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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Strange Friends ( No.16 )
   
日時: 2011/10/22 09:36
名前: あづま ID:/ne/WJtI

冷蔵庫に買ってきたものをつめ、ルーターの衣類のタグを切り。
コスプレのは洗濯しても平気だと預かった時聞いていたのでそのまま洗濯機にぶち込む。
布団も敷き、ルーターの具合が良くなったら移ってもらうことにしよう。
さて、仕事も今は少ないのでやる事がない。
本はもう読み終わってしまったし奏音は時期から推測すると仕事のほうが修羅場だろうから話せない。
どうしたものかと考えていると居間から大きな音とルーターのうめき声が聞こえた。

「目、覚め…サクソル!」
「ただいま。特に異常は無かったみたいでね、帰ってきたよ。」
「そうか…異常無い事は良いことだがルーターの上に乗るな。戻したらどうするんだ。」
「戻すって何をだい?…そういえば顔色悪いね。治そうか?」

サクソルの問いにルーターは目を開けるがすぐに閉じてしまう。
それにムカついたのかサクソルは思いっきりルーターの頬を叩く。

「返事ィ!!」
「ぎゃっ…すいませ……。」
「華凛、これはいったいどうなってるんだい?こいつがこんなにダメージ受ける事ってないんだけど。」
「車だよ、車。それに乗ってこの状況。」
「あぁ、あのチンタラ遅いやつ。でも奏音のは華凛と比べて音静かだよね。
 チッ…言いたいことあるから特別に治してあげるよ全く。やりたくないけど。」
「いや、お前がルーターに乗った…なんでもない。」

サクソルはルーターの腹を思い切り踏み付けて彼から降り(ルーターがものすごく苦しそうだ)、彼の横に立つ。
そして自分の指を強く噛み、それをルーターの口に思い切り入れる。

「おい…そんな事したらよけい具合悪くなるんじゃないか?吐かない?」
「大丈夫。こっからも見たい?止めないけどね。」
「え?なんかまずいなら出て行くけど。」
「じゃ、お願いしようかな。終わったら呼ぶからさ。」





「確かに顔色はよくなってるが…。」
「でしょ?剣だけのこいつとは違うからね。」

自慢げにサクソルが私を見てくる。
確かにルーターの顔色は良くなっており今は座っている。だが、

「なんか怪我してるように見えるのは私の気のせいか。」
「気のせいじゃないですよ。ぶたれましたから。」
「お前いいのかそれで。」
「だって俺サクソル様より地位低いじゃないですか。逆らえないですよ。」
「へー、君でも分かるんだね。意外だなぁ、説明しなきゃいけないかと思ってたよ。」
「サクソルそれ失礼じゃないか。」
「いいんですよ、俺がバカなだけなんで。」
「勉強してね。で、ルーター。君に話す事だけどマスターの世界に戻れるよ。執行隊と話してきた。」
「本当ですか?!」
「良かったじゃないか。」
「はい!」

自分のもといた世界に戻れるということを聞いてルーターは嬉しそうにした。
そりゃそうだ、自分の故郷に帰れるというのと同じ感じだろう。

「うん。ただ力を取り戻したらだってさ。」
「えっじゃ、え?」
「僕は君に力を貸すのは絶対に嫌だからね。どうする?」
「サクソル…貸してやれよ。お前なんか冷たいぞ。」
「嫌だね。で、どうする?スウィノーかケナベル呼ぶ?」
「どちらの方も問題があるじゃないですかぁ…。」
「じゃあいらない?分かった、自力で頑張ってね。」

そしてサクソルは会話を打ち切ってしまった。
このままだとルーターは一生戻れないかもしれない。
事実今は帰れるかもしれないと言われた時と比べ明らかに落ち込んでいるのが分かる。

「サクソル、そのスウィノーとケナベルっていうのはお前の直属なんだよな?そんなに問題あるのか?」
「そうだと思うよ。僕は特にそうは思ってないけどこいつが言うんだし間違ってないんじゃないかな。」
「お前上司なのに無責任だな…。ルーター、そうなのか?」
「俺はそう感じてますよ。スウィノー様はおっとりしてておとなしい方ですけど干渉したがらないですから。
 多分こっちの世界まで来ないと思います。あと豹変するんで。ケナベル様は…もう……来たら最後食べられちゃいますよ。」
「あぁ、ケナベルねぇ…。草食獣に化けて油断させてシマウマ食べた事あるし…。あ、あと戦争中で行方不明者とか多いからって
 家族食べた事もあったなぁ。」
「正確には集落一つ食い荒らしたんですよ。で、十人近く生き残ったけど小さい子供だけだったんですぐ死んでしまって。
 その子供の中で生き残ったのは一人だけでしたし。」
「それ…やばくないか?」
「大丈夫だよ。シマウマのほうは周りにシマウマ以外何もいなかったし。食い荒らしたほうは何もいえないけど。
 それにケナベルにはちゃんとバツあげたし。それよりなんでお前知ってるの?」
「一応そこの世界を監視するよう言われてましたから。生き残った彼も最後は戦争で死にましたからね…。
 最後まで報われなかったというか知らなさ過ぎたんですよ。もう少し周りが見えれば違ったかもしれないです。」
「そこまで聞いていないよ。本当、馬鹿だね君。」

サクソルはそう言いリモコンでテレビをつける。
チャンネルを回すがどうやら今日はスポーツ実況でアニメが休みらしい。
舌打ちしてまた明日と言って消えてしまった。

「サクソル様っていつもこんな感じですか?」
「ん、多分そうだな。…予定表見ると明日もスポーツで朝夕アニメ無いぞ。来るなら月曜か?」
「多分一回来ると思いますよ。明日アニメが無いのは知らないんでしょうし。」
「そうか…。でもあいつの能力って楽だよな、自分が行きたい時間にいけるみたいだし欲しいな。
 過去も未来も行き来できるんだろうし…一日が二十四時間って訳じゃないんだろうなぁ。あ、はいドリル。」
「ありがとうございます。でも俺は便利だとは思いますがほしいとは思いませんね。
 主の世界では時間なんて無いに等しいけれどこちらはあるじゃないですか。あるならそれを体験したいですから。」
「ま、持ってないからこそ欲しいって思うんだけどな。飯食えるか?」
「今日はいいです…。具合は良くなったとはいえまだちょっと……。」
「そうか。じゃ、向こうの部屋に布団敷いといたからそこで寝ておけ。」
「分かりました。お先失礼します。」
「はいはい。」

ルーターが寝室に消えたのを見て自分の夕食の調理に取り掛かる。
といっても自分しか食べないのでありあわせだが。
明日はおそらくアニメが無いのでサクソルは来ても短時間だろう。

そういえば日本語が話せる理由を考えておかなければいけない。
無難にハーフ…いや、だったらそれを私が把握していないのはおかしいと思われるだろう。
ルーターは幼少時に日本人に教わり、十五で留学してきたという設定になっている。
だから近所に日本人がいました、というのはアウトだ。
食べながら考えるがそもそも私自身外国人と付き合う事が無いに等しいので何も思いつかない。
最近テレビでは日本語を喋っている外国人を見ることが多いがそれもなぜだかなんて覚えていない。
どうしたものか……。
メンテ
Re: Strange Friends ( No.17 )
   
日時: 2011/11/05 06:01
名前: あづま ID:5FlPEQFo

昨日は寝るまでサクソルが日本語を話せる理由を考えていたが結局思いつかなかった。
彼が出歩く事なんて予想していなかったし、例え出歩いたとしてもまさか私達と遭遇するなんて思ってもいなかった。
いや…奏音が連れ出さなかったら会う事は無かったか。
あいつは才能はあるのは認めるが奔放すぎて全てを台無しにしているんだよな…。
それを上手く舵を取れる編集長さんと津岸さんとあとレオンもか、尊敬しなくちゃなぁ。

寝返りを打つと隣の布団にはもうルーターがいないことに気づいた。
特に用事は無いが一応着替える。
居間に行くと彼はニュースを見ていてたまに相槌をうっている。
私が入ってきた事に気づいた彼は一言挨拶しまたテレビへ視線を戻した。
テーブルを見るとドリルが置いてあり手に取ると全て終わっていた。

「すごいじゃないか。もう終わらせたのか?」
「え、っはい、終わりましたよ。結構簡単でしたね。文字は決まった音を表してるんで覚えやすかったですよ。」
「そうなのか?考えた事なかったな。ま、ひらがなカタカナだし終わるか。」
「俺的にはですけどね。あと結構前にやっていた映画だと字が出てたんでそれも勉強になりましたよ。
 それにでていないのも前後のでなんとなく推測できましたし。」
「字幕か…。朝飯はパンがあるからそれでいいとしてサクソルが日本語を話せる理由お前も考えてくれないか?」
「いいですけど…でもそれってそんなに重要なんですか?」
「沼川に疑問もたれただろ。あいつ意外としつこいから絶対月曜に聞かれる。間違いない。」
「へぇ…。大事に思ってるんですね、沼川さんのこと。」
「大事…?同僚だしな。なんだかんだで世話になることも多いし、大事かな。じゃ、飯の準備するから。」

パンを取り出し消費期限を確認。三日前なので大丈夫だ。
冷蔵庫から適当に使えそうなものを取り出し、皿を二枚取り出しテーブルに置く。
それから飲みものとコップを出して準備は終了。
席について食べ始める。

「でも勝手に決めていたら怒られませんか?あなたは不満を言われる程度かもしれませんけど俺はなにかしら
 攻撃されると思うんですけど。」
「あー…そこはしないように私が言う。で、なにかいい案は無いか?折角の日曜をコレに使うのは不満だが仕方ない。」
「そうですね…俺と同じで教わっていた、とすればいいんじゃないですか?」
「いや、多分ダメだ。お前とサクソル、それと直接関わりは無いがレオンという外国人が短期間で私の周りに集まった。
 しかも全員が日本語を完璧といっていいくらいに喋れるんだぞ。レオンはこっちに来る前に勉強したと奏音が言っていた。
 でも残り二人、どちらも私の家にいる奴の理由が同じって私が考え過ぎなのかもしれないが変なんだよ。」
「一々気にしますかねー?」





朝食を食べつつサクソルが日本語を話せる理由を考えるがいいものが思いつかない。
ルーターは別に気にしなくてもいいのではと言うがそれではダメなのだろう。
本人が来てくれれば一番いいのだがなぜか来てくれない。
アニメの時間…といっても今日はスポーツだがそれはとっくに過ぎている。
昨日の会話が聞かれていて今日はもう来ないつもりだろうか。
時計を見ればもう一時間ほどこの問題について話し合っている。もう答えも出尽くしてしまっただろう。

「なぁ、お前がサクソルを呼べたりしないのか?」
「俺が?無理じゃないですかね。」
「んじゃさ、思いっきり不祥事を起こすとかは?そうすれば絶対でてくると思うんだが。」
「不祥事って何起こすんですか。その前に俺が絶対に被害受けますよそれ。」
「だからそこは言ってやるから。無理?」
「無理ですよ。不祥事って……。」
「やっぱダメか。あー…サクソル、遊園地行こう!楽しいから。」

テレビの前が歪む。

「それで出て来るん」
「出て来たよ?」
「あ、サクソル。なんだ、今日はもう来ないと思ってたのに。」
「遊園地は一回コマーシャル見たしね。ルーター、苦しめ。」
「いやすみませんまさかでっいたあぁあぁぁ…!」
「あ、止めろって。私もお前に聞きたいことがあったし。」
「そうなのかい?まぁ遊園地に連れて行ってくれるなら答えられる範囲でよければ答えるよ。」
「遅いですよ…。」
「今は僕と、華凛が話してるの。分かるかい?お前は黙ってろ、命令だ。」
「いや…ルーターごめん。いやな、お前が日本語を喋れる理由をどうしようかと思って。」
「理由なんて必要なくない?」
「いやいるんだよ。沼川に疑問持たれたから。あいつは自分が納得するまでやるタイプだからな。」
「そう。君に迷惑がかかるんなら仕方ないね。じゃさ、その人の家に行けるかい?」
「行けない事も無いけど…いるか分からないぞ。」
「じゃ明日でいいや、家によびなよ。解決して見せるから。じゃ、遊園地行こう。
 …ルーター、さっさと着替えたら?お前は人間と変わりないんだから時間かかるし。」

サクソルは彼を蹴飛ばしつつ自分の着替えをこちらに飛ばす。
ルーターはけられた背中をさすりながら自分の着替えを取りに寝室に行った。
私は皿を下げ洗ってから伏せる。そして洗面所に行き軽く化粧をする。
こんな日はしなくてもいい気がするが一度社会にでて化粧をしてしまうと外出するのにしていないのはなんだか落ち着かない。
化粧を終え戻ってくればルーターが雑誌で頭を叩かれていた。
ただその雑誌は宙に浮いておりサクソルは一切触れておらずむしろ彼自身は蹴りを入れている。

「やめろやめろ。ほら、もう出発するから。」
「ちぇ…ほらさっさと立ってよ。お前のせいで遅れたら色々剥奪してやる。」
「それは勘弁してください…。」
「だからもう…なんでこうつっかかるんだ?」
「あ、そういえば車で行くんですか?」
「いや、電車だ。酔い難いと思うけど一応飲んでおくか?」
「ないよりはいいですよね…多分。」

薬箱から酔い止めを出しルーターに渡す。
そしてサクソルの手を引きながら遊園地を目指した。





徒歩で駅までやってきた。
サクソルはこの世界の服を着るとある程度の能力が失われるのか時間移動せずしぶしぶついて来た。
といっても最初の五分で歩くのを嫌がりルーターに負ぶってもらっての移動だったが。
そして駅に着くと物珍しさからかルーターから飛び降り走り出してしまった。
電車は後二十分は来ない。しばらく遊んでいるのもいいだろうと思ったのだ。
最初は自販機を触っていたりレストランを覗いていたりとまあ視界の範囲で動いていた。
だが、反対車線の電車から降りてきた人ごみにまぎれて一度見失ってしまった。
それから必死で探したのだが見つからずアナウンスしてもらう事を考えたときに彼は帰ってきた。

「おかえり…。」
「なんなのあれ!迷子じゃないのに引っ張っていかれたんだけど!
 そもそもあの人の鞄が僕の服に引っかかっていったのが原因なのに!軽く不幸にしてやる!」
「そんな私利私欲で力使っちゃダメですよ。怒られ、ませんね…。」
「サクソル小さいから仕方ないだろ。ルーター、ちょっと捕まえてろ。迷子になられたら面倒だ。」
「はぁ?!なんでこいつに、離せ!降ろせ!命令だ!!」
「サクソルは黙れ!帰るぞ口答えするな!お前らが私の部屋で暮らす限り私がルールだ!私が正義だ!!」
「僕は暮らしてないじゃないか!夜は君の家にいないし暮らしてるのはこの無能だけでしょ。」
「あの、視線……。」
「あ。結構注目浴びたな…。で、どうする。行くのか?」
「行く!」
「あっそ。じゃ切符買ってくるから改札の近くにいろ。あとルーター、無能は否定しろ。それと薬飲め。」
「否定すると…。」

二人を改札の近くに残し切符を買いに行く。サクソルは子供料金でいいんだよな…。
まだサクソルが一方的にだがぎゃあぎゃあと言っているのを見るとなんだか関わりたくない気分になる。
まあ、サクソルが小さいという事と彼が一方的にわめいているので周りからはわがまま息子みたいに思われているんだろうが。
というか、それを切実に頼む。

「ほら、もう喚かない。切符買ったしもうすぐ電車来るから行くぞ。」
「うー…。」
「痛かった…。」
メンテ
Re: Strange Friends ( No.18 )
   
日時: 2011/11/05 06:02
名前: あづま ID:5FlPEQFo

「歩いて十五分…耐えられないよな、これ。」
「……。」
「酔い止め…飲んだよな。」
「こんなやついいから行こうよ。おいてってもいいよ。」
「……。」
「ほら、肯定も否定もしない。行こう。」
「サクソルお前薄情だな!…少し休もう。なんかほら、遊園地の中の店って結構高いから。
 だから少し腹に何か入れていこう、な?」
「僕お腹は減らないんだけど。」
「ケーキあるから行くぞ。」
「分かった!」

ルーターは電車の揺れにすら耐えられなかったらしく乗り物酔いになってしまっていた。
電車で酔う人初めて見た…。
サクソルをケーキで釣り、近くのカフェテリアに行く。
休日だが昼前なので人もまばらですぐに座れた。
座ってすぐに突っ伏してしまったルーターの頭をベシベシメニューで叩くサクソルを注意し選ぶように言う。
自分は無難にケーキセットでいいかとメニューを覗き込み決める。

「ルーター…大丈夫か?なんか食べる…のは無理そうだしなんか飲むか?」
「大丈夫じゃないです…。これは体験したくなかった……。」
「悪かったな…。」
「いえいえ…あなたに原因はありませんから。俺が弱すぎて…。」
「お前本当に剣だけなんだね。華凛、僕はコレがいい。イチゴ乗ってるやつ。」
「どれ…重!ルーター、こいつが食べ終わるまで顔あげないほういいぞ。絶対吐くから。」
「分かりました。休んでます。」

店員を呼び注文をし少し待つ。
といっても今は混んでいないので本当に待ち時間は少しだった。
もくもくと生クリームの塊にしか見えないパフェを食べるサクソルを見るとなんだかこちらが胃もたれする。
五十センチスペシャルパフェってなんだよ…と思いながら自分のセットを消費する。

「サクソルそれって多くないのか?」
「ん?まぁ僕には満腹感が無いし。それに美味しいよ。マスターの好きな味。」
「へえ…マスターとお前って嗜好が同じなのか?」
「どうだろね?考えた事なかったや。でも同じじゃないかな、僕が持って帰るものは全部喜んでくれてるし。」
「そうなのか。そういえばマスターってどんな人なんだ?」
「どんな…?男で僕が君の身長に合わせた事あったよね。あれより少し身長は高いかな。こいつより少し小さい。」

そう言ってスプーンでルーターの頭を小突く。

「若いのか?」
「そうだろうね。でもあんまり知らないなぁ。僕たちと違って成長するくらいかな、あと知ってるのは。」
「成長するのか?」
「うん。僕が初めてあった時はもう少しあどけなかった。今は君と同じくらいかな?」
「私は二十三だからそれくらいってことか。へえ……。」
「多分ね。あ、溶けてきた。」

サクソルの言う“マスター”とルーターの言う“主”同一人物。
それの像を掴もうとしたがなんか情報が少なすぎる。
特に気にする事じゃないしいいか、と食べ終わったのでスプーンを置く。
サクソルがパフェと格闘する姿を眺めつつ遊園地の予定を考える。
ルーターの乗り物酔いが酷いので揺れるのは恐らく駄目。でもベンチで待っててもらえば平気か。

「サクソル、何か乗りたい物とかあるのか?ただ行って終わりって訳じゃないだろ。」
「ああ、名前は知らないんだけどね。船のやつ。あれの先のほうに乗りたいな、ものすごく揺れてたもん。」
「あれか…ルーター、お前座って待っていられるよな?多分あれ乗ったらお前死ぬ。」
「待ってられますよ。あとそろそろ顔を上げたいんですけど。」
「別にいいよ。もう半分食べ終わっているからね。あとアイスと生クリームだけじゃないかな。」
「やめとけ。見てるだけで胃に来る。」
「そうですか。じゃあもう少し辛抱します。」

上げようとしていた頭を下げ再び突っ伏すルーター。
首痛めそうだな、と授業中居眠りばかりしていた奏音の姿勢と同じなので思う。

「頑張れ。あとサクソル、多分待ち時間が尋常じゃ無いと思うんだ。ジェットコースターとか人気なやつはな。
 日曜だから家族連れも多いだろうし二時間待ちとかもあるだろうしそれは我慢できるか?」
「大丈夫大丈夫。そこは平気、人を僕が遊ぶ時に来ないようにするから。」
「サクソル様、私利私欲は駄目ですよ。」
「だっからお前が僕に意見しないでもらえるかな。時間移動したいけどこの服だと自由に出来ないんだよ。
 一回もとの世界に戻らなきゃいけないから面倒なんだ、分からないよね?君には力が無いから。」
「はぁ…サクソル、力使わないで待つこと。洗脳だかなんだか知らないけど人の世界に関わるなら人と似たような生活をしろ。」
「ケチ…!」
「お前らの面倒見てるしケチじゃないよ、私はさ。」
「……。」
「なんか言え、ルーター。」
「……お世話になっているんで。」
「ケナベル呼ぶよ。お前なんか食われちゃえ。」





ケナベルという彼直属の人?を呼ぶと機能聞いた話で判断すれば絶対に周りに被害がでる。
そうサクソルに言い聞かせこちらに来る事は無いのだが。
そしてその問題の部下の上司は今とても不機嫌でルーターにここ十分ほど蹴りを入れている。
理由は簡単、入場券が買えていないので園内に入れないからだ。
私自身、両親が忙しく施設で寝泊りする事が多かったので遊園地に行った事など一度も無かった。
そのため並ぶだろうという事は推測できたがここまでだとは思っていなかった。

「ルーターごめん。左足平気か?」
「一応鍛えてるんで平気ですよ。どうぞお気になさらず。」
「チッ…これだからお前は嫌いなんだ。」
「いいですよ、嫌いで。でも俺はあなたについて行きますから。」
「僕に迷惑かけないならいいけどね。お前はいいとして、華凛まだ?力使えないと待つから辛いんだよ。」
「あと五人だろ、十分くらいだ。駅からここまで歩いてきたのと同じくらい。」
「分かった。」

そしてまたサクソルはルーターを蹴り始める。
というかルーターは人とかわりが無いので痛いんじゃないか、と彼の様子を伺うがそんな素振りを見せない。
むしろ笑いながらたまにかわしている位だ。剣が強いらしいので痛みには強いのかと思った。
攻撃をかわされたことにサクソルが怒りさらに力をこめて蹴りを…と思ったらフェイントで殴ろうとしたらしい。
しかしそれもルーターは受け止め笑っていた。そしてそのままサクソルを肩車している。
はじめは髪を引っ張っていたが普段より高い視線に興味が移った様でルーターの頭にあごを乗せ見渡している。


十分かからずに入場券が買え二人の元へ戻る。
肩車のおかげで人より頭が一つ分以上高いところにいるサクソルが私に気づいたらしく手を振った。

「ただいま。じゃ、入るか?それと肩車は今すぐ止めろ。」
「結構遠くまで見えるから良かったんだけどなあ。」
「でも結構目立ってますよ?それに同じように肩に乗っている子供もいますけどあきらかにサクソル様より小さいです。」
「だって君が僕を乗せたんじゃないか!」
「いいじゃないか、私もお前がやけに高いところに見えたから見つけられたんだし。でも降りないと駄目。」
「やっぱりケチ…。」





「まだ待つの?!」
「仕方ないだろ、これ結構人気らしいし。」
「最悪!」
「いやルーターの事考えろよ。あいつずっとベンチだぞ?それよりはマシ。」
「あいつは別に気にする事ないでしょ。」
「お前本当に酷くないか?」
「僕はマスターが幸せならそれでいいもん……。」

サクソルが乗りたがっていた船の列に並んで二十分。早くもイライラしだした。
表現は悪いがサンドバッグとなるルーターがいないので何にもぶつけられず見てるだけで伝わってくる。
列はまだ長いが今までの進みを考えて後三十分あればできるはずだ。
ぶつぶつ何かを呟いているサクソルをなだめつつも、長い列にため息が出る。
まだまだ遠そうだ。
メンテ
Re: Strange Friends ( No.19 )
   
日時: 2011/11/19 05:55
名前: あづま ID:zjbySp2Y

「ねぇ、僕先端に乗りたいんだけどいいかい?」
「それだと次にしか乗れないけどいいかな?」
「次?!…待つよ。今まで待ったんだからすぐだと思うし。」
「そうですか、じゃあ、ちょっとこっちに避けてね。」
「すいません…お世話かけてしまって。」
「いえいえ、お客様に楽しんでいただく事が私達の仕事ですから。」

ぶつぶつと隣で何かを言われながら三十分。やっと私達の順番がやってきた。
サクソルは目を輝かせておりそれになんだか微笑ましくなる。
前の人たちが終わり、いよいよ船のアトラクションに乗り込む。
後ろにつめていくという事でもちろん私たちは一番後ろ、サクソルが望んだ場所だ。
安全ベルトを止め、動き出すのを待つ。
徐々に揺れが大きくなり、音が風のみになっていくのを感じながら楽しんだ。





「終わったな。で、次はジェットコースターだっけ?それならルーターも大丈夫だろうから迎えにいこうか。」
「そうだね。…でも結構楽しかったなー。」
「お前絶叫系が好きなのかな。だったら多分ジェットコースター好きだよ。ただ待つからな。」
「またぁ!…でもそれだけ楽しいって事なんだよね。仕方ないや。」

そしてルーターを待たせているベンチへと向かう。その前に屋台で飲みものやお菓子を買う。高い。
そして待たせてあるベンチがある場所に近づいてきたが、そこには人だかりが出来てた。
プラスの方向の予感は当たらないくせにマイナス方向への予感は当たるものだ。
そして今、全身で嫌な予感を感じていた。
思わずはぐれるのを防ぐ為に繋いでいた手を握りしめる。
しかしサクソルには痛覚は無いのかただ普通の人だったら痛がるよ、とだけ言われた。

「あ、悪い。でさ、なんかあの人だかりからものすごい嫌なオーラがするというか関わりたくないんだが。」
「…否定はしないよ。」
「やっぱり?うわー何やってるんだ。」
「ただルーターが男の人を締め上げてる。隣で女の人がお礼言ってる。…持ち物を取られてたらしいね。」
「お前聞こえるのか?こんな人ごみの中で。」
「まあ。でも今行ったら確実に注目浴びるよ。…あ、この靴の音は係の人だね。右からこっち来てる。」

サクソルの言葉に右を向くと遠くの方にこの遊園地のユニフォームを来た男が数人こちらに向かってくるのが見えた。
靴の音、しかもあんな遠いところのをよく聞き分けられたなと感心する。
むしろ彼らにとってそれは普通なのだろうか。
係の人たちが人ごみを掻き分けて行き、そして男の人が連れられて行った。

「…しばらくは近づけないね。目立ちたくな」
「サクソル様!華凛様!ちょっと助けて!」

ルーターの大声に一気に視線がこちらに来る。
突然の事に思考が停止してしまった。先に行動したのはサクソルで、私の手を放しルーターに歩み寄る。

「お前なんで言うの?!関わりたくなかったのに!」

そういって一発、蹴りを入れるが、どうやらあまり痛くないところに当たるようにルーターが動いたらしい。
動くな!という声が響く。
この世界の常識が無いといってもいいような二人ではもう対処できないだろう。
どのみちもう視線は私にも集まっている。

「はあ…連れに何か御用でしょうか?」
「ええ、この方には引ったくりを捕まえていただいたので。」
「たまたまですよ。引ったくりが俺のほうに来て、彼がそれを捕まえられた。それだけです。
 なにも感謝されるような事じゃないですよ。」
「でも…せめてお礼を…。」
「ルーター、彼女お礼したいんだそうだ。」
「え、そんないいですよ!偶然ですし気にしないでください。」
「でも…。」
「本当にいいですよ、お気遣い無く。中身は何もとられてないですよね?」
「あ、はい!」
「良かった。でもこれからは気をつけて下さいね。毎回誰かが捕まえられるわけじゃないだろうし。」
「分かりました!でも…せめて連絡先くらい…。」
「あ…居候してて…。」
「…電話でいいならお教えしますよ?」
「分かりました、是非!」

そして女の人に連絡先を教える。彼女は携帯にそれを入れ、一言礼を言って去っていった。
だが、野次馬の目線は去ってくれずにずっと私達に絡み付いている。

「なんか…すごい見られてますね。」
「引ったくり捕まえたんだろ?そりゃ目立つ。あと私のことを様付けで呼んだのもあるんじゃないか?
 呼び捨てか、せめてさん付けにしてくれ。」
「え、でも。」
「華凛がいいって言ってるんだからいいじゃないか。ジェットコースター行こう。」
「そう、全然失礼じゃないから安心しろ。じゃ、行こうか。」

視線に耐えられなくなって、ジェットコースターの方向へ二人を引っ張っていった。





「そんなに急がなくても…息切れしてるじゃないですか。」
「そうだよ華凛。君は人間なんだしもうちょっとゆとりを持ってもいいと思うよ。」
「はぁ…、そうだな。…やっぱり、並んでる、な。」
「でもそれだけ楽しいって事でしょう?並ぼう。」
「…なんか、大人になったな。」
「でもこれで面白くなかったら絶対ここになにか一波乱巻き起こりますよ。」
「…サクソル、あまり大きなのは止めろよ。」
「そだね、死人が出ない方法で信用を失墜させるくらいにするよ。」
「止めろ…!」
「いやいいでしょ。遊びに来る人は来るだろうし自由選択だよ。」

物騒な事を言い出す小さいのを見て、どうか面白いようにと願う。
なにか起こるだろうという事を知ってしまった今、絶対に罪悪感に苦しむのは間違いない。
…しかし流石ジェットコースターと言うべきか列が長い。

「なあ、多分これ乗ったら帰らなきゃいけない。」
「えー全然乗ってないじゃないか。」
「でもさ、金も厳しいし。また今度来れるときに来よう。」
「絶対ね。」
「…やっぱり電車ですよね。」
「まぁ一時間くらいかかるけど自転車でもいけるし。ただ乗れるか?」
「練習すれば乗れるんじゃないですか?」
「確かにな。サクソルは後ろ…ギリギリ乗せられるだろうし。駄目だったら練習してもらうから。」
「いや、もう場所が分かったし時間が分かれば直接いくよ。待たないで済むし。」
「そうか。やっぱり便利だなー…。」

ゆっくりと進む列に喜んでいたサクソルだが、だんだんと口数が少なくなり二十分経ってからは完全に不機嫌だった。
時折ルーターを蹴ろうとするがそうすると防がれてしまうので今は抓ったりと地味な嫌がらせになってきた。
さすがにこれは防ぎようが無いようでルーターは無言で耐えている。
それはそれでつまらないらしく、声をあげさせようと蹴りを入れるがそれはかわされてしまっている。
それが面白くなく、また地味な嫌がらせを行う。これをずっと彼らは繰り返している。
私自身はそんな彼らの様子を観察するのが面白いので、待ち時間なんてそんなに苦にはなっていない。

「君、なんで暇じゃないの?」
「まあ、人間観察かな。意外と面白いぞ。例えばあの人は暇だと時計を何回も見てしまう人だ、とか
 骨を鳴らすのがクセになってる人とか。」
「華凛は結構人を見れるんだね。いいな、そういう人材がほしいよ。こいつみたいに剣しかない、みたいなのが多いし。
 全体を見れないと駄目だからね、僕がやっている仕事は。」
「そうか?じゃクビになったら雇ってくれ。」
「…考えとくよ、君が本気でそう思っているならね。」

そしてまたサクソルはルーターを小突き回す作業に戻った。
ルーターには痛覚が存在しているようでたまに小さな悲鳴を上げている。
そういえばテレビから出てきたときにぶん殴ったときも痛いって言っていた様な気がする。
演技だと思っていたな……。
メンテ
Re: Strange Friends ( No.20 )
   
日時: 2011/11/19 05:50
名前: あづま ID:zjbySp2Y

昼間の一番暑い今、電車の冷房が心地良い。
結局ルーターはジェットコースターでも軽く酔い、金ももう少ないので少し休んで帰路についた。
背もたれにもたれ青い顔をしているルーターと無料の求人情報誌を眺めているサクソル。

「お前が読んでも無意味だろ。姿は変えられるとはいえお前絶対働かないだろ。」
「まあね。でも見聞を広める意味ではいいじゃない。」
「いいけどさ。」

規則的に揺られ、各々考えをめぐらせる。





「……グロッキィ。じゃ、明日君が沼川を連れてくる直前に来るから。」

部屋に入り、着ていた服を脱ぎ捨てサクソルが言う。
ルーターは玄関で倒れている。一時間位したら復活するだろうか。

「分かった。でもちゃんと解決できるのか?」
「任せておくれよ。大丈夫、僕があいつに負けるほど馬鹿じゃないよ。」
「まあ…負けるとは思わないけど。」
「信頼してくれているのかな?じゃ、連れて来てね。」

そしていつも通り彼は消えた。

「さて。」

ルーターに働いてもらう為に求人情報に目を通す。
サクソルは彼のことを“剣だけ”とよく言い表しているが恐らく頭はいいはずだ。
字幕の漢字も前後の文脈から推測しているようだし理解力もある。
それにサクソルの攻撃をかわしているから恐らく運動神経もいいはずだ。
となると乗り物酔いにならないのであればわりとどの職業にも就けるのではないだろうか。
しかし、半分ほど求人誌を読み進めてからある問題に気づく。

「履歴書、どうすればいいんだ……。」





すでに空は赤く染まっている。
自分の経験から考えると家庭教師や塾の講師はアウト。
コンビニやスーパーなどの従業員ならいけそうだが、私の経験だと皆履歴書が必要だったのでアウト。
配達系は免許を持っていないし、自転車も今のところ乗れないのでアウト。
となるとガテン系になるのだろうか…。

「おはようございます…すいません寝ちゃって。」
「いや、いい。具合悪かったんだし。どうだ、治った?」
「ええ、まだちょっと重いですが。」
「そうか…。まだ本調子じゃないところ悪いが仕事についてだ。普段サクソルがいないとはいえやっぱり
 厳しくてさ。で、初めて会った時に言ったと思うが働いてもらおうと思う。」
「お世話になる身ですからね、そのつもりですよ。」
「どうも。ただ、講師とか教えるのは無理だろ?履歴書も捏造しなきゃいけないからそれが必要な職種も無理。
 となると結構きついんだよ。だからそこのパソコンあるだろ?私が仕事に行っている間にそれで探しててくれないか?
 自分で面接なり申し込んで行ってもいいし候補を挙げててくれれば私が後調べるから。」
「分かりました。で、決まったら報告すればいいんですか?」
「そうだな。まあバイトだし最初からいい給料出るわけじゃないから。じゃ、これマニュアル。漢字は…頑張ってくれ。」

ルーターにマニュアルを渡し自分は明日の事について考える。
沼川はサクソルが理由を直接教えたい、といえば来るだろうが絶対に怪しまれそうだ。
まあ、いいか。沼川だし。





会社。今日はあの上司がいないようでなんだか気分が楽だ。
ただ沼川が営業に行ってしまってずっと会えていない。
昼時には帰ってくるのかもしれないが多分、外食で済ますだろう。
席をはずし、家に電話をかける。

「…でない。もうめどがついたのか?」

十回ほどコールを続けているがルーターは一向に電話に出ない。
もう働き口のめどがついたのだろうか。
履歴書も書けないし難しいだろうと思っていたが意外と世界は広いのだろう。
そもそも自分がバイトを変えることが無かったのであまり知らないというだけだろうか。
力仕事だったら即戦力になりそうだしな…警備会社…は、色々調べられそうだな。無理か。

自分のオフィスに戻り仕事を再開させる。
沼川が帰ってくるのは早くて昼ごろだろうし、それまでずっと仕事をやっていよう。

「かーりんちゃん!」
「夕鶴さん…なんですか?」
「なんかしかめ面だねぇって思ったの。恋?」
「違いますって。ただ仕事終わらないなぁって。」
「でも華凛ちゃん最後には仕上げるじゃない。しかも締め切りの前日だし。今年から入ったとはいえ凄いじゃない。
 一寿君もね。今年の子達は凄いわ。」
「私はちゃんとやってるだけですよ。だから全然凄くないですって。沼川ですよ、凄いのは。」
「まぁた謙遜しちゃって!あ、邪魔になっちゃうわね、頑張ってねー!」

そう言い残し夕鶴さんは自分の席へと戻っていく。
彼女はこのオフィスの古参であり、皆の母のような存在である。
気さくで声が大きく恋愛の話と噂が好きで、でも仕事はもちろん育児もちゃんとやっているしああいう人になりたい。
沼川の帰りを待ちつつ仕事をやるが昼になっても帰ってこない。
結構遠くまで営業しているのか、粘っているのか……。あいつは肝心なときにいないような気がする。
昼に帰ってこないなら夕方まで来ないはずなのでそれまでに少しでも多く仕事を済ませようと集中させた。



(早く来いよ…もう三時だぞ…。)

意識を仕事に向けてからもうすぐ三時間。沼川は帰ってこない。
夕鶴さんが子供が帰ってくる時間だから〜と会社を出たのが二時半。多分七時頃また来るはずだ。
よっぽど交渉が上手くいっていないのだろうか?
しかしそのような心配も無用だったらしく声高らかに沼川は帰ってきた。

「T社から契約とって来ましたー!とりあえず1年間ですけど…あれ、課長は?」
「沼川君、今日は会議よ…。」
「でしたっけ。じゃ、デスクに置けばいっか。それと、お土産ですー!」

沼川がそういうと仕事に眉を顰めていた人たちも彼の周りに集まる。
彼らの後ろから私も覗くとそれはあの店のケーキで高くて手を出せなかった種類まである。

「あ、これ竹谷のお気に入りの店のなんですよ?あいつが言うんだし味は保障しますから。どーぞ!」
「おい!別に私のことは言わなくってもいいじゃないか!」
「いーじゃん、お気に入りなんでしょ?ってて、引っ張るなよ〜。」

私達の様子を見て他の人たちは面白そうに笑う…口笛をなぜ吹く。
沼川を引っ張り人もあまり通らないところに来る。…なんかレオンを思い出すな。

「ってーな、もう。なに?」
「…サクソルがさ、どうして日本語喋れるのかって言ってたよな。」
「あ、それ。別にこっちまで来なくっても。夕鶴さんいないし噂広がらないじゃん。」
「そうだけどさ…なんか、サクソルが自分で話したいって言っててさ。今日帰り来てくれないか?」
「ん?まーいいけど。」
「よかった。いつごろなら帰れるか?私はもう今日のノルマは終わってるんだけど。」
「あー…定時には。」
「分かった。絶対だぞ?」

そして二人でオフィスに戻った。
メンテ

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