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[742] 雨、降る日のバスケ
   
日時: 2013/11/14 00:09
名前: 創魔 ID:eNpJlsL6

なぜバスケをやるのかと聞かれた。

なぜバスケが強いのかと聞かれた。

 バスケよりも好きなことがあるから、それを忘れるためにバスケを始めた。

逃げるために始めたバスケから、僕は逃げられなくなった。


>>1-  登場人物一覧
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Re: 雨、降る日のバスケ ( No.22 )
   
日時: 2013/11/25 13:23
名前: 創魔 ID:gBtzJEE2


 朝7:20になっても、藍堂は部活に現れなかった。部員も不審がる中、今日は来ないのではないかとさえ言われる。
藍堂は基礎練には形だけ参加するが、その他のチームとのパスとか、シュートの練習とか、そういう物には一切出ない。
先輩の手前とあって毎日しぶしぶ時間通りには姿を現していたのに、今日ばかりは違っていた。
練習が始まって20分後のことだった。ガシャリ、と重く扉の開く音がして振り返れば、藍堂がいた。

「おっせーぞぉ」
「なーにやってたんだよ。腹痛?それとも朝の抜きどころに迷ってた?」

からかい口調でそういう志田と小林に舌を打つも、藍堂の顔色は果てしなく悪い。
それどころか足腰がガタガタで、立っているのもやっとの様子で体育館に入ってきたかと思うと、
教科書もそこそこにしか入っていない鞄を重そうにおろして、壁際にぶつかるように崩れ落ちて、そのまま座り込んだ。

「死ぬ…、も…限界。…今日は、も…一歩も動けねぇ…。つか、学校来れた俺すげえ…」
「おいおい、どーしたんだよお前!?」
「ていうか、なんか頭とか手足ドロだらけじゃね!?頭に葉っぱついてっし、すり傷だらけだし」

わいわいと集まってきた1年が、その怪我だらけドロだらけの体を見て驚いた顔をした。
先輩たちも集まってきて、そのあまりの死人ぶりに頭をかく。体力だけは宇宙並みの藍堂が、へばっている。
低く呪詛を吐くような台詞を聴いて、アマ公が吐息をついた。清水が眉をひそめて、藍堂の傍にしゃがみ込んだ。

「…冗談抜きに、お前…足が痙攣起こしてるぞ。おい!渚、冷却スプレー持ってきて」
「どーしたの、藍堂くん。ケモノ道でも通ってきたみたいな格好して」
「っせぇ…、道が混んでたッスよ…」
「どんな道だよ」

使いすぎの足の筋肉を一気に冷やして、渚がスプレーを軽く振った。
小林と志田が、顔を見合わせて苦笑いする。全国最強のエースの、思いがけずへばった姿に驚いたのだ。
陰で、ボールを腕に抱えたまま、どこか浮かない顔をしているアマ公を見て、藍堂は眉間に皺を寄せる。
すまなそうな、申し訳ないような顔をしているそれが気に入らなかった。そっぽを向き、口調を大きく悪態をつく。

「…ひさびさに朝練で本気出したら、思いのほか訛ってた。やっぱ普通の朝練じゃ、俺には足りねー」
「おー!お前、なんかスッゲートレーニングでもして来たのか!?」
「…シャトルラン260回が笑えてくる」
「マジ!…つかお前のその記録なに!?」
「自主トレするのはいいが無理をするな。…体力付く前に体壊すぞ」

心配そうに言ってくる清水を見上げると、その隣にいた渚が屈みこんできて藍堂の足に触れた。
まだわずかに痙攣を起こしている足を見て、次の瞬間持ち上げたかと思うと、ぐっとの体重をかけて伸ばした。
そのまま手早く靴を脱がされたかと思うと、足の裏にタオルを当てて肘ではさみ、手のひらで伸ばされて悲鳴を上げた。

「いだだだだ!!…ッきなり何すんっだよ!!」
「バカ。一応、運動後のストレッチしただろうけど、こんなんじゃ足りない。ハードな自主トレし過ぎ!」
「はぁ!?」
「渚は整体師の娘で、ストレッチやテーピングならプロ同然だ。体の疲れも手に取るようにわかる」
「アマ公、部室から氷持ってきて。あと志田、バケツも。氷水に足突っ込んで、一気に冷やすしかない」
「あ…、はい」

言われて、体育館から出て行った姿を藍堂が見送る。周りの先輩たちは「やっぱエースの練習はすげーな」と
買い被っているが、彼女は違っていた。藍堂の足にかかった負荷、腰への負担、足裏の疲労。
すべてを見抜いて、藍堂が不味い状態だということを察知していた。足の痙攣は、汗と共に止まらない。

「…はぁ。もうすぐ授業だけど、…仕方ないか。あんた、1限休みね。
足冷やしたら、すぐ保健室行って、ベッド借りて横になること。あたしがマッサージしてあげる」

「あ…?いらねーよ、こんなもんくらいで…」

「ッセェヨ!!物分り悪ぃーガキだな!!あと2時間もしたら、筋肉ぜんぶ固まって動けなくなるっつってんだよ!!
立てなくなるくらいの筋肉痛になる前に、テメェの症状自覚して『お願いします』くらいの陳情して黙ってされてろ!!」

「ッ…、へ!?」
「あと足の裏!ぜんぶテーピングするから、志田ありったけ持って来い!あとバヤシ、コイツに肩貸して教室に送ってやれ!」

「ハッ…、ハイィッ!!」


急変したマネージャーの怒号に、1年全員が凍りついた。
「あーぁ…」とうなだれている2年と、血の気の失せている清水が立ちすくんでいる。
爪の先まで硬直した小林の肩を、鳴海が叩いて吐息をつきながら耳打ちした。

「…これだから、キャプテンとマネジは成立しても、清水に彼女って関係は無理だったんだよ…」
「オレ…、自分が怒られたんじゃないのに…もう泣きそうッス…」
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