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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.51 )
   
日時: 2012/02/25 13:06
名前: あづま ID:Ees/k.XA

「なんなんだよ!朝っぱらからくっ付くんじゃねぇ!離れやがれ!!」
「あぁ〜あん、やだよ慰めてよ!早起きが三文の得なんて嘘だったー!早起きしたら不愉快だぁ!」
「うるせえ!俺は仕事があんだよ、離せ!寝てろ!」
「うあああああ〜!」
「あぁもう…せめて髪の水気とってこい…聞いてやるから、もう……。」

奏音のあまりの騒ぎぶりに結局レイが折れ、彼女に椅子を勧める。
ぶつぶつと文句を言いながらもに投げられたタオルで奏音は髪の毛を拭く。
ため息を一つ、そして奏音は先ほどあった出来事を話しはじめた。

「変態って言われた?事実じゃねえか。」
「そうだよ?ただなんっか…ムカつくんだよね。あの口の利き方がホント…ふふっ。」
「んだよ元気じゃねえか。ほら、もう行け。用は済んだだろ?」
「ひどい…!」
「笑ってる奴の心配した俺が馬鹿だった。ほら、出てけ。」

力任せに部屋の外から出されてしまい、奏音は行き場をなくした。
眠くもないしどうすべきかと考えていると下のほうから物音が聞こえる。
アルが起きて朝ごはんの準備をしているのだろうと考えた奏音は何かつまませてもらおうと意気揚々降りて行った。
階段から見下ろせば確かにあるの頭が見え、どうやら誰かといるらしいという事がわかる。
ただ残念ながら階段の下になってしまいその人物が見えなかった。

「アール君、何かつまま…!」
「やあ、ミス。となると、新しい人たちってこれ?」
「…。」
「これって何?!ちゃんとあたしは人間、人間なんですー?!」
「うるさいよ。全く…ねえアル、この人って役に立つの?残りの二人は聞いたところによると伸びしろありそうだけど。
 この人は完成しててありそうにないんだよね。」
「あああああ!レイ、レーーーイ!!」
「頼りにされてるね。そのまま身を固めてもいいんじゃないかな?」
「……。」

奏音の叫びにレイと寝ていた奏美と想良も起きて下にやってくる。
まだ寝ぼけている想良が奏音が指差しているほうを振り向く。

「あれ?新しい人だぁ。千石想良だよ、よろしくね。」
「想良ちゃん?え、なに紹介してんの!」
「よろしくね。…うるさい。」
「があっ!」
「姉ちゃん!」

想良のほうをむいたまま奏音を飛ばした人に奏美が怒りの声をあげる。
奏音といえば机の角に頭を強打し意識を失ってしまったらしい。アルが手当てをしている。

「ちょっとあんた、初対面でいきなり人をぶっ飛ばすってどういう事?」
「残念ながら初対面じゃないんだ。ま、訓練受けなかったみたいだしね。君なら…?」
「ウチならって…?、!」

冷たい、奏美が感じそれと同時に体を動かす。
避けた瞬間その場所には強いうねりが生じ、周りのものを巻き込んでいる。
つむじ風のようだった。

「ほおら、避けられた。簡単だったでしょ?これを君のお姉さんは避けられなかったんだよ。自業自得だね?」
「はいそこまで。あんまり険悪になってんじゃねえよ。」
「ってー…もう!なんでいきなりあったたたた…!」
「ほら、氷。そのタオルに包んであてときな。こいつはアリー。昨日帰ってくるだろうって言っただろ。」
「アリー…あなたが。人見奏美、よろしく。姉ちゃんはまあ…うん。」
「はああ?アリーじゃないっしょ!ナシーだよあたしにとっては!」
「君ってなあに?本当に分からないよ。あ、そうだ。君達でさ、だれか僕の仕事手伝ってくれる人いる?
 この世界に来たんならさ、知っとかないとなって思うんだ。怖いならいいけど。」

ニコニコ、笑いながらアリーは椅子に腰掛ける。
その目は三人を試しているという目で、まず奏美が動いた。

「いいよ。ウチもただ飯食らいじゃ嫌だし。できることなら手伝う。」
「君かぁ…反射力はあるしいいかもね。そっちの子は?」
「私?…まあ、いいよ。」
「あたしは絶対に嫌だ!ただでさえ萌えが枯渇状態なのに働けだぁ?ふざけんな!」
「あは、いいんじゃない?それでさ、はは、あははは。」
「うっわその笑い方ムカつく。」
「じゃあ僕は準備してるよ。気が向いたらいくからね、それまでお好きにどうぞ、あはは。」





「なんなんあいつぅあー!」
「姉ちゃんなんかやったんじゃないのー?」
「なんで実の姉よりあんなの信用するの?つーかあれなに、ボクッ娘?それなら許す。」
「まあ可愛い感じだったよね。つんつんしててあんまり付き合いたいとは思わなかったけど。」
「デレがありゃなぁ。」
「想良?どうしたの?」
「ううん、なんでも。ちょっと考え事。」
「そっか。あ、走りこみ行く?」
「うん。奏音さんはどうする。」
「いってらっしゃぁ〜い。」

朝食を食べ、奏音はレイには追い出されアルにはどこかに行かれと完全にやることが無く部屋でぐったりとしていた。
アリーに会わないことが彼女の中で唯一のプラスだった。
奏美がため息をつき、想良の声と扉の閉まる音。数十秒後、外からの声で彼女らが出かけたことを確認する。
そこで奏音は目を閉じ、始まりを考える。
彼女はレオンという仕事の担当に息抜きのためといわれあの日、学校に行った。
妹の奏美とその友人の想良を途中で見つけ、レオンに言われた“鏡”の場所に案内してもらったのだ。
そして、気がつくとこの世界に来ていた。レオンは何か、知っていたのだろうか。
寝返りを打つ。見えていた世界は今、後ろに行った。
トン、背中に軽い物が乗る。

「あら、また違う。」
「なにあんたー?…あ、あたしは仕事行かないからね!」
「仕事?別にどうでもいいんだけど。あーあ、怒られる。」
「はぁ?」

背中に乗った存在は下り、窓から降りていく。
自殺?と奏音は一瞬思ったがこの世界の人々は意外と強いので大丈夫だろうと思った。
そして瞼が重くなっていく。あ、寝れるな。と思って意識が途切れた。





「着いたー!」
「なんか息切れしなくなってきたよね。はぁ…まあ疲れるけど。」
「だね。じゃあアリーの仕事?だかもあるだろうしちょっと休もっか。」
「うん。」

二人笑いながら家へと入る。
部屋にいけば奏音は大の字で寝ており奏美がため息をついた。
それから座り、一息つく。

「でもさ、仕事って何だろうね?」
「さあ。だってダイアナさんは想良は近距離、ウチは中距離って言ってたし実際内容は違ったしね。
 だからウチらでもできるような仕事じゃないかな。」
「そうだね。でもなんだろ?」

二人で話すがなかなか思いつかない。
するとタイミングを計ったかのようにアリーが部屋に入ってきた。無断で。

「疲れは取れたかな?まあ、想良はテストだよ。いきなり本番やらせる訳にいかないしね。」
「そうなの?」
「うん。それで使えるって思ったら僕の本番を手伝ってもらう。
 テストは簡単。下の集落でとある内容…密談ということになってるけどそれが話される。
 君は怪しまれずにそれを聞き出して、あるいは盗み聞きでもいい。正確な情報を手に入れる。これだけだよ。」
「つまりスパイみたいな感じ?」
「そう。まあ、君達はもう交流してるみたいだけどテストだしね。本番だったらその地域の慣わしとかも
 覚えなきゃいけないから大変なんだよ。じゃ、制限はそうだね…奏美が僕と仕事を終えるまで。」
「え、ウチら別々?」
「うん。奏美は持久力があるし実践がむいてると思うから見学してもらうよ。明日出るから。じゃ、解散。」

アリーは笑って出て行った。
二人は一緒の仕事をできると思い込んでいたので告げられた内容に驚いた。
別々の仕事…というより体験といった物だろう。

「でもさ、上手くやればいいんだよね。」
「うん。想良は姉ちゃんよろしくね。」
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.52 )
   
日時: 2012/02/25 13:08
名前: あづま ID:Ees/k.XA

「へー、じゃあ奏美はあいつとお仕事、想良ちゃんは諜報みたいなかんじかぁ。」
「そうだよ。姉ちゃんもさぁなんかやんなよ。あの草というか触手みたいなのじゃ絶対この世界通用しないって。」
「働けってこと?やだー。なんなら旅に出たいよ。萌え探して何万里〜。」
「言うだけ無駄なんじゃない?骨の髄までだよ、奏美。」
「な、納得いかない…!」

夕食だと呼ばれ奏音も起き、アリーからの仕事について三人は話していた。
まだ本格的な物ではない、いわば体験のような物だとはいえ二人は与えられた物に胸を躍らせていた。
反面、暗い顔をしているのはレイである。

「なぁ、集落の奴らまで巻き込むことか…?」
「本格的な方がいいじゃん。ただ仕事のほうは経験積んでからじゃないと。へまされたら困るし?」
「まあ想良の方はいいぜ?でも奏美のほうはどうだ?見学とはいえ実践の場所に連れてくんだろ。
 危ねえじゃねえか。それにお前の苦労も…。」
「別にー?レイ、奏音と一緒なのが嫌なだけでしょ。正直に言いなよ、僕も分かるし。」
「はぁ?!嫌って何嫌って!」
「嫌よ嫌よも好きのうち〜。アルもいるしさ、頑張ってよ。」
「あたしの事好きなの?」
「それは一生ねえ。」
「ひでえ。」

しかし奏音は落ち込んだ様子も見せず皿から取り分けて食べている。
届かないところにあるのはアルに取ってもらっている。
それを目で追っていたレイは小さく息をついた。

「俺が言いてえのはよ、こいつらの世界は戦争がないんだろ?だったらいきなり実践の場は辛くないかって事だ。」
「世界ではまだあるよ。日本は戦争しないからねー。」
「そうなのか?へー、俺が知ってんのは内乱って感じのところだしなぁ。時代いつだっけ、慶長と元和あたりだよな。」
「慶長…え、戦国時代らへん?」
「さあ。ばあ様がそこら辺の人なんだよ。まあもう死んでるし。あ、女が家継ぐって言ったろ?
 あればあ様が二年かからずして無法者束ねあげて一国統治の補佐まで成り上がったからさ。というよりよく知ってるな想良。」
「いや、母親が歴史好きでね…。グッズ溢れかえってるんだ。でも奏美がやばいっていうのは?」
「ようするに血とかそういうんだよ。俺は戦なんて当たり前の世界で生まれ育ったけど始めてのとき立ってられなかったし。」
「でも…ウチ、やるよ。通らなきゃいけない門だろうし、いつか通るんなら早めにやりたい。」
「じゃいいじゃん、レイは心配性だよ。ま、捕まったとしたら見捨てるからね。」
「お前…トリクシー呼ぶぞ?」

“トリクシー”という言葉にアリーは思い切り反応を示した。
先ほどまで人をからかうような目をしていたが今は感情が読み取れないほど暗い。
明らかにそれに対しマイナスの感情を持っている。

「…捕まったら救出の努力するよ。」
「なら良いんだよ。っつうか本当にトリクシー嫌いかい?」
「嫌いじゃないよ!ただ、なんか…。あ、もう準備だからいくよ、じゃね。」

アリーは慌てて皿に残っている物を掻きこみ足早に部屋を去っていく。
それからどこかで扉の閉まる音がし、無音になった。
アルも程なくして階を上がっていった。

「あの、トリクシーって?」

奏美が口を開く。

「あいつの結婚相手…政略だけどな。さばさばしてる性格だから押されてんだよ。」
「え、結婚?まだ若いよね?あたしより年下なのは分かるけどいくつ?」
「アリーか?十六だ。アルは十七だけどやつら同い年だぞ。この間十七になったはずだから。」
「へー…私達と同じくらいだと思ってたけど年上。あ、言葉遣い変えたほういいのかな。アリー先輩アル先輩?」
「いやいいよ。あいつらそういうの好きじゃねえし。
 …奏美、何があっても生きろよ。戦がない世界なら精神的に来るだろう。俺もできたら途中からでもいくから。」
「お気遣いありがと。でもいいよ、レイも仕事あるだろうし。心配しないで。」
「そうか…。想良も気負うなよ。難しいだろうからな。」
「うん。レイさんて優しいねえ…。」
「あたしは?」
「お前は俺に迷惑かけるな。だったら何しようが構わねえ。」
「あいかわらずひっでえ!」

奏音が言うがそれは颯爽様式美となっておりもうだれも反応しなかった。





まだ夜も明けきらない時刻。頬を撫でる風によって奏美は起こされた。
眠気の抜けきらない頭でそういえば仕事の見学をするのだということを思い出す。
ただ明日、とは言っていたけど早すぎるだろうと思った。
起き上がり伸びをすると小さな紙切れが宙を待った。
それは人の形をしていて、奏美はどこか夢を見ているようにそれについていく。
部屋を出、階段を下りる。
そしてひとつの部屋の前に行くとはらりと落ちた。同時に奏美の夢のようなものも覚める。

「入って。確かめたいから。」

中からアリーの声がして言われるままにする。
その部屋の中は武器や、奏美にはよく分からないもので埋め尽くされていた。明かりと共にアリーが出てくる。

「君は僕ら兄弟とは大きさが違うからねー。しいて言えばレイが近いかな。」
「え、ウチに必要なの?」
「そりゃね。ある程度は自分の身は自分で守ってよ。だからこれ…ナイフとかあとクナイ。
 日本人だし存在は知ってるよね?」
「知ってるけど…使い方なんてよく分からないよ。むしろ使う人がいない。」
「壁登ったりとかね。まああると便利だよ。あととりあえず胴体と足…これ付けてね。じゃ、外でねー。」
「え、教えてくれても…!」
「大丈夫大丈夫、じゃ、五分で。」

奏美の声も聞かずアリーは部屋から出て行ってしまう。仕方が無いのでまず渡された鎧のようなものを見る。
漫画でモブが着ているのを見たことがあるような、いわゆる飾り気の無いものだ。
どうせならもう少し可愛げのあるものが、と思ったが首を振る。
自分より身長が高いのはエドとアルだがエドは体格がよすぎるしアルは背が高すぎる。
それに自分の身長で女らしいものなのほとんど無かった。
ふと元の世界の事を思い出し寂しくなる。
だが、そんな事を思っている暇など無い。自分は今、戦に行くのだから。
記憶と想像を頼りに鎧を付ける。
難しいだろうと思ったが、位置さえ合えばどうやら勝手に装備されるらしい。
立ち上がると重さによろめいたがこれも大事なことだと思って一歩、前に踏み出した。

「あ、来たんだ。」
「うん。…なにそれ。」
「歩きで移動したいって言うんなら良いけどね。でも重いと思うよ〜?」
「移動手段なの?」
「うん。乗って。なにがなんでも覚えてもらわなきゃ。」

アリーに促され機械に足をかけ、立つ。
その後ろからアリーも乗り、補助具を持ち手に掛ける。
すると一瞬機械が光り、アリーの声と共に空へと舞い上がったのだった。

「飛んだ!凄いね、これ!」
「そう?まあこれ滅多に使わないしね、目立つから。」
「え。」
「説明するよ!今回はさる大国同士の衝突、僕は片方の陣…要を混乱させる。多少は殺すよ!
 で、上手くいけば本家が仕える所と同盟。ま、固い国だから混乱させて戦を立て直させるのが精々かな。
 時間を稼ぐのがあくまでの目的、でも攻撃されたらいくらでもぶっ殺してね!」
「殺す殺す…って物騒だよ…。」
「それが当たり前だから!あは、楽しみだね、仕事だ、仕事、あはは!」
「ちょっとー…。」

後ろで笑い出したアリーに抗議の声を上げるが届いていないようだ。
ただ、木の上におろすのでできるだけそこから動かないように、もしなにかあったら飛び降りて
自分のほうまで駆け抜けてくるようにとの事だった。
あまりにも中途半端な指示に、奏美はだんだんと心配になってくるのだった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.53 )
   
日時: 2012/02/28 20:40
名前: あづま ID:kGhJ4l4c

光が顔に当たり目を覚ました想良はすでに奏美がいないことに気がついた。
それにどうやら今日は自分が一番遅かったらしい。
いつもは大口を開けて寝ている奏音も今日はすでに起きているらしく、下から声が聞こえてくる。
そういえば奏美達はいつ帰ってくるとは言わなかった。
今日すぐ帰ってくるとは限らない。もしすぐ来れるのならば時間の条件に無理がある。
ご飯を食べたら集落に行ってみよう、想良は思い下におりて行く。

「あ、想良。起こしたほうがいいか迷ったんだがな。」
「寝坊かな。ごめんなさい。」
「違うけどな、お前が起きて来ないなんて珍しいからさ。体壊したのかと思っただけだよ。」
「レイってあたし以外には優しいよね…。」
「そりゃおめえが余計なことばっかりするからだろ?普通にしてりゃあそれなりにはするさ。」
「これがあたしの普通なんですけどね?」
「世間一般で、な。お前基準だったら一生俺は区別するね。」
「奏音さん頑張ってよ。いただきまーす。」

朝食を口に運びながら想良は考える。
走りこみや水汲み等、日課としている物が終わり時間があった場合集落には顔を出している。
人数が数十人位しかいないのでもう全員の顔は覚えている。溶け込む、という第一段階はないに等しい。
となるとやはり情報収集が大きな鍵となる。
だが、相手はプロだろう。そう簡単にはいかないはず。
どうすれば情報を聞きだせるか、想良は悩んでいったのだった。





「まだ着かない?」
「とりあえずあの山におりてそれからふもとの陣まで移動。そのまえにお前を木の上にやらなきゃなんないけど。」
「ってことはあと一時間もすればいいかんじ?」
「そうだねー。あは、楽しみー。」
「……。」

朝、日が昇る前に出発したが今はもう日も高く上がっている。食事などは空を飛びながらということで非常に食べづらい。
アリーが風の抵抗を少なくしてくれているとはいえ、地に足をつけ食べることが常の奏美にとっては苦しいことだった。
アリーが指した山がぐんぐんと近づいてくる。それに比例し、奏美の心もだんだんと重くなっていった。

「よーし。ちょっとこの木の枝乗って、重くてもある程度この太さなら耐えられるはずだし。」
「それウチが重いって言ってる…?」
「僕よりは重いんじゃないのー?はいさっさと乗る。」

不安を覚えつつ木の枝に足をかける。
それは少し揺れはしたが折れる気配はない。すこし、不安が薄れた。
続いてアリーも同じ枝に移り、先ほどまで乗っていた機械を叩くと小さな音を出し消えてしまった。
補助具を付け直したアリーが奏美の手を取り説明する。

「すぐ、って訳じゃないけどあそこに陣が見えるでしょ。…壁も作らないかぁ、自信家なのかな?」
「え?」
「別に。一番こちら側に座っているのが今回の標的。野戦が大好きな人。よく見えるね?」
「うん。でもこれ近くない?百メートルないでしょ。」
「もしも君に何かあったら僕が困るからね。じゃ、よく見ててよー。」

ニッ、と笑みを見せアリーは木から飛び下りた。そしてすぐに走って行ってしまう。
奏美は自分がいなくなれば困る、と言われた事にドキリとしたがそういえば誰かを呼ばれるのだったと思い出す。
なんだか残念な気がして、それに気づいて首を振った。

(政略とはいえ、結婚してるんだよなぁ。なんか嫌いって訳でもなさそうだったし。)

奏美は昨夜のことを思い出した。
レイに結婚相手…トリクシーと言ったか、その人が嫌いなのかと言われた時すぐに反論していた。
それでもなんだかやりきれない気持ちで頭を抱える。

(つり橋効果だ…空、飛んだし。…ていうか、女?だし…。)

なんとなくもやもやとした感情を抱えつつ奏美はアリーが行動するのを待った。





「こんにちはー。」
「あ、ソラだ!ねぇ、またあれ折ってよ!」
「いいよ。今回は何がいい?」
「とぶやつ!」
「いいよー。じゃ、前とは違う奴作ってみよっか。」
「やったぁ!」

朝食を食べ終え、集落にやって来た想良はどうするべきか分からずいつもと同じように子供達と遊んでいた。
初めて行った時子どもでも武器を携帯しているのに驚かされたが今はもう慣れてしまった。
それに、社会の教科書に乗っていた写真を思い出し戦争なんだなぁと思ったくらいだった。
子どもは戦争の為の兵器じゃない…銃を持った子供とそんな字が書かれていた物があった気がする。

「はい、できたよ。」
「うわぁすっごーい!」
「ソラってすごいね!紙だけで色んなの作れちゃうんだね!」
「練習すればみんなもできるよー。」
「でも俺角があわせらんなかったじゃん。ソラがすごいんだよ!」
「私も最初そうだったよ。でもずっとやれば自然とできるようになるから。」
「ふーん。あ、待てよ!もってくなよー!」

子どもたちはなぜか折紙に夢中だ。
自分が何か作るたび、時には大人も混じり出来上がった物を見に来るのだ。
紙があればと教えたりもしたがきれいにできたのは技術者と呼ばれていたほんの数人の人だけだったのだ。
ほとんどの人は角を合わせるという初歩で脱落してしまった。
それで想良も技術者にならないかと言われたがその時はやんわりと断ったのだった。

(…もしかしたら。)

これは、使えるかもしれない。
でも、いきなり修行させてくださいは変だ。自分は一度断っている。
ならば…もっとすごいのを作ってみればいいのだろうか。

「ねえみんな、もっと細かいの作ってみようか?」
「え、これよりすげえのできるの?」
「じゃ、見ててねー。」

以前、一度だけ折ったことのある物を思い出しながら折っていく。
ただし結構前、記憶もあいまいなので難しかった。
細かいのを折る、という言葉に大人を連れてきた子供がいた。想良は目を上げ、しめたと思う。
自分をスカウトした人だ…。確か、ラリーと名乗っていた。

「はい、できたよ。」
「箱だよね?」
「そうかなぁ?」

箱にしか見えないという子供たちの前で組み替えていく。
すると箱だった物が花の形になった。
皆おもわず感嘆の声をあげる。

「わぁ、すっごーい!」
「お花だ!ソラってどうしてこういうのができるの?」
「あー…どっかで読んだんだよ。」
「じゃあそれ思い出したら教えて!ね、いいでしょー?」
「そうだねー、いいよ。」

そしてまた箱に戻すと子どもたちはさらに声をあげた。
そろそろ日も暮れてきたので帰ると言うと駄々をこねる小さな子もいた。
それを先ほどの技術者がなだめる。

「じゃあ、私はこれで。またねー。」
「ばいばーい!」

想良が坂道を歩いていると、後ろから一人走ってきた。先ほどの技術者である。
声をかけられ後ろを振り向くと、その人は息を切らせていた。

「あの?」
「あぁ、やっぱりさ、君技術者にならないか?一枚の紙からあんなに作れるんだ。絶対、いけるよ。」

彼の言葉に想良はやった、と思った。

「でも、私そういうの全然やった事ないんで…。」
「そんな、おれが教えるから、な?」
「うーん…じゃ、行けるときに……っていうのは?」
「いいよ!おれ歓迎するぜ!じゃあ、よろしくな!待ってる!」

想良の返事を聞きラリーは来た道を走って帰っていった。
途中、転んだのを見てなぜ彼が技術者になっているのかが分からなかったがそれを知るのは後の話だった。
一歩前進したように思い、想良の気持ちも晴れやかだった。

「ただいまー!」
「お、元気じゃねえか。前進したな?」
「分かるの?」
「だって隠してねえだろ?素人でも分かると思うよ、そんなんじゃな。」
「そっかぁ。あ、私技術者になります!ラリーさんにスカウトされました!」
「ラリーか…。あいつ鈍くさいからな…お前、使われんじゃねえの?」
「そうかもしんないけど…。」
「アルー、さっさと俺に飯くれ。奏音が起きねえ内に食ってさがっからよ。」

例の言葉にアルが今日の夕食を運んでくる。
それを急いで食べたレイは自分が部屋に入るまで奏音を呼ばないようにと念を押し階段を上っていった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.54 )
   
日時: 2012/02/28 20:42
名前: あづま ID:kGhJ4l4c

奏美と別れた後、アリーは少し離れたところで様子を伺っていた。
陣の周りには見張りがいない。さらにここの陣大将と言ってもいい軍師を守る人もあまりに少ない。
両脇に屈強な男を置いている。ただそれだけであった。
余程自分の策に自信があるのか、それとも罠があるのか…。
できるだけ音を立てず反対側へ回ればやっと、見張りを確認する。
どうやら、陣との通信手段を持っているようだ。ならば、気絶させないほうがいいかもしれない。
フッとアリーは笑うとそこから一直線に陣へと躍り出た。

「おや…来るとは思っていたけど、小さな子が一人?」
「敵国じゃないよ、僕はね。…攻撃、しないの?」

アリーの言葉に軍師の両脇に立っていた者たちは眉をひそめ、武器を構えた。
殺意がない…と思った刹那、後ろからの物音に気づきパッと避ける。後には、針が刺さっていた。
そしてそれがつながっている先には兵士。数十人だろうか。

「囮?…僕は敵側じゃないんだけど。」
「攻撃して欲しかったのでしょう?小さな子。」
「そっか。」

腰に下げた剣を取り軍師に近づき、相手側に攻撃を躊躇させる。投げられたのは針、少しでも間違えば軍師も犠牲だ。
彼の髪を掴み無理矢理顔を近づけ、囁く。

「攻撃されたから、反撃しても、いいよね?」

返事など待たずアリーは背後にいる男の首を一突きする。
なんの抵抗もなかった所から見てどうやら彼らは見せかけ。見た目のみ強そうな男を侍らせていたようだ。
反対側に移動するついでに軍師の片方の腕も刺す。士気は下がるだろうか。
もう片方の男も胸を一突き。
男が苦痛叫び声を上げのた打ち回る。ぬらぬらと口から血が溢れ出てきたのをアリーは目の端で捉えた。

「あ、少しずれちゃった。ごめん、もう助からないよ。」
「あなたは…!」

軍師の怒りの声を背後で聞き、思わず笑みがこぼれた。
止めをさそうと構えた剣を男の服で血を拭く。そしてやって来た一隊を眺める。
後ろを取られてはならないので脇によけ、アリーは今回の目的を話す。

「僕がここに来た理由は簡単です。僕が仕える国にフェビアン様、あなたの頭脳を貸していただきたい。」
「人を殺したあなたに、誰か力を貸すと?」
「そう。…この言葉遣いはやだな。じゃ、覚えてもらうだけにしよう!」
「…油断をせず、捕らえなさい。おそらくどこかの国のスパイでしょう。吐かせる様に。」
「あは、捕らえる?」

針が飛んでくる。しかも先ほど飛ばしたのより倍近くいる。
力を使えばどれを得意とするかがばれてしまうのでアリーは乗り気でなかった。
突風が吹き、針の軌道が乱れる。何本かは味方に当たったようだ。
針につながれた糸で腕やらが切られてしまった人もいる。

「あ、毒針か。苦しいね、楽にしてあげよう!」
「が、あっ!」
「あは、麻痺薬だろうけど。まぁ、攻撃をした相手の動きが鈍ったら斬るよね、軍師様?」
「……。」
「顔青いよ?あ、これちょうだい。切れ味良さそう。」

すでに血にまみれ斬る事が難しくなってきた剣をしまい、針の効果に苦しむ一人の兵士から剣を奪う。そして一突き。
どさりとこと切れた兵士を盾にし、小隊の体長と思しき人物まで突き進む。
アリーが近づきよく見てみればそれは先ほどの見張り兵のようだった。

「殺しとくべきだったね。おやすみなさぁい。」
「貴様…!」
「おっと。」

それは自分から刺されに来た。しかも腹だ。
そして剣を持っていたアリーの右腕をしっかりと掴み逃がさないようにとする。
後ろからまだ残っている十五人ほどがやって来る。
アリーは靴に仕込んである仕掛けをもう片方の足でいじりだす。

「ごめん、利き腕は左だから。それに、至近距離でくらいたいの?」
「なにを?」
「はは、分かるかな?」

アリーの言葉に男は身構える。どんな大技が来るか、近づいてきた一段も離れたところで足を止めた。
その男の足に沿いアリーは足を上げる。鎧のほんの隙間…太ももの付け根にずぶり、とやった。

「麻痺薬でしたー。なんかの技じゃなかったね!僕が作ったの、どう?」
「…!っ、…!」
「喋れなくなるほど効果はいい、ただし怪我人。改良しなきゃね。協力ありがとう!」

奪った剣を彼の心臓へ突き刺し、彼の剣は奪い取る。そして後ろからやって来た人たちに向かい隊長を投げ飛ばす。
ビクビクと痙攣し始め、泡を吹き死んだ。どうやら一人、体長の体を貫通したそれに巻き込まれている。
眉間を刺し、苦しみから解放した。
しかしその時、頭の中がさめるような、不思議な感覚が襲う。
直感から言うとそれはフェビアンが関わっている。どんな攻撃がくるか、アリーは構える。

「…?軍師様、戦う?」
「…捕らえ、なさい。」
「基本姿勢は変わらない…かぁ。策は曲げることも大切だよ。…ん?」

攻撃されるか、という警戒も必要なかったようだ。
しかし拭いきれない違和感にアリーは心の中で焦る。相手の意図がよくわからない。
自らの薬にやられ、鈍く呻く喉を切り裂く。これは救いなのだ、とかつての言葉が頭にこだまする。
動けない七人を始末することなど造作もなかった。始末し終え、一息ついたところに剣を捉えた。
不意打ちに思わず男の腕を掴んでしまう。
間髪いれず針の攻撃が踊り、それを男を盾にしながら防ぎつつ左手で剣を抜く。
痙攣する男に止めを刺すと数泊後右腕に重さがかかりよろめいた。
そしてまだ動ける戦う意思を持つ兵士らを相手にしていった。
結局残ったのはアリーと軍師フェビアン、そして怖気づいたのか両手を挙げ不戦の意を表している二人だけだった。
生かしておいたあの男もいつの間にかこと切れている。

「何人殺した…?あ、でも七人は自爆みたいなもんだし十六人かな?うわぁ…。」
「な…おま、え……。」

力が抜けてしまったのだろう、軍師は崩れ落ちた。
アリーが覗き込めばはらはらと涙がこぼれている。思わず笑いそうになるのをこらえアリーは言った。

「信頼してたんだね、兵士のこと。それとも自分の策かな?軍師様は策に酔ってる気がするよ。
 策だけを愛してる。」
「……いきなり、なに…を?」
「殺した奴の仲間にならない?君の策は敵を殺してる。それに、君の軍にも戦死者はいるでしょ。
 君の策は味方も殺してるんだよ。自覚してる?」

喋らないか、アリーは思った。
さすが、名の売れている軍師だけある――

「……。」
「策の、うわべだけを愛してそうだね、軍師様。こんなに殺されたのって初めて?
 それとも目の前でこんなに味方が死んだのが初めて?死を自覚したのが始めて?ま、軍師様は優秀だもんね。」

淡々とつむがれるアリーの言葉にフェビアンは涙を流し続けていた。
水音と、しゃくり上げるのが静かになった陣の中に大きな音を出す。
目をぬぐう手を押さえ、先ほどと同じように髪を掴みアリーは自分のほうを向かせた。
途端、ジクリと身体が熱を持った。アリーは違和感の正体をなんとなく悟る。
唾を吐きかけられ、さらにぬかるんだ地に汚されるのも構わずその顔をじっと見つめた。
片腕は押さえられもう片方は刺され動かすことができないようで抵抗をしない。
涙を流しながらも睨まれている事にアリーは何かを感じながらその顔を見続けた。
口を開きかけたその時、何かが風を切る音が聞こえた。
防御をしようとした瞬間、それに腕をつかまれる。

「アリー…やりすぎだ。」
「エド!女はもういいの?」
「はぁ…お前戦闘狂なのは知ってたけどここまでやるか?」
「徹底的に、だよ。あは、痛いなぁ。爪食い込んでる。」
「奏美がいること覚えてたか?」
「忘れてたなあ。でも今回抑え目だったし?」
「馬鹿!これトラウマ確実だぞ。」
「でも戦地行ったらひどいでしょう。これくらい耐えないと。」
「あーあ、いいや。俺奏美迎えに行くからなんとかしろよ。」

軽く手を振り、フェビアンに小さな声で侘びをしたエドは奏美がいる方向へと歩いていく。
その後姿を見送ったアリーはフェビアンに向き直る。

「まあ、ご検討のほどをって事で。」
「……。」
「じゃね。」
「…こい。」
「は?」
「私は国の塔にいる。来れば分かるだろう。もし、誰にも見つからず私の希望をかなえてくれれば。」
「契約成立?」
「いいだろう。」
「そう。じゃ、お楽しみに。」

軽く笑って、エドの後を追う。
なぜだかあの軍師と会えるというのが楽しみでならなかった。しかし、それがなぜなのかは分からなかった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.55 )
   
日時: 2012/02/28 20:43
名前: あづま ID:kGhJ4l4c

翌日いつもより早く起きた想良は日課を終わらせ朝食を食べてから集落へと向かった。
武器や力の練習をしている子供たちに声をかけ、技術者が住む家へ向かう。
そこは仕事場と居住場所が一つになっており、技術者とのその家族は皆いっしょに暮らすのだ。
仕事場を覗けば今まさに何かを作っている。
邪魔になってはいけないと思い想良は裏の方…居住場所のほうに回った。

「あ、ソラー!今日はもう終わったの?」
「そう。それでね、ここに弟子入りすることになったから来たんだよ。」
「ほんとー?じゃあ俺といっしょにやろっかぁ!」

キルシと言う技術者の最高責任者の息子がやって来た想良に気づき、彼といっしょに行う事となった。
ラリーはキルシ曰く今は絞られているそうだ。どうやらヘマをやったらしい。
だが、それもいつもの事なのだと言う。むしろ、起こられない日が彼には無いと言っても過言ではないようだ。

「おかしいよな、なんでラリーが技術者なれたんだろ。」
「なんか素質じゃないの?すごい事ができるとかさ。」
「ラリーの親も技術者だったのは知ってるんだけどさ、あの人達はすごかったってきいたよ。
 でも死んじゃったんだよね。」
「そうなの…?」
「うん。戦に出てそれっきり。俺も姉ちゃん死んじゃったし、母さんもいない。」

想良は声を失った。
まだ十にも満たない子供の口から淡々と紡がれる死について考えさせられてしまったからだ。
彼らは常に死と隣り合わせ。
戦争なんてとっくの昔に終わってしまった、むしろ経験した人など既に皆死んでしまった時代を想良は生きてきた。
それを知ることができるのはもう、本や漫画やアニメといった経験者が原作をしていても所詮は架空の物しかない。
ふと、奏美のことが頭をよぎる。
大丈夫だろうと思っていたが彼女は今戦場に行っているはずだ。
死という自分よりも小さな子供から言われた言葉で実感し、ぐっと胸が締め付けられた。

「ずるいよね。」
「え?」

突然のキルシの言葉。
思わず聞き返す。

「丘の上の人達。いつの間にか来て、勝手にここを治めるようになったの。」
「そうなんだ…。」

エドたちの事だというのは深く聞かないでもわかった。
この集落はあの家から見下ろせる。
今まで考えたことも無かったが、それは権力…力の差を表していたのかもしれない。

「あの人たちが来てから、俺たちの集落で死ぬ人が多くなった。
 姉ちゃん、結婚する直前だったんだよ?それなのにあいつらが仕事だって言って、五人連れてった。
 みんな、殺されたんだ…。」
「……。」
「仕事は分かってる。あいつらが来る前から戦争に行くこともあったって父さんが言ってた。
 でもそれってみんな男だったんだよ。あいつらが来てから女も行くようになった。」
「うん…。」
「こっち側は死ぬ人も多いのにあいつらは来てから誰も死んでない。おかしいよ…ずるい…!」

キルシはそれきり黙ってしまった。
顔を見れば、泣いていた。
隣に座って肩を抱く。何も言われなかったので想良はそのまま隣に座り続けた。
想良は思った。
自分の、平和ぼけした価値観から言ってもあまりにい酷くないかと。
戦争があれば、誰かしら死ぬ。誰が生き残れるかだなんて誰にもわからない事だ。
でも、結婚する前の人を連れて行くなんてあまりにも残酷すぎる。
眠ってしまったのか、もたれかかって来たキルシを起こさないように運んで行った。
するとそこへラリーがやって来た。いつもは持っていない、仕事道具を抱えている。

「ごめん!なんか子供達が来てたって言っててさ、あれ?」
「あ、キルシ君寝ちゃって…。」
「そうかぁ。珍しいなあ。いつもおれ玩具になってんのにな。どうしたの?」
「あの…。」

想良はキルシから聞いたことをすべて話した。
はじめはラリーの事も入っていたのでためらったが彼が促したので続けた。
一度話してしまえば後は最後まで次々と言葉がつながっていった。
次々と出で来る言葉に想良自身驚いていた。
ラリーは何の感情も見せず、ただ彼女の話を聞いていた。

「そっか。」
「うん…。」
「死人が多くなったのは事実。でも、戦に出るようになってお金も回るようになったからなぁ。
 誰かが死ねば、その分お金で解決しようとしてるのか分かんないけど貰えるからね…。」
「お金かぁ…。」
「そうなんだ。……現状、あの人たちに不満が出てるのもおれは否定しない。いずれ君の耳にも入ると思う。
 でも君は君の信じるようにいきなよ。信じれば、それが救いになるだろうしね。」
「そうだね。うん、私は私のやりたいようにするよ。よし、これからご教授よろしくお願いします!」
「あー…その事なんだけど。」
「え?」
「今日さ、これから集会があって…。想良はよくここに来るけどここの人間じゃないだろ?
 だから駄目でさ…いつ終わるかも分かんないし、明日からでいいかな。」
「そっかぁ、残念。」
「どこに住んでるか教えてくれたら迎えにいけるんだけど、お忍びって言うし、ね?」
「うん。ごめんね、迷惑かけちゃって。」

ラリーは首を振った。
そして別れを告げ、集会場といわれている建物に躓きながら走っていった。
それを見届け、人が見ていないことを気にかけながら家へと戻っていったのだった。





「あーお帰りー。」
「ただいま。奏音さん、レイさんは?」
「なんか部屋篭っちゃってさぁ、あたし締め出されちゃった。ひどいよ!」

机をたたき、奏音は突っ伏した。それをアルが慰めるように肩をなでる。
それをいい事に奏音はアルに飛び掛り、二人で床に転げ落ちた。アルは不快そうな顔をしている。

「いだ、いったたあ!ごめん、でも絹の肌っていうの?なんかもうキュって吸い付いてくるから。
 あたしの手に絡み付いて、あ、ごめん!痛い、いたた!」
「奏音さーん…、アル君もやめなよー。力の差っていうのがあるじゃん、ね?」
「……。」
「いでっ!舌打ちされた…!」

想良の一言で手を動かすのを止めた奏音をアルは舌打ちして避けた。
先ほど気にかけていたとは思えない扱いで、奏音は思い切り床に叩きつけられてしまった。
そしてアルは椅子に腰掛ける。我関せず、といった様子だ。

「……。」
「ひでー。想良ちゃん、収穫ってあった?」
「集落の人は不満を持ってるってだけ…。キルシ君泣いてたしなぁ、よっぽど圧政なのかなぁって。」
「想良ちゃーん、もう!演技でしょ、これ。」
「あっ。」
「忘れてたんだ。でもそれを忘れさせるくらい演技がすごいってことか。すごっ。」

集落の人々を巻き込んでいる、それはレイが言っていたしアリーも認めていた。
感じていたものが一気に解けていくのを想良は感じた。

「あれじゃない?小さい子にも演技の教育みたいな。実践に勝るものはないだろうしこっち側に
 スパイが来ないのは怪しすぎるもんね。」
「あぁぁー…じゃ、あれだ。あの集会とかも後つけるべきだったかな。」
「今から行けばいいよ。むしろ一回こっち来て正解じゃない?」
「なんで?」

想良の質問に奏音は笑う。アルはやはり迷惑そうで上へといってしまった。
それを見て奏音のテンションも若干下がる。

「すぐつけてったら逆に警戒心もあるだろうし、一回帰って安心させられた。正しかったんじゃない?」
「そっか…奏音さんすごいね。私ならぜんぜん分かんなかったよ。」
「漫画とか資料変わりに読むしね。そういうシチュが結構あるのよ、頑張って来て!」
「うん、行って来ます!」
メンテ

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