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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.141 )
   
日時: 2013/12/24 15:37
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:QnXtXe9M

「はじめまして。私が今回の同盟の全権、フェビアンです。」
「お、俺はカメリアの補佐で、マティー…じゃなくって全権の兄でエドゥアールと……。」

数人の護衛だけを置き、小さな部屋――といっても人一人暮らすには十分すぎるほどの大きな部屋で話し合っていた。
軍師が大人数の護衛をおいたらカメリア側への威圧へと捉えられかねないと考慮したものであった。
しかしエドにとってはカメリアごときはこの人数を置く位しか脅威ではないと言われているように感じていた。
ただでさえ苦手な外交が余計に彼の思考回路を暗くした。
奏美と奏音は邪魔になってはいけないと、会話が聞こえないくらいに離れた所に立っていた。

「エドがっちがちじゃんよ。あれ大丈夫なの?」
「駄目じゃない?姉ちゃん、少し黙ろうね。」
「奏美だって今しゃべってんじゃんよー。」
「……。」
「あーそーやってあたしだけを悪者にする……。」

黙り込んだ奏美と近くにいる護衛の者の冷たい視線に奏音も白旗をあげた。
味方がいなくても彼女はやり遂げたいとは思ったものの今は国同士での話し合い。
自分の一言のせいでせっかく結ばれた同盟も破綻し戦争が起こってしまったのでは流石に寝覚めが悪いと判断した。
しかしそうなると携帯も取り出すことが憚られ、きょろきょろとしていれば無表情の奏美に足を踏まれてしまう。
抵抗の意味もこめて睨みつけておくが奏美の視線には彼女は入っていなかった。

「そう来なくても同盟はちゃんと維持し続けるよ。破棄する場合もちゃんと連絡するし。」
「してもらった方だから、やっぱり敬意を表して……。」
「緊張しなくてもいいよ。とって食おうなんてしないからね。大丈夫。私は君の妹さんを信頼しているからね。
 完璧な書状だったよ……もう少し早ければ先回りしてこっちの道をふさぐくらい。」
「えっ?」
「彼女の惜しむ事はあと一歩早く行動しなかった事かな?でも自分の意思で簡単に動かせる王族と 
 許可が必要な補佐には差があるからね……。彼女が王族になったら多分脅威だ。」

意外な申し出にエドは一瞬戸惑った。そして目の前の軍師を眺めた。
彼は今何を考えているのか分からない。無表情ではないものの、誰かに感情を悟らせる物ではなかった。

「カメリアの領主は臆病で優柔不断だからね……だけど偽装はあまりためにはならないって伝えておいて欲しい。
 こちらが不信感を抱いたらどうなるか――貴方にも分かるはずでしょう。」
「え、ええ…制圧……。」
「お互いに紳士にいけるといい。それが両国の最善だと私は思っている。
 それからその申し出、確かに承った。数日のうちには配備を完了させよう。」
「はい…ありがたくうけたま…?頂戴します……?」
「だから大丈夫なのに。これからどちらへ?」
「え、えっと…パウエル……に…。」
「パウエル?」

部屋の空気が変わった。先ほどまでの雰囲気とは一転、重苦しいものとなった。
数人の護衛が視線を交わし一人が出て行った。いざという時のために応援を頼むのだろう。
奏美と奏音を除いた人間は全員が一瞬にして臨戦状態となる。
互いににらみ合い、先に仕掛けた場合の大義名分を腹の中で探り合う。

「パウエルには……なんのつながりで?」
「いえ…あまりに情報がないから……一応。」
「おかしいですね?なぜ貴方のような重要人物を?イコール信頼であるというならば半分は納得できる。
 しかしもう一方、そこまで信頼する人物をよく分からない地で戦死させる覚悟はあるか。私には疑問だ。」
「…カメリアが信頼している人間にパウエルの者がいます。その人間からの筋です。」

はったりだった。ダイアナはパウエル王家の血筋であるし、カメリア側も彼女を信頼している。
しかしそれに至ったのは彼女が連絡をとる事が叶わなかったため。
そして彼女を取り戻すために戦の準備等の噂なども全くなく、事実も存在しなかったからだ。

「…まあ、そちらが信頼しているのであれば黙認してもいいかな?ただし、知りえた情報は全てこちらにもまわして欲しい。
 リキルシアとパウエルの確執……すでに神話の域だが国を動かせる身分にいる貴方だ。分かるだろう。」
「ま、まあ…まわします……。」
「そうかい。その返事が聞きたかったよ……さあ、彼らを城の外まで案内してやるんだ。」

軍師がそう言うと彼の両脇を固めていた護衛がエドを無理矢理立たせ、奏美と奏音の手をとった。
そして有無を言わさずに部屋の外へと連れ出した。
扉が閉まり、数分を過ごす。完全な沈黙を一人の護衛が破った。

「よろしいのですか?」
「何が?」
「あの者達をパウエルに。彼らの話を真とするならばパウエルの人間を飼っているという事。
 同盟締結時こちら側に知らせていませんし、その者を通してわが国の内情を知らされないとも限りますまい。」
「君は私に逆らうのか?そしてこんな簡単な事を説明しなければいけないのかい?
 こちら側に知らせていないという事を知られたという事はまず対策が可能。
 そしていざという時それを盾に相手方に無理な条件を飲ませる事が可能じゃないか。」
「……。」
「……そうだ、あの牢の人間。別れ際に会わせてあげたらいいよ、あの固い奴の弟だろう。似てないけど。
 でも会わせるだけだ。姿を見せたらまた牢に入れておいてくれ。」
「承知…いたしました。」
「うん、みんなさがっていいよ…まったく……。」

軍師は一人で部屋を出て行った。そして自室へと戻り国の内情を把握するのだろう。
部屋に残っていた護衛たちの視線と表情、きつく握られた拳に彼は気づく事はできなかった。

「指示を…今は……。」

その一言で、彼らは部屋を出て行った。





「堅苦しかったねー。」
「あんなエド初めて見たよー。何々ー案外エドって初心な感じ?初めての事にはビクビクプルプルな人?
 生まれたての子羊ちゃんだったりする人?襲うよ?」
「……。」
「食うよ?」
「襲っても食っても構わないから……今はそっとしといてくれ……精神力が……。」
「奏美、あんた一人部屋ね。」
「姉ちゃん!こんな所でいう事?!今案内してもらってんだよ?ウチらだけじゃないんだよ?」
「あーかってーかってぇー。」

冗談だと分からない奴は、と大袈裟に首を振る奏音を奏美は恨めしげに睨んだ。
その視線を大袈裟なそぶりで奏音は避けた。奏美はそれに対しても眉をひそめる。
奏音はそれを見て満足感を覚え視線を逸らした。するとその先に大きな石があるのが見えた。
はじめはただの岩だと思ったが、よく見ると何か文字が刻まれているのが分かった。

「あれなんすか?あの石。」
「…あぁ、あれですか。見ますか?」
「いいの?」
「さあ。禁じられてないし…別に……。」
「な、なんか投げやり…。」

三人を案内していた人物はその石に近づいた。とても古く、苔にまみれている。
しかしその苔は文字を避けるように生えていた。そして手を触れようとすると何か分からない力で弾かれる。
興味深くそれを眺めている奏音と、少し後ろからその様子を眺めている奏美とエドに彼は説明した。

「これは大戦の終結時に置かれたそうです。」
「へー…つかちょくちょく大戦っての出てくるけどそれそんなに凄かったの?」
「おそらく…といっても残ってる物少ないし……伝承と、この石くらい。」
「伝承…どんな事書いてあるんですか?」
「……。」

話に割り込んできた奏美を兵士は一瞬にらみつけた。聞いてはいけない事を聞いてしまったかと肩をすくめる。
しかしそれはただ品定めをしていただけのようで、口を開いた。

「…たしか、月に光が舞い込んだ。光は星々を消し、朝になった。月は廃れ、夜が出来た。
 抽象的だからよく分からない……。」
「へー…あたしもよく分からん。ようするに光が勝ちましたよって事じゃね?」
「伝承では…もう行きますよ、さっさと…。」

携帯を取り出し石をおさめる奏音を半ば強引に兵士は引っ張った。
首が絞まり蛙が潰れたような声を上げる奏音を奏美はため息をつきながら見た。
エドは未だ疲れを引っ張っているらしくそれを見ても無表情であった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.142 )
   
日時: 2013/12/24 15:38
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:QnXtXe9M

草葉をかき分け、城を出る。遠くに見える城下町はまだ朝とはいえすでに活気に溢れていた。
みなが顔を輝かせ、自分の店に客を呼び込もうと声を張り上げている。

「ここから、まっすぐ行けば見えるとおりに城下に出る。あとは変なことしなければ止めない…。」
「……あぁ、道案内、感謝いたします。」
「いえ、義務だし……。」
「……?」

もう彼の役目は終わっただろうにその場を離れようとしない様子に奏美は疑問を持った。
常に投げやりとも思わせるその口調からさっさと帰るものと思っていたので素直に驚く。
奏音は特にどうも思っていないようだが、エドも同じように感じたらしく彼を見る。
しかしその次の瞬間、何かに弾かれたかのように自らの背後を見た。手にはスピアが握られている。

「物騒だ……大丈夫、軍師殿からの使いだ。」
「……。そうみたいだな。」

咎める様な口調でしゃべる兵士にエドもわびる。スピアも消えたが、警戒は解いていなかった。
小さかった人影がやがて判別できるようになり奏美は思わず息を呑んだ。

「あーアリーちゃん。久しぶりじゃん、ヘマしたの?」
「言う事きついね。まあヘマじゃないとは言えないけどさ。」
「…お前、どうしてここに?いきなりいなくなって…俺達が心配しなかったと思っているのか?」
「……。」

エドの質問にアリーは答えなかった。ただ困ったように笑みを見せただけだった。
それでエドは理解したのだろう。一瞬表情を強張らせたが黙って頷いた。
奏音はその様子を見ても特に何も感じないのか、はたまたなにかをフル稼働させているのか黙ったまま。
両者の表情を見比べている。

「彼は言いたくないようなのでこちらから説明します。カメリアを見限った。」
「えっ……。」
「今や同盟をしていますし、彼はパベーニュの方。繋がりは切れませんが……そういう事と窺っています。」
「そんな、アリー…本当?」
「……そうだね。うん、僕はカメリアを裏切った。そう……。」

アリーの返事を聞き、奏美は愕然とした。出身国を離れ、且つ裏切った。
それを目の前で、しかも当事者から聞くこととなるとは思ってもいなかったことだからだ。
あまりの驚きに彼の後ろに控えている兵士が満足げに頷いた事にも気付かなかった。

「じゃ、じゃあトリクシーは?トリクシーはどうなるの?相談したの?」
「…してないよ、だってトリクシー自分の国に戻ってたじゃん。コーリーは隣国だけどわざわざ行こうとは思えないよ。
 山の上の方にあるし、空気薄いし。」
「そういう問題じゃないでしょ?分かってるの、トリクシーはアリーの事ちゃんと好きなんだ…し。
 政略結婚だから……アリーは全く想ってないかもしれないけど。でも……。」
「煩いな。」

アリーの一言で、奏美は押し黙った。自分の感情のままに言っている事に気づいてしまったためだ。
何も言い返すことが出来なくなり、ただ口を動かすだけだった。しかしでる音は母音ばかりで全く意味を成さなかった。
何より奏美を動揺させたのがアリーの声色だった。冷たく、心から軽蔑するような音だった。

「アリーちゃん、奏美も悪かったとは思うけどさーちょっとむすっとしないでよ。」
「奏音も…ミスもうるさいよ?僕がどうしてこっちにいるか分からない?何を思ってここにいるかはどう?」
「あの…。」
「…どうしてだか、教えてあげるよ。戦いたいから。それだけ。僕は戦闘狂。戦がなきゃ価値がない。」
「価値がないとか…言わないでよ。ウチにとっては……価値、あるよ。」
「でも僕自身が自分に価値を感じられなきゃ意味無いよね。政略婚しちゃったからなにが何でも生きなきゃならない。
 僕は戦う事を教えられて生きてきたのに。勝てなきゃ無価値って教えられてたのに。」
「……。」
「それに僕は戦闘狂なんだよ。戦えなきゃ。じゃあね、もう行けばいいよ。」

その言葉を合図に、アリーは連れられてきた道を戻った。
予想していなかった行動だったのか一拍遅れて彼の後ろにいた兵士が後を追う。
そして三人をここまで連れてきた兵士も同様に戻っていった。
残された三人は互いに顔を見合わせる。その顔には戸惑いや驚きが見て取る事ができた。

「なんか…反抗期?つーか思春期?オバサマには分からないわー。こうやって大きくなってくのね…。」
「姉ちゃん、そこじゃないよ…つまり、出奔でしょ?エド、いいの?」
「あいつの考えた事だ。それに…多分……人質みたいなものだと思う。」
「人質?」
「多分今回でダイアナの姐さんからのパウエルへの繋がりを知られた。実際無いに等しいから知らせなかったと思うけど
 リキルシアにはカードに出来る。なぜ知らせなかったかって。……とりあえず、もう行くぞ。」

エドは歩き始めた。予想していなかった出来事のおかげかいつもの彼が戻って来ていた。
歩いている最中は無言で、リキルシアから出る。まさかそのまま出ると思っていなかった二人は顔を見合わせた。
そして一度道から外れ、あの不自然な形の葉がある場所を探す。
程なくしてその場所は見つけられたがそこにはなんの変化も見られなかった。

「マリーはいない。仕方ない、俺達だけでパウエルだ。」

そう言うと彼は機体を出した。そして大きいほうのそれの後方に、もう一機を結びつける。
そして先頭にエドと奏音が乗り、後方に奏美が乗った。それは風に乗り空高くに舞い上がった。





「ったく…あの根性なし……。」
「えと…。」
「姫さんも…まったく物好きだ。俺らみたいなのに作らせときゃいいものを…。」
「だ、だから姫さんって言わないで……。」
「ソラだったか。じゃあそう呼ばせてもらおう。」
「は、はい。よろしくお願いします。」

ラリーからの引継ぎはあっさりしたものだった。
あの後、彼が親方に話をつけていたようで特に何も言われず仕事場へと通された。
すでに顔見知りである技術者には笑顔で迎えられ、親方の雰囲気も心なしか和やかだった。
修行中の人たちはさっさと自分の作業に消えてしまう。残ったのは想良と親方だけだ。

「さて、ソラ。あんたは箱入り過ぎて何も知らん。補助具がどうやってできているか、知らないだろう。」
「はい。」
「入れ物だけなら誰にだって作れる。現にあんたの付けているそれも本職ではないにしろ役目を果たしている。
 粗造りだけどな……一日もかけねえでつくったんだろうさ。」

彼は想良の左手を指差した。初めて来た日にレイからもらった物だ。
確かにこれは集落におりていたり付近を案内してもらっていた僅かな間に作られたものだ。

「ま、本来はもっと良いのを持ってるんだろ。」
「そんな、これだけです。」
「正直に言え。俺らのは王族に勧められるほど良い出来じゃねえ。
 さて、補助具の作り方だ。器は何でも良い。それこそ武器に宿らせようが、器から作ろうが。」
「はい。」
「器から作るのは後だ。まずは最難関で最も大事な場所。力のコントロールだ。」

そう言い彼は備え付けられている棚から何かを取り出す。そしてそれを想良の目の前に転がした。
それは荒く形を整えられたペンダントだった。

「補助具をはずせ。そしてそれを握れ。適正テストだ。」
「え?」
「二度も言わせるな!その指輪をはずせ!そしてこれを握るんだ!」

いきなり怒鳴られ想良は肩を竦ませる。親方は身分が違えど一切妥協はしない。それが分かった。
そして想良は補助具を外した。しかしそれと同時に強烈なめまいが襲い掛かる。
思わず補助具を指に戻した。すると嘘のようにめまいが消える。
今までも補助具は外した事があった。ジルの所でお湯を沸かした時だ。
しかし今のような事は起こった事はなかった。なぜこのような事が起きたのか。
全く分からなかったがはずせと言われているのでゆっくりと指から抜き取った。しかし鈍いめまいが襲ってくる。

「おい、大丈夫か?」
「あ、大丈夫です……。」
「……お前の容量が作るに値する位あるかのテストだ。握れ、そして今日はこれで終わりだ。
 だが国に帰すわけにはいかない。帰るならもう来るな。……ナタリーに話は通してある。」

親方の言葉に想良は頷いた。そしてペンダントを握る。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.143 )
   
日時: 2014/08/24 13:50
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:QnXtXe9M

握った瞬間はなんでもなかった。なぜこんなことを?――親方に質問しようと想良が振り返った瞬間、彼が叫んだ。

「ひ…ソラ!今すぐそれを離せ!!」
「え、なん」

なぜかと聞く前に、そのペンダントは急激に熱を持ち始めた。
それとは反対に想良は寒気に襲われる。思わず開いている方の手で体に触った瞬間、
自分の体がまるで氷のように冷たくなっているのが分かった。
親方が想良の手からペンダントを離そうと躍起になる。

「ソラ!とっとと手ェ開け!!」
「あ…あ……体が、動かない……!」
「どうなってやがんだ!」
「冷たい、冷たいぃ……。」
「おいおめえら!ぼさっとしてねえでこっち来やがれ!」

親方の言葉に、こっそりと様子を見に来ていた彼の弟子たちも駆け寄る。
ある者は想良の体の冷たさに驚き、またある者は彼女の手の中のペンダントの熱さに驚く。
四苦八苦しながら、どうにか弟子の一人が無理矢理想良の手をこじ開けた。
その瞬間、鈍い衝撃が想良に走る。

「うぎゃッ?!」
「ごめんよソラ!でも治せるから!」
「てめえは口開く暇があったら力入れてろ!閉じてきてるじゃねえか!」
「はいっ!」

そのあとも想良が手の感覚が分からなくなるくらいの時間、技術者たちは格闘した。
最後に親方がペンダントを抜き取り、外へ向かって投げだす。
それは地面に落ちる前に真っ白な閃光と共に破裂した。その衝撃波が、周囲の壁を細かに揺らした。
技術者は驚き、疲れ果てていた。親方も例外ではない。
想良はペンダントが抜き取られたことにより急速に体温が戻り、今は逆に熱いと感じていた。
息を切らした技術者――想良に謝った男が彼女の手を握る。
その手が離れて初めて、自分の指が折れていたこと、今まで痛みを感じていたことを悟った。

「おめえら、下がれ……。」

親方が言えば、弟子は従う。
想良に対し心配な視線を向ける者もいたが、声をかける者はいなかった。
無音の状態が続く。遠くでは子供たちの楽しそうな声が聞こえる。
冬を越すために遠くへ行く渡り鳥の、小さな囀りが聞こえる。

「おい、ソラ……。」
「はい……。」
「お前、なにもんだ……。」

親方の言葉に、想良は答えることができなかった。





上空は普段いる場所より断然涼しい。
実際、カメリアから発つときは寒いと言った方が正しかったが、パウエルへ向かう今は丁度良い心地だった。
それによって少々頭が冷え、ある程度冷静な判断も持てるようになってきたのだ。

「要するにな、アリーはある意味あいつらにとってカードになる。でもそれはこっちも同じなんだ。」
「どういう事?」
「だから、パウエルのことを話していなかったペナルティとしてアリーが連れていかれたとする。
 でも、今回のカメリアとリキルシアの関係は同盟で、対等なんだ。」
「あたし眠い。寝ていい?」
「姉ちゃん?!」
「いいけどな。…こっちがダイアナ姐さんの事を吐けば、あっちはアリーを持っていると不利になる。
 対等のはずなのに、人質と言ってもいいやつをあっちは出していないんだから。
 どんな大国と小国の間でも、人員を交換する場合は一対一っていう暗黙の了解がある。」

奏音は本当に眠ったらしい。荷物を乗せてもまだスペースが余るその大きな機体で、彼女は丸くなった。
エドはそれを見て苦笑し、奏美は姉の奔放さと大事な話を聞かない馬鹿さに呆れる。
一度寝てしまうと、無理に起こせば不機嫌になる事はとっくにわかっていた二人は、
奏音抜きで話を続けることにお互いに異論はなかった。

「リキルシアってさ、意外と恨まれていたりするんだ……。
 そこで上手くやれば、落とせるまではいかなくってもある程度損害が与えられる。
 不敗伝説は過去の物になっちゃえば、後は簡単に滅んでしまうだろう?」
「そういう事……つまり、アリーは……。」
「ま、色々問題はあるんだけど。現状が維持できて、かつパウエルでなにか有益な情報が手に入る事を祈ろう。」

突如変わった気流に顔をしかめながらエドは言った。
機械類に弱い彼は、風の強さが変わっただけでもコントロールが不可能になる事もある。
大体コツをつかんでいた奏美が後ろの機体を風に乗せ、奏音とエドが乗っている前の機体も安定させた。

「…なんで上手くいかないんだ……?」
「うーん…ウチにはちょっと分かんない。エド、これからどうするの?」
「あぁ……とりあえず、このまま飛び続けても早くて明日の昼にしかパウエルに着かない。
 だからこの先にある宿場町で今日は泊まりだ。」

エドが言うには、今日の夜はその宿場町で泊まり、明日の朝早くに出立する。
そうするとパウエルに着くのはその日の夕暮れになってしまう。
流石に夜遅くに到着するのは無礼であるし、交渉も行わなくてはいけないだろう。
従って、パウエル手前の山で野宿をもう一泊。

「ただなぁ、問題があるんだ。」
「え?」
「宿場町も、パウエル手前もならず者がそれなりにいるはずなんだ。特に山の方は軍人崩れが多くてなぁ、その、な……。」
「…ウチの事は気にしないで。もう覚悟は決めてるよ。
 大丈夫、大丈夫だから……。この世界の事、ちょっとずつ分かってきたから、ね?」
「……。」

奏美からエドの表情は見えなかった。しかし、確かな思いやりは感じていた。

「あぁ、見えてきた…奏美、お前は見えるか?
 あれが宿場町だ。人は今の時期あまりいないはずなんだが…多いな……。」
「宿場町は見えるけど、人まで見えないよ。……そろそろ、着陸の準備をした方がいいって事だね。」
「そうだな。気流は安定……していてほしいんだがなぁ。」
「あはは、大丈夫、ウチも後ろで頑張るからさ。」
「そうか。……なんでこれ、俺が思うように動いてくれないんだ……。
 実はこれが女で、俺があっている女に嫉妬してるって事…あ、これ誰かからもらったから……いや、ないか……。」

ぶつぶつとありえないことを呟くエドに、思わず奏美は吹き出してしまった。
後ろを振り返ったエドが、やっぱりあるわけないよな、と呟き気流が安定しているうちに奏音を起こしにかかった。
だが、起こされた事により不機嫌になった奏音がわざと機体を揺らす。

「ば、馬鹿!」
「姉ちゃん?!」
「寝てたかったのにー!着いてから起こせばいいじゃないかー!あぁああ!」
「揺らすな!お、落ち、やめろ馬鹿野郎ーッ!」
「エドもあんまり動かないでよ!ウチ、まだ完璧じゃあないんだよ!
 あーもう!やっぱりマリーさん待ってればよかった!こんな事になるんだったら、もおおおお!」

奏美の叫びで二人は動きを止めるが、既に遅かった。
もし、二つの機体が繋げられていなかったら奏美だけは助かっただろう。
しかし無茶苦茶に揺れる前の機体と、それを立て直そうと必死に動く後ろの機体。
繋がっているものが全く違う動きをするものだから、ついにコントロールすることができなくなった。
ガクン、と大きく揺れるとそれはもみくちゃになりながら落ちていく。

「あああああ!また、また?!」
「姉ちゃんの馬鹿ー!どうして?!なんで学習しないの!」
「いやさっきのは飲み物を零したからでー!」
「エド!」
「あーうん、あー……質量変動、やってみるか……。」

次の瞬間、荷物の質量はなくなり風に巻き上げられた。」





「すまない、連れとはぐれてしまったばっかりに……。」
「いや、いいんだよお嬢さん。礼はたっぷりしてもらったさ。」
「…それだけで、いいのか?」
「わしも年寄りだからね……。」

エドたちと別れた後、マリーは化粧を変え、いかにも田舎から出てきた商売娘のような風貌に変えた。
何人もの大人に声をかけ、夕方になりやっと引っかかったのがもう軍を引退して久しいと思える男2人のグループだった。
僅かに残る訛り、何気ない会話でのスラングからマリーは彼らの大体の出身国に目星をつけていた。
いま彼女の隣で葉巻を吸う男は、肩に掘られた刺青が元は罪人であることを物語っていた。

「あぁ、これかい?」
「あ、その……。」
「これは機密情報の漏えいで入れられたんだ。わしが他国に潜入していたときにね。
 だが、わしがこれを入れられ、拷問を受けて目をそらさせている間に本国は情報を手に入れられた。
 他人はこれを見ると罪人だと唾を吐きかけ、汚らわしいと言うが、わしには勲章なのさ。」
「そうなのか……。」
「ま、これを入れられてしまってからは本国の軍でしか働けなかったが。
 それにもう何年も前に軍からも除籍されてしまってね……今では老いぼれが死に場所を探すだけだ。」

幸いにして、マリーはまだ刺青や焼印と言った罰を受けていない。
自分には無縁だと思っていたが、エドにより死刑にされかけたことにより客観視することができるようになっていた。

「おうい、面白い物があるぞ。」

外に出ていて、夜のリキルシアを堪能してきたらしい刺青の男の連れが戻ってきた。
彼の手には小さなチップが握られている。

「なんだ、それは?わしは見た事が無い。」
「…さっそくお楽しみだったか。
 まぁいい、なんでもこれを買うとリキルシアと周辺の出来事が分かるらしい。とりあえず明日の朝の分まで買ってきた。」

刺青の男がそのチップを受け取り、画面を表示させた。
薄く青い画面が表示されたかと思うと、たくさんのニュースの見出しが並ぶ。

「おい、これは傑作じゃないか。見てみる…あ、文字は読めるかい?」
「簡単なものなら……。」
「そうか、ほら、読んでごらん。分からないのがあったら聞いてくれ。」

画面がマリーの方向に向く。男が大変気に入っていたのは次のような記事だった。
『上空で激突?――よそ見による事故か
  本日夕暮れ、宿場町近くの上空で飛行体2機が激突したと思われる。幸いにしてけが人はなかったが、
 周囲1キロに荷物が散乱する結果となった。機体に乗っていた3名はいずれも知り合い。……』

「どうだい、愉快だろう?こんな旧式のものに乗っていたら、そりゃあね。
 最新機ではなくても、もう少し新しい物を2機買えばよかったのになぁ、馬鹿な奴らだ。」
「そ、そうですね……。」
「文字、読めたかい?」
「え、えぇ……なんとなく、ニュアンスを掴むことは。」

散乱する荷物を複数個所からとった画像が流れてくる。
そして、それを回収する何人もの人々。おそらく、宿場町の人々も駆り出されたのだろう。
その中にはもちろん、エドと人見姉妹もばっちり映っていた。

(いなくてよかった……。)
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.144 )
   
日時: 2014/08/31 13:44
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:ZSjGXMiM

「ラリー…さん。」
「想良。……よかったね、ちゃんと受け入れてもらえたみたいじゃん。よかったよ。」
「……。」

親方から半ば追い出され、あれから想良はナタリーの家に行っていた。
彼女の娘や、想良がしばらくここに留まるという事を知り集まってきた子供達にいつものように
想良の持つ知識から出来る遊びをしばらく教えていた。
わいわいと楽しい時を過ごす。
ふと顔を上げた想良は遠くにラリーの姿をみとめ、年長の男子に子供を任せ駆けて行く。
しかし、声をかけたものの想良は自らの計画を話すことができなかった。

「想良ならさ、色々出来ると思うんだ。おれ、なんとなく分かってたけど想良は力を使わないで
 色々作ってるでしょ?……ほら、これとか。」
「…木彫りの……どこかに置きっぱなしで、無くしたと思ってた……。」
「キルシが想良のだって言ってた。返すときを見失っててさ、はい。……本当に凄いよ、想良……。
 使わない、と使えないの違いはあるけど。おれはここまでの物を作る事なんてできない。」

想良に木彫りの人形を握らせ、ラリーは彼女に背を向ける。
もう帰るのか、と想良は思った。計画の事はいつ話せるだろうか、そう自問したところではっとする。
ラリーが進もうとしている方向にはアリーの実験場がある。そこの所有者が、危険だからと武器を忍ばせるように言っていた。
しかし今目の前にいる男は見るからに丸腰で、且つ武器を作り出す事などできない。
脳裏にはあの不思議な出来事が浮かんでいる。溶けた防具や武器、恐怖の浮かんだ男の表情。
止めなければ、想良は口を開いた。出てきた声は叫びに近かった。

「待って、ラリーさん!」
「ん?」
「どこ行くの?そっち、集落じゃないよ!そっちは……えっと、森だよ!」
「……おれ、もう居場所無いから。適当に歩いていこうかなって。殺されるかもね、おれ。」
「そ、そんな簡単に死ぬなんて言わないでよ!」
「死ぬなんて言ってないよ、想良。ただ単におれは力が使えないから死ぬ確率が高いかなって意味だから。
 ……おかしいよね?おれ、生きたくって人殺した筈なのに…戦に行きたくないから…技術者……。」
「ラリーさん?」
「防衛術だけでも……技術者の家系で良かったって…なのに、キルシたち……あはは、もう、申し訳……。」

ラリーはその場に崩れ落ちた。ただ虚ろに笑っている。
想良は彼に近づくが、ラリーはぶつぶつともうこの世にいない人物への謝罪を繰り返していた。
それは特攻紛いの自殺をしたと伝えられている両親、自分が戦場で殺した名も知らない敵、
そして彼が本格的に技術者の修行を始めたために兵役から外れ、代わりに兵となり死んでいった集落の人間。
もう届く事のない言葉を一心に呟いていた。

「……ラリーさん。」
「…本当に……。……おれが、…。」
「もし、ラリーさんが戦に行って死のうと……絶対に、今の状況は変わらない。」
「……やめて、おれは……。お…上、……勝て……けない。」
「ねぇ。ラリーさんに一個、質問していいかなぁ?」
「……。」

ラリーは口を動かすのをやめた。顔こそ上げないがそれは了解の意だと見て想良は喋る。

「戦で…死ぬことは無くても、怪我する人は沢山いるでしょ。薬飲んだり手術して治るような人は別として。
 要するに……その、腕を切られたりとか、一生物の怪我をした人はどうなるの?」
「……よっぽど重要だったり器用な人じゃない限り、殺されるよ。だって、五体満足の状態で訓練受けるじゃん?
 腕とか、足とか…無くなればそれが無駄になるって言っても過言じゃない。」
「ラリーさんは、そういうの、どう思う?」
「せっかく…生きて帰ってきたんだから、殺すのはなぁって思うけど……。」
「じゃあ、そういう人たちを生かせるように…ならない?」
「…想良?」

ラリーは顔を上げる。想良が何をいいたいのか分からないようだった。

「つまり、義手とか義足をラリーさんが作るの。ラリーさん、力が無いって言ってるけど……。
 その、補助具が作れないって言ってるけど、義手とかはその人を補助する道具だと思う。」
「……。」
「補助具が人を殺すんだったら、補助をする道具で人を少しでも生かせるようになれればいいって私は思う。
 ラリーさんが…嫌じゃなかったら……その、一緒に。」

そこで想良は言葉を切った。これ以上何を言えばいいか分からなかったからだ。
彼女がジルと出会ってから頭の中にあった計画については話せた。

「……私はラリーさんとやれたらなぁ、って思う。でも、その……ラリーさんがやりたくないんだったら強制は
 できないから。あの、答え聞かせてほしいな…。」
「……ごめん。」
「……。」
「ごめん、今すぐにっていうのは…。その、そういうのやれたら……嬉しいよ。
 でも…おれなんかにっていう気持ちもあって…。」
「…そうだよね。」
「想良が…そういうの言ってくれたのは嬉しいよ。でも……その、しばらく考えさせて欲しいんだ…。
 一人で、満足するまで…。」
「うん。待ってるよ。
 私はしばらくの間ナタリーさんの家にいるから、よろしくね!えっと…ラリーさんは……。」
「おれは…集落にはしばらくいたくないからこの森のところにいる。
 大丈夫、技術者が材料を集めるための小屋があるから、そこにいる。」

そう言い残しラリーは森の中に入っていった。彼は実験小屋がある方向へは進まず、少し逸れた方へ進んだ。
想良はラリーの姿が消えた方向をいつまでも見ていた。やがて、任せていた男子が小さな子たちが
手に負えなくなってきたと半泣きで走ってきたので彼女もそれに続いた。

ラリーは想良の提案に希望を持った目をしていたのを彼女は知っている。
次に彼に会うときは計画を進められるという事も分かっていた。
だから彼女は頭の中で設計図を組み立てていて、その日を心待ちにする事になる。





「……また、沼か?!」

既に空は真っ暗になっている。気温もめっきり下がり、指先や足先の感覚が消えていく。
数時間前に葬った同僚の血はぬぐえず、それどころか新たに汚れが増えていく始末だ。
腕や顔に付いたものは既に黒く変色し、たまにパリリととれていく。
足の方はただでさえ寒いのに、沼や川を渡るものだから更に体温が奪われていく。
もう少し行動を強制するにも柔軟性が欲しいとジョナサンは考えるが、
それが果たされることはない。

「はぁ…はぁ……。あれは……。」
「なんだお前ェ?!」
「どこから来やがったや!」
「沼から。……通していただけますか?」

たき火を囲み、ありったけの布を体に巻いた男たちがジョナサンに気付き声をかけた。
男たちは起きている二人も寝ている三人も皆、大半が既に白髪になり、目は落ちくぼんでいた。
『沼から』という言葉は初めは信用していなかったようだが、
彼の足にまとわりつくぬめった植物を見てそれが本当だと悟ったらしい。
こんな寒い季節に気でも狂ったのでは、という目をしているのが
たき火の火というわずかな明かりで表情を見ることはかなわなくても、ジョナサンには理解できた。

「なぁ、おめえさんよ?」
「なんだ。」
「見た所ずいぶんな距離を歩いてきたみたいじゃねえか。少し、休んでいったらどうだい?」

そう言うと、男たちは腰を動かしジョナサンが火に当たれるようスペースを作った。
意識を取り戻し歩き続けてから、初めて出会った友好的な態度の人たちだった。
薬も効いていないのか、それとも夜だから休めと言うのか。
ジョナサンの思う通りの行動が、ある程度できるようになっていた。

「いいのか?」
「なーに、その様子じゃあまだ歩いていくんだろ?
 それに何人にも襲われているみたいじゃねえか。安心しろ、俺達は襲わねえ。」
「わんじら、ちょっと前の戦争ではぁ、ぜーんぶねくしたのは。」
「ちょっとって言うけど、もう10年も前だけどな。
 …ま、初めのころは野盗もやったりしたが、新しくお仲間を作るだけでね。やめちまった。」
「そうなのですか……。」

男たちはそれぞれ数枚、自らが纏っていた布をジョナサンに渡した。
平気だと突っ返そうとしたが、また歩き出す時に返してくれればいいと彼らは譲らなかった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.145 )
   
日時: 2014/08/31 13:45
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:ZSjGXMiM

「んでは、なぁしてお前ェさん、急いでるのは?」
「えっと…。」
「馬鹿この!…無理して言う事でないからな。」

リーダー格なのだろう、一番年長に見えるケイと呼ばれている男が訛りの強いファルバを小突いた。
それでもファルバは愉快そうに笑い、ジョナサンの事を聞きたがった。

「やる事があるのです。具体的な事は言えません。」
「そうかい。そりゃ、そんだろうな。」
「途中……ついさっきなんですが……同郷の者も殺めました。」
「そいつが裏切ったのか?」
「……。」
「ん?」

黙り込んだジョナサンをファルバが覗き込む。
本当は真実を話したかった。自分が今、誰かに行動を支配されている事。
それよりも生い立ち、それと犯してきた罪と認識できることを洗いざらい話してみたくなった。
だが、それは操り糸の先にいる人物が許してくれないようだ。
パクパクと、音を伴わず口だけが動く。

「ま、殺し……しかも同郷で信頼を置いていた奴なら、こうなるはな。ファルバ、この話は終わりだ。」
「いや、そういうものでは……。」
「話すと楽になる事もあるもんだけど?ケイ、あんたは選択を奪うな。」
「カボ。」

今まで眠っていた男が身を起こしていた。
カボと呼ばれた男は、周りの男たちと比べるとまだ健康そうに見えた。
やつれてはいるものの、まだ身は引き締まっているし、希望が表情に残っている。

「俺もな、ついこの間故郷が死んだ。やっと安心して暮らせると思った瞬間にな。」
「おい、言わなくても…。」
「だから話すと楽になるって言っただろ?今おれは楽になりたいんだ、ケイ。
 あぁ、見張りは変わる。ケイ、寝てくれ。」
「分かったよ。」

ケイは横になった。しかし眠るつもりはないらしい。
目は閉じているものの、息遣いはわざとらしいし、なにより体が緊張していた。
その様子を見て、ジョナサンは彼はもう長くないだろうことを知った。
年を重ねているのもあるが、後悔や憤りなどで神経をすり減らし過ぎてしまっている。
今もまた、眠ればいいのに彼はそれをしない。おそらく、彼は優しすぎたのだろう。

「革命に成功したんだ。うかれてどんちゃん騒ぎ、でも気付いちまった。これじゃあ駄目だって。
 だから周辺国を見て回る事にした。こんな老い先短い爺がやれることなんてたかが知れているからね。」
「はぁ……。」
「どこも戦争の気配はない。でも、市場やスラムなんかをまわって色々な話を聞いた。
 俺達には疑うって事が足りないって分かった。
 領主を信頼できなくなった分、他のやつらを信じたくなっちまってたんだ。」
「疑うこと……。」
「で、数週間ぶりに戻ったら故郷はなくなってた。よく分からない動物が腸をすすっていた。
 初めは餌が足りなくって奴らが下りてきたんだと思ったよ。でも奴らの背には生々しい傷跡があった。」
「つまり、誰かがあなたの故郷に放した…?」
「だろうな。縄が括り付けてあったから。俺はな、それなりに腕に自信があった。
 老いぼれても、衰えちゃいないと思って、一匹の腹を裂いてやった。何が出てきたと思う?」

ジョナサンは言葉に詰まった。入っているものなど分かり切っていた。
ファルバが小さくそれ以上は止めるように声をかけたようだが、カボは首を振った。
ジョナサンが答えないとみると、カボは口を開いた。

「孫たちがいた。」
「え……。」
「カボ、もうやめようや…。そんなん、兄さんも……。」
「まだ識別できたのさ。中身があふれ出て、ドウとそいつが倒れた瞬間、他の奴らが集まってきた。
 俺は逃げ出したよ…まだ、生き残りがいたかもしれないってのに……。」
「……。」
「さぁ、次は兄さんの番だ。言えば楽になるってもんだよ。
 声に出したくなければ、口だけ動かせばいい。それだけでも、なんか違うもんだ。」

彼は戸惑った。カボはまだ傷が癒えきっていない。だからこそ人に話すのだ。
肯定されるでもなく、否定されるでもない。ただ話すだけで、自分の中で区切りをつける。
自分はできるのだろうか?
ジョナサンはカボを見て、それからファルバを見た。ケイを見て、もう一度カボを見た。
カボは自分の最もつらいであろう出来事を全て話した。
自分がそれに答えないのは無礼に当たるだろう。そう判断し、ジョナサンは音を伴わせずに口を動かした。

「そうかい。……すごいなぁ、兄さん。」





「すいません、本当に……。」
「はははは、しっかし落ちてくるとはなぁ。荷物、全部集まった?」
「エド、どう?」
「たぶん大丈夫だろう。気付かないって事は、無くても問題ないんだろうし。」

もう日が沈み、すっかり暗くなったところで散乱した荷物の回収作業は終わった。
エドと奏美は最後まで手伝ってくれた人に対し頭を下げていた。
宿場町――公領という、どの国も治めないいわゆる中立的な地域にある所まで、荷物を片手に戻ってきた。
ある程度移動手段が確立された現在、このような宿場町は寂れてしまう。
ここも例外ではなく、普段なら数組いればいい方らしいのに、今はエド達を合わせ12組がいた。
久しぶりの稼ぎ時に、ここを管理する一家は忙しく動き回っていた。

「お帰りになられましたか。」

戻ってきたエドたちを目ざとく見つけた妻が、彼らに対し飲み物を差し出す。
本当ならば追い払いたいところだが、今は疲れていた。
エドが懐から出した硬貨を妻に握らせ、彼女が持ってきた飲み物を全て受け取る。
全部なのか、と目で訴える妻に対し頷いた。
勘定をしようと手の中の硬貨を見た彼女は、途端に真っ青になって申し訳なさそうにエドに話しかけた。

「お、大きすぎます…お釣りが、その……。」
「じゃあ、ここにいる奴らの飯に一品何かつけてくれないか?
 疲れているのに余計な手間をかけさせてしまったんだ。残ったら、お前たちが好きに使ってくれ。」

妻は途端に上機嫌になり、足早に自分たちの暮らす家へと入っていった。
この地域の物価では、一品どころかもう一食分つけられるくらいの大金だった。
残りを好きにして良いと言うのだから、それはもう嬉しかったことだろう。

「はい。最後までありがとう。」
「どうも。……どこに行くんだい?」
「そういうの、探らない約束だろ?」
「ははっ、知ってるよ。
 お嬢ちゃん、大丈夫かい?流石に疲れたんじゃないか、旅慣れしていないみたいだし。」
「あはは、ちょっと予想外なことがあったんで。大丈夫です。」
「あぁ、お姉さんか。」
「…はい。」

エドから受け取った飲み物をのどを鳴らしながら男は飲み込んだ。
空になった容器をほい、と投げるとそれは空中で消えた。ここでは、全てのごみはこのように消えていく。
少しでも手伝ってくれた人に飲み物を配りながら、エドと奏美はとある建物を目指していた。
その建物に近づけば近づくほどヒステリックになりかけている女の声と、
落ち着いた響きを持ちながらも、怒りがにじみ出て恐ろしい声色になっている男の声が聞こえた。

「すごいなぁ、あんたのお姉さん。」
「は…はは……。」
「あの医者にこんなにケチ付けられるなんて。
 ……じゃ、失礼させてもらうよ。飯の時にでも話せたら話そうな、ははは。」

男が自分が泊まっている建物の中へと消えた。
その男が部屋に入り、くつろぎ始めたのだろう。部屋の明かりがついてしばらくすると、
どちらからともなくエドと奏美は顔を見合わせた。

「じゃあ、行くか?」
「そうだね……。」

そうして、奏音の叫び声が聞こえる家の扉を開いた。
メンテ

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