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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.46 )
   
日時: 2012/01/31 09:34
名前: あづま ID:ZSjGXMiM

「痛い…ヒリヒリする…。」
「自業自得だよ。女っぽいって言わないほういいって言われてたのに奏音さん言っちゃうし。
 それにあれは言っちゃダメだよ。図星だったら困るじゃん。」
「想良、お前も…?」

三人は氷の山から奏音をエドとともに救出してから外に出て早速補助具の練習をし始めた。
エド曰くしっかりと目的の物を想像できればちゃんとそれが現れるらしい。
そしてしれらを繰り返すうちに体が慣れ補助具無しでも出来るようになるそうだ。
まずナイフくらい出せれば後は応用でいいらしいので三人はそれを目指しているがなかなか上手くいかない。
まず、形を保っていることができなかった。
作り出した直後はそれこそ本物と思えるようなものが出せるのだがそこで気を抜いてしまうとたちまちそれは消えてしまう。
仮に形が保てていたとしても今度は切れるものではなかったりする。

「なんかもう、いいや。お荷物でいい。」
「姉ちゃん!」

奏音はそういって草原に寝転がった。
奏美も一度それをとがめるが、彼女も想良ももう精神的に限界に近かった。

「はー…。まさかこんなに辛いとは思わなかった。」
「うん、数学とどっこいどっこいかな。」
「やめてー!ここで勉強の話しないで!!」
「姉ちゃんもうとっくに中学終わってるでしょうが!」
「睡眠学習だから実質あたし小卒なの。ってぇかあれだ、こう死神の鎌とか中二チックな……。」

奏音はそう言って素振りをする。
すると突然悲鳴を上げて丘を転げ落ちていった。
想良と奏美は慌てて後を追うとそこには驚くべき光景が広がっていた。

「奏音さん…それ、鎌?」
「うん、見たら分かるよ!だからお願いあの二人呼んで!切れちゃってる、あたしの腕血まみれ!」
「すご…じゃあウチ呼んでくるから想良はなんか適当に止血してて。」
「私止血の仕方なんて知らないんだけ、奏美ー!」
「…ばかー。想良ちゃん、とりあえずなんか肩縛ってくれない?直接はダメだ…二の腕からいっちゃったから…。」
「はい…あ、帯あそこに置いてきちゃった。」
「じゃあもう技!なんか技かけて!」
「……。」

肩だけ一転集中でかける技なんて知らない、と想良は思った。
しかし奏音の腕からはどんどんと血が流れていき、彼女の顔もそれと比例して青くなっていく。


「すいませーん…。」
「奏美か!どうした?」

家に行き声を出せばエドが返事をする。
彼は一階でなにやら手紙を読んでいたようでそれに目を落としながら返事をした。

「姉ちゃんがなんか怪我しちゃって結構血も出てて…。」
「マジ?じゃあ手当てしなければな。どこだ?」
「あ、こっちです。すいませんお世話かけちゃって。」

エドは手紙を服のポケットに入れ奏美の後をついて行った。
程なくして丘の下について二人を発見する。
あまりの出血量に一度エドは顔をしかめるがすぐに奏音の腕に手を当てる。

「痛い!」
「想良、ちょっと彼女を離して。これから治療するから。奏音、我慢してくれ。」
「ぐあああああああ!」

笑顔で我慢するように言ってからエドは思い切り奏音の腕を握った。
傷口を直接触られ強い力で握られた痛みで奏音は絶叫する。
十秒ほど奏音は暴れたがやがて荒い息で体を起こす。

「よし、治ったな。でもなんでこんな怪我をしたんだ?」
「う、きぼちわる…っ!」
「こんなに血を流したんだしそれも当たり前だな。少し休むべきではないかと思うんだが…。」
「そうだね、休んだほうがいいと思うよ。私と奏美はまだやってようと思うけど。」
「そっか、じゃあ休んでるよ…。お荷物になってるね。」

奏音はふらふらとした足取りで家のほうに戻っていった。
そして彼女が入ったのを見届けた後、エドが口を開く。

「あれは落ちてできた傷ではないな?」
「うん、奏音さん鎌出して落ちたんだよ。多分その時切れちゃったんじゃないかな。」
「鎌?」
「そう。なんか中二病って言う…まあそういう感じのを出したいみたいな事言って姉ちゃん落ちたもんね。」
「でも鎌奏美が呼びに言っている間に消えちゃったんだけど。」
「うーん…奏音か。とりあえず俺は様子見て必要なら薬でも出してくるよ。」

そう言い、エドは二人から離れていった。
右手に残る奏音の血を見、くらっとしたが気を引き締め歩いていった。





エドが家に戻ると奏音は先ほど話をしていたところでぐったりとしていた。
声をかければ返事があるし、顔を見ればむしろ普通そうである。

「サボりだな?まあ、上手い具合に怪我をしたな。演技もなかなかだった。」
「……酷い。」
「痛みは本当かもしれないが…でも、抜け出したかったのは事実だろう?」

奏音は返事をしなかったが表情で図星だろうとエドは思った。
情報が少ない地域ならば…と、もし使えた場合の計画を練り始める。
とりあえず三階の大部屋を彼女らにあてようと三階まで来ればそこでなにか音がした。

(何だ…?先生は明日来る、レイは二階…。)

懐に忍ばせたナイフを数本、手に取った。
そして慎重に音の聞こえる部屋の扉の前まで進む。彼女らにあてようと思った部屋の前だった。
扉の前まで来たが音はまだ鳴り止まない。よほど自信があるスパイか、あるいはまだ気配も分からないお子様か…。
戸を開けると同時にそれに向かってナイフを一本投げる。
キィンッ…と音がしたと同時にそれが床に落とされたのが見えた。

(覆面…十二から十四、女か。)

エドは手に持っていたナイフを構え、スピアを作り出す。女はジィ…と見るがやがて戦闘態勢をといた。
そして降参したように両手を挙げる。

「あなただったのね。」
「誰だ。」
「いいわ。任務失敗かぁ…残念。」

そして女は軽く手を振り窓を開け飛び降りた。
エドは慌てて窓から下を見るがその女の姿は見つけられなかった。舌打ちをする。
逃げられたんなら追いかけても仕方ないとエドは思い、部屋を見渡す。
自分の覚えている部屋と何も変わっていないし、何か仕込まれているとも思えない。このまま渡してしまって平気だろう…。

エドは二階に下り、レイの部屋に行く。
そして先ほどの謎の襲撃者に付いて彼に話したのだった。

「つまり、あいつらにあてるための部屋を下見したら謎の女がいたって事か。」
「そうそう。それに俺の事知ってる風だったんだ。だが俺は全くでな!」
「お前が泣かせた女じゃねぇのかい?とっかえひっかえ…。」
「でも任務って言ってたんだよなあ…。」

あの年齢ではまだ早すぎるだろう…となればかなり人数が絞り込める。
エドはその女の正体を思い出そうとつめを噛む。これは彼の癖であった。
だが頭を思い切り叩かれ顔を上げるとレイが手をさすっていた。誰から見ても怒っている。

「なん、だよ!いきなり叩く事ないじゃないか。しかも自分の手痛くしてるじゃん。」
「エドゥアール…その女が暗殺のつもりで来たんだったらどうすんだい?」
「はぁ?」
「だから任務って言ってたんだろ?そしてあんたの顔を知っていて違うと判断した。」
「おう。」
「だったらこの家の誰かを殺しに来たっつう事は全く無いとは言えねえ。
 俺はずっとここにいたから見られただろうし確率は低い。お前は違うといわれたも同然だ。」
「じゃあアリーかアルって事か?」

レイが頷く。

「確立としてはアリーが高いだろうね。あいつは小さいから隠れようと思えばどこにでも隠れられるし
 足も速い。なにより仕事がなぁ…一番恨まれちまってるだろうよ。」
「でもアルは素性不明だぞ?レイとアリーが連れてきたんじゃん。」
「それは仕方ねえだろ…二人が仲良くなっちまったんだ。引き離すのもあれじゃねえか。」
「それでお前機嫌悪かったのか!アリーがお前以外のに懐いちゃったから。」
「うるせえ…とにかく、もうあいつら中に入れろ。情報引き出され無いとも限んねえだろ。」
「分かった分かった。飯の準備頼むよー!」

エドが部屋を出て行く。後に残ったレイは謎の女について考えていた。
年は十二から十四。エドのナイフを防いだ。窓から逃げたようだがその後が確認できていない。
そしてなにより、顔を知られていて任務だといった。
探る必要がありそうだ…誰もいない部屋でレイは微かに笑った。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.47 )
   
日時: 2012/02/05 21:13
名前: あづま ID:ErBYH.V.

三人が寝ている大部屋に新たな影が現れた。
それは三人の様子を眺めるとフッっと笑いをこぼし扉から出て行く。
音もせず出て行ったそれに三人は気づくことは無かった。





ゆさゆさ。
体をゆすられて想良は目を覚ました。
姉妹のどちらかが自分を起こしたのだろうと思ったがどちらも寝ている。
だが、この部屋には三人以外の人影が無い。外を見ればもう日は昇っているので二人を起こした。

「あー…おはよう。想良早いね…。」
「なんか誰かに起こされたっぽかったんだけど。」
「え?姉ちゃん想良の事起こした?」
「ー…、ぁぁー?」
「姉ちゃんじゃないみたい。」
「だって奏音さん朝弱いでしょ。絶対無いんじゃないかな。」
「それもそっか。下行こうか。姉ちゃん起きてー。」

無理矢理に奏音を起こし三人は下に降りていく。
すると昨日知り合った二人のほかに見慣れない人が部屋にいた。
エドが三人に気づき、声をかける。

「おはよ。」
「おはようございます。あの、こちらの方は?」
「あぁ、名前だけなら言っただろう?こちらはダイアナ先生、まあ俺らのお目付け役というか…。」
「小せえ時からつるんでたってだけだよ。ただ強いからな、あんたらに基礎だけでも教えてもらおうと思ってさ。
 俺が教えるよりは確実だろうからな。」
「で、あんたらが地球からの三人ね。私はダイアナ、よろしく。紹介はこいつから聞いたからいいわ。」
「よろしくお願いします。」
「私もよろしく…なんか本当、強いお姉さんって感じだねー。」
「どうもね。ところで奏音、あんたは挨拶無いわけ?年下の二人のほうが常識あるみたいじゃない。」
「あー…よろしくお願いします。」
「言われないとできない訳?…まあ、起きてすぐだけどテストするよ。
 昨日言われてたからにはちゃんとできるんだろ。私は準備したら行くからほら、あんたらは出て行って。」

三人が立ち上がり出て行くのを見送ろうとした二人も強制的に立たせられる。
レイはそれに対し仕事明けなので休んでいたいと言うが力強い左手がそれを許さなかった。
五人が外に出されると家の扉の前に不思議な模様が現れそれをみたエドは苦笑した。

「先生本気だな。まあもう暴れられないだろうし仕方ないか。」
「冗談じゃねえ…俺は仕事終わってから休んでねえんだ。一ヶ月くらいやってたのに…。」
「えぇ一ヶ月!労働基準法とかないの?あたしだったら自殺もんなんだけど。」
「姉ちゃんはこの世界にいるべきじゃない?津岸さんだっけ?あの人の苦労を考えるとここで働く習慣つけたら?」
「無理だよ、奏美。奏音さんには絶対無理。」
「なんで?」
「もう奏音さんにはクセがついてる。よっぽどの餌が無い限り無理。」
「おぉよく分かってるね想良ちゃん!」
「ははっ、激しいな!」
「俺はお前らが分かんねぇよ。」

想良をぎゅうぎゅうと抱きしめる奏音を見てレイが呟く。
奏美はその呟きが聞こえたようで彼に向かって軽く会釈する。
彼女は申し訳なさでいっぱいだった。
突然現れてきた自分達に世話を見てくれると言った人物にここまで迷惑をかけるとはとても心苦しかったのだ。
だが、この世界に来たばかりで自分達はなにもすることができない。
その揺るぎようの無い事実もまた、彼女を苦しめていた。

「うん、やっぱり君達は面白いな!だが少し離れたところに行こうか。
 先生が準備をしている間に俺たちは軽く体を温めておこう。テストだからな、軽く慣らすべきだ。」
「はいっ!でもエドさん、テストって何やるの?」
「……レイ?」
「知らねえよ。初めは俺がやるつもりだったけどエドがダイアナに言ったら張り切っちゃったんだろ?」
「まあ頑張ってくれ!素質はあるんだ!」
「無責任だ…ウチこういうの結構弱いのに…。」
「あたしは勉強してなかったから抜き打ちみたいなもんだったしいいや。お荷物で。」

奏音は楽観的に笑う。
その時家の扉が開かれ中からダイアナともう一人、男が出てきた。

「さあ、テスト始めるよ。」





「簡単に言えばこいつの背中にタグをつけた。これをお前たちはどんな方法でもいい、取るなり破るなりするんだ。」
「はい…。」
「うん。」
「マジで?え、この人から?え?」
「なんか怖い?アルはやさしいからある程度手加減してくれるわよ。」
「う…あ、奏美奏美、ちょっとアル君と並んでくれない?」
「なんで…?」
「いいからいいから!」

想良に言われ、奏美はアルの隣へと移動する。
アルもその行動の理由が分からないので彼女らのほうに向かって首を傾げて見せた。

「うぶぁっ!卑怯…。」
「おい、こいつはなに一人で蹲ってんだい?」
「知らない。なんか奏音って分からないよな、そこが面白いけど。」
「でかい…。」
「ん?」
「アル君大きい!奏美って身長何センチだっけ?」
「ウチ?っとたしか…百七十二だったかな。」
「頭一個位違う!すごいなぁ。」
「でも…動きはッ!結構、小動物…ッ!」
「…あなたは最後ね。奏美、最初にできるかしら。」
「え、あ、はい!」
「よし、じゃあ双方準備!…始め!!」

ダイアナの声が丘の上に響く。
奏美はアルから距離をとり、彼の様子を伺う。
背は高いがそれ以外の能力が未知数だ…少し離れたところから様子を見ようと奏美は思う。
彼から十歩ほど離れてから後ろに回り込むフリをした。
それに釣られアルは彼女に背を向ける。

「へぇ。すごいじゃん、奏美っていう子。」
「バスケ部員だからじゃない?フェイントだねー。」

奏美はアルの服についているタグの位置を確認し、作戦を立てる。
あの位置なら彼の背中を掠めるように走ればおそらく取れる。ならば、意識を自分と正反対の方向に向けさせなければならない。
アルにはまだ仕掛けてくる様子が見られないので奏美は意識を集中させる。
すると手の中にはナイフが数本出来上がった。
そしてそれを一本彼に向けて投げると同時に走り出す。
それに対してダイアナとレイが驚きの声を漏らすが奏美には全く聞こえていなかった。
いや、聞くほどの余裕が無かったのだ。
意識をそれに傾けてしまえば、集中力が乱れナイフは消えてしまっただろう。
彼がそれを受け止める寸前にもう一本、それに反応した瞬間にもう一本。背中を見せた。

「よし!――?!」

タグに手が届くという瞬間、右手をつかまれ抱きかかえられる。
想定外の事態に奏美は混乱した。

「な、え?」
「あー…捕まっちゃった。」
「でも結構いい線行ってたんじゃねえかな。発想はいいと思うよ、俺はさ。」
「そう、確かに発想はいいわ。ただ――」

両手を封じられ、奏美は抱かれてしまっている。体をよじって逃げ出そうとするがなかなか抜け出せない。
しまいにはアルに微笑まれてしまう。

「はい、五分。アル、もう彼女離してあげて。」
「はあ…いい線行くと思ったんだけどなぁ。…あれ、姉ちゃんは?」

レイのあきれたような視線で奏美は姉の行方を知った。
かなり離れたところでエドと一緒に遊んでいる。
想良は一気に気が抜けてしまったが、自分の頬を軽く打ち奏美に質問する。

「奏美はどうやって取ろうとしたの?」
「ん、こうナイフあたる様に投げまくったら防がなきゃいけないじゃん?それをいろんな方向からやれば隙できるだろうなって。
 で、掠めるように走れば取れるかと思ったの。」
「そっか。次、私が行きます。」
「あなたは…想良ね。いいわ。じゃあ、双方準備、始め!!」
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.48 )
   
日時: 2012/02/05 21:15
名前: あづま ID:ErBYH.V.

ダイアナの声が響き、二人は向き合う。
想良はアルに向かってお辞儀をする。彼がお辞儀の意味を分かっていなさそうなので想良は言った。

「これはお辞儀といってする理由は…まあ、相手への敬意かな。よろしくお願いします、みたいな。」

するとアルもお辞儀を返してきた。これに想良は驚いた。
外国人はしないと思ったんだけどなぁ、と一瞬思うがここは勝負の場。
意識を切り替え、目の前の相手ただ一人に集中する。
―――彼は奏美の攻撃をかわすときはいつも手ではじき落としていた。
そして攻撃をすればいいのにかれは奏美を抱きかかえて動きを時間いっぱいまで封じた。
ダイアナさんは手加減してくれるとも言っていた。
だから彼に攻撃する意思は全くと言っていいほどないだろう。
想良の中で考えがまとまっていく。

「あの子、いいわ。」
「想良が?」
「だろうねぇ。あいつってなんか勝負事やってたかい?」
「柔道なら。」
「それは…一対一、じゃねえか?」
「そうだけど…それが。」
「ふーん、成る程。教えがいがありそうね。」

二人の言っていることが分からない奏美はとにかく目の前の勝負に集中する。
だが二人に動きは全く無く、時間だけが過ぎていった。
自分のことでないのは分かっているが奏美は焦りはじめる。もう二分たった。
すると突然想良が棒を作り出しアルの方へと走っていく。
だが、想良が作り出したのは長い棒。当然アルはそれを掴み、攻撃されるのを防ぐ。
だが、

「おりゃあぁあっ!」
「!!」

彼が掴みそれごと想良を引き寄せた瞬間、手を離し彼の懐へと飛び込む。
そして上着を掴んだ後はためらいも無く彼に技をかけた。
突然のことにアルが対応しきれないうちに想良はタグをすばやく取る。
そしてそれをダイアナのほうに見せるのだった。

「ふふっ、おめでとう。まさか実力で行くとはね。…ところで、あれは何?」
「柔道の技で払い腰って言うんです。はー…あんなに体格差ある人に決められるとは思わなかったぁ。」
「え、もしかして想良初めてだったの?そんな土壇場で…。」
「運が良かったんだよ。それに前が奏美だったからなんとなく戦い方が分かったんだし。
 タグ取れたのは奏美のおかげだよ、ありがとう。」
「いや…ウチは…。」
「いいじゃねえか、本人がそう言ってんだからそう思っとけよ。プラス方向だから悪いもんじゃないさ。」
「そうよ。アル、大丈夫?まだいけるかしら。レイ、一応あの二人呼んできて。」

ダイアナに言われレイはそっと離れていく。
アルはダイアナに頷いて見せてまだできるという事を示した。彼女も頷き返す。
それにふと想良は疑問を持つ。

「アル君って喋らないの?技かけた時もなんにも声出さなかったよね。」
「……。」

彼女の質問に対しアルは喉を指差してパクパクと口を開き、それから首を振った。
そのジェスチャーの意味を読み取り、想良は慌てて謝る。
だが彼は気にしていないという風に再び首を振り笑顔を見せた。
だが、先ほどと打って変わって落ち込んでしまった想良にダイアナは肩をたたく。
気落ちするな、という言葉を込めたつもりだったがそれが届いたかは分からなかった。

「…なんかレイも遅くない?ウチ見てこようか。」
「確かにそうね。奏美、まとめて呼んできてくれるかしら。」
「う、ううん!私が行って来るよ!」
「え、でも疲れてない?」
「平気!」

想良はその場から走ってエドたちがいた場所へと行く。
彼女はその場所にいるのに耐えられなかった。何気なく聞いたことが思いがけず深いものだった。
本人は気にしなくていいという素振りを見えたがそれも建前かもしれない。
その考えから逃げるように、二人を置いて走っていった。

「あ、あの奏音さぁん!」
「ん?想良ちゃんだ。どうしたの?」
「あ、もう順番で…。」
「ぎえっ!うわぁ…お荷物よろしくお願いします。」
「大丈夫だ、自信を持て!」
「うぇ…。」

エドに励まされ奏音は重い腰を上げ歩いていった。
ゆっくりではあるが進んでいることに対しエドは安心する。
やりたくない面倒くさいと二人で場所を離れてからずっと言っていたのでホッとした。

「エドさん、レイさんは?迎えに行くって言ってたのに…。」
「あぁ、声かけに来てくれたよ。そんで今仕事しに家入っちゃった。」
「ダイアナさんに怒られるよ…待ってるって言ってたのに。」
「本当?じゃあ想良迎えに行ってくれないか?俺は怖いし先に行ってる。」
「はい!」
「二階の奥の方…ドアノブにカバーかかってるのがレイの部屋だから!声かけて出てこなかったらノックして
 入っていいと思うぞ。まあ先生が呼んでるっていえばでてくるだろうから。」

エドは扉を開け、想良を中に入れた。
そして自分は走ってテストの場へと向かったのだった。





扉が閉められ、エドが走っていく足音も消えていった。想良は教えられたとおりにレイの部屋へと向かっていた。
木の階段を登り二階に出たら奥へと進んでいく。
すると一つだけカバーがしてあるドアノブがありノックするが返事が無い。
聞こえなかったのだろう、そう思ってもう一度ノックするがやはり返事は無く耳をつけてみるが音も聞こえない。
仕方が無いので申し訳ない気持ちになりつつもドアを開ける。鍵はかけられていないようだった。
一歩踏み込むと扉が勝手に閉まってしまう。開けようとしたがもう開かなかった。
スゥッと空気が冷たくなるのを想良は感じた。
だが気を持ち直し、部屋の中を見回す。それは一人にしては結構広く、隅の方に乱雑に衣類が積み重なっていた。
どうせなら畳むべきか…いや、勝手にやったら怒られるだろうと思いつつも想良は服のほうに近づく。

(あれ、女物だ…。)

近づいてその服をよく見てみれば、色々な国の民族衣装だということが分かった。
その中に想良も見たことがあるような国のそれも混ざっていて女物もちらほら混ざっている。
なんでレイの部屋に女物があるのかと思ったがそういえば初めてあった時に仕事柄女の格好もするという
本人の言葉を思い出し一人納得した。
部屋を見回すがレイの姿が見当たらない。
帰ろう、と思ってドアを開けようとしたが開かない。
あー、開かなくなってたんだっけ。どうしようかなぁ…。





「アル君だっけ?大きいねー。」
「……。」
「うえへあはへへへ…。」
「姉ちゃーん、欲情しないでー。」
「だって!これ、これはないよ!あたし生殺し?」
「奏音が自分でやったんじゃん。頑張れ、対処するんだ!」
「ゴメンね、私の専門外よ。アル、頑張って。あなたならできるわ。」

奏音のテストが始まってから早三分。
彼女とアルは互いに体を密着させ、二人の身体の周りには蔓がうねうねと絡まっている。
こうなった原因といえば奏音が開始早々、武器を作り上げようとするが失敗。
一同ため息をつくがそれも彼女にとっては想定内だったらしい。
草を適当にちぎってそれをアルに向かって投げつけたのだ。それがアルに触れた瞬間、意思を持ったように動き出した。
始めはアルも引きちぎったりして抵抗していたのだが草だった物は見る間に大きく成長し、やがて手が封じられた。
脱出が無理だと悟ったらしくキッと睨んだアルに奏音は奇声をあげ、後ろにまわりタグを取ろうとした。
だが、――――

「いただだだだっ!なにこれ、制御利かない!いたっ、出る、内臓的な何かがッ!」
「……。」
「睨まないで!あたしにまでかかってくるとは思わなかったの、頑張る!
 あたしのこれからの萌えのために練習するから!じゃないと、これは、ぐごぇ!」
「い、今お腹に入ったよね?姉ちゃん大丈夫かな。」
「大丈夫だと思うわ…うん。いざとなったら…アリーがいるでしょう?」
「でも先生、アリーはいつごろ帰ってくるか分からないぞ?そろそろだとは思うが長引けば…。」
「あぁ…でも大丈夫でしょ。奏音はタフよ。…はい、五分。残念でした。」
「マジ!うっわお荷物か。で、これは、いででで!こっの何歳か知らないけど生意気!」
「!、…!」

わずかに動かせるタイミングで互いに少しずつ痛めつける二人を見て、ダイアナはそっとため息をはいた。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.49 )
   
日時: 2012/02/15 18:02
名前: あづま ID:A3byF9ug

「どうしよっかなーぁ、どうしよ…か、な……。」

想良は薄暗い部屋の中で一人座っていた。
例を探しに彼の部屋までやって来たがそこにはいなかった。しかも、その部屋に閉じ込められてしまったのだ。
力ずくで開けようにもここは他人の部屋で自分は置いてもらっている身。
何か壊してしまったらという心配で想良は何もできずにいた。
大声を出してみてもこの家の中には誰もいないのか、聞こえていないのか。
鍵穴も見つからないので鍵も作れない。
想良は途方にくれ、なにをするでもなくただ座っているのだった。

「!!」

ぼんやりとしていると突然、うつ伏せに押し倒され口をふさがれる。
抵抗しようとするが大きな力で抑えられ、体を動かすことが全くできない。
ぐっとかかる力が重くなり、顔を覗き込まれる。

「…違う、か。」
「……?」
「はぁ…ヒント少ないんだよねぇ。ごめんね、ばいばい。」

想良の顔を確認すると謎の人物は彼女を解放し部屋から出て行った。
扉が開いていることに驚きながらもいそいで後を追う。
だが、廊下に出ると謎の人物の姿は全く見えなかった。

「おい、人の部屋で何してんだよ。」
「あ。」

後ろから冷たい手が肩に置かれ、強い力で引かれる。
そちらを向けばレイがビンを片手に不機嫌な顔をしている。あたりまえだ、勝手に部屋に入ったのだから。
想良は自分がここになんのために来たのかを説明する。
その説明をきくうちにだんだんとレイの顔は青ざめていき、終いには制止の声をあげた。

「あの馬鹿…言っちまっただろうなぁ…。」
「え?」
「あぁいや…あー…まぁ、あんたらには関係ねえよ。俺の問題さ。」
「はぁ…。」

自己完結したレイは下へと降りていく。

「おい、お前は戻らないでいいのか?」
「あ、戻る。…レイさん、彼女いるの?」
「は?っあぁ、言いたかねぇがあの服は全部俺の物だよ。仕事柄女の格好もするって言っただろ。」
「そうじゃなくってなんか部屋に女の人いたから。」
「女ぁ?」
「うん。だいたい私と同じ位かな。顔見て違うって言われた。あとヒントが少ないんだって。」
「へぇ…。まぁ俺に女はいねえよ。俺はエドと違うからな、まぁ第一に似合わねぇしな、俺に女って。」
「そうかなぁ。」
「あぁ、似合わねぇ。」





「おぉ!先生、二人が戻ってきたぞ。」
「結構時間かかったわね?」
「それはいいんだよ。俺は仕事やら無きゃなんねぇからな。」
「あらそう?でもやるべき事はやらなければならないから。お分かり?」
「俺の邪魔をしたいってぇのはよぉ…く分かったよ。ま、話なら終わった後でゆっくり聞くさ。
 俺も言いたいことがあるんでね。」

バチバチと二人の間で火花が散ったように誰しもが見えた。
奏美はなにがあったのか、と想良に耳打ちするが返ってきた返事は「迎えに行っただけ。」だった。
それだけでこんなに険悪になるとは思えない奏美はただそれを見つめるしかなかった。
奏美と想良の空気まで重くなったのを感じたエドが未だ火花を散らす二人に声をかける。

「なんだ、その、先生?なにか話があるから呼んだんだろう?だからまずそれを話してしまおう。」
「…そうね。レイは終わったら、って言っていたから待ってなさいよ。」
「構いやしないさ。さっさと終わらせてくれるとありがたいね。」

レイはそう言ってフッと鼻で笑う。
ダイアナに一睨みされるがそれも気にせず彼は考えをめぐらせていった。

「今回のテストだけど全員合格。それでいいわ。」
「えっ?!あの、ウチは失敗しましたよ!それに姉ちゃんも。」
「あ、の…助けて?そろそろ、ぼっこぼこ…。」
「……。」
「ねえぇえ…?」
「あんたらは何やってんだい。俺にはさっぱりだ。」
「あ、レイ。二人救出してあげて。ただ近くに行くと巻き込まれるから遠距離でね。」
「…しゃーねーな。」

レイは二人からできるだけ下がるとそこから力を使い始める。
アルの胸の辺りがビシッという音を立てて氷が張ったと思うと二人の体を這っていた蔓も凍り動きが止まった。
その間に二人は抜け出し、特にアルは奏音から距離をとり小刀まで構えた。

「何!あたしが何した訳?テストだったんだよ、仕方ないじゃん!」
「いや、でも姉ちゃんくっついたのをいい事に触りまくってたじゃん。そりゃ距離とられるよ。」
「でも武器!武器まで!というか今小刀太ももについてたよね?」
「奏音さん…ごめん、見てなかった。」
「うがあああああ!」

想良の言葉に奏音は頭を抱えてしゃがみこんだ。
その様子を笑いながら見ていたエドが言葉を続けた。

「良い所に気づいたな!実は武器を具現化させるのって結構集中力がいるんだ。
 特に戦いだと武器を避けたり指示を聞かなきゃならないから維持させるのがつらいんだよ。」
「うん、それ位は分かるなぁ。応援とかもたまにウザいんだよね…私は集中したいのにってさ。」
「想良…なんか、うん…。」
「はは、まぁそうかもな。」
「それで、想良はまず問題なく合格。多分近距離型…直接攻撃が主になると思う。
 奏美は中距離からのかく乱ね。フェイントがあなたをいかす事になるでしょうね、私が約束する。」
「うん…あの、あたしは?えっと。」
「奏音は意外性かしら。今までの常識にとらわれないし。独創性は評価に値するわ。」
「おぉ!字書きとして結構嬉しいじゃん!」

奏音は嬉しそうに笑った。それにつられて妹も笑みをこぼす。
だが想良の反応は薄く、どう思っているのかが分からなかった。

「うん。それで私は二週間後に帰るのよ。それまでバッチリ稽古つけてあげる。
 争いがないところなんてこの世界には無いに等しいから基本は知っていないとまずいからね。」
「はぁ…。え、ウチらも闘わなきゃいけないって事?」
「まぁ郷に入ったらっていうし…いいんじゃなぁい?護身ぐらいでしょ。よろしくお願いします。」
「そういう事。私が帰った後でもこいつらに相手してもらえば自然と上達するでしょうし。」
「あたしもかぁ…ま、よろしくお願いしますってね。」
「うん。ウチもよろしくお願いします!」
「奏音も言うなんて意外ね…。まぁ、明日からやるわ、覚悟しててね。今日はもう戻って良いわ。」

ダイアナは三人とそれぞれ握手し送り出す。
人見姉妹は笑いながら今日のテストについて話していたが想良はとある疑問から二人の三歩後ろを歩いていた。
謎の女の子の存在。突然現れ、自分の顔を見て去っていった。
レイにそれを話したが彼は教えてくれなかった。だが、その口ぶりからは存在を知っていたようにも見える。
その正体を知りたいと思ったが知ったところで自分が何をしたいのかが分からなかった。
そもそもあの女の子は自分の目の前に現れることはもう無いだろう。違う、と言ったのだから。
となるとレイに聞かなければならないが、彼からは聞きだせそうにも無い。

「想良?疲れたんじゃない、やっぱりアル君から一本取ったんだしね。」
「マジで。あんな体格差あるのにー…頭一個分以上あったじゃん、すげー!」
「そうだね…疲れたかも。集中力もいるから精神的にきたのかな。」
「だよね!よし、今日のご飯はあたしが作ろう!」
「えー…姉ちゃん料理できたっけ…いっつもコンビニとかか担当さんが作ってるイメージなんだけど。」
「キシは意外と上手いね…でも嫁さんの方が好きだな。でもレオンも結構作ってくれるよ。
 いろんな国行った事あるらしいから各国の料理が食べれて面白いな。」





「侵入者?」
「あぁ、エドも見たみたいだし想良も見ている。どっちも女で、想良曰く自分と同じくらいらしい。
 同一人物と見て間違いないと思う。」

三人が家に入った後、残った三人は顔をあわせて話を始める。
アルは集落のほうへと下りていった。彼は話す事ができないので行動は自由にすることが多い。
もちろん、情報を引き出すことができないから彼らも咎めないのだ。

「俺のと同一人物だったらやばいだろうなぁ。結構手馴れだと思うぞ。」
「だから言ったんだろ…侵入に気づかなかったし、こんな短時間にやられてんだぜ?
 しかも逃げられてるときたもんだ。」
「…レイ?それって初耳よ。……へぇ、逃がした。」
「うっ…お手柔らかに頼もうじゃねぇか。」
「とりあえず対策をねろう、な!」
「そうね…でも、しばらくは来ないんじゃないかしら。」

ダイアナの言葉に二人が顔を見合わせる。
なぜそう、思うのかが分からないといったような表情だ。

「正確に言ったらしばらくは目の前に現れないだろう、という事ね。
 いきなりだったし、想良はパニックに陥らなかったんだったら顔を覚えた可能性が高い。」
「なるほど。でも俺の時は覆面してたぞ…。ただそうだな、肌は白、髪は金で真っ直ぐ。
 目はヘーゼルかな、何となく雰囲気的にだが。」
「ヘーゼル…厳しいわね。変わることの代名詞じゃない、それ。」
「でも覆面してる時点で分からないも同然だしな、まぁまぁじゃねえか?」
「そうね…ま、暗殺には注意なさい。」

その言葉が、この話題の終了の合図だった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.50 )
   
日時: 2012/02/15 18:07
名前: あづま ID:A3byF9ug

「やぁやぁお疲れ!お水はいかがかな?」
「うん、ありがと。」
「いかがかな?じゃないよ!姉ちゃんサボりすぎ、四日しかやらなかったよね?あとこれ今ウチらが汲んできたんだけど。」
「三日坊主のあたしが四日もったんだよ!表彰されていいくらいだわ。」
「まぁ受身とれるし基本は戦えるし良いんじゃないかなぁ。」
「想良!?ダイアナさんの見送りにも来ないし…なんなの姉ちゃん。」
「だって筋肉痛で痛いのに無理矢理やらされたじゃんよ。まじありえねー。つかあれで二十七?
 なんかアグレッシブじゃね?」
「でも礼儀としてさぁー!」
「奏美顔怖いよー?ま、基本くらいなら私も教えられるし。
 私たちがちょっとずつ教えていこうよ。ダイアナさんもそう言ってたし二人に迷惑かけられないじゃん。」

あのテストの日々からちょうど二週間。ダイアナは今朝方帰っていった。
奏美と想良の二人はこの期間で日課となった走りこみと力をつけるための水汲みを終えて家に戻ってきたところである。
時刻はもう空に青みが強くなっている。そんな時間だった。
ちなみにエドは用事があるといって三日ほど帰ってきていない。レイ曰く女のところに行ってるらしい。
「まぁ、女は噂好きだしな…なにか情報聞き出せるかもしれねえだろ?…今まで一回もねえけど。」
こう言ってレイは頭を抱え、それに奏美は心の中で合掌した。

「ま、受身だってできるようになったしあの草を操れるようになったのは進歩じゃん。
 あれはダイアナも知らなかったから独学だし?」
「それをアルやレイにかけるのが問題なんだよ。エドは引きちぎってたけどね。」
「馬鹿力だよね…多分大会でたら優勝できるんじゃない?」
「というより地球と体力というか素質から違うよね。このまえ十歳ぐらいの子がウチより高い枝に
 ひとっとびで乗ったのには度肝抜かれた。百八十くらいあったと思う。」
「すげ…オリンピックだ。」

話しているとコンコン、というノックと同時にあるが顔を覗かせた。
そして手を口に持っていく動作をして見せ、三人は夕食の時間だということが分かった。
下に下りていくとすでに食べるものは並べられていてレイはもう食べ始めている。
各々席に着き食事を始める。

「ねぇ、いっしょに食べ始めようとかない訳?」
「あんたらがさっさと来ねえからだろ…。」
「あー?!あたしらはトレーニングしてたんです!」
「姉ちゃん?」
「してねえだろ、あんたは。ずっと部屋に篭っててよ…豚になるぜ?」
「っ!」

レイの言葉に肩を震わせたのは想良だった。
隣に座っていた奏美はもちろん、あまりの大きな動作に全員の注目が集まる。
当の本人はあまりの注目に一瞬たじろいだようだが目を伏せ言葉をつむいだ。

「…柔道部は…食べなきゃいけない……。」
「いや、あんたに言ったんじゃ。」
「うっわ最低!レイサイテー!!女の子を傷つけたー、うっわだからモテないんだよ女が寄って来ないんだよ!」
「俺の女事情はどうでもいいだろうが!」
「謝んないんだー!あーぁ、もう駄目だね。女の子に自分の意見押し付けて破局だ、これだからレイは。
 もう慰めてもらえよ、男に!」
「なんで男!!」
「女がいいのか!この助平!」
「どうせなら女がいいだろうが!なんで男の俺が男に慰められなきゃなんねえ!」
「男の友情。……え?」
「……。」
「え?」

奏音とレイが言い争っているのを横目で見ながらアルは想良の皿に彼女が好きなものを取り分ける。
これはアルなりの親切心なのだろうが、かえって想良は落ち込んだようでため息をついてフォークを置いた。
これが分からなかったようで想良のことを覗き込むが視線を逸らされたアルが奏美を見る。

「逆効果だよ…。」
「?」
「女心を分かりなさいってことで…。」

奏美に言われても分からなかったらしいアルがクイクイと袖を引っ張る。
席を立ち、アルの耳元で奏美は囁く。

「体重を気にしているのにその人に食べ物を渡す?」
「!!」

ようやく分かったらしくアルは慌てて先ほど想良の皿に分けたのを自分のに戻し頭を下げた。
それに一瞬驚いたような顔をした想良は力なく笑いもういいと言ったのだった。
一方言い争っている二人はもう元の話題が何だったのかが分からない域に達していた。
互いの気に入らないところを言い合っている。まるで、子ども。
ちょうどその時紫色の羽が貼られた筒が窓から舞い込み、レイの目の前に落ちた。
喚く奏美を無視しレイは筒を開ける。そして内容を見るとふ、と息をついた。

「明日…あたり帰ってくるってさ。やっと面倒ごとから抜けられんのかねぇ?」
「何?誰が?彼氏?」
「彼氏ってなんだよ。俺に言ってんのか?」
「まーまー、それでレイ、誰が帰ってくるの?」

奏美が険悪な二人に割ってはいる。
レイは一瞬彼女を睨むが、ニヤリと奏音が笑ったのを見とめ息を吐き自分を落ち着かせた。
そして語る。

「アリーだよ。前に話しただろ?マティーとの双子だって。仕事終えて帰ってくるってさ。」
「あー!そういえば話してたね。」
「あぁ。あんたら二人とは年も近いはずだしこれからは俺じゃなくてあいつに振ってくれ。」
「わかった。でもマティーってどんな子?来ないんだよね?」
「本家の次期当主だよ。女が継ぐからな。気の強い優秀なやつだ。」
「ほお。そういや年が近いのは分かったけどあたしとはどうなの?」
「何歳だよ。」
「二十二。」
「お前が年上かよ!信じられねえ……。」
「え、何歳すか。」
「二十一になったばっかだよ。」
「どーりでかわいい訳だ!そっかぁ、よし!来い!カモン!」

奏音が席を立ち両手を広げるがレイはそれを見なかったことにし食事を再開させる。
眉間にしわがよっており不快感があらわになっている。
のって貰えなかった事に奏音は口を尖らせ、食事を再開させた。





「ぅー…う?」

寝床から起き上がった奏音は辺りを見回す。まだ二人とも小さな寝息を立てていた。
寝ぼけた頭で窓のほうに行けばやっと太陽が昇ったくらいでまだあたりは暗い。
二度寝しよう、奏音は思った。
だが、この世界に来てからというものの早寝早起きが習慣付けられてしまったらしい。
一度起きてしまうとなかなか寝付けなくなってしまっていた。
いくらなんでもこれは早すぎじゃないか?と思ったが起きてしまったものは仕方がない。
水浴びでもしようかと着替えの山から一組引っ張り出しそっと部屋を出て行った。


朝日を浴び、心地よい風が肌を撫でるのを感じながら川へとたどる。
水汲みでもしてやろうと思いつき樽を草に絡ませ一緒に散歩する。
目的の場所が見えてくると一人、先客がいるのがうかがえた。
遠目なので先客が服を着ているのかどうかが分からず、待つべきかこのまま進んでしまうか一瞬迷う。

(ま、怒られたら向こうむけばいいか。)

その人の反応で変えようと奏音は思い進んでいくことを選択した。
ずんずんと進んでいけばその人は薄い服のような物を着ていることが分かりひとまずホッとする。

「見ない人…と能力だね。新入り?」
「あ、うん。ここの集落の人?」
「そうだよ。」

顔も上げず話しかけてきたその人物に一瞬ぎょっとするがここらの人はまるで漫画のように気配を感じているようなことを思い出す。
相変わらず顔を上げないが肌の白いよく通る声を持つ人物だった。
その人物は川下のほうに歩いていき、枝に引っ掛けてあった布――服のようだ――をとり、眺めた。
満足したのだろう、軽く頷くとそれを肩にかけて戻ってくる。そして顔を上げた。
きれいな顔だ。奏音は思った。濡れた髪の毛が顔に張り付き、ジッと奏音を見上げる。
そして川からでて、笑みを浮かべながら囁いた。

「ミス…あなたも女ならそんなに人をじろじろ見るもんじゃないよ、変態さん!」
「はぁっ?!」

もう一度笑顔を浮かべ、その人は集落のほうへと歩いていった。
その後姿を見送った後奏音は服を着たままざばりと飛び込む。
―――きれいとか…前言撤回!
メンテ

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