Re: Strange Friends ( No.1 )
日時: 2011/11/09 17:41
名前: あづま ID:SqJEoHys

「それで、お前は誰だ?」

とあるアパートの一室。
二人の人間がそこに向かい合い座っている。
1人はスーツを着た若い女性。もう1人はセーラー服を着た少年。

「何度も言っていると思うんだけど…僕は天使みたいなものだよ。」
「誰が信じるんだ。」
「少なくとも僕は天使っぽいので、君はあと何分かで面倒になって信じるよ。これは決定事項。」

少年の言葉に、女性は頭を抱えた。





金曜日の午後9時過ぎ。
街頭に照らされた寂しい道を歩いていた。
上司の仕事を押し付けられ、定時で帰ることができたはずなのにこの時間になってしまった。
それにあいつからの救助要請メールがイライラを余計に増やす。
『趣味以外にもやる事があるだろう中卒!仕事を溜めたツケだ、絞ってもらえ。』
メールを怨念と共に返信し、もうアパートの前に来ていることに気づく。
ふと、2階の自分の部屋を見上げると電気がついていた。

「…脱出済みか?だったらメール送るなよ。」

メールを送ったことで少々発散されたイライラが倍になっているのを感じ、階段を上った。


「おい中卒!さっさと帰…は?」
「あ。」

仕事を投げ出し逃げてきただろう友人を追い返そうと思い部屋に勢いよく入った。
しかしそこには友人の姿がない。
かわりにそこにはセーラー服を着た小学3年生くらいの少年がいた。

「コスプレ?…あ、あいつが寄こしたのか?人攫いかよ…家はどこだ、送るよ。小学生だろ?もう遅いからな。
 っつか親怒ってるんじゃないか、9時だぞ今。」
「あいつって誰だい?」
「奏音って奴。……知らないのか?あ、富根紫音って名乗ったのか?」
「カノン、もしくはトミネシオン。」

そう言うと、少年の姿は一瞬見えなくなり、次の瞬間には再び現れた。
一瞬の出来事とはいえ、少年が消えた。
私ははどこかで事故ったかそれとも書類の整理中にでも落ちたかんだろうか。

「どうしたんだい?百面相じゃないか。まぁ、僕は自分の意思でここに来たんだ。
 しばらく君にはお世話になるよ、一応ヨロシクね。」

しかし目の前の少年の様子から消えたようには見えず、瞬きでもしたのかと思いなおす。
目の前の人間が消えるなど非現実的だ。

「お世話ぁ?!…なんだ、家出か?家の電話番号を教えろ。それと学校。一応両親と学校には連絡入れないと駄目だと思うんだが。
…というかお前外人か?親は日本語理解できるよな?」
「電話?そんな物いらないよ。僕は学校に行っていないし、親…もまぁ、君が連絡を取れる範囲にはいないからね。」

親が連絡を出来る範囲にはいない、とはどういうことだろう。
私の目の前にいる少年は見た目からして日本人ではない事は明らかだ。
普通に考えれば外国からの旅行者なのだろうが、一人旅は彼の年齢ではありえないだろう。
ホームステイも経済的には受け入れる事はできなくはないが、それには見えない。

「…じゃ、お前は何だ。しかたない、電話はあるから自分で連絡いれろ。世話は仕方ないからみてやるよ。金はたかるし。
 じゃ、自己紹介位するか。私は竹谷華凛。23歳、会社員だ。遅くても10時までには帰ってくるから、お前もそれまではいるように。」
「ヨロシク。僕はサクソル。君達の世界で言う天使…かな?」
「はぁ?あれか、中二病ってヤツか。早いな、発症。」
「ま、座らないかい?人間は立ちっぱなしだと疲れるだろうと思うんだけど。」
「確かに立ちっぱなしは疲れるが…お前が言うことなのか?お前も人間だろう。」
「いや、天使みたいなのだよ?君とは存在そのものが違う。僕は選ばれたんだ。」
「どっかでなにかをミスった…。」

私達はテーブル越しに向かい合って座り、しばらく質問が続いた。





こうして話は冒頭に戻る。
何度も少年に対して質問を重ねるが分かったのは【サクソル】という名前くらいだ。
いや、サクソルという名前自体偽名だという可能性も捨てることはできない。
実質、少年について分かることはゼロに等しかった。

「もういい。お前は天使だと証明できるものはあるのか?」
「あるにはあるけど…。まぁ、君だしいいか。」
「私だし…って何。」

そう言うとサクソルは周りの景色を一瞬歪め華凛の視界から消えた。
あれは気のせいじゃなかったのかと友人のことを話した直後の出来事を思い出すが
消えたから天使だ、という結論には至らない。
数秒後、彼がいたところが一瞬歪むと何かを手に持ったサクソルが現れた。

「いや…あのな、消えただけじゃ天使じゃないぞ?人間じゃないっぽいのは分かったが。」
「順応性高いね、君。確かに、消えただけなら僕が天使だっていう証明にはならないだろうね。
 だから一応、これなんてどうかな?君が働いているときに書いてたものだけど。
 けっこう訂正が必要なんじゃないかな、毛の少ない縞々の人に怒られていたよ?一応、資料も持ってきたけど。」
「は?…あー、ホント……数値一個ずつずれてる。何で気づかなかったんだ…。
 ……ここあの禿がやったとこじゃ!え、私はそこで怒られてるのか!理不尽だ、クソッ!あー、2時間あれば終わるか。
 仕方ない、色々と腑に落ちないが信じるよ!まぁ警察沙汰にはならないみたいだし、金は足りなくなったら馬鹿から貰うから心配すんな!」
「信じてくれたのかい?君って単純と言うか分からないというか…。じゃ、これ返してね。戻してくる。」
「は?え、直させてくれてもいいじゃないか。」
「僕、歴史は自分の意思で変えちゃダメなんだ。じゃ、2秒後に。」

そして強引に書類を取り上げ、周りの景色が歪みサクソルは消えた。
そして私の目の前にきっかり2秒後平然とした顔で再び現れた。

「ね?君は僕を信じただろう?あ、あとそうだ、これ美味しかった。マスターにもあげたいな。
 お金の心配は要らないんだろう?買ってくれるとありがたいんだけど。」
「嘘…月曜早く出なきゃいけないのか。っていうかこれ数量限定のやつ!勝手に食ったのか!」
「待ってるの暇だったんだよ。僕はさっきも見せたとおり時間と場所が分かれば場所も移動できるけど
 人間の気持ちも感じてみたいんだ。まぁ、おかげでタイクツが分かったようだよ、ありがとう。今日はもう寝ようか?」
「楽しみしてたのに?弁償しろ…!」
「じゃ、君が起きるときに。」
「待てコラァ!!」


周りを歪め、サクソルは消えた。
華凛は舌打ちをし、明日は休日なので読書をしようとするが怒りで内容が頭に入らない。
ふと携帯を見るとメールの着信に気づいた。
『お前ふざけんなし。おかげで軟禁されてんだけど。絶対に許さんが夏で許す』
という矛盾メールが友人から届いていた。
【夏で許す】という文字に昨年を思い出し鬱になり、これ以上起きていたらイライラで爆発するだろう。
もう夜も遅いのでシャワーを浴び、一連の出来事が夢である事を願い布団に倒れこんだ。

Re: Strange Friends ( No.2 )
日時: 2011/09/05 05:55
名前: あづま ID:5FlPEQFo

窓から朝日が差し込み、その光が女性を照らした。
眩しいと感じたのだろう、女性は顔をしかめ起き上がった。

「ちッ…7時か。5時間しか寝れてないじゃないか。
 昨日はシャワーだけだったっけ。風呂はいるか…てかいないのかよ。やっぱ夢か。」

布団をたたみ端に寄せると、風呂場にお湯を入れに行った。
そして湯船にたまるのを待つ間朝食の下ごしらえをしておく事にする。
冷蔵庫を見ると野菜が少ししか入っていない。
それをすべて適当な大きさに切りサラダにする。
パンも台所の端に袋ごと落ちているのを発見し、賞味期限を確認する。
…まぁ平気だろう、三日くらい。
サラダとパンを出しておき一応「食うならこれ食えよ?」と誰もいない天井に話しかけ
風呂場へと歩いていった。





「はぁ…、夢で良かったのか?嫌な夢だな。」

湯船に浸かり昨夜の出来事を思い出す。
家に帰ったと思ったら謎の少年がいて自分は天使だと言い出した。
天使であるという証拠だといって私が帰宅する前に整理していた書類と資料を持ってきて
馬鹿上司が自分のミスを私に押し付けている未来の出来事らしいものを教えてくれた。
もしこれが本当ならば癪なので月曜は3本くらい早い電車に乗らなければならないだろう。

「っつか、なんで私のところに来たんだあいつは。」

奏音のところに行けばよかったんじゃないか…?
あれは異世界やらなんだか理解しがたいものが大好きな人間だ。
男好きだしもしかしたら貞操が危ないかもしれないが、あれは見るからに未成年だ。
さすがに未成年には手を出さないだろうし、経済力も私よりはるかに上だ。
家も同学年なのに立派なのを持っているし…てか22なのによく一軒家持てるな。
まぁ、あれはあいつの才能だし趣味だからやっていて楽しいんだろう。

「本当…なんで私……?」
「それは君がちょっとお金に余裕がある平凡だからだよ。
 君は歴史の大筋に関わらないようだからね、僕がちょっとお世話になっても大丈夫だと思ったのさ。」
「な゛、どっから出てきてるんだ!」
「いや、君の未来がちょっと変わっちゃったみたいでね、起きるのが僕が見た時間より早くなってたんだ。
 でもこの程度なら君個人の歴史だし問題は起こらないよ。」
「そうじゃなくてなんで風呂場に、しかも今私は裸だぞ!!」
「歴史は変わんないし。話を変えていっつも思うんだけどさ、女体って色々面倒じゃないかい?」
「ホントに変えたな。別に面倒じゃないぞ、私は生まれてからずっと女だからな。
 昨日話した所に行ってろ。サラダとかパンも食っていいよ。私はもう上がる。」
「面倒じゃないのか…。まぁ、あの奏音って人を見る限り、君は確かに…面倒じゃないかもね。」

突然現れ目の前に座る自称天使に一瞬我を忘れる。
しかし彼には羞恥心がないのか話を続けた。
そして突然の女体の話に疑問を持ちつつ彼の視線をたどり自分の体のある一点を見ている事に気づく。

「…胸か!?お前胸のことを言ってたのか?!あいつが規格外にでかいんだ、私は小さくないぞ!!」
「確かに僕は胸を見てたけど、別に小さいとは言ってないじゃないか。じゃ、3分後に。」
「五月蝿いッ!さっさと出て行け!!」

そう言うと彼は景色を歪めて消えていった。
いちいち周りの景色を歪め消える彼に、ふと疑問が浮かぶ。
―――居間まで歩いていけないのか?10秒あればいけると思うんだが。





風呂から上がり身体を拭いた彼女はふと視線を壁に向けた。
そこには自分の身体が写っている。

「小さくない…よなぁ?」

脱衣所の鏡に映った自分を見てぽつりと呟いた。
一応Cなんだが…あいつには確かに及ばないけど……。
って…わりとCは普通だよなあ、多分…。





「よ、お待たせ。」
「いや、待ってないと思うよ?色々僕も楽しんできてるしね。
 でも、ずいぶん悩んだようだね。走るのに揺れて邪魔になったり遠くの物を取ろうとして他の物を倒さないんだろう?
 それならいいじゃないか、悩むことじゃないだろう?」

こいつ…女心を分かってないな……。
おそらく悪気はないのだろう。それがまた厄介なのだが。
サクソルはサラダのトマトだけを食べている。

「レタスは食わねーのかよ。」
「この薄緑のヤツ?なんか味がないの。せっかく食べるんだったら味があるのを食べたいじゃないか。
 だからこのふわふわしてんのもあんまり…。」
「あ、そ。じゃあ残しとけ、私が食べるから。あと今日、お前のものを買いに色々行くからな。」
「そうかい?それは嬉しいや。」
「そう、それはよかった。で、服なんだがそれしかないのか?結構目立つぞ?」
「これ?あ、変えようか?というか着なきゃいけないって結構辛くないかい?
 これいちいち作るの面倒なんだけど。みんな裸でいいじゃない。」
「着なきゃ警察行きだ。というかそれ作ってるのか?それこそ面倒じゃないか。だったら買えばいい。楽だぞ?
 あと裸でいたいんだったらアダムとイヴの辺りに行けばいいじゃないか。」
「いや…ただ単に創造するのが面倒でね?この衣服はこの身体を作るときについでに創造してるから裸と変わりないんだよ。
 まぁ、着なきゃいけないのは分かってるからそうだね、買って。」
「今すごいことを聞いた気がするがいい。ただ身長がなぁ、入るかな?」
「だったら君の身長にあわせようか。それなら入るよね?」

そう言うと返答を待たずに彼は姿を変えていった。
姿を変えるのは辛いのかときおり声が抑えられず漏れてしまっている。
変化が終わった彼は息切れしており、面影こそあるものの別人のようだった。

「っはぁ…これぐらいで…どうだい?」
「あぁ、声も変わるんだ。中3くらいか?ただ全裸はやめろ。」
「服…をくれるんだ、ろう?いいじゃないか。」
「はぁ……使ってない下着あったかな。テレビでも見て待ってろ、持って来る。」

そう言って、彼にテレビの電源を入れリモコンを手渡す。
が、リモコンは彼の手には収まらず軽い音を立てて床に落ちた。
仕方がないので自分で番組表を見る。

「ここを押すと変わる。アニメで良いか、お前子どもっぽいし。」
「君、失礼じゃないかい?アニメは楽しそうだから良いけど。」

サクソルの言葉を軽く聞き流し、彼に着せる衣服を探しに寝室へと入っていった。





「ま、こんなもんか?」

下着はボクサーといっても女物しかなかった。仕方ないからこれを着てもらうことにする。
が、流石に上の服は女物を着せるわけにはいかない。
といっても華凛は休みの日はもっぱら家にいるのでサクソルに着せるのはジャージなのだが。
友人が逃亡してきたときの服とコスプレセットを4つほども見つけたがそれは大きすぎるし女物である。
なので面倒だからと適当に入れたためサイズが小さかったジャージを押入れから引っ張り出してきた。
居間を見るとサクソルがテレビを見ている。
彼は時空移動できるはずなのにそれをしないでテレビを見ているということは案外気に入ったということなのだろうか。
ただ、全裸なのが変態くさい。

「おい、とりあえずこれで我慢してくれ。あと買ったら着替えるから。」
「分かったよ。ただこれはどうやって着るんだい?」
「そんなの私を見て察しろ。ボタンがない分楽なはずだ。」

しかしズボンの前と後ろを逆に穿いたり、首を出す部分から腕を出し着られないというベタな事をやり
サクソルがキレて華凛に死なない程度の電撃を浴びせ気絶させてしまったりして
買い物に出かけられるのは10時過ぎなのであった。

Re: Strange Friends ( No.3 )
日時: 2011/09/05 05:56
名前: あづま ID:5FlPEQFo

午前11時。車内にて2人は言い争っている。
原因は買い物に出る前の出来事。
服を着れなかったサクソルが華凛に八つ当たりをして意識を失わせてしまい出かけるのが遅れた。
本来、彼女はそこで気絶しないはずだったので彼は歴史を変えてしまったことになる。
幸いそれは家の中で起こった出来事であり影響はないに等しいのだがサクソルは気に入らなかった。
華凛が目覚めやっと出かけたのだが運悪く渋滞につかまってしまったのだった。
彼は普段は時間を移動している為待つ事に対して耐性がない。
不機嫌になっていくサクソルに華凛がこの世界で暮らしていくための最低限のルールを教えようとした。
だが、教えられたのではダメだ、自分で勉強して分からなければならないとサクソルはそれを拒否した。
そうなると必然的に話題はなくなる。
そして彼が朝の出来事を持ち出した事によってこの言い争いが続けられているのだ。

「あぁもう、なんでこう詰まってるの?もういい、買い物ってどこでするんだい?」
「んだよ…。ここしばらくまっすぐ行って左に曲がるとあるデパートだけど?」
「そう。…あーっ、この世界の服だから時間移動できないのがホント嫌だぁ…。」
「じゃ、人間の気持ちが分かるだろう。良かったな。」
「そうだね、僕が分からないのは癪だし。寝られればいいんだけどな。」
「寝たらいいじゃないか。お前は運転しないんだし。」
「天使は寝ないんだよ。えっと…堕天使?になれば寝られるんだけど。あと悪魔も…。」
「何で堕天使が疑問系なんだ。…というかやっぱり中二病だな、お前。堕天使とか悪魔とか。」
「だって僕達正確には天使じゃないし?形容する言葉を知らないからこう教えられただけだもん。
 ちなみに天使は普段天使の住むところで暮らしてる存在。堕天使はマスターか執行部隊からの使命でその世界に対応する姿で
 それを果たす存在。使命が終われば戻るよ。それで…悪魔、は天使じゃなくなった存在。追放…かな?」
「へー…さっぱりだ。ま、私には関係ないな。というか話していいのか?私が知った事で歴史が変わったり?」
「そこは平気だよ。僕は色々できるし、乗り越える方法も人は知っているものだろう?
 それか、乗り越えても忘れちゃったりね。」
「そうか…?あ、動き始めたな。」

やっと動き始めた車の列に2人は安心する。
どうやら事故が原因だったようで、片づけが終わってしまえば後ははやい物だ。
5分ほどで目的のデパートに着き、外にでる。
デパートでの注意事項を教えようとしたが、サクソルは聞こうとしなかった。
彼の態度に迷子になりませんようにと華凛は祈る事しかできなかった。





3階の衣料品売り場。
ここに来るまでエスカレーターにはしゃぐサクソルを抑え、逆走しようとするのを止めるなどして華凛は必要以上に疲れていた。
小さい見た目ならまだしも、今は中学生くらいの見た目である。
周りの視線が痛く、無理にでも教えるべきだったと公開するがもう遅い。

「じゃ、好きなのを選べ。元のお前の身長に合うやつをな。私はその間お前の下着買ってくるから。」
「僕を放置するのかい?それは正気?」
「仕方ないだろ?渋滞で余計な時間くっちまったし。」
「僕が選びたいんだけど!」
「選ぶって…そんな種類無いと思うんだが。第一下着は見えないからセンスとかもなぁ…。」
「君は黙って。僕は選んでみたい。これは僕の意思だ。」
「分かったよ…。じゃ、そこの椅子に座ってるから選んだら来い。今夏じゃなきゃ野菜とか買いに行くんだけどなぁ。」
「了解!」

近くにあったサンダルをカゴに入れ、それを渡す。
するとサクソルは売り場へと走っていき、人の中に消えた。
今彼の外見は中学生くらいになっているが、中身はそれよりも幼く感じる。
人を見下したような発言には腹が立つが、反抗期だと考えるとなんだかほほえましく感じてしまう。
ここまで考えて、ふと自分はこんな短い時間で絆されていると感じた。
赤の他人ではあるが弟のように思え、案外自分は一人暮らしが寂しかったのではないかと。
両親にも、高校に上がってから会っていない。
あの馬鹿な友人も仕事と言うか趣味に没頭しており、会う事は年に10日あるくらいだろうか。
この事実に気づくと、こんなムカつく少年でも一緒に暮らせるのは素直に嬉しいと思った。

「ま、この世に居なくなるんだろうけどな…いつかは。」

声に出すとそれが酷く重く感じた。
それを忘れるように、椅子に座り携帯を開いた。





「や、終わったよ。これくらいで良いのかな?」
「サイズは…ま、大きい分にはベルトとかすればいいし、いいんじゃないか?じゃ、下着な。」
「めんどくさいねぇ、見えないのに着るなんて。」
「汗の吸収とかに必要なんだ。天使は汗かかないのかもしれないけど、一応な。」

衣類の会計を済まし、下着売り場へと移動する。
華凛の予想と違い、男性用とはいえ意外と種類があった。
種類の多さに彼は迷っているようで、色々な種類を勧めてみたがブリーフだけは拒否した。

「お前…なんで嫌なんだよ。」
「これはダメ!絶対に嫌だ、何かが僕にそういってるんだ!!」
「じゃ、Tバック。これのほうがやばくないか?」
「…いや、面積少ないし穿いてる感じがしないだろうからいいかも。」
「…洗濯物干しがいたたまれない。」

結局、無難にボクサータイプのを買った。





一通りの衣類を買い終え、サクソルをトイレで着替えさせる。
彼は嫌がったが、普段の外見は小学校中学年くらいなので女子トイレで着替えている。
更衣室で着替えればいいのだが、入っていった人と出てきた人が違ければ騒ぎになりかねない。

「終わったよ…開けてー。」
「鍵はそっちだ、私には開けられない。」
「あ、そうだったかい?」

トイレの扉をあけ、サクソルが出て来る。
やはりサイズは大きかったようだが、どうせすぐ成長するからと大きいものを着せていると考えれば平気だろう。
サンダルもサイズは大丈夫だったようで華凛は安心する。

「平気そうだな。じゃ、飯食ってお前の雑貨買って食料買えば終わりだな。」
「僕はお腹減らないんだけど…。」
「私は減るんだ。お前は食べなくてもいいぞ、ずっと見てろ。」
「食べる!人間をもっと知りたい!!」

彼の言動に、姿が変わってもやはり子供だと思った。
手を繋ぐと嫌がられたが、リモコンのように彼の手をすり抜ける事はなかった。

Re: Strange Friends ( No.4 )
日時: 2011/09/05 05:56
名前: あづま ID:5FlPEQFo

「へぇ、ここがレストラン。なんか楽しそうだね。」
「昼時だし混んでると思ったが…意外と空いているな。あんまり待たないんで良いんじゃないか?」

サクソルの衣類を一度車に積み込み2人はレストランに来ていた。
今日は休日であり時間も昼時なので混んでいるだろうという華凛の予想に反し、
レストランはそれほど混んでおらず10分程度待てばいい位の人数だった。
やがて名前を呼ばれ二人で席に着く。
イキイキとメニューを広げ眺めるサクソルとチラッと見て何を頼むか決めた華凛。
サクソルは5分ほどメニューを眺め、ナポリタンとイチゴパフェを頼んでいた。

「ナポリタン…そんな家でも作れるようなものでいいのか?」
「うん。結構好きなんだよ。」
「食べた事あるのか?」
「マスターがね、好きなんだよ。僕も結構長い時間地上界にいるんだろうし。
 果物とか野生で食べられるものは結構食べてるかな。あとわりと状態がいい残飯とかもね。」
「天使が残飯ね…。あと"いるだろう”ってどういう事だ?」
「あー…僕は時間を移動してるだろう?だから正確にどのくらいいる、とか分からないんだよ。
 例えば3日後に会う約束をすれば君たち人間はその間の3日間の歴史があるだろう?
 でも僕は移動できるからその3日間の歴史が存在しないんだよね。約束をして別れた次の瞬間にはもう会えるわけで。」
「そうか…便利なような悲しいような…。」
「悲しいかな?やっぱり人間は分からないなぁ。マスターか…な、分かるとすれば。」
「マスター凄いな。」
「うん、僕らを作ったからね。いろんなことを知っているし。」
「神様みたいなもんなのか…お前のマスターは。」

この後も料理が運ばれてくるまでマスター談義を重ねた。
料理が運ばれてきてからは黙々と食べ続けた。
サクソルは華凛が頼んだドリアも食べたがり二人は半分ずつ交換した。
食べ終わった頃にパフェが運ばれあまりの大きさに華凛は圧倒されサクソルは喜んだ。





食事を終えた2人は食品売り場に来ていた。
サクソルはレストランで食べたパフェをとても気に入ったようで何度も話題に出していた。

「なぁ、晩に食べたいものとか…。」
「パフェかな。」
「それは流石に重い…。今度また出かけたらな。」
「うん……。」
「残念がるなよ。ずっと出かけないわけじゃないんだ。」
「マスターにもあげたい…。」
「作ってあげればいいじゃないか。で、晩御飯のリクエストは?」
「なんでもいいや。」
「それが一番困るんだよ、全く。」

売り場を一通り見回し、作り置きも可能だろうとカレーにする事にする。
多くあっても困らないので茶碗などの雑貨も数点セットで買い、会計を済ませる。
荷物を持たせようとするが荷物は彼の手をすり抜けてしまった。
透き通るなら仕方がないとあきらめて全部自分で持ち、手を繋ぐ。
やはりサクソルは嫌がったが、彼はおとなしくしていた。





行きの半分以下の時間で自宅に帰ってきた。
サクソルは居間のソファでアニメを見て、華凛は冷蔵庫に勝ってきた物をしまいこむ。
茶碗なども一応洗って伏せ終わった後、サクソルの隣に座ると彼が話しかけてきた。

「僕が勝手に押しかけてきたんだし聞くのもあれだけど、なんで面倒を見るんだい?
 君は気も強いようだし追い返そうと思えば追い返せるはずだよ。」
「なんでって、気まぐれじゃないか?それに、お前は言ったじゃないか。後何分間かで信じるって。
 だから私がお前の面倒を見る事は決まっていたんだろう。だから私を選んだんじゃないか?」
「いいや、僕は君の未来を一通り見たけどそれは僕の関わる前の未来だからね。賭けだったよ。
 朝もさ、僕が知っている未来では君は起きたのが10時くらいだったし君は買い物に行かなかった。」
「そうか…仕方ないよ。お前の面倒を見るって決めたからな。」
「ありがと。ただ、これで歴史が変わっても大丈夫だから…修正される。」
「修正?」
「うん。僕の存在はみんなに忘れられる。時間はちょっとかかるけど。
 修正は僕の仕事みたいなものだし。昔なら神話にする事もできるけど、今の時代は完璧にダメだしね。」
「忘れるって…私もか?」
「君は僕と深い関係になってるだろうし…一番時間はかかるだろうけど、忘れるよ。」
「……。」

彼は淡々と自分が忘れられる事について語った。
忘れられていく事に慣れているのか、それとも悲しいのか。
その表情からは何も読み取ることが出来なかった。

「みんな忘れると…お前も忘れるのか?」
「ん?僕は忘れないよ。何回も修正してるし、その一つ一つを覚えているよ。」
「お前だけが覚えているって…やっぱり悲しいよ。」
「そう?でも、全部僕が関わったから修正するんじゃないから。災害の大きさとかね。
 文明を進化させる為には災害も戦争も必要なんだ。でも、滅びかねない大きさに変える奴がいるからさぁ。
 そいつを消せれば済むんだけどね。でも僕はあいつを殺せない。」

そう言ってサクソルは遠くを見る。
華凛は彼の瞳を覗くがそこには何も映っていない。
それは闇にのまれ光が消えたのか、光が強すぎて闇が消えたからなのか。
華凛にはわからない事だった。


「もし殺せたら……お前はその人を殺すのか?」
「殺す。でも、あいつはおちた所にいるしマスターが好きなんだ。マスターが悲しむのは嫌だし……。
 それに…殺せないよ。あいつだから…僕だって……。ゴメン、ちょっと消える。」

サクソルは消えた。
彼にはおそらく別の時間軸が存在している。
彼の時間軸で精一杯悩んだ後、華凛の時間軸で数秒とたたずに出てくるのではないかと思ったがそれは無かった。
少し待ってみたが彼は帰ってこなかった。
カレーを作り一人で食べ、自室へ入っていった。





しばらく本を読んだが、サクソルのことが気になって集中力がもたなかった。
時計を見ると意外と時間が経っていないことに驚き、居間に向かう。
サクソルはまだ帰ってきていなかった。
もう、修正されてしまったのだろうか。
おそらくあれは彼の中ではタブーだったのだろう。
それに触れてしまったのだ、自分は。

「サクソル。」

彼に教わった名を呼んでみる。
返事は無かった。

「修正…されてるのか、それとも夢だった?」

朝は、サクソルが来たことを否定したくて夢である事を願った。
はっきりといって面倒であり、それを拒絶していたのだろう。
でも…今は……?彼女には分からなかった。
ただ、彼のことを大切に思うようになっている。それだけが確信を持てることだった。

「サクソル……。」

Re: Strange Friends ( No.5 )
日時: 2011/09/05 05:57
名前: あづま ID:5FlPEQFo

「起きて…起きてよぉ〜。珍しいねぇ、もう午後だよ1時だよ。」
「あっ、サクソル?!」
「サクソルって誰?!まさか浮気?」
「んだよ…誰だ…?」
「ひどい、ひどいわぁっ!あたしって者がいるのに浮気だなんてッ!」

ゆさゆさと揺り起こされて意識が浮上する。
良く響く演技がかった声がなんとも気に入らない。

「合鍵をお互い持ってる仲じゃない!二人で夜を共にした仲じゃない!!」
「五月蝿い黙れぇっ!!」
「ァあゲッふぁ!!」

声のする方向に蹴りを一発入れる。
どうやら命中したらしく苦しそうな声が近くで響いた。
周りを見るとすでに明るくなっている。
という事は昨日はサクソルを待ったまま寝てしまったという事になるようだ。
今日は日曜。
明日は仕事であり、サクソルは帰ってこない。
とてもやる気が起きず二度寝しようと寝転がろうと思ったら体を抑えられた。
誰だ――顔を傾けると馬鹿が覗き込んでいた。

「おわっ!…なんか用か?」
「その反応…夜を共にした仲とは思えない……。」
「修学旅行だろ修学旅行!ただ同じ部屋だっただけじゃないか…その表現はホントムカつく。」
「流石あたしの婿、感情が篭ってるぅ。用はあれです、夏のコスプレです。」
「帰れ。」
「ひっど!婿酷い!!許さない…無配のネタにしてやる…がっつりペン入れさせてやる…。」
「コスプレもペン入れもしないぞ…。」
「ハハハハハッッ!自分自身をモデルとしたキャラのエロシーンのペン入れ!
 腐ってない華凛サマには屈辱の極みだろう!しかも無配!タダであなたのエ」
「死ね!!」
「えヴッ!」

手の届く所にあったもので友人…人見奏音を殴る。
それは頭に思い切り当たりイイ音がした。奏音は余りの痛みに腕を噛み堪えている。
手元を見るとそれはリモコンであり、ふと彼の手を通り抜けてしまったのを思い出す。

「やっぱ…。」
「着てくれるのね!さすが婿…ッ!」
「着ない。ところで仕事は終わったのか?」
「モチモチ!夏の陣出られなくさせられるってなったらもう自殺もんだし。徹夜で頑張りました。
 それとキシがダウンしたらしくて臨時の担当が来て栄養も気力も補給できたし。」
「津岸さん労わってやれよ…可哀想じゃないか。栄養って何、なんか作ってもらったのか?」
「色々やってもらったんだ。キシずっとぶっ倒れてないかなぁ…。悪魔だしあいつ。
 臨時君はあたしの嫁。今回持ってきた仕事少なめだったし同人もしていいって言ってたし。
 なにより初々しいし。もうほんと嫁。全部がイイ。最高。」
「良かったな…迷惑かけるなよ。臨時にも現にも。」
「でもさ、金曜のメールに気づいたのいつ?あたし朝の8時くらいに入れたよね?
 でその3分後にキシが来てトイレ以外立たせて貰えなかった。むしろ逃げるからって付き添いだよ羞恥プレイ。
 キシの嫁から電話きた一瞬の隙にメール送ったのが多分土曜回ったくらいだし。」
「気づいたのは夜の9時くらい…だった。」
「ひっど!半日放置?!で土曜の夕方に終わってー8時くらいにキシが熱出した連絡だ、ざまぁ。
 で半くらいに臨時君が来て色々したんだ。仕事も持ってくるの少なかったし、マジイイ子。」

9時くらい…そうだ。
あのメールにいらっとして、目の前にいるこいつを怒鳴ろうと勢い良く扉を開けたらサクソルがいた。
それが金曜。
今日は日曜であり、まだ1日しか過ごしていない。
それなのに、こんなに懐かしいのか……。

「ところで婿、この服は何?ショタ趣味でもあんの?」

サクソルに買った服。
これは、修正されないのだろうか…。
言い訳はどうしようか…。

「それ…なんかホームステイ受け入れてみようかって。」
「ふーん。もしするんだったら援助はするよ、対価は萌で。あ、だったら臨時君に会ってみない?」
「なんで?」
「臨時君は外人さんです。お国の風習とか聞けるっしょ。」
「そうだな…。」
「おっけぃ!じゃ行こう。」
「家知ってるのか?」
「住み込みでとっても尽くしてくれます。」

そして2人は奏音の家に向かった。





「ただいまぁ。」
「お帰りなさい、奏音。その一人は?」
「玄関でおしゃべりは止めましょう!っつうわけで座る場所を探します。」
「すいません…お邪魔します。」

3人で部屋に入ると、そこは案外きれいだった。
どうやら、臨時の担当さんが掃除をしてくれていたらしい。
奏音はこんなに床面積が覗いているのはいつ振りかと驚いていた。

「座るスペースがあるなんて…。」
「でも、違う部屋に移してあるから。まだ終わってない。」
「でも凄いよぉ。あ、座ってね。紹介します、あたしの婿の竹谷華凛。小学校から一緒です。
 で、臨時のレオン君です。初々しいあたしの嫁です。キシは悪魔だから死ね。」
「婿じゃなくて女友達です…宜しく。」
「レオン=フレスキ。日本語の勉強で来た。こちらも宜しく。
 奏音、津岸さんも奏音を思ってるから死ねは良くないよ。」
「あいつは悪魔だもん。」
「津岸さん頑張れ…。でもレオンさん日本語うまいよ。」
「ありがとう華凛。あと、さんはいらないから。」
「よぉっし、打ち解けたな!でも浮気したら許さないからね。
 じゃレオン、君の国のお話をしてくれ。婿はホームステイの受け入れをしたいらしい。」
「そうなのか?本当?」
「え、えぇ。婿じゃないですけど。」
「そうか。それは…いいよ、話す。参考にしてくれれば嬉しいから。」
「お願いします。」

そしてしばらくはレオンの話を聞いた。
彼は以前に何度かホームステイをしたことがあるらしい。
ホームステイはその国の文化に触れたいから希望する人が多い。だから歴史がある観光地を巡ったらどうだと言っていた。
それから手伝いはちゃんとさせて、いけない事をしたらちゃんと怒る事。
日本と外国での認識は違うので当たり前だと思っている事が当たり前じゃなかったりする。
ホームステイを何度もしているだけあって、いろいろな国の話もしてもらった。
奏音は途中で寝た。徹夜が祟ったのだろうから寝かせておこうとレオンは言っていた。





「ありがとうございました。参考になったよ。」
「…それは、本当?なら良かった。もし私がいる間ホームステイをするんだったら会わせて。」
「ああ、約束するよ。」
「約束だから。奏音は寝てるし、君の家まで送ろうか?暗くなってきている。」
「え?そんないいよ。近いし。」
「でも、あなたは女性。暗いのも危ないが、暗くなってきているのも危ない。」
「あ、んー…じゃ、頼むよ。」

こうして二人で奏音の家を出る。
といっても、道を歩く二人に会話は存在しない。
華凛の家は奏音の家から20分ほどの距離であり、すぐについてしまった。

「ここだからさ…ありがとう。話しも参考になった。」
「いえ…。でもここが、あなたの家なのか?」
「そう。ま、なんか用事でもあったら来てよ。平日は仕事でいないが休みなら大体いるし。」
「ここが…そうか。そう、行く時間ができたら来るから。」
「うん、また。」
「はい、それでは。」

レオンが元来た道を歩いていくのを見送り、華凛も階段を上る。
奏音ともそれなりに付き合える人がいたんだと少し嬉しくなった。
部屋に入ると、静寂。
やはりサクソルは帰ってきていなかった。

「夢だったのか…やっぱり。」

なんか、寂しい。
私は奏音にもレオンにも嘘をついてしまった。
二人に対し申し訳ない気持ちと寂しさから逃れるように、頭を抱える。
そのまま時間が過ぎていった。
ふと、自分の後ろから規則的な音がしているのに気づく。

「ちょっといなくなっただけでこうなるんだね?」
「…サクソル?」
「そうだよ。やっぱり人間は分からないよ、今はね。」
「そうだな。お前みたいなクソ生意気なヤツには一生分かんないだろうな。」
「えー…時間がどんなにかかってもいずれは分かりたいな。僕には時間はいくらでもあるし。」
「はいはい。あ、パフェ食べにいくか?コンビニのだからレストランのよりは劣るかもしれないが…。」
「ホント?じゃ、マスターにもあげたいから君の分含めて4つ買ってよ。」
「3つじゃなくて?」
「2つは僕と華凛の分。残りはマスターと僕で食べてくる。」
「そうか…。本当にマスター好きだなぁ、お前は。」

こうして二人は暗くなりだした道をコンビニに向かって歩いていった。

Re: Strange Friends ( No.6 )
日時: 2011/09/05 05:57
名前: あづま ID:5FlPEQFo

コンビニからの帰り道。
サクソルはマスターへのお土産として買ってもらった物を大事そうに抱えている。
彼は結局パフェ以外にも買ってもらったのだった。

「そもそもお前さ、なんでこう遅かったんだ?
 お前は時間を移動できるわけだし、消えた次の瞬間に出る事も可能だろう?」
「最初はそのつもりだったんだけど…。またあいつがやらかしててね。
 火山の爆発の瞬間に強風を起こしたんもんだから被害が広がってしまったんだ。」
「それは辛い…。」
「でもそれを起こしたのに僕はしばらく気づかなかったみたいでね。いつもそうなんだ。
 あいつは僕もマスターも気づかないところで事を起こす。で、修正したら力を使い果たしたみたいで。
 それで元の時間に戻れるほどの抵抗も出来なくってさ。」
「そうか。」
「あいつは愉快犯だから…。笑ってるんだよね、どこかで。」
「へぇ…大変だな、お前。」
「でも、これが僕の存在する理由だからね。
 あ、これからマスターのところに行くから。君が朝起きる頃に戻ってくるよ。じゃあね、おやすみ。」
「あぁ、じゃあ。」

そしてサクソルは周りに華凛以外の人がいないのを確認し消えた。
華凛はサクソルがゆがめた景色が戻るのを確認してから、自宅への道を歩いていった。





「おはよう…そして注意だ。」
「起きてすぐ注意って…なんか嫌だねぇ。」
「仕方ないだろう。今日から5日間、私は毎日仕事に出る。初めて会ったときに言ったと思うが
 遅くても10時くらいには帰ってくる。だからこの家のものを破壊しない程度には使っていいが誰か来ても居留守をしろ。
 電話はコールを2回して切れてその後すぐになったら私だ。それ以外は出ない事。」
「うん。でもさ、僕は時間移動できるから君の電話には出られないかもよ。」
「そうだな。ま、もし部屋にいて鳴ったら出てくれ。じゃ、私は行くから冷蔵庫の中のものを昼に食え。」
「分かったよ。じゃ、いってらっしゃい。」

そう言って、華凛は出て行った。
ばたんと扉が閉まる音と共に訪れた一人だけの世界。
さて、何をしようか。





電車に乗り、中を見回す。
やはりラッシュ時なので座れそうな場所が無い。
これもあの上司のせいだ…静かに呪いながら扉の前に立つ。
規則的に揺れる電車、流れていく景色。
ついこの間まで変わらない日常とがらりと変わった家での生活。
腕をつつかれ、視線を向けるとレオンがいた。

「おはよう、華凛。」
「あ、おはよう。あれ、住み込みで働いてるんじゃなかったのか?」
「そう。でも、今日は打ち合わせと津岸さんのお見舞い。奏音は趣味を終えて寝ている。」
「あぁ、やっぱり。でも大変じゃないか?あいつの趣味ってほら…特殊だろ?妹さんも漫画は手伝わされてるし。
 今はゲームにはまってるんだろう?攻略本が多く積み重なってたしな。」
「ゲームじゃないが…私も明け方まで付き合いさせられた。私が寝てしまって終わったらしい。
 申し訳が無い。奏音を最後まで楽しませられなかっただろう。」
「そんな事ないって。あいつも一人暮らしだし普段は仕事に追われてるからお前が来て嬉しかったんだろう。
 ただ殆ど寝てないじゃないか。酒もいいかもしれないが身がもたなくなるぞ…ゆっくり休めよ。」
「…お気遣いありがとう。私はここで降りる、また。」

扉が開くと同時にレオンは降りていった。
彼はなかなか人間がしっかりしているようで、自分よりも奏音を優先して考えている。
昨日は死ねと言ったのを戒めていたし。
津岸さんといい、けっこういい人に囲まれてるじゃないか。
自分が降りる駅まではもうしばらくある。
本でも読んで時間をつぶそうか……。





アニメも見た。
今テレビはニュースばっかりやっていてつまらない。
未来をざっと見たところ華凛から電話がかかってくるのは12時と24分だ。
あと3時間くらいある。
そういえば、あれは外に出てはいけないと入っていなかったはずだ。
この時代の人間の暮らしを知るのもいい事だと思う。
デパートで買ってもらった服に着替え、外に出た。
鍵は外からでは閉められないので力を使って閉める…上手くいったみたいだ。
人間の体で、外を感じる。
風が流れ、車と言う移動手段の音がずっと聞こえた。
どこへいくでもないが、ふらふらと歩く。
時間はいくらでもあるんだ――12時24分に戻ってくればいいんだから。


人間として街を歩く。
そこは、不思議な世界だった。
同じ服を着ている女や、不思議なにおいのする人。
アニメで見た服装をしている人もいた。
人間はこんな気持ちで歩いているのか、とも思ったけどそれは僕が違うからだ。
あいつが知らない事をできたんじゃないか…ちょっとだけ嬉しいと思った。

「ねぇ、ボク。ちょっといいかな?」
「ん?」
「君、小学生よね?学校はどうしたの?お家の電話番号分かるかしら?」

これは、意味が分からない。
二人組の女性…肌の感じから40代くらいだろうか…が話しかけてきた。
小学生…は華凛が僕の見た目を例えて言う事がある。
そういえば、彼女は最初小学生だから送ると言っていた。
小学生は外に出てはいけないものなのかもしれない。
日本語が、分からないふりをしておこうか。英語を話せば多分、大丈夫。

「I'm sorry. I don't understand Japanese.(すいません。僕は日本語が分からないんです。)」
「あら、英語?」
「日本語が分からないっていってるみたいね。
 えっと Have not you gone to school? Do you know parents' cellular numbers?
 (あなたは学校に行っていないの?親の携帯電話の番号を知っている?)」
「I don't understand. Ihave come to travel in the family. And it was said by my father that it would wait here.
Therefore,it is safe. Thank you.(分かりません。僕は今家族で旅行に来ています。
 そして父にここで待っているよう言われました。だから大丈夫です。ありがとう。)」
「家族で旅行に来ていて、お父さんにここで待っているように言われたらしいわ。」
「そう?じゃあ、仕方が無いわ。でもね、もし変な人に声をかけられたら大声で助けを呼ぶのよ?」
「Call help loudly if it is called by a strange person.」
「OK.See you.(分かりました。さようなら。)」

僕の答えに納得したのか、二人の女は離れていった。
この姿で出歩くともしかしたらまた声をかけられるかもしれない。そうなると結構面倒だ。
せっかく街に出たんだしマスターに何かお土産でも持って帰ろうか。
ただ僕はお金を持っていない。今は実体化しているからいつものようにとる訳にはいかないだろうし。
仕方ないから家に帰って出直そうか。

Re: Strange Friends ( No.7 )
日時: 2011/09/05 05:58
名前: あづま ID:5FlPEQFo

折角だし歩いて家に帰ってきた。
目的の場所に行くのにこんなに時間をかけていく事は天使にはない。
これはあいつも、そしておそらくマスターもやった事がないものだ。
初めての経験。
軽い足取りで階段を上る少年の姿がそこにあった。


家に入り時計を見る。11時40分より少しだけ前。
華凛が電話をかけてくるまで50分ほどあり、何をしようかと考える。
その時間まで飛ぶか、テレビを見て時間をつぶすか。
番組欄を見ると、今はアニメがやっていない。時間を飛ぼう。
時間を移動するため、サクソルは着ている服を脱ごうとした。すると、電話が鳴る。
一回、二回、三回…。電話は二回で切れることなく鳴り続けている。
サクソルはこれは家主ではないと判断し、彼の時間軸へと戻っていった。





「終わった…ぁ。」
「竹谷お疲れ〜。というか珍しいな、お前の事だから金曜の夜には終わらせてると思ったのに。」
「私が頼まれてた部分は終わってたんだ。阪見がやったところの修正だ…間違えたまま渡してきたんだ。
 …朝気分で早く来たら間違いに気づいた。あいつは自分の間違いを認めないだろ?だから私が苦労してる。」
「苦労してるな〜。よしっ、頑張った後輩にオレが昼飯奢ってやるよ。」
「先輩ってもたった2週間だろ…。でも、よろしく!」
「おうっ!じゃ、明日コンビニ行くか〜。」
「やっぱコンビニかよ。」

華凛は書類の修正を昼前に何とか終わらせ一息つく。
すると沼川が話しかけてきて、彼女に昼食を奢ってくれると言っていた。
彼は同期であるが、家のコネだかで他の新入社員より2週間早く出社しているらしい。
そのためか同期に対しても先輩面をするため積極的に関わろうとする人はいないが人柄は優しく評判もいい。
事実営業などもトップを誇っており社外の交友関係も広く芸能人の知り合いもいるくらいだ。
ま、金持ちの息子と言う事が一番関係していそうだが。

「それで竹谷、頼みがあるんだよ。」
「は?」
「いや実はな、営業で編集社のほうにまで行かなきゃいけねーの。お前の友達に小説家いるじゃん?
 人見奏音だったよな?そいつの所属してるところなのよ。付き添って。」
「何でだ。たしかにあいつは小学校からの付き合いだがあいつ中卒でそのあと同人生活だぞ?
 今でも仲はいいが関わりも少なかったし…。」
「んーでもさ、奏音さん経由の知り合いくらいいるんじゃない?」
「顔見知り程度ならいるが…でもなんでだ?」
「いいじゃん、なんでもさぁ。今度ケーキ買ってくるよ。な?」
「高いやつな?…仕事は今日のところあと2時間あれば終わるし、いつ出発だ?」
「一時半からだから一時くらいに駅を出れば着くから…12時半くらい?あと30分後。」
「分かった。ロビーでイイか?」
「おう。じゃー待ってる!頼りにしてる!」

廊下に消える沼川を見て、再び仕事に取り掛かる。
20分あれば少しだけではあるが進めるだろう。そのあとで一度サクソルに連絡を入れよう。





12時23分、サクソルは華凛の時間軸に来た。
電話が鳴るまで後1分ほど。こちらに来る前に脱いだ服を着ながら待つ。
しかしボタンに戸惑っている間に電話が鳴る。時計を見ると12時24分。一回、二回…切れた。
そしてまたすぐに鳴り出す。

「華凛?」
『お、いたのか。大丈夫か?』
「大丈夫だよ。華凛は?」
『私は平気だ。昼はちゃんと食っとけよ。じゃ、あと出かけなきゃいけないから。
 帰りの電車乗るときにまた電話するよ。なんかほしいものあれば今言ってくれ、買って帰るから。』
「あ、じゃあマスターになんかお土産上げたいからなんか買ってきてくれるかい?
 パフェ、喜んでいたよ。懐かしいってさ、しばらく食べてなかったみたいだし。マスター甘いのが好きだから。」
『お前ってマスター好きだな。…和菓子とかどうだ?日本のものだし。』
「いいんじゃないかなぁ。宜しく頼むよ。」
『じゃ、切るからな。』

そして電話が切られ、機械的な音が耳元で鳴る。
これからまた外に行って探索でもしようと思ったそのとき、チャイムが鳴った。
華凛は居留守を使うようにと言っていたので音を立てないように静かに座る。
しばらくすれば帰ると思ったのだが一向に帰る気配はない。
それどころかカチャカチャと音が聞こえ扉が開かれた。

「電話にあ、ショタ。」
「え、あ。?」
「人見奏音、華凛の嫁でっす!え、なんでここにショタが?あなたは萌の使徒ですか?」
「サクソル…。モエの使徒ではないかなー。」
「つーことは隠し子かーそうかぁ〜。んだよぅ婿もやる事やってんじゃん。で、婿は?」
「婿って…華凛かい?華凛なら今会社に行っているよ?帰る時に電話をくれるそうだけど。」
「会社?あ、今日月曜だ。どーりで担当がいないわけだ、打ち合わせか。ん〜…ちぃっと失礼。」

そう言い突然押しかけてきた奏音は携帯電話を取り出す。
電話をかけているのは間違いないのだが一人で笑ったりとサクソルには不思議に見える光景だった。
一度切り、もう一度電話をかけひとしきり話した後彼女は立ち上がった。

「ショタ…えっとサクソル。今からあたしは婿に会いに行くんだけど一緒に来る?
 あたしの所属してるところに向かってるみたいだわ。行きたくないけど婿がいるし近くの菓子が美味いから行こうと思うんだけど。」
「お菓子?あぁ〜でも、鍵を僕は持ってないから部屋にいないと…。」
「それなら平気です!あたしと婿はお互いに合鍵を持っているので出入りは自由です。婿とあたしは世界を共有してる。」
「…ん〜、じゃ行こうかなぁ。」
「よっしゃ、責任はあたしが取るよ。ケーキ奢れば済むしね、婿は。
 …ところでそれはあたしの理性への挑戦?上半身裸って…すでに色々はちきれそうなんだけど。」
「今日は暑いから脱いでたんだよ…。着るから…ボタンも頑張るもん……。」






「あたしと婿の出会いはねー小学校の4年生だったかなー。あたしが転校してったんだよ。
 転校する前の小学校エリートだから高校まで一直線だったんだ…同人出来ないからね、そのまんまだったら。」
「そうなんだ。」
「そうそう。で、同じクラスに婿がいたんだよ。なんかツンとしててね、それみたらビビッって来てさ。
 ところでショタは眠いんじゃない?ボーっとしてるよ。」
「いや、そんな事ないけど。」
「嘘はダメですー。寝ていいよ、資料買いたいから30分はかかるし。」
「そう?じゃ…。」
「うん、起こすからね。おやすみー。」

助手席で奏音の声を聞きサクソルは目を閉じる。
眠気など彼は感じないが一つ、考えたい事があったので周りと意識を遮断する。
奏音と言うこの女性…華凛の友人である事は知っているが、彼女は歴史に関わっている。
彼女自身がなにか大きな発明をした、という訳ではなく彼女の著作に影響され大きな発見をした人物が
2世代ほど後になるがいたはずである。
サクソルと関わる事はその人の歴史が変わる事を意味する。
今まで彼は街を出歩いたりコンビニに行ったりした。
街で出会った女性たちはサクソルが家に帰った後時間軸を遡ったら学校に行っていないと思われる子供に声をかけるのが役目のようだった。
ということはサクソルはその“子供の一人”だから彼女らの歴史に変化はない、又はサクソルが修正しなければならない
というほどの誤差は生まれない事が予想される。
コンビニでは華凛とすぐ別れてトイレに篭ってやり過ごした。店員などには華凛との関係は怪しまれないだろう。
しかし隣にいる奏音はどうだ。
彼女には名前を教えてしまったし、会話もしてしまった。
彼女は一人間として歴史に関わらず死ぬのではなく他の人間に影響を与え、発明にも貢献している。
歴史が変わってしまうのは間違いないだろう。
華凛との暮らしは諦め、修正に入るか…でも、なかなか条件が良くそれは惜しい。
車が止まり、隣の気配が外に出るのを感じつつ今後どうすべきかサクソルは考えた。

Re: Strange Friends ( No.8 )
日時: 2011/09/05 05:58
名前: あづま ID:5FlPEQFo

どれ位の時間がたったのかわからないが、扉が開きガサガサと耳障りな音がした。
それによって遮断されていた意識が一瞬のうちに戻る。
ガサガサとしていたものが後ろに置かれると、隣に人が座る。
どうやら奏音が帰ってきたようで、彼女はサクソルの頬を触った。
それでも目を開けないサクソルに彼女は気を良くしたのか軽く抓る。
そしてクスッと笑いエンジンを入れた。振動が体に響く。
そして走り出したのを感じ、サクソルはまた周りと意識を遮断させ沈んでいった。





「じゃ、私はお前の仕事が終わるまで休ませて貰うよ。」
「え〜、一緒に来てくれねーの?」
「お前の仕事だろ?私はただ付き添いで来ただけだし。一応顔見知りはいるんだ、話しながら待ってるさ。」
「ケチー。」

沼川と別れ、食堂に向かう。
昼を少し過ぎてはいるがまだこの時間なら人はいるだろうと華凛は踏んだ。
奏音を経由し何度か話した事がある作家や漫画家の顔がう見えたが、彼らは食事片手に仕事を行っている。
自分が邪魔してしまっては悪いと思い、軽く昼食をとろうと券売機の前に立つ。
おにぎりセットとケーキの食券を渡し、隅のあいているテーブルに座る。
程なくして頼んだものが運ばれてきてそれを食べながら本を読んだ。

本にやっと意識が向きかけた頃、相席はかまわないかと話しかけられた。
顔を上げず了承の返事をすると本をいきなりとられる。
顔を上げるとそこには沼川とレオンが立っていた。

「竹谷ちゃーん?オレね、結構呼んだんだよ?それなのに返事しないし。」
「悪い…夢中になってた。終わったのか、早いな。」
「まーね、オレトップだし?ところでこいつ誰。」
「え?お前が連れてきたんじゃないのか?」
「そうだけどさーずっとお前の事見てるんだもん。なに、彼氏?」
「違うって、奏音の臨時担当。昨日と後朝もか、会ったんだよ。」
「…本当?」
「本当だ。レオンもなんか言えよ…。」
「あ、人見奏音の担当のレオン=フレスキです。奏音をよろしくお願いします。」
「ふーん…外国人か。へぇ…。」
「そうそう、色んな事教えてもらったんだ。レオン、仕事終わったのか?」
「そう、終わった。…華凛、ちょっと。あなたは残って。」

レオンは華凛の手をとりどこかに連れて行こうとする。
沼川が付いて行こうとするがレオンはそれを制し、無理矢理椅子に座らせる。
それでも付いていこうとする沼川に対しレオンは彼の耳元で何かを囁いた。
すると沼川は「そうか。」と呟きもう抵抗しなかった。
その様子に疑問を持ちつつレオンに手を引かれ食堂を後にする。
途中、女性社員の視線と興味を感じながら―――





人気のない倉庫の前。
華凛とレオンは向かい合って立っている。
レオンは私より少しだけ高く、身長は175cmほどだろう。
そんな事を考えつつ彼が話し出すのを待つ。
しかし一向に話し出す様子が見えず、微かな物音がするとそちらのほうを向きその音の判別が出来るまで待つ。
それが何度か繰り返されていた。

「レオン…なんなんだ?そんなに話しづらい事なのか?」
「あ…まあ、その。……はい。」

痺れを切らし華凛が話しかけると体を思い切りびくつかせ、目を合わせようとしなかった。
その様子に少々イライラしつつ話を続ける。

「なぁ、なんでここじゃないとダメなんだ?」
「別に…ここじゃなくても……。ただ、人が余りいないし。」
「だったらさっさと話せばいいじゃないか。物音こそしたが、人は一回も来ていないぞ?
 あと、沼川をおいてくる必要があったのか?私もまだ仕事が残っているし、さっさと会社に戻りたいんだが。」
「沼川…さんを置いてきたのは聞かれたくなかったから。…でも、仕事があるなら、いいです。
 私の話は、大きな事じゃない。流そうと思えば…出来る事だから。時間、すいませんでした。」

そう言い彼は道をあける。
彼の顔を見ようとしたが横を向かれてしまった。彼の態度に疑問を持ちつつ食堂へ戻る事にした。





「ただいま…。なにむすっとしてるんだ。」
「別に?何の話してたんだよ。」
「いや?なんか大した事じゃないから別にいいって。流そうと思えば出来る事だとさ。
 用事は終わったんだろ、さっさとケーキかって会社戻らないか。」
「何にも話されなかったのか?その割りに結構時間かかってたなぁ?」
「なんか話しづらい事らしくてな、なんか音するたびにビクついてたし。日本の風習についていけないとかそういう相談じゃないか?
 彼、日本語上手いけどまだ半月も日本にいないらしいし。」
「風習、ねぇ…。あれは…ん?なんで半月もいないって知ってるんだ?」
「昨日レオンの話聞きに奏音の家に行ったんだよ。彼奏音の家に住んでっからさ。そん時に教えてもらったんだ。
 彼、あいつん家の家事全部引き受けてるみたいだし料理も上手いらしいんだ。彼氏にするならああいうのがイイよなー。」
「…彼氏?」
「あぁ、だって尽くしてくれてるじゃん。私は彼氏作るんならそういう人がいいってだけだ。
 そういや家まで送ってもらったし、ああいうのを紳士っていうのか?日本では絶滅危惧種かもな。」
「ふーん。でもお前の話聞くとウジウジしてるみてーじゃん。そんなんがいいのか?」
「アレはなんか話し辛かったんだろ。…なんなんだよ、お前もなんか変だぞ?女々しいってか…。」
「もういい。ケーキかって帰ろう……。」

沼川は立ちそのまま歩いていく。
私も後についていくと、後ろからこそこそと話しているのが聞こえた。
声からしておそらく私がレオンに連れて行かれたときに話していた女性社員達だろうと思う。

《なんか…修羅場ってヤツ?》
《女の子の方もさ、気づいてよくない?》
《あーでもショックだなー、レオン君タイプだから狙ってたのにぃー。》
《ミコ彼氏持ちじゃん…。》
《バレなきゃいいもん。あぁー好きな子いるのかぁー。》

なんとなく入ってきた会話に耳を疑う。
まさか…でも。
レオンは良く分からないが、沼川の態度は?
あいつはレオンについて必要以上に詮索してきた気がするし…嫉妬ってやつだろうか。
なんか、そう考えると納得がいく。

「沼川!」
「…んだよ。」
「お前って、意外と可愛いな。」
「かわっ…?!」
「その反応だ、それ。じゃ、約束どおりケーキ買えよ?近くに美味しい店があるんだ。」
「おう!」

Re: Strange Friends ( No.9 )
日時: 2011/09/27 04:35
名前: あづま ID:NbGy7M2M

一度会社に連絡をいれてから歩いて目的の店へと向かう。
その店は裏の方にあり、近いはずの奏音の所属事務所からでも歩くと10分ほどかかってしまう。
沼川と喋りながら移動しているので、普通に歩くよりも時間がかかってしまった。

「ここだここー、美味しいんだよ。」
「隠れた名店ってヤツか?けっこう奥まってね?」
「そうだろそうだろ。奏音の忘れ物届けた時に迷子になってさ、そん時に見つけたんだ。」
「へー。後輩達にも買ってってやるか!オレんちの金で。」
「お、太っ腹!さすが金持ちは違う。」
「そうかぁ〜?」

上機嫌で店へと入る。
自分達のほかにも数組しかいない店は静かで趣のあるものだった。
どれを頼もうか、後輩には何を買えば喜ばれるか、それが頭の中を支配する。
意気揚々とショーウィンドーの前へ近づく。

「婿!」

近づこうとしたが覚えのある嫌な声に後ろから抱きかかえられそれは叶わなかった。
後ろを見ると間違えるはずのない、中卒同人作家の友人である奏音が笑顔で私を抱きしめていた。
その後ろにはサクソルもいる。

「おいお前らなんでいるんだ!」
「いや〜婿んちに電話かけたんだけど出なくてさ?で、仕事のネーム終わらせてから行ったらこのショタがいたのよ。
 でもろもろ省略してあたし達は今ここにいる。」
「なんか電話したら君がここにいるって言われたらしくてね。それで君は毎回ここに来るから待ってようってことになったんだよ。」
「補完感謝する。なんで来たかな…。」
「婿、そっちの人は?」
「あ、オレ?オレは沼川一寿。竹谷の先輩だけど。オレはあんたを知ってるよ、人見奏音さん。」
「あ、知ってるんだぁ。…な〜んか、へタレ?…いや、スイッチ入れば……」
「なにブツブツ言ってるんだい?」
「うっふふ、知らなくていい事。」

1人にまにまとする奏音に引き気味の沼川。
「こういう人なのか?」と私にこっそり耳打ちするが反応することが出来ない。
サクソルはケーキを買ってもらっていたらしく椅子に座って食べている。

「あ…よく見たらお前の車あるじゃねえか。気づけばよかったなあ。そうだ、まだレオンいたし乗せて行ったらどうだ。
 サクソルはお前の家にいさせてもいいし、私の家に戻してもいいから。ちゃんと留守番できるもんな?」
「そうだな、夕方になる前に帰った方がいいんじゃあ?担当君も連れてってさ。」
「あ〜、んだね。レオンに連絡入れてこっち来てもらお。婿に会えたし編集には絶対行かねー。」

奏音は携帯でレオンにメールを入れるため店の隅に行った。

「うん。ケーキも食べさせてもらったしね。君達の判断にお任せするよ。」
「オレ思うんだけどさ、口調がなんか上から目線じゃねーかこいつ?」
「お兄さん…ヤキモチかい?なんかイライラしてる。上手く隠せてるって思ってるのかもしれないけどさ。」
「あはは、なんか生意気だなぁ〜。ま、子どもってこんなもんかな?」
「サクソル君サクソル君、ちょぉっといいかな?沼川氏がヤキモチ、これはいったいいかなる理由で?バカノンに教えてくれないかな。」
「僕に聞くのかい、本人が目の前にいるのに?ま、いいか。僕が考えるとね、君の担当さんが嫌いなんじゃないかな?
 そのお話が出たとたんお兄さんの態度が変わったし。お兄さんはさ、好きなの?」
「…三角関係?!え、やだ!!お兄さん好きなの?」
「ッ帰るぞ竹谷!」
「え、ケーキ…。」
「また今度!!」
「はぁあ…?」

沼川に手を引かれ華凛は無理やりに店から出されてしまった。
後には静けさが残っている。
客の中でも若い女性は今目の前で起こったことを考察しており、ほかの人は迷惑そうである。
その静寂のをバイブ音が破った。

「お、メールだ。……飲み会断れなかったぁ?!あーらら、レオンお酒弱いのにね。…こりゃ早くて真夜中かな。」
「じゃ、僕たちだけで帰るのかい?」
「そーなるなあ。あ、婿にケーキを買っていってあげよう。ポイントポイント。」
「僕も帰ってからまた食べたいんだけど…。」
「いーよ、お金はあるし。資金は別にとってあるからあと今月20万はつかえるかな。」
「お金持ちなんだね。ところで何の資金なんだい?」

その一言に奏音はニヤリと笑った。

「18歳になったら教えてあげる…っへへ。」





「あーもー、ケーキ食いたかったな…。」
「…悪かったよ。」

隣を見れば、本当にばつが悪そうな沼川の顔があった。
それについ、イタズラしたくなってしまった。

「お前さ、本当に変だぞ?サクソルの言ったとおりさ、レオンに嫉妬してるのか?」
「そんなことねえよ!」
「怒鳴るなよ…怖いな。図星みたいだぞ、それ。」
「あーそうかい、そう思うんならそうなんだろうさ!さっさと帰るぞ、お前もまだ仕事終わってないんだろう?」
「そうだな、戻って仕事終わらすか。」

二人は無言のまま駅へ向かっていった。





「ショタはさぁどこから来たの?ホームステイ受け入れしたいって婿は言ってたけどいくらなんでもそれだと早いのよ。」
「僕は、君達人間とは違うってなら言えるね。」
「そなの?ま、婿のことだし合法的だろうから深く探ろうとは思わないけどね。逆トリかな、こんな身近で起こっているとは…!」
「逆トリ?」
「ショタは知らなくていい事。うっは、もうだめ脳が幸せ…溢れるよ。」
「なんか…関わらない方がいいみたいだね。ところでレオンって…誰だい?」
「ん?あ〜、臨時の担当ね。キシっていう普段のがぶっ倒れて編集長の知り合いだったっけ…で特例でやってきたの。
 日本語勉強してたみたいだから分かるし家事やってくれるし…万能君だね、いろいろ貢献してくれてるよ。」
「ふぅん。ねえ、どんな人?」
「気が利くいい子だなぁ。あ、でもちょっと気が弱いね、押しに弱いって言うか頼まれたら断れないタイプ。
 ほら、飲み会断れてなかったじゃん。お酒弱いんだよねー彼、送られてくるかそれとも…へへっ。男だらけだしね、うちは。…着いたよ、どうする?」
「降りるよ。今日はアリガトウ、ごちそうさま。」
「あ、鍵開けなきゃ。」

そう言い奏音も車から降り階段を上る。
そして玄関の戸を開けサクソルを中に入れた後、中から閉めるように言って戸を閉めた。
サクソルが中から鍵をかけると奏音はその音を確認したのか「じゃあねー。」と声がして足音が遠ざかった。
間もなく、車の走り去る音がする。
サクソルは奏音が完全に去った事を確認し、買ってもらったケーキから数点選び残りは冷蔵庫に入れ、消えた。

Re: Strange Friends ( No.10 )
日時: 2011/09/27 04:37
名前: あづま ID:NbGy7M2M

ただいま。」
「おかえり。冷蔵庫にさ、あのお店のお菓子入ってるよ。何個かマスターにあげてきたけどね。」
「お前が頼んであいつが買ってくれたのか?あぁ、借りができたな…。」
「でもさ、あの人なんか単純そうじゃない。君と同じっていうか…、本質は似てると思うよ。」
「そうかぁ〜?…付き合い長いからな、感化されてるかもしれない。」
「でも君次第だからね、どういう人間になってどう死んでいくのかはさ。」
「だな。ま、犯罪者にはならないだろうし平凡に死ねりゃそれでいいや。ところで晩飯どうする?食べるか?」
「ん〜…今日はいいや、ケーキ食べたから別に。」
「そうか?じゃ、私だけ食べるからいいよ。その間…あ、風呂はいるか?汗流したりとか。」
「いらないよ。僕汗でないし。」
「そうか…映画見てるか?古い奴だけどあったはずだ。」
「楽しいかい、それは。」
「私は結構好きだけどな。」
「そう?じゃみる。」
「分かった。」

棚からいくつかの映画を持ってくる。
サクソルに見せると以外にもホラー…というかグロ?を選ぶ。
アニメ好きなのにな…と思うが近頃のアニメは規制が緩いのかしらんが結構残酷なシーンもあるらしい。
意外と大人の方が怖がるんだろうか…。
とりあえずデッキに入れ再生する。
怖がるのかそれとも平然としてみるのか気になりつつ食事の準備に取り掛かる。





夕飯を食べ終わりサクソルの隣に座りつついっしょに映画を見る。
何度か見ているので特に怖いとも思わないのでサクソルの反応を見ている。

今はテレビで先に進んでいた主人公と親友が戦っていて、かなり苦労しているようだ。
やっとの事でモンスターを倒し、追いついた仲間達の声を聞き笑顔で駆けていく。
すると、モンスターに止めを刺していなかったのだろう…後ろを向いた親友の脇腹を食いちぎってしまう。
血を吹き出し内臓を垂らしながら倒れる親友。モンスターに止めを刺す主人公と仲間達。
主人公達が親友の元に駆けつける―――――痙攣している親友。
これではもう助からない…主人公達はそれを置いていき次の舞台へと走っていった。


映画を見終わり、テレビを消す。
サクソルは主人公と親友が一緒に戦い始める辺りから顔をしかめていた。
やはり子どもには早かったか、と彼の様子を見て思う。
まぁ、彼の性格からいってとめても見そうな感じはするが……。

「どうだった?」
「なんか…うん。」
「その反応で正しいだろうな。私的には、親友を置いていくのがいただけないけどな。
 確かにあの怪我じゃ助からないだろうし連れて行ったら足手纏いだろうが、せめて最期まで看取るか止めを刺してやるとか…。」
「あのさ、あの二人は本当に親友だったの?一緒に戦った仲間だったのは事実だけど、お互いに親友だと思ってたのかな。」
「え?いや、思ってただろ。主人公に俺たち親友だろ?とか言ってたじゃないか。他の人たちも言ってたし。」
「確かに言ってた。でもさ、主人公の方は仲間って言ってて親友はおろか友達とも言ってない。」
「そうなのか?何回も見てるのに気づかなかったなぁ…。初見で気づいたお前は凄いよ。」
「そう?ほかのメンバーには友達って言ってたりしてちょっと気になっててさ。」
「へー…意外と見てるんだなぁお前。…11時、寝るかな。」
「もう寝ちゃうの?じゃ僕も戻ろうかな、君が起きるときに、また。」
「はいはい、おやすみ。」
「うん。」

軽く手を振り消えるサクソル。
手を振るなんて初めてじゃないか?と、案外彼も心を開いてくれているのではと嬉しくなった。
風呂に湯を入れ、その間にもう新しい情報とはいえないが新聞を読んだ。
…もうすぐ選挙か…政権変わろううがなんか似たり寄ったりなんだよなぁ。
私が知っている中で政権交代は二回起きているが、どちらも野党は与党をたたくだけで進歩しないというか。
なぜか政治についての考察をしつつ風呂に入りその一日を終えた。





「おはよ、そしていない。」

朝起きて辺りを見回すとサクソルの姿はない。
私が起きるときにって言ってたはず…歴史が変わったのか?
たしか買い物に行った日は私個人の歴史が変わっていたと言っていたはず。
映画を見たのがいけなかったのか……。
仕事の準備に取り掛かりつつあいつが出てくるのを待つがその気配がない。
私個人の歴史が変わったんじゃなくて、世界的な出来事の何かが変わったんだろうか。
だとすると半日くらい出て来れないんだっけ?

「まぁ、そのうち出てくるんだろ?行ってきます。」

誰もいないであろう部屋にただ声をかけ出発する。
今日はいつも通りの時間に出たし、特に問題がなければ8時位には帰ってこられるだろうか。
するべき仕事を頭の中で整理すると沼川のことを思い出す。
――からかっちゃったし、謝るべきだよな…。
サクソルは見た目が子供だからある程度大目に見てくれるかもしれないが注意しなかったし、悪い事したよな…。
どう謝るべきか考えるがいい案が浮かばない。
気づかぬ間に電車に乗っていたようで、もう駅に着くことにアナウンスで気づく。
はっきりいって気が重い。
沼川の反応から気を悪くしていたのは明らかだし…自意識過剰かもしれないが好いてくれている…かもしれない。
それをからかったんじゃなあ…。
電車が着き、ホームに降りる。
改札を出て光を受けると後ろから肩をつかまれる。

「よ、竹谷!」
「んぁっ!ぬ、沼川?!」

そこには沼川が立っており、いつもと変わらない笑顔で立っている。
まるで、昨日の事なんて私の夢だったのではと錯覚されるくらいに爽やかだった。

「考え事してたの〜?何〜そーだん乗ろっかぁ?」
「あぁ〜…いや、あ……。っ昨日はゴメン!悪かった!!」
「は?」
「いや、サクソルが…今うちに居候してる子なんだけどさ、お前が嫉妬してるって言っただろ?
 そういうのってさ、それが事実だろうが嘘だろうが嫌なものじゃん?
 私も注意しなかったし、お前には絶対に嫌な思いさせただろうから…。」
「あーあれ!いいよ別に、オレも子供相手にさぁ…。後で思い返して大人気なかったなって思ったし。
 気にしてないよ、全然。むしろあの子さ、洞察力鋭そうだから気をつけたら?隠し事出来なさそー。」
「あ、それは分かる。昨日も映画二人で見ててさ、あいつ初めて見るのに主人公との
 関係性について私が気づかなかったこと言ってのけるし。調べてみたら最近出た過去編みたいなので語られてたんだ。」
「へーすげー!!なんか探偵とか向いてそうだな!」

そして沼川と二人でサクソルの将来について話しながら出社した。
彼は本当に気にしていないようで、好かれている、と感じたのも自意識過剰だった気がしてなんだか恥ずかしくなった。
昼休みに一度家に連絡を入れたがいつまでたっても誰も出なかった。
やっぱり修正して力尽きたのか、それとも私が帰る頃に現れるのか…。
どちらだろうと考えつつ、仕事に取り掛かった。

Re: Strange Friends ( No.11 )
日時: 2011/11/09 18:18
名前: あづま ID:SqJEoHys

金曜日。
サクソルがやってきて一週間たつ。
火曜日結局彼は帰ってこず、木曜の朝にのこのことやって来たのだった。
曰く『マスターと話してたら楽しくって君を忘れてた〜』だそうだ。
心配したのに…。

そんな彼は奏音とも私が会社に行っている間に会っていたらしく、おさがりのゲーム一式をもらってきた。
奏音に連絡を入れたところ新バージョンを買ったのでもう要らないかららしい。
そして私にとっては嬉しい事にコスプレは今回無しになった。
なんでもすごい萌体験をし、それを形に仕上げるまでは余計な事をしないでいたいからだとか。
かわりにレオンが買い物に行くらしくなんだか可哀想だ。
私が代わりに行ってあげられたらとは思うのだがあの地獄は味わいたくないので心の中で合掌しておいた。

「サクソル…それ何時間やってるんだ?」
「んー、君が外に行ってからずっとだね。時間も今日は飛ばしていないし。」
「え?7時過ぎに出たから…半日以上やってるのか?!もう止めろ、目が悪くなる!!」
「僕らは視力の良し悪しなんて関係な、あー消した!オートセーブの地点まで行く前に消した!!」
「オートセーブあるならいいだろ!…ったく。」

ゲーム機の電源を切ったことに対しサクソルが不満をぶつけてくる。
それを軽く流しつつテレビのチャンネルを変える。
サクソルは一仕切り怒鳴り気がすんだのか冷蔵庫にジュースを飲みに行ってしまった。
その程度なのか…と呆れつつニュースを見る。
なにやらまた汚職があったらしい。
記者に取り囲まれた政治家がカメラを手でおさ……紙を持った手が、テレビから、出てきた。
そしてそれが出るともう片方の腕、そして頭が出てくる。
そのままズルズルと出てきて一言、言った。

「執務放棄者サクソル!執行部隊長の命により執行隊ルーター、あなたを連行します!」

彼の持っていた紙に、不思議な記号が浮かび上がる。
しかし、今はそんな事どうでもいい。

「うちのテレビに飛び出す機能はない!!」
「痛っ、うやめ、止めて下さい!対象を連行したらすぐ去ります!痛い、角!それ角ですよ!
 やめ、角はダメェェッ!」
「お前が連行されろ!全裸でテレビから出てくる変態は連行されろ!」
「痛い痛い!すいませんすいません!でも、連行し、連行しないと俺帰れな、い、ったい…。」
「五月蝿いなぁ…、あれ?君ルーターじゃん。なんでボコられてるの?」





「はぁ…挨拶遅れました。竹谷華凛です。動揺したとはいえテーブルの角で重点的に攻撃してすいませんでした。
 それと半裸ですね。全裸って言ってごめんなさい。」
「いえ…俺は、天界の執行隊のルーターです。」
「うん。お互いに挨拶は終わったようだね。ところでルーター、僕は執務放棄者じゃないよ?
 ちゃんと歴史の監視と修正はやってるからね?」
「へ?」
「あ…もう執行宣言しちゃったの?ちゃんと確認取らなきゃ…君戻れないじゃん。」
「そんな、っじゃあ、俺どうなっちゃうんですか?!」
「一生人間界暮らしじゃない?」
「そんなぁ…。」
「……。」

目の前で話す二人の天使らしい者を観察する。
サクソル、見た目は小学校3年生。セーラー服。赤毛。
ルーター、見た目から判断して年は私と同じくらい。上半身裸、下半身巻き布。クセ毛。
天使って実は変態集団なんだろうか?

「っていうかやっぱりルーターも天使なのか?二人は知り合い?」
「はい、俺も天使っていうと本来は違いますがそうです。サクソル様は俺の上司に当たりますね。」
「上司って言っても直属じゃなくて、地位からいったらそうってだけだけどね。
 僕の直属はケナベルとスウィノーじゃん。」
「そうですけど…。」
「あれ?サクソル、お前って実は……偉い?」
「サクソル様は俺たちの世界の主に目通りできますからね。偉いですよ。ちなみに主から初めに作られたのがサクソル様です。
 次いでデストル様。彼は追放者ですが…っ!痛い!!」
「君さ…僕の前であいつの話はしない。何回か言ったよね?むしろ何回目かな?ね、教えて??」
「8回目…すいませんデストル様の話はもう、痛い!あ、あっあ、い、あぁああぁっぁあぁあぁぁ!!」

悲鳴を上げるルーターの口を大急ぎで押さえる。
すると一瞬見たことがない光景が見えたが、これはおそらくサクソルの力なのだろう。
そんなこと気にせず暴れるルーターの口を押さえ続ける。
今はもう夜で近所迷惑必至だ。
しばらく二人で格闘し、ルーターが暴れなくなったところで手を話す。
両者とも、息が上がっており暫く声を出す事ができなかった。

「もう、なんで華凛まで飛び掛っちゃうのさ?一瞬術かかったじゃん。」
「いや…今叫ばれたら近所迷惑……。」
「ルーターが出てきたときに君も結構大声で叫んでたよ?」
「はぁ…すいません、本当。でもサクソル様、俺みたいな下っ端の名を覚えて頂けているなんて光栄です!」
「そりゃ僕の前で何回もあいつの事喋るしね。それにお前剣だけは強かったし。」
「はい、ありがとうございます!」
「ま、この時代じゃそれも役に立たないけど。ところでお前、住むのどうするの?
 執行宣言しちゃったみたいだし人間とほぼ変わりない状態じゃん。」
「あっ…。」
「あ…なんだったら家に住むか…?お前くらいだったら働けるだろうから負担もきっと少ないし…。」
「え?でも…。」
「いいよ、角で叩いて怪我させたし。お金はさ、お前くらいなら働けるだろうから特に困らないよ。」
「でも、いざとなったら奏音からたかるんでしょ?」
「たかるって…それダメですよ…。」
「平気平気、あんたがホームステイの人っていえばいいしね。多少はなんか見返り求められるかもしれないけど。」
「でも、奏音様に負担が…。」
「あいつに様はいらないって。大丈夫、あいつ儲けてるから。」
「いや…でも……。じゃあ、じゃあよろしくお願いします。」

そういって彼は私の足元に跪く。
そしてその頭をサクソルが思いっきり踏んだ為彼は思いっきり顔から逝った。





「へぇ、じゃああいつが仕事放棄してると思って来たらしてなかったと。」
「はい…。おかげでもう戻れないかもしれないんですよ…。」
「お気の毒様…。」

現在、私はルーターと二人きりだ。
サクソルは彼のことを一通り叱り付けた後、彼を派遣したところに文句を付けに行った。
ついでに歴史も確認して必要があれば修正してくるから日曜まで戻らないとのこと。
彼が消えた後、私たちは話を続けている。

「あ、サクソルが怒った…えっと、人ってなんなの?
 前私が話してる時に無意識だったけど傷つけたっぽいことがあってそれ関連かとは思うんだが。」
「あ、気になりますか?…サクソル様はいないですし、お望みとあらば話しますが。」
「うん、気になる。話して。」
「分かりました。と言っても、これらの事件があった時、俺はまだ作られていなかったので又聞きですが…。」

そうして、ルーターは語り始めた。

Re: Strange Friends ( No.12 )
日時: 2011/12/30 23:35
名前: あづま ID:OCbKomI2

ある時、何もなかったところに一つのものが現れた。
それはしばらく一つのままだったが、孤独に耐えられなかったのか一人の少年を作り出した。
それが現れた事によって、最初に現れたものは主となり、主が現れたところは世界となった。
主から作り出された少年は赤毛で、とても活発な子供だった。
主は、毎日飽きる事もなくその少年と遊んだ。

ある日主と少年が世界を歩いていると、もう一つの世界があることに気がついた。
それはさまざまな人間が暮らしている世界だった。
しかしそれは次々と別の光景を映し出した。
崩れていく高い建物、野を駆ける裸の者、炎に覆われた街―――
主は少年に、これはもう一つの世界の過去と未来だと教えた。

もう一つの世界が映し出す光景に、少年は魅了された。
主は、もう一人。今度は黒い髪の少年を作り出した。
彼は少年を兄と呼び、二人はすぐに打ち解けた。
主とともに三人は楽しい時間を過ごしていた。
主は、二人に名を与えた。
少年にはサクソル、青年にはデストルと。
二人は名を持つ意味を主に問うたが、主は世界では皆持っているものだと答えた。



もう一つの世界を見ていたとき、主はふと気づいたのだ。
自分が知っている世界より、文明が遅れている、と。
主はデストルに命じ、デストルは大きな災害を起こした。
人間はその災害による悲劇を繰り返さないため、対策を考えた。
そして、主の知っている世界と同じになった。

暫くたつと、今度は文明が進みすぎていた。
主はサクソルに命じ、技術を持った人間の記憶を操作した。
人々は、失った技術により発展が少し遅れた。
こうして、主の知っている世界と同じになった。

こういうことは、たびたび起こった。
主はデストルを人々の住む世界に送り、試練を与え、文明を授けた。
主はサクソルを彼らの世界に送り、記憶を奪い、文明を修正した。
こうしてサクソルは監視し修正する者となり、デストルは試練を与え繁栄させる者となった。

主は、いろいろなものを作った。
人間、動物。
しかし彼らは自分の意思で、主に与えられた姿以外にもなることが出来た。
だが、それは酷く体が重くなる行為であり、主はそれを疲れと言った。





ある時、デストルが人間の住む世界から帰ってきた。
そして彼は、サクソルに言った。

『人間達の住む世界は日々、試練により進歩している。
 私達はただ監視するだけでなにも、主と兄様とでもう一つの世界を見ていたときと変化していない。』

これに、サクソルは答えた。

『確かに変わっていないかもしれない。でも、僕はこの状態の継続を望む。
 主と、君とで永遠と暮らしていく事を。この関係の継続を深く願う。』

デストルは、答える。

『私も、それを望んでいる。この関係の崩壊は望みではない。
 ただ、進みすぎた文明や遅れすぎた文明はどんな手を施しても再び栄える事はなかった。
 自分達の世界はどちらかに該当しているのではと心配になったのだ。』

デストルの答えに、サクソルは微笑んだ。



デストルが文明を与え、サクソルが修正を加える――
はじめこそサクソルの仕事はあったが、デストルが慣れた今は彼の仕事がないに等しかった。
主は、仕事を上手くこなしたデストルにばかり話しかけ、サクソルは放っておかれた。

『お前ばかり、主に寵愛されていて不愉快だ。』

それに、デストルは答える。

『そんな事はない。主は、私のことを愛してくださっているし、兄様の事も愛していらっしゃる。
 私も兄様の事を愛している。兄様は違うのか?』
『確かに、主に愛されているのはこの身でしっかりと感じている。それにお前の事も愛している。
 ただ、自分よりも君が寵愛されているように感じてしまう。それを自覚するとよく分からない感情になる。』

この答えに、デストルは答えた。

『それはおそらく嫉妬というのだろう。私はコレもまだ良く分からない。』

二人は本心を話しているようだった。
二人はこのことを主に報告した。
主は笑い、サクソルには謝った。
自分は平等に接しているつもりだったが、そう感じたならすまないと。
そして久しぶりに3人で、世界を歩き回った。








こうした出来事に霞がかかった頃、事件が起きた。

『この停滞した世界に私は試練を与える!文明を与える!!』


反乱の実態を、はじめ世界はつかめていなかった。
しかし、世界のものの存在が消失していくにつれ、反乱者の像がつかめた。
デストル他彼の信用を得ていた数名の者達。
彼らをサクソルたちは追い詰めた。
彼らは主によって追放され、人間界とはまた違ったところに縛られた。




反乱者達は、地上で悪をなし抹消される存在を引き入れた。
彼らは無意識のうちに罪を犯してしまった存在である。
少しでも味方がほしい反乱者は彼らを匿い、力を与えた。
少しずつ彼ら以外の存在が増え、新たな世界が作られていった。

Re: Strange Friends ( No.13 )
日時: 2011/10/09 11:32
名前: あづま ID:SqJEoHys

「…終わり?」
「はい。」

何か壮大な話が始まるだろうと身構えたのは五分前。
はっきりと言う。拍子抜けだ。

「あの…反乱軍のその後は?」
「伝わってないんじゃないですかね?少なくとも俺は知らないですよ。
 デストル様がいる世界は並の力の者じゃ取り込まれてしまうと聞いています。」
「マジ?なんか謎が深まっただけじゃないか。」
「すいません。あ、でもこれは俺が作られてすぐの話ですけどサクソル様、ケナベル様、スウィノー様が
 一度討伐に行ったことがありますよ。デストル様と共に反乱を起こし追放された者達はそこで消滅し
 デストル様は大怪我を負ったと聞いています。」
「そうか…という事は今生きてる反乱軍はそのデストルだけって事か?」
「そうなりますかねー。俺もデストル様は一度だけお姿を拝見した事があるんですよ。」
「おい、矛盾してないか?お前が作られる前に反乱者達は追放だろ。見れるわけないんじゃ…。」
「デストル様はサクソル様に次ぐ力を持っていると言われています。
 それに彼の使命はこの世界へ試練と文明を与える事。だからかこの世界には干渉できるんですよ。」
「そうなのか。やっぱ矛盾…で、そのデストルってどんなヤツなんだ?」
「あー…白人ですね。髪は黒くて長髪、男性です。追放者なので姿は変えられないはずですから。
 ま、髪は切ったり染めてたら分かりませんけど。」
「割とよくいそうな人物像だな…。」

そこで話を打ち切り、夕食の準備に取り掛かる。
ルーターにも食べるか聞くと食べると言うので彼の分も作る。
冷蔵庫には食料品が少し。
明日、ルーターをつれ買いに行こうかと頭の中で計画を立てていく。

「あ、お前はさ、天使の力って言えばいいのか?サクソルの時間移動っぽいの。それってどの程度使えるのか?」
「俺ですか?今は執行隊になってるんで基本人間と同じ…あ、軽く炎を熾したりとかなら。
 あ、あとこれは俺らの世界の全てに共通してますけど地球の生命体と比較して治癒力も高いですよ。」
「いや…便利そうだけど、そういうんじゃなくて…。姿変えたりとか。」
「それって見た目変えたりですか?子供になったりする…。」
「それそれ。」
「今…はできないですね…、すいません。俺らの世界の人の力をわけて頂ければ一時的に可能なんですけどね。
 でも俺交信手段持ってないし…。でもどうしてですか?」
「あぁ、買い物行こうと思って。服はお前くらいだと私のは入らないだろうから。」
「留守番してますよ、だったら。」
「服のサイズとかあるからそうは行かないんだ。また探すかな…。」
「すいません…。」
「いやいいって。好きで面倒見てるんだから。…あとご飯炊けたら飯な。」

待たせるのもアレなのでテレビをつけ(ニュースしかやっていない…)寝室へ行く。
ルーターはなんか真面目そうなのでアニメじゃなくてもいいだろうと思ったからだ。





「さて…困ったぞ。」

ルーターは私より背が高いし体格もいい。
上は私にとって大き目のやつなら何とか入るだろう。
問題は下だ。
ジャージはおそらく入らない。というか下着がないので入ったとしてもご遠慮願いたい。
上だけ着せて下は今彼が身につけている巻き布としたいがそれは短いので不審者と思われる可能性がある。
……。

「最終手段…か?」

これだけは着せたくないが…仕方ない。
なによりサイズがないんだ…。
晩飯食べてからでいいだろう…仕方ないんだ、これは。





「あ、味が分かる。ちゃんと残る…なんかこういうの体験しちゃうと人間っぽくてもいいかな、って思っちゃいますよ。」
「ん?お前らって味分からないのか?」
「分からない…というか理解できないんですよ。感情とかは地球の様子とか見ててこうされると嬉しい、
 悲しいとかは分かってますよ?主に仕え使役される喜びもありますし。ただそれ以外がよく理解できてないんだと思います。
 味覚と触覚も無いに等しいですね。認識すればこんな感じかな、って演技です。」
「で、お前は執行する為に人間界に来てそれらが分かったってことか?」
「おそらく。驚きですよ。色々な物が一度に押し寄せてくる感じで…楽しいです。
 あなたの料理、好きです。おいしいって言うんですね、これが。」
「ふーん…お前辛党なのか。」

冷蔵庫に残っていた野菜と少々の肉を買って全然使っていなかった唐辛子系の調味料で焼いた野菜炒めを
ルーターはおいしそうに食べていた。
誰かに食べてもらうのが幸せ、と言われているが案外それは本当なのかも知れない。
そういやサクソルもパフェ好き……。

「あれ?サクソルも甘いのとか美味しいって言ってたぞ?」
「そうなんですか?あ、でもサクソル様は仕事で人間に多く関わりますし主が人間をよく理解できるように作ったのかもしれません。」
「そういうものなのか…意外と適当なんだな…。」
「主は基本おおらかですから。それとも放任主義なんですかね?…ご馳走様でした。」
「あ、食べ終わった?じゃ、そこの流しに置いておいてくれるか?下げたらこの扉あけて入ってきてくれ。」

華凛の言葉を受けてルーターは食器類を下げに行く。
その後姿を見て、やはりあれでやむ終えないと華凛は自分に言い聞かせる。

「失礼します…。」
「最初に謝っておく…スマン。本当申し訳ないんだが……お前には女装してもらう…。」
「じょ…?」
「女の格好をしてもらう。上はともかく下はお前が着れるサイズが無いんだ…。
 だから本当、本当に申し訳ないんだがスカート……す、かっ、くっ…!」
「何笑ってるんですか!女の格好って…俺もう声も体も男ですよ?髪だって短いし…。」

《女の格好》というワードに反応してルーターも反対してくる。
確かに筋肉あるし、普通女に見えないだろうなぁ。
必死に反対してくるがその真剣な顔でスカートを穿いている様を想像してしまいさらに笑ってしまう。
ひとしきり笑い、息を整えながら続きを話す。

「…くふっ、それくらいの髪の女の子もいるって。なんなら鬘あるし。
 で、スカートは危険はいっぱいなので、その巻き布を下着代わりにしてくれ。
 …やっぱ、やっぱだ、め、っははっはははは!!スカート絶対似合わねー!筋肉が…筋肉がぁっ!!」
「鬘って…なんでそんなに準備良いんですか?!」
「いや、奏音の話したじゃん?あれけっこう体格いいから。で、コスプレするんだよ。
 置き場所無いし要らないからあげるってよこしたけど私も使わないからいいんじゃないか?」
「コスプレ…聞かないでおきます…。それ、絶対しなきゃいけないんですか?」
「まぁ、そうだな。スカー…っ、ふっ…!」
「そうですか…仕方ないから着ますよ。……何笑ってるんですか!いいじゃないですか、着るんだから!
 もしかしてからかってますか?今あなたの中で起こっている感情が複雑すぎて分からないです…。」

ため息をつくルーター。
それでも私が笑い続けているともういいですよ、と言ってテレビを見に行ってしまった。
戸の隙間から見ると彼はニュースを見ていた。
アニメしか見ない、文字通りコマーシャルになると時間を移動するという能力の無駄遣い状態の
サクソルと違いちゃんと見ていた。
そして内容も理解しているらしく、時々画面に向かい意見しているルーターを見てまた笑いがこぼれてきた。
私の笑い声を聞き見られたことに気づいたらしく、彼は顔を伏せた。

Re: Strange Friends ( No.14 )
日時: 2011/10/09 11:33
名前: あづま ID:SqJEoHys

「……で、ここのホックをとめてチャックを上げる。それで完成。じゃできたら呼んで。」
「はい……。」

土曜の午前中。朝食は軽くとった。
ルーターに服の着方を教え、私は部屋を出る。
上はTシャツだが下はスカート。彼は心身共に成人しているように感じるので手伝うわけにはいかない。
特にスカートはホックがあるので難易度が高いだろう。
サクソルの様にはなって貰っては困るので一度実演して見せた。
とりあえずなんか長い靴下も引っ張り出してきて彼に渡してある。
これをあいつから押し付けられたとき絶対領域なるものの重要性を語られた事を思い出す。
今日は暑いが…大丈夫だろう。

「多分…できました。」
「そうか?…うん、平気そうだな。……似合わねー…。」
「それは俺が一番分かってますよ…何回も言わないでください。」

今彼はスカートとハイソックスより長い靴下、白いTシャツである。
髪も鬘をかぶり茶色のポニーテールである。
化粧はどうしようかと考えたが、彼の女装が似合わないのはどちらかといえば体格のせいだと
勝手に納得しするだけ無駄と現実から目をそらした。

「じゃ、車乗っていくからな?質問とかあれば帰ってから聞くから。
 あとデパートでは走り回るなよ?それと声は服を買って着替えるまでは何があっても出さないこと。」
「分かりました。…なんか落ち着かないですね、スカートって。
 下着代わりにつけているとはいえ…スースーして居心地が悪いです…。」
「女の私ですらスースーするしなぁ。滅多に穿かないからかもしれないが。あ、シャメっとこ。」

ルーターにシャメとは何かの質問をする隙を与えず携帯ですばやく収める。
フラッシュに体をビクリとさせたが私が玄関に向かったので何も言わずついて来た。





「うん…大丈夫じゃないな…。」
「すいません…治します、すぐ、治しますから…。」
「いやいいって…無理するなよ。」

デパートの駐車場。
そう、今回は渋滞にあったりせず流れは順調だった。
ただ、ルーターが車に乗って五分足らずで乗り物酔いになった様だった。
そのため駐車場まで何とか耐えてもらい今、窓を全開にし風に当たっている。
吐きそうにないことが救いだが体格のいいのがこう…風に吹かれているのは滑稽というか…。
記念にシャメっとく。
フラッシュの音に目を開けたルーターは音源を確認しまた目を閉じた。
よほど辛いらしく何も言ってこない。
ルーターの具合が良くなるまで常備してある本を読み進める。

「あの…そろそろ大丈夫です。すいません、余計な時間かけてしまって。」
「ん?そうか。じゃ、行くけど何があっても絶対に喋るなよ。」
「はい…。」

二人で車を降り、デパートへと歩いていく。
途中すれ違う人の視線をなんとなく感じる。隣を見れば女にしては筋肉ありすぎな感じのデカイのが。
しかも落ち着かないようで明らかに挙動不審だ。こんなのがいたら、私も見るな……。
この視線を浴びる事に堪えられないので急いで衣服売り場へと向かった。





「私はお前の下着を買ってくるから。大きめの買ってくるから緩くても我慢してくれよ?
 で、私が買っている間にお前は普段着を四着位選んどけ。終わったらそこの椅子に座ってろよ、じゃ。」
「え?一緒に行動し」
「喋らない。視線が痛い、殺されそうだ。」
「……。」

ルーターは不満そうな顔をするが、それに構わず下着コーナーへと行く。
奏音のが普通に入ったって事はおそらくサイズは同じくらい。
以前彼女の採寸をしたときの数値を思い出しそれより少し大きいサイズのものを適当に買う。
店員の顔がなんとなく引きつっていて疑問に思うが、自分が買っているのは男性用の下着だと思い出す。
サクソルのときは男児用だったから違和感は無かったんだろうな…。
店員から商品とつり銭をもらい、衣服売り場へと戻る。

そこへ戻るとルーターがなんかよく分からないのに絡まれていた。
ナンパ?
いやいや、男だぞアレは。女に見えないぞ。
ルーターは今声が出せないのでそれを振り払う事ができないようだ。
私は面倒ごとに関わりたくないので待っていると言った場所に座り本を出す。
数ページ読み進めたところで足音がし、隣に座った。
そして私の目の前にも誰かが立つ。

「あ、早かったじゃん。終わったか?」

私の問いかけにルーターは首を振り指をさす。
それは私の目の前にたった男を指しており彼に絡んでいた良く分からないやつなのが分かった。
オッサン…だなぁ、馬鹿上司を思い出す…。

「あの、なにか用でしょうか?」
「ぁん?嬢ちゃんにじゃねぇって、嬢ちゃんのとなりの子に俺は用があんの。」
「これは私の連れですが、どのようなご用件で?」
「連れぇ…?じゃ、嬢ちゃんも一緒でいいかぁ。俺と一緒にさぁ、遊ぼぉ?」

ナンパ…だと、まさか?!
これを?!

「あの、お気持ちはありがたいんですけどね?まだ私達やる事があるんですよ。」
「へぇ…?でもよ、そっちの子は一回も喋ってねぇぞ?」
「あぁ…うん、そうですね。でも本当に用事あるんで。これ以上しつこいと警備の人呼びますから。」
「チィッ…。」

舌打ちをしてオッサンは私達から離れていく。
ていうかあれ?こいつ以外と女でもいけるの?筋肉あるけど意外と通用するのか?
ルーターを頭から爪先まで見てみるが女には見えない気がする。
まぁビルダーみたいにあるわけじゃないし、スポーツ系女子って感じなら…通用するのか?
なんとなく気になり奏音に画像を添付しメールを送ってみる。
彼女はおそらく仕事をさせられていると思うので返信は時間がかかるだろう。

「で、あのオッサンのせいで服は選べてないと。」

無言で頷く。

「しゃーない、一緒に選ぶか。っつってもセンス無いから覚悟してなよ。」
「はい。」
「声出さない。…ジーパンでいいと思うんだけどな…上はお前が気に入ったので。」

十分ほどで買い物を済ませ、トイレで着替えさせる。
今回は女子トイレで着替えさせるわけには行かないので多目的トイレだ。指示を出し私は外で待つ。
数分で着替えが終わったようで扉が開きルーターが出てきた。
やっぱり筋肉あるし男だよな…あのオッサンはなんだったんだ?

「お、似合ってんじゃん。もう喋っていいぞ。鬘はとらなくていいのか?」
「取りたいのは山々ですけど借り物なんで汚したりするわけにいかないじゃないですか。」
「真面目だねぇ。じゃ、飯食いに行くか。」
「え?朝食べましたよね?」
「私らは朝昼晩食べるぞ?お前らってもしかして朝と晩だけなのか?」
「いえ。俺らの世界では食事は嗜好品ですからね、食べなくても生きていけるんです。
 今は執行者として人間とほぼかわりが無いので食べないと餓死しちゃうと思いますけど。」
「そうなのか…サクソルは食事必要ないのか?」
「でしょうね。でもサクソル様は味覚が人間と変わりないようなので楽しいでしょうし、いいんじゃないですか?」
「なんか…食費返せって気分だ。」

天使っぽいのすげえ。
意外な事実に少々驚きつつレストランを目指した。

Re: Strange Friends ( No.15 )
日時: 2011/10/22 09:33
名前: あづま ID:/ne/WJtI

前回サクソルと来たときはレストランはそれほど混んでいなかったのだが、
今回はそうではなく、店員に聞いたところ三十分ほど待つそうだ。
ルーターに聞けば三十分とはどれくらいかと質問され時計を示せば平気だと言う。
彼の返事を聞き名前をかいて、椅子に座って待つ。

「なぁ、ただ待ってるのも暇だしそこに本があるからそれ読んで待っていたらどうだ?」
「読みたいですけどここの字まだ読めないんですよ。すぐ帰るつもりだったんで字まで覚えてこなかったんです。」
「ここの、ってことは日本語以外は読めるのか?」
「あ、言い方が悪かったかな…地球の文字はまだ読めないし書けないです。英語と日本語は喋れますけど。
 俺が言ったのは俺らの世界の文字の事で…ただ文字がある意味はあまり無いんですけどね。」
「あまり無いって…言葉だけで伝わるのか?」
「俺らの世界の言語は共通ですから。それに主は俺らの心を読む事もできるらしいですし。
 だから嘘なんてついたら即刻ばれるんじゃないですかね?」
「そういうもんか…言語共通は羨ましいな。そうだ、帰りにドリル買おうか。お前にも働いてもらいたいし。
 ただ文字は読めないと辛いから…まぁお前は勤勉そうだしすぐ覚えるだろうよ。」
「すいません何から何まで。」
「いちいち謝らない。私が好きで面倒見てるんだ。」
「はい、分かりました。」

彼の返事を聞き本に目を落とす。
そういえばサクソルは字が読めたっけ?
サクソルが来てからの行動を出来るだけ思い出すが彼が文字を読んでいたことは無いと思う。
一応買っておこうか。





名前を呼ばれたので店員についていく。
メニューを開きルーターに選ばせようとしたが、自分は良く分からないから私に選んでほしいと言った。
だからパスタを二種類選び半分ずつ交換する事を提案すれば彼も承諾した。
パスタが運ばれてくるのを彼の世界の事について話しながら待つ。

「存在している数はよく分からないです。昨日話したとおり姿を変えようと思えば可能ですからね。
 普段獣の姿をしている者が人間の姿になったりとかしますし。肉食獣が草食獣になったりもしますよ。気分で。」
「気分って…。昨日聞いたことから察するに今はお前できないんだよな。お前の世界にいたときは出来たのか?」
「下手でしたけどね。長時間もたなかったです。だから剣だけってサクソル様も言ってたでしょ?」
「あぁ…。」
「でも日本は戦争無いんですよね。だから俺の能力が活かせないんですよ…。」
「平和主義で行こうじゃないか。」
「お待たせしました〜、和風海鮮パスタとホワイトスープパスタです。以上でよろしいでしょうか?」
「はい。」

そう言って店員は去っていった。

「お前はさ、どっち先に食べたいとかあるか?」
「どっちでもいいですよ。あなたが食べたいほうを。」
「そうか?じゃ私は海鮮最初に食べるから。」
「じゃ俺はこの白いのですね。」

各自皿をとり食べ始める。
ルーターははじめスープの熱さに無言で震えていたが時間をおいてからは平気になったようで普通に食べている。
食事中は会話は無く無言で食べていた。
半分ほど食べ終わったら皿を交換しまた無言で食べ続ける。
ルーターが先に食べ終わり数分後私も食べ終わる。
これから雑貨を買いに行かなければならないわけだが少し休憩する。
夏休みなので学生も多いから休憩所は人が多いだろう。だから席に座れるレストランはなかなかいいだろう。
ルーターがトイレに行くと席を立ってしまったので本を読む。
自分で結構本の虫だな、と思いながら読み進めていると椅子が引かれ座った。

「そろそ…沼川?!」
「よ。なに、買い物?あの子供はお留守番?」
「サクソルか?あいつは今帰省中。日曜にまた私んとこ帰ってくるってさ。」
「へぇ、まだいるのか。じゃ、オレとこれから遊ばないか?明日になったらまた忙しいだろ。」
「ごめん、無理だ。あー…ホームステイ受け入れてて今案内してるんだ。」
「あの子もそうなんじゃないか?大丈夫かお前の家計は。」
「ん、あいつも働くって言ってたし。」
「そうかぁ?でも困ったら言えよ、オレが助けるし。」
「頼りにしてるぞ。…あ、ルーター。紹介する、こいつ沼川。会社の同僚。」
「なっ…男?!」
「ぉお男ですよ!俺女に見えないと思うんですけど。」
「なに驚いてるんだ?オレは沼川一寿。同僚じゃなくて先輩ね、セ・ン・パ・イ。
 ところで日本語上手くないか?奏音さんの担当も外国人なのに上手いし。お前の周り日本語できる外人多くね?」

沼川の指摘に言葉が詰まる。
確かに今まで外国人で関わる人なんてALTがせいぜいだったのにこの短期間に出会いすぎな気もする。
それにALTも最初から日本語がある程度完璧に出来る人なんていた記憶が無い。皆片言だった。
実は別世界の人間なんで喋れるんだ、とは言えないしルーターは勉強してきたらしいし。
黙っているとルーターが口を開いた。

「俺は小さい頃近所に日本人の方が住んでいてそれで教えてもらったんですよ。」
「へぇ。結構長い間教わってたの?」
「う…、正確な期間はわからないですけど小学校入るときに引っ越してそれまでだったんで…二年くらい…?
 あ、でも、え…っと十五のときに一回日本に来たことがあるんで大体日本語は喋れますよ。」
「そうか、結構日本に関わってるんだな。なら喋れる事も納得。でもあの子供は?ペラペラだったよな?」
「私もよく分からないんだ。なんか喋れててさ、意思疎通できて良かった位にしか考えてなかったな。
 帰ってきたら聞いておくよ。あとレオンは編集長さんの知り合いで日本語を勉強してたらしいぞ。」
「そうなの?」
「奏音が言ってたんだ。私もよくは分からない。」
「ふぅん、外人も勤勉だなぁ。じゃ、オレ行くよ。お前が見えたから来たんだし。」
「分かった、会社でなー。あとケーキ宜しく。」
「はいはい、お楽しみに。」

そういって席を立ち沼川は売り場へと消えていった。
やっぱりサクソルの事は気に入ってないんだなと彼の口調からなんとなく伺えた。

「あの、サクソル様はあの人になんかやりました?」
「からかってた。」
「どうりでなんかよそよそしい感じだったんですね…。」
「過ぎた事だしお前に関係ないから気にするな。よし、買い物続行しようか。」
「分かりました。」

席を立ち会計を済ませ買い物を再開させる。
といってもルーターはサクソルとは違いわがままを言わないのですぐ済んでしまった。
酔い止めも一応買い効くかは分からないが飲まないよりはマシだろうという事でルーターに飲ませ帰る。





「酔い止め…効かないんじゃないですか……?」
「私は酔わないからな…。でもお前を見ると否定できない。」
「なん…クラクラする…あぁ……。」
「寝てろよもう…。」

酔い止めを飲んだにもかかわらず帰りもルーターは酔ってしまった。
その様子があまりにも見ていられないのでソファに寝かせる。
本当は布団に寝かせてやりたいのだが今は敷いていないので我慢してもらう。
私は車酔いなどは全くしない性質なのでどうすればいいのか分からないのでとりあえずゴミ箱を近くに置いておいた。

「吐きそうだったら無理しないでこれに吐いていい。なんかあったら呼べよ。」

ルーターが頷いたのを確認し買ったものを仕舞いに行った。
毎回この状態になるのであれば留守番してもらうしかないのかもしれない。
少しかわいそうだと思うがしかたないだろう。
彼は大人だし納得してくれるはずだと思いながら作業を続けた。

Re: Strange Friends ( No.16 )
日時: 2011/10/22 09:36
名前: あづま ID:/ne/WJtI

冷蔵庫に買ってきたものをつめ、ルーターの衣類のタグを切り。
コスプレのは洗濯しても平気だと預かった時聞いていたのでそのまま洗濯機にぶち込む。
布団も敷き、ルーターの具合が良くなったら移ってもらうことにしよう。
さて、仕事も今は少ないのでやる事がない。
本はもう読み終わってしまったし奏音は時期から推測すると仕事のほうが修羅場だろうから話せない。
どうしたものかと考えていると居間から大きな音とルーターのうめき声が聞こえた。

「目、覚め…サクソル!」
「ただいま。特に異常は無かったみたいでね、帰ってきたよ。」
「そうか…異常無い事は良いことだがルーターの上に乗るな。戻したらどうするんだ。」
「戻すって何をだい?…そういえば顔色悪いね。治そうか?」

サクソルの問いにルーターは目を開けるがすぐに閉じてしまう。
それにムカついたのかサクソルは思いっきりルーターの頬を叩く。

「返事ィ!!」
「ぎゃっ…すいませ……。」
「華凛、これはいったいどうなってるんだい?こいつがこんなにダメージ受ける事ってないんだけど。」
「車だよ、車。それに乗ってこの状況。」
「あぁ、あのチンタラ遅いやつ。でも奏音のは華凛と比べて音静かだよね。
 チッ…言いたいことあるから特別に治してあげるよ全く。やりたくないけど。」
「いや、お前がルーターに乗った…なんでもない。」

サクソルはルーターの腹を思い切り踏み付けて彼から降り(ルーターがものすごく苦しそうだ)、彼の横に立つ。
そして自分の指を強く噛み、それをルーターの口に思い切り入れる。

「おい…そんな事したらよけい具合悪くなるんじゃないか?吐かない?」
「大丈夫。こっからも見たい?止めないけどね。」
「え?なんかまずいなら出て行くけど。」
「じゃ、お願いしようかな。終わったら呼ぶからさ。」





「確かに顔色はよくなってるが…。」
「でしょ?剣だけのこいつとは違うからね。」

自慢げにサクソルが私を見てくる。
確かにルーターの顔色は良くなっており今は座っている。だが、

「なんか怪我してるように見えるのは私の気のせいか。」
「気のせいじゃないですよ。ぶたれましたから。」
「お前いいのかそれで。」
「だって俺サクソル様より地位低いじゃないですか。逆らえないですよ。」
「へー、君でも分かるんだね。意外だなぁ、説明しなきゃいけないかと思ってたよ。」
「サクソルそれ失礼じゃないか。」
「いいんですよ、俺がバカなだけなんで。」
「勉強してね。で、ルーター。君に話す事だけどマスターの世界に戻れるよ。執行隊と話してきた。」
「本当ですか?!」
「良かったじゃないか。」
「はい!」

自分のもといた世界に戻れるということを聞いてルーターは嬉しそうにした。
そりゃそうだ、自分の故郷に帰れるというのと同じ感じだろう。

「うん。ただ力を取り戻したらだってさ。」
「えっじゃ、え?」
「僕は君に力を貸すのは絶対に嫌だからね。どうする?」
「サクソル…貸してやれよ。お前なんか冷たいぞ。」
「嫌だね。で、どうする?スウィノーかケナベル呼ぶ?」
「どちらの方も問題があるじゃないですかぁ…。」
「じゃあいらない?分かった、自力で頑張ってね。」

そしてサクソルは会話を打ち切ってしまった。
このままだとルーターは一生戻れないかもしれない。
事実今は帰れるかもしれないと言われた時と比べ明らかに落ち込んでいるのが分かる。

「サクソル、そのスウィノーとケナベルっていうのはお前の直属なんだよな?そんなに問題あるのか?」
「そうだと思うよ。僕は特にそうは思ってないけどこいつが言うんだし間違ってないんじゃないかな。」
「お前上司なのに無責任だな…。ルーター、そうなのか?」
「俺はそう感じてますよ。スウィノー様はおっとりしてておとなしい方ですけど干渉したがらないですから。
 多分こっちの世界まで来ないと思います。あと豹変するんで。ケナベル様は…もう……来たら最後食べられちゃいますよ。」
「あぁ、ケナベルねぇ…。草食獣に化けて油断させてシマウマ食べた事あるし…。あ、あと戦争中で行方不明者とか多いからって
 家族食べた事もあったなぁ。」
「正確には集落一つ食い荒らしたんですよ。で、十人近く生き残ったけど小さい子供だけだったんですぐ死んでしまって。
 その子供の中で生き残ったのは一人だけでしたし。」
「それ…やばくないか?」
「大丈夫だよ。シマウマのほうは周りにシマウマ以外何もいなかったし。食い荒らしたほうは何もいえないけど。
 それにケナベルにはちゃんとバツあげたし。それよりなんでお前知ってるの?」
「一応そこの世界を監視するよう言われてましたから。生き残った彼も最後は戦争で死にましたからね…。
 最後まで報われなかったというか知らなさ過ぎたんですよ。もう少し周りが見えれば違ったかもしれないです。」
「そこまで聞いていないよ。本当、馬鹿だね君。」

サクソルはそう言いリモコンでテレビをつける。
チャンネルを回すがどうやら今日はスポーツ実況でアニメが休みらしい。
舌打ちしてまた明日と言って消えてしまった。

「サクソル様っていつもこんな感じですか?」
「ん、多分そうだな。…予定表見ると明日もスポーツで朝夕アニメ無いぞ。来るなら月曜か?」
「多分一回来ると思いますよ。明日アニメが無いのは知らないんでしょうし。」
「そうか…。でもあいつの能力って楽だよな、自分が行きたい時間にいけるみたいだし欲しいな。
 過去も未来も行き来できるんだろうし…一日が二十四時間って訳じゃないんだろうなぁ。あ、はいドリル。」
「ありがとうございます。でも俺は便利だとは思いますがほしいとは思いませんね。
 主の世界では時間なんて無いに等しいけれどこちらはあるじゃないですか。あるならそれを体験したいですから。」
「ま、持ってないからこそ欲しいって思うんだけどな。飯食えるか?」
「今日はいいです…。具合は良くなったとはいえまだちょっと……。」
「そうか。じゃ、向こうの部屋に布団敷いといたからそこで寝ておけ。」
「分かりました。お先失礼します。」
「はいはい。」

ルーターが寝室に消えたのを見て自分の夕食の調理に取り掛かる。
といっても自分しか食べないのでありあわせだが。
明日はおそらくアニメが無いのでサクソルは来ても短時間だろう。

そういえば日本語が話せる理由を考えておかなければいけない。
無難にハーフ…いや、だったらそれを私が把握していないのはおかしいと思われるだろう。
ルーターは幼少時に日本人に教わり、十五で留学してきたという設定になっている。
だから近所に日本人がいました、というのはアウトだ。
食べながら考えるがそもそも私自身外国人と付き合う事が無いに等しいので何も思いつかない。
最近テレビでは日本語を喋っている外国人を見ることが多いがそれもなぜだかなんて覚えていない。
どうしたものか……。

Re: Strange Friends ( No.17 )
日時: 2011/11/05 06:01
名前: あづま ID:5FlPEQFo

昨日は寝るまでサクソルが日本語を話せる理由を考えていたが結局思いつかなかった。
彼が出歩く事なんて予想していなかったし、例え出歩いたとしてもまさか私達と遭遇するなんて思ってもいなかった。
いや…奏音が連れ出さなかったら会う事は無かったか。
あいつは才能はあるのは認めるが奔放すぎて全てを台無しにしているんだよな…。
それを上手く舵を取れる編集長さんと津岸さんとあとレオンもか、尊敬しなくちゃなぁ。

寝返りを打つと隣の布団にはもうルーターがいないことに気づいた。
特に用事は無いが一応着替える。
居間に行くと彼はニュースを見ていてたまに相槌をうっている。
私が入ってきた事に気づいた彼は一言挨拶しまたテレビへ視線を戻した。
テーブルを見るとドリルが置いてあり手に取ると全て終わっていた。

「すごいじゃないか。もう終わらせたのか?」
「え、っはい、終わりましたよ。結構簡単でしたね。文字は決まった音を表してるんで覚えやすかったですよ。」
「そうなのか?考えた事なかったな。ま、ひらがなカタカナだし終わるか。」
「俺的にはですけどね。あと結構前にやっていた映画だと字が出てたんでそれも勉強になりましたよ。
 それにでていないのも前後のでなんとなく推測できましたし。」
「字幕か…。朝飯はパンがあるからそれでいいとしてサクソルが日本語を話せる理由お前も考えてくれないか?」
「いいですけど…でもそれってそんなに重要なんですか?」
「沼川に疑問もたれただろ。あいつ意外としつこいから絶対月曜に聞かれる。間違いない。」
「へぇ…。大事に思ってるんですね、沼川さんのこと。」
「大事…?同僚だしな。なんだかんだで世話になることも多いし、大事かな。じゃ、飯の準備するから。」

パンを取り出し消費期限を確認。三日前なので大丈夫だ。
冷蔵庫から適当に使えそうなものを取り出し、皿を二枚取り出しテーブルに置く。
それから飲みものとコップを出して準備は終了。
席について食べ始める。

「でも勝手に決めていたら怒られませんか?あなたは不満を言われる程度かもしれませんけど俺はなにかしら
 攻撃されると思うんですけど。」
「あー…そこはしないように私が言う。で、なにかいい案は無いか?折角の日曜をコレに使うのは不満だが仕方ない。」
「そうですね…俺と同じで教わっていた、とすればいいんじゃないですか?」
「いや、多分ダメだ。お前とサクソル、それと直接関わりは無いがレオンという外国人が短期間で私の周りに集まった。
 しかも全員が日本語を完璧といっていいくらいに喋れるんだぞ。レオンはこっちに来る前に勉強したと奏音が言っていた。
 でも残り二人、どちらも私の家にいる奴の理由が同じって私が考え過ぎなのかもしれないが変なんだよ。」
「一々気にしますかねー?」





朝食を食べつつサクソルが日本語を話せる理由を考えるがいいものが思いつかない。
ルーターは別に気にしなくてもいいのではと言うがそれではダメなのだろう。
本人が来てくれれば一番いいのだがなぜか来てくれない。
アニメの時間…といっても今日はスポーツだがそれはとっくに過ぎている。
昨日の会話が聞かれていて今日はもう来ないつもりだろうか。
時計を見ればもう一時間ほどこの問題について話し合っている。もう答えも出尽くしてしまっただろう。

「なぁ、お前がサクソルを呼べたりしないのか?」
「俺が?無理じゃないですかね。」
「んじゃさ、思いっきり不祥事を起こすとかは?そうすれば絶対でてくると思うんだが。」
「不祥事って何起こすんですか。その前に俺が絶対に被害受けますよそれ。」
「だからそこは言ってやるから。無理?」
「無理ですよ。不祥事って……。」
「やっぱダメか。あー…サクソル、遊園地行こう!楽しいから。」

テレビの前が歪む。

「それで出て来るん」
「出て来たよ?」
「あ、サクソル。なんだ、今日はもう来ないと思ってたのに。」
「遊園地は一回コマーシャル見たしね。ルーター、苦しめ。」
「いやすみませんまさかでっいたあぁあぁぁ…!」
「あ、止めろって。私もお前に聞きたいことがあったし。」
「そうなのかい?まぁ遊園地に連れて行ってくれるなら答えられる範囲でよければ答えるよ。」
「遅いですよ…。」
「今は僕と、華凛が話してるの。分かるかい?お前は黙ってろ、命令だ。」
「いや…ルーターごめん。いやな、お前が日本語を喋れる理由をどうしようかと思って。」
「理由なんて必要なくない?」
「いやいるんだよ。沼川に疑問持たれたから。あいつは自分が納得するまでやるタイプだからな。」
「そう。君に迷惑がかかるんなら仕方ないね。じゃさ、その人の家に行けるかい?」
「行けない事も無いけど…いるか分からないぞ。」
「じゃ明日でいいや、家によびなよ。解決して見せるから。じゃ、遊園地行こう。
 …ルーター、さっさと着替えたら?お前は人間と変わりないんだから時間かかるし。」

サクソルは彼を蹴飛ばしつつ自分の着替えをこちらに飛ばす。
ルーターはけられた背中をさすりながら自分の着替えを取りに寝室に行った。
私は皿を下げ洗ってから伏せる。そして洗面所に行き軽く化粧をする。
こんな日はしなくてもいい気がするが一度社会にでて化粧をしてしまうと外出するのにしていないのはなんだか落ち着かない。
化粧を終え戻ってくればルーターが雑誌で頭を叩かれていた。
ただその雑誌は宙に浮いておりサクソルは一切触れておらずむしろ彼自身は蹴りを入れている。

「やめろやめろ。ほら、もう出発するから。」
「ちぇ…ほらさっさと立ってよ。お前のせいで遅れたら色々剥奪してやる。」
「それは勘弁してください…。」
「だからもう…なんでこうつっかかるんだ?」
「あ、そういえば車で行くんですか?」
「いや、電車だ。酔い難いと思うけど一応飲んでおくか?」
「ないよりはいいですよね…多分。」

薬箱から酔い止めを出しルーターに渡す。
そしてサクソルの手を引きながら遊園地を目指した。





徒歩で駅までやってきた。
サクソルはこの世界の服を着るとある程度の能力が失われるのか時間移動せずしぶしぶついて来た。
といっても最初の五分で歩くのを嫌がりルーターに負ぶってもらっての移動だったが。
そして駅に着くと物珍しさからかルーターから飛び降り走り出してしまった。
電車は後二十分は来ない。しばらく遊んでいるのもいいだろうと思ったのだ。
最初は自販機を触っていたりレストランを覗いていたりとまあ視界の範囲で動いていた。
だが、反対車線の電車から降りてきた人ごみにまぎれて一度見失ってしまった。
それから必死で探したのだが見つからずアナウンスしてもらう事を考えたときに彼は帰ってきた。

「おかえり…。」
「なんなのあれ!迷子じゃないのに引っ張っていかれたんだけど!
 そもそもあの人の鞄が僕の服に引っかかっていったのが原因なのに!軽く不幸にしてやる!」
「そんな私利私欲で力使っちゃダメですよ。怒られ、ませんね…。」
「サクソル小さいから仕方ないだろ。ルーター、ちょっと捕まえてろ。迷子になられたら面倒だ。」
「はぁ?!なんでこいつに、離せ!降ろせ!命令だ!!」
「サクソルは黙れ!帰るぞ口答えするな!お前らが私の部屋で暮らす限り私がルールだ!私が正義だ!!」
「僕は暮らしてないじゃないか!夜は君の家にいないし暮らしてるのはこの無能だけでしょ。」
「あの、視線……。」
「あ。結構注目浴びたな…。で、どうする。行くのか?」
「行く!」
「あっそ。じゃ切符買ってくるから改札の近くにいろ。あとルーター、無能は否定しろ。それと薬飲め。」
「否定すると…。」

二人を改札の近くに残し切符を買いに行く。サクソルは子供料金でいいんだよな…。
まだサクソルが一方的にだがぎゃあぎゃあと言っているのを見るとなんだか関わりたくない気分になる。
まあ、サクソルが小さいという事と彼が一方的にわめいているので周りからはわがまま息子みたいに思われているんだろうが。
というか、それを切実に頼む。

「ほら、もう喚かない。切符買ったしもうすぐ電車来るから行くぞ。」
「うー…。」
「痛かった…。」

Re: Strange Friends ( No.18 )
日時: 2011/11/05 06:02
名前: あづま ID:5FlPEQFo

「歩いて十五分…耐えられないよな、これ。」
「……。」
「酔い止め…飲んだよな。」
「こんなやついいから行こうよ。おいてってもいいよ。」
「……。」
「ほら、肯定も否定もしない。行こう。」
「サクソルお前薄情だな!…少し休もう。なんかほら、遊園地の中の店って結構高いから。
 だから少し腹に何か入れていこう、な?」
「僕お腹は減らないんだけど。」
「ケーキあるから行くぞ。」
「分かった!」

ルーターは電車の揺れにすら耐えられなかったらしく乗り物酔いになってしまっていた。
電車で酔う人初めて見た…。
サクソルをケーキで釣り、近くのカフェテリアに行く。
休日だが昼前なので人もまばらですぐに座れた。
座ってすぐに突っ伏してしまったルーターの頭をベシベシメニューで叩くサクソルを注意し選ぶように言う。
自分は無難にケーキセットでいいかとメニューを覗き込み決める。

「ルーター…大丈夫か?なんか食べる…のは無理そうだしなんか飲むか?」
「大丈夫じゃないです…。これは体験したくなかった……。」
「悪かったな…。」
「いえいえ…あなたに原因はありませんから。俺が弱すぎて…。」
「お前本当に剣だけなんだね。華凛、僕はコレがいい。イチゴ乗ってるやつ。」
「どれ…重!ルーター、こいつが食べ終わるまで顔あげないほういいぞ。絶対吐くから。」
「分かりました。休んでます。」

店員を呼び注文をし少し待つ。
といっても今は混んでいないので本当に待ち時間は少しだった。
もくもくと生クリームの塊にしか見えないパフェを食べるサクソルを見るとなんだかこちらが胃もたれする。
五十センチスペシャルパフェってなんだよ…と思いながら自分のセットを消費する。

「サクソルそれって多くないのか?」
「ん?まぁ僕には満腹感が無いし。それに美味しいよ。マスターの好きな味。」
「へえ…マスターとお前って嗜好が同じなのか?」
「どうだろね?考えた事なかったや。でも同じじゃないかな、僕が持って帰るものは全部喜んでくれてるし。」
「そうなのか。そういえばマスターってどんな人なんだ?」
「どんな…?男で僕が君の身長に合わせた事あったよね。あれより少し身長は高いかな。こいつより少し小さい。」

そう言ってスプーンでルーターの頭を小突く。

「若いのか?」
「そうだろうね。でもあんまり知らないなぁ。僕たちと違って成長するくらいかな、あと知ってるのは。」
「成長するのか?」
「うん。僕が初めてあった時はもう少しあどけなかった。今は君と同じくらいかな?」
「私は二十三だからそれくらいってことか。へえ……。」
「多分ね。あ、溶けてきた。」

サクソルの言う“マスター”とルーターの言う“主”同一人物。
それの像を掴もうとしたがなんか情報が少なすぎる。
特に気にする事じゃないしいいか、と食べ終わったのでスプーンを置く。
サクソルがパフェと格闘する姿を眺めつつ遊園地の予定を考える。
ルーターの乗り物酔いが酷いので揺れるのは恐らく駄目。でもベンチで待っててもらえば平気か。

「サクソル、何か乗りたい物とかあるのか?ただ行って終わりって訳じゃないだろ。」
「ああ、名前は知らないんだけどね。船のやつ。あれの先のほうに乗りたいな、ものすごく揺れてたもん。」
「あれか…ルーター、お前座って待っていられるよな?多分あれ乗ったらお前死ぬ。」
「待ってられますよ。あとそろそろ顔を上げたいんですけど。」
「別にいいよ。もう半分食べ終わっているからね。あとアイスと生クリームだけじゃないかな。」
「やめとけ。見てるだけで胃に来る。」
「そうですか。じゃあもう少し辛抱します。」

上げようとしていた頭を下げ再び突っ伏すルーター。
首痛めそうだな、と授業中居眠りばかりしていた奏音の姿勢と同じなので思う。

「頑張れ。あとサクソル、多分待ち時間が尋常じゃ無いと思うんだ。ジェットコースターとか人気なやつはな。
 日曜だから家族連れも多いだろうし二時間待ちとかもあるだろうしそれは我慢できるか?」
「大丈夫大丈夫。そこは平気、人を僕が遊ぶ時に来ないようにするから。」
「サクソル様、私利私欲は駄目ですよ。」
「だっからお前が僕に意見しないでもらえるかな。時間移動したいけどこの服だと自由に出来ないんだよ。
 一回もとの世界に戻らなきゃいけないから面倒なんだ、分からないよね?君には力が無いから。」
「はぁ…サクソル、力使わないで待つこと。洗脳だかなんだか知らないけど人の世界に関わるなら人と似たような生活をしろ。」
「ケチ…!」
「お前らの面倒見てるしケチじゃないよ、私はさ。」
「……。」
「なんか言え、ルーター。」
「……お世話になっているんで。」
「ケナベル呼ぶよ。お前なんか食われちゃえ。」





ケナベルという彼直属の人?を呼ぶと機能聞いた話で判断すれば絶対に周りに被害がでる。
そうサクソルに言い聞かせこちらに来る事は無いのだが。
そしてその問題の部下の上司は今とても不機嫌でルーターにここ十分ほど蹴りを入れている。
理由は簡単、入場券が買えていないので園内に入れないからだ。
私自身、両親が忙しく施設で寝泊りする事が多かったので遊園地に行った事など一度も無かった。
そのため並ぶだろうという事は推測できたがここまでだとは思っていなかった。

「ルーターごめん。左足平気か?」
「一応鍛えてるんで平気ですよ。どうぞお気になさらず。」
「チッ…これだからお前は嫌いなんだ。」
「いいですよ、嫌いで。でも俺はあなたについて行きますから。」
「僕に迷惑かけないならいいけどね。お前はいいとして、華凛まだ?力使えないと待つから辛いんだよ。」
「あと五人だろ、十分くらいだ。駅からここまで歩いてきたのと同じくらい。」
「分かった。」

そしてまたサクソルはルーターを蹴り始める。
というかルーターは人とかわりが無いので痛いんじゃないか、と彼の様子を伺うがそんな素振りを見せない。
むしろ笑いながらたまにかわしている位だ。剣が強いらしいので痛みには強いのかと思った。
攻撃をかわされたことにサクソルが怒りさらに力をこめて蹴りを…と思ったらフェイントで殴ろうとしたらしい。
しかしそれもルーターは受け止め笑っていた。そしてそのままサクソルを肩車している。
はじめは髪を引っ張っていたが普段より高い視線に興味が移った様でルーターの頭にあごを乗せ見渡している。


十分かからずに入場券が買え二人の元へ戻る。
肩車のおかげで人より頭が一つ分以上高いところにいるサクソルが私に気づいたらしく手を振った。

「ただいま。じゃ、入るか?それと肩車は今すぐ止めろ。」
「結構遠くまで見えるから良かったんだけどなあ。」
「でも結構目立ってますよ?それに同じように肩に乗っている子供もいますけどあきらかにサクソル様より小さいです。」
「だって君が僕を乗せたんじゃないか!」
「いいじゃないか、私もお前がやけに高いところに見えたから見つけられたんだし。でも降りないと駄目。」
「やっぱりケチ…。」





「まだ待つの?!」
「仕方ないだろ、これ結構人気らしいし。」
「最悪!」
「いやルーターの事考えろよ。あいつずっとベンチだぞ?それよりはマシ。」
「あいつは別に気にする事ないでしょ。」
「お前本当に酷くないか?」
「僕はマスターが幸せならそれでいいもん……。」

サクソルが乗りたがっていた船の列に並んで二十分。早くもイライラしだした。
表現は悪いがサンドバッグとなるルーターがいないので何にもぶつけられず見てるだけで伝わってくる。
列はまだ長いが今までの進みを考えて後三十分あればできるはずだ。
ぶつぶつ何かを呟いているサクソルをなだめつつも、長い列にため息が出る。
まだまだ遠そうだ。

Re: Strange Friends ( No.19 )
日時: 2011/11/19 05:55
名前: あづま ID:zjbySp2Y

「ねぇ、僕先端に乗りたいんだけどいいかい?」
「それだと次にしか乗れないけどいいかな?」
「次?!…待つよ。今まで待ったんだからすぐだと思うし。」
「そうですか、じゃあ、ちょっとこっちに避けてね。」
「すいません…お世話かけてしまって。」
「いえいえ、お客様に楽しんでいただく事が私達の仕事ですから。」

ぶつぶつと隣で何かを言われながら三十分。やっと私達の順番がやってきた。
サクソルは目を輝かせておりそれになんだか微笑ましくなる。
前の人たちが終わり、いよいよ船のアトラクションに乗り込む。
後ろにつめていくという事でもちろん私たちは一番後ろ、サクソルが望んだ場所だ。
安全ベルトを止め、動き出すのを待つ。
徐々に揺れが大きくなり、音が風のみになっていくのを感じながら楽しんだ。





「終わったな。で、次はジェットコースターだっけ?それならルーターも大丈夫だろうから迎えにいこうか。」
「そうだね。…でも結構楽しかったなー。」
「お前絶叫系が好きなのかな。だったら多分ジェットコースター好きだよ。ただ待つからな。」
「またぁ!…でもそれだけ楽しいって事なんだよね。仕方ないや。」

そしてルーターを待たせているベンチへと向かう。その前に屋台で飲みものやお菓子を買う。高い。
そして待たせてあるベンチがある場所に近づいてきたが、そこには人だかりが出来てた。
プラスの方向の予感は当たらないくせにマイナス方向への予感は当たるものだ。
そして今、全身で嫌な予感を感じていた。
思わずはぐれるのを防ぐ為に繋いでいた手を握りしめる。
しかしサクソルには痛覚は無いのかただ普通の人だったら痛がるよ、とだけ言われた。

「あ、悪い。でさ、なんかあの人だかりからものすごい嫌なオーラがするというか関わりたくないんだが。」
「…否定はしないよ。」
「やっぱり?うわー何やってるんだ。」
「ただルーターが男の人を締め上げてる。隣で女の人がお礼言ってる。…持ち物を取られてたらしいね。」
「お前聞こえるのか?こんな人ごみの中で。」
「まあ。でも今行ったら確実に注目浴びるよ。…あ、この靴の音は係の人だね。右からこっち来てる。」

サクソルの言葉に右を向くと遠くの方にこの遊園地のユニフォームを来た男が数人こちらに向かってくるのが見えた。
靴の音、しかもあんな遠いところのをよく聞き分けられたなと感心する。
むしろ彼らにとってそれは普通なのだろうか。
係の人たちが人ごみを掻き分けて行き、そして男の人が連れられて行った。

「…しばらくは近づけないね。目立ちたくな」
「サクソル様!華凛様!ちょっと助けて!」

ルーターの大声に一気に視線がこちらに来る。
突然の事に思考が停止してしまった。先に行動したのはサクソルで、私の手を放しルーターに歩み寄る。

「お前なんで言うの?!関わりたくなかったのに!」

そういって一発、蹴りを入れるが、どうやらあまり痛くないところに当たるようにルーターが動いたらしい。
動くな!という声が響く。
この世界の常識が無いといってもいいような二人ではもう対処できないだろう。
どのみちもう視線は私にも集まっている。

「はあ…連れに何か御用でしょうか?」
「ええ、この方には引ったくりを捕まえていただいたので。」
「たまたまですよ。引ったくりが俺のほうに来て、彼がそれを捕まえられた。それだけです。
 なにも感謝されるような事じゃないですよ。」
「でも…せめてお礼を…。」
「ルーター、彼女お礼したいんだそうだ。」
「え、そんないいですよ!偶然ですし気にしないでください。」
「でも…。」
「本当にいいですよ、お気遣い無く。中身は何もとられてないですよね?」
「あ、はい!」
「良かった。でもこれからは気をつけて下さいね。毎回誰かが捕まえられるわけじゃないだろうし。」
「分かりました!でも…せめて連絡先くらい…。」
「あ…居候してて…。」
「…電話でいいならお教えしますよ?」
「分かりました、是非!」

そして女の人に連絡先を教える。彼女は携帯にそれを入れ、一言礼を言って去っていった。
だが、野次馬の目線は去ってくれずにずっと私達に絡み付いている。

「なんか…すごい見られてますね。」
「引ったくり捕まえたんだろ?そりゃ目立つ。あと私のことを様付けで呼んだのもあるんじゃないか?
 呼び捨てか、せめてさん付けにしてくれ。」
「え、でも。」
「華凛がいいって言ってるんだからいいじゃないか。ジェットコースター行こう。」
「そう、全然失礼じゃないから安心しろ。じゃ、行こうか。」

視線に耐えられなくなって、ジェットコースターの方向へ二人を引っ張っていった。





「そんなに急がなくても…息切れしてるじゃないですか。」
「そうだよ華凛。君は人間なんだしもうちょっとゆとりを持ってもいいと思うよ。」
「はぁ…、そうだな。…やっぱり、並んでる、な。」
「でもそれだけ楽しいって事でしょう?並ぼう。」
「…なんか、大人になったな。」
「でもこれで面白くなかったら絶対ここになにか一波乱巻き起こりますよ。」
「…サクソル、あまり大きなのは止めろよ。」
「そだね、死人が出ない方法で信用を失墜させるくらいにするよ。」
「止めろ…!」
「いやいいでしょ。遊びに来る人は来るだろうし自由選択だよ。」

物騒な事を言い出す小さいのを見て、どうか面白いようにと願う。
なにか起こるだろうという事を知ってしまった今、絶対に罪悪感に苦しむのは間違いない。
…しかし流石ジェットコースターと言うべきか列が長い。

「なあ、多分これ乗ったら帰らなきゃいけない。」
「えー全然乗ってないじゃないか。」
「でもさ、金も厳しいし。また今度来れるときに来よう。」
「絶対ね。」
「…やっぱり電車ですよね。」
「まぁ一時間くらいかかるけど自転車でもいけるし。ただ乗れるか?」
「練習すれば乗れるんじゃないですか?」
「確かにな。サクソルは後ろ…ギリギリ乗せられるだろうし。駄目だったら練習してもらうから。」
「いや、もう場所が分かったし時間が分かれば直接いくよ。待たないで済むし。」
「そうか。やっぱり便利だなー…。」

ゆっくりと進む列に喜んでいたサクソルだが、だんだんと口数が少なくなり二十分経ってからは完全に不機嫌だった。
時折ルーターを蹴ろうとするがそうすると防がれてしまうので今は抓ったりと地味な嫌がらせになってきた。
さすがにこれは防ぎようが無いようでルーターは無言で耐えている。
それはそれでつまらないらしく、声をあげさせようと蹴りを入れるがそれはかわされてしまっている。
それが面白くなく、また地味な嫌がらせを行う。これをずっと彼らは繰り返している。
私自身はそんな彼らの様子を観察するのが面白いので、待ち時間なんてそんなに苦にはなっていない。

「君、なんで暇じゃないの?」
「まあ、人間観察かな。意外と面白いぞ。例えばあの人は暇だと時計を何回も見てしまう人だ、とか
 骨を鳴らすのがクセになってる人とか。」
「華凛は結構人を見れるんだね。いいな、そういう人材がほしいよ。こいつみたいに剣しかない、みたいなのが多いし。
 全体を見れないと駄目だからね、僕がやっている仕事は。」
「そうか?じゃクビになったら雇ってくれ。」
「…考えとくよ、君が本気でそう思っているならね。」

そしてまたサクソルはルーターを小突き回す作業に戻った。
ルーターには痛覚が存在しているようでたまに小さな悲鳴を上げている。
そういえばテレビから出てきたときにぶん殴ったときも痛いって言っていた様な気がする。
演技だと思っていたな……。

Re: Strange Friends ( No.20 )
日時: 2011/11/19 05:50
名前: あづま ID:zjbySp2Y

昼間の一番暑い今、電車の冷房が心地良い。
結局ルーターはジェットコースターでも軽く酔い、金ももう少ないので少し休んで帰路についた。
背もたれにもたれ青い顔をしているルーターと無料の求人情報誌を眺めているサクソル。

「お前が読んでも無意味だろ。姿は変えられるとはいえお前絶対働かないだろ。」
「まあね。でも見聞を広める意味ではいいじゃない。」
「いいけどさ。」

規則的に揺られ、各々考えをめぐらせる。





「……グロッキィ。じゃ、明日君が沼川を連れてくる直前に来るから。」

部屋に入り、着ていた服を脱ぎ捨てサクソルが言う。
ルーターは玄関で倒れている。一時間位したら復活するだろうか。

「分かった。でもちゃんと解決できるのか?」
「任せておくれよ。大丈夫、僕があいつに負けるほど馬鹿じゃないよ。」
「まあ…負けるとは思わないけど。」
「信頼してくれているのかな?じゃ、連れて来てね。」

そしていつも通り彼は消えた。

「さて。」

ルーターに働いてもらう為に求人情報に目を通す。
サクソルは彼のことを“剣だけ”とよく言い表しているが恐らく頭はいいはずだ。
字幕の漢字も前後の文脈から推測しているようだし理解力もある。
それにサクソルの攻撃をかわしているから恐らく運動神経もいいはずだ。
となると乗り物酔いにならないのであればわりとどの職業にも就けるのではないだろうか。
しかし、半分ほど求人誌を読み進めてからある問題に気づく。

「履歴書、どうすればいいんだ……。」





すでに空は赤く染まっている。
自分の経験から考えると家庭教師や塾の講師はアウト。
コンビニやスーパーなどの従業員ならいけそうだが、私の経験だと皆履歴書が必要だったのでアウト。
配達系は免許を持っていないし、自転車も今のところ乗れないのでアウト。
となるとガテン系になるのだろうか…。

「おはようございます…すいません寝ちゃって。」
「いや、いい。具合悪かったんだし。どうだ、治った?」
「ええ、まだちょっと重いですが。」
「そうか…。まだ本調子じゃないところ悪いが仕事についてだ。普段サクソルがいないとはいえやっぱり
 厳しくてさ。で、初めて会った時に言ったと思うが働いてもらおうと思う。」
「お世話になる身ですからね、そのつもりですよ。」
「どうも。ただ、講師とか教えるのは無理だろ?履歴書も捏造しなきゃいけないからそれが必要な職種も無理。
 となると結構きついんだよ。だからそこのパソコンあるだろ?私が仕事に行っている間にそれで探しててくれないか?
 自分で面接なり申し込んで行ってもいいし候補を挙げててくれれば私が後調べるから。」
「分かりました。で、決まったら報告すればいいんですか?」
「そうだな。まあバイトだし最初からいい給料出るわけじゃないから。じゃ、これマニュアル。漢字は…頑張ってくれ。」

ルーターにマニュアルを渡し自分は明日の事について考える。
沼川はサクソルが理由を直接教えたい、といえば来るだろうが絶対に怪しまれそうだ。
まあ、いいか。沼川だし。





会社。今日はあの上司がいないようでなんだか気分が楽だ。
ただ沼川が営業に行ってしまってずっと会えていない。
昼時には帰ってくるのかもしれないが多分、外食で済ますだろう。
席をはずし、家に電話をかける。

「…でない。もうめどがついたのか?」

十回ほどコールを続けているがルーターは一向に電話に出ない。
もう働き口のめどがついたのだろうか。
履歴書も書けないし難しいだろうと思っていたが意外と世界は広いのだろう。
そもそも自分がバイトを変えることが無かったのであまり知らないというだけだろうか。
力仕事だったら即戦力になりそうだしな…警備会社…は、色々調べられそうだな。無理か。

自分のオフィスに戻り仕事を再開させる。
沼川が帰ってくるのは早くて昼ごろだろうし、それまでずっと仕事をやっていよう。

「かーりんちゃん!」
「夕鶴さん…なんですか?」
「なんかしかめ面だねぇって思ったの。恋?」
「違いますって。ただ仕事終わらないなぁって。」
「でも華凛ちゃん最後には仕上げるじゃない。しかも締め切りの前日だし。今年から入ったとはいえ凄いじゃない。
 一寿君もね。今年の子達は凄いわ。」
「私はちゃんとやってるだけですよ。だから全然凄くないですって。沼川ですよ、凄いのは。」
「まぁた謙遜しちゃって!あ、邪魔になっちゃうわね、頑張ってねー!」

そう言い残し夕鶴さんは自分の席へと戻っていく。
彼女はこのオフィスの古参であり、皆の母のような存在である。
気さくで声が大きく恋愛の話と噂が好きで、でも仕事はもちろん育児もちゃんとやっているしああいう人になりたい。
沼川の帰りを待ちつつ仕事をやるが昼になっても帰ってこない。
結構遠くまで営業しているのか、粘っているのか……。あいつは肝心なときにいないような気がする。
昼に帰ってこないなら夕方まで来ないはずなのでそれまでに少しでも多く仕事を済ませようと集中させた。



(早く来いよ…もう三時だぞ…。)

意識を仕事に向けてからもうすぐ三時間。沼川は帰ってこない。
夕鶴さんが子供が帰ってくる時間だから〜と会社を出たのが二時半。多分七時頃また来るはずだ。
よっぽど交渉が上手くいっていないのだろうか?
しかしそのような心配も無用だったらしく声高らかに沼川は帰ってきた。

「T社から契約とって来ましたー!とりあえず1年間ですけど…あれ、課長は?」
「沼川君、今日は会議よ…。」
「でしたっけ。じゃ、デスクに置けばいっか。それと、お土産ですー!」

沼川がそういうと仕事に眉を顰めていた人たちも彼の周りに集まる。
彼らの後ろから私も覗くとそれはあの店のケーキで高くて手を出せなかった種類まである。

「あ、これ竹谷のお気に入りの店のなんですよ?あいつが言うんだし味は保障しますから。どーぞ!」
「おい!別に私のことは言わなくってもいいじゃないか!」
「いーじゃん、お気に入りなんでしょ?ってて、引っ張るなよ〜。」

私達の様子を見て他の人たちは面白そうに笑う…口笛をなぜ吹く。
沼川を引っ張り人もあまり通らないところに来る。…なんかレオンを思い出すな。

「ってーな、もう。なに?」
「…サクソルがさ、どうして日本語喋れるのかって言ってたよな。」
「あ、それ。別にこっちまで来なくっても。夕鶴さんいないし噂広がらないじゃん。」
「そうだけどさ…なんか、サクソルが自分で話したいって言っててさ。今日帰り来てくれないか?」
「ん?まーいいけど。」
「よかった。いつごろなら帰れるか?私はもう今日のノルマは終わってるんだけど。」
「あー…定時には。」
「分かった。絶対だぞ?」

そして二人でオフィスに戻った。

Re: Strange Friends ( No.21 )
日時: 2011/12/11 06:56
名前: あづま ID:FZxyYef.

「ここお前んちなのかー。」
「そう。二階な。」
「へー。」

かばんから鍵を出し中に入る。と、なぜかいい匂いが漂ってきた。
何のにおいかと進んでみるとルーターが台所に立っていた。
…なんか、ごめん。

「あ、お帰りなさい。こんばんは沼川さん。」
「こんばんはー。それとお邪魔します。」
「お前料理作れたのか!」
「いえいえ、テレビでやってたやつを見よう見真似ですよ。それより勝手にやっちゃってすいません。」
「いやいいけど。で、サクソルは?」
「あ…、寝てます?よ。」
「何で疑問系。じゃ、起こしてくるから沼川は座ってて。」
「おっけ。」

寝ているってあいつ睡眠の必要あるのか?
寝室に入ると誰もいないし布団すら敷いていない。
これは呼ぶべきなのか?

「サクソルー。」

返事が無い。というか私達が来る少し前に部屋にいるはずなんじゃなかっただろうか。
そう言っていた気がする。
折角沼川を呼んだのにどうしたものかと悩んでいると居間の方から声が聞こえた。
――ドッキリやったな……。
居間に戻ればサクソルが沼川の耳元で何かを言っている。サクソルは真剣そのものの顔だが沼川はどこか無表情だ。
なんだか話しかけづらい雰囲気にただ眺めているとサクソルがこちらを振り返った。

「やぁ。終わったよ、彼はコレで僕らには何の疑問も持たないから。」
「そうか…沼川?どうした?」
「いやぁ、オレ帰るよ。なんか邪魔しちゃったら悪いし。明日なー!」

酔っ払ったような雰囲気で沼川は出て行く。
それと入れ違いに料理を済ませたルーターが戻ってきた。
彼の表情を見るとなんだか申し訳なさそうな感じで、サクソルは何かやったと確信を持った。

「サクソル…お前沼川に何やった。」
「ん?洗脳みたいな感じだよ。これであいつは何にも僕らには疑問を持たないよ。」
「洗脳?!それ許されっと思ってるのか?」
「ばれなきゃいいじゃん。ね、ルーター…?」
「え!あ、そうですねいいんじゃないですか洗脳ぐらいいいですよそうですね。」
「お前すごい片言だよ?もう少し上手く立ち回れないの?」
「え、う。」
「はいはい、あまりルーターをいじめない。そういえば昼前に電話したんだけどお前でなかったよな?
 どっか行ってたのか?」
「あ、なんか求人誌、っていうのをもっと貰おうと思って探しに行ったんですよ。そしたら声かけてもらって。
 なんか働けそうですよ。」
「うっそ、お前が働けるの?うわ、よっぽどこの国は人材不足なんだ…。」
「サクソルすごい失礼だぞ。で、なにやるんだ?」
「なんか売るんです。チョコ…とか色々。」
「あぁ。」

そうか、と合点が行く。
個人でやっている店ならば案外履歴書が要らないだろう。店主が気に入ればいいのだ。
サクソルはチョコと言う言葉に反応していた。

「チョコを売るのかい?ねぇ、それ何個か貰ってこれない?」
「あ、居候しているって言ったら何個かお試しにってくれましたよ。でもこれからは買ってくれって。」
「だったらそれのお返しできるくらいに働かなきゃな。」
「ねえ、僕それ食べたい!」

サクソルの言葉を受けルーターは台所の棚を空ける。
そんなところに置くなんてあとでこっそり食べるつもりだったのだろうか。
戻ってきたルーターがそれをサクソルに渡す。
それは、錠剤。

「……。」
「これはあれかい?ラムネみたいなタイプなのかな?」
「そこまで説明はされませんでした…。ただ見つかったら駄目だってだけ。」
「よっぽど高いのかな?」
「なんか仕入れは安いんですけど高く売るんですよ。それこそ十倍くらいに。」
「…ルーター…。」
「なんですか?あ、華凛さんもいかがですか?」
「それってさ、《エス》とか《スピード》とかって呼ばれてないか?」
「あ、知ってるんですか?なんか種類は別ですけど呼ばれてましたよ。あとこれは《グラス》《葉っぱ》とも呼ばれてます。」
「馬鹿!!」

数時間ほど、麻薬の違法性と危険性を語ることになった。
一通り説教した後ルーターが作った料理を食べ、サクソルが麻薬販売者の記憶の修正に消えた。
彼曰く警察に出頭させてみるとのこと。
ルーターはサクソルに何度か術をかけられぐったりしている。
…仕事、どうしようか。


「ただいまルーター死ね。」
「おい。」
「…すいません。」
「ホント死ね。うん。華凛、なんかまた問題起きちゃったからしばらく来ないよ。」
「またデストル?」
「…こっちの世界じゃないけど。っていうかケナベルが重要人物が生まれる家系をつぶしちゃったから。
 で、代替する人物がいなかったらもっと時間かかるし。じゃ、ルーター死ね!」

一発蹴りをいれ(やけに尖った靴はいてたぞあいつ)サクソルは自分の仕事へと行った。
今回はルーターは避けたりせず素直に彼の攻撃を受けていた。
無言で痛みと戦っている。

「まあ、間違いはあるし…。」
「っ、でも犯罪…じゃないですか。」
「お前らは知らないだろうし…サクソルがいたから事なきを得たから…。」
「すいません本当にすいません!!」
「いいよ。ただ仕事の候補を見つけて私に見せる事にしよう。そうすればそれが犯罪かどうか分かるだろ?」
「はい…本当にすいません…。」
「もういいから、いつまでもくよくよするなって。」





あれから三日、サクソルはまだ帰ってこない。どんだけ重要な人潰しちゃったんだ。
ルーターの仕事も見つからず、個人営業の店も誰かを雇うなんてことはしてくれなかった。
今朝も求人誌の山からルーターの細い声が聞こえた。よほど弱っているのだろうか。
沼川はあれから変わらない様に見えるがサクソルたちのことは全く話題に出さなくなっていた。
定時で切り上げ家に帰ると玄関にはあいつの靴があった。

「なにやってる…。」
「あ!婿〜。ヤバイよキシ復活しちゃったぁ…。」
「華凛さん…お帰りなさい…。今日は早いですね……。」
「ただいま…で、なにやってる。」
「いやショタと遊ぼうと思ったら見慣れないおにーさんがいたので変なもん持ってないかチェックを。」
「ホームステイだから平気…というかどれくらい触ってるんだよ。ルーターも抵抗しろよ。」
「無理です…だめ……。なんか、だるい…。」
「まあ精神的にゴリゴリ削られてる気がするけど減るもんじゃないし。ていうかこの筋肉がいいよ…。」
「…着替えてくる。」

妙に生き生きとした奏音にぐったりとしたルーターを任せ着替えに行く。
あいつはどれだけ男が好きなんだ。セクハラじゃないか、あれは。
ジャージに着替え戻ると奏音はまだルーターの身体を触っていて彼はそれに身を任せている。

「透けブラー!…なんでもないよ。ていうか助けてよ、キシが復活したんだけど。あたし殺される。
 レオンは国に一回帰っちゃうしさぁ、死んじゃう。逃げたい、同人があるキシのいない日本に行きたい。」
「仕事すれば津岸さんも怒らないだろうが。あといい加減ルーターを離せ。なんか可哀想だぞ。」
「…イイ顔だけど。」

鈍い音が部屋にこだました。

Re: Strange Friends ( No.22 )
日時: 2011/12/11 07:01
名前: あづま ID:FZxyYef.

「すいませんでした。筋肉ありがとうございます幸せ。」
「いいですよ…もう……。」
「よっしゃ許可出た!とっつぎゃあっ!」
「許可は出していない。文脈から察せ同人女。」

ルーターに飛び掛ろうとする奏音を求人誌で叩く。
力は入れていないがそれにオーバーリアクションで奏音は返す。
それをもうどうでもいいような目でルーターは見る。なにされたんだ。

「良かったじゃないか。津岸さん復帰したんだろ?」
「レオンだけでいいのに…二人体制になったんだよ?あたしキシに殺されちゃうんじゃないかな?
 レオンと国外逃亡したい…でも日本語しかわかんない…。」
「いいじゃないか、それで真面目に仕事できるんだったら。」
「でもさぁレオンが仕事少なめにしてくれたからこそ締め切り守れたんだし。キシになったら絶対増える。
 同人出来なくなる、死んじゃう。なんのために中卒になったのあたし。レオン早く帰ってきてー…!」
「…ルーター、向こう行って休んでろ。」
「はい……。」

重たそうにルーターは寝室に消えた。
本当に何されたんだ?

「なあ、あいつに何したんだ?車で連れまわしたりしたのか。」
「車弱いの?っへーえ!今度遊ぼー。あとあたしは別に何にもしてないよ、ただ危険物持ってないかチェックしただけ。
 で、身体触ってるうちにちょっと思い出しただけ。懐かしかったんだぁ…あの筋肉。」
「何、レオンか?それとも津岸さん?」
「キシは無理。あいつはどーゆー角度から見ても無理。なんで結婚できたかなぁ?奥さんにもっといい男紹介したい。
 それとレオンはもうちょっと筋肉ついてないよ。あたしが思い出したのは違う人。」
「レオンの事も触ったのかよ。」
「減らないし?別に嫌って言わなかったからいいじゃん。あたしは楽しかった。
 ところでその凶器は何?バイトはじめるの?婿、けっこういいとこに就職したじゃん。」
「いや、私じゃないし。」

そこでこれの意味を教える。
もちろん、別世界の人間だとか麻薬の事は省いたが。
その間奏音はニヤニヤしながら聞いており時折別の凶器と言う名の求人誌で叩いたりした。

「そう。なぁんであたしに言わないの?」
「は?」
「だぁから、あたしは婿がホームステイ受け入れるんなら援助するっていったじゃん。そして対価は萌え。
 あたしんところでアシスタントはダメ?ベタとかトーンとかモデル位ならいいでしょ。給料も出す。」
「私は構わないが…ただあいつがどう思うかだぞ?第一印象がいいとは思えないんだが。」
「…そこは覆してみせる。で、おにーぃさん、どう?」

戸を開け寝室に無断で乗り込む奏音。
やっていい事と悪い事があるんじゃないかと抗議の意味をこめて軽く叩く。
それに対し愛が痛いと返されてしまいため息をつく。
しかし一向に返事がなく更に奏音は進み掛け布団を思いっきり引っぺがす。

「あぁら、イイ顔!…っとぉ、じゃないね、うん。どうした?」
「……。」
「おい本当に何やったんだ?体は丈夫だって聞いたんだが。」
「だからチェックだけ…だよ。うん。」
「…大丈夫ですよ…疲れた、だけです……。」
「何で。…とりあえずさ、こいつん所で働かないかって。」
「えっ…。」
「うわぁ〜すんごい嫌そうな顔された!」
「なんかやっただろ絶対!で、どうする?こいつの家は近いから歩いていけるし。」
「…いいですよ。」
「おっしゃ新たなる嫁!じゃさ、来てほしいときは連絡入れるよ。携帯ある?」
「嫁…?え、俺女の人の嫁になるんですか?」
「気にするな。こいつは根っからそうだ。
 携帯は持たせてないんだ。だから家に入れればいいじゃないか。折角あるんだし。」
「ん〜…あ、じゃあたしの携帯一個貸すよ。あと四つあるし。」
「何でそんなにあるんだよ!」
「仕事用同人用プライベート用婿用。」
「…私用って何だ。」
「文字通り婿の電話しか受けないやつ。他は着信拒否だから。じゃ、これプライベートの予備のやつ。じゃねー!」
「おい!ストーカー一歩手前じゃないか!!」
「はっはは!さらばぁ!!」

私の言葉を聞かずあっという間にあいつは外に出、エンジン音が聞こえた。
あいつは自分の欲望の為なら一生破れないような記録を打ち出していそうでハラハラする。
しかしこいつはいったいどうしたんだ?

「なぁ、なにされたんだ?様子がおかしいどころじゃないけど。」
「…いきなり部屋に入ってきて、そのソファに無理矢理座らされてからずっと身体触れてただけです…。
 妙に疲れた……。」
「…これから気をつけろよ。津岸さんいれば抑えられるだろうけどいなけりゃ覚悟しとくように。
 あぁ、あとレオンも常識人だし抑えてくれるだろうから。住み込みらしいし帰ってくればあとずっといるだろ。頑張れ。」
「俺なにされるんですか…?」
「ベタとかトーンは漫画の色塗りみたいな奴だったと思う。妹さんも手伝ってるって言ってたから簡単だろ。
 モデルは…気力で頑張れ。傷が残らない程度ならボコってもいいよ。」
「えぇえぇぇ…。」

奏音の元々低い高感度が更に下がっていくのを感じた。
…津岸さん、よくつきあってられるなぁ。





二週間ほどたったが、ルーターは未だに呼ばれていない。
どうやら奏音は本職の他にアニメのコミック化のストーリーを担当しているらしく趣味にまで手が回らないらしい。
もう九月。そろそろサクソルは帰ってきてもいいんじゃないかと思うが音沙汰はない。
部下の教育の重要性を彼には教えなければいけないだろう。
うちの会社はなぜか九月に夏休みがあり、観光するのにも混雑は避けられるので評判だが行事がないので暇である。

「図書館休みー行事はないー休みはあと二週間…あぁ暇。」
「でもいいじゃないですか、ゆっくりできるのは。」
「そうだが普段が忙しいとなにやるべきか分からないんだよ。…なんか無いかな。」
「そんな君には、じゃーん、お土産!」
「サクソル?!吃驚した…。」
「いいじゃん、折角帰ってきたんだよ?ルーターは死ね。」
「ま、まだ言ってるんですか…!そろそろ許してくださいよ…。」
「冗談かもよ?まぁ、ね。で、お土産。」

そう言い袋から箱を取り出す。中にはよく分からないものが入っていた。
なんだかツヤツヤしていて色はなんか毒々しい。食欲が湧かない色じゃないか、これは。
ルーターも同じように思っているようで顔が引きつっている。
その時、テレビの前においてあった携帯がメールの着信を知らせる。
これを幸いとして先に食べて置くようにいいその場を離れる。
名前を見ると奏音からでルーターに仕事かと思いそれを開く。

『あたしが修羅場してんのに旅行行くなんていい度胸じゃねーか!
 帰ってきたら見てろお前の持ってきた仕事だけぶっちぎってるから明日は覚悟しろ!
 ってか昨日レオンが帰ってきたからお前違う人の担当になれよ』

思いっきりミスっている。そうか、津岸さん復活したんだっけ。あとレオン帰ってきたのか。彼臨時じゃないのか?
というかこれなんで私のところに来たんだ。
疑問に思っていると再び奏音からのメールが来て間違って送った事に対する謝罪と
ルーターに明日来てほしいという内容だった。
それを伝えようと居間に戻るとサクソルに謎の物体を口にぶち込まれているルーターがいた。

「サクソル止めろ。ルーターが窒息死する。」
「大丈夫、死なないから。」
「でも止めろ!」
「じゃ、君も食べてよ。見た目は思いっきり悪いけど美味しい庶民食。」
「…いただきます。」

おそるおそるそれを口に運ぶ。
まぁ、見た目が悪いだけで味は美味しい。

「…すあま?」
「なんだい、それは。」
「なんかよく分からないやつ。あ、ルーター。明日奏音が来てくれってさ。担当二人紹介するって。」
「…いよいよ、ですか。」
「ま、二人は常識人だから。奏音が異常なだけ。頑張れ。」

Re: Strange Friends ( No.23 )
日時: 2011/12/18 00:21
名前: あづま ID:PfjF7Tho

ルーターは奏音のところに行った。…常識人が二人いれば大丈夫だろう。
今日は図書館はやっているのでサクソルを連れて行ってみた。
本当はルーターも連れて来たいのだが電車を使わなければ時間がかかりすぎるので諦めた。
折角連れて行ったにもかかわらずサクソルは本に興味を示さずずっと外の景色を見ていた。
だから読みたい本を出来るだけ借り、帰りにデパートに寄った。
近くにスーパーがあるのだが近くまで来たしという事が主な理由だ。
サクソル・ルーター共に衣服売り場、レストラン、食料品売り場、雑貨売り場しか見せた事が無く
折角の機会なので全てのフロアを巡ってみた。
サクソルが言うにはデパートも人間の視点で回るのは初めてらしい。

「人間の視点で、という事はデパートに来たことがあるのか?」
「うん。修正のためになら何回かね。それだとあくまで“仕事”でしょ。
 だから仕事じゃなくて人間みたいにこうやって来るのは初めてだなぁって思ったんだよ。」
「結構大変なんだな…。そうだ、なんかほしいものあれば言え。少しくらいなら買ってもいいぞ。」
「本当かい?じゃあ、あれがいいな。おもちゃ。あれってどういうやつなのか僕興味あるんだ。」
「やっぱり年相応だな。…二階か、降りるぞ。」

エスカレーターを使い二階のおもちゃ売り場へと降りる。
そこでサクソルが選んだのは彼がよく見ているアニメのおもちゃだった。
他にもそのアニメとのコラボお菓子もあったので買い、デパートを出る。
帰りの車の中でサクソルはお菓子を開け、それについていた食玩が彼お気に入りのキャラクターだったらしく喜んでいた。





「はー、ただいま。」
「思うんだけどさ、今誰もいないのに何でただいまって言うんだい?」
「あー…クセかな。」
「そうなのかい?よく分からないや。」
「だろうな。あ、手洗えよ。」
「はーい。」

洗面所に行くサクソルを見てから携帯を開く。
電源は面倒だったので切っており、何か連絡があったかもしれないと思ったがそんな事はなかった。
サクソルが居間で買ってきたおもちゃを開封しているのを見てから自分も手を洗いに行く。
それから奏音にルーターはいつごろ帰れるかというメールを入れると電話がすぐに帰ってきた。

『もしもし婿〜?』
「あぁ。なぁ、ルーターはいつごろ帰れるか?」
『んっとね、ルー君どう?帰れるー?……あと一時間位したら帰れるんじゃないかなぁ?』
「おい、今の間は何だ?」
『へっへへモデルしてもらってたのー。レオンも一昨日帰ってきたからいっしょに頑張ってもらったぁ。
 キシがいるとこれはできないからね!あたしの目が萎える。』
「…精神的ダメージを負わせるものだったんだな、把握した。あれ?津岸さん今いないのか?」
『今仕事編集に持ってってる。修正ない事祈ってるよ。あとダメージは失礼じゃね?腐は購買層大きいのに。
 それに今やってるのは商業誌です!属性が無い人には迷惑かけてないもん!』
「…レオンとルーターは属性あったっけ……?」
『レオンははじめこそ辛そうだったけど今じゃちゃんとやってくれてます!むしろアドバイスくれるよ。
 男の気持ちはわかんないしね。ルー君もま、慣れるよ。じっくりやってあげるから。』
「要するに迷惑かけてるじゃ…切った・・・!」

会話から不利を悟ったのだろう、奏音は私の言葉を最後まで聞かないうちに切ってしまった。
ルーターって職業に関する運がとことん低くないだろうか。
暴力罵倒、麻薬販売未遂、精神攻撃……。
レオンもなんか変な扉を開いてしまったのではないか?なんか、二人が気の毒なんだが…。

「華凛、どうしたんだい?顔が暗いよ。」
「私達だけでも…ルーターには優しくしよう……。」
「へましない限りは構わないけど…どうしたんだい?」
「…すごい、哀れだ。」
「…考えておくよ。」





奏音が言ったとおり一時間後に出たらしく帰ってきたのはあの電話から一時間半後だった。
その様子は見ていられないほどで、サクソルもからかう事ができないくらいだった。
何も言わず寝室に入ってしまったルーターを見てからサクソルは私のほうに来た。

「ねぇ奏音ってなんか精神崩壊の術でも使えるのかい?」
「まあ、それに近い事はできるんだろうな…。知らないで近づいていったら終わりを見るよ。」
「…十八歳になったら教えてくれるって言ってた事があったんだけど、それも?」
「確実にそうだな。…お前、見た目が小さくて本当に幸運だな。成人だったら絶対にルーターみたいになってたぞ。」
「うっわあ。」

どこで十八歳になったら、という話題になったのかは知らないが確実にそれ系だろう。
ゲームくれたりお菓子買ってくれたりのいいイメージしかなかったのかサクソルは完全に引いている。
それからしばらくアニメを見ていたが内容が頭に入らないらしくテレビの電源を切ってしまった。
頭を抱えてため息をついている。

「なあ、晩御飯…。」
「食べれる気分じゃないよ……。」
「そうか。…ルーター。」
「どうも。なんとか、復活しましたよ…。」
「なんか、その、頑張ったんだってね。このままヘマしでかさなかったら待遇考えるよ…。」

サクソルの言葉にルーターは微笑み、彼の向かいに座った。
しばらく無言が続いたが、サクソルが仕事の内容をきくと一瞬ためらった後ルーターは話し出した。

「最初は自己紹介でしたよ。奏音さん、津岸さん、レオンさん。みんないい人だなってこの時は思ったんですよ。
 奏音さんは、まあ…。それから奏音さんが仕事を仕上げて津岸さんが会社のほうに持っていったら豹変しました…。」
「豹変って?暴力的になったりとかかい?そういう人には見えないけど。」
「まだ暴力のほうがいいです。最初は漫画を書くからモデルになってくれ、ってポーズをとったんですよ。
 でもだんだん体のラインが分からないから上着脱いで、とか言われて最終的に下着だけ。」
「下着姿くらい別によくないかい?そんなに嫌だったの?」
「…本当、こんな仕事先でごめん。」

この先の展開がなんとなく予想できた私は思わず謝ってしまう。
それにルーターは力なく首を振りサクソルは疑問に思っている顔をこちらに向けた。
しかし私の表情からは何も読み取れなかったのかサクソルが続きを促す。

「なぜか密室に閉じ込められたんですよ、レオンさんと二人で。二人とも汗かいてきたあたりで奏音さんに呼ばれたんです。
 その時レオンさんが気を強くもって、と言ったんですがなんだかよく分からなくて。
 で、ほぼ裸の二人が密着して?奏音さんが俺らの頭を持ってキスさせようとするし…あぁ……。」
「うん…ご苦労様……。待遇、善処するね……。」
「…あんなのが友達でごめん。」
「いいですよ。悪いのはあなたじゃないし。というかあれですよ、一番辛いのはレオンさんがデストル様に似てる事ですよ。」
「…は?あいつが?奏音と一緒に暮らしている人と似ているのかい?」
「まあ、俺は遠くから見たことしかないんで絶対そうだとはいえませんよ。ただ主な特徴が似ているってだけで。
 自分の上司というか大先輩にあたるだろう人を襲うって理解できない……。それに抵抗も無いって…演技だけど…。」
「…レオンの主な特徴は?」
「レオンさんなんで平気…男としてあれはいいんですかね?彼は守備範囲広いんですか?
 でも嫌がってもいいんじゃ…あ、演技してたから普通に受け入れたのかな…でも、それいいのか…。」
「ルーター、待遇変わらなくなるぞ。サクソルの質問に答えておけ。」
「え?…あ、レオンさんの特徴ですか。白人男性。髪は黒で長さはわきの辺りまで。」
「…あいつだ!」

そう叫んだかと思うとサクソルは外に出ようとする。
それを止めようと押さえるができたのはたったの数秒ほどでするりとすり抜けてしまった。玄関から走り抜けるサクソル。
おかげで自分の腕を思い切り痛めることになる。
なぜすり抜けたのかと一瞬気をとられたうちにルーターが私の手をとった。

「追いかけましょう!」
「あ、でもいますり抜けた…。」
「分かります!でもサクソル様は奏音さんの家を知っているし、今は自分で作った服を着ていました。
 ならば自分の力を使いすぐに家の前に行くことも可能なのにそれをしなかった。それほど動転しているのだと思います。
 だから多分走っているはず。」
「え、あぁ。」
「サクソル様はデストル様を恨んでいます。もしこの世界で見つけたならば、彼を討つのに多少の犠牲は構わないはずです。
 でも、そうする訳には行かないじゃないですか?だから追いかけましょう。」
「わ、分かった。」

二人で玄関を飛び出し、奏音の家の方角へと走る。

Re: Strange Friends ( No.24 )
日時: 2011/12/18 00:22
名前: あづま ID:PfjF7Tho

走っていくとすぐにサクソルに追いつく。
ルーターが推測した通りサクソルは気が動転しているのか力は使わなかったようだ。
一度帰ろうとルーターが言うがサクソルはそれに耳も貸さず走り続けた。
もう言うことは聞かないつもりだろうと諦め、私たちは奏音の家に走った。

「あれ?みんな勢ぞろいで。」
「っはぁ…。」
「婿、その息切れが色っぽい。」
「っねぇ、ここにレオンっていうのがいるんでしょ?そいつどこにいるんだい?」
「レオン?今買い物行かせちゃった。…ショタ、レオンに会った事無いよね?なんで会いたいの?」
「なんでもいいでしょ?ねぇ、どこ行ったの?」
「あー…そういえばどこで買い物してるんだろ。でもいっつも一時間以内で帰ってくるしトーアじゃないかな?
 …なんか用があるんだったらあたし伝言してもいいけど。」
「トーア?スーパーの事?」
「そう。…何かあるんだったらうちで待って、ていいのに走ってったよ。」
「体力、馬鹿にならない…。」
「婿、ルー君大丈夫?息切れ酷いよ。ずっと走ってきたの?」
「あぁ。…ルーター、奏音のところで待っててくれ。レオンが来たら携帯に連絡くれ。」
「いいですけど…。」
「じゃ、行くから!」

そう言い残し華凛はサクソルを追いかけていった。
後に残された二人はそれが見えなくなるまで見送った。
そして、奏音が口を開く。

「なにがあったの、あれらは。」
「…サクソル様の、因縁ってやつ、ですかね?」
「サクソル“様”。」
「え、あ。」
「…話、してくれるんなら聞くよ。してくれないんなら、話させるから。」





「待て…、待てって!」

奏音の家に行くまでに全力で走ったからかなかなかサクソルに追いつけない。
小学生くらいとはいえ彼に疲労感が無いのかペースは全く落ちない。
だから私がいくら彼より走るのが速くても、こちらには疲労感もあるし、息切れもする。
そのせいか追いつけたのはスーパーの駐車場だった。
サクソルの格好は目立つし、私は息切れをしているので周りの視線が思い切り集まる。
だが、そんな事を気にしている場合ではなかった。

「なあ、人違いって事も……、髪が黒い白人も、珍しいってくらい、少ないわけじゃ、ないだろう…。」
「人違いなら別にいいよ。でも、あいつだったらどうするんだい?取り逃がしたら?」
「……今の時間、お前の外見じゃ補導されるだろう。…一緒に、行動しよう。」
「…足手まといに、ならないでね?」

二人で手を繋ぎ、スーパーの中に入る。
全ての売り場を念入りに調べたがレオンはいなかった。
もう帰ってしまったのではと言ったがサクソルはそれを否定した。
仕方なく周辺の住宅街なども探し、通行人には見かけなかったか質問するがだれも見たという人はいなかった。

「絶対、あいつだ。こんなに探しているのに、誰も見ていないなんておかしい。」
「たまたま…かもしれないだろ?」
「なんであいつを庇うの?何、華凛はあいつの事好きになったの?!」
「いや、それは違うって!」
「でもさ、レオンのときに言い寄られたんだろう?それで君の会社の人が嫉妬してたじゃないか!」
「いや…あれは…、……。」
「ねぇ、なんでそこで喋らなくなるの?お前もあいつの味方なわけ?僕の事、どうでもいいの?
 お前もあいつを選ぶの?あいつのほうが大事なの?」
「おい…。」
「……。僕、自分の時間で探すから。お前は僕の事どうでもいいみたいだからもう帰りなよ。」
「サクソル…。」
「否定、しないんだ。僕の事、お前もどうでもいいんじゃん…。」

ただ、そう呟いてサクソルは消えた。消える前の顔は初めて見る顔だった。
サクソルの事がどうでもいい訳じゃない。
突然現れて、最初は面倒な奴だと思っていたけど今はとても大切な人、だ。
大切な人をどうでもいいなんて思う事なんて私には出来ない。
でも、それは私の一瞬の躊躇によって伝わらないどころか真逆に伝わってしまった。
それは、レオンはデストルなんかじゃなくて、普通の人かもしれないという考え。
ルーターから以前聞いたデストルの外見とレオンのそれは一致する。
でも、レオンと会ったのはルーターから話をきく前だった。それのせいかもしれないが、
彼とデストルが同一人物かもしれないなんて一度も考えた事はなかった。
…探しながら、奏音の家に行こう。
もしかしたら本当に人違いで、レオンは奏音の家にいるかもしれない。





「おかえり。…ショタは?」
「先帰るって…。」
「ふぅん。婿、あたしは何があっても味方だからね。」
「ありがとう。…ルーターは?」
「寝てる。仕事、結構無理させたしね。抗体が無い人には辛いよね…あれはさ。」
「知っててやらせたのか?」
「知らないからこそ、どんな風になるのか見たかったから。悪い事したなぁ…給料弾ませないとね。
 婿も少し休んでいきなよ。…レオンは、帰って来てない。いつもはもう帰ってるのになぁ。」
「……。」

奏音の家にあがる。
そこは、お世辞にもきれいとは言えない家だが今の私にはなぜか居心地がよかった。
部屋の隅ではルーターが寝ていて、タオルケットがかかっている。
二人、向き合って椅子に座る。
しばらく、無言が続いた。

「…折角あげてもらったけどさ、帰るよ。」
「えぇっ、もう!?」
「鍵、開けっ放しなんだ。盗られるような物無いけど、泥棒入ったら困るし。」
「そっか…。」
「ルーターは起きたら来る様に行ってくれ。」
「分かった。」
「…面倒ごとに巻き込んで、ごめん。」
「気にしないで!いっつもあたしが巻き込んでるし?」
「じゃ。」

玄関まで来て、振り返ると奏音が笑顔で手を振っていた。
私が彼女を知ってからずっと変わらない笑顔を見て、心も少し晴れる。
軽く手を振り、家までの道を走り出す。





「婿も、バカだね……。」

扉が閉まる音。聞こえなくなっていく足音。

「ショタが帰ってるんだったら、鍵の心配いらないじゃん。」

二階に上がりカーテンを開ければ、通りを曲がる華凛が見えた。
…あの顔、一生懸命の顔。
からかわれてたあたしを助けてくれた、顔。

「大事なんだね、ショタの事。なんか嫉妬しちゃうなぁ。」

おんなじ、顔。





アパートの一室。
一ヶ月くらい前と同じく、静かでなんの返事も無い部屋だった。
サクソルは戻ってきていないし、デストルも来ていない。まぁデストルは来ないか。
一息つき、気分を入れ替える為顔を洗う。
視線を感じ、その方向を見ると子供が立っていた。

「なっ…!」
「チクタニカリン?」
「鍵、閉めてたよな。どうやって入ってきた!」
「貴女…チクタニカリン?」
「…なに。」
「チクタニカリンなのね…?」

子供が手を差し出す。その手をとらずただじっと見る。
これは危険だ――警察を呼ぼう。迷惑と叱られても構わない。
こっそりと、身体の後ろで携帯を取り出す。ボタンを押そうとした瞬間、白に視界を奪われた。

Re: Strange Friends ( No.25 )
日時: 2011/12/23 14:34
名前: あづま ID:M0qpmRBk

なんでお母さん、いないの?
お仕事?そっか、なら我慢する……。


―ねぇ、名前なぁに?
華凛だけど。
―お家、どこ?遊びに行っていい?
……。
―遠いの?それとも習い事であそべないの?
家、ない。
―え?
お父さんとお母さんが忙しくていっつも家にいないからシセツにいる。
―寂しくない?
お仕事でいないだけだから。夏休みとお正月には帰ってきてくれてるし。シセツには会えない人もいるから。


他人の嗜好は他人のだろ?お前らがなんか言うことか?
―はぁ?だってよ、こいつキモいじゃん。キモいのにキモいっつって何が悪いんだよ!
―男同士でちゅーさせたりさぁ。お笑いならいいけどこれはキモい。サイテー。
―それに、ウチら思うんだけどさぁアニメ好きすぎじゃない?フィギュアも持ってるよこいつ。
―あとお前ウザイ。いっつも一人だし親なしのくせに!
親は、関係ない。私の悪口言いたいんだったら私のことだけ言えよ。あ、馬鹿だから言えないのか。
―お前、ふざけ
――ていっ!
―…っ、うわぁっ!
―ぎゃあぁぁっ!
……。

――ありがとー、初めてだよ。あたしのこれ見てもキモいって言わなかったの。
み、見せるなよ…。
――あっはは、ごめん。でもキモいって言われるのは分かってるし止めなくていいのに。華凛って優しいの?
なんで、私のこと知ってるんだ?
――ひどっ!あたし転校生、人見奏音。でももう一ヶ月前だよ?
そうだっけ…まぁ、宜しく。





「う…。」

どうやら昔の夢を見ていたようだ。…奏音は会った時から腐ってたんだな……。
喧嘩になりそうだった私達を止めるためになぜかあいつをからかっていた男子二人をキスさせたんだっけ。
それに驚いて相手は逃げて行ったんだったか。
起き上がると自分の部屋じゃないことに気づきまだ夢を見ているのかと疑ったが意識を失ったときのことを思い出す。
子供がいて、名前を呼ばれた。警察を呼ぼうとしたら、視界が白くなった。
辺りを見回すと整った広い部屋だということがわかった。
窓から外を見るとここは三階くらいの高さで、広い建物なのだろう。
となると、勝手に出歩くより誰かが来るのを待つほうがいいかもしれない。
ベッドに腰掛けるとタイミングを見計らったようにドアがノックされる。
返事をすると、そこには少年がいた。サクソルよりは大きい。小学校高学年。

「…目、覚めたのか?」
「見ての通り。…ここはどこだ。お前は。」
「ここは、デストルさんの家…?俺は…と、キズナ。」
「キズナ?キズナ君でいいのか?」
「そう!あ、デストルさん呼んでくる!そこ動かないで待ってろよ!」

ビシッという効果音がつきそうな勢いで私を指差し、それからキズナ君は走っていった。
私をここに連れ去ってきたのもデストルの部下なら、案外子供好き?
一分とたたず、再びドアがノックされ男性が入ってくる。
その姿を一瞬見て誰だかを判別した後、下を見て視界に入れないようにした。
豪華な刺繍の入ったソファに、男性が座る。

「…レオン、か。」
「そうなるね。結構楽しかったんだけどな、あそこの暮らしは。」
「お前は誰。」
「私は、レオン=フレスキ。奏音の、担当。…そんな顔しないで。本当のことを言うから。
 名前はデストルでサクソルは私の兄。あちらの世界で結果的には反乱を起こし、ここに追放されてしまった。」
「ここは?」
「簡単に言えば、魂の牢獄。ここに来た魂は転生させられないような魂なんだ。そして力を持てないように
 弱いものになっている。だからほとんどが子供だよ。」
「…なんか、喋り方が違うな。」
「そりゃ、私は見た目を変えられないし。だったらすこし弱気な感じがいいかなって。」
「なんで、サクソルを裏切った?あいつ、けっこうお前を恨んでいるように見えた。」

答えが返ってこないことに疑問を持ち、顔を上げる。
レオン…デストルの表情はなんだか困っているような表情だった。

「ルーター…って言っていたかな。あの子に聞かなかったのかな?彼、君に話したと思うよ。」
「あれは、又聞きだといっていた。本当のこと、おまえの感情を聞きたい。」
「…私の感情を。……興味だったよ。ただ、私個人の興味に多くの無関係を巻き込んでしまった。
 そこは反省しているよ。三人が消され、一人は無実でここに繋がれてしまっている。」
「興味…?興味で、反乱を起こして、何人も消されて、無実の罪でここにつながれている人も…?!」
「兄の力は修正だろう?それで、修正されるだろうと思っていたんだ。人間と同じように。でも、違った。
 私と一緒に反乱を起こした三人は兄と直属の二人によって消された。無実の一人…あなたも会ったはずだよ。」
「…キズナ君?」
「彼は違う。彼の魂は依存で他の魂を殺してしまうんだ。私が言っているのはグリーネル…君をここに連れてきた子供だよ。」
「…あの子が?」
「呼ぼうか。」

デストルは微笑み、首に下げていた装飾品の一部に息を吹きかける。
すると壁にかかっていた鏡が光り、そこから私を連れ去った子供が現れた。

「グリーネル、彼女に挨拶しなかったんだね?」
「デストル…さま、ごめんなさい…。」
「謝るのは私ではなく彼女に、だよ。それから、ちゃんと自己紹介して。」
「ぼくは、グリーネル。いきなり連れてってごめんなさい…。」
「あ、うん。私は竹谷華凛。…男の子?」
「まぁ、女の子に見えなくも無いよね。グリーネル、ここにいる?それとも、席をはずす?」
「デストルさまの…おそばに…。」

そう答えたグリーネルは、デストルの隣にちょこんと腰掛ける。
その様子を見ると、つい彼らが親子のように見えてしまいふき出してしまった。
それに、二人は驚いた顔をする。

「どこがおかしかったのかな?」
「いや…親子に見えてしまって。…なんで奏音のところに来たんだ?」
「偶然。私は他の国にも行って色々な人物になっているからね。一般市民だから兄の目にも留まらないのがほとんどだよ。
 ホームステイの話、あれは私がいろいろな国に行って働いたりして思ったことを言ったから信用してほしいな。」
「でも、戸籍もないし…どうやって働いたんだ?」
「洗脳だね。編集長さんもそうだし、君の同僚の沼川さん。彼にも一度洗脳をかけたよ。」
「え?」
「ほら、編集者であった時。君について行こうとしていたのに大人しくなっただろう?あの時だよ。」
「あぁ、あれ…。そういえばあの時何を話そうとしたんだ?」
「…君に関すること。でも、もう遅いからね。聞いても無駄だよ。」
「でも…。」
「過ぎた時間はどんなに悔いても戻せない。それに、いずれ忘れてしまう。時間がどんな感情も薄めてしまうからね。
 あぁ、悪いけどこれから見回りに行かなくてはいけないので失礼させてもらうよ。話し相手は必要かい?」
「まぁ…そうだな。色々な事聞きたいし。」
「そうか。グリーネルでいいかな。彼は私と同じ位…いや、私はたまに違うところに行っているからそれ以上だね。
 この世界にいるから質問したりしていて。なにかあれば彼が私を呼ぶから。グリーネル、よろしくね。」

Re: Strange Friends ( No.26 )
日時: 2011/12/23 14:38
名前: あづま ID:M0qpmRBk

「……。」
「あのさ、えっと…お前は無実だけどここにいるって聞いたんだ。」
「…そうだね。無実…無実……。」
「だったらさ、戻れるんじゃないか?」
「戻れるけど…戻りたくないから。ずっと…デストルさまと、いっしょがいい…。」
「好きなんだな…。」
「うん、大好き…。多分、家族みたいな感じ…。」
「そうなんだ。家族、か。」
「そう。家族は、いっしょがいいもんね…。」

家族は一緒がいい――そう言ったグリーネルの顔に初めて笑みが窺えた。
私の両親は忙しく、それにあわせて転校させるのもあれだからと私は施設で育った。
でも、夏休みの一週間と正月は絶対に帰ってきてくれてそれがとても嬉しかった。
高校に上がるときに一人暮らしをはじめてからは両親に一回も会っていない。
毎年、年賀状と誕生日にはがきが送られてくるだけになってしまった。
それが当たり前になったとき、突然の同居人が出来た。

「私も、一緒がいいと思う。家族、大事だよな。私にも血は繋がってないし、そいつらが何者か分からないけど
 大切な人たちだし、家族みたいだって思ってるのがいるよ。」
「そう。…おんなじ…なんだねぇ、ぼくとお姉さん。」
「そうだな。…これ、言いたくなかったらいいけど……なんで、反乱起こしたんだ?」
「…デストルさまは……興味。お三方は…デストルさまの言ったことに、面白そうだと思った。
 ぼくは、落とされそうになった、皆さまを助けようとして…失敗。」
「…助けようとしなきゃよかった、とか思わなかったか?」
「うぅん、思わないよ…。デストルさま、ぼくに優しく…してくれたから。ぼく、あなたの世界を見るのが好きだったの。
 でも、ぼく全然分からなくって。…デストルさま、教えてくれたの……。
 助けるの、失敗したけど…。デストルさま、怒らなかった…。ありがとう、言ってくれたの。」
「そっか。お前のこと、大切に思ってくれてるんだな。」
「それ…嬉しい……。」

グリーネルの笑顔が、窓からの光をうけて輝いた。
しかし、一瞬の後には無表情に戻り辺りを見回し、首をかしげた。
どうしたのかと様子を見ているとドアを指差した。そして、キズナ君が入ってくる。
彼に何かを呟き、窓の光に消えた。





「デストルさま…侵入者が……。」
「そうみたいだね。私の考えだと三人。」
「はい…。でも、一人は……人間。」
「彼女は冒険が好きみたいだからね。一回じゃ懲りなかったんじゃないかな?私が勧めたことだし。
 ただ、力をつけてそのままくるのは予想外だったけど。彼女は常識にとらわれないし、どっかで血が入ったんだろうな。」
「戦いますか…?」
「そうだね、ここの均衡は守らないと。でも、消しては駄目だよ、グリーネル。戦意喪失か、気を失わせるかだ。」

侵入者を迎えうつ為、二つの影は廊下を進み小さな部屋に入る。
そこには槍、刀などが並んである武器庫だった。
そこから最小限の物を取り出し、立ち去る。
外からはすでに破壊音が聞こえてきていた。それを耳にしたデストルは苦笑する。

「グリーネル、君はルーター…青年のほうと戦うんだ。彼は今執行者だから肉体を持っている。
 だからここの武器でも攻撃が通用するからね。」
「分かりました…。」
「私は兄の説得…は無理だろうね。戦うだろう。奏音は一番厄介だからキズナが華凛と合流させる。
 奏音は華凛を大切に思っているから彼女を守るほうにいってくれるだろう。」
「でも…あの人たち……華凛の家族…。飛び出してくるかも。」
「そうだね。奏音も私は裏切ったようなものだし攻撃されれば辛いなぁ。その時は、君に任せるしかないけど。
 華凛が動かなければ奏音も動かないだろうし…キズナがいてよかったよ。」
「……広間、にいる……。」
「じゃあ、君の力も最大限に使えるね。」

二人は目を合わせ、デストルは頷いた。
グリーネルは武器を構え外に一歩踏み出した途端姿が見えなくなる。
次の瞬間、広間と呼んだ方角から金属のぶつかる音が聞こえた。複数を相手にしている。

「作戦、変更のようだね。」

デストルは広間への道から華凛を置いてきた部屋へと方向を変えた。





「名前、華凛っていうんだ。」
「そう。あ、お前はさ子供の姿にされたのか?」
「ちげーよ、俺の最後の姿がこれ。女になって子供生んだこともあるんだぜ?」
「マジ?」
「あれすんげえ痛いんだよな。でも、生まれたときちょー嬉しいの。あん時は全員生き残ったんだ。」
「全員?」
「戦争してたんだよ。でも誰も死ななかった。…俺のこと、覚えてないんだろうな……。」
「もしかして私、お前に関わってた?」
「華凛は違う。俺2004年生まれだし。」
「ん?私の母親と同い年なのか。じゃ、聞けば知ってるかも。」
「無理無理。俺分かってるからさ。」

カラカラと笑うキズナ君を見て、デストルが言った意味をなんとなく理解した。
時間が感情を薄める。いずれ忘れていく。
サクソルの言っていた修正ってこういう事なのかと思っているとドアがノックされる。
返事をするとデストルが入ってきた。

「あなたは愛されているね。もう少し話をしたかったんだけどもう取り戻そうとやってきたみたいだ。
 こちらとしては何もしないであなたを返したかったんだけどね、先に攻撃されてしまって。」
「…お前が私を連れ去らなかったら……根本は反乱しなかったらこうならなかったんじゃないか?」
「私の知る限り、主は自分が知っていた歴史をその通りに動かすようにしている。…全知全能ってかんじかな。
 それは私達が生まれた世界にも同じことが言えてね。私が反乱を起こした理由はそのシナリオを教えてもらっていてね。」
「デストルさん…それ、言って…?」
「いいんだよ、私が言いたいから。私は人に試練を与え文明を授ける…そうルーターに例えられていたっけ。
 私は人と交流するのが好きでね。ただ、圧政をするようにした時レジスタンスは自分の意思で選択する、神なんていない。
 そう言っていて。それを聞いたときはおかしくて…主のシナリオどおりなのに自分の意思だなんてって。」
「……。」
「それがおかしかったからかな…ずっと心に残っていたんだ。神のシナリオなんて関係ない、レジスタンスはそう言ってたんだよ。
 それで、思いついた。シナリオを知っている私がそれに無いことをしたらどうなるんだろうって。
 あなたの世界だったらサクソルが修正してしまう。だから、主の世界を標的にした。…結果は追放だよ。」
「満足か、それ…。」
「まぁ、私なりの選択の結果だし。選択を間違って滅んでいった人たちを私はたくさん見ている。私もそれと同じだったんだろう。
 でも、間違った選択だとは思っていない。
 …こうしてる場合じゃない。キズナ、華凛を守ること。お前なら何があってもできるから。行くよ。」

デストルが私とキズナ君に持ってきていた槍を渡す。それから私の手をとり建物の中を進んでいく。
部屋から出て初めて気がついたが、金属音と叫び声が聞こえていた。
それは時代劇を思い出させ、戦いが起こっていることを悟らせる。
戦いなんてゲームや映画など現実に起こらない世代に生きてきた私は身体が冷たくなるのを感じたが、
隣を見るとキズナ君がしゃんと背筋を伸ばしているのを見て、怖がっていられないと気持ちを入れなおす。

Re: Strange Friends ( No.27 )
日時: 2011/12/25 17:04
名前: あづま ID:fw.QJ4fE

建物から外に出て進んでいくと、更に音は大きくなっていった。
今は石で出来た階段を上っていく。
階段が終わるとそこは小部屋のようになっており、戦いが見渡せた。
手や足を切られ、血ではない何かを流し倒れている様々なモノ。
子供が多いと聞いていた通り、戦っているのはどれも小さな子供。大きい子でも中学生くらいまでだ。
その中心で数人が背を向かい合わせ戦っている。
戦っている人間を目を凝らしてよく見ようとする。

「サクソル、ルーターはグリーネルと戦って…奏音?」
「ええ、来てしまったようで。」
「なんか…え?刀持って……うわ、なんかうねってるのだしてる!」
「やっぱり植物系…特に食虫系が得意みたいだね。血が薄まっているとはいえここまで出せるのは凄い。
 ま、彼女は元々創造に大きな力があるみたいだしそれが補助をしているんだと思うよ。」
「話が分からないんだけど…。」
「直接聞けばいいんじゃないかな、好奇心だろうけど。私と入れ違いにくるようにしよう。」

そう言ってデストルは戦いの中に飛び降りる。
その足が地に着いた瞬間戦っていた子どもたちは消え、サクソルと奏音に隙が生まれる。
それを見逃さなかったのかデストルが奏音を持ち上げ、投げ飛ばすと同時に突風が起こる。
その突風によって吹き飛ばされた奏音がこちらに気づいたのだろう、着地してから走ってきた。

「やっほ。なんか会う度に婿は違う子を引き連れてるね。ショタといいルー君といい。」
「私のせいじゃないから。この子はキズナ君。」
「よろしく!」
「わお、今度は日本人か。あたしは奏音、婿の嫁。」
「…同性婚?」
「違う。こいつが勝手に自称してるだけだ。ただの女友達。」
「そーなんだ、へえ。」

キズナ君は奏音の答えに納得しないのかじろじろと見ている。
その視線が居心地悪かったのかちょっと身体を揺らした後、成り行きを説明してくれた。

「婿が帰った後十分くらい後、ショタが来たのよ。だから家に着いた頃じゃない?なんかさらわれたからルーター起こせって。
 で、まあ面白そうだったし自分の身は自分で守るって条件でついて来たの。ま、あたしは怪我してないし。」
「何でいるのかに関しては好奇心だろうってデストルが説明してくれたよ。というか、植物?」
「レ・オ・ン。」
「は?」
「だっから、あたしにとってはあの子は嫁のレオンです。デストルとか知らん。レオンって呼んでよ。」
「あーはいはい。でもレオンって偽名らしいけど。」
「でもあたしが知ってるのはレオンです。で、植物君は私の娘です。」
「…ついていけない。」

だが、ここまで言ってある考えが頭をよぎる。

「…お前もサクソルたちの世界出身とか?」
「ばっちり地球生まれの女だよ!まぁ、萌体験のおかげだね。奏美と想良ちゃんも…は、無理か。
 持ってないか…取られちゃったし。あ、でも体術ならできるはずだよ。」
「…夢だ。」
「ひっどいなぁ。あ、また行こうかな。婿も行こうよ、だったら話が分かるはず。」
「面倒ごとに巻き込むなって!」
「でもさ、俺は信じるよ。違う世界に行って魔法使えるようになるんだろ?アニメでもあるじゃん。俺、行きたい。」
「あぁ、これでこそ子供の反応!あたしが求めていた若々しさ!
 いいよいいよ、いっしょに行こうね!あたし知り合いもいっぱいいるから案内できるよ!」
「え…あ、でも…。」
「どしたの?」
「あ…ほら、俺あんた達と住んでる場所違うから…。」

キズナ君の言うことはもっともだ。
彼は2004年生まれ…私の母と同い年なのでここに来なかったらもうオジサンだろう。
それに、彼はここを出ることは出来ない。
しかし、奏音はそんなことを知らないので自信満々に言い放った。

「大丈夫!日本人じゃん、どこ住んでても探し当てるって。それにあたし、一応作家だよ?
 編集あたりに連絡入れてくれればあたしに来るし連絡取るって!ね?」
「…ありがと。」
「連絡待ってるからね〜。…あら、戦いはちょっとやばいなぁ。」

奏音の言葉に、戦いを続けている方を見る。
離れすぎていてよく分からないが、皆まだ立っているという事だけは分かった。





「なんで華凛を連れ去った!」
「話をしてみたかったから。…この答えは不満そうだね、兄様。でも、真実だから。」
「よく分かってるね、デストル?愚弟が!なんで、マスターを裏切った!」
「前に一度来られたときにも話したけど…興味。たったそれだけ。一番簡単で、正しい理由だと思うけど。」
「ふざけるなぁッ!」
「真面目に話しているんだけど…私は。」

力を自在に使える小さな兄と、抑制された力の人の体を持つ弟。
弟の槍が兄の体を貫くが、一瞬衝撃でよろめいただけで体勢を立て治す。

「やっぱり、物理的な攻撃は効かないですね、兄様。」
「分かってるんならさっさと華凛を返してくれるかい?」
「すぐ返すつもりだったよ。でも、こちらの世界を兄様は攻撃した。一応、この世界の主としてはほおって置けないでしょう?」
「お前が…世界の、主?マスターと、同じ…?」
「そうなるでしょうね。」
「認めるか!お前がマスターと同じ?」
「兄様、冷静になって。この世界は私達に有利なように作られている。兄様は大きな力を持っているのは知っているよ?
 でも、感情に任せて無駄に打ちまくっていたらいつかは尽きてしまう。」
「黙れ!お前が僕に指図するな!裏切り者!!」

サクソルの叫びと共に氷の棘が現れ、デストルを貫こうとする。
しかしデストルはそれをかわし、サクソルをめがけて炎の風を送る。
それを避けようとせずデストルに飛び掛ろうとするが、膝を突き、悲鳴を上げる。
その様子をデストルは見つめる。

「なに、こ、っあぁぁああ!!!」
「痛みですよ、兄様。あなたに外側からの攻撃は効かないけれど、体の内側から蝕んでいくものは有効なんだね。
 どんなに強いものでも、病には勝てない。これと似たような原理だよ。」
「っはぁ…、へぇ、勉強熱心だね。そうやって僕らを攻撃できる方法探してマスターの世界に乗り込んでくるつもり?」
「もう復活…早いなぁ。…乗り込むつもりは無いよ。私はこの世界を気に入っているし。」
「どうだかね、裏切り者!!」






「…まだ、やるの?」
「お前…誰だか、知らないけど…。華凛さん、返してくれないと……!」
「あなた達が…攻撃……。しなかったら、…普通に、返すはずだったのに……。」
「信用、できる、と?」
「……。」

やってきた侵入者に、一撃叩き込む。血、が流れて…落ちた。
信用、されてないみたい……。
ルーター、男、執行者、体は人間、斬ると、血が出る。
槍二本は、力任せに…折られた。今は、剣で戦っている。
相手は、人間の体。治癒力は高いけど……あぁ、血は流れるのね…。力、落ちてきてる……。

「…本気、出せ!さっきから、サクソル様達の方ばっか、見てるなよ!」
「……。」

ばれてないと思ったけど、ばれてた。
戦意喪失……できるかな。分からない…ぼくには、わからない…。

Re: Strange Friends ( No.28 )
日時: 2011/12/25 17:06
名前: あづま ID:fw.QJ4fE

「うわっ…!」

グサリ。足を、斬る。膝、ついた。
……深い。力、入れすぎた…ごめんなさい……。
血が、涙が流れる…。痛い、…なみ、だ。
涙、どういう風に流れるの……?見たい、な。
傷が治らない。……力、終わった?
目の高さを合わせた…下向いてて、顔、見えない…。
髪の毛掴んで、顔、上げさせ……。

「くらえ!」
「……?…あっ。」

炎。傷を治すより、ぼくを、攻撃するのを選んだ…。
服が、焼ける……。

「、ごめんなさい…。」
「なんで…平気なんだよ。熱くないのかよ…!」
「ぼく、追放者じゃ…ない。」
「は?…なんでココいるんだよ!俺を攻撃…ッ。」

危ない…から、右肩を刺す。これで、しばらく攻撃ができない。
でも、

「目は、生きてる……。」

ぼくを、殺しそう。
……ゾクゾク、する。涙に、濡れた、生きた、目。
目が…一番、生きてるね。

「デストルさま…。」
「は?おい、まだ、俺戦えるぞ!」
「……。」
「ルーター!強がるな!お前、もう戦えないじゃないか!」
「サクソル様…俺、まだ……!」
「剣も使えないって!そんな小さい子に負けるんじゃだめじゃないか!」
「うっ……!、っ!」
「黙って…お願い……。」

向こうから、サクソルさま…の声がきこえた。…しゃべれるんだ…。
ルーター…ウルサイ……。今度は、左足。さっきと、同じ場所。
悲鳴…。でも、目は…涙に濡れただけ。…死なない。
でも、もう…動けない。デストルさま…、頑張ってるね。
ルーターの、顔を正面から、見る。
殺してやる…伝わってくるよ…ぼくを殺したがってる…でも、目は。

「怖いね…隠せてないよ。」
「怖いって…何が?」

あぁ……全然、隠れてない。涙、ずっと流れてる。

「涙…キレイだね……。」
「は、ふっふざけんな!」
「おいしそう…!」

あ、恐怖が、勝った。
なめてみる。…しょっぱい、かな。

「おいしい……怖がらないで…食べないよ…君は、キレイ。」

だから、もっと、泣いて。
涙が…見たいから。





「うわっ…!部下の教育ぐらいちゃんとやれよ!」
「…グリーネルをここまで壊したのは兄様たちだよ。それにケナベルはちゃんと教育できてるのかな?」
「お前に言われる筋合いないね!ふん、終わらせてやるよ!」

サクソルは小さな池があるほうまでデストルを誘い出す。
そこは先程まで戦っていた場所と違い地面は平らで手入れが行き届いているようにも見える。
サクソルは炎の風によるダメージしかないがルーターは体は人間。
サクソルの力や戦闘による疲労で体力が落ちているのは目に見えていた。

「どうしたんだい?疲れが見えるよ。」
「兄様と違い、体は人と変わりないのでね。…ケリ、つけようか。」

そういうが早いかデストルは右手に短刀、左手に剣を持ち一直線にサクソルへと向かう。
サクソルはその勢いを利用し、デストルの体に刀を突きつける。

「ぐぁッ…!」
「貫通…だね。自殺にも見えたけど?」
「えぇ…でも、こんな近距離からの攻撃ならば?」
「だから刀はきかな…、っ!」

デストルは右手の短刀を突き刺しサクソルの体内に自分の手を沈める。
そこから力を使い、炎を生み出す。

「ば、か…お前の手も、焼ける…!っは、あぁあ!!」
「…グリーネル!」

水のはねる音がし、グリーネルがサクソルに折れた槍を突き刺す。
その槍の色が一瞬変わった後、サクソルは悲鳴を上げる。
やがてその悲鳴も細くなり、ばたりと倒れた。

「…気絶、か。グリーネル、こんな戦いの後に悪いけどあの三人をよんでくれるかな。」
「分かった…。」
「ありがとう。」





「あ…ショタ、倒れた……。」
「サクソルが!」
「…い、痛いよ婿。…倒れ、あ。来る!」
「なにが!もールーターもやられるし…!」
「ぼくが…だよ。」
「グリーネル…!お前……。」
「あら、いろっぽ…そんな場合じゃないね!婿、あたし禿げるから!髪!!」
「奏音…てマイペースだな。」
「…デストルさまが、来てって…。」
「俺も?」
「…うん。」

グリーネルが手を差し出すがそれを無視する。
その手は、ルーターを傷つけサクソルに止めを打った手だ。
無実の罪でここにいると聞いたとき、私ははっきり言って同情した。
デストルを家族のようなものだと言って笑ったとき、共感した。
でも、もうそれは無い。
階段を降り、走ってサクソルの元へと向かう。
途中、デストルが降りた際に消えた子供が戻ってきて小刀で私を斬りつける。
それを引っこ抜きその子供に押し付けて再び走り出す。
手からヌラヌラと血が流れるがそれを気にせず走り続ける。
よく見えないその場所はとても遠かったが、疲れなんて感じなかった。
私が着いたとき、キズナ君はもうすでに着いていて奏音はルーターの元に行ったと言う。
サクソルの元へ行くとそばにデストルがいた。

「…睨まないで、とは言えないね。大丈夫だよ、気絶しているだけ。
 力を使い果たしたし、内側からの攻撃だからまぁ、三日くらいあれば目が覚めると思うよ。」
「そういうお前は…血だらけのクセに結構傷が塞がってるな?」
「体力は使ったけど力はほとんど使わなかったからかな。でも、血が流れたし…ギリギリだね。クラクラしてるよ。」
「サクソル……。」

呼びかけに全く反応しない。
生きていることの証明だろう、体が前後しているのを見て安心する。
小さい体で、頑張ったんだな……。

「手当て、してもらった方がいいかなって思うけど。どうかな?」
「……。」
「あぁ、もちろん私はしないよ。グリーネルもね。キズナはある程度手当ては出来るし、もしあれならエクリエルでも…。」
「デストルさん、エクリエルさんはこの人に落とされたんですし手当てしないと思うよ。」
「そうだったね。華凛、あなたさえよければキズナが手当てするよ。」
「…頼むよ。」
「おう!」

サクソルを抱え、キズナ君が私に手を貸す。歩き始めたら、何も考えられなかった。
風が、吹き抜けた。

Re: Strange Friends ( No.29 )
日時: 2011/12/29 15:58
名前: あづま ID:xusckUwM

吹きぬけた風、グチャリという気持ち悪い音、奏音の声。
思わず後ろを振り返るとルーターがデストルと対峙している。
先程の音はルーターの剣がデストルのわき腹を抉った音らしく、デストルの傷口から大量の血が溢れている。
その血を見て、思わずへたり込んでしまう。慌ててキズナ君にサクソルを抱かせる。

「驚いたよ…その傷で。」
「……。」
「これは、精神力だけで立っているのかな…。」
「ルーターの、目…死ななかった……。」
「そう。じゃあこれは危険な状態だ。沈んでもらおう。」

その言葉に頷き、グリーネルはルーターの腹を一発殴る。
その衝撃でルーターは血を吐き、完全に意識を失ったようで倒れ始める。
それを奏音が押さえ、彼を負ぶった事でグリーネルを潰してしまうことを避けた。
ルーターの血を浴びたグリーネルがデストルを助け起こす。
その様子を見、皆死ななかったのかという安堵が押し寄せてきた。
キズナ君に手を引かれ、来た道を戻っていく。





「これで終わり。サクソルさんの方は俺は分かんないけど。」
「三日くらいで目を覚ますって言ってたし…信じるしか、ないじゃないか。」
「そうだね。あ、奏音とルーターさんとこ行く?俺案内するよ!」
「でも、サクソル……。」
「大丈夫だって。こいつ強いんだろ?俺見てたし。それに無理矢理こっちの世界来ればデストルさんが分かるし。
 行こうぜ!」

強引に手を引かれサクソルを寝かせた部屋を後にする。
ルーターたちがいるらしい部屋はさっきまでいたところとそれほど離れていなく、物音がすれば気づけるだろうと思った。
部屋の前まで来るとキズナ君はデストルのほうに行くと言って走っていった。
ノックをすると奏音の返事。
戸を開けたら奏音がルーターに無理矢理何かを飲ませようとしていた。
私はとりあえず椅子に座る。

「おい。何飲ませてるんだ?」
「あー…薬?っていうか飲んでくれない。」
「なんで疑問系なんだ。」
「これあのちっこい子…グリちゃん?君?がくれたんだよ。力を回復させるやつだってさ。」
「…攻撃してきたやつの、敵から貰ったものを?」
「攻撃しかけたのはあたしたち。それにあたしたちは負け。だってショタとルー君は気絶。あたしは婿たちと一緒にいたし。
 敵に情けをかけられた…でいいじゃん。そもそも殺すつもりじゃなかったんでしょ。」
「何で?いやに自信あるじゃないか。」

まだルーターは意識を失っており、薬を飲ませるのは無理だったらしい。
小瓶に栓をし、ベッドの端に置く。
それからもう一つ椅子を出してきて私と向かい合って奏音は座る。

「言ったじゃん、萌体験だよ。レオンがさ、休みたいんならいい方法教えるっ奏美の学校に行くように言うんだよ。
 で、部活してた奏美と想良ちゃんと一緒に行ったわけさ。したらトリップ。なんか魔法っぽい所だよ。」
「それがどうやって殺すつもりはない、に繋がるんだ。」
「なんか戦い方を教えられたわけ。戦争ばっかだったからね。受身とかそういう基本だけしかあたしやんなかったけど。
 で、訓練受けたおかげで想良ちゃん柔道部で唯一全国行ったじゃん…柔道は体術だし、関係なかったんだね。」
「知らなかったな、お前がそんなところ行ってるって。というか非現実的じゃないか。」

私がそう言うと奏音は面白そうに笑う。
その理由をきくと奏音は当たり前だというように答えた。

「だってさ、突然不思議な子供が来てる方が非現実。それにこんな訳分からない所にいるのにいまさら?」
「…あぁ!何か、麻痺してたよ。」
「まあ、あたし達がショタやルー君みたいに違う世界に行っちゃったって事だよ。ただ自分の意思じゃないけどね。
 あたしってなんでも首突っ込むから今回のことも予想してたんでしょ。だから訓練を受けさせた…
 そうだったら、殺そうとは思ってないわけよ。自意識過剰だろうけどね。」





一直線に走って、ノックしないで扉を開けて駆け込む。
中にはデストルさんとグリーネルさんがいて突然入ってきた俺を咎める。
…血の補給かぁ。やっぱり、ギリギリだったんだな。
でも、それどころじゃない。

「デストルさん、俺おかしいよ!華凛の近くにいると欲しくなる…。」
「華凛がかい?」
「うん。欲しい…なんで?俺、華凛に会ったのはじめてだよ。でも、欲しいって思うんだ。」
「…グリーネル、ありがとう。少し休んでいいよ、体の疲労が無いとは言え精神は疲れるからね。」
「部屋に…隅に…いれば、いい?」
「部屋じゃなくっても外を散歩したり好きなことをやるんだ。でも、しばらく部屋には入らないで。」
「みんなと…お散歩、してくるね…。」
「うん。いってらっしゃい。」

軽くお辞儀をしてからグリーネルさんは出てった。
扉が閉まって話し始めようとすればデストルさんがそれを制する。
一分くらいたってからデストルさんが口を開いた。

「ごめんね、これは聞かれてはいけないことだから。」
「いや、いいけど。でも変じゃない?初めて会ったのに欲しいって思うんだよ。」
「確かに普通なら変だね。でもね、君はもう普通じゃないだろう?人間じゃない。」
「俺…人間だよ。」
「正しくは“元”人間。…一目ぼれって事でいいんじゃないか?
 欲しいっていうのは彼女の気持ちが欲しい。でも、彼女は奏音や兄…サクソルにばかり意識がいってる。」
「うん……。でも、なんかそういうんじゃ…気持ち、じゃ。」
「どんなに願っても、どんな事をしても彼女の気持ちは手に入らない。こっちに向いて欲しい、話しかけて欲しい。
 いっしょに出かけたい、遊びたい、ずっと…彼女にそばにいて欲しい。」
「でも…。」
「彼女は違う。君は人生の中で出会った一人ってだけ。友達、がせいぜいだよ。」
「違う…俺、友達……じゃやだ…!」

なぜか涙が出てくる。
ずっと、ここに来てからずっと泣いてなかったのに初めて泣いた。
友達…じゃなんで駄目なんだろ……?
デストルさまが、俺の涙を優しくぬぐう。

「彼女がこの世界じゃ無いところに行ったらもう二度と会えないよ。」
「だったら、俺…?」
「君が、涙を流せるくらい彼女への想いが強いのは分かったよ。君は彼女に惹かれた…。」
「俺、華凛が好きって事?」
「……。」
「デストルさま?」
「そうだね…好きなんだ。でも、それは君の中に留めとかなきゃいけない。もう会えないんだから。諦めなきゃ。」
「…絶対?諦めなきゃ、駄目…?」
「うん、辛いけどね。でも、想うのだけは自由だよ。」
「……。」
「辛いね、引き離されるのは。大丈夫…君は苦しみから解放されるときが来るから。」

デストルさまが、俺の頭を撫でる。
これは、眠りなさいって合図だ…デストルさまが、笑って…あぁ、眠く、なってきた…。

Re: Strange Friends ( No.30 )
日時: 2011/12/29 16:03
名前: あづま ID:xusckUwM

奏音は「レオンをちょっといじってくる!」と言って出て行ってしまった。
自分の担当が敵だった…まぁ、妥当な判断だろう。
部屋は知っているらしく一人で歌いながら行ってしまった。
サクソルの様子も見に行ったがまだ意識は回復していなかった。
そのうち、ここに来る前は医者だったという子供がやって来て私は追い出されてしまった。
どうやらその子はサクソルのところに来る前にルーターの手当てもしたらしく彼は丈夫ですね、と笑っていた。
まだ意識は戻っていないそうだがルーターの所にならいてもいいといわれたので今は彼の部屋にいる。

「…。」

体には新しい包帯が巻かれていた。
ただ規則的な息が聞こえることを考えて命に別状は無いようだ。
特にやることも無く、ルーターの髪の毛を弄り回す。…いたんでないんだな…うらやましい。
茶色を帯びた黒いクセ毛を指に絡めていると徒をノックする音が聞こえた。
適当に返事をし、その人が入ってきたのを感じ取るがただその人物は座って眺めているだけだった。
どうせ奏音だろうと思っていたのだがそれは違うようで、振り返るとデストルがいた。

「…なんの用だ。」
「冷たいね。ま、私はそれに値することをやったからね。ところでこれは飲ませなかったのかい?」
「こいつが寝てるからな。飲まそうにも飲ませられないよ。奏音が諦めてたし。」
「無理矢理にでも飲ませようとは思わなかった?ルーターが起きれば帰れるかもしれないとか。」

デストルはベッドの隅の置いてあった小瓶を振る。
私が返事をしないでいるとデストルはそれを戻し、口を開いた。

「敵から貰ったものを…て思ってるね。信用してもらえるとは思っていないけど、毒なんて入れていないから。」
「…そうか。」
「信用していないね。」
「そりゃあ…。」
「なんなら私が一回飲んで見せようか。その後君の気が済むまで私を監視したらいい。
 私は今、体は肉体だし彼と状態は同じだからね。毒が入っていれば回りも時間差はあれど効くはずだ。」
「解毒剤とか忍ばせているかもしれないじゃないか。」
「なら裸にして確かめてみるかい?」
「いや、いい……。」

デストルのほうに向き直る。
彼をはじめて知ったときはレオンで、こんな人物だとは思っていなかった。
奏音を理解し、周りを気遣ってくれるいい人。
まさか、敵だなんて思わなかった。

「なあ、どれ位で目が覚めるかってわかるか。」
「薬を飲ませれば半日くらいじゃないかな。このままだったら兄様よりもかかるかもね。」
「どうにかして飲ませるしかないか……。」
「口移し?でもすればいいんじゃないかい?」
「…なんで。」
「早く目を覚まさせたい。そのためには薬を飲まさなければならない。でも意識を失っているからそれは不可能。
 だったら無理にでもこじ開けて飲ませたらいいんじゃないかなって。」
「なんか必死じゃないか?私たちを早くここから出したいように…当たり前か、侵入者だしな。
 だったらお前がやれば?」
「構わないけど。」
「…やめろ。あぁ、奏音がいるときにやってあげればいい、喜ぶよ。…楽しませることができなかったって言ってたよな、
 そういえば。よかったじゃん、望みが叶って。」
「電車のときのか…懐かしいね。口移しが楽しいのか喜ばしいのか分からないけどそうだね、もし彼女が望めば。」
「まじでやんの。」

そこで会話が切られる。もう、話す内容が見つからない。
ただ、時間が流れる。

「あ、そういえば今って何時なんだ?」
「ここには明確な時間が無いからね。みんな起きたい時に起きて寝たい時に寝る。主の世界を参考にしたんだよ。
 でも、君達が戻るときには君を連れ去ってしまった時間より少し後に行くように努力しよう。」
「そりゃお気遣いどうも。あ、思うんだけどお前が弟なのか?見た目でいけばお前が兄なんだが。」
「元は兄様よりも外見は幼かったよ。だから大人たちは油断して心を許してくれた。おかげで仕事がしやすかったよ。
 まあ私達は外見好きに変えられるからね…。私が追放される前、自我を持ったときの姿は兄様より幼かったと言えるかな。
 反乱して落とされたときにこの外見になったんだ。」
「それは、落とされた全員がか?」

その質問にデストルは遠くを見る。
懐かしんでいる、そういう表情だと思った。

「そうだよ。ヤーネルは男性体から女性体に。クリノーは幼児になり、レノメノは翼を持った人間にされたんだ。
 この三人は消されてしまったけどね。あぁ、グリーネルは追放者じゃないし外見は変わっていないよ。」
「あれ?でもさ、レノメノ…は翼を持っただけなのか?むしろ有利になっているような…。」
「レノメノはどんな事があっても諦めない性格でね。落とされた後、その翼で出口を探した。でも全く見つからなかった。
 だから彼がここを自分達の世界にしようって言い出した。皆賛成したよ。でも主は彼の失望が見たかったんだろうね。」
「失望…なんで。」
「さあ。討伐軍に彼は幻影を見せられた。そして彼は消された。なんでそうなったか今でも分からないよ。」
「そうか…。」
「ただ、時々思うことがある。」

彼の言葉に、思わず顔を上げる。

「私達の反乱も主がそうなるように仕向けたのではないかって。私にシナリオを見せ、後に反乱を起こさせる。
 でも、そのシナリオも本当のシナリオどおりに進ませる為の物だったかもしれないだろう?」
「いくらなんでも良く捉えすぎじゃないか?」
「まあ、そうかもね。でも、もし反乱を起こしたのが想定外だったら主は時を戻すなり私の存在を消すなりできたはず。
 それをしないっていうのは疑問が残ってね。私の記憶からもあの三人は消えないし。」
「……。」
「それに。」
「なんだ?」
「私がまだ人間の歴史に関われていることが変だ。私の力は人に試練を与えること。反乱したものに力を残しておくのは
 危険なはずなのに剥奪しないし。それに疑問を持って何回かちょっかいを仕掛けてるし人の世界にも関わった。
 でも、剥奪されない。私はまだ、主に必要とされているのかもしれない。」
「あ、愉快犯ってやっぱりお前か。」
「私はそう称されてるのか。まあ、私は戻るつもりは無いし主の意思ではなく自由に自分で選択して生きていくつもりだ。
 それすらも主のシナリオかもしれないけれどね。」
「そうか…主のシナリオのうちって思ってたくせにな。」
「心変わりはするものさ。それに私は内心笑ってた人に動かされてしまったようなものだし。
 ルーターが起きたら呼んでくれるかな。一つお話があるんでね。あ、ここの食べ物でよければグリーネルが持ってくるよ。
 キズナなら君は一番いいだろうが彼は今問題を抱えていてね。」
「…貰うよ。」
「そうか、分かった。じゃ、あと二時間位したら来るから。何か食べれないものとかあるかい。」
「特にないはずだ。」
「そう。…甘いものが好きらしいね。口に合うかは分からないが持ってこさせるよ。じゃあ。」

そしてデストルは出て行く。
甘いもの…こっちの世界にもあるのか、意外だな。
ルーターに薬を飲ませようとするがやはりできなくて、頬を伝って枕にしみを作った。
けっこうこぼしてしまった、と小瓶を見れば勝手に補充されたのだろうか。いっぱいまで入っている。
そういえば奏音はデストルに会いに行ったのではなかったっけ。
でも、彼がこの部屋に来た時間を考えると話した時間はとても短そうだ。
それとも奏音は部屋を知らなかったので迷子になっているとか?
そしてそのままこの建物の探検をしている……なんだかありえそうだ。

Re: Strange Friends ( No.31 )
日時: 2011/12/29 16:08
名前: あづま ID:xusckUwM

あれから奏音は帰って来ず、グリーネルが食事を運んできた。
なんだか見たことが無いようなものばかりで、サクソルの土産のすあまっぽいのを思い出した。
……。

「あの、こう見られていると食べづらいんだが。」
「あぁ…ごめんなさい……。ぼく、あなたたちを…傷つけてばっかり……。」
「いや、謝ることじゃないが。…食べたいのか?」
「うぅん…ぼく、食べ物要らないから。」

グリーネルは私から視線をはずし、今度はルーターを見る。
二人は戦ったのでなにか問題が起きるのではと警戒してしまう。
しかしグリーネルはただじっと見つめるだけでなにも行動しない。何がしたいのだろう。
運ばれてきた食事を終え、話しかける。

「グリーネル、ルーターがどうかしたか?」
「ルーター……一生懸命だよね。…命令なら……守る為なら、なんでも、やる。」
「真面目だよ、こいつは。」
「うん…でもね、勝てないのが…あるの。」
「勝てない?」
「恐怖…!ぼくを、殺したがってた目、が恐怖…に、なった。」
「生命の危機ってやつじゃないか?」
「あの目…目……ぞくぞくする。だぁい、すき…。」

そう言ってグリーネルはルーターの頬を撫でる。
何度か撫でておもしろそうにくすくす笑った。
こちらを振り向き、私が食べ終わったことを知ったらしい。
皿を宙に浮かせ出て行った。
彼の様子になんとなく狂気を感じた。人の危機を喜んでいる…?
それとも、自分に殺意が向くことを喜んでいるのか、恐怖に飲まれたのがおかしかったのか。





食事も終わり、何もやることが無くなった。
サクソルの部屋にも言ったが例の子供がしばらく入らないで欲しいといい入れてもらえなかった。
奏音は相変わらずどこかに行っているのか帰ってこない。
ルーターは起きる様子も無く、小瓶は枕元においておいた。
デストルはもちろんキズナ君もこちらに来ないので暇な時間を過ごす。
その時扉を開ける音が聞こえそちらを向くと小さな女の子…サクソルよりも小さい――が立っていた。

「ねぇ、あんたが華凛?」
「そうだ。…お前は?何か用か?」
「エクリエル。あんたの部屋に案内しろってさ。ついて来な。」
「でも、こいつら…。」
「あんたが気にするこっちゃないよ。さぁ、案内すっから。」

私の返事を待たずエクリエルという少女はずんずん進んでいく。
どうやらこの子は自分の言ったことを曲げないような子だ。
こういう子に逆らうと後で痛い目を見る…そう思った。


しばらく進み、階段を上り突き当りの部屋で彼女が止まる。
そして扉を開け中に入る。
続いて私も中に入るが、ベッドなど見たことがあるものが少なくそれ以上進むのを躊躇する。
そんな私に気づいたのかエクリエルは大げさにため息をつく。

「ここがあんたの部屋。向かいはもう一人のお客さんがいるよ。」
「奏音のことか?」
「名前に興味は無いんでね、ただ騒々しい女だよ。連絡機の説明する。質問は後な?
 これが連絡機…離れた部屋にもボタンを押せば通じっから。怪我のおバカさんは青31。…サクソルの野郎は青13。
 ちなみにここは赤08。向かいは赤06。デストルとグリーネルは黄19。あいつらおんなじ部屋だから。」
「便利だな…。」
「関心してんじゃねーよ。まあ青13はしばらく出れないだろうから忘れていいだろうよ。
 で、ボタンを押すと…!」

そういって彼女は青31を押してから近くのクローゼットを蹴る。
するとガタガタと音がしてから勝手に扉が開き、そこから覗くとルーターの頭が見えた。
私が見たことを確認したエクリエルはクローゼットの戸を閉める。

「まぁ、こんな風に通じんだ。間違ってボタン押しちまってもこれに蹴り入れない限り動かないし。」
「どうも。…なんか、進歩してるな。」
「あんたの死後の技術だろうね。」
「そういえばお前って怪我の治療できたりするのか?デストルが名前出してたんだけど。」
「あぁ。でもサクソルはごめんだぞ。あいつは大ッ嫌いだからな。」
「そんなに…?」
「あぁそうさ。あいつのせいでこんなガキになったんだからな。不便で仕方ねえよ。」
「なんか悪かった。」
「もう用事無いな?じゃ、行くから。」

エクリエルは出ていき、部屋にまた一人なる。
連絡機以外の見慣れないものについて彼女は一切説明してくれなかったが、使わなければ問題ないだろう。
そういえばなんだかひどく疲れた。
実際に戦ったわけじゃないし、少し切られただけだが初体験の連続で疲れてしまったのだろう。
ベッドに寝転がり、しばらく考え事をしてから眠りについた。





「幼女!幼女!」
「うるさい!黙ってろよ騒々しい!」
「あぁもっと罵って!」
「だぁぁ…っ!そんなこと言ってっとな、デストルんとこ連れてかねーぞ!」
「あ、困る。ショタには会えないしルー君まだ寝てるしー。」
「じゃあ静かにしてろ。」

婿の部屋にいったら寝てた。寝顔可愛い。
なんもやること無いから放浪してたら案内してくれた幼女発見。レオンのところに案内してもらう。
なんか喋ると必ず反発してくれるのが面白いなあ。

「ここ!覚えたな?」
「んお?意外と近いのかぁ、うん。」
「それは肯定だと受け取っからな!じゃ、もう話しかけんじゃねえよ!」
「あたしが困ったときは許してねー。」

あーあ、無言で行っちゃった。…それは肯定ととるようにしよっか。
とりあえずココの人はみんなノックして入ってくるから一応ノックする。あたし優しい。
なんにも返されない。もう一度。……、いない?

「んじゃ失礼しますー!、なんだいるんじゃん。」
「奏音…あなたは……。」
「あたしは?」
「なんでもないよ。あなたに言っても無駄だろうからね。何か用事かな?」
「別に。婿は寝てるし幼女は行っちゃうし…。暇だったから。」
「私の都合はどうでもいいんだね。あなたらしい。」
「…出てけって言わないの?」
「言っても出て行く人じゃないだろう。むしろそれを言ったら倍は残られる。」
「分かってるね。約一ヶ月の同居は無駄じゃないってかぁ。探索させてねー。」

見たところ普通の部屋で、大きなのはベッドと机と連絡機と本棚があるだけ。
机の上には何も無いし、本を適当にとって見る。読めない、英語だ。
戻して他の本を見てもなんか英語。違うのは訳分からないやつ。…なんだこりゃ。

「レオンーこれなに?っつかなんの本よ。」
「それはあなたには読めない本だよ。」
「馬鹿には読めないって!?くっそ反論できない…!高校行けばよかったか。」
「そういう意味ではないんだけど…。」

本はもう無理だとして他を観察したいけど物が無い。
連絡機はボタンが多いな。
小物は見ても仕方が無いしなぁ…。仕方ないか。

「レオンー話そー。」
「何を?」
「なに…?それはあたしじゃなくってレオンが考えてよ。」
「私がかい?そうだね…奏音は私のことをどう思う。結果敵になったが裏切りだとは考えなかった?」
「別に。あたしはレオンのことイイ人だと思ってるし敵だなんて思ってないよ。
 ってかあのオドオドしたのは演技だったのね、今素でしょ?なんかそっち方面で裏切られたわぁ。」
「話し方に関しては華凛にも言われたよ。…そう思ってもらえるなら嘘でも嬉しいな。」
「わぁ、婿と同じ!…あ、もう戻るよ。なんかやってたんだよね。じゃ、まったね〜!」

レオンの返事を聞いて出てく。うん、場所も覚えた。
ショタは今日は無理だろうなぁ…ルー君もかな。…しゃーない、手入れしておこう。





「ぁ〜…寝た……。」

起きるといつも見る天井ではないことに驚き、すぐに前回もそう思った事が頭を駆け抜ける。
そうだ、拉致されてよく分からない世界に来たんだっけ。
まだ覚醒しきっていない頭で隣を見ると透明のふたがついた食事とメモが置いてあった。
しかしそれには何も書いていなくて不思議に思い手に取ると紙が暖かくなりおもわず手を離す。
今ので完全に目が覚めた。
おそるおそるその落とした紙を見ると文字が現れており、ルーターが初めて来た時と似たものだろうと理解する。
『あなたの時間では朝の九時。それを食べたら食器類はそのままデストルさまの部屋へ』
…どれだけ私は寝たんだ。



最後の一口を食べ、箸をおく。気を使ってくれているのか和食である。食べやすいからいいけど。
デストルの部屋ってどこだったか…と建物の内部を思い出そうとしていると突然扉が開く。

「おっは、婿!いっつもあたしより起きんの早いのにねー。」
「なんか疲れてたんだろうし。そういえばで…レオンの部屋ってどこだか知ってるか?」
「レオンって言ったねー偉い偉い。あたしを嫁にする権利を差し上げよう。
 あたしはレオンに呼んできてくれって言われたから来たんだよ。だからさ、行こう!」
「テンション高いな…。お前修学旅行のとき慣れない環境過ぎて物凄いテンション低かったのに…。」
「経験経験!れっつご!!」

Re: Strange Friends ( No.32 )
日時: 2011/12/29 16:11
名前: あづま ID:xusckUwM

部屋を出て一歩踏み出すとどこからともなくグリーネルが出てきた。
それに驚き思わず扉にぶつかる。その音に奏音は苦笑しグリーネルは首をかしげた。

「グリちゃんどうしたの?遅かったから迎えに来た?」
「ルーター…目が覚めたから……。彼の部屋に、変更。」
「マジで。え、それでわざわざ来てくれたの?普通に紙寄こしてくれればよかったじゃん。」
「……。」
「行こっか。」
「あ、あぁ…。お前の適応性には恐れ入るよ…。」
「よっしゃ婿に褒められたー。」

一応ルーターの部屋は分かるが二人についていく。
サクソルの部屋を見るがまだ立ち入り禁止らしく扉の前に槍を持った女の子が座っていた。
あんな小さな子供でも槍を使えるのかと疑問に思う。

「…ここの、魂たち…みんな、武器、使えるよ。」
「うわっ…びっくりした。そうなのか。」
「うん…あなたも、練習すれば……?あなた、諦めなさそう。ふ、ふふっ!!」
「おい、何笑って…。」
「はっははははは!!あは、は、あははっ!!!」

いきなり高笑いをはじめるグリーネルに引く。
彼はふらふらとした足取りでそのまま進んでいく。あ、ルーターの部屋通り過ぎた。
何度か呼びかけるが反応せず歩みを進める。

「グリちゃーん、意識飛びそうだよ。あと進みすぎー。」
「あははっ、…、?あ…ごめんなさい……。」

奏音の言葉で正気づいたのか慌ててグリーネルは扉の前にやってくる。
そして軽くノックし扉を開け、私達を中に入れる。
中ではルーターがベッドに横になっていてデストルが開いたスペースに腰掛けている。

「おはよう。ルーター、もう大丈夫なのか。」
「ええ。立って歩けますよ。戦うのも、まあ…。」
「やあ、おはよう。華凛はよく眠れたようだね、一度部屋に行ってみたけど起きなかったし。」
「え、部屋に、はぁっ?!」

寝顔見られた…!
絶対情けない顔してただろうな…うわ恥ずかしい。
そんな私の心境を知ってか知らずかデストルは笑っていた。奏音はにまにまするな。

「大丈夫だよ、何もしていないから。あとグリーネル、怒らないからこちらにおいで。」
「……絶対?」
「絶対だよ。君がそんなに感情を出すことなんてしばらくぶりじゃないか。いつも君は感情の起伏が少ないから
 心配になるしね。もっと笑ったりすればいいのに。」
「…こっち来るんですか。」

デストルの言葉に私達の後ろにいたグリーネルはいつものように彼のそばへと駆け寄った。
しかしそれによってグリーネルと戦い傷つけられたルーターが不満そうな声をあげる。

「ルーター、君は逆らえる立場じゃないんだ。地位から言えばグリーネルのほうが君より上なんだよ。
 君はただの執行隊の一員にしか過ぎないけどグリネールは彼自身にしかできないことをやっているんだから。」
「えー何?グリちゃんしかできない事って何?レオン、なにそれ。」
「奏音さん…。」
「奏音は黙っていようか。」
「ひでえ…。」
「いや当然だろ。お前が話に割り込んだんじゃないか。」
「婿の馬鹿ぁぁっ!あたしの味方だと思ってたのに、思ってたのに!!」

そう叫んで奏音は部屋を出て行く。思ってたのにって二回言ったぞ。
とりあえず扉を閉めて話の続きを促す。

「…奏音は相変わらずだね。何回逃げられそうになったことか、思い出しただけで頭が痛くなりそうだ。」
「え、お前が担当でも逃げられてたのか?」
「まあ家から外には出さなかったけど。そこは津岸さんが感心してたね。
 ルーター、君はグリーネルより身分は低いしなによりも敗者だ。ある程度はしたがってもらうよ。」
「分かりました。でもデストル様、あなたの身分を出せばそれはサクソル様と同等ですし誰も逆らえないじゃないですか。
 なぜ出さなかったんですか?」
「今、私は追放されているから君とは立場が違うからだよ。その点グリーネルは追放者ではないし。」
「そうですか…。」

そう答えるがルーターの顔は納得していないと言っていた。

「で、君達に集まってもらったのはいつもとの世界に帰るか…できればこの後すぐがいいかなって思うんだけど。」
「なんでだ?」
「できるだけ早いほうがいいんだよ。兄様が開けてくれた所からなら大体時間も同じくらいに着くし。」
「…サクソルはどうするんだ。」
「それはあなたに抱えてもらうしかないかな。私は触れないからね。ルーター、君はどう思う。」
「別に構いませんよ。俺は皆に従いますから。」
「そう。じゃあグリーネル、奏音を探して広間へ。」
「…分かった。」

一言そういってグリーネルは消えた。
デストルは私にサクソルを迎えてから広間に行くように言った。
彼の言葉に扉を開けサクソルの部屋のほうの覗くと槍を持った少女はいなくなっていた。
部屋に入るとツンとしたにおいが充満しており、治療をさっきまで行っていたことを意味していた。
ベッドの近くに行くと、そこにサクソルがいた。
実際はどうか分からないが普通に寝ているみたいである。
彼を起こさないように抱え、広間と呼ばれる場所へ歩いていった。





昨日、彼らが戦った広間と呼ばれる場所。
戦いで破壊されたものも全て直っており、そこで戦いが行われたことは全く分からないほどだった。
腕の中に確かな重みを感じつつ進めば、奏音・ルーター・デストル・グリーネルがいるのを確認した。
どうやらデストルとルーターは話しているらしい。
そこまで走っていく。

「婿!やっと来たか。」
「できるだけ急いで来たつもりなんだけどな。そんなに待ったのか?」
「いや?ここ三分くらい出し全然。」
「じゃあなんでやっと、なんだよ。」
「カップルの気分?……ごめん。うー…レオン!婿来たよ!!」
「言われるまでも無いよ。」
「なんかひどい。」
「気のせいだよ、奏音。そんな事より君達がやってきたのはこの辺りでいいんだね?」
「ええ。落ちてきたのは多少のずれはあるでしょうがここですよ。」
「そうか。」

ルーターの返答を聞きデストルは何か杖のようなものを掲げる。
彼はしばらくそのままでいたがそれを降ろすとため息をついた。何があったのだろう。
少し考えたようだが、ふと、ルーターを目に止める。

「な、なんですか…。」
「君は今執行者…それも勘違いできたんだったよね。」
「そうですけど。でもそれが何か。」
「兄様はどうやら裂け目をある程度修復した上で攻撃を仕掛けたみたいでね。はっきり言って、今のままじゃ戻れないよ。」

デストルは私達のほうを振り返る。
それは戻れないという事に私達がどのような反応を示すのかを楽しんでいるように見えた。

Re: Strange Friends ( No.33 )
日時: 2012/01/01 15:26
名前: あづま ID:iU66QbQw

どうせその内帰れるだろうとあたりまえに思っていた。
しかし帰れない、というデストルの発言に考えが遮断される。

「どうやら兄様は私があなたの世界にこの裂け目から行かないようにと考えたらしいけど…。
 余計なことをしてしまったみたいだね。」
「あー…確かになんかやってたわ。手挙げて握るみたいなやつ。」

思い出したように奏音は言う。
だが帰れないと知った今でもあいつの様子は変わらず楽観的だ。
というより事態の深刻さを理解できていないような気がする。

「奏音、お前理解できているか?もう向こうに帰れないかもしれないんだぞ。」
「うん。まあこれが初めてじゃないし。キシからも解放されるじゃん。これから好きなだけ同人でいけるよ!」
「…ここに同人ってあったか?」
「あー!!っ、無いなら作るまで!あ…自給自足じゃん…むなしい。」
「奏音さんの基準同人ってやつなんですか?」
「だろうな。」

奏音の次元での深刻な事態にことの重大さを知ったようだ。顔つきが一気に変わる。
ルーターも交えて話し合ってみるが解決方法はなかなか見つからない。
帰れないという爆弾を落としていった人物は相変わらず私達の様子を楽しんでいるようである。
そういえばこいつは愉快犯って言われてたっけか。
そして彼に従っているグリーネルは相変わらず無表情だ。

「解決策は浮かばないかな?…奏音はなんか自分の世界を作っているね。」
「悔しいけどその通りだ。」
「だってこっちまで飛ばしたのサクソル様ですし。思いつかないですよ…。」
「同人……。」
「私はね。」

デストルはルーターの方を向く。

「君を評価しているんだよ。」
「じょ、冗談はよしてくださいよ!俺なんて剣だけが取り得って…でも負けちゃったし……。」
「確かに負けたね。でも人間体だからダメージも蓄積されるし力も抑圧される中でグリーネルと渡り合ったのは素直にすごいと思う。
 それに不意打ちとはいえ私にも一撃入れたからね。」
「でも結果的に負けたじゃないですか。」
「これらを賞して君に力をあげようかなって。」
「えっ?!」
「まあただ単にグリーネルだけじゃ時空を開けるのは無理そうだからね。私はどう足掻いても人間体だから疲労もあるし。
 君に力をあげれば人間の二人は元の世界に戻れる。君は主の世界に戻れる。いい事だと思うんだけど?」

デストルの提案に顔を見合わせる。
確かに彼の案に反対する余地は無いし、私達が話し合った所でこれよりいい案が浮かぶとは思えない。
賛成の意味を込め、頷く。

「お二人は賛成のようだね。あとは君次第だよ。」
「……。」
「それに値する事はやったとは言え信用されてないなぁ。私は試練を与え文明…新たな道を授けるように言われていた。
 この世界での出来事は君達にとって試練だっただろうし、私が力を与えることで道を進めると思うんだけどな。」
「…分かりました。お願いします。」
「お願いされました。」

そうして微笑みながらデストルは一歩前に踏み出す。
そしてルーターに手を差し出し、彼もそれをとり二人は目をつぶった。

「あ、ルー君の方がレオンより背高いんだね。」
「どうでもいい。」

奏音の場違いな発言に思わずそちらを振り向いた瞬間、光があふれて目を開けていられなくなった。
しばらくたってから恐る恐る目を開ければまだ少し眩しいが周りを見れるようになった。
ルーターは膝をついていて息が荒い。それをグリーネルがさすっている。
デストルはそれを眺めていたが疲労の色が見えた。

「っはぁ…あ、戻った!!」
「そりゃあ、ね。じゃあはじめようか。時間もあんまり無いだろうしね。グリーネルが兄様の閉じた所に沿って開く。
 だからルーターはそこに入ったら維持しつつ皆を送り届けるんだ。なにを使うかは…分かるね?」
「ええ。」
「そうか。じゃあ、始めよう。グリーネル!」
「…うん。」

グリーネルが私たちから少し離れた所で両手を頭の上であわせ、それをだんだんと広げていく。
すると徐々にではあるが乳白色の空に赤い線が現れ始めた。
ルーターはグリーネルのそばに行き様子を見ている。

「あら。こっちに来た時は地面が見えたのに。これは向こうの空なわけ?」
「空…奏音の家の庭かな。そこから来たんだね。」
「おお!当たりだよん。…お別れ?」

奏音の寂しそうな声が響く。こいつ、こういう声が出るのか。小学校からの付き合いだが聞いたことがない声色だった。
それに対し、デストルは微笑む。

「分からないよ。未来を見たらつまらないからね。」
「んー…まあ、会うことが不可能だったとしてもあたしは不可能を可能にするからね!
 ちゃんと、ちゃんとそのままあたしの嫁でいること!」
「はいはい、結局嫁か。でも奏音らしいね。じゃあ、そのまま私の同居人兼仕事のパートナーでいてもらおうかな?」
「同居人止まりー?……じゃ、またね。」

奏音は笑顔でそう言い、ルーターたちの方へ歩いていく。
そしてグリーネルの力によって起こっている不思議な出来事にただはしゃいだ声を漏らしていた。
赤はだんだんと広がっており、それが夕焼けだということが誰にでも分かるくらいになった。

「もう通れるかな。華凛、二人のそばへ。」
「……。」
「今、あなたは何を言いたいのかな…。どんなに人間と触れ合っても感情までは理解できなくてね。」
「元々が違うからな…。私は人間、お前は元天使っぽいやつ。」
「天使?兄様が言ったのかな?私は天使みたいなきれいな存在ではないよ。…もう時間だ。」
「和解の可能性…ない、よな。…また。」
「機会があればね。……もう少しだけ兄を、頼みます。」

デストルに軽く体を押され、ルーターの元へ行く。
もう私達が通るくらいには十分な広さの夕焼けが見えたが道のりは遠そうだ。
サクソルをしっかりと抱え、ルーターに向かって頷く。
彼は私と奏音の肩に手をかけ、地を蹴った。すると自然と浮き上がり足の下を風が吹き抜けていく。
驚きで下を見ると真剣な顔で道を作り続けるグリーネルと軽く手を振るデストルが見えた。
瞬間、私達の周りにシャボン玉のような膜が現れ、彼らの世界は遠ざかってやがて見えなくなった。





「…これで、ぼくは終わり。…あとは、ルーター次第……。」
「お疲れ様。…でも華凛は疑問に思わなかったのかな。私はいろいろな国に行っていると言ったしそのためには
 こちらからも道を作らなければならないのに。」
「そう…いえば……。」
「言ってくれれば奏音の家の近くの道を使えたのに。でもこれも試練かな。
 彼女達には新たな道が開けてくれるよ。私がいなくなった後でも試練を与えていることに変わりは無いみたいだしね。」

両手を下ろし、グリーネルは自分の主を目に映す。
その顔からは何も読み取れなかったがただいつもの日常が帰ってきたことは理解した。

「…修正されない限り、ね。
 行こうか。キズナを起こさなければいけないしエクリエルが怒っているだろうからね。なぜ帰したって。」
「はい…いつまでも、おそば…に。」

Re: Strange Friends ( No.34 )
日時: 2012/01/01 23:39
名前: あづま ID:iU66QbQw

今、私たちの周りは真っ暗で風すらも感じない。
はじめは夕焼けが見えていたのだがそれもしばらく経つうちに消えてしまった。
進んでいるのは間違いないのだろうが風も感じずただ停滞しているようにしか思えない。
奏音は暇だからと言って眠ってしまい、今は私もサクソルを抱えルーターと座っている。

「なかなか着きませんね。多分これであってると思うんですけど。」
「向こうに行ったときはどれ位だったんだ?」
「一瞬でしたよ。まあ力の差なんでしょうね…。」
「あの…お前普通に座ってるけど問題ないんだよな?舵取りとか。」
「大丈夫ですって。」

妙に自信に満ちたルーターの言葉に私も一応安心する。
しかし本当にやることがない。ずっとサクソルを乗せている足も痺れてくるし。

「…あ、見えてきたな。もう後何分かで着きますよ。」
「え?なにも見えないけど。」
「確かに見えない…でも着きますから。奏音さん起こしてください。」
「あぁ。ほら、起きろ!」
「ぅ、っえ?仕事…?」
「起きましたね?じゃ、着くんで準備しててください!奏音さんはサクソル様を抱えて!」
「えー…あ、はい。」

言われたとおりまだ寝ぼけたままのようにしか見えない奏音にサクソルを預ける。
奏音はぼんやりとサクソルを抱きかかえる。大丈夫か、船漕いでるぞこいつ。
がっくんがっくんしている奴に気を取られていると突然周りが明るくなる。
いきなりの事に目がなれず戸惑っていると突然抱きかかえられる。
ルーターだな、と思った瞬間風が吹き抜ける。と同時に衝撃と痛み。

「っつ…!」
「あ、っ大丈夫ですか?!」
「舌噛んだ…ま、大丈夫だ。無事に着いたのか。」
「ええ。なんとかですけど。」

ルーターが微笑む。
一仕事終えて安心した、というような表情だ。私も微笑みを返す。
未だ抱えられたままなので降ろしてもらい奏音とサクソルを探すとすぐ後ろでなにかに衝突したような音がした。

「いったあぁああぁああっっ!!」
「うわっ!おい奏音どうした、…なんだその状況は。」
「いやぁ面目ないー。ちょっとカッコつけようとしたらね、足ひねって木に正面衝突しやしたさーせん。
 あ、でもショタは無事よ。あたしだって一応受身は取れますからぁー?」
「なにやってんだ。あぁ、家上がっていいよな?」
「おとまり?布団ならいっぱいあるよ?むしろ泊まっていっきなさい!」
「なんで。」
「まあいいじゃないですか。折角だし泊まりましょうよ。好意は受け取って損はないですからね。」
「んー…じゃ、よろしく。」
「うっは了解!」

奏音の返事を受け、彼女のあとに続いて私たちも家に入る。
…鍵閉めてなかったのかよ、不用心な。





「ここお部屋ねー…。仕事……してきやーす………。あー…まじキシ死ね。こんなに仕事いらねえ。」
「珍しいな、お前が自分から仕事やるだなんて。」
「んー?コミカライズの方にさっさといきたいんだもん。あのアニメ楽しいんだ……。」
「そうか。頑張れ。」
「うい。」

部屋の案内だけされ私たちは三人になった。
サクソルはベッドに寝かせてあり今私たちは床に座っている。

「あ、そういえばお前力戻ったんだろ?もう戻れるじゃないか。いいのか、戻らなくて。」
「戻ってほしいんですか?」
「戻ってほしいか、って言われたらずっといてほしいのが本音だよ。
 でも、お前は前に戻れるって言われたとき喜んでたし帰るも帰らないもお前の自由だ。」
「…デストル様に力を頂いて俺はもういつでも元の世界に帰れます。でもこちらには命令が下されない限り来れません。
 だからまだいますよ。俺はサクソル様に従っていきます。もちろん、あなたにも。」
「そっか。嬉しいよ……。」

手を差し出し、互いに握手する。それは自然な事だった。
その後しばらくルーターと話した。お互いの世界のこと、仕事のこと、大切な物のこと。
やはり彼は人間と価値観が違う。
なんだかおかしい、そう思ってしまうような発言も何度かあったがその度にお互いに笑った。
時間がただ過ぎていくがそんな事も忘れ、ただひたすらに語り合った。





どうやらいつのまにか寝てしまっていたらしい。毛布がかけられている。
時計を見れば四時半。だめだ、二度寝したら確実に昼夜が逆転してしまいそうだ。
ふとベッドを見ればサクソルの姿が見えず起きたのかと一気に私も目が覚める。
急いで部屋から出て二階に下りると奏音の部屋から明かりが漏れていて話し声も聞こえる。

「何話しているんだ。起こしてくれてよかったのに。」
「あ、婿!いや無事仕事が終わったのでお祝いにビール。ルー君は二十歳超えてるんだよ…ね?飲んでるけど。」
「多分。」
「おはよう華凛。色々手間をかけたね、ありがとう。
 でもこいつの方が僕より後に生まれたんだよ?僕が飲んじゃいけないのかい?」
「んー体が未成年だしショタは駄目じゃないかなぁ。」
「じゃあ体を大きくすればいいのかい?」
「駄目だ。お前病み上がりだろ?それに中身がまだ未成年だ。酒を飲むのは私が許さない。」
「ケチ。」
「ケチで結構。」

思いっきりサクソルは気分を害したようで頬を膨らませた。
その様子がおかしかったのか奏音は思い切りビールを噴出す。あ、カーペットにかかった。
咽返っている奏音の背中をサクソルが軽くさする。奏音はそれにお礼を言っていた。

「うぁー、死ぬかとおもったぁっ。ところでルー君、なんでダンマリなの。何、酔った?」
「奏音、こいつ力取り戻したんでしょ?だったら酔ったりなんてしないと思うんだけど。」
「おーいルーター…。駄目だ、完全に目がすわってる。って飲むのかよ!」
「…酒って中から効く、のかい?あ、でも毒は効かないし…特殊な力だけだよなぁ。」
「おい、もうやめろ!飲みすぎ!お前何本あけたんだよ。なんか服が酒臭いんだが。」
「え?なんぼ?…七ですよーぉ?」
「あー!駄目婿に絡んじゃ駄目!はいはい七本ぽっちで酔うおバカしゃんはお寝んねの時間でちゅよー。
 ゆぅっくり寝まちょうねー。」
「かおさー…ことは、へん……。」
「呂律回ってないぞ。もう寝とけ、悪い事は言わない。」

ごねているルーターに奏音はいらついたのか部屋を出て行ったかと思うとすぐに戻ってきてビンを渡す。
それを見て酒だとわかったらしく一気に飲むとそのまま倒れてしまった。
その様子を笑いながら奏音はサクソルに缶を三本渡す。甘酒のようだ…これなら大丈夫だろう。

「…力が戻ったはずだから眠らないのにねぇ。奏音、なにやったんだい?」
「これ度が結構強い奴なのよ、貰い物。割らないときついんだよね、…まぁくれた人は普通に飲んでたけど。」
「じゃあ酒強いのか。へえ、一緒に飲んでみたいな。あと飲み比べとかもか。」
「婿お酒強いもんね〜。上戸ちゃん!でもくれた人ザルだしなぁ…。」
「私は一升くらいなら酔う程度なんだがそれでも負ける感じか?」
「でもそれ日本酒でしょ。あっちはウイスキー一升くらい飲む強さよ。あたしなら死ぬ。」
「ウイスキーか…それは無理だな。でも酒蔵巡りとかしたいな…楽しいだろうし。」
「……まぁ、連絡取れたらまわすよ。」
「僕には何の話か分からないなぁ。あとこれ開けて。開けられない。」
「あーはいはい。」

サクソルから缶を受け取り開けて返す。私たちが話している間格闘していたらしいが開けられなかったらしい。
開けてあげればすぐにひったくられ飲み干す。

「甘いね。なんか苦いにおいしてたから覚悟してたけどこれはおいしいよ。」
「甘酒だもん!」

Re: Strange Friends ( No.35 )
日時: 2012/01/07 19:25
名前: あづま ID:OQcm08Vs

「本当何なのこいつ!力戻ったのに!」
「まあいいじゃないか、結構活躍したんだぞ?褒美っでことで。」
「なんか華凛ってこいつに甘くないかい?」
「気のせいだ、気のせい。」
「車で送ってっても良いんだけどね。でも酔うんなら仕方ないし頑張ってー!」

一通り飲んだ後軽く睡眠をとり奏音の家を後にする。
ルーターはまだ潰れていてサクソルが力を使って無理矢理動かしている。
平日の午前中なので人通りはないに等しく目を心配する必要はないがやはり家に帰るまでは心配だった。

「あっ。」
「なんだい?」
「鍵ない…そうだ、閉めた後にグリーネルが来たんだった。うわ奏音に連絡入れるかな。」
「なんだ、それだけ?じゃあ僕が開けるよ。」
「開けられるのか?」

サクソルの返事の変わりにガチャッという音が聞こえる。ノブを回せば扉は開いた。
サクソルを先にいれ私は後から入り鍵を閉める。
送れて部屋に入ればルーターがソファに座らされており、その横でサクソルはただ座っていた。

「テレビ見てるかと思ったのに。」
「今の時間はやってないんだよ。夕方ぐらいにまたきたい所だけどお話があるからね。」
「そうか。」

サクソルの言葉に私も腰を下ろす。

「僕の意識がない間いろいろ気にかけてくれてたんだってね…。あいつから聞いたよ。」
「連絡…とったのか。」
「僕が意識を取り戻してすぐあいつが来たんだよ。奏音は仕事やってて気づかなかったみたいだしルーターは手伝ってたし。
 意識のない間のこと話して帰ったよ。ありがとう。僕みたいな訳分からない奴のこと大切だって言ってくれたんだってね。」
「一緒に暮らしてるからな。どんな奴でも大切になっていくよ。」

大切になっていく、という私の言葉にサクソルは驚いたような顔をした。
しかしそれはすぐに消え、一瞬つらそうな顔をする。そしてまたいつもの表情に戻った。
次々と変わる彼の表情に私も驚いたが彼は気づかなかったようだ。

「僕みたいなのが、ね…。僕は君と同じ立場なら犯罪者だよ。エクリエルに会ったでしょ?
 あれは僕が殺したみたいなもんだし。」
「でも、世界は違うとはいえ生きていたじゃないか。でもお前が修正しきれないって結構危険人物なのか?」
「そうだね…根本を狂わしかけたというか宗教関連かな。でも考えてみればあいつの世界に僕はやったんだよなぁ。
 存在を消さなかった……あいつの事、どっかで信頼してるのかな……。」
「お前たち、兄弟なんだろ?だったらどんなに恨んでもどっかで信頼してるんだろう。
 デストルが反乱を起こす前は結構仲良かったんだろ?私にはそういう人がいないから羨ましいよ。」
「まだあいつ僕の事兄って言ってるのかい?いい加減やめてくれないかなぁ…せめて言うなら僕の前だけにしてほしいよ。」

そう言ってサクソルは頭を抱えた。体は小さいが、兄なんだと思わせるような様子だった。

「こういうの聞くのはあれかもしれないが…グリーネルについてはどう思う?」
「グリーネル…か。色々な世界を見るのが好きなやつだったよ。あいつにも懐いてたなぁ。
 ルーター負けちゃったけどあいつと渡り合ったんだよね。僕じゃ多分無理だっただろうな。」
「え、という事はお前よりルーターのほうが強いのか?」
「僕が力を失った場合って事。グリーネルは光があるところなら自由に移動できるから神出鬼没って感じなんだよ。
 僕が刺された時は水の反射光から出てきたみたいだし。」

サクソルの言ったグリーネルの能力に納得する。
外ならばほぼ間違いなく彼に利があるだろうし、部屋の中では鏡で移動していた。それも反射光だろう。

「でもグリーネルってあいつの事好きすぎるなぁって思ったことはあるよ。
 マスターじゃなくってあいつに忠実すぎる。何回も戻るようにいったんだけど一緒にいたいってね。」
「まあそれは仕方ないかもな。接する態度が違ってたから。」
「…じゃ、ちょっと戻ってくるよ。報告しなきゃいけないしケナベルがまたなにかやらかさない様にしなきゃ。」
「ケナベルって問題児なんだな。その点スウィノーっていうのは普通なのか?」
「問題児、は同意かな。指示を控えめに出さないとやり過ぎて支障が出るから。スウィノーは捜索だからね。
 ただ手駒に苦労して…楽しんでるか、あれは。」
「手駒?」
「暇になるとそれの気に入ってる奴を虐めてるんだよね。干渉したくないって言って駒作ってるのに虐めるときは
 下りてってるし。…今気に入ってる奴はこの時代にいるし会おうと思えば会えるかもね。」
「本当か?会ってみたい。」
「じゃ、もし気が向いたら行くようにとでも言っておくよ。」

そう言って笑顔でサクソルは消えていった。そういえばこれを見るのも久しぶりだ。
あいつが帰ってきたらどっか遊びに行こう。
ルーターが車酔いが激しいのでどっか歩いていける場所がいいか…と計画を立てる。





あれから幾日か。遅い夏休みも終わってしまい、また日常に戻った。
計画こそ立てていたものの遊びに行くこともできず、休日に歩いてデパートに行く程度だ。
ただ、奏音が仕事を放り出して二人とどこかに遊びに行ったりはしているらしく何度か津岸さんから連絡もきたりしている。
その度に電話越しでお詫びと奏音が行きそうな場所を挙げるのが常となった。
ただ留学してきている外国人を案内している、という事で大目に見ているらしいが。本当にごめんなさい…。

「竹谷ー…また電話ぁ?何、彼氏でもできた…のか?」
「まさか。今回は津岸さん。また奏音が脱走したんだろうな。じゃ、失礼。」
「ふーん。ま、頑張れ。」

廊下に出てから電話に出る。案の定奏音が脱走したらしくまたお詫びを入れる。
そして彼女が行きそうな場所を挙げていき、電話を切った。
そしてまた仕事に取り掛かる。
数時間後、奏音を見つけたというメールが入っていた。どうやら三人であのケーキ屋に行っていたらしい。
諦めて編集社に帰ろうとしたところで発見したとか。お土産持っていましたよ、という補足もついていた。
サクソルが歩いていったことに驚いた。ルーターは力が戻った後でも車がトラウマになり乗ろうとしないし当たり前か。
彼らの土産を楽しみにしながら今日のノルマを終わらせるべく意識を仕事に持っていった。

Re: Strange Friends ( No.36 )
日時: 2012/01/07 19:27
名前: あづま ID:OQcm08Vs

仕事を終え、家に帰れたのは九時ちょっと過ぎ。
玄関の鍵が開いているのが当たり前になっていると鞄の中に入っているそれを取り出しかけて思った。
部屋に入るとあの二人のほかに見知らぬ人物が座り何かを食べている。

「あ、お帰り。」
「お?コイツが家主サン?俺ケナベル、もう会わなイだろーけどヨロシク。」
「よろしく。なんか片言だな。それより何食ってるんだ。」
「シマウマ。コッチくる前に狩って来たンだ。うめーよ、食いタイ?内臓は俺の好物ダからアゲナイけど。」
「いや…。」
「おかげでこの部屋血だらけになったんですよ。掃除大変だった…。」

ルーターの言葉にこの部屋の惨状を想像する。
生命の特集みたいな番組でのライオンの狩りを思い出しそれを重ね合わせる。
…見られたら警察呼ばれる。

「だぁっテおめー普通に掃除してやじゃん。」
「あいかわらずだね。もう人間として暮らせばよかったんじゃない?」
「えー…。」
「ナマイキな口だナァ。よし、骨をヤろう。」

ケナベルが自分の脇に積み重ねていた骨をルーターの口に無理矢理入れる。
しかしそれは曲線を描いていて頬から突き抜けてしまった。思わず目をそらす。
だがルーターは痛みの声も上げずそれを口から引き抜いた。顔を見れば傷すら残っていない。
彼は引き抜いたそれを山のほうに投げる。カランという軽い音がした。

「うん、ゴー格!」
「はい?」
「お前もう力戻っタンだ。食いたカったんダけド残念。帰還命令ダヨ、お別れドウゾ。」
「そ、そんないきなりじゃないですか!」
「なんかコンランが起きてルンだよ、俺の責任ジャないシ。で、はいドーぞ。」

突然の宣言にルーターと顔を見合わせる。いきなりの事にお互いに戸惑いを隠せない。
サクソルといえば我関せずでありアニメを見ている。今日映画になったのをやってるのか。

「もうちょっと…いたかったんですけどね。」
「仕方ないって、仕事なんだろ?」
「でもいたいですよ。初仕事で初めて関わった人間があなたですし、色々な事を教えてくれたんですよ。」
「私も同じだよ。まだ一緒に暮らしたい。…でも、いつか別れがくることくらい…分かってたからさ……。」
「許可、取れたら…それか自由に世界を行き来できるくらい昇進したらまた、来て良いですか?」
「もちろん。…待ってるよ、いつまでも。」
「ありがとうございます。…またお会いしましょう。」

そう言ってルーターは立ち上がる。
それを見たケナベルも肉を口に詰め込み飲み込んでから彼に並び立つ。

「なんか、アッサリしてないか?」
「だってまた会えるんですから。…会いにきますからね。」
「ソウかぁ。じゃ、会える事をイノればいいんじゃねえかな。ジャネ!」

ケナベルは手を上げ、そして不思議な渦が二人を取り巻き消えた。
あまりにもあっさりとした別れに自分でも驚いた。
ただルーターは嘘をついたことがないし、どんなに時間がかかってもあえるだろうという確信がどこかにあったからだろう。
ちょうどコマーシャルになったらしくサクソルがこちらに顔を向ける。

「君の事だから泣くんじゃないかと思ってたんだけどね。」
「また会えるからな。」
「また、ねぇ…。でもあいつ頭悪いし君が死んでから会いに行くって事になるかもよ?」
「構わないさ。会えることには変わりないし。」
「また二人になっちゃったねえ。」
「いいんじゃないか?これからもよろしく。」
「うん。あ、始まった。」

コマーシャルが終わったらしく再びサクソルはテレビに視線を向けた。
私は少し遅い夕食を作りサクソルと一緒にアニメ映画を見ながら食べた。
その後二人で土産といわれたケーキを食べ、私は布団に、サクソルは時間軸に入ってった。





朝目を覚ましてから軽くシャワーを浴び準備をする。
今日は朝コンビニで買おうと冷蔵庫を見て思い、スーパーで何を買うのかも考える。
着替えも終わり後は出かけるだけとなった時サクソルが目の前に現れた。

「おはよう、朝だねぇ。」
「ああ。どうした?いつもならアニメ見てるのに。」
「今日は再放送。でも一応こっちに来てみたんだ。寂しがってるんじゃないかなって思ってね?」
「それ程でもないよ。」
「うっわ報われないなぁ。ルーターあっちで結構落ち込んでたのに。」
「だってまた会えるじゃないか。約束したんだし。」
「そう。会社遅刻するよ、行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」

電車を待っている間に、奏音にルーターが帰ったことをメールで伝える。
すぐに返信が来てそれはとても残念がると同時に彼が帰れたことに対しての祝福だった。
あの一件以降レオンの姿は見ていないらしいが、たまに部屋がきれいになっているということも教えてくれた。
それから推測するとどうやらたまに来ているらしい。
別にあたしは気にしないんだけどねーという彼女らしい言葉でそのメールは締めくくられていた。

「相変わらずだな。」

誰に、という訳ではないが声に出してしゃべってみる。
今日も会社に行って、仕事終わらして帰ってサクソルと話して。
あいつが望めばいっしょにスーパー行ってもいいな。なんか買ってやろう。そういえばカード集めてたな。
スーパーやデパートに行く度サクソルが気に入っているアニメのカードを買っているのを思い出す。
しかも近所の子供と交換までするようになったとか言っていた。
やっぱり子供だなぁ、と思いながら会社への道を歩いていった。





「ねえ兄様、そろそろ潮時じゃないかな?」
「お前……よく出てこれるね。あんだけ騒ぎ起こしたくせに。」

白一色の世界。二人だけがそこに存在していた。黒い髪の青年と赤毛の少年。
青年は少年を兄と呼び、少年はそれに一瞬眉を顰めるがそれもすぐに消え言葉を紡ぐ。

「騒ぎって…兄様が攻撃をしなければ華凛はすぐに返すつもりだったんだよ。」
「僕が知らないと思ってる?」

少年は声を張り上げる。それは世界の隅々まで届くようなよく通る声だった。
その声に青年は目を閉じてなにも喋ろうとしない。
その無言が答えだと受け取ったのか少年は言葉を続けた。

「奏音の事だよ。彼女だけじゃなくって妹とその友人も巻き込んだよね。今あっちでは大きな戦争が起こっている。
 それに君の部下。行かせたでしょ、過去に。」
「たしかに奏音をけしかけたのは私だ。でも兄様は私が起こしたことは全て無にできる力を持っているじゃないか。
 あの世界は元々存在するはずがない世界…私達の同族が生んだといっても過言じゃない。」
「否定はしない。でももう存在しているし密接に関わりあっているんだ。お前のせいだ、デストル。」
「そうかな…。悲しいな、兄様の為を思いやった事なのに。私はいつも空回りか…変われない。」
「この世界に持ち込まれた小さなもので大きく歴史が変わるかもしれないんだ。」
「だったら、なおさら修正すればいいじゃないか。」

青年は少年から離れ何かを切るような動作をする。
するとそれに沿って色が溢れ、それは夜のネオン街だということが分かった。

「全て、ね。」

一言そう言い残し青年はネオンへと消える。
残された少年はしばらくそのままでいたがやがて輪郭が消え、あたりはただ白一色となった。

Re: Strange Friends ( No.37 )
日時: 2012/01/19 07:03
名前: あづま ID:CQ5RuU2c

ルーターが元の世界に帰った次の日の朝からサクソルの姿を見ていない。
もう十月。最初はまたどこかで大きな災害が起こってしまったのだろうと考えた。
でもそれにしては時間がかかりすぎてないだろうか。
サクソルは時間を自由に移動できるようだし、一週間程度ならばどうってことはないのだが。
遅すぎる。
だが相談しようにも奏音は今修羅場らしく携帯の電源すら入れていない。
まあ二人と遊びに行ったりしていたし仕方ないかもしれない。

「竹谷、またミスあるってよ。なんか疲れてるんじゃないか?」
「マジか。っわー、ノルマ終わるかな…?」

沼川が後ろから声をかけ私に書類を渡す。
付箋を見るとなるほど、数値がずれているから計算をしなおさなければならない。
まだ残っている仕事の量とこれを考えるとこれは残業確定だ。もしかしたら泊まらなければならないかもしれない。
思わず頭を抱える。

「っていうかこんなにミスすんの初めてじゃないか?少しくらい手伝うけど。」
「いいのか?ありがとう。でもお前これ分かるか…営業じゃん。」
「営業が得意ってだけでこういうのもできるの!」

むきになったらしく先程渡された書類をなかば強奪され呆気に取られる。
そしてパソコンに向かう彼を見て心配要らなさそうだと私も仕事を続ける。
なんか帰りにお礼でもしなければなあと思いながら作業に没頭する。





「終わった終わったぁ!」
「ゴメン…お前定時で帰れただろうにこんな時間まで……。」
「いやいやまだ九時じゃん?」
「そうだけど…。」

結局沼川は私の仕事を最後まで手伝ってくれ、ノルマどころか全てが終わってしまった。
なにか奢ろうかといったが断られてしまった。そういえばこいつ金持ちの家だった。

「あぁ、ちょっと相談?があるんだけどさぁ。」
「何?オレにできる事ならやるよ。」

人も少なくなったオフィス。今は私たちを含め十人もいない。
しかも彼らは私たちから離れたところに座っているので聞かれる心配はないだろうと思い話を続ける。

「いや、サクソルの事なんだけどね?」
「…へ?」
「サクソル。ほら、ホームステイの。」
「え、お前いつの間にホームステイはじめてたの?やりたいっていうのは聞いた気がするけど。」

沼川の言葉に頭が白くなる。彼の口調はまるでサクソルを知らないみたいだ。
そんなはずはない。彼は何度か会っているし。
…洗脳が影響しているのか?

「ほら、奏音の所属してる所に行った後のケーキ屋で会ったちっちゃい子。」
「あ、奏音さんと会ったところだよな。お前にいきなり抱きついたんだよな。」
「そうそう!そん時にいたじゃん。」
「誰が?」
「サクソルが。…え、え?」
「確かに行ったけど奏音さん以外に会ってないと思うぞ。」
「はぁ?」

思わず大きな声をだしてしまいオフィスに残っていた人がこちらを向く。
突然視線が集まったので一瞬たじろぐがかまわず話を続けようとするが言葉が出てこない。
その時、子供を寝かしつけたのかもう一度夕鶴さんがやって来た。

「みんなただいまぁ。あれ、華凛ちゃんどうしたの?」
「あ、夕鶴さん…。あの、えっと……。」
「なんか、サクソル?っていう子供にオレ会った事があるらしいんですけど記憶が全くないんですよ。」
「会った事あるって!小学校の三年位で赤毛の外国人。お前日本語ペラペラな事に疑問…あ、いや…。」
「一寿君本当に覚えていないの?」
「なんか記憶の食い違いがあるみたいで。営業の後寄ったケーキ屋で会ったって言われてるんですけどそこでは
 奏音さん意外に会った覚えがなくて。ケーキ買って普通に帰ってきたはずなんですけど。」
「いやあの時は買ってくれなかったじゃないか!サクソルがお前はレオンに嫉妬してる、お前は私の事好きなんだろうって言ったら
 お前すぐ出てっちゃった…!」

私の言葉に沼川はカァッと顔が見る間に赤くなったがそれでも冷静にしようとしていた。
だが、でた声は震えていた。

「レオンって誰?お前、疲れてるんじゃない…?」
「奏音の臨時の担当。一緒に奏音に送ってもらおうってなったじゃん。確か飲み会入ったらしくて一緒じゃなかったけど。
 え…、いたよな…。サクソルも…ルーターも…みんな、いたよ、ね?」
「華凛ちゃん?」

夕鶴さんの声にそちらを振り向く。
彼女の声はとても優しく母親の声とはこのような物だと思った。
気遣い、諭してくれる。そして心から安らげるような…そんな声だった。

「華凛ちゃん。私はあなたの言っているサクソル君やルーター君に会ったことは無い。」
「知ってます…あいつらが勝手に出歩いていない限り…会っていません。」
「あなたが言うケーキ屋に行って一寿君がその子達に会ったのは八月のことよね。」
「ええ…お盆より前。」
「私が覚えている限りじゃね、その時一寿君とあなたはケーキを買ってきてくれているわ。あなたのお勧めのお店…って言ってた。」
「それ…それは…。」

違う。必死に思い出そうとして涙が出てくる。
突然の涙に二人どころかオフィスにいた人全員が驚いたようだ。
そう…確かに沼川はケーキを買ってきたことがある。でも、確かそれはサクソルが洗脳をする前…。

「それ…って沼川がT社だったかな、そこから契約とって来たときのですよ。
 夕鶴さん、確か帰っちゃった…その時、子供さんが帰ってくるからって…帰った……とき。」
「竹谷…?」

今まで傍観をしていた人たちのほうから声が上がる。
見ればそれは私の三つ上の先輩だった。

「あのさ、T社からの契約を沼川が取ってきたときも買ってきてたぞ。
 それに夕鶴先輩のいる時…編集の方に行ったときにもお前達買ってきてたはずだ。期間限定食った覚えあるし。」
「先輩…嘘言わないでくださいよ。私真剣に悩んでるんですよ?なんで冗談言うんですか?」
「竹谷…!おい、落ち着け!」
「沼川は黙って!そんな…嘘じゃない……。いた、いたんだよ。サクソルも、ルーターも、…も、いた…。
 いたのに、いた。生活してたのに!一緒だった…一緒に、生活で、それでっ!」
「華凛ちゃん落ち着いて、座りましょう?」
「そうだ…奏音、奏音に聞いて下さいよ。あいつの所にはレオンっていうデストルがいて、一緒に暮らしてて。
 でもレオンは裏切ってサクソルの弟で担当で!」
「分かったわ。じゃあ、奏音さんに連絡入れてみましょう?携帯借りるわ。」

夕鶴さんが私の鞄から携帯を出す。そして奏音に電話をかけているらしい。
電源は入れていたらしく数コールほどの時間だろう、その後すぐに話し始めた。

「そう…なんか家族?ホームステイがいるらしくて…。……あら、来てくれるの?ありがとう。待ってるわ。」
「なんですか、その喋り方……!」
「え?華凛ちゃん…?」
「サクソルもルーターも存在して無いみたいに!私が、私嘘ついてるみたいな言い方ぁっ!」
「竹谷、一回落ち着こう?奏音さん来るんだろう、そこでしっかり話そう。な?」
「私が…信用、私信用できない?信用、しん、し、よ…。」
「そんなつもりじゃ…泣くなよ……。」

どんなに冷静になろうとしても涙が後から後から流れ出てくる。
いろいろな感情が混ざり合って溢れ出て、制御できていないようなかんじで。
分からない。わからない。

Re: Strange Friends ( No.38 )
日時: 2012/01/19 07:04
名前: あづま ID:CQ5RuU2c

「こんばんは…えっと、人見奏音です…。」
「奏音さんお久しぶりです。」
「あ、沼川君。そしてそっちの女の人が電話くれた方?」
「はじめまして、鏑夕鶴っていうの。ごめんなさいね、こんな時間に。」
「いーえ、仕事放り出せたんで。…婿っとこれは良くないな。華凛、大丈夫?」

入り口で挨拶をしていた奏音がこちらにやってくる。
こんな年になって思いっきり泣いてしまったので来て欲しくもない気がするがそんな事言っていられない。

「なあ…サクソルとルーター、いたよな。」
「……。」
「返事、してよ。いたじゃん。お前、サクソルのことはショタって言って気に入ってたじゃん。ゲーム機もあげてたし。
 それにルーターはルー君って呼んでアシスタントにしてた…よ。」
「ごめん…。ゲーム機はコスプレみたいに華凛に預けたし。渋々だったじゃん、あたし覚えてるよ。
 それにアシスタントは今いないよ。コミカライズはネームだけで後は他の人だから必要ないんだ…。」
「そんな…!」
「ごめんね。ごめん、でも、ダメなんだ…!」
「じゃあレオンは?ほら、津岸さん倒れて臨時で入った……。」
「…いなかったよ。レオンって…誰?」
「嘘、嘘うそ、うそ!」

レオンのこと、大切そうだった。デストルって呼んだらそれを奏音は嫌がった。

「あ、うそ。うそ、だ、うそ。」
「夕鶴さん、今日オレもう帰ります。竹谷送って行きます。」
「あ、車で来たから…送っていっても。」
「じゃ、オレも付き添うよ。一応ね。」
「うそ、いた。ルーター、サクソル、い、た。」
「華凛ちゃん家に私が泊まるわ。明日旦那休みだから大丈夫よ。」
「そうですか。ではいっしょに。」

誰かが私を支えて歩き出す。
そんな事されなくても、歩けるのに。
はなして、なんていう気力がもう、ない。





「ちょっと休もう。一眠りしてさ、落ち着いてからね。」
「奏音、嘘。だよね。いたもんね、いたよね?」
「お休み。一回、休もう。」

この部屋の主を寝かしつけるが三人は部屋の異常さに目を疑う。
子供用の服。明らかに華凛には大きすぎる男物の服。男児用・成人男性用の下着。
それも一着ではなく複数あるし、靴もこれらにあうであろう大きさのものが玄関に並べてあった。

「これ…オレよりも大きい人ですね。百八十ない位…でも確実に百七十五はある。」
「はぁ…。同じくらい…かなぁ。」
「何が?」
「いや…なんとなく。」
「これ、ひらがなとカタカナのドリルよ。しかも全部やってある。」

華凛の部屋へと上がった三人は各々見つけた品を手にとっては驚く。
この部屋にないであろうもの…少なくとも華凛が使うとは思えない物ばかりが部屋にきちんと整頓されている。
食器の類も一人暮らしとは思えないくらいの量がある。
布団も二組敷いてあり、誰かがいるであろう様子を出している。
夕鶴が手に取ったドリルを覗き込むと奏音が小さく悲鳴を上げる。

「どうしたの…。」
「っこれ、婿の…華凛の字です。全部…」
「でも奏音さん、これ文章が稚拙じゃないか。竹谷はもう成人してるぞ。小学生が書いた文みたいだ。」
「字は…ほら、このノートっと同じ。」
「本当ね…。」
「待てよ!なんだよこのノート!」
「日記…?え、なに…これ……これ…。」

ノートに書かれた文章を沼川が読み上げる。
それはこの部屋の主の日記のようだが、書かれている内容は驚くべきものだった。
表紙にNo.3と書かれたそれは、最初のほうは普通の日常を記してある。
だがある日突然少年が現れ自分は天使だと名乗る。彼は不思議な能力を持っていてそれが証明となった。
言い訳はホームステイだという事にする。
ノートは半分ほど埋まっており、その内容は全て彼女が会社で言ったものと一致していた。
三人は顔を見合わせる。

「ねえ、華凛ちゃんのご両親って……。」
「親は忙しくってあちこち飛び回ってるんです。だから華凛は施設育ちで…。」
「そうか…オレ知らなかった。」
「言いたがらないからね。…溜め込んでたのかな。」
「一寿君、明日私は彼女を病院に連れて行きます。だから明日は私も華凛ちゃんもお休みって伝えてくれないかしら。」
「分かりました。…じゃあ、帰りますんで。その、失礼します。」

静かに沼川は出て行く。後には女性二人が残った。

「多分、彼女は寂しかったんでしょうね。それで架空の家族を作った。」
「そう思います。…ずっと、いっしょだったつもりだったんだけどなぁ。あたし、駄目だなあ。」
「そんな事ないわよ。この“日記”にあなたは登場している。きっとあなたが必要だからだわ。」
「そうだと嬉しいな。とりあえず、あたしも帰ります。こっから二十分あれば着くんで何かあったら連絡ください。」
「分かったわ、おやすみなさい。」
「はい。よろしくお願いします。」

夕鶴に軽く会釈してから奏音は足早に部屋を出る。間もなく、車が走り出す音が聞こえた。
カーテンを開け夕鶴はライトが遠ざかっていくのを見送った。そして彼女は後ろめたさを感じつつも部屋の中を調べていった。
母としての勘。自分の子どもが何かを隠したりしたときに見破るそれを駆使し、一つ一つ確認していく。





夕鶴は華凛の部屋の中の物を粗方調べ終わった。終えて考えてみるとやはりあの日記が一番のようだ。
他人の日記を見ると言うのは気が引ける物だが覚悟を決め読み始める。
少年がやって来た、という日付まではいたって普通の事――夕鶴自身の記憶とも合っている。
だがその日を境に華凛とその他の人々との記憶が食い違っているようだ。
彼女の言葉と日記からは矛盾が見られなく、それはある一種の狂気を感じさせた。
その少年が現れる前の日の物も読んでみるが平凡な日常を記しただけの物である。
だからもう一度、今度は一つ一つの単語に気をつけながらその日からの日記を読み進めていく。
謎の少年が現れた日からの日記の文体が明るい。
余程同居人ができたという事が嬉しかったのだろうと感じさせられた。ふと、ある文に目がとまる。

《サクソルの能力は修正らしい。もし私とのことを修正したら時間はかかるが私も忘れるようだ。
 他の人はすぐに忘れるみたいだが。でもできれば忘れたくない。サクソルだけ覚えているのはなんか悲しい。
 ただ本人にその自覚がない。いつか忘れさせられるんだろうか。》

この日の日記はこの文でで締めくくられていた。

Re: Strange Friends ( No.39 )
日時: 2012/01/19 07:06
名前: あづま ID:CQ5RuU2c

「婿、あたし今度ドラマの脚本やることになったわ。」
「本当か?じゃあサボれないな。」
「ほんとだよー。あたし二次創作だからこそ気合入れてできてたのにさぁ。」
「仕事癖つけてほしいんじゃないか?」
「うぇっ!…あー、キシからメール来ちゃった。じゃ、また来るね!」
「分かった。じゃあな。」

奏音が笑って部屋から出て行く。
あれから私は休職している。もう復帰してもいいと思っているがそれは夕鶴さんが許してくれなかった。
せめて四月からにしなさい、そう強い口調で言われてしまってはどうしようもなかった。
お金は高校からバイトをして貯めていた物を使っていたが入院などでそろそろ厳しくなってきた。
残高を眺めながらどうやりくりするかと考えているとインターホンがなる。

「あぁ。今日病院か…もういいのに。それにお前にも迷惑だろ?」
「いーよ、オレは別に。お前が大事だからね。先輩として後輩の面倒はちゃんと見ないと。」
「だから私たちは同期じゃないか。それに一人でも行けるってば。」
「でもそうしたらオレ夕鶴さんに殺されちゃうもん。」

そして沼川は笑いながら外で待っていると言って扉を閉めた。
今日は温かいとはいえまだ三月。急いで着替えを済ませ沼川の元へと行く。
そして電車に乗り病院へと向かう。

私はイマジナリーフレンドという者を持っているのではないかといわれた。
社会人になり、知り合いもほとんどいない。一人暮らしだから話をできる人もほとんどいない。
そして仕事に対してプレッシャーがかかり重度のストレスから捌け口として彼らを作ったのではないかと。
彼らが消えてしまった理由は分からないがおそらく心のどこかでこのままではいけないという気持ちがあったのではないか。
そして医者はもっと周りの人とかかわりを持って頼ればいいと言った。
事実、あれから周りの人たちにも相談をするようになったし奏音は仕事がないときは来てくれる様にもなった。
そしてそれらが当たり前になってくるともしかしたらサクソルたちは存在していなかったと思うことがある。
確かに周りの人たちには彼らの記憶はない。だが、私には記憶がまだあるし服や日用品など彼らがいた事の
証明となるものはこの家に沢山あるのだ。
だから私はこの記憶が消えてしまわない限り彼らとまた会える日々をずっと信じ続けたい。





病院からの帰り道。
もう混乱は無くなってきているがまだ注意はしたほうがいいだろうとのことだ。
入院時よく話をしていた女の人と久しぶりに会って近況を報告した。
彼女曰くもう大丈夫だろうからゆっくり日常に戻るべきだと言う。
それに彼女はサクソル達の存在を認めてくれた人なのでどうしても話しやすかった。
数十分ほど話し、仕事があると言うので別れた。
今は沼川と二人駅までの道を歩く。

「みんないたんだけどなー…。」
「まだ言ってるのかー?」
「なんでそう否定するかな。いいじゃないか、私にとっては代えの効かない大切な人達だぞ。」
「それは分かってるよ。オレがお前に会いに行っても毎回そのサクソルとルーターの話じゃん。」
「それくらい大切なんだ。っていうかこれ多分お前だから話せてるんだと思うし。」
「……。」
「沼川?」

急に黙り込んだ沼川に疑問を持ち顔を見る。
なにかまずいことを言ってしまったかと顔色を窺うが彼の表情からは何も読み取れなかった。
気まずい空気が流れたがやがて沼川が歩き出したので私もそれを追う。

「四月になったら復帰しようと思うんだけどさ、それでいいかな?」
「んー、オレは竹谷が復帰したいと思うんなら別にいいと思うんだけど。」
「そうか?でもできれば新入社員が来る前がいいな。一応私が先輩なんだし。」
「まあ戻って来たいときに来ればいいよ。お前がいないと仕事多いってぼやいてたしね。」
「そっか、じゃあ調整していく。…駅着いたな。送ってくれてありがとう。」
「おう。ゆっくりしろよ。」

駅前で沼川と別れ、ちょうど電車が来たところなので乗る。
夕方らしく、学校帰りの高校生やこれから仕事に行くだろう人達が乗っている。
開いている場所を見つけそこに座って考える。
私は会社に戻って上手く働けるんだろうか。沼川が雰囲気は変わりないといっていたが精神的にまいって入院していた私だ。
サクソル達のことは現実にあった事だと確信しているし、そうなるといろいろ問題が起こりそうだ。
色々と気を使われかえってい辛くなってしまうかもしれない。不安が胸をよぎる。
こういうのは良くない…頭では分かっているがどうしようもなかった。
会社に戻ったら起こってしまいそうな不吉な出来事が次々に浮かんでいった。
ちょうど私が降りる駅のアナウンスがされ思考を中断させられることができた。
駅を出てから家まで歩くと何か考えてしまいそうなので走って帰る。
日も暮れ始め少し肌寒いと感じたが、それでも顔に当たる風は心地よかった。





家に帰ってから適当にダンボールを取り出し彼らの物をしまっていく。
はじめは捨てるつもりでゴミ袋を持ってきたが、やはり未練というかそれに入れる事はできなかった。
なぜならルーターはいつかまた会おうと言っていた。
彼らは自分の姿は変えようと思わない限りそれ固定のようなのでこの服たちもまた使えるかもしれない。
それに、一度好きになった物は長い年月の間に薄れていってもなかなか嫌いにならない。
サクソルが好きだったアニメのグッズもダンボールに詰め込む。

「終わった。……少ないな…。」

小さいと思っていた段ボール箱一箱に彼らの物が全て入ってしまった。
一ヶ月くらいしかいなかったとはいえあまりの少なさにこちらが驚いてしまう。
もっとあると思っていたのに。
それから押入れを開けて物を全てだし、一番奥にそれを入れてしまう。
こうすればよっぽどのことがない限りこの箱は出すことができない。
それにこんなに奥にしまったのだ。出そうと思っても途中で嫌になってしまうだろう。
押入れから出した全ての物も元通りに整頓し、閉める。

「さて、ファイルでも送ってもらおうかな。」

彼らのことはもう思い出すことはあってもそれに依存することはない。
自分にそう誓い、会社に送ってもらえるかどうかメールを出してみる。
だが漏洩問題などで無理だろうというのはわかっているのでこれからを考えることにした。

Re: Strange Friends ( No.40 )
日時: 2012/01/19 07:08
名前: あづま ID:CQ5RuU2c

「あの時は本当にすいません。今日から復帰します、よろしくお願いします。」

四月、私は会社への復帰を果たした。拍手で迎えられる。
結局復帰は四月の中旬となってしまいなんとなく腑に落ちなかったが。
このオフィスには新しく五人が配置され、みなが私のことを説明してくれていたらしくすごしやすかった。
ただ、一人が外国人――しかも日本語が上手なのでドキリとする。

「沼川、あの外国人って…。」
「インカリ?あいつがなんかしたのか?」
「いや…やけに日本語上手いしなんか幼い感じが…。」
「だってあいつ日本生まれの日本育ちだぜ?むしろ英語で話しかけないでくださいだってさ。
 大検受けてるから高卒みたいなもんか。」
「…未成年?」
「実際は中卒だけど大検だから高卒で採用みたいなかんじだな。酒飲めないのが残念だよ。じゃ、営業行ってきます〜。」


「華凛ちゃん、今日って夜平気かしら?」
「あ、平気ですよ。」
「よかったわ。今日新入社員の歓迎会やろうと思って。」
「そうなんですか。…あれ、やってなかったんですか?」
「みんな揃ってたほうがいいでしょ?それに華凛ちゃんの快気祝いも兼ねてるの。」
「そんな…ありがとうございます。絶対参加します。」





「それじゃあ、新入社員達はようこそ!竹谷は復帰おめでとう!乾杯〜!!」

沼川が音頭を取り、皆も乾杯した。そして改めてという事で新入社員達が挨拶をする。

「笈川友紀です。トモキじゃなくてトモノリなんで間違えないでください。そして彼女募集中です、よろしくお願いします!。」
「えー、私は澄木未希です。東舎大卒です。まだまだ未熟ですがご指導よろしくお願いします。
 トモ、彼女とか今問題なくない?」
「いーじゃない、別に。俺彼女欲しいから。ゆるがないから!」
「気にしないでくださいね、皆さん。じゃ、つぐみ。」
「はい、国崎つぐみです!未希と同じ東舎大卒です!よろしくお願いしまーす!」
「じゃあ次僕が」
「えーインカリはトリでいこーよ。」
「なんで!」
「弄られキャラだからじゃね?ホリハルどうぞー。」
「インカリごめんなー。堀田芳春です。俺は電子専門学校卒です。趣味は釣りです、よろしくお願いします。」
「え、釣り好きなの?じゃあ今度一緒に行かない?オレも釣りとか好きなんだよ。」
「本当ですか!じゃあ都合がついたときにでも!」
「おっけー。」
「お前が釣り好きなんて初耳だぞ?」
「そりゃ言ってないからな!」

楽しそうに笑う沼川に少しいらっときてメニューで軽く頭をたたく。
しかし無反応な所を見ると酒が回っているらしい。…弱かったっけ、こいつ。
まだジョッキ一杯じゃないか、と声をかけるがそれでもずっと笑っている。

「一寿君楽しそうねー。私は子どもいるから飲めないから羨ましいわ。」
「でも酔うの早すぎません?ジョッキ一杯だけですよ?」
「華凛ちゃんが酔わないんでしょうに。じゃあ、トリ行きましょう!」
「振りありがとうございます。インカリ=バネンです。前も言いましたけど日本育ちなんで英語はできません。」
「そんでもってこいつ中卒の大検なんですよ?…あれ、今年お前十九になるんだよな?なにしてたの。」
「バイトだよ。結構家計苦しかったからね。」
「へー。頭良いんだなぁ、独学だろ?というか俺が一番頭悪そうじゃね?
 未希とつぐみは東舎大だしホリハルは専門学校だし。えー…自信なくすー!」



もう時間は深夜を迎えている。
夕鶴さんは明日が早いからといって日付が変わる前に帰ってしまった。
他の人たちも酒に酔ってしまい家が近い人に強制的に帰らされる人が多かった。
私は酒に強いので基本最後まで残るのだが、つぐみちゃんは酔っ払っているが彼女は強いようでまだ平気そうだ。
残っているのも数えるほどの人数でありその人たちも十分にといっていいほど酔っ払っている。
沼川も彼の自宅に連絡をして迎えに来てもらい今しがた帰っていった。

「せぇんぱーい、お酒強いですね!私サークルで一番強かったのに負けです〜。」
「まあ一升くらい飲めるからな。」
「うわぁ〜、すっごーい!」
「大丈夫か?明日も仕事あるんだし程々にしないと二日酔いするぞ。」
「うーん、…そしたら自業自得ってことでぇ。」

へらへらと笑うつぐみちゃんにそろそろ限界を感じる。
まだ許容量ではありそうだが明日のことを考えるとこれは危険だろう。

「あの、つぐみちゃんの家知ってる人っていますか?」
「僕知ってますよ、先輩。というかつぐみの家近くなんで送っていきますか?」
「そうか?あ、そういえばお前まだ未成年だよな…なんかこんな時間まで悪いな。」
「いいえ、楽しいんでいいですよ。それにいざとなったら…あれ、先輩もしかして知りませんか?」
「何が?」

私の答えにインカリは納得したような顔をする。
それになんとなく引っかかるような物があるがなにか思い出せないので彼の言葉を待つ。

「先輩って奏音さんの友達ですよね。」
「そうだが…なんだいきなり。」
「家、奏音さんの家と大体…十五分から二十分ですよね。」
「あぁ。…なんで知ってる。」
「聞いたんですよ。」
「誰に?」

私の質問に彼はいたずらっぽく微笑む。
その理由が分からずもう一度同じ質問を彼に対してする。

「誰にでしょうね…秘密です。…つぐみと先輩ってお向かいさんですよ?今年の二月引っ越してきた人がいたでしょう?」
「あー…その時いなかったかも。」
「え、すいません。ちなみに僕は奏音さんと隣なんですよ。」
「…奏音に聞いたんだな。」
「帰ったら、分かるかもしれませんね?じゃあ僕つぐみを送っていきます。」
「そうか…私はもう少し飲んだら行くから。」
「分かりました、また明日。」

そうしてインカリ君はつぐみちゃんに肩を貸し店を出て行った。
帰り際口笛を吹かれた際には軽く笑って出て行った。…あれ、恋人同士だったのか?
まあ自分には関係ないことだと酒を飲み続ける。





家への道を歩いていると電気がついていた。今は午前三時半過ぎ。
時間こそ違うがはじめてサクソルとであった日を思い出し自然と笑みがこぼれた。

「逆パターン…か。」

あの時は奏音が逃げてきたと思ったら見知らぬ少年がいて驚かされた物だ。
だが今回はもしやと思っていたが奏音がテーブルに伏して寝ている。さすがにその体勢は辛いだろうと揺り動かすとすぐに起きた。

「婿…遅いねぇ。午前様、飲み会だぁ…お酒臭い。」
「付き合いだ、付き合い。…なんでいるんだ。また仕事貯めて逃げてきたのか?」
「まさか、今の所ちゃんとやってるよ!いやちょっとお話にね。」
「なんだ、改まって。メールでも別に。」
「まあ、ね。」

そして話をしようとするがなかなか奏音は口を開かない。
いったい何を話したいのか分からないがなにか言いづらい事なのだろうかと考えるが何も見つからない。
嬉々として自分のあれそれを話す奴になにかはばかれる事があるのだろうか。

「今…言うのもあれかもしれない。もっと早く言えば良かったかもしれないって思ってる。」
「…結婚?」

奏音は首を振る。

「ショタも、ルー君も、レオンもいたよね。」
「は?」
「覚えてるから、あたしは。」
「何言ってる…?」

訳がわからなかった。それと同時に嬉しさもこみ上げてくる。
彼らの存在を肯定されたうえに、自分以外にも知っている人がいるというのが心強かった。

「ありがとう。遅くないよ、むしろ今でよかった。」
「そう?」
「ああ。入院してるときだったらかえって辛かったかも。あ、というかお前インカリ君に話しただろ!」
「え?」
「とぼけるなって、お前の隣に住んでるって言ってたぞ。」
「…隣?あっあー、あの子か!ついついね、話しちゃったんだよ。でも次回作の案だから秘密って言ったのに…。」
「お前…!というかインカリ君もだ…なんでお前が来ること知ってるんだよ。」
「いいじゃん、あたしはフルオープン!」
「お前らしい。でもなんで?」
「覚えてる理由?…まあ、萌体験だね。ほぉら。」

そう言うと彼女のブレスレットは光を発したかと思うと彼女は手に小太刀を持っていた。
そしてそれで自分の腕を軽く斬ったかと思うと傷口に手を当てた。すると傷口は見る影もない。

「まあ、こんな風にね。これはまあお守りみたいな物よ。で、抵抗できるみたいな。」
「よく分からないが…信用できるよ。」
「よかったぁ。婿が忘れてたらどうしようかと!」
「お前の妄想で片付けただろうよ。」
「うぐっ…まぁ、あたしいっつもそうだもんね。これ言いに来ただけだから帰るよ。バイバイ。」

手を振って奏音は出て行った。そして足音が聞こえなくなる。
身近なところに不思議な力を使える人が多いな、と思いながら眠りにつく。



私は一人じゃない。
忘れない限り、また会えるかもしれない。