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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.121 )
   
日時: 2012/07/21 01:40
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:/.uxH1tk

カメリアの中心地に別れを告げる日。
昼前に出るというエドの言葉から、奏美と想良は最後の探検をしていた。
世話になった人に挨拶をし、談笑を繰り返す。
他愛の無いそれだったが、戦もなければ余計な駆け引きも存在しないそれは心地よかった。
兵舎への挨拶を終え、建物の中に入ろうとしたその時後ろから駆けてくる音がし振り返った。

「想良ぁ、奏美!ひっさしぶり!」
「あ、トリクシー!」
「ひ、久しぶり…だね。」
「いやー、もう帰っちゃうんだろ?オレはここに残んなきゃいけねーからさ。」
「そうなの?」
「そーそー。同盟があるしな、あっちこっち行ったり来たりなんだ。大変なんだぜ?」

今帰ってきた。そう言わんばかりに彼女は多少砂埃に汚れ、背中には着替えの山を背負っている。
大変だと口で入っていても疲れは全く見せず、生き生きとしていた。

「なんかマティーがさ、あいつらも里帰りみたいな感じだからお前もしてきなさぁい、ってよ。
 まあ久しぶりに親父や国の人らにもあえて楽しかったけどな!」
「国…故郷だもんね…。」
「あ、悪い。奏美、思い出しちまったか?」
「うぅん!そんな事無いよ、こっち楽しいし!」
「思い出したほうがいいぜ?生まれ故郷なんて一つしかねえんだから。
 オレが何もなしに誇れるいい所なんだ!ちょっと暴力的だけどな…親父だけだけどよ。」

そう言うと彼女は腕をまくって見せた。傷口こそ塞がっているものの、痛々しい痕が残っていた。
木を添えていることから、どうやら骨折したらしい。
もう少し顔を見せろと怒鳴られ、殴られそうになったのを庇ったらこうなったと明るく言った。

「それ、骨が飛び出したんじゃ…。」
「あぁ、想良。察しいいな。まあ超痛えけどやっぱオレらみたいな怪力一族のコミュニケーションは
 これだなって思っちまったよ。」
「す、すごいね…。」
「そうか?ま、でもオレだって親父に取られてばっかじゃねーもん。お返しに指三本折ってやった。
 ま、すぐ治されちまったけどね。」

激しいコミュニケーションに若干引きつつも談笑する。
どれもとりとめの無いことばかりではあるが、同年代の女らしい内容だった。
身分だけでなく惑星すら飛び越えた関係だが、それを感じさせないのが共通した情だろう。

「んじゃ、オレ一回領主のとこ行くからさ。余裕があればコーリーを見て欲しいな。
 隣国だし、上空からも見えるはずだぜ。」
「うん。トリクシー、またね!お菓子とかのレシピ考えとく!」
「あぁ、待ってる。つーか行くからな。」
「うん!奏美、行こう。」
「あ…じゃあね、トリクシー。」

既に駆け出している想良の後を追うために奏美も走り出そうとした。
だが、手を握られ後ろを振り向く。
その先にはトリクシーがおり、奏美を真っ直ぐに見ていた。
一瞬にして緊張が湧き上がり、目の前の人物を見る。

「えっと…さ。」
「うん…。」
「あ…う、アリーの事、頼むな。自分勝手に突っ走って、残ってる身をハラハラさせやがるんだ。」
「うん。」
「じゃ、宜しく。…またな!」

ぱっと手を放しトリクシーはカメリアの領主が住む館へと一目散に駆けていく。
一人残された奏美は呟いたが、それは誰にも聞こえなかった。
遠くから想良の呼ぶ声か聞こえ、それに向かって走っていった。





「いないのよ!あいつら、こんな肝心なときにかぎって!」
「ナタリー…落ちつけ。」
「あたしらが立てた計画、伝わってるって事ないだろうね?一月以内…女がいないとき…!」
「一旦落ちつけ。いないと分かった以上、こそこそする必要は無い。
 こうしてやつらの目をはばからずに会談できるのはいいことじゃないか。そうだろう?」
「そりゃ、そうだけど…!」

小さな集会場。集落の人々を飲み込むのにはその大きさはちょうど良かった。
女性のいらいらとした声が響き、諌める男性の声がそれを追う。
何度繰り返されたか分からないそのやりとりに、眠らされることの無い大人たちさえ暇を覚えた。
隅で眠る子供たちは、これから大人たちが話す内容など知らない。
純白がごとき顔はこれから巻き込まれる運命を察知させていない一種の恵みだっただろう。

「あたしはね…ジェニーの仇はもちろん…だけど、一番許せない男がいるのさ!」
「だから、それはお前の担当にしただろう。薬漬けでも、なんでもやれ。ただし生かしておけ。」
「あぁそうさ。殺したりするもんか。生かして…イカシテ、いかして!いかし続けてやるつもりだよ!」
「分かった。……ラリー…何か言いたそうにしているな。」
「えぇ、おれ?!」

集会場の隅で、誰とも話さずに二人が言い合う様子を見ていた彼は驚愕の声を上げる。
話なんて聞いていなかった。そう言えば、罰せられるだろう。
だからといって、何もいわなくても結果は同じ。

「えっと、さ。」
「どうした。」
「……あのさ、穏便に済ます方法って無いかなって。おれ、丘の人たちは凄いと思うしさ?
 相手も抵抗するよ。少なからず犠牲は出る…じゃん。」
「あぁ、そうだな。」

同意を得たことでラリーの話しぶりに熱がこもる。
ここの集落での高い位置にいる者からの同意。それが低い位置の者の気をほぐした。

「でしょ!それだったらさ、なんとかこう、話し合って。
 向こうの人も理解してくれるよ。同じところで暮らしてるんだ…から、さ……。」
「……。」

だが、それも一瞬だった。
顔を上げたラリーは、その人物の――いや、周りの人間全てを見て、表情を固めた。
驚愕、呆れ、哀れみ。
なぜ理解できない。
軽蔑、嘆き、蔑み、嘲笑。
その言葉は破滅を意味する。そう思わないのか――?

「ラリー…あんた、繋がっているの。」
「え、えぇ?!」
「だってさ、不満じゃない?あいつらは胡坐をかいて、あたしらをあの丘から見下ろしてるんだよ!
 あたしはジェニー!あんたは両親!ここにいる皆だって友人、恋人、家族!」
「…あ、あの。」
「皆、誰かしら亡くしてるんだよ!悔しくない?あんた。」
「そ、そりゃ…。」
「だったらあいつらの手を漏らせ…!そうだ、スパイ。あんたは二重スパイだ…。」
「おれ、あの人たちには繋がってない!本当、断じて!」
「あぁ繋がってるから!庇うのか、庇うのかぁあぁ!」
「ナタリー!」

ラリーとナタリーのやり取りを傍観していた進行役が止めに入る。
半ばヒステリーに陥った彼女の手をとり、座らせる。
ラリーはそれをぼんやりと見ていた。
視線を下に向ければ、顔を怒りで赤らめ肩を上下させる女性、
生来の優しさは消えうせ、理性を失いかけたその様は獲物を狩り損ねた獣の怒りのようだ。

「ラリー…。」
「え、あ、っがあ、ああぁぁああ!」
「お前もガキと一緒におねんねしてな。今度は長生きできるママのお話をちゃんと聞けばいい。」

男がラリーから目線をはずすと、どさり、ラリーが倒れる。
それを近くにいた女が蹴り。壁に当たった。僅かに木造の建物が、揺れる。
目を開けながらも何も見ていないそれは、誰にも目をくれられることも無く踏まれて朽ちていくだろう。
それを防ぐには、視界を取り戻し自らの足で歩かなければならない。

「……駄目だな。」

誰かが呟く。
それは支配の末の妥協の平和を甘受する孤独への主観的な軽蔑か。
それとも皆の統一された願望を成し遂げるために踏み出す絆への客観的な嘲笑か。
呟いた人が分からないのだから、誰にも意味は分からなかった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.122 )
   
日時: 2012/07/21 01:46
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:/.uxH1tk

「あーあ、お別れかぁ。」
「そう言うな、想良。」
「でもさあ…。」

こちらに来たときとは、逆に今は機体が建物に背を向けている。
やって来たのだから、帰らなければならない。
当たり前のことではあるが、なんだか寂しかった。

「エド、ちょっとウチ心配事があるんだけど。」
「ん、何だ?」
「ウチらは三人。エドとレイはどうあがいても二人。…どうやって帰るの?」
「あ…あー。」
「考えてなかったんだ!」
「…あぁ。そうだ…トリクシー一緒じゃないんだった…。」

声を低くし呟くエドを横目で見る。
本気で考えていなかったらしく、想良と奏美も顔を見合わせた。

「だったらさ、あたしが残ろうじゃないか!」
「賛成。そんでもう俺の視界に来るんじゃねえ。」
「やめてくれ。カメリアの評判が落ちてしまう。」
「何で?!」

奏音は叫んだ。自分がいることにより国単位で評判が下がる。
集団ならまだしも個人でそれがなるといわれれば、驚きを隠せなかった。

「なんで駄目なのさー。」
「奏音…。そうだな、戦場跡にはいかせるなっていう代名詞になるぞ…。」
「意味分かんね。追剥とかはそりゃ相応の覚悟できてるでしょーよ。心配しすぎー。」
「…エド、二人で名前を分かち合ったらどうだい。行く先々でお前の名前まではいかなくても聞くぞ。」
「うわああぁ…改めなきゃなぁ。」

レイが言った内容にエドは苦笑を漏らした。自らの行いとはいえ、と自虐する。
三機用意されたそれを眺めるも、解決法は見えてこなかった。
想良は、一人で運転できなくも無い。
だがもしもの敵襲。それに彼女一人で対応させることは到底不可能だった。

「仕方ない…誰か頼むか……。」
「自分の懐から出しとくれよ、自給自足とはいえ辛いもんは辛いからな。」
「はいはい。あーあ、誰がいいかなぁ、女がいいなぁ。」

腕を大きく振りながらエドは集団を離れ、兵舎の方へと歩いていった。
その姿が見えなくなるまで見送り、各自談笑を始める。
レイは機体に腰掛けその様子を眺めていた。話を振られても適当に流している。

「ん…。」
「奏美?どしたの?」
「なんか…なんだろ。…来る?」
「私は分かんないや…本当にそう思う?」
「そう言われると自信なくすけど……でも、うん。」
「…後ろの奏音さんじゃないんだね?」
「え、姉ちゃああぁああぁん!!」
「うお、ばれた。」

携帯で奏音が保存していた画像をスライドショー形式で奏美の肩越しに再生していた。
すぐさま奏美は取り上げ、電源をオフにする。バッテリーも取るのを忘れなかった。
命といっても過言ではないそれを取り戻そうと奏音が手を伸ばすが、身長差で僅かに及ばない。
爪先立ちで手を伸ばしても、高く上げられたバッテリーに触れることは出来なかった。

「ちょっとわんこ!見てないで取ってよ、あたしの命が高く掲げられてるんですけど!」
「ふざけんじゃねえよ、奏美のほうが俺より背高いだろ。」
「はぁ?!いや、ほら体力の差を見せ付けなさいよ!わんこおぉぉ!」
「うるせえ。」
「レイさんは聞いてあげないの?愛のムチ?」
「……お前、はぁ。…ちょっと、来い。」
「えー?」

レイが想良の手を引き機体から離れる。
奏美が奏音を叱る声が僅かにする。それくらいまで進んでいった。

「姉ちゃんは自重を覚えてよね。それか、?!」
「ぎゃああー!」

奏美が突如黙る。次の瞬間弾かれた様に身体を動かした。
姉を蹴飛ばし少し離れた所に着地する。二人が立っていた場所には一人少年が立っていた。
彼の手にする獲物が土にめり込み、周囲の草がこげて無くなっている。

「何だお前。かわす…お前、どこの人?」
「はぁ?ウチらはえっと、来訪者とか言われてる。」
「来訪者、ね…。馬鹿じゃねーの?」

少年の手から獲物が消え、地には深い穴が残る。ぶわり、と焦げたにおいが辺りに散っていく。
まだ子供といってもいいくらいの外見と黒い髪を持つその少年。
自らに答えた奏美、そしていきなり蹴りを入れたことに対しぶつぶつと文句を言う奏音を眺めた。

「何…。」
「うーん、違うな。…ここに、もう一人か二人。いただろう。」
「あーそーいや想良ちゃんどこ行った?」
「いたのか、そうか。…そこだな。」

そう言い残すと一直線に、走っていく。二人も機体を残している事を気にかけながらもそれを追った。

「ちっ。なんで分かったんだよ。」
「何で分かった?お前が喋ったんだろ、オジキよ。」
「オジキ?レイさんってそんな年だっけ。」
「二十一ってそんな年かい?」
「いや…多分違う。」

こうした問答をレイと想良が繰り広げている間に奏音と奏美も追いついた。
なぞの彼は周囲を包囲されたとはいえ浮かべた笑みは崩さなかった。
自分の正体なんてどうでもいいといったような雰囲気を彼は出している。

「はー…やっぱあたしも走らんと駄目かぁ?」
「姉ちゃんにはお勧めするよ。で、あなたは誰。」
「俺?オジキに聞いてごらん、分かるかもしれない。」
「オジキ?わんこが?あたしより年下のわんこが?はぁ?」
「俺に喧嘩腰で言うんじゃねえよ!俺だって分かんねえんだ!」

指をさされたレイが否定する。
本当にその人物のことを分かっていないようだった。少年が驚いたような顔をする。
見たところ奏美や想良と同年代のようだが、それ以上は分からない。

「分かんない?本当に俺のことを知らないんだな?」
「知らねえさ、お前を初めて見たよ。もし他の国でお前の事を気にかけてたら悪かった、と言っとくよ。
 あれは全部演技だ、俺はそんな情持ち合わせちゃいねえよ。」
「ふーん、じゃ…今はいい。もっと…完成してからぶっ壊すよ。」

そう言うと少年はまた走り去ってゆく。現れたときと同様、気配を感じさせないような素早さだった。
木々の葉が落ち、音も立てずに落ちていく。

「つまり、わんこが仕事先であの子を誑かしわんこの事を忘れられないあの子は必死に追いかけてきた。
 それなのに忘れられてて涙を見られないように足早に去った、という事でおっけー?」
「んなわきゃねえだろ。そもそも俺は仕事中オジキなんて呼ばれる格好しねえよ。」
「ん?じゃあレイはどういう格好してるの?ウチらと会った時は女装だったよね。」
「そこ蒸し返すのかい?…まぁ、女の格好か旅芸人だよ。」
「ふーん。どこの世界も変わらないねえ、そういうの。じゃ、もう戻ろう?エドさんもう来てるかもしれないし、ね?」

想良の一言で先ほどのところへと戻る。
レイは油断させたところでもう一度襲い掛かってくるのではと気を張っていたが杞憂に終わった。
ただエドも帰ってきておらず、再び途方にくれる。
思い出されるのは彼が自分の事をオジキと呼んだその分からない理由。
仕事中は人とかかわらずに過ごし、できるだけ仲の良い人物も作らないようにしている。
なのに、なぜ。

「なぁ、正直に言っとくれ。お前ら位だとよ、その…二十代ってオヤジなのかい?」
「ちょ、そしたらあたしババアだし。てめーあたしまだミスだからね、ミセスじゃないからね!」
「おめえに言ってねえよ。奏美、想良。どうなんだ。」
「どうって、ねえ。二十歳、ていうと遠い未来のような気もするけどオジサンとは思わないなぁ。」
「私もー。選挙権とお酒とタバコってイメージ。オジサンは無いよ。」
「だよなぁ…。」

しかし、レイのその返事は納得行かないというような声色だった。
彼の仕事柄、どこか疑うべき何かがあるのは明らかだった。だが、それが何なのかが分からない。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.123 )
   
日時: 2012/08/19 22:22
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:CQ5RuU2c

「あ…もしかしてあれの一派か?やけに手馴れみてえだし…。」
「ん?心当たりあるの?」

奏美が問う。推測の域を出ていないことは重々承知していたが何か分かることがあるかもしれないと思ったからだ。
ポケットから抜き出されそうになったバッテリーを高々と上げ、レイの返事を待つ。
奏音が想良に対して技をかけて取り返せないかと聞いているのは無視をした。

「ほら、お前らが最初に来たときの侵入者さ。エドの攻撃を防ぐ、お前らの顔を見る。
 あ、奏美は見てなかったか…。」
「あー……そういえば。」

言っていなかった。忘れていた。仕事があることを告げに来たあの少女。
あの後気まずい雰囲気になり、それのせいでレイに話すのをすっかりと忘れていた。

「少しかぎ回ったんだけどよ。全然証拠が出ねえんだ。それに…ダイアナが言ってたことを真に受けるのもどうかと思うが…
 彼女の顔は変わるからな。ヘーゼル…日の光で瞳の色が変わる。」
「ヘーゼル…ねぇ……。」
「ここであの男が俺とお前の顔を見たわけだ。残りはアリー…とアルもか?
 ま、牢獄入りで助かったんだろうな……素顔を確認しなきゃ動かねえよ、多分。」
「ん?それってさ、私がレイさんを迎えに行った時会ったっていったあの人?」
「あぁ、なんだ?知ってるのか?」

突然会話に割り込んできた想良に対しレイの目が細くなる。
彼女の洞察力、そして単独行動から疑っているのは丸分かりだった。
想良もそれは感じ取っており、あらぬ疑いがかけられてはいるもののそれを表に出さないよう平然と受け答えする。

「あの人ならさ、会ったよ?」
「へぇ…どこで。」
「えっと、割り振られた部屋。マティーさん直属の部下って言ってた気がする。
 あ、あとレイさんに言ってっていわれたんだ。忘れてたよ。」
「ふーん。じゃ、何だい?あの女と今さっきの男はそれぞれ別。そう言いてえと。」
「うん。私は誰が嘘ついてて、なんて分からないからね。判断はレイさんに任せるよ。」

会話を打ち切り、想良は奏音の元へといく。
一方的なそれをレイは怪しいと睨んだが、まだ証拠はない。それを表に出すのも褒められたものではない。

「オジキってさぁ、どういう字なんだろうねぇ。」
「字?」
「うん。ウチには日本語にしか聞こえないけど…あれ、そういえばレイって日本語喋ってるの?」
「日本語は理解出来なくもねぇけどよ、実際何語かって言われたら分かんねえな。」
「え?」
「この世界のものを食うと自然と言葉が通じちまうのさ。だから暗号とかは難しい。」
「ふーん…じゃ、日本語だったのかな。食べる前から何喋ってるかわかってたし……。」

当時を思い出し奏美は呟く。
会ったその瞬間からレイとは言葉を交わせていた。そしてエドとも。
この世界の不思議な原理に対し面白さを感じるが、羨ましさは不思議と感じなかった。
そして、一度それた話を戻す。

「で、オジキの意味だよ。父親なのか、叔父甥のそれなのか、他人なのか。」
「とりあえず父親と叔父甥のは除外だろう。俺はまず子供がいねえ。
 それにあいつは見たところお前らと同じくらい。あんなでかいガキはエドですらいねえよ…多分。」
「多分?」
「子持ちの未亡人を…。」
「あぁ、義理のって事…となると、他人なのかねー?」
「とりあえず心に留めておけって事だな。何か怪しいことがあったら言っとくれ。…ほら、エドが来た。」

レイの言葉に視線を上げると、遠くにエドの姿が認められた。
彼の後ろには女性が慌てて追いかけているのが分かった。その姿に見覚えがあった奏美は目を凝らした。
少々足を引きずっているその人物。
奏美と奏音が初めて会った時の衰弱はもう見られず、足取りもしっかりとしていた。

「やぁ、待ったか?とりあえず紹介だけ。マリーだ。」
「セルジュ、お前正気なのか?私はお前を…失敗したとはいえ告発した人間だぞ!
 殺すでもなく、お前の領地に連れて行く?私をなめているのか?」
「まぁまぁ、自由に動かせる女となると俺が取った捕虜だろ?するとまぁ…はっきり言ってお前しかいないんだ。」
「はぁ…?」
「あ、なんかマリーさん嬉しそう。」
「想良…。」

想良の発言に奏美はため息をつき、マリーは睨む。

「と、とりあえずだな!今すぐ殺すか、さもなくば解放してくれるか!どっちかの選択肢にしてくれないか?」
「殺しもしないし、解放もしないよ。今の所はね。とりあえず、はい。これに…想良、マリーとでいいか?」
「うん、構わないけど…。えっと、よろしく、マリーさん。」
「ふん!」
「女のツンデレか、ニュータイプだね。あたしのピースが埋まった。」
「はぁ?!そこのツインボム、変な事言うな!」
「つ、ツインボム?!なにが、あたしのナニが?!」
「…行かないのかい、あんたらは……。」

レイの呟きは誰にも聞こえなかった。
彼らが空へと飛び立ち、元の居住に戻るのはこれから数時間の後だったという。





「どうした?随分やつれたな…。」
「そりゃ…食べてないからね……軍師様、三日ぐらい食べないでごらんよ。」
「遠慮しておくよ。私は国を動かす手として頭は常に働かさなければいけないからね。」

気だるそうに、ベッドから身体を起こしたアリーを軍師は眺める。
入ってきて早々、軍師の兄でありこの牢の総取締りを勤めるフィッツを怒らせ。
その影響で彼は牢に関する全てを放棄し、周辺の小国へと足を伸ばしてしまった。
おかげでこの牢に入れられている者の食事はストップし、発狂する人物まで現れる始末。
ここ数日お前のせいで余計な骨が折れた、と小言を言おうと思えば予想以上の衰弱振りに驚かされた。

「腹は減らないのか?いつかの手形、あげていればよかったかもしれないね。」
「あぁ…あれ、ね……。」
「受け答えも辛いかい?余計な意地は張らなくていいんだよ。」
「張ってないよぉ……馬鹿、死ね…。」
「そう受け取っておこうか…。」

見回りの兵の言うとおりであれば、この人間はここに入ってから食事を取っていない。
初っ端腐りかけのそれを渡されたせいもあるのでは?という意見であった。
皿を入れても投げ返され、眠っている隙に食事を忍ばせれば次の見回り時には通路にぶちまけられているという。
警戒もあるだろうが、初め拒絶したことによる意地だろうと軍師は解釈した。
疲れてしまったのかアリーは寝転がり、軍師からは顔が見えなくなった。

「…ねぇ、軍師様。」
「なんだ?」
「ここ、ここさぁ……ちょっと雰囲気、異常じゃない…?」
「異常?そりゃあ牢だからね。どこかしら気の触れた人間がいるものだよ。」
「そうじゃない、移送される時の、民の目線。なんか…怖かったよ、軍師様……。」
「リキルシアは様々な国の人間が商いに来ている。土地を競売方式で買う。
 元々人が多いから必然的に需要も大きい。だから敵国の人間と隣で商売、なんてのもあるんだよ。」

いつか説明したことを、もう少し踏み込んで言う。
かつては何のかかわりも持たない国同士だったが、今は同盟国。教えていない情報も、少しは教えるつもりだった。

「軍師様は…気づかなかったんだ……。」
「なんの…事だ?」
「うぅん、何でも……その時に、軍師様の才能をそばで見られるのを、僕は願うよ。おやすみ。」
「あ、あぁ、おやすみ。次は食べるといいよ。……私の才能を、ね。」

小言を言うつもりが、逆に何かを投げかけられてしまった。
民衆の怒り、自分が気づかない何か、そして才能。
導き出される答え。反乱。

「なるほど。…いっその事、カメリアを巻き込むこともできるかな?」

組み立てられていくピース。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.124 )
   
日時: 2012/08/19 22:23
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:CQ5RuU2c

「はあぁぁ〜ん、帰ってきた!帰ってきたよ!カメリ…あ、あそこもカメリアか。
 ねぇエド、ここの地名なんていうの?あたし知らないわ。」
「地名?…レイ、分かるか?」
「あんた知らないでここの監視任されてたのかい?!」
「いやまぁ、はは。」

まさか、というレイの発言に対しエドはあいまいに答える。
ここに行けと言う指令書に書いてあったような気がするが適当に読み流したため覚えていなかった。
一足先に着いていた想良とマリーはその様を呆れた目で見ている。

「私は、私はあんな抜けている奴に!」
「マリーさん、落ちついて落ちついて。」
「すぐに女だとばれたし!」
「まぁまぁ、ね?」
「はぁ……まぁ、ここはのどかな所だな。争いが無いような、そんな雰囲気だ。」

マリーはそう言うと、集落を見下ろした。
彼らは帰還に気づいていないのかそれぞれが田畑を耕し、子供たちは駆け回っている。
これが本来あるべき人の姿なのではと想良は考えた。

「まぁ、とりあえず中に入ろう。マリーには色々聞きたいこともあるし…な。」
「…、国のことなら言わないぞ。私もそれくらいの抵抗は出来る。」
「あぁ分かった。じゃ、俺の部屋に行こうか。レイ達はどうする?」
「俺は少し休ませてもらうよ。移動とか色々、疲れちまった。」
「あたしは携帯で色々する。アリーちゃんに全部充電してもらったし、三日は持つでしょー。」
「はぁ…ウチは姉ちゃん監視してるよ。想良は?」
「私?私は…みんなと遊んでくる。久しぶりだし、楽しみだよ。」
「そ、じゃあ夕ご飯までには帰って来るんだよ。」

奏美の言葉を最後に、皆は家の中に入る。
想良はそれを見送り暫くたたずんだあと、未知の目的の場所へと歩みを進める。
教わった秘密の場所。
男装するように、と言われたが今の自分の姿はどうだろう。
髪の毛は相変わらず短いし、身に付けている服も無地の色の濃いものだった。
武器も、多少時間があれば作れるだろう。試験にも合格したことがある。それが自信だった。
記憶を頼りに、歩みを進める。





今日も、天気はいい。
ただ、草木の香りを運んでくる風はだんだんと涼しくなっていった。
簡易な生簀から魚を数匹取り出し、手近にあった木の枝に刺す。
苦しそうに身体をよじるそれも、次第に動かなくなった。火をおこし、火の通るのを待つ。
木々に覆われ、且つ念入りにコラージュされたその入り口ですら仲の呻き声を防ぐのには役に立たなかった。
叫びや、懇願。この静寂の中ではあまりにもはっきり聞こえすぎていた。

「……。」

気配、息遣い。
感じた限りでは戦いに慣れている雰囲気ではない。呼吸や足音も隠そうとしていないのが何よりの証拠だった。
今から火を消そうにも、ここでの生活痕は消えないだろう。
彼は自らの犯したミスに舌打ちした。

「…あれ?人?」
「…旅人です。道に迷いまして、ここは自然が豊かですから。居ついて、いました。」
「そうなんですかー。いいですよね、空気が綺麗だし。」

少々肩を弾ませている目の前の人物はにこやかに応対する。
そして周囲を見回し、ある一点で視点がとまった。木々に覆われた扉。漏れ出す呻き声。
彼女――声、そして体格からそう判断した――はすぐに目線を逸らし、男性に向き直る。

「あなたはなんでここに来たんですか?」
「私は、流浪の人間だ。…気ままに歩き、気に入った所で、生活する。不都合があれば…移動、する。」
「へー。やっぱり野宿が主なのかなぁ。」
「…そうなる。」

何気ない会話。だが、確実に個を知るのには重要そうなことばかり聞いてくる。
彼は目の前の人物から一歩、遠のいた。近づいては、暴かれる。
だがしかし、それは想良が許さなかった。
ぼんやりとした、僅かな記憶。引っかかる面影。

「あなた、私とどこかで会った事無いですか?見た事あるような、ないような……。」
「私に、そんな記憶は無い。…おそらく、人違いかと……。」
「うーん、なんか見た事ある気がするんだけどなぁ。」

想良は首を傾げる。会ったこと、少なくとも彼を見たことはあるはずなのだ。
それなのにその瞬間を思い出せない。
男も必死に記憶をたどった。もし目の前の女が自分を知っていた場合、どこでというのが非常に大事になる。
もしかしたら、始末しなければならないかもしれない。

「んー、分からないや。えっと…さよなら。」
「…あぁ、また。」

踵を返し、元来た道をいく女を見て男はほっとしていた。
もう少し情報を得たい。ここで殺せばどんな理由があろうと去らなければならない。
ちょうど良く焦げ目のついた魚をとり、火には水をかけ薄暗いところへと戻った。





「随分と…子供趣味な部屋だな。お前のことだからもっと散らかっているものだと思ってた。」
「はは、見た目で判断してくれるな。じゃあ、尋問を始めようか。
 と、その前に言っておこう。俺は優しいよ、ちゃんと言ってくれて正直で、従順な人にはね。」
「どうだか。一国潰す奴に優しさなんてあるのかね。」
「俺は一日で潰した。自我をもたないような幼い子しか残していない。数日は夜泣きがあるがおさまるはずだぞ?」
「ふん、仲間まで殺しそうだといってたじゃない。私は、覚えてるよ。」

窓から差し込む陽光が二人をやわらかく照らす。
二人は互いに譲らなかった。特にマリーは自分の判断が正しかったとはいえ結果的には敗北を味わったのだから
それが強いようだった。
どちらも口を開くことは無く、互いの出方を窺う。
即ち停滞を意味していたが、これは無意味な時間の浪費ではなかった。相手の器のほどを知る。
はじめに折れたのは、エドだった。

「まあいい。俺を信じるも信じないもマリー、お前の勝手だ。だがお前は俺の捕虜、好きにする権利がある。」
「分かってる。なんでもやればいい。それで私から情報を引き出せばいい。
 その情報はもはやセルジュ、お前のものだ。お前のものを使うな、と私は強制できない。」
「そうか。無駄に抵抗しないでわあわあ騒ぐ馬鹿な屑じゃなくて俺は嬉しいよ。
 さて、何から聞けばいいのかな……。」

聞く内容を考えていなかったのか、エドは目を閉じ考え込んでしまった。
彼の誘導か、それとも素なのかはマリーには察することは出来なかったが好機とばかりに辺りを見回す。
第一印象は小さな子供の部屋のようだった。
子供が使うような小さな刀。これは案外古いためエドの幼少時代使っていたものとマリーは推測した。
だが、この部屋で視線を集中させる古びた人形があった。その他にも人形が肩を並べている。

「なんだ?俺がこういうのを持っていたらおかしいか。」
「…趣味は、私は口を出さない。これがはじめの尋問ならばな。」
「没収した奴だけどさ。やっぱり変か。」
「そうかも…な。」

子供の部屋。その印象は間違いだったかもしれない。
それを連想させる物は人形…どれも薄汚れていて、全てのそれが子供の好むデフォルメされた物ではなく
深いコレクターが好むようなリアルさを持っていた。
生きているような目。しかしそれは目の前にある物だけを映しているだけで何も見ていない。
虫が食ったのか穴が開き、中身の布切れや木の実の殻が付近にこぼれていた。

「じゃあまず一つ目。お前、独身?」
「は?…はぁ?」
「いや……聞いておかないと俺の踏ん切りが付かなくてな…。」
「…そもそも私は結婚するつもりなんて無い。私はそういうのできる人間じゃない。」
「それなりの上流または極端な下層な身分。ただお前が結構な信頼を置かれてたと見ると前者だな。」
「どうでもいい。」

こういう事から、洗っていくのか。
そう理解したマリーは繋がりそうなことは口にだすまいと決意した。しかしある疑問がわきあがる。

「あの二人は…なんか違うな。」
「え?レイと俺?一応兄弟だが…あぁ、母親は同じ。父親は違う。俺らの所は女が継ぐから。
 俺の父親は戦死。」
「いや、あんたらじゃなくて…。」
「奏音と奏美?奏美と想良、それとも奏音と想良?どの組み合わせかは分からないがあの三人は来訪者だ。
 言ってなかったか?とりあえずあの年で未だに色々と出来ないのはおかしいとは思うだろう?あいつらの世界には戦がない。」
「私はそこまで見てない。」

エドとマリーの間には食い違いが存在していた。
それを互いに理解していたがどのように解消するべきか分からない。マリーは根本から語る事にした。

「なんか、想良が違うような…その。」
「あぁ、奏美と奏音は姉妹だ。性格も根っこの方では似ていると思うぞ。それで、尋問だ。」
「まだ、気になる事が…。」
「だから、想良はあっちの血じゃない。ほら、始めるぞ。」

有無を言わせないエドの雰囲気にマリーはしぶしぶながら従った。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.125 )
   
日時: 2012/09/17 16:04
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:07pgeCBU

「奏美。」
「ん?」
「ちょっと来てくれ。」
「あ、うん。」

家の中に入り、エドとマリーは上へと消える。
奏音もそれを追う様に消えていった。扉の閉まる音から、割り当てられた部屋に入ったのが推測できる。
奏美も少し休もうかと思い、階段に足をかけたときにレイに話しかけられた。
それほど疲れている訳でもないし、と彼の前に座った。

「俺はお前にいくつか質問する。構わねえかい?」
「うん。よっぽどプライバシーに関係することじゃなければ。」
「まぁいい。奏音はあんたにとってなんだ。」
「え、姉ちゃん?姉だけど…うん。」

突然の質問。想良の言った事が頭の中で反響する。
レイの態度はよく分からない。単純なようで、肝心なところを理解するのが奏美には出来なかった。

「本当に、姉か?」
「え?そうでしょ。普通に姉って言われてたし、ウチも今までもこれからも姉ちゃんは姉だと思うけど。
 突然妹になりました!とかないでしょ。」
「腹違いとか、ないか。」
「無いよ。親はどっちも初恋同士。小学校から一緒なんだってさ、うらやましいね。
 それにさ、ウチが中学に上がるときの更新手続きのとき戸籍見せてもらったけど普通に姉ちゃんは姉だったよ。」

奏美は奏音が養子なんて話は聞いたことが無い。逆もまた然りだ。
まだ早い、なんて話さないこともあるかもしれないがそれならば戸籍を見せたのは最大の誤りだ。
しかし、質問の意味が分からない。
奏音のことをどう思うかでもなく、奏音とは何だ。
姉としか答えようが無かったがそれ以上のいい答えも浮かんでこない。

「なんかよ…あいつに変わった事、なかったかい?」
「変わった事?ウチが物心ついたときから姉ちゃんあんなだったよ。やれアニメだ漫画だって。」
「おかしいな…俺も鈍っちまったか……?」
「え、レイはまだまだ若いでしょ。鈍るなんて年じゃないよ、まだ延びる年でしょ。」
「担当。会った事あるかい?」
「担当って姉ちゃんの仕事の?」
「あぁ。」
「あるよ。津岸さん。想良が声真似してた人ならだけど。
 えっと臨時の…ああっと、れ、レオン?その人には会った事無いけどね、来たのはここ最近だし気にしなくていいよ。」
「そうか……。もういい、少し考えてくるよ。また二人のときに、頼む。」
「あ、うん。協力できるなら…。」

レイは上へとあがっていく。それと入れ替わるように想良が戻ってきた。
多少の息切れと、草が着いた足元。集落に行っていないことは一目瞭然だった。
想良は周りを見回し奏美がいることに気がつくと、なんの迷いも見せずに彼女の向かいに座った。
そこで気づく。微かな煙のにおい。

「想良、早かったじゃん。」
「うん。なんか集会あるらしくてさ。言われちゃった。だから後で行こうかなって。
 で、何話してたの?」
「別に何も話してないよ。」
「話してたよ、だって今座ってるとこ温かいもん。奏美が私が来る前にわざわざそっちに移ったって事無いでしょ。」
「レイと話してた。」
「ふーん。」

探るような目つきを想良は一瞬したが、自分の足にくっついている草に気づくとそれを摘み窓から投げ捨てた。
とっさの事とはいえ不要な嘘をついてしまった奏美は、その一挙一動に内心恐怖に凍りついた。
想良も、なぜ友人が嘘をついたのかが全く分からず何か隠し事があるのを見て取った。
必然的に奏音は奏美の側につく。姉妹なのだから。そうすれば自分は孤立してしまうだろう。
友人というものを超え、疑うことを余儀なくされていく。
ある一つの世界の常識に二人は染まりつつあった。





「なるほどね…軍が独自の訓練。」
「はい。」
「そっか。もう下がっていい。」

下がっていく者。その目には微かな非難がこめられていた。
同時に僅かな後悔も生まれるが今から消したのではもう間に合わないことも軍師は承知していた。
あの、軍を嗅ぎまわっていたという分子の報告は今でも続いている。
報告が途絶えるならばあの国は違うだろうと牢に繋いだため、これはカメリア及びその同盟国の線は消えた。
窓を覆うそれに目をやる。南のほうの活気が無い。軍は国境周辺を警備している。
今現在の入国は取るに足らない――脅しさえすれば降参するような小国が約二十。
武力でかかれば確実に抑えられる国が十足らず。本気でかからなければいけない国は一つだけ。
一軍隊の長が与えられたと伝わる武力国家。最近は穏健になってきたが過激なことで注意している。
その他にも個人で契約しているものが数十あるが、その人らの出身国は計算に入れるまでも無い。

「ロズ、暇があったら来てくれ。」

小さな機械に喋りかける。
すると間もなく息を切らせた少年が入ってきた。

「走ってこなくていいんだよ。暇があればって言ったんだし。」
「国のために尽くすのが仕事だから!」
「そう…国について。不満が出てるところはあるか?個人契約も含めて。」
「不満?あ、商いだとね!えっとね、西の個人で勝手に連合作ったとこ。あそこがちょっとぶーたれてるよ。
 スラムの近くじゃ商売できなーいってさ。安いからってあそこの土地買ったのにね。」
「あぁ、あいつらね…あれはいつもだろう。その他は?」
「んっと、城下のハータヤとアンティラが近々合併して大きな店にしたいとは言ってたよ!
 でもそれにもっと税金取るよって言ってから物凄い怒ってる。」

ハータヤとアンティラ。同国から来た人間が共同で治め、長い歴史の中で分裂した国。
民衆の力で最近は合併の動きがあるという。その影響なのが窺える。

「後は?外交のほうでもいいから。」
「商いのほうはもう無いかな。外交もね、パウエルの動きがほとんど無いくらいであんまりないよ!
 カメリアもあと何週間かで資源をくれるって言うしね!」
「じゃあ、戦の動きも無い。」
「戦…無いよ。だってこの前潰したじゃん!でもビックリしたよ、お兄様。
 お兄様の陣が破られるなんて思ってなかったもん!ロズはとても驚きました、まさかお兄様が!」

本当に驚いたように、しかし芝居がかった口調でロズはフェビアンに近づいた。
フェビアンはそれを弟の肩に手を置いて制し、諭すような口調で語りかける。

「私も完璧ではないからね。そう、もういいよ。ありがとう。」
「本当、もういいの?!ロズはお役に立ちましたか!」
「うん、立ったよ…。」

ぱぁっと顔を輝かし、ロズは弾丸のようにその場から立ち去る。
彼の陽気さと女のようにキンキン響く声に付き合うのは疲れるが国のため仕方がないと諦めた。
後数年すれば声も変わり落ち着きも出て少しはマシになってくるだろうと軍師は言い聞かせる。
ふぅ、と息をつき弟からの話を反芻しゆっくりと飲み込んでいく。
ハータヤとアンティラが扇動すると言う事はほぼありえない。
近々合併しようかという所で滅ぼされるような口実を与えるほどあそこの国主らは馬鹿ではないのを知っている。
パウエルの動きが無いのは気になった。閉塞的ではあるが、なんらかの情報は常にもたらされてきたためだ。

「フィッツは…周辺国として。影響は一応、侵略まで入れておくか。
 ロズも嘘をつくのが相変わらず……こんなんだから私にお鉢が回ってくるんだ。少しは考えてもらいたいよ。」

窓に目をやれば、物凄い速さで動いていく一つの点があった。
それは繁華街を出、スラムのある一点で止まる。文句を言っているという連合がある場所に相違ない。
税を上げるか、はたまた注意するか。そのような事に費やす以上の時間がたつ。

「分裂も避けられない…か。私に味方は…信頼できるものは……。」

軍を嗅ぎまわる分子の特定。
リキルシア国が王の五男、ローランド=カンター。
メンテ

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