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[4993] 【2016年度】お題小説スレッド【お題「去る」作品投稿期間】
   
日時: 2016/01/12 23:57
名前: 企画運営委員 ID:7PNV346o



『お題小説スレッド』へようこそ。こちらはあるお題に沿って読みきり小説を書き、その作品をみんなで批評し合う場です。
 初心者も上級者も関係ありません。うまくなりたいとお思いの方であれば、だれでも自由に参加することができます。一生懸命執筆し、一生懸命批評して、小説の技術を高め合いましょう。
 皆様のご参加をお待ちしております。

――――――――――――――――――――

>>002 【ルール説明】:必ず熟読して下さい。(※内容、一言の箇所を訂正しました。ご確認ください)
>>003 【批評のポイント】:批評をする際のポイントをまとめたものです。
>>004 【イベントルール説明】:イベントに関するルールです。必ず熟読してください





▼お題:第32回のお題は「種」です。
 二月に種をまくのか? と思いましたが、調べてみるとじゃがいもは二月にまくそうですね。……さらに調べてみると一年中、なにかしらの種をまいてるみたいです。
 そんなことは置いといて。「種」というお題には「たね」以外にも色々な解釈があると思います。みなさんがどのような作品を投稿してくるのか、楽しみにしております。
※第30回の作品投稿期間は2月1日(土)からです


▼お題:第33回のお題は「姫」です。
 三月なので(笑)
 というのはよくわかりませんが(ひなまつりだから?)「ひめ」というのは可愛らしい語感ですよね。私は緑の黒髪をした和服姿が思い浮かびます。桃色が似合いますよね。桃色……やはりひなまつりでしょうか。それでは、みなさんの作品お待ちしております。
 
※第31回の作品投稿期間は3月1日(土)からです


▼お題:第34回のお題は「嘘」です。
 嘘でした。


▼お題:最終回のお題は「魔法」です。
 奮ってご参加ください。


▼お題:第36回のお題は「友情」です。
 ネタでした。


▼お題:第37回のお題は「音」です。
 奮ってご参加ください。



▼日程(第32回)

1月1日       :お題発表
2月1日〜15日   :作品投稿期間
2月16日〜28日  :批評提出期間


▼日程(第33回) 

2月1日     :お題発表
3月1日〜1月15日 :作品投稿期間
3月16日〜30日 :批評提出期間


▼日程(第35回) 

6月1日     :お題発表
6月1日〜7月31日 :作品投稿期間
8月1日〜   :批評提出期間



▼注意もしくは削除対象となるお書きこみ
・荒らし
・荒らしへの反応
・自分や他人の小説の宣伝
・雑談、チャット化
・ルールに反するもの
・管理人が不適切と判断したもの

――――――――――――――――――――

>目次 >>001


>第32回 お題『種』参加作品(敬称略)

>>404 sakana:シロハの辻褄
>>405 伊達サクット:赤い種、青い種

================================================================================

▼リンク
小説講座/雑談所』(お礼や言い訳等はこちらへ)
旧お題小説スレッド』(前スレはこちらから)
ツイッター』(朔乱のアカウントです。お題の告知などをしています)

管理人:If 空人 朔乱  補佐:伊達サクット
メンテ

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孤独プロパガンダ ( No.275 )
   
日時: 2013/02/15 23:37
名前: ゐぬめ ID:BLGqd5Cg



 深い深い森の奥。薄気味悪く、真っ白の霧が漂うこの枯れ果てた森のさいはてに、大きな屋敷がひっそりと佇んでいた。
 その屋敷の外壁にはつたが伸び、ところどころ薄汚れており、無人であった気味の悪い屋敷だ。しかし、今では魔女の屋敷と称されている。
 数年前、戦争真っ只中の出来事だ。とある少女が森近くの村へと訪れた。戦争とは程遠い村だったが戦争のためとても貧しく、来訪者をあまり快く思っていない村人たちだったが少女は村を一直線に通り過ぎると何かに取り憑かれたかのような真っ直ぐな瞳で森へと向かっていった。一部の村人は面白がりあとをつけてみると少し不気味な模様の木々を無視し、霧を振り払い、雑草がいくえも生えている場まで来ると目の前に佇んでいる屋敷を少女は見上げると、躊躇なくその屋敷の中へと足を踏み入れていった。
 それからというもの少女の姿を見たものは誰もおらず、いつの間にかその少女は魔女と、そして、屋敷のほうは魔女の屋敷と呼ばれていた。そんな話が広がると、たちまちみな森へと近づくことはなくなったという。

 しかし、魔女と呼ばれる少女の日常を少しでも垣間見たら。決して魔女とは言い切れなくなるだろう。


 ◆

「ふぅっ……今日の掃除も完璧だぁ!」
 三角巾から覗くおでこの汗を拭うと、目の前で光を放つ清潔な窓に笑みをこぼした少女は使い古されているであろう雑巾をでこぼこしたバケツの中に入れると両手でそのバケツを持つ。バケツ一杯に入れられた水をこぼさないようにゆっくりと屋敷の廊下をがに股で歩く少女は金色のウェーブがかかった長い髪を揺らしながら一息つきながら綺麗に装飾された屋敷内を見回す。
 神々しい光を放つステンドグラス。アンティーク調の木製のドア。大理石の板が均一に並べられた床。
 今まで埃とちりにまみれていたこの屋敷の中も、この小さな魔女、シャーレのおかげで昔の面影を取り戻しつつあった。
 昔、おとぎ話のように聞かされた屋敷の話。しかし、今ではさびれていることも話にあったが、少女にとっては関係はなかった。大家族の一番下で生まれたシャーレは二十一人の姉に愛され、可愛がられていた。だが、少女はそれを嫌った。なぜならばシャーレは孤独を愛していたからだ。
 静かな場所で暮らしたい。うるさい家族もいない場所でひっそりと。そう思って、シャーレは何も持たずにこの地にやってきたのだ。
 そして手に入れた一人暮らし。一人占めの住処。裏手に回れば綺麗な川も食べ物が沢山あった。汚さも、怖さもひとりぼっちを手に入れた少女にとっては何の思いもうまれなかった。
「ふう、残りはあと一部屋だから今日はここまででいいかなぁ」
 バケツに溜まった水を捨てて川辺で雑巾を洗っているとふと視界の端に何かさわめくものがみえた。
 バケツと雑巾を干すように木にかけるとスカートの端を持ちながら川を進んだ。靴の中に水が入ってくる感触に、はっとなった。
「あぁ、靴脱ぐのわすれてたっ」
 ええいままよ。心の中でそう呟くとそのまま後ずさらずに進んでいく。すこし川の流れが強いせいか靴下も水浸しになってしまった。
 残念そうに顔を歪ませるものの目の前の陸へと向かっていく。そういえばこの先に向かったことはなかった。そう思いつつも恐怖も好奇心もないまま足を運ばせた。
 川を渡りきると靴と靴下を脱いで両手にいっぽずつ持つことにしてそのまま進む。
 今まで何度も川へと足を運んできたが、今まで見たことのない景色が広がっていた。
 一面花。花。花。赤、白、黄色色々な種類の花が太陽の光を浴びてさんさんと育っていた。しかし、何かが引きずられていたのか花が折れている道が出来ている。
 ふと、その道の先へと目を向けた。

 戦争兵器?
 すぐさまその姿の全貌がわかった。戦争中大量に生産された自律機動兵器。名前もなく、大量に生産され、型番もないそんな冷たい機械が目の前にあった。少々の傷があったものの、何故かシャーレは助けなければいけない。そう感じた。
 シャーレは靴を置き、近づいて触れてみた。熱い。しかし、こちらに敵意は向いていない。どうやってここにきたのか? 兵器にそんなことを聞いたが返答はかえってこなかった。


 ◆

 忘れていた。少女はため息をついた。
 "自律"つまりは主人はいなくてもこの兵器自体は動力が無くならない限り、永遠に動き続ける。そして、自動的に不備がある部分を修繕する。
 そこまではまだわかる。だけど――
「しゃーれ、そうじおわッタ」
「うん」
 何よりも孤独を愛していたシャーレはこの兵器により孤独を無くしてしまった。あの日あの時見つけなければ。と思ったがこの兵器は一体何十とも言える兵器をその身に積んでいるかわからないし、何よりもここを誤射で壊されてしまったら困る。軍に連れて行くのも考えたが、村の人の目線が怖いシャーレはこの状況のまま一ヶ月を過ごしていた。
「兵器さん」
「わたくしノことデショウカ」
「うん」
 自律機動兵器は一ヶ月前にこの屋敷に住み込み、シャーレの掃除をしている姿をみて自ら掃除するようになった。
 それは決して困ることではないのだが、孤独がなくなる感覚にシャーレは少し嫌気がさしていた。
「出て行ってください」
「いやデス」
 何度この会話を続けただろうか。なぜこの兵器はこの屋敷に住み着いているのだろうか? シャーレは疑問に思い何度も問いかけたものの返答はなかった。
 再びシャーレはため息をつくと屋敷を出る。
 ここ一帯も綺麗にして素足でも出歩けるほどになりシャーレは毎日のように自律機動兵器と出会った花畑へと出かけている。
 そこで虫に一部食われてしまった本を見る。それが日課になっていた。
 しかし、ほとんどの本はいつも良い所で虫食いに食われておりシャーレはまだ完結を目にしたことはない。だけど、それで構わなかった。
 一時でも一人になれる。没頭できる本。しかし、そんな時間もいつも突然おわりを迎える。
 ぽさりと頭に落とされた香りを放つ冠。
「……? 花冠?」
 ふと手に取って真上を見上げる。そこには自律機動兵器が顔? に影を作りながら待っていた。少し微笑んでいたように見えたが多分気のせいだ。
「ありがとう。兵器さん……じゃあ呼びづらいね。名前はあるの?」
 へへ、と笑いながら問いかけるものの自律機動兵器は体を揺らしながら無いということを伝える。
「それじゃあ私がつけてあげよう」
 得意げに言うと自律機動兵器は喜びを表しているのか両の手を上下させた。
「じゃあねぇ――」

 頭上を飛ぶ自律機動兵器の大群の音にシャーレの言葉は遮られた。


 ◆

「どう? 面白い、かな?」
 シャーレはすっかりと大人になっていた。昔読んだ本を補完するかのように話を作ることに没頭していた。
「はい、とっても」
 自律機動兵器――いや、ペトリもまた姿を変えていた。機械だらけの体ではなく人間に酷似した姿に。
 ペトリは笑うことを覚え、怒ることも覚えた。カタコトもなくなってずっとずっと自然になった。だけど、悲しそうな顔は見せなかった。
 だけど、やっぱりシャーレは孤独が好きだった。
「嘘が下手だねペトリは」
「あはは」
 やっぱり自律していても兵器は兵器だ。笑うこともぎこちない。そう思うとペトリのやることなすことがぎこちなく思えてきた。
 ふと、一人になりたいと思う時がある。いつもの毎日にすこし嫌気がさすこともある。だけど、ペトリがいなくなるのはやっぱり嫌だ。
 でもやっぱりシャーレは孤独が好きなんだ。
「じゃあ、少し出かけてくるね」
「はい、お気を付けて」
 この言葉を使えば簡単に大好きな孤独がやってくる。一人だけの時間。
 いつものように花畑に訪れる。少しだけ花の数が減ってしまった。だけど、ここは心が安らぐ場所のままだ。
 でも、今では読む本もない。そのせいか虫食いにあっていた昔の服も編み物の道具として活用していた。
 こんなに上達するとは自分でも思ってもいなかったが作ったものを着せるような子供も、渡すような友達もいない。ただそこにいるのはペトリという兵器だけ。
 シャーレは孤独に浸る。
 いつか本当に孤独になってしまうことに恐怖を覚えながら。

 轟音を立てながら空を飛ぶ新たに作られた自律機動兵器に、花と髪をちらせながら。


 ◆

 ――あぁ。とうとう花畑の花は全て枯れてしまった。それもこれも戦争のせいだ。
 八十年と続く戦争もシャーレも等しく衰えていった。自律機動兵器の姿ももう見えないが、目の前にはペトリが優しくシャーレの眠っているベットを見ている。
 風の噂で聞いたが、戦争は終わるという。しかし、とある工場の兵器が人間を支配すると言ったのだ。今度は機械と人間の戦争が始まる。そしたらこの屋敷も、この森も、あの村も、もう無事ではすまないだろう。
 ――あぁ、孤独がやってくる。
 シャーレは孤独が好きだった。
「怖い」
 ベッドの中で動かない体を揺らしながらシャーレは涙を流した。霞んだ光景に助けを叫ぶ。
「大丈夫」
 ペトリは優しくシャーレの皺だらけの手に触れる。冷たくて硬い感触に、孤独を感じた。
「ごめんね。ごめんね」
 ――あぁ、もっとおしゃべりしたかったのに。もっと遊びたかったのに。もっと褒めてあげたかったのに。
「少し、出かけないと」
「…………」
 最後だ。ペトリの笑みを見せて。そうシャーレは思う。だけど、霞んだ光景に見えた無機質な兵器は、とても歪んでいた。
 眉をハの字に曲げて、目をつぶりながら、眉間に皺をよせながら、口をへの字に力ませながら。ペトリは笑っていた。
 ――お気を付けてといってよ。
「……嫌だ……です」
 暖かい水がシャーレの手に落ちた。
 ――あぁ、やっぱり孤独が好きだ。
「わたし、ね……」
「嫌だ……」
「……ペトリと、一緒の」
「……ダメだよ……」
「一緒の、孤独が好き」



 シャーレは孤独が好きだった。
 でも、ペトリとの孤独のうが、もっと大好きだ。

メンテ
たまくずれ ( No.276 )
   
日時: 2013/02/15 23:30
名前: sakana◆092jpOU0d. ID:67ct02nE

「そこだけじゃなく、考え方まで機械になっちゃったの?」
 目の前に位置する小太郎の左胸を指さし、晃子は言った。
「なにおまえ」
「晃子よ。知ってるでしょ」
 こてん、と首を肩の上に落とす、その巨体にそぐわない動作のあと。晃子はできるだけ言葉に感情を乗せないよう言い放ち、自分より頭一つ分上にある小太郎の顔を見上げた。
 百八十センチ以上あるんじゃないだろうか、というほど長身の小太郎。名前に似合わず大きいのは身長だけではなく、体型もまたそうで、大層たくましい。中学、高校、大学、そのとき、小太郎はなんのスポーツをしていたんだっけと、晃子は記憶を手繰る。それでも晃子の思い出にいる小太郎よりどこか、そう、貧相で、なにかがその身に降り掛かってしまったその後なのだと、久しぶりに相まみえる小太郎の姿を目に映す。
 よく街で見る、どこかのイメージキャラクターがプリントされたシャツと、皺のない真新しいジーパンを身につけ、あとは見慣れない無愛想に仏頂面を重ねて掲げていた。
 今までなにをしていたの、どうしてこんなところにいるの、なぜそんなふうになったの、心配したんだから、ともかく一緒に帰るよ。
 もっと、もっと、たくさん言いたいことがあるはずなのに、いざ小太郎を目の前にすると言葉が出てこない。そもそも、小太郎は晃子のことを認識しているのだろうかと思う。
 晃子がここを訪れるきっかけを与えられたように、小太郎もまた、晃子が来ると事前に説明でもされていたのかもしれない。いきなり手を握っても、じっと凝視されるだけで他の反応を示さない小太郎をいいことに、晃子は前方から小太郎をひっぱるような形で歩き出す。それでもやはり抵抗せず大人しく歩き出した小太郎をちらりと見て、自分のことを覚えていてくれたらどんなに良いだろう、と心の中で淡い希望を抱いた。
 おおよそ一年と半年前。桜の季節に高校へと進学した晃子は、同時期大学を中退した兄の行方を見失った。家にも帰らない、電話もかかってこない、手紙は言わずもがな。小太郎の友人宅に連絡を寄越しても、知らないという一言しか帰ってこない。父と母は現状に混乱していた晃子を見てもなおただ口を閉ざし、警察を呼ぼうとした晃子をなだめることも、止めることもしなかった。小太郎が見つかるはずがないと知っていて、気の済むまで好きなようにやらせておこうという意図がはたらいていたのかもしれない。結局警察は、呼んだ。けれども彼等はなけなしの聞き込みをしただけで、小太郎の失踪は家出と名付けられた。特に仲が良い兄妹だったわけでも、険悪だったわけでもない。父母と同様に、何気ないことを頼み頼まれ、たわいもない話を時にはする、そんな普通の兄妹。
 それでも十六年近くも共にいた家族が、なんの連絡も寄越さずに失踪したことはーー父母がどうであれーー少なくとも晃子にとって大事件だったのだ。事件に巻き込まれたのかもしれない、もしかしたら大怪我をして動けないのかもしれない、それでもしかしたら、いつか家族で訪れたスキー場にでも、また行っているのかもしれない。
 悔しいと、歯がゆいと拳を握りしめた。なにもしてくれない両親はもちろんのこと、家にいてただ待っていることしかできない自分に。
 だから晃子は小太郎を待っていた。
 兄はいつしかきっと帰ってきてくれるだろうと信じ込み、兄の身に起きているなにかが全て無事に済むことだけを願い、待つことだけを徹底した。
 進学する大学は、この家から通えるところにしよう。もし手の付けられないほど小太郎の身体が破損していたーー日本の医師が最も得意とする、機械仕掛けの人工心臓が代用として使えないーーのであれば外国に渡れるように。たくさんお金を貯めて、たくさん彼を待って。そうして、再び暖かくこの家に向かい入れられるように。
 けれども、そういった決心を嘲笑うかのように、欠けた部品をすでに取り戻したという小太郎が姿を現した。
 夏の暑さが収拾しようという、そんな少し前のこと。季節の変わり目のように見えない慌ただしさがある、そんな今から数日前のこと。
 中途半端に吹き出す汗を、夏と同じよう拭い物足りなさを感じた昼日中。その違和感をふるい落とすかのように顔を上げると、晃子は庭先の垣根の向こう側で、見慣れぬ四輪車が止まっていることに気がついた。そちらに向かおうと、その落下地点を目視する間もなく、晃子は無意識の内に手にしていた本を投げ捨てる。縁側でぶらつかせていた足を急いで汲み上げ、玄関に向かって短い廊下を駆けだした。そうして裸足で玄関の扉を開けその奥の道を見るために顔を上げると、見知らぬ三人の大人がすぐそこに。今まさに、相手も握りに手を掛けようとしている態勢で、もう少しタイミングが遅かったら戸を人にぶつけてしまっていたかもしれない、なんて晃子は思ったりした。
 内側の握りに手を掛けたまま少し腰を屈ませた状態で、彼等ーーおそらくあの四輪車の持ち主だーーがこの家に用があったなんて思いもせず、少しだけ呆気にとられながらも相手の面を見上げる。
 小太郎さんについて、お話良いですか。
 晃子の手から奪い去るように玄関の戸を開ききった男の傍らで、その女性は、表情はともかく淡泊に言葉を発した。
 その問いは、晃子の行方知れずになった兄の、その後の存在を示すもの。全てがいきなりで、晃子はその迫力に気圧されるように少しだけ顎を引いた。
 現に女性の声色には、他に聞かないという選択肢がないという意味合いを暗にほのめかしーーもちろん晃子は兄の所在に関して訊かなければならないというある種の使命感を抱いていたがーーそれこそ晃子と同様で、この家を訪れた彼等の責任感の成れの果てだったのかもしれないと、晃子は後に思う。
 晃子の兄である小太郎は、そうして一年と半年ぶりに存在を露わにした。
 始終困ったように眉を下げ、聞き慣れないカタカナの羅列を決まり事のように述べる女性の話に。威張り散らし、聞き取りづらい命令形か体言止めで話すサングラス男の行く先に。全身が機械で、衣類から剥き出しの部分だけひとと同じ肌触りがするという百六十センチの男児が生まれた病院に。
 なにがなんだか分からないまま、この一年と半年、小太郎の身に起こったことを捲し立てられ、そうして心臓が。心臓が、とても精巧な機械になってしまったのだと知った。
 なにも理解できずとも、そうですかとだけ相づちを打つ。
 納得したふりをして、玄関先に駐まっている黒塗りの四輪車の持ち主たちをもう一度見返した。不在の両親は小太郎のことを、そして彼等のことを知っていたのだろうか。そんなことを考えて、なにもかも隠されていたであろうことに、それでもなお怒りが湧いてこないことに驚き、ほう、と息を吐いた。
 けれどもその理由は、次の瞬間知れる。ただ単に今の現状を受け入れられず、感情の全てがどこか遠くに置き去りにされていただけなのだと。ぶくぶくと浮き立つどろりとした暗い感情は、黒になりきる前に白へ打って変わり、むしろ全身に広がる静けさばかりが目立ち、目眩を誘発する。
 そう、機械。小太郎の心臓が機械にとって換わられた。
 妙に乾いた唇で小さく呼吸する。晃子が分かったことは、それだけ。その先の話を聞くに当たって、一番踏まえておかないといけないことも、きっとそれだ。
 おそらく、小太郎さんは記憶を失っているでしょう。
 なにかの続けざまに女性の口から繋がれた言葉で、辛うじて積み重ねていた思考は吹き飛び、ぎょっと目を剥く。
 負傷したのは心臓なのに、なぜ記憶が。
 咄嗟に口をついた言葉に、違う、違う。本当はそんなことを知りたいんじゃないと、心の中で静かに重ねる。
 話を遮られることをひどく嫌う人だったのだろうか。女性の、下がっていた眉は不快げに寄せられ、この時ばかりは吐き捨てるかのようにそう言った。
 さあ、私が知っているわけないでしょう。少なくともこちらのドクターはショックからだとおっしゃっていました。
 それでも丁寧な口調は崩さない女性に、なんだかひどく悪いことをしてしまったように思えて、晃子は身を縮こまらせた。
 小太郎の身に何かがあったのだという予感は、あながち間違いではない。ただそれが、晃子や家族が一般人である限り、無関係であったはずのなにかに兄は巻き込まれたということ。それも、適切な後処理をしてくれるほどひどい事件が起こっていたらしいことまでは想像もつかなかった。
 他人の臓器の移植、自らの細胞を使用し代わりの臓器を作り上げる。そんな工程が追いつかないほどの危機が小太郎を襲ったという。臓器の機械化。それに伴う尋常ではない痛みや苦しみと、小太郎はもしかしたら、この先ずっと付き合っていかなくてはならないのかもしれない。
 身体の義体化。臓器の機械化。
 それらは何十年も前に発生した、それこそ天地をひっくり返すような《災害》の産物。地上に動物性の金属が姿を現したことによる恩恵。災害により一部を失い、災害により損なわれた部分を取り戻す。そんな皮肉を理解することは出来ても、晃子はちっとも笑えなかった。
 更には莫大なお金が掛かるという、死にかけた臓器との交換作業は様々な過程をすっとばしての全額免除。あの女性はそう言った。晃子はなんだか素直に喜ぶこともできず、代償は疾うの昔に、小太郎が払わされたものかもしれないなんて、あれこれ想像するのだ。
 そして晃子は病院を訪れた。
 小太郎の事情を知っていた彼等が指定した日付、時間に。
 はたして、一年と半年ぶりに晃子は小太郎と再会したのだった。

 今、晃子は小太郎の手を握りしめている。
 その形を確認するように握る力を強めたり弱めたり、終いには手を離し、指でそっと輪郭をなぞったりする。何年ぶりかに触る小太郎の手はどこか硬く、そして暖かく、ひどく心地が良くて、交互に繋いだ指にぎゅっと力を入れた。
 晃子の視線は曇り空を気にしながらも、されるがままに歩き続ける小太郎へ意識をそっと向ける。
 そうすると、妙に逸らしたりやったりする視線に気がづいたのか目をぱちくりさせ、なにかを考えるような仕草をした後、小太郎は続いていた沈黙を破った。
「晃子は妹?」
「うん」
「ふーん、先生の言ったとおりだ」
 せんせい、という言葉を聞いて、晃子はつい先ほど小太郎のいた病院を連想する。それにつられて、敷地内にある木陰のベンチの前に佇んでいた小太郎が、自身に覚え込ますように口ずさんでいた内容を流れるように思い出し、そこで回想は止まった。
 晃子は試しに「機械」と言うと、反射的に「無自我の金属塊」と小太郎は割って入る。
 もうひとつ「災害」と言ってみると、「悪」と小太郎は考えることもなく言い放つ。
 病院で、なにかの復習のように何度も口ずさんでいた答えとなんの変わりもない。
 晃子が聞き取れたその二つだけでも、ひとりの思考の結論だけを妄信的に覚え込まされているようで、得体の知れない不安に眉をひそめる。
 記憶がないと、あの女性は言っていた。ここにいる晃子を妹だと認識してつれられていることも、仏頂面だけれども自然体で、その他周りに存在する様々なものに驚く気配を見せないことも、あの場にいた女性や男性、男児、そして病院の人によって周囲の事柄を教えられた成果なのだと思う。
 確かに小太郎は手厚く介抱されていたのだろう。家族として、健康体で帰ってきた小太郎の状況は喜ばしいものだ。けれども晃子は、そんなふうになった小太郎は、以前持っていたものをなくしてしまったのだと思う。
 小太郎は考えることが好きだった。
 嫌になったときには体を動かし、それでも凛とした眼差しを真っ直ぐ前に向けていた。
 両親がいて、兄がいて、友達がいて、学校に行って、そんな日常はちょっとしたことでがらりと表情を変えることを晃子は知った。あたりまえで、なんの変哲もない毎日がとても掛け替えのないものだとも知っている。けれどもそこに感情が伴わないものを晃子は認めない。今の小太郎はまさしくそれだった。
 一緒に育った家族であるからこそ、晃子にとってなおさら容認できない事実。感じる悔しさを噛みしめるように、空いている手で衣服の裾を掌で握りしめると、小太郎との出会い頭に、無意識を言葉に転じたときの理由を思い出した。
「そこだけじゃなく、考え方まで機械になっちゃったの?」
 晃子の顔を覚えていないという顔つき。覚え込まされたように洗礼された疑問の動作。独特の自らの反応を持たないと暗に言っている。
 表情に不安を滲ませることも、記憶が欠けたという状況に臆することも、焦燥に駆られることも、ない。
 隠しているわけではなくて、たぶんきっと、本当に小太郎はなにも考えてはいないのだと思う。
 心臓だけじゃなくて、考え方まで機械になっちゃったの。過程もいらない、間違いもしない、自らを省みない、結果だけが全て、計算ロボットと同じ。
 これでは兄が無事帰ってきたことにならないと晃子は思った。けれども否定する気にもならない。だって、だって小太郎はここにいる。
 頭の中を空っぽにする意味合いを込めて、晃子は自らが掴んでいた小太郎の手をふりほどき、両腕をばたばたと上げたり下げたりして気分転換を試みる。そんな行動をしてみると、なんとなく鳥になった気分になった。
 立ち止まった晃子は、背後でつっかえるように止まった小太郎を振り返り見上げ、くあ、とそれこそなんとなく鳥の声を真似た。 
 こてん、とまた首を肩に落とす仕草を行う小太郎。
 小太郎の表情を窺いながら、頭の上に掌を立て何度か折り曲げる。今度はうさぎの真似だとあらかじめイメージしていた。
 晃子は薄く口を開いたままなにも言わないし、小太郎も言葉は発しない。
 他にはパンダや招きネコ、天狗のものまねをしてみると、小太郎が覚えた事柄から弾きだすのは、不必要だという、そういう類の一言だったらしい。理解できない、とでもいうように小太郎の眉間に皺が寄ってくる。
 晃子は動作をとめ、皺を凝視した。初めて知らない事柄に直撃したとでもいうような困った顔は、次第に熱っぽさを持ち赤み帯びる。そうして言い表せない微妙な表情を見せ始める小太郎を、晃子は呆気にとられながらもしっかりと見つめ返した。
 導き出した結論に納得していないからこそ、小太郎は不可解に思う。
 本質は変わっていない。そういうことなのだと思い至った晃子は、無性に嬉しくなって、それで笑った。
メンテ
オートマティックな恋心 ( No.277 )
   
日時: 2013/02/16 00:01
名前: 空人 ID:8LOTUEk.

 くるり、くるり。
 日常と喧騒を掻き分けて。
 今日も彼女はいつもの場所で。
 廻る、踊る。

 型の古い音楽再生装置は音割れもひどく。しかしそれは機械的でぎこちない彼女の動きにはとてもよく合っている。
 決まった曜日の決まった時間。魔道具工房の店主は彼女を看板として起用する事に決めているらしい。だから私もその時間、向かいのオープンカフェでしばしの休息を取ることにしている。ひとときの間、踊り続ける彼女を眺めるために。
 研究所の上司はもちろん同僚たちもけして良い顔をしているわけではない事は知っているが、これだけは譲るつもりは無い。仕事はちゃんとこなしているし、これも研究の一貫だと言ってしまえば、反論してくる輩は居なかった。
 彼女は『魔道機人(オートマタ)』。
 魔道と科学の融合を目指し、当時の技術の粋を集めて開発された芸術品である。一昔前に廃れてしまった情熱の集大成だ。機構の複雑さとコストパフォーマンスの折り合いが付かなかった事に加え、繊細すぎる取り扱いにユーザーが付いて来れなくなった事が廃退の要因としてあげられる。
 それでも一部の収集家には絶大な人気を誇り、価格は高騰する一方で、最近ではますます手に入り難い品物であったりする。
 一度、魔道具工房の主に交渉を持ちかけてもみたのだが、旧来の頑固さを持ち合わせているらしい工房主は「あれは売り物ではない」の一点張りで、まったく相手にされなかった。しかしそれはそれで、彼女が誰のものにもならずここで踊り続けていられるという事で。「そうですか」と無念を呟いた私の顔が嬉しそうに綻んでいるのを、工房主は怪訝な顔で見つめてきたものである。







「それで? 研究の成果は出ているのか?」
「はい?」

 突然の質問の意味を理解できずに呆ける私を、上司は睨みつけるように見つめてくる。いや、実際に睨んでいるのだろう。額には筋が浮いているのだから。

「お前が『研究』だと言い張っている件の魔道機人の観察は何らかの成果を出せているのかと聞いているんだが?」

 更に荒い声を上げる上司を愛想笑いで牽制しつつ、姿勢を正す。

「は、はい。観察に関しては継続的に行っておりますが、なにぶん他人の所有物という事もあり、なかなか積極的にとは行かない現状であります。これまでの観察結果として、表情などは変わらないながら人が近付くと微細な反応を見せる事からなんらかの探知機能が有ると思われます。また、関節部分は服装や肌色のタイツなどで補っているようで確認できませんでしたが、普段踊っている時よりもなめらかな動きが可能なのではないかと推測できています」
「ほう、なるほど興味深いのは確かだな」

 視線の強さは変わらないものの、上司は私の報告に関心を示してくれたようだ。だてに長い時間観察しているわけではない。こちらとしては、彼女についてなら小一時間語ってもかまわないくらいなのだ。

「ちなみに、動きが阻害されていると考えた根拠は何かね?」
「はい、それは音楽再生装置の音に彼女の踊りが合致しすぎている点です。音が飛んだり止まったりする事も間々あるのですが、それで彼女の踊りが遅れたり進みすぎたりする事がないのです。数瞬ほど音楽が止まった時は彼女も止まります。この事から、おそらく音での感知が可能なのではないかと考えられます。それ故、より美しい音楽を伴奏できれば、彼女の踊りもより美しくなるのではないかと推測したわけです」

 私の答えを聞いた上司は『彼女ねェ……』と呟いて額にしわを寄せる。何か不味い事を言っただろうかと心配になる私を気にもとめず、上司の詰問は続く。

「なるほど、それ程の物ならば我らの魔道研究の足しにもなるだろう。しかし工房主は他人に譲る気は無いのだろう? こちらとしてはお前の給料の五ヶ月分くらいなら用意出来るんだがな。サボりがちな研究員が一人居るよりもよほど有意義そうだ」
「は、い、いえ、工房主はどんなに金を積もうと譲る気は無いと言っていましたので……」

 上司の言葉を肯定しつつ、自分の首が危うい事もようやく悟り、取り繕う方法を探して視線を泳がせる。

「そう言えば、お前の『彼女』は工房主が造った物だったか? 同様の物を造れるのなら依頼しても良いのだが」
「あ、いえ。それはまだ伺っていませんでした」

 私の答えに上司はついに溜息を返してきた。何かを思い悩むように額に手を当てる上司の姿に呼応するように、私の額からは滝のような汗が流れ落ちてくる。

「ならば、交渉してくると良い。もちろん今日のノルマを終わらせてからだが、な。ああ、工房主が製作者じゃないなら誰が造ったのかも聞いてこいよ?」

 猶予を貰えた事に安堵しつつ、手の甲を向けて追い払うような仕草をしている上司に頭を下げた。







 工房主と話をした事は数えるほどしかない。正直得意な相手ではない事は確かだ。いや、あの工房主と談笑できる者が居るのなら是非とも拝見してみたいと、向かいのカフェ店員に言わせるほど相手だ。苦手意識程度なら可愛いものだろう。
 今日も彼女は店先で踊っていた。その姿を少しの間でも見ていたい衝動を抑え、会釈だけして通り過ぎ、工房のドアをくぐる。ドアには呼び鈴も無く、工房内に客の姿も無い。ただ無骨な工房主がこちらを一瞥しただけで、当然ながら「いらっしゃい」等の挨拶も無い。
 彼女が看板に立ってからはそれなりに足を止める人が居るものの、この工房が流行る事がない原因が手に取るように解る。さすがに彼女が可哀相になりながらも、どうやって工房主が高価な魔道機人を入手もしくは製作する事が出来たのか疑問に思う。と同時に何故今迄それを疑問に思わない自分が居たのだろうかと戦慄を覚えた。彼女を見つめる事だけで満足してろくに素性を知る努力もしなかったのかと。
 不甲斐なさに唇をかみ締めながら、改めて工房主に向き合う。怖気付いている場合ではないのだ。

「し、失礼します。先日、表の魔道機人を譲っていただけないかと伺った者で、魔道研究員のルードと申します。本日は是非かの……魔道機人の製作者についてお聞かせいただけないかと思い参上しました」

 一息で挨拶と自己紹介と来訪理由を唱え終えて、そのまま直立不動で反応を待つ事にする。
 工房内は静寂を保ち、返事を待つのをあきらめて退室しようと震える足を何度か叱咤して、工房主が作業を止めてこちらに向ける重圧に耐えること数十秒。体感時間はそれの数十倍に及んでいるのだが、顔色を悪くしている私に向けて、ようやく工房主の重たい顎が動いた。

「それを知ってどうする」
「はっ、はい。私共の上司が研究に有用だと……あの、制作費用は出せるそうなので」
「無理だな」

 それまでの長い沈黙は何だったのかと思うほどの速度で返事はかえされた。おかげで今度はこちらが沈黙してしまったほどだ。

「え……と、せ、製作者は貴方、という事で間違いないのでしょうか?」
「……半分な」

 短いながらも帰ってきた答えに合点がいく。この工房の棚に有る品物は、技巧の凝らされているのは多々有れど、大きな魔力が必要な物が揃っていない。
 おそらく魔道機人の構造を製作したのは工房主で、魔道を使う心臓ともいえる動力部分は別の人間が造ったのだろう。

「その……もう半分を作った方は?」
「死んだ」
「で、では形だけでも……」
「無理だと言った。もう、帰れ」

 にべも無く、続く言葉も無い。
 その日はあきらめておとなしく工房を出ることにした。踵を返しながらも、またお邪魔する意思は伝えておこうと思いなおし足を止めた私の背中に、重い声が届く。

「それで良いのか?」

 さすがに質問の意図を汲み取る事が出来ず。しかし、その言葉を聞いた私の心には今迄わだかまっていた想いが押し寄せる。

 ――代替品で満足なのか、と。

 今日、私は何をしに来たのだ? 上司に言われるがままに工房を訪れて、言葉どおりの質問を投げかけて、結局得られたのは製作者の情報のみで。それすら半分だけ。
 しかもそれは、私が求めていたものではない。私が求めていたもの、私が欲したものは――――。

 視線を上げる。窓の向こうには踊る機人。空を映さないはずの黒い瞳が何故か寂しそうに揺らぐから、私の鼓動は回転を上げ始める。
 私が欲しいのは彼女なのだ、とはじめて気が付いた。

「あ、あの。彼女をゆずって……」
「ダメだ」

 その答えも質問も、既に先日交わしたばかりだった。だが私の中でそのニュアンスはまったく違うもので、しかし答えにも迷いは無くて。
 私は肩を落とすのだった。







 工房を出ると、ちょうど彼女に集まる人影が見えた。やはり目新しいのか、彼女が踊っている日は工房の前で足を止める通行人は少なくないようだ。それでも工房が流行っていないのは、中に入る事すら躊躇われるほどの工房主の威圧感が原因である事は想像に難くない。
 人影は複数で彼女の踊りをしきりに見て…………少々近寄りすぎではないだろうか? それに、どうも柄が悪そうだ。
 他人のことを言えるほど立派ななりをしているわけではないが、通行人たちも彼らを遠巻きに見ては視線をそらしているところを見ると、その印象で概ね間違っていないだろう。
 まさか、魔道機人が高価なものだと考えないわけは無いと思うが、それでもちょっとした傷を付けてやろう等と思いつくような低俗な輩かもしれない。
 何よりも、彼女に汚い手で触れられる事に嫌悪感を覚えた私は、声をかけようとして、しかし彼らが身を引いたのを見て安堵する。
 我ながら情けないとは思いながらも、この後少しだけでも彼女の踊りを見学しようかとカフェの方へ視線を向けた瞬間。彼らの内の一人が彼女の顔に何かを押し付けたのを視線の端に見た。

「うわぁっ!?」

 出てきたのは実に情けない一声だった。
 押し付けられていたのは、咥えていた煙草のようだ。悪童どもは結局動けずに変な悲鳴を上げた私や、抵抗できない彼女を下品な声で嘲笑って去っていく。何がそんなに可笑しいのか理解はできなかったが、そんなものより彼女の損傷のほうが私には大事だった。
 ハンカチを取り出して彼女に付けられた焦げカスを拭う。彼女は動き続けているので苦労したが、黒い涙のようにペイントされた模様は拭い去る事は出来た。仮面が焦げたり溶けた跡は無いようだ。石膏か何かで出来ているのだろうか?
 彼女のあごを押さえ、マジマジとその整えられた表情を見入ってしまっている事に気付いて、慌てて手を離す。
 彼女は妨げられていた動きを再開し、終いまで踊りきると私の方に向かってお辞儀をする。もちろんそこまでが決められた動作なのだが、何となくお礼を言われたような気分になり、私は微笑む。
 顔を上げた彼女も、どことなく喜色が漂っているように見えてしまい、意識無く私は彼女の頬を這う髪の毛の一房に指を絡めてしまっていた。指ざわりは人間のそれと遜色は無く、もしかしたら誰か人間の髪を使っているのかも知れないと推測する。
 だからそれは自然な導きだったと思うのだ。指をくすぐる一房に私は口付けを落とした。

 そして気付く。工房主からの窓越しでも突き刺さるような視線。
 思わず一歩二歩と後退り、素知らぬ顔でカフェに向かうが、その顔は間違いなく赤く染まっていただろう。







「どうやら彼女とはうまくいっているようだな、ルード」

 あの日の失態は上司の耳にも滞りなく届いていたらしく、馬鹿にするような表情を隠しもせずに彼は私を扱き下ろす。

「うまくいってませんよ。先日ふられたばかりです」

 もっとも彼女にではなく工房主にだが。
 そんな事を呟きながらも迷いの晴れた表情を見せる私に上司は怪訝な表情を見せてくるが、詳しく説明する義理はないだろう。報告書なら既に提出済みでもある。
 しかし、敏腕な上司は傷心なる部下にとんでもない救済案をぶつけてくるのだった。

「そうか、それなら問題ないな。実はお前と会って話がしたいなんて言う奇特な女性が居るんだが。どうする?」
「は?」

 突然ふって沸いた話について行けず、私は何とか振りぼった頭で答えを返す努力をしなければならないのだった。

「はぁ、まぁ……はい。よろしくお願いします?」







 返事はしたものの、今一つ乗り気はしなかった。私には気になっている女性が居り、こんな機会は滅多に無いからなどとそんな中途半端な思いで他の女性に目を向けるのは、どちらにも失礼なんじゃないかと考えていたのだ。……例え片方が人間ではなくともだ。
 待ち合わせから遅れること数分。明るい色の髪を肩に弾ませながら、こちらへ向かってくる女性を見つけた。顔立ちや仕草の端々には幼い印象を残し、しかし服装には落ち着いたシックな雰囲気をまとわせている。
 約束の時間に遅れた事をしきりに謝ったり、これから赴く場所の説明を一生懸命したり、休憩のために入った喫茶店で会話が途切れた時に必死に話題を探したり。リタと名乗った少女は実に忙しない。私としては女性にはもっと落ち着いた雰囲気と心穏やかに過ごせる空気を持って欲しいのだが、年若い彼女にそれを求めるのは早急なのだろうか。
 しかしまぁ、リタのそんな何にでも一途に取り組む姿は微笑ましくもある。クルクルと変わる表情は見ていて楽しいし、仕草の一つ一つが年相応に可愛らしい。時折会話が途絶えると思ったらこちらの顔をじっと見ていて、目が合うと慌てて顔を背ける姿には好感を持つなという方が難しい。
 なのに私は、リタの髪の色が“彼女”と同じなのを見て、触れてみたい感覚に襲われてみたり、指先や身のこなしの女性らしさを“踊り”と重ねてみたり。隣を歩く少女と別の女性を比較してみたりして。自分が最低な人間なのだと気付かされる。
 一度でも話をしてみたいと考える要素が私のどこに有るのか大いに疑問に思ったが、それをたずねるのは止めておく事にした。

 別れ際のまた会う約束を引きつった笑みで返し、社交辞令のように手を振る。押し寄せてくる孤独感と自己嫌悪を公共物に叩きつけたい衝動に何度も襲われながら、その日は帰路についたのだった。







 仕事場の机の上で書類を整理しながら、リタという娘について考える。
 とても良い子なのは間違いない。あの子の事を好きになれたら、きっと幸せになれるに違いない。だからこそ自分なんかに関わらせるべきではないと思う。私が好きなのは心を持たない機械の人形なのだ。改めて突きつけられるその事実に自分の想いが酷くいびつで醜いものに感じられた。
 頭を抱えても、今日のノルマは終わらない。いつもより緩慢な体と頭を無理やり動かして、仕事に手をかけた時、上司が珍しいものを見たような顔で話しかけてくるので、私の不調もそろそろ最高潮に達しようというものである。

「何ですか?」
「いや? この時間にいるなんて珍しいなって思ったのでね」
「……仕事が終わってませんから」
「ふん。だが良いのか? もうお前の彼女が踊り始めている時間だろう。まぁ、本物の恋人が出来たのなら必要ないか。薄情な奴だ、幸せ者が、爆発しろっ」

 どんなに酷い言葉でののしられようと私の耳にまでは届いてこなかった。そうだ、今日は彼女が踊る日だ。何故今迄気付かなかったのだ。何故他の女性の事などに頭を悩ませていたのだ。
 戸惑いと憤りと驚きと、とにかくいろんなものが今日の鈍い頭と体を無理やり回し始め、私は座っていた椅子を蹴飛ばして立ち上がっていた。

「あ、ああ、あの……私は、そ、その、い、今からでもっ」
「あ? 何だルード、酷い顔色だぞ。早退でもするか?」

 上司のその言葉だけが、すっと頭に届いてきた。今日はじめてキッチリと歯車が噛み合ったような感じだった。そして、自分の中で回っていたものが中心からずれてしまっている事に気付く。
 だから私は彼女に会わなくてはならないと感じたのだ。

「はい、今日はこれで早退させてください」

 さっさと行けと手の甲を振る上司に頭を下げ、私は駆け出した。随分元気な病人だなという的確なツッコミも、私の足を止めるに足るものではなかったのである。







 魔道具工房まで走っても、彼女がいつも踊り終える時間には間に合いそうも無い。しかし足を止める気にはならなかった。
 工房が見える通りへの角を曲がれば、オープンカフェはそろそろ片づけを始めているのが見える。その向かい側には彼女の姿。まだ仕舞われていない事に安堵しつつ、早く片付けないと日暮れの急激な温度変化は魔道機人の機能を保つためにはよろしくないと工房主に文句を言いたい気持ちになった。
 速度を緩めながら息を整えると、彼女の傍らに人影が見えた。工房主が片づけを始めたのかと思い首を伸ばすと、自分の予想が外れている事が解る。
 そこに居たのは見知らぬ男だった。顔は酒気に染まり、眼は虚ろで一升瓶を片手に彼女に何かを訴えているが、その呂律はかなり怪しく、何を主張しているのか理解できない。どうやら一緒に飲もうと誘っているようだが、当然ながら彼女がその台座から降りるわけも無く、彼女が振るう指先を覚束ない足取りでどうにかかわしている。
 酔っ払いが彼女に体重を預け始める前に、私は彼らの間に身を滑り込ませることに成功した。

「だ、大丈夫ですか、貴方。足がふらついてますよ。今日はもう帰られた方が良いのではないですか?」
「にゃにおうっ! おれが酔っぱらってるって言うのかああん? ふらついてるのはそっちのねぇちゃんだっつうの! おれはなぁにぃちゃん、毎日コイツを飲んでる。だから大丈夫だ。なぁ、ねぇちゃんもコレを飲まなきゃやってられないよなぁ?」
「何が大丈夫なのか解りませんが、とにかく一度落ち着きましょう、ね。それに、彼女はお酒を飲めませんから」
「なんだとぉう! おれのさけが飲めねぇっつうのかああん?」

 その言動は完全に酔っ払いそのものである。どうにか男を彼女から引き離そうと酒臭い息と戦いながら身体を押し込もうとするが、長年溜めに溜めた貫禄と脂肪は私の貧弱な腕に余る代物だったようで、逆に押し倒されてしまうのだった。
 見上げる形となった男の顔色は酒気から怒気へと移り、興奮抑えぬ鼻息と共に抱えていた一升瓶を目の前の貧弱男に振り下ろす。私に出来た事といえば、両の腕で頭をかばい、来る衝撃に耐える事だけだった。





 しかし、いつまで経っても衝撃は落ちてこなかった。
 見上げれば夕陽の逆光に照らされた彼女の細い腕で。それは、滑るように男が振るう一升瓶を受け流し、そのまま男の身体を引き寄せると、自分の踊りの中の巻き込んでしまうのだ。
 私は驚きのあまり、言葉も無く呆然とその光景を眺めていた。今踊っているのは彼女が一度も見せた事の無いものだったのだ。それもそのはず、彼女は今、ソロではなくペアで踊っている。ワルツだかタンゴだかの区別は私には無理だったが、それはパートナーが素人であっても目を見張るほど美しいと感じられたのだ。
 それに彼女は今、台座の上に居ない。自由気儘にステップを踏みターンする。その回転について行けなくなったパートナーはやがて尻餅をつき、揺らされた脳と胃から逆流してくる内容物を吐き出すために、今回の舞台となった通りの隅へと引っ込んで行った。
 たった一人でペアダンスを踊り切り、彼女はその居場所へと戻ってくる。

「大丈夫でしたかルードさん。お怪我は?」
「け、怪我は無いけど君は、その声は……」

 聞き覚えのある声だった。つい先日聞いたばかりだ。肩を弾ませほつれた髪の毛を救い上げる仕草とまだ幼さを残す声は、とある女性を思いださせる。

「……リタ?」
「はい」

 仮面を外した踊り子は、踊りを終えた時のいつものポーズで私にお辞儀をするのだった。







 学校を卒業し、趣味のダンスで細々と生計を立てていたリタは、母親が流行病で倒れたのを切っ掛けに実家である魔道具工房へと戻ってきたらしい。母親は助からず彼女が工房を手伝う事になったのだが、持ち前の落ち着きの無さと不器用さでそれもままならなかったそうだ。
 そこで、自分が役に立つ事は無いものかと考えた結果、工房の看板商品になることを思いついたらしい。
 彼女は私がしょっちゅう見学に来ていることにも気付いていた。工房主である彼女の父親との会話や、仮面の焦げ跡を拭った事で魔道具に対して知識もあり人間以外にも優しく出来る人なのだと感心を持ってくれたらしい。
 しどろもどろで大げさな手振りを加えつつの説明は見ているだけでも楽しく、私は既に彼女に魅了されていた事に気付かされるのだった。


 だから今日も私は彼女の踊りを眺め来ている。上司の小言と工房主の鋭い視線に怯えながらも、ね。



メンテ
Re: 【三月期お題「少女」】お題小説スレッド【二月期「機械」批評提出期間】 ( No.278 )
   
日時: 2013/02/16 18:51
名前: 企画運営委員 ID:gZp0LP1Y

作品のご投稿お疲れ様でした。
16日(土)〜28日(木)は批評期間です。いつもより短いのでご注意下さい。
作品をご提出なされた方は必ず全作品の批評を行ってください。
批評だけのご参加もお待ちしております。


>第21回『機械』参加作品(敬称略)

>>272 ひみつのにんにくちゃん!:日々

>>273 にゃんて猫:螺旋れた心臓

>>274 brain:オルゴールロンド

>>275 ゐぬめ:孤独プロパガンダ

>>276 sakana:たまくずれ

>>277 空人:オートマティックな恋心
メンテ
Re: 【三月期お題「少女」】お題小説スレッド【二月期「機械」批評提出期間】 ( No.279 )
   
日時: 2013/02/25 01:50
名前: brain◆P3Wb.oVPT6 ID:guzqmo82

二度目の参加。自分が好きなテーマというのもあり、評価はやや厳しめにしてあります。作法よりか、個人的に思ったことが中心。それを踏まえてご覧ください。




>>272【日々】ひみつのにんにくちゃん!さん

簡潔な印象は「ストーリーが掴めない」ですかね……。

断片的に見ると
 音が鳴っている
 誰か?二人の仲睦まじい様子
 持ち帰ってきたロボットが原因で家族が死
 ロボットを作るも経済的に破綻
描かれている話の内容は分かります(私が誤読していなければ)。その内容から、考えたりできることも当然あります。
が、ドキュメントではなく小説である以上、話の内容を書くだけではやはりまずいわけで……
残念ながら「文章にされていない、見えない部分で何が描かれようとしているのか」が伝わってきませんでした。台詞の割合が多い割に、そのセリフから、肝心の「台詞で言われていること以上のこと」が伝わってこないです。そのまま淡泊に話が終わってしまうので、最後の一文の台詞から感じ取れるものが極端に少なく、少々もったいないです。

例えば、ストーリーを読めば、事故が起きるまでの二人の関係が恋人→夫婦というのは読み取れました。が、二人について、それ以上の事は読み取れないです。
強いて言うなら、「事故が起きるまではひたすらに平凡で幸福であったこと」ということになるのでしょう。しかし、それを伝えるにしても、仲睦まじい様子を台詞で説明するというだけでは弱いです。場面が飛びすぎていているのも、またあっさりしすぎる要因になっているような印象が。

文章から、夫がロボット技師だというのも理解できます。(その部分だけが妙に説明台詞っぽいのはマイナス印象)
そこから、舞台が近未来、というかロボットが関わってくるような世界の話だということが伝わってきます。しかしそれもまた、それ以上深く読むことができないのです。どのぐらいロボットが存在する世界なのか? どのぐらい発展した世界なのか? が不明です。
なぜかといいますと、世界観を掴もうにも、世界観を得るためのカギとなる単語が「ロボットを作る」など、断片的なものばかりで量が少ないためかと思われます。それらの情報のみで世界をイメージをするのにはどうしても限界があります。

あえて、深い部分に読解してほしいものを置いておられた可能性も考えたのですが、申し訳ないことに私には読み取れませんでした。限られた情報から自分なりの解釈、想像をしようにも、台詞から得られるものが少なすぎて味の薄さをどうしても感じざるを得ないです。……それは私が読み取れなかっただけかもしれませんが……それはそれとして、やはり小説だと「読み取れる」ことが大事なので、もしそういった作為があるという場合でも、せめて私のようなあっさり読む系人間でも読み取れるような構造にはしておいたほうがいいかもしれません。。
ではどうすればいいのか、と聞かれますと、うーむ、実は台詞が多い小説はほとんど読まないので、アドバイスがしづらいです。(というか、もし万が一私にアドバイスを求められても、私では「地の文で説明をつけてみてはどうか」と言う事しかできないかもしれません(汗)
とはいえ、これだけというのも無責任なので……

勝手ながら簡単な例示を
プロポーズした日を忘れたことを後悔している、という内容がありますね。これは後の展開の余韻になりうるシーンなのですが、このシーンでより読者の共感を誘うには
「5年前の今日も、丁度こんな日だったね」〜「何なの、もう。久しぶりに、やりたいなと思ってたのに」
これだけだと弱いです。もっと余韻となるように、主人公がどのように思ったかをもっと書くか、そうでなければ登場人物を濃くするかしたほうがもっと共感することが出来たかと思われます。
例えば、主人公をのものぐさっぽさをあえて強調し、「いつもながらうっかりしている」のような流れにして それが後の事故で後悔を増長させるような描写にする、など。台詞文のみの構造に拘るとしても、まだ味をつける余地はたくさんあります。

もっと話を厚く……たとえば、登場人物のキャラをもっと立たせる、それだけでもだいぶ変わってくるのではないかと思われます。

やや厳しめの評価となりました。実のところ、私が物語の世界観の存在を重視しすぎているか、地の文を用いた説明が存分にある小説を好んでいる故かもしれません。
雰囲気を読ませる、あるいは台詞文の多い小説に拘りがあり、それが私の書いた批評と相反するという場合、単に目指しているものがが違うと言うだけの話になってしまうので、その場合は私の批評は無視なさったほうが賢明かと思われます。10人いれば書きたいものは10通りですしね。





>>273【螺旋れた心臓】にゃんて猫さん

ディーニーについての描写の流れは好印象。
最初のカタカナのみの台詞からは、不気味なまでの無機質な第一印象が得られます。
地の文ではガラクタと呼ばれ、妙に旧式で、無機質な描写が続きますね。かと思ったら所々、中身空っぽとも言い難いような描写が入ってきます。
「自慢げに」「何度も何度も横に振り」等、ロボットがこういう、変に人間臭い動作を見せるのは私個人も好きです。ナレーションにまで滑稽無糖と言わせるとは。

しかし、一貫してストーリーが「何を語っているのか」が難解だったような気がします。登場人物が何をしているかの描写のみでは、どうしても読み取れない、もっと言えば「空白」の部分が大きく生まれてしまいます。
結果、最後まで読んでも、ぱっと見彼らが何をしているのかが見えてこないような。深読みすればいろいろ見えてきますが、抽象的な部分が多く、分からないところは分からずじまい、だったのが残念でした。
具体性ある物語を好む私だからなのかもしれませんが……そんな私からは、ストーリーそのものに関しては、言葉が出にくいといったところですね。申し訳ない。

目についたところは、「少年は」と、「人形の兎は」でひたすら続ける文章。いえ、問題があるというわけではありません。これらからは単純に少年や人形の容姿や様子、あるいは周囲の状況を読み取りました。物語の無機質感は伝わってきます。
しかし「(同じ主語)は」文章をずらっと並べること自体はそういう書き方なわけですが、それをあえてこの場所で使ったことへの意図が少々疑問です。いえ、単に私が「どうしてだろう」と思うという意味でですが。普通に説明するのではダメだったのかなとも思います。





>>274【オルゴールロンド】brain

私の作品。書きたいことを書いた以外のなにものでもない私の作品。あまり多くは語りません。全く持って大したことは書いてませんが、どうしても私自身の自己評価を知りたいと言う方はブログ等参照。内容は酷いんで耐性のない方にはイマイチおすすめしかねますが……。
出来は、そこまで粗悪ではなかったはず。と、信じたい。まだ他己評価が入ってないので落ち着けません。あと、見直してみると、改行をもっと上手にすべきだったか。
追記:適当に仕上げたわけではないですが、そういえば、油断しているところがいくつかありました。前に首もたげるって逆ですやん とか アレーなんでこんなこと書いたんだろ……な部分が多い!





>>275【孤独プロパガンダ】ゐぬめさん

技術的な批評について。
一文一文が長いですね。情報を詰め込みすぎていて、区切りが足りないということです。原因としては、その文の主語がどの部分なのかがはっきりしていないことでしょうか。
文章の中の主語がどれなのかをはっきりさせて、その主語に関わらない部分を切り分ける、また、要らない部分はカットしてしまう、といった工夫をすればもっと読みやすくなると思います。

と、言うだけでは無責任なので、一部を抜粋して、例示させていただきます。

戦争とは程遠い村だったが戦争のためとても貧しく、来訪者をあまり快く思っていない村人たちだったが少女は村を一直線に通り過ぎると何かに取り憑かれたかのような真っ直ぐな瞳で森へと向かっていった。
→村の説明と、少女の説明をはっきりと分ける。まぁそれでもまだ長いと言われるかもしれませんが。
(一例)
その村は戦争とは程遠い村だったが、戦争の影響でとても貧しく、村人たちは来訪者をあまり快く思っていなかった。←村の説明
しかし、村を訪れた少女は、その村を一直線に通り過ぎ、森へと向かっていく。その瞳は、まるで何かに憑りつかれたかのように真っ直ぐだ。←少女の描写

その文章でスポットが当てられているものは何か、を自分の中で明示して書くことが大事だと思われます。
(この点に関しては、私もあんまり人の事は言えないのですけどね。主語に対して情報を付加しすぎて長くなる、私も、よくやっては指摘されます(笑)
そのほかにも、「しかし」と「〜が」が一文の中に複数入っていたり、文章がよじれていたり、文法的に改善が望ましい点も多くみられました。
また、終盤には誰が喋っているのか、ぱっと見、分かりづらいところもあって非常に惜しい。これも、主語を用いて、地の文を重くしてみると効果的な描写ができると思います。
これらにつきましては、読書で理想的文章を習得したりリズムのセンスを磨くことが、上達への道だと思います。


ストーリーの批評について。
無機質な相手 というやくものを孤独というテーマと結びつけるのはとても読んでいて面白い題材です。最後の締めくくりかた、持っていき方がイイですね。
ただその分、もっと濃くしてもよかったかと思います、様々な要素を。
感情が揺らぐ描写は、最後の一文に持っていく重要な要素であるだけに、(個人的にですが)やりすぎと思うくらい派手な表現でもいいと思います。また、作中では、シャーレがその感情を態度に示すことがほとんどなく、内に秘めているだけというのはもったいなく感じます。
序盤に「出ていってください」というくらい冷たいのでしたら、もっと思い切り邪険に扱うような態度を書いて、孤独を望む様子を表現しちゃったり。後には友好な態度をもっと具体的に描写して、結論に至るまでの悩み方を描写してみたり。1シーン1シーンごとの「シャーレがペトリをどう思っているか」をもっと強く固めてみて、それに合う二人の様子を描くともっとステキになると思います。そこはセンスの見せどころというわけです。





>>276【たまくずれ】sakanaさん
技術面につきましては、特に私から口を出したいところはありませんでした。
で締めるのも批評として申し訳ないので、必死にポイントを探しました。うーん、ほとんど好みの問題になってくるので、気にならなければスルーでもいいです。

初見で読みづらいところがいくつか。なんとなく読んでいると一瞬足下をすくわれるかのように「?」と感じてしまうところがあります。
最初は分からないけれど、折り返せば分かる、という形式で書かれているのは承知しているのですが、それと「頭に抵抗なく入ってくるかどうか」はやはり別の問題である気がします。
どうすればいいか……私が目指している事とベクトルが違うように感じるので、適切なアドバイスはできなさそうです。申し訳ない(汗

台詞の濃度が高すぎる場所が所々見られます。説明が足りないとかそういうことではなく、むしろ説明はどこも至らぬ部分はないと個人的には感じています。ただ、無駄な部分が逆になさすぎて、テンポが速すぎると思われる部分がいくつか。
顕著なのは、三人が訪れてくるところですかね。心境の描写から混乱の様子がとてもよく分かるのですが、やはりテンポの速さを感じます。


ストーリーの批評。
とてもヘビーな話ですね。しかし、ただ重いに留まらず、それに対して純粋な主人公の気持ちを繊細に表されている、なんとも悩ましいものを感じました。
また、しめくくりに関しても、重くのしかかってくる現実に、ささやかな救済をもたらす。きれいな終わり方にされていると感じました。(私なぞ落としっぱなしです)

しかしながら、気になった点が。
最後の2行ほどの部分、やっと喜びを感じることができた部分はもっと濃くてもいいと思います。コレ、個人的には非常に惜しかった部分なのではないかなと。
きれいにさっぱり締めるのもアリなのでしょう。しかし、ここまで引っ張ったからには、個人的にはここは更に大事にしてほしかったなと思いました。
主人公の気持ちが揺るがされる、その表現の仕方がとても良かったと思うので、だからこそ。

また、事態が事態ですから、空気の冷たさはもっと強烈でもよかったのかもしれない、と感じました。無機質感、はまだまだ出せそうだなと。
軸がとても良い、だからこそ、肉付けできるところはまだまだありそう、と感じられました。







>>277【オートマティックな恋心】空人さん
ストーリーについて。
また今回もやられましたね。文句なしどころか私の好みそのまんまの作品でした。
無機物的なモノに恋をするという「起」の部分からさっそく惹かれましたが、その期待は最後まで裏切られず。彼女のために誠実な主人公の様子と、それをきれいに結末に持って行かれたストーリーの流れ、いやぁ、私は好きですね。
登場人物の魅力も、不思議な焦燥が抑えられず先を先をと読みたくなるストーリーも、オチというと失礼ですが結末も。文句ないです。


技術面の批評、うーん……
……うーん……
うーーーーん………
強いて言うならリタとの初対面はもっともっと具体的シーンがあってもよかったかと思います。あえて少なくされたのか? とも思ったのですが、ここは「人形」並に具体的なほうが、より対比が強く見られて良いのではないかなぁ、と感じました。個人的にですけどね
それ以外は……申し訳ないことに私の力量ではとても粗探しできませんでした! 流れるように読めました、突っかかったところもなし。

とても楽しく読ませていただきました。感謝。
自分ではこういった明るく清々しいものは滅多に書かないのですが、こう読むとどうも羨ましくなる……。

その他、チェックしたポイントといえば「爆発しろっ」
ウーム、空人さんの作品は度々拝読しているのですが、まったくいつもながら油断ならない!
メンテ

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