良い。
 かく言う少年はまだ麺に箸をつけていない。ちゃぶ台を離れ、袋や瓶が散乱している調味料棚の中から、赤い粉状のものが入った袋を探していた。見つけ出したそれを持って帰って、カップ麺の上にはらはらとふりかける。
「(その袋は、何?)」
赤い粉末を麺の上にふりかける俺を見て、少女が麺を掬う手を止めて不思議そうに見入ってくる。
「粉末唐辛子。俺、辛くないと食べれないからさ」
「(……我に)」
少女が首をもたげて口を開く。
「あ?」
「(我に貸せ)」
右手の平を前に広げて、少女が真剣な眼でこちらを見つめてくる。
「……はぁ?」
「(我にそれを貸すのだ)」
少女の口元は少しにやついている様にも見える。さっき「真剣」と言ったが、七割方は単なる好奇心だろう。何しろ彼女はまだ地球に来て日が浅い。
「言っとくけど、ホントに辛いからな? 醤油とか塩の比じゃないんだぞ」
「(早く貸すのだ)」
ここまで来るともう何を言っても聞かないだろう。少年はあきらめて腰を上げ、もう一袋調味料棚から取ってきた。
「後悔すんなよ……ほら」
そう言って、少女の手の平に「超激辛! 粉末唐辛子 ゲキカラパウダー増量!」とロゴの入った袋をのせる。少女はうれしそうにそれを受け取ってビニールの端に手を当てて――――
「(……切り込みがない)」
絶望した面持ちで少年を見つめてきた。
「んー? 力入れたら切れ込み無くても開けれるだろ」
少年が「大したことない」といった態度で軽く視線を流す。
「(切り込みがないの!)」
少女がダンボール箱をばんばんと叩きながら少年をせがむように見つめる。見つめられた少年は苦しそうに視線を外した。
「(うう……ううううううう)」
少女がまたしても拳を震わせる。その大きなつぶらな瞳から雨粒大の涙が溢れ出したところで、ようやく少年が動いた。
「わ、わわわ分かった、分かったから泣くな。まるで俺が泣かしたみたいで罪悪感あるから」
細い肩を叩き、精一杯慰めるフリをする。その瞬間、少女がぴたりと震えを止めて上目遣いに少年を見つめてきた。
「(じゃあ早く開けて)」
その豹変ぶりに、少年の表情が凍り付く。この『してやられた感』に満ちあふれた怒りを今すぐ目の前の少女にぶつけてしまいたい衝動に駆られる。……が、何とか自制してそれを抑え、苦虫を噛み潰したような顔で
「……はいはい」
嫌みに満ちた返事をして、これを最大限の反抗とした。
袋を開けてやり、少女に手渡す。少女は満足げに袋をひっくり返して―――――袋の中の赤い粉末を全部カップ麺の中にぶちまけた。

「(…………。)」
「……全部、入ったな」
少年がおそるおそる少女の様子を窺う。項垂れたその表情は、長い銀色の髪に隠されていてよく見えない。
永遠に思える時が経ったような感覚が不意に途切れた。少女が粉末唐辛子一袋分入りのカップ麺をそっと手に取る。
「(……食べる)」
「……は?」
はじめ、少女が何を言ったのか理解できなかった。
「(……食べる)」
「いやいやお前……自殺行為だろ? お前の場合特に」
何しろアジの塩焼き程度で辛い辛いと言う少女である。そんなヤワな舌で激辛唐辛子に挑んだところで結果は――――
「(……食べるったら食べるのだ!)」
ここまで来るともう何を言っても聞かないのは前述の通り。もうどうにでもなれといった心境だ。
「……分かったよ。勝手に食え。んでもって舌焼いてろ」
「(……ぜんぶ、全部食べちゃうんだから!)」
一人奮い立つ少女を哀れに見つめて、少年は一言「はいはい」とだけ返事をした。



 あの馬鹿はまだあの自称宇宙人の可愛い女の子を部屋に住まわせているのだろうか。今年の夏に十七になった菅野あや(すがのあや)は古いアパートの一室、その玄関前に立ちながら考えていた。インターホンは壊れていて、チェーンや鍵もかかっていない。いつでも入ることができる。
 マジックで雑に書かれた「聖」の字があの憎たらしい少年の顔を連想させる。あぁ考えただけで反吐が出る! でも、何かあるとその度に気になってしまう。親友に聞いたら、どこか怪しい眼づかいで見られたが、別に気があるとかそういう類のものではないと思う―――たぶん。
 玄関の扉を前にして少し、聞き耳を立ててみる。

「――――お、おい。大丈夫か? あ、あー。そりゃまぁ辛いわなぁ、うん。辛い辛い……怒るんじゃねえ! ……放っといた俺も悪いけどさ、自業自得だろ。……だから自業自得だっつの! うっせえな畜生! ああもう、それ貸せ。俺まだ口つけてないから、俺の食べろ…………俺のを食べろって、言ってんの……ああどーぞどーぞ! ……で、どうなってんの?」


 …………傍から聞いてたら、ただの奇人変人だ。五秒から七秒おきに相づちのような言葉をうち、言い争いをしているみたいに怒鳴っている。電話と考えられないわけではないが、中から響いてくる空き箱を叩くような音やドンドンと足をならす音などが生活感丸出しの感じを演出しており、どことなく奇人の空気を外へとさらけ出している。
(あの馬鹿……阿呆丸出しじゃない)
 他人事なのに自分の恥のように感じてしまうのは、腐れ縁だからだろうか。まったく自分も大変な幼馴染みを持ったものだ。
「……寄らずにそのまま帰ろうかとも思ったけど、来て正解だったかな」
 盛大に溜息と共に肩を落とし、あやは扉を開けた。



「ああどーぞどーぞ!」
「(……ありがと)」
 にこりと微笑むロリ美少女一名。少年はおそらく瞬殺された模様。
(あー、くそ。何でこんな時だけ可愛いんだよ……テンション狂うっての)
 正直言って、少年・聖和人(ひじりかずと)は一週間経った今でもこの少女の……否、この宇宙人の行動に振り回されている節がある。
 一週間前、空港からアパートまで帰ってきた和人は、突如眩しい光に遭遇した。光る円盤状の何か――――その中から箱のような物が落下して、道路の上に落ちた。光る円盤はその後どこかへ行ってしまい、和人は重いダンボール(紀州みかん)をおそるおそる開けた――――後のことはご想像願う。とにかく何だかんだでウチに居座ることになったこの自称宇宙人の少女の名は「ミリア」と言うらしい。(ただしこれは地球上での名前であって、本名は別にあるらしい)一見どこにでも居るようで居ない低身長童顔ロリっ子なのだが、和人以外の人間が彼女と遭遇したらおそらく彼女が『異常』であることに気づくだろう。
 何故かは、すぐ分かる。

「……で、どうなってるんだ?」
粉末唐辛子10g入りの即席ラーメンをすすりながら、和人はミリアに尋ねた。
「(……じゅるるるるるr……何が?)」
カップに口をつけて夢中で麺を吸っていたミリアが顔を上げて尋ね返す。少し辛そうだが、先ほどのように泣き喚くことはないようだった。
「地球侵略計画」
その単語を口にした瞬間、ミリアが麺を咽に詰まらせてむせ返った。げほげほと咳をして、それから落ち着かせるように深呼吸をして口を開いた。
「(……け、計画通り進行中なのだ)」
あからさまに動揺が顔に出ている。宇宙人と交信するのは難しいと聞くが、もし全銀河系の宇宙人がこんな感じだったら交信はおろか意思疎通も容易だろうに。
「お前こっち来てもう何日目だ? ……いや、もう日数で数えるのは無理だな」
「(……千三百時間以上経過)」
「要はもう二ヶ月弱ここに居るってことだよな」
「(……む)」

「一日中ごろごろしてダンボールと戯れてこの部屋に居座ってタダ飯まで貰って……お前何がしたいんだよ」
「あんたもね。毎日家でぐうたらしてばっかり。頭しか脳が無いのに、自分で腐らせてるみたいなもんじゃない」

 呆れた和人の声に被せるようにして、突如背後から声がかかった。和人が驚いて振り返ると、薄手の白シャツを着た幼馴染みの少女が仁王立ちになって立っていた。
「あ……あや。お前いつの間に」
「玄関の鍵かけてなかったでしょ。不用心なんだから」
勝手知ったる他人の家、といった態度であやはちゃぶ台の前に座っているミリアを見て言った。
「ミリアちゃんこんにちは。たぶん無いとは思うけど、和人に襲われたりしてないわよね? 身の危険を感じたらすぐにその鼻の骨へし折っていいからね」
あやの言葉に、ミリアが頭を大きく振って頷く。純粋無垢な二人の笑顔が、和人にはこれ以上なく凶悪に見えた。
「こんなムサい野郎といっしょに暮らすのも肩が凝るでしょう? まったく、私も一人暮らしだったら良かったのになぁ」
あやは現在母親と弟といっしょに近郊の一戸建てで三人暮らしをしている。おそらく家族に下手に迷惑をかけたくないのだろう。
「    」
ミリアはとてもうれしそうに笑っている。和人には「(そう! このトーヘンボクバカアンポアンタンときたら……)」と聞こえるが、あやには聞こえていない。否、『俺以外の人間はあやの言葉を聞き取れない』。光る円盤とこの『奇異な特徴』だけが彼女が宇宙人だと推理できる部分だ。もっとも、光る円盤ほど説得性は無いように感じるが。
「ホント、何であんただけなの? 私もミリアちゃんとお話したいのに」
「俺も知らないよ……多分、ファーストコンタクトの時に、脳に変な電磁波喰らったからじゃないかな」
今でも夢だったのではないかと思う。あの光る謎の円盤。巷ではUFOなどと呼ばれているあの未確認飛行物体が本当に実在していて、さらに和人自身がそれに遭遇するなど考えたこともなかった。もともと和人は論理的で、オカルトや超科学的なものなど確定的証拠の無い物については無関心なのだが、流石に間近であれを見せつけられると、否応なしに考えが変わってしまった。
「    」
ミリアがダンボールを抱えてすくっと立ち上がり、あやに抱きついた。
「『私もお前みたいな阿呆じゃなくてあやと喋りたい?』あーはいはい、勝手にしてろ」
「あ、和人通訳できるじゃん。それで会話しよう」
「ふざけんな。俺はこれから休んでた間分の課題を……」
「提出期限は五日前よ」
「くっ……」
「まだ時間あるし、ちょっと付き合いなさいよ」
「    」
通訳:『イソーローの分際で生意気だよ!』。意味分かってねぇだろお前、こっちの台詞だ。



 ……そんな風にして、今日も日常になりつつある非日常もどきが何事もなく通過していくはずだった。こんな古ぼけたアパートの一角に、武装した拉致部隊が部屋に侵入してくるなんて誰が想像できただろう。真っ黒い装束に身を包んだ男たちは一瞬のうちに全てを終わらせた。
 ドアを蹴破り、誰一人として状況を把握できない内に閃光弾<フラッシュバン>が部屋の中で炸裂した。眼を焼かれ悶え苦しむ和人とあやを何か重い鈍器のような物で殴りつけ、そして遠ざかる意識の隅で、何かを奪って消えていった。
 そして夢のような、微睡んだ意識の底から和人が這い上がった時、武装した集団も――――そしてミリアも部屋から消えていた。遅れてあやも眼を覚まし、状況を見て愕然とする。二人とも頭がひどく痛んだが、そんなことを気にしている余裕は無かった。
「何だったの……ミリアちゃんは?」
「……いない」
「嘘でしょう!?」
「いないんだ! ……あいつらが連れ去ったんだ、きっと」
落ち着いて深呼吸をする。一回。二回。三回目をし終えた時には、荒かった呼吸も大分落ち着いていた。
「落ち着いて……状況を整理するぞ」
ひっくり返されたちゃぶ台をもとに戻し、向かい合う形で和人とあやは話し始めた。
「まず、俺等がバカしてる最中に、突然謎の集団が現れた。連中は黒ずくめで特徴らしい特徴もなく、閃光で眼を焼かれたところをブラックジャックか何かで殴り倒し、ミリアを攫った」
「謎が多すぎて訳が分からないわ」
和人の冷静な状況整理に、あやが引きつった顔のまま答える。
「つまり、連中の狙いは最初からミリアを攫うことにあった」
「それは間違いないわね」
あやが頷く。和人はその様子を見て言葉を続けた。
「知っての通り、ミリアは宇宙人だ。地球に来たことが俺等以外の奴にバレて、それで攫われた」
「攫って一体どうするのよ」
あやの問いに、和人が一瞬だけ言葉に詰まった。
「そりゃあ……宇宙人だし、何らかの技術とか生体実験とか」
それを聞いて、あやがちゃぶ台を思い切り叩いて立ち上がり、和人を上から睨め付けて言った。
「落ち着いてる場合!? そこまで分かってるならさっさとミリアちゃんを助けなきゃ―――」
和人が高揚したあやの両腕を握る。あやがそれを振り解こうと腕をよじるが、和人は優しく握りながらも、その手を離さなかった。
「焦っても何にもならないぜ。ひとまず落ち着こう。それで作戦を練るんだ」
言い聞かせるようにそう言って、あやを座らせる。和人は眼を閉じて考えている。
「……まずは警察に相談だ。身分を偽って捜索願いを出そう」
「うまくいく?」
「写真はお前が携帯で撮ったやつを使えばいい。まぁ、何とかなるだろ」
「警察だけ? 私達にできることはそれしか無いの」
「取り敢えず、奴らが何か証拠を残してないか部屋を調べよう。……もっとも、手慣れてるみたいだったから証拠なんて残してくれてないだろうが」
 それから数十分、部屋を隅から隅までくまなく探索したが、連中が残していったと思われるようなものは何一つ見つからなかった。
 続いて警察。近くの『田原蟹湾岸沿警察署』へ行って、三日前から行方不明という名目で捜索願いをだした。名前や身分については何とか言いくるめることができた。しかし、プリントアウトした写真を見せると壮年の警察官の目つきが変わった。
「……ちょっと待っててくれ」
警察官が署の奥へと姿を消す。数分後戻ってきた彼の手には同サイズの写真とファイルが握られていた。
「その少女だが、おそらく既に捜索願いが出されている」
「……え?」
和人とあやが差し出された写真を見て絶句する。そこに映っていたのは、どう見てもミリアだった。ただ、二人の知っているミリアよりも少し顔立ちが幼く見える。
「一週間くらい前に都庁前警察署にてよく似た少女の捜索願いが出されている。名前は南優奈。この地区の中学校に通っていた。八日前から行方不明になって、心配した母親が捜索願いを出したんだがまだ見つかっていない。署では家出か何かだろうって見方が強かったから、あまり捜索に熱心では無かったのだが……」
和人とあやが顔を見合わせる。名前はミリアではなく「南優奈」。おまけに一般人。色々なことが起きて頭が正常に回らない。
「君たちは二日前までその少女といっしょにいたのかい?」
「……はい」
本当はつい数時間前までいっしょに居た。が、それを話してしまうと今までの非科学的展開を言うことになってしまい、そうなると彼が常識人である限り信じてはくれないだろう。情報獲得のためにも、今は警察の助力が必要不可欠だ。下手にものを言ってはいけない。
「すみません。今から「南」さんの母親と会うことはできませんか?」
和人の申し出に、警察官が「うーん」と言って難しい顔をする。
「もう七時を回っているし、微妙ではあるんだが……明日の午前中なら先方にも迷惑がかからないだろう。今夜中に警察の方から頼んでおくから、また明日こちらへ来なさい」
「携帯の番号、教えておいた方がいいですか?」
「あぁそうだね。すぐに日程が連絡できるように」
そう言って警察官がメモ帳を取り出し、あやの携帯の番号をメモする。和人はその間にもう一度二枚の写真を見比べた。写真に映る少女は本当にそっくりで、他人の空似とはとても思えない。
(でもミリアが嘘を吐いている様には見えなかったし……俺以外には声が聞こえないことや、光る円盤のことも説明がつかない)
和人が思考を巡らせていると、その腕をあやがぐいと引っ張った。もう用事が終わったのだろう。俺は考え事を続けながら引きずられるようにして警察署をあとにした。



 次の日の朝、和人とあやは当然の如く高校を休んだ。(これで和人は一週間連続無断欠席である)
 あやの携帯に届いた日程は思いの外早く、午前九時とのことだった。二人は相手に失礼の無い私服に着替え、待ち合わせ場所で合流してから署に向かった。
「ねぇ……南優奈って、本当にミリアちゃんのことだと思う?」
署に行く道中、あやが聞いてきた。その表情はどことなく固い。
「南優奈の母親会って話してみないと分からない……ただ、ハッキリしてるのはミリアが攫われたってことだけだ」
「うん……」
どことなく暗い雰囲気のまま、二人は署に到着した。
 昨日の警察官が署前で待機していた。その後ろのテーブルと椅子に、質素な服に身を包んだ女の人が座っている。
「やぁ、連絡したら南さんも是非話し合いたいと言ってくれてね。少し早い時間になってしまったが、大丈夫かい?」
「ええ平気です」
「分かっていると思うが、相手は社会人の方だ。高校生だから節度は保ってくれると思うが、くれぐれも失礼のないように」
「分かりました」
こんな会話をすると、警察官はすぐに奥へと引っ込んでしまった。和人とあやは署に入り、テーブル越しに向かい合う形で南優奈の母親に頭を下げた。
「忙しいときにわざわざ出向いてもらってすみません」
「いえ、ようやく娘の情報が入ってきたのですから、こちらから出向くのは当然です」
毅然とした、だがまだ若い女の人だった。目つきはやや鋭く、頬は痩せている。
「私たちの言う少女が、南優奈さんかどうかはまだ確定できませんが……とても似た少女が、こい―――聖和人君の家に居ました。つい数日前までです」
途中、「こいつ」と言おうとしたあやを和人が足で蹴り、あやが二発返してきたことを目の前の人は知らない。
「それで……あ、私は菅野あやって言います。自己紹介がまだでしたね、お名前を窺ってもよろしいでしょうか」
「あぁ、私も忘れていました。南 眞子と申します」
そう言って女性が深々と頭を下げた。和人とあやがその隙にちらりと目配せする。どうやら相手はある程度自分たちを信用してくれているようだ。それを踏んで、まず和人が話し始めた。
「では本題の方を……先ほども言った通り、数日前に優奈ちゃんと思しき女の子が僕のところに来ました。彼女は南優奈ではない全く別の偽名で僕の家に……その、居候を始めたのです」
「居候……」
「僕の方は、まぁ、寮じゃなくて安アパートだったから問題は無かったんですが。それでつい先日、気づいたら行方不明になっていました」
「すみません、娘を見つけたのはどこですか? 川岸とかですか」
「……いいえ、道ばたです。僕のアパートの真ん前でした」
「そうですか……それで、どうして居なくなったのですか?」
「分かりません。ただ、朝起きたら居なくなっていました」
そこまで聞いて、南眞子がゆっくりと息を吸った。自らを落ち着かせるように深呼吸して、また話し始める。
「……申しにくいのですが、ひとつお聞きしますね」
「はい」
「……うちの娘に、手を上げたりしていませんね?」
南眞子の眼は本気だった。
「……俺、いや、僕の記憶にある範囲内ではそんな事はしていません。絶対に」
「そう、ですか」
南眞子は安心したように一息吐いて、……それから、また真面目な表情に戻って言った。その眼に宿る光は先ほどよりも強い――――むしろ、何かに怯えているように思える。
「……もう一つ、娘の体に外傷はありましたか?」
「外傷……? いえ、ありませんでしたが。もっとも眼に見える範囲には」
何となく付け加えられた和人の言葉に、母親の目尻が一瞬動いたのを、あやは見逃さなかった。
「あの……もしかしてそれって――――」
あやがふと思い浮かんだ事を言いかけたその瞬間、凄まじい勢いで署の扉が開いた。
「畜生! どうなってやがんだ一体!」
あの警察官が、別人のように血相を変えて署から飛び出した。しばらくして、眉間に影ができるほど深い皺を作って、警察官が戻ってきた。その額からは尋常ではない量の汗が吹き出ている。
「どうしたんですか? 急に……」
三人とも、立ち上がって警察官を見た。彼の視点は定まらず全身が少し震えている。出るときは紅潮していた頬は今は青ざめ、真っ白になっている。
「――――これを、見ろ」
警察官が奥にあるブラウン菅のテレビを指さして言った。三人がおそるおそるそれをのぞき見る。どうやら午前の臨時ニュースのようだった。まだ若いアナウンサーが、興奮したように早口で原稿を読んでいる。
『――――です、緊急です。先ほど九時十分頃、東京都遊原地区で謎の巨大構造物が出現しました! 形はまるでダンボールを積み上げたような箱型、高さは二十四階建てのビルを易々と超えています! 時々構造物が振動し、周囲に地震を引き起こしています!』
「何だよ、これ……」
開いた口が塞がらない。遊原地区と言えばここ田原地区の東隣だ。あやが署を飛び出して太陽の方を見た。和人と南もそれに続く。


見えたのは、遠く、ビル街の中心からそびえ立つ巨大なダンボールの塔――――

その中心、超巨大なスクリーンに映し出されている少女。

「ミリア……?」



銀髪碧眼の少女が、眼を閉じてそこに居た。



「どういうことなんだよ……誰か説明してくれ。何で南優奈が、何で――――」
「何で……娘は、私が、確かに――――どういうこと!?」

 錯乱する警察官と南眞子。男は胸を押さえて壁に寄りかかり、女は道ばたに頭を抱えて蹲る。
「あや!」
和人が静寂を破るかの如く、大声で名前を呼んだ。
「何、よ……」
答えるあやの声は震えていて、怒鳴り返すつもりが、あやふやな言葉の羅列となって何とか和人の耳に届いただけだった。
「アパートに帰るぞ」
「はぁ? あんた何言って―――」
「いいから早く!」
訳が分からず突っ立っているあやの手を握り、和人はその場を駆けだした。残された二人は、ただ呆然と奇異な塔を見つめる他無かった。



 ぜえぜえと息切れした声がコンクリート固めの廊下に響く。和人が肩で息をしながら扉を開け、玄関の中に入る。あやもふらふらとした足取りで中に入って扉を閉めた。
「はぁ……ちょっと、どういうことか説明してくれる? イギリスの……何だったっけ」
「アルベルト皇太子像盗難事件」
「そうそれ。その時みたくパパっと真相解明して全部解るように教えてくれない?」
壁づたいに何とかリビングにたどり着き、二人でちゃぶ台前に腰を下ろす。やかんに残っていた二日前の麦茶をコップに注いで飲み、一息吐いてから和人がようやく口を開いた。
「あの時は警察の情報があったから犯人逮捕できただけだよ……、今回は不確定要素が多すぎて何がどうなってるのやら」
「……つまり、大体の予想はついてるってことよね」
カンの良いやつだ。そう小声で毒づいて言う。
「……ミリアと南優奈はおそらく別人だ。少なくとも意識は」
「つまり、体は同一ってこと?」
「分からない。ただ、同一人物ってことは無いと思う」
「どうして」
「……カン」
その答えを聞いて、あやがお茶の注がれたコップをくいと前に出した。薄茶色の液体が和人の顔面を直撃し、激しく噎せ返る。
「ふざけてないでちゃんと推理してよね、名探偵さん」
「……ンなヒドいことしてよくもまぁそんな事が言えるな」
「いいからあんたの予想を言いなさいよ」
あやに急かされ、和人は渋々といった様子で話し始めた。
「……ミリアと南優奈が別人であると仮定する。南眞子の証言からすると南優奈が行方不明になったのは八日前。俺がミリアと会ったのはその日の深夜だ。これは推測だが、南優奈の意識がミリアの意識と入れ替わる間に、南優奈はおそらく死亡している」
「えっ」
あやの驚いた声。和人は話を続ける。
「母親の南眞子の二つ目の質問だよ。確かに娘に怪我が無いか心配するのは親として自然な行為だ。一つ目の質問はそういった雰囲気を醸し出すためのもの。そしてミリアもとい南優奈の体には外傷があった」
「あったの? でもさっきは無いって……」
「そう言って相手を安心させて様子を窺ったんだ。実際、ミリアの首には細い環の痕があった。初めて見つけた時は気にならなかったが、今思えばあれは多分首を絞めた痕だ」
「絞め――――っ」
「おまけに川に突き落としてる。彼女が発見したのが川岸だと判断したのは、そのせいだ。さっき動揺した時にそれっぽいことも言ってたしな、『私が、確かに』って」
「あ……」
「ミリアがどういった経緯で南優奈の体に乗り移ったかは知らない。だが、今回重要なのはそんなことじゃない」
「―――私達を襲った、あの黒ずくめの連中は?」
「昨日の夜、色々調べてみたけど、多分自衛隊傘下の特殊部隊だ。命令を出したのは内閣総理大臣・義満(よし みつる)。ミリアが宇宙人かどうか知ってかは分からないが、目的はおそらく高度技術の強奪だろうな」
「高度技術ってあの巨大ダンボール……ってちょっと待って。何で義首相がそんなことする必要があるのよ!」
「目的は分からない。ただ、昨日自衛隊や内閣府のサーバーに侵入した限りじゃ、そうとしか考えられない。首相直々の極秘自衛権行使があったみたいだ」
「侵入ってあんたね……」
「あ、もう一つ。義首相も多分死んでる」
「はあ!?」
ガタン と音を立ててちゃぶ台がひっくり返された。あやがびっくりして立ち上がった所為だが、和人がちゃぶ台の下敷きになる。
「あ、ごめん」
「いてて……ミリアの件を考えると、別に不思議じゃないだろ。滅茶苦茶な推測だけどさ―――」
「―――まさか……」
「……義首相の意識は、もう」
和人が無言でテレビをつける。全ての局が突如現れた謎の巨大建造物を映している中、ある放送局が不意に映像を切り、スタジオから別の緊急ニュースを伝え始めた。
『只今入った情報です。内閣府によりますと、現在義首相の行方が分からなくなっている模様です。これを受けて警察は謎の構造物体だけでなく首相捜索にも人員を割くと、先ほど緊急の記者会見をひらきました』
画面に映し出されたのは、一年前に首相になった、まだ少し若さを感じるお馴染みの顔だ。総理大臣の顔は就任している間だけはやけに憶えられる。
「……ホントだ」
あやがテレビを見て絶句する。和人も自分の推測が当たったことがかえって憎たらしくなって、すぐに電源を切った。
「あや、これから先はお前の助けが必要だ」
急に改まった態度をとった和人に、あやが少し動揺する。
「言われなくても、私にできることなら何だってするわよ」
「自衛隊の内部情報が欲しい」
「具体的には」
「首相近辺を護っている自衛隊特殊部隊の人員名簿と携帯番号、それとなるべく最近の日本の衛星写真と関連データ一式」
「お安い御用よ」
息をするかのようにあっさりと言い放って、あやがその場を立った。リビングの奥にある和人のデスクトップPCを起動させ、周りのゴミをゴミ箱に捨てる。
「何分かかる?」
和人が聞く。その表情にはどことなく余裕が浮かんでいる。
「八分あれば十分よ」
世界最強のハッカーはそう呟いてPCの画面と向かい合う。その眼にはかつてない程強い光が宿っていた。
「流石、アメリカ法務省のデータベースに侵入しただけのことはある」
「それほどでもないわ」
そう答えた顔は、まんざらでもなさそうだった。



「    」
 少女は泣き叫びも、噎び泣きも、喚いたりもしなかった。ただ、密かなる熱を秘めてそこに佇んでいた――――否、縛られていた。
 目に見えない無数の監視網と全身に絡められた透明な糸が少女の動きを奪っていた。
「どうだね? 文明レベルでq985q4hakgi*fiも劣る生命体に束縛され、更には道具まで奪われた気分は……」
「    」
「民間人といっしょな所を襲撃すれば、貴様はその道具の力を使えない……人間の体に乗り移って動き易くしていた様だが、それが仇になったな。麻酔一本打たれて気絶とは情けない」
「    」
少女はぼそぼそと口を開くが、声はまったく聞こえない。初老を迎えた男の声ばかりが辺りに木魂する。
「貴様らhos0324g4の唯一の弱点、いや欠点か。閉鎖的空間において永く高度な技術を発展させた代償として、貴様らは外界の異生物との交信ができない。むしろ交信をしようとする意思を持たない」
「    」
「正しくは、そういった機関が必要な進化をしなかった。集団的な意識集合体であった貴様らは、集団の中から個体として出た時に外界とコンタクトをとる術を持たなかった。その無駄に高度な技術をもってして情報を吸収することはできたようだが、そこから思考して発信することができない。何とまぁ哀れな種族だろうな、まあそのおかげでここまで高度な技術を手に入れた訳だがな……」
「    」
「もう良いだろう。我々は貴様の:kladf3fkjを奪った。手始めにこの太陽系の星屑を全て破壊して、然る後我らが主の元に帰るとしよう」
「    」


 ――――本当は、

 何故、と言いたかった。
 どうして、と叫びたかった。
 嫌だ、と泣きたかった。
 ああ、何故なのだろう。何故こうなってしまったのだろう。ただ私はこの惑星を侵略したかっただけだ。『全ての人間と交信してみたかった』だけなのだ。武力を持ってしての征服、否破壊など望んでいなかった。ただ意思を疎通して、いっしょに話したかっただけだ。ただそれだけだったのに。

「    」
「貴様がどんなにその醜い口を動かそうとも、その思考が外界に洩れ出すことは出来ない。貴様は発話すること叶わず、この星を離れ、pwot2jk4rp~gjsの98ad3jbajに収容され、そこで孤独に一生を過ごす。安心しろ、[1[pa3k9fgjkb=aの奴らは貴様のような珍しい生物が大のお気に入りでな。さぞ可愛がってくれることだろう」

 ああ、そうなのか。この星は消えてしまうのか。私のせいで。こんな私のせいで。

 心の片隅では分かっていたはずだった。なのに、それなのに。

「まったく、ここまで高度な技術を持っているにも関わらず、なぜこんな辺境の疎外惑星なんぞにやって来たのかが不思議でたまらんな……まぁ、物が手に入ったから良しとしよう」
「    」
這いずり寄る。蹴られる。信号=痛い。痛覚。認識。幻覚→ダメージ、泣く。防衛手段。あぁ私の思考はこんなものだ。私の考えていることなど、感じていることなど、誰が理解してくれようか。
「まだ分からないのか? お前の声を理解できる者は、この星にはいないのだよ」
その言葉が、心の奥の奥まで深く突き刺さった。



















「――――そうとも限らないぜ?」

 唐突に辺りに響いた声。男が予期せぬ来訪者に慌てて振り返った。目に映るそれは、ただの平凡な男子学生のように見えた。それはペラペラと浮かれたように話し始める。
「いやぁ、結構苦労したんだぜ? あや……菅野の技術と俺のハイテクな頭を駆使して何とか警備システムを突破したけど、丸々二時間もかかっちまった」
「何―――」

二時間、と。この少年はそう言ったのか。hos0324g4の使う:kladf3fkjの警備システムは宇宙規模で見てもトップクラスを誇る。それを外部からたった七千二百秒で最深部のここまで侵入ということは――――

「貴様……何者だ」
「名乗るほどの者じゃないって。ただちょっと頭のキレる男子高校生」
言って少年が足を一歩前に踏み出した。男が少年に向かって銃を構える。銃口は真っ直ぐ少年の頭を捉えていた。
「……この惑星ならではの骨董品の武器だ。私を殺そうと思ったらこんな物では足りないが、ただの人間に過ぎない君を殺すには、引き金を一回引くだけで十分だろう」
距離は僅かに五メートル。だが、少年は銃を向けられても動揺した様子を見せなかった。
「おまけに、君はとんでもない誤算をしている」
「と、言うと?」
「―――――私が一人だとでも思ったのか」
その瞬間、周囲から精錬された素早い動きで黒ずくめの集団が少年を取り囲む様にして現れた。十や二十を下らない大量の銃口が、少年の頭部一点に集中している。
「……で?」
少年が挑発するように口を吊り上げて笑った。
「何だね、命乞いでもするか?」
「いや、ね。これがあんたの持ってる全戦力ってことでいいのかなーって」
「馬鹿にするな」
男は一人銃口を少年から外し、掌を上にして掲げた。その上に、光るディスプレイのような物が投影され、数多の解読不能の文字が浮かんでいる。
「私はhos0324g4の道具を手に入れた。これは銀河団屈指の高性能な道具で、この惑星程度なら一瞬で粉々にできる」
「全人類を人質に?」
「正しくはこの惑星に暮らす全ての生命体を」
「成る程ね」
男が勝利を確信した笑みを浮かべ、少年へと語りかける。その表情に、先ほどまであった焦りはない。
「正直、まだ動揺している。……こんな辺境の惑星で、あまつさえ最高級の警備設備をくぐり抜けて侵入してくる者がいたとはね。おそらく生命個体内における能力で言うならば銀河一の逸材だろう。それを殺さなければいけないとは」
「何だか知らんが、それ褒め言葉? 一応ありがとう」
「珍しいんだ」と男は言って、掲げた掌にもう一方の手を近づけた。足下に倒れたまま動かないミリアをちらりと横目で見る。
「……コレが潜伏先に選んだという時点で、ある程度他の個体とは違うだろうと思っていた。だが、敢えて詳しく調べる必要も無かったから放置しておいたのだが……今思えばあの時殺していた方が良かったかもしれないな」
手を挙げる。黒ずくめの集団が少しずつ少年へとにじり寄っていく。少年は険しい顔で、迫ってくる覆面の男達を見つめていた。
「まぁ、どちらにせよ変わらん。むしろ、それだけの脳があったにも関わらずどうしてこんな無謀な勝負に出たのか理解に苦しむ。私が言うのも何だが、もっと良い手があったのではないかね?」
男の問いかけに、少年が答える。しっかりと、意思を宿した声で。
「――――お前を倒し、ミリアを助け出す。これが俺の選んだ最善の道だ」
「ミリア? ……ああ、コレのことか。まぁ、好きにするがいいさ――――――できるのなら、な」



 男が挙げていた手を振り下ろす。

 銃声が 鳴り響いた。







起動 起動 起動

受信 受信 交信

判断 可能 是非

散策 発見 進行

外部 受信 発信

受信 発信 受信

開閉 委託 譲渡

移動 命令 移動

発見 移動 着陸



――――――――――SYSTEM4.0 code=battle―――――――――――



                 wake  up






「何―――だと……」

 男は起きたことを信じられずに立ち尽くしている。しばらくして、その体が音を立てて崩れ落ちた。その腹部には数多の銃弾が撃ち込まれ、黒いスーツを暗褐色に染めあげていた。
「何故……って顔してるな。最期だろうし、教えてやるよ」
和人が右手を挙げて言う。周囲の黒ずくめの男達が構えていた銃をしまう。
「まず第一に、自衛隊特殊部隊の人員名簿と携帯番号を調べた。あ、ちなみに調べたのは俺じゃなくて知り合いのキチガイハッカーな。それで今ここにいる人達全員に協力要請の連絡をして、侵入に際して内部からも手伝ってもらって色々と助かったぜ」
「待て! どうやってこいつ等を……この義とかいう奴の金銭能力を利用して買収したはず―――」
「確か一人につき二十億円だっけ? 残念ながら三十億円で買収させてもらったぜ」
声も出ない、といった様子で男が絶句する。
「いやぁ、アルベルト皇太子像盗難事件で貰った大金を一気に全部使うアテができて良かったぜ。実際のところ、俺の方から家族が殺されることがないよう保証したからってのがデカいかな、金は保険を兼ねてのついでな」
「何……」
「家族とかを人質に取ってたんだってな。つい一週間前に自衛隊隊員の家族が殺害されているってのも分かったし。何より死因が『不明』っていうのが確信づけたね」
和人が倒れ伏す男を尻目にミリアを抱き上げて介抱する。少女の寝顔は穏やかで、安心しているように見えた。
「まだ分からない点がある……どうやって隊員達に納得させた。アレの家族を見せしめで殺した、そうそう簡単に納得するはずが―――」
「ところがどっこい。あるんだよな。それに、今手前が撃たれたのが何よりの証拠だろ?」
「成る程、な」
男が頷いて、右手を前に差し出す。その掌には、光るディスプレイ。
「――――では、見せしめだ。この惑星を沈めてやろう」
その平面上を、舐めるように指が這った。






爆熱


巨大ダンボール構築物から突如放たれた白い光






そして それを遮断するようにして放たれた『もう一つの光』


二つの光線が真っ向からぶつかり合う。完全な逆サイクルで衝突した光は、お互いに相殺され、発射から十秒後には周囲の雲を吹き飛ばして消えた。



「――――な」

 全身の絶望を現したような、深い呻き声だった。

「言ったろ? 『あるんだよ』。この「紀州みかん」を凌ぐスゲェ道具……いや、宇宙船がな」

最深部の天井ディスプレイに映像が投影される。そこに映るのは空を覆い尽くすほど巨大な発光物。

「ミリアを連れてきた宇宙船―――――衛星から送られてくるリアルタイムの資料を片っ端から使ってようやく位置を補足できた。地球に残っているとは思ってたけど、意外と近場の海に居てくれて助かったよ」
「どうやって宇宙船を……それにこれも道具と同じで、使用者がいなければ自動制御プログラムに無いことはしないはずだ。所有者の救出に来るなど――――」
「だから、操縦者にうってつけの野郎を乗せてるよ。今頃システムを自分用に書き換えたりして大変だろうがな」
和人がディスプレイの向こう、大空に浮かぶ円盤の中に居るであろう少女のことを思ってそう言った。



「まったく、地球外生命体の機械……いや、機械でいいのかな? を操縦することになるなんてね……」

疲れを一気にはき出すように息を吐いて、菅野あやは床ディスプレイから眼下の風景を覗いた。

都市街の中心に位置する巨大構築物、ダンボール塔。だがこの宇宙船はその大きさすらも凌駕するほど巨大だ。

(今私が操縦ミスったら、世界が滅ぶのよね……慌てない慌てない)
自分を落ち着かせるように深呼吸を二回して、ゆっくりと眼を開けた。前には数時間かかってようやく人間が操縦できるように改造された地球外の精密技術、その操縦部分にあたる電脳の波が満ちている。

「そう、落ち着いて私……あいつに信用されてるんだし」
そう言ったら尚のこと落ち着かなくなってしまって、しばらくは足下がおぼつかなかった。



「馬鹿な話だ……この私が、こんな奴に――――な」
 男が失笑するように言う。その姿はやけに滑稽で―――――やけに余裕が残っているように見えて、不気味だった。
「成る程、これは私の負けだな。確定的だ。この状況下で瞬時に優劣をひっくり返すのは不可能と言ってもいい」
和人がミリアを抱いたまま小声で隊員達に指示をする。       先に離脱しろ、と

「そう、あんたの野望……かどうかは知らないけど、目的は達成されない。ミリアも「紀州みかん」も手に入らない」
和人が距離をとって言う。何故だ、今勝っているのは自分のはずなのに、どこか押されている気がしてならない。
「そう……そう。今は無理だ。だが時間さえあれば―――――」
その瞬間、僅かに肘を張って浮かせていた男の上半身が、事切れるようにして倒れた。ぴくりとも動かないその肢体に和人が少なからず動揺を見せていると、その頭の部分から白いもやもやとした物が現れた。

《待っていろよ、この星の単位で数えて数年後―――それだけあれば私の目的は達成される》
声の質は全く違ったが、和人にはそれが義首相の体に乗り移っていた生命体の意思であると即座に分かった。そして、受けて立つといった顔で言い返す。
「やってみろよ、ただし何があってもミリアだけは渡さない」

その答えを聞いて、白いもやもやとした『意識』がすっと消えた。隊員達が退却した今、中に残っているのは和人とミリアだけだ。

「(……ん)」
「お、目が覚めたか」
少女が腕の中で狭苦しそうに身を捩る。大きな欠伸を一つして眼を開き―――――自分の置かれた状況を理解し、和人の顎を蹴り飛ばした。
「ぐるぶぉあっ!?」
「(何をする!)」
ミリアが真っ赤に赤面しながらぷるぷると震える指で和人を指さす。先ほどまで目覚め直後で潤んでいたその綺麗な碧眼は、今や眼力で人を殺しかねないほど凶暴な光を宿していた。
「い、いやちょっと待てよ。俺ちゃんと助けたから、別にやましいことしようと考えてたわけじゃないから!」
「(嘘嘘嘘っ! 絶対やらしい事考えてた!)」
「考えてないっ! 断じて!」
そこに、宇宙船から菅野が投入。
「ミリアちゃん大丈っ……ちょっと和人、あんた何したのよ」
「何もしてない! 何も!」
「(この変態ドスケベ馬鹿! 調子に乗ってお姫様だっこなんてするから―――!)」
「えっ……ちょっと和人どういうことよ!」
「い、いや待ってちょっとそのアレ―――――――――……あれ?」

「え? ……あ」

「(……?)」








「――――あや、今ミリアの声が聞こえたのか?」





「つまり、ミリアの種族は他者との意思疎通が苦手で相手と同じ種族の体に乗り移ることで、ようやく五感の共有ができるようになると」
「(うん、そう)」
「ちなみにミリアちゃんはどうやって会話してるの?」
「(相手の脳の信号を読み取って直接語りかけるようにしてるんだけど……和人以外にはうまくいかなった)」
「でも、もう私も聞こえるよね」
「(さっき興奮してた時にやったら上手くいった)」
「成る程ねぇ……」
 和人が神妙な顔で頷く。事件収束から約二時間、何とか後片付けを済ませ、いつものちゃぶ台前に集合してこうして話している。(ちなみに宇宙船の移動途中にステルス機能が使えなくなって自衛隊や米軍の攻撃を受けてヒドい事態になりかけたが、今は監視の目の届かない海底に透過して待機している)
「ニュースはひどいことになってるけど、ちゃんと南眞子さんは捕まったの?」
あやがさりげなくを装った様子で和人に聞いた。和人はコップのお茶を煽り飲み、一息吐いてから重たい物を吐き出すようにして答える。
「さっき署の人に電話したら、自首してきたってさ。まぁ今はそれどころじゃ無いから対応は遅れるだろうけどって」
「そっか……優奈ちゃん殺したの、やっぱりあの人だったんだね」
あやが沈んだ表情で少し俯く。南眞子が子ども想いな母親に見えていた分、衝撃は大きいのだろう。その様子を見て、ミリアが気を利かせて話を変えた。
「(死んで間もないこの子の体に乗り移って、「信州りんご」で移動してたらヤツらに攻撃されて……咄嗟に「信州りんご」から緊急脱出したけど気絶しちゃって、拾ってくれたのが和人だったの)」
「乗り移ったのが南優奈じゃなかったら、普通に会話できてたかもな……もっとも、出会ってたのは俺達じゃなかっただろうけどさ」
運命の巡り合わせとはまったく奇妙なものだ。自慢ではないが、出会ったのが和人とあやでなければ今頃ミリアは連れ去られ、地球は一瞬のうちに終わっていたことだろう。
「南優奈ちゃんが発話障害だったって……どうして言わなかったのよ」
「実は、署の人に言われる前からミリアの体が南優奈ってことは知ってたんだ。それで少し調べてたら、それっぽい資料とかに行き着いてな……ネットにあんまし載ってないから、ミリアの面倒見る傍らそういうのも自分の足動かして調べてて……」
「あ、それで学校休んでたんだ」
あやが初めて納得したように呟いた。ただのサボりと思っていたのが見え見えである。(もっとも和人の日頃の生態を考えれば、そう思っても無理はないのだが)

「……確認だけど、やっぱり南優奈は死んでるんだな」
和人がミリアに聞いた。その答えは、聞かずとも知っているくせに。
「(……うん。でもね、入れ替わる寸前まで生きてたの)」
「……何か言ってた?」
首を絞められ、川に突き落とされた年端の行かない少女の断末魔など、普段なら想像したくもないだろう。……だが今は、二人ともそれを知りたかった。会ったこともない少女の、その痛みを知りたいと思った。
「(……生きたい、って。そう言ってた)」


沈み行く意識の中、言葉を話せない少女の心の叫びを、意識でできたミリアは聞いた。

「(……だからね。私、この子の分まで生きたいと思った。もう体しか残って無いけど、それでいいなら、私でいいなら、生きたいって)」
ミリアが呟く。泣いてはいない。少し笑っていた。その目尻から透明な水が溢れんばかりに湧き出ているにも関わらず。
「(生きてみたいの……この子が居るはずだったこの世界を)」




「……いいんじゃないかな。それで」

「うん、私もそう思う」

二人が頷く。ミリアが笑う。涙を抱えすぎたその目尻から、滴が頬を滑り落ちる。

「ほら、しばらくして落ち着いたら……南眞子さんにも、会ってみない?」
あやが優しくそう言う。ミリアが一瞬戸惑った様子で固まったが、すぐに微笑んで頷いた。
「(……うん)」



「……それじゃ、ちょっと遅いけど飯にするか。もう外真っ暗だし」
突然始まる夕飯。
「あ、じゃあこの焼きそばセットで焼きそばしない?」
すぐに合わせる幼馴染み一名。
「賞味期限切れてるぞ……」
「どうせ焼くんだし問題ないでしょ。ほら鉄板出す出す」
「はいはい」
「味付けどうする?」
「粉末唐辛子五袋投入!」
「死ね」






……ああ、あったかい。


これが    か。私の手に入れたかった    なのか。





「ほら、何してんだミリア。食うから準備手伝え!」

「ミリアちゃん、机の上開けてー!」








そうか、これが





「    」





                           fin.


メンテ
小さな魔女の森〜Before the Brand new days〜 ( No.208 )
   
日時: 2012/09/15 23:45
名前: 空人 ID:7V6S8Slo

 真っ白だったその本にも、今は数ページにわたって丸っこい文字が躍っています。
 今まで起こったこと、感じたこと。拙い文章で綴られているのは、小さな私のこれまでの人生。それほど多くはないそれらの文字を、私は指でなぞってみることにしたのです。



 私を産んでくれた母は、教会の前でまだ幼い私に覆いかぶさるように倒れていて、教会のシスターが見つけた時には既に息をしていなかったそうです。私はそのまま教会に引き取られ、シスターベルに育てられました。しかし、経済的に余裕のない教会は私をお荷物としてしか見てはくれなかったようです。シスターベルも必要以上に私に係わることは無く、他人との接触が少ない当時の私はしゃべることも上手に出来ない子供でした。それでもぐずったり文句やわがままを言ったりしなかった私は、シスターにとっては育てやすい子供だったのではないかと思います。
 それでも一つだけ、シスターの言葉で耳に残っているものがあります。

『良い子にしていないと森の怖い魔女があなたをさらいに来ますからね』

 子供に言い聞かせる為の言い回しであることは、当時の私には理解できていなかったのでしょう。その言葉をはじめて聞いたときには、怖くて眠れなかった事を覚えています。

 教会に訪れる人々の会話や聖書の朗読会などでゆっくりと、それでも確実に言葉を覚え、ようやく文字を読めるようになった私は、教会にある書物を読み漁る毎日を過ごしていました。近所には同じ年頃の子供も住んでいましたが、言葉を話すことが苦手な私は進んで彼らの仲間に入ることが出来ず、また彼らは私に親が居ない事をどこかで聞きつけたらしく、私を見つけるとコソコソと何かを言い合ったり逃げ出したりするので、仲良くなることは難しかったのです。
 その中でも、私に話しかけてくる子も居ました。子供たちの中でも体が大きく、よく口のまわるその少年は、子供たちのリーダー的な存在だったと記憶しています。彼は家も裕福だったらしく、珍しい品物を持ってきては皆に見せていました。そういう時には私にも近づいてきて見せてくれるのが通例になっていたのです。
 そしてその時は必ずと言っていいほど同じやり取りを、彼と私の間で行っていました。

「欲しいか?」

 誇らしげに品物をかかげ笑顔を浮かべる彼に、私は首を横に振ります。
 私が読んだ本には、品物を手に入れるには相応の対価を渡す必要が有ると書いてあったからです。当然ながらそのとき私はお金も何も持っていませんでした。その品物を受け取る資格が自分にはないのだと解釈していたのです。
 首を振った私を見ると、彼は決まって悔しそうな顔をするので、私はその度に悲しい気持ちになりました。そして、どうして彼は私に品物を買わせようとするのか疑問に思ったものです。
 今にして思えば、彼はその品物を与える事で自分たちの集団の末尾に私を加えようとしていたのではないかと推測できます。もしくはもっと単純に。友達になりたかったのではないかと。
 しかし、他人の心の中を探ったり場の空気を読んだりすることなど出来なかった私は、それからも首を縦に振ることは無かったのです。

 そして事件は起こります。
 その日、教会の花壇に水をまいていた私の背中に何か柔らかいものが当たりました。振り向くとそこには例の彼が立っていて、私の足元に視線を送っていたのです。足元に落ちていたのは、しっかりとした作りの中にきらびやかな刺繍がほどこされた見るからに高価そうな財布でした。中身の方もたくさん入っている事がうかがえます。私の背中に当たったのはそれだったのでしょう。しかし、どうしてこちらに飛んできたのかが解らず、私は彼に視線を送りました。

「拾え」

 高圧的な物言いは彼にとってはいつもの事だったので気にせず、逆らう理由も見つからなかったので、私は素直にその言葉に従うのでした。
 中身を見るのは失礼だろうと思い、両の手で丁寧に拾い上げ土埃を落とします。そして彼に渡そうと顔を上げた時、いつも彼の周囲にいる数人の取り巻きが突然声を上げたのです。

「おいみんな、アイツ財布なんか持ってるぞ」
「あんなきれいな財布アイツの持ち物のわけないよな」
「おや? あれはキミの財布なんじゃないのかい」
「ああ……そうだな」
「アイツきっと盗んだんだぜ」

 わけがわかりませんでした。私は今飛んできた財布を拾っただけだったのです。どうして良いのか解らずただただ立ち尽くしていると、騒ぎを聞きつけた大人たちがやって来て取り巻きたちに事情を聞きます。もちろん取り巻きたちは私が財布を盗んだのだと説明しました。私は大人たちに捕らえられてようやく事態を把握したのです。彼らにはめられたのだと。
 強引に引っ張られ、連れて行かれたのは役人の詰め所でした。どうして財布を盗んだのか。どのような手順でやったのか。盗んだお金を何に使うつもりだったのか。誰かにそそのかされたのか。誰かと一緒にやったのか。矢継ぎ早にされる質問の全てに私は首を振ります。そもそも私自身は何もしていないのです。しいて言うなら落ちていた財布を拾っただけです。もちろんそれを説明もしましたし、あの場に居た数人も見ていたはずだとも言いました。しかし目の前の役人さんは、私の拙い説明を鼻で笑い、なるほどねとつぶやくものの、その後には私を犯人と決め付けた質問を繰り返すのです。
 何時間も拘束され、何度も同じ説明を繰り返し、役人さんの溜め息とともに開放されたのは、もう日が暮れた後でした。その時でさえ役人さんは「もう二度とするなよ」という私の証言をまるで信じていない言葉だったのです。
 悔しい思いのまま、私は教会への道を急ぎました。シスターに何の説明もないままに連れて来られたので、心配しているだろうと思ったのです。通りを行く人が私の方を見て何かをヒソヒソと言い合うのが目に映ったのも、足が速くなる一因でした。
  どうにかたどり着いた教会の扉の前で、私はようやく安堵の息を吐き出しました。扉をノックし引き手をつかみます。しかし扉は前にも後ろにも動かないのです。冷たく閉ざされた扉を前に、私は声をあげ中へ入れてくれるようにシスターに懇願しました。もし、今日起こった事件を知っているのなら、自分は無実だと。言葉を取り繕う事もせず、少々汚い言葉でわめき散らしたのだったかも知れません。唯一とも言える身内に、どうにか理解して欲しくて。
 しかし返ってきた答えは、冷たく、酷く現実的なものでした。

「あなたに何が起きて何を思って何をしたのか、私は……教会は問いません。ですがあなたがここに留まれば、少なからず町の人からの反感を買ってしまうのです。それは今、この教会にとって良くないことだとあなたにも理解できるはずですね。これまで不自由な思いをさせてごめんなさい。でも、今日からあなたは自由にどこへでも行って良いのですよ。ただし、この教会には近付かないで下さいね。それでは、ごきげんよう」

 それっきり、教会の中から声が聞こえてくる事は有りませんでした。その日二度目の思考停止。真っ白になる頭で自分が捨てられたのだと理解だけしました。もうここに、自分の居場所はないのだと。周囲から寄せられる白い視線に気付き、あわててその場から逃げ出しました。拒絶はされたけど、今まで育ててくれた教会に、シスターベルに迷惑をかけたくはなかったのです。
 考えてみれば、この町に私が所有しているものなんて何もありませんでした。住む場所も、お金を稼ぐ当ても、信頼できる人も。生きていく為のすべが私には無かったのです。
 走って、走って、走って、走って、転んで、起きて、また走り出す。
 行く当てなんかありませんでした。教会から、町の人たちの視線から、役人から、逃げ続けてたどり着いたのは、町からそう遠く離れていないところにある小さな森。
 その森を目の前にして、私はそこがなんと呼ばれているかを思い出していました。

 ――迷いの森、別名『魔女の森』と呼ばれている事を。

 シスターの声が耳に届いたような気がして、少しだけ微笑んだ私は、迷わずその森の中に足を踏み出したのです。
 魔女の伝説は教会にあった本にも幾つか載っていました。
 曰く、魔女に挑もうとした者はその姿を拝む前に、屍を衆目にさらす事になったとか。
 曰く、魔女が通った後には、雑草すら生えないほど邪悪な呪いがかかるとか。
 曰く、子供をさらい、その純粋な魂を喰らい、邪悪な生物へと変化させるのだとか。
 特にこの森に住む魔女は破壊の魔女と呼ばれていて、その昔邪悪な魔法によって一国を滅ぼしたと伝えられているらしいのです。
 しかし森の中はとても静かで、木漏れ日は温かく、吹く風はやわらかい。小川は透き通っていて小さな生き物たちがいきいきと暮らしている。本当にここが邪悪な魔女の住処だとは信じられないほど清浄な空気に包まれていたのです。
 小川で身を清め、喉を潤し、甘い臭いがする木の実でお腹を満たし、風除けになる大きな木の根本で眠る。まるで野生の獣のような暮らし方だと言わざるを得ませんでした。しかしそこには誰に遠慮する事もなく、誰の目も気にしない生活があったのです。快適と言っても過言ではなかったかもしれません。
 数日間はそのまま、人間らしからぬ生活を続けていました。しかし私は気付いてしまったのです。この小さな森には、通り抜ける事が出来ない空間がある事に。
 普通に森を歩くだけなら見過ごしていたでしょう。しかし、毎日のようにそこを通ればその違和感に気付いてしまいます。ここがただの森だったとしたら、信じられなかったかもしれません。だけどそうではない。
 この森は魔女の森なのですから。

 私はその空間に手を伸ばしてみることにしました。それは単純な好奇心もあったのですが、片隅にでもこの森で生活しているからには、ここの主である魔女に挨拶をし居住の許可を得なければ、後々酷い目に合わされるのではないかと考えたからでした。
 よくよく目を凝らせば、その空間が他の森の背景と微妙にずれている事が解ります。ゆっくりと、自分の小さな指先をその空間の境目へと伸ばしました。指先が歪みに触れるその瞬間――――。
 私は自分の背後にあった大きな木に後頭部をぶつけていました。指先には痺れが残り、何かの力によって弾かれたのだと気付きました。後頭部をさすりながら体勢を整え、再び歪みと向き合います。
 歪んでいました。最初よりはるかに強く。歪んで、うすく輝いて、波紋が広がり、現れたのはしなやかな指先。それは手になり、腕と肩が伸びてきて。
 私はすでに気付いていました。それが、この森の主である事を。

 木漏れ日をうけてなお、漆黒に流れる長い髪。対照的に肌は白く。大きく胸の開いた扇情的な衣装は闇色のローブ。森の風景を映す瞳は全ての色を混ぜたような混沌に染まり、笑顔に歪む唇だけが赤く輝いて見えました。

「こんにちはぁ、あなたが最近ここに住み着いた子かしらぁ?」

 柔らかい声は、その女性が発したものでした。その声に、その姿に、魅了されないものはいないのではないかと思わせるほどでした。きっと彼女と対峙した者はそれだけで囚われ、周囲に醜態をさらし、彼女が通った後には雑草さえも魅了という呪いがかけられ、どんな純粋な魂をも欲情させずにはいられない。そう、信じられたのです。
 うなずくしか出来ない私に、魔女は優しく微笑みました。そして、一つの提案をしてきたのです。

「どうやらあなたは、普通の人より強い魔力を持っているみたいねぇ。この結界に触れられたしぃ。だからぁ、私と親子になりましょう」
「おや……こ?」
「そう。もうすぐ私はぁ、ここを離れなくちゃいけないのね? だから後継者が欲しいのだけどぉ、この森って誰も近付いてくれないしぃ、私が気に入るような男なんて居ないしぃ。だから、私と親子になってくれないかなぁって。親がいないあなたと、子が欲しい私がここで出会ったのってぇ、運命なんじゃないかしらねぇ?」

 可愛らしく傾けられた首に、私も魅了されてしまったのかも知れません。魔女から差し伸べられた手を握る事にためらいはありませんでした。
 こうして私はお母さんと出会い、自らの人生を大きく変えたのです。




 今開いている『魔道書』は、お母さんが星となる日に渡してくれたものでした。何も書かれていない真っ白な魔道書を見て首を傾げる私に、お母さんはいつもの甘ったるい声で言ったのです。

「この魔道書はぁ、あなたの素敵な人生で埋めなさいね。それが全てあなたの言葉で埋まった時ぃ、それは貴方だけの魔道書となってぇ、あなたは真の魔女になるのぉ。私が居なくなっても目標が出来るしぃ、きっとあなたは素晴らしい魔女になれるって信じてるから」

 それは魔法だったのかも知れません。だって私は今もその言葉を信じているのですから。だから。

「じゃあ、行ってくるね、ユフィ」
「はい、行ってらっしゃいませぇ。お母さん」

 魔道書はまだ埋まる気配すらないけれど、この森に留まっているかぎり素敵な出来事なんてそうそう起こったりはしないけど、きっと楽しい日々で埋められる。
 そう、私は信じているのです。





 小さな魔女の森〜Twilight Traveler〜へ 続く
メンテ
ラブラドール ( No.209 )
   
日時: 2012/09/16 00:02
名前: アリス ID:4i30KdJI

 僕の恋人が食器を割った。彼女がごめんねと謝った。僕は別にいいよと笑った。
 彼女は料理が下手で、いつも「今日の晩御飯は私が作るね」と息を巻くのだけど、大抵は失敗に終わってめそめそと泣いた。食器を割ったり指を切ったり。僕は最初は任せるよと言うけど、テレビを見つめるフリをしながらこっそりと横目で彼女を見ていたのだ。毎回トラブルが起こるのなら辞めさせるべきかもしれないけど、いつも僕のためを思って頑張ろうとしてくれる彼女を止めるなんてことはできなかった。僕は彼女の、一生懸命頑張る横顔が好きだった。
 食器を割ったり指を切ったり調味料を間違えたり。始まりこそ頑張ろうと彼女は言う。だけど最後には失敗に終わって僕に泣きついて謝るのだった。僕は彼女のそんな縋りを受け入れては肩を抱き、背中を撫でて言葉を囁いてあげる。大丈夫だよ、怪我はない? 指、ちゃんと絆創膏貼ろうね。そんな風にして僕が励ましてみると、次こそは頑張るよと小さくしょげながら言う。
 彼女は神様。
 彼女が泣くと、次の日は雨になる。料理に失敗して、彼女が泣いて、僕が彼女を抱きしめる。次の日は雨。人々の憂いを助長する雫たちが屋根の端っこから滴るのを見上げる彼女が傘を差し、行こうよと僕に言葉をくれる。神様の言葉。そうやって雨の日は、二人で食事に行ったりゲームをしたりする。雨の日は、神様の心が泣いているからだ。だから何か楽しいことをして、憂鬱に沈んでしまった心を癒してみる。すると面白いように次の日は晴れる。僕の中にある彼女への想いをベッドで囁いてみると、彼女はすぐに照れて布団に顔を隠してしまうけど、僕は味方だと教えたり、好きだよと本音を言いながら頬を撫でると彼女は笑ったり喜んだりする。そうして晴れは生まれる。神様の心は、僕次第でどうとでもなるのだった。それが僕には溜まらなく嬉しいと思う。
 料理が成功すると、彼女はぴょんぴょんと飛び跳ねて僕に満点の笑顔をくれる。料理の見た目や形が成功していても、調味料を間違えて大失敗に終わることはある。それでも、二人で向かい合って口に運んだその味に満足げな微笑みを浮かべることで、料理が上手くいったと彼女は確認するのだった。僕が笑って美味しいと言うと、彼女はやったーと拍手する。僕は嘘は言わない。あまり美味しくないと言って彼女が泣いたり怒ったりしても、その顔が僕は好きだったし、反対に料理を褒めて彼女が笑うのも大好きだったからだ。神様の心は空に映る。怒ってしまえば雷がたちまち迸り、喧嘩をすれば傘が折れるほどの台風だって起こる。それでも僕が彼女の頬を人差し指でつんつんと差し押さえては謝ると、彼女も同じようにすっと目を細めてごめんと言う。そうして台風は去っていく。
 目が覚めた時に髪を撫でる僕は神様の虜で、そんな神様は僕の虜だった。僕は世の中の全て人たちと、天候に左右される何かの出来事に謝らなきゃいけない。彼女は神様。明日の天気は神様の心次第。つまり、神様の心を奪ってしまった僕次第なのだ。だから、ごめんねと言っておこう。明日が晴れか、雨なのか。それはきっと、僕が彼女の耳元で囁く言葉で決まってしまうのだから。

「好きだよ」
「や、やめてよ。照れるじゃん……」

 こりゃ明日は晴れだな、と僕は笑った。



メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 | 76 | 77 | 78 | 79 | 80 | 81 | 82 | 83 | 84 | 85 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

題名 スレッドをトップへソート
名前
パスワード (記事メンテ時に使用)
コメント

   クッキー保存