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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.61 )
   
日時: 2012/03/07 14:07
名前: あづま ID:OQcm08Vs

「眠い…俺さっさと寝てえんだけど。」
「だって冷蔵庫無いんだもん。いっつもアル君やってたから気づかなかった。」
「我慢しろ。オレ氷作れねえもん。」
「あーぁ、俺仕事あるんだけどな?」
「そうなの?でもエドさんは女収集がてらしてるみたいだしアル君は初めて会った時…ダイアナさんと一緒
 ってことは仕事してたんだよね?アリーも今いないし。レイさんのだけ仕事見てない気がする。」
「俺は特殊なのさ。来たら長時間いねぇし報酬はたんまりよ。」
「でもしてねえって思われてる時点で駄目だな。想良、オレらは寝ようぜ。」
「えー…。」
「まだかかんだろ?こいつに任しときゃあ十分よ。信頼してるぜ、義兄さまよ。」

そう言われ、レイが常に氷を作り続ける羽目になったのは三時間ほど前。
想良は申し訳なさそうにしていたがトリクシーに無理矢理連れて行かれてしまった。
奏音は食事を終えてすぐ、上へ消えてしまった。大の字で寝ているのだろうとレイは推測する。
外はもう既に明るい。飛びかける意識を慌てて引き止める。だがしかし、それは波の如く次々とやってくるのだ。
ただでさえ眠いというのに力を使い続けることによってさらにそれが進む。
自分の力の量の少なささを呪いながらも氷を継ぎ足す。今度は大きめのを作り、しばし休憩を取る。

「血…誰のだよ…。」

しかし力を使わないことによる休息の間、手元にあるのはあの布切れのみ。
自然と、それに考えが集中してしまった。だが、吐き気がこみ上げそれを視界から外す。
血を見るのは好きではない。
向こうで何が起きたのか、アリーから送られてきたメッセージでは正確な事を察する事ができない。
奏美はダイアナによってある程度の事はできるし、エド曰く反射力もいい。
だが、そのある程度の事はダイアナがいる間に行った言わば申し訳程度のものだ。
記憶の中では訓練を行っていない時期は無いといえるこの世界の人たちに太刀打ちできるのだろうか。
レイは考えたが分からない。
優秀ではなかった自分でも訓練は泣きながらやったのを覚えている。
できなければ打たれ、痛みに対する抗体と体に覚えさせ反応し防ぐ術を覚えさせられた。
彼らの祖母も地球からやってきたが彼女は戦う術と頭脳を持っていた。
だが、戦も知らない彼女らを動かすのは早まったのではと思い始めた。
しかしその時扉が叩かれ、考えを中断させる。
誰か来たのだろうか、そう思って開ければエドが立っていた。誰かを負ぶっている。

「おう。…なんか顔暗くないか?」
「なことねぇよ。寝てねえだけだ。襲撃されたそうじゃねえか、大丈夫か?つーかそれ誰。」
「捕虜だそうだ…あれだ、あそこ行き。」
「へぇ…まだやってんのか。で、アリーと奏美は?」
「今奏美をかついで来るからこいつ預かっててくれ。なんか睡眠薬飲ませたらしいけど一応な。」
「担いで…怪我したのか?!」

だがエドは玄関先にその人間を置くと走って行ってしまった。
余程重体なのか、その心配がレイにかかる。
奏音を呼ぼうにもここから離れた場合何が起こるかわからない。
だが、エドは奏美を負ぶってすぐに戻ってきた。アリーも後ろからついてくる。

「よいせ…と。」
「斬られてるじゃねえか!ったく…手当てしたのか?」
「毒塗ってないみたいだしせいぜい化膿するくらいだよ。手当てしてる暇無かったしね。」
「顔だぞ、か・お!」
「うるさいなぁ。僕疲れてんだからぁ。」
「まだ朝早いほうだぞ。みんな起きちゃうじゃないか。」
「…こいつはいいや、どっかに縛っておこ。寝る…。」

そういってアリーは捕虜を引きずりながら階段を上っていく。
エドがため息をついたのを見てレイは理由を聞いた。

「あぁ、なんか毒受けたっぽくてな。でも…うん、解毒してたんだな。」
「冷静じゃねえか。弟が毒受けたってのによ。」
「俺は信頼して」

その時、アリーの叫び声が響いた。
何事かと急いで階段を上がれば彼の叫び声に奏音と想良も起きてきたところだった。

「あれ、奏美…?」
「あ、後でな。疲れたらしくて今寝てるから。」
「ごめーん、妹がさ…でアリーちゃんどったの?」
「奏美寝かせてこよっか。かしてー。」

想良がエドから奏美を受け取り来た道を戻る。
一瞬、アリーが手を離して廊下に堂々と放置されている捕虜を見たが頭が働いていないらしくそのまま歩を進める。
身長差があるので足を引きずってしまっているがしっかりとした足取りにエドは感心した。

「トリクシーか?」
「んー…あら、アリーちゃん押されてる。」
「関わるな。俺らも巻き込まれるぞ。」

だがエドの声は明らかに楽しみを帯びている。
確かにアリーの反応は今まで見せたことのないような反応である。
人をからかうような言動と生意気な口調は消えうせ、単純な罵倒を繰り返しながらトリクシーから逃げようともがいていた。

「痛い!離せ、離して!馬鹿ぁ!」
「だってよ、いつぶり?いっつもオレが来るときいねーんだもん。離さねえよ!」
「馬鹿!僕は疲れてんの、分かる?離せ怪力女!」
「怪力は事実だしな。なんならよぉ、オレに力のみで勝ってみろって、な?」
「馬鹿でしょ?!なんで怪力衆のお前に勝てるの!本気で思ってる、馬鹿?」
「思ってねえから言ってんだよ、離さねー。」

余裕を見せ、笑いながらトリクシーはアリーを捕獲し続けている。
想良が戻ってきて二人の様子を見、それから三人のほうを見た。
彼女の目は説明を求めている。その役目はレイが引き受け、奏音とエドは未だ格闘を続ける二人を見ていた。

「そうなんだ。…トリクシー、レイさんがちゃんとやってくれてたらできてる筈だからさ。
 一回離して下におりよ?」
「マジ?よし、行こうか。」
「離してよ…。」

想良の言葉を聞きトリクシーはアリーから離れたが手は繋いだままだった。
居心地悪そうにアリーは皆から顔を背けた。そしてそのまま拗ねた弟のようにトリクシーに引っ張られていく。

「姉弟みたい…。」
「身長はアリーのほうが大きいけどねー。トリクシーのほうが大人な感じかも。」

奏音と想良は互いに笑いあい、彼らの後を追った。
残ったエドとレイは下の人たちに聞こえないよう、気にかけながら話していく。

「なんだか微笑ましいな。俺もいつかはああなりたいかもなー。」
「なら結婚すりゃいい話だろ?エドなら相手もいるだろうさ。」
「俺は一人の妻より百人の愛人がいいね。レイこそいいんじゃないか?奏音とかと結構お似合いだと思うが。」
「無理だな。俺には合わねえよ。」
「そうかあ?ま、お前も早く身を固めろ。政略でも恋愛でもどちらでも良いけどな、女はいると結構いいぞ。
 ……そんな事より、だ。」

エドのいつもとは違う雰囲気にレイも気を引き締める。
どこかおちゃらけたそれは消え、周りの空気も変わった。

「今回の件で奏美はおそらく相当なダメージを負っている。頬の傷は…まあ最悪目立たない様にする位なら出来るだろう。
 精神面だ。彼女は人を殺してしまった。自己防衛とはいえ…。」
「ああ…でも覚悟があったはずだ。いつかは通る門…って言ってたっけな。それで落ち込むんならその程度だったんだろうよ。
 ただこれからは奏美だけじゃねえ。奏音も想良もいずれは経験するだろうさ。」
「冷たいな…それ位じゃないとここじゃ生きていけないかも知れないけど。」
「殺せねえ俺が言うなって話だけどな。俺らがどう言っても何をやっても、立ち直れるかは本人次第だ。」
「そだな。…寝たらどうだ?寝てないんだろ。」
「そうだな…そうさせて貰う。なんか重要なことがあったら起こしてくれ。」
「ああ。ま、ゆっくり寝れるようにな。」

レイが自分の部屋に消えるのを確認し、エドは捕虜を自分の部屋に縛り付けに行った。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.62 )
   
日時: 2012/03/07 14:10
名前: あづま ID:OQcm08Vs

エドが下に行くと、先に行っていた人々はもう席についており想良が作ったものを切り分けていた。

「へえ…これって何だ?」
「タルトっていうんだよ。ケーキみたいなやつかな?ただ材料が曖昧だったしこっちにはあんまり無いし…。
 味は保障したいんだけど…ねぇ?」
「オレらは知らないし保障なんてすんな。あ、オレとアリーは一緒の皿で良いぞー。」
「分かったー。ラブラブー。」
「ラブラブ?…っていうか別々で良いよ…食べ辛いじゃん。」
「やっとけやっとけ。俺も女とはよくやるし。」
「あたしはやった事ないよ?!なんだろ、日本と外国の差なのかな?日本では痛いカップルぐらいじゃね?」
「私は分かんないなー…彼氏いないし。はい、どうぞ」
「一緒なんだ…。」
「いいじゃねーか、オレら夫婦だし?」

トリクシーにずっと押されているアリーを見てエドは苦笑する。
元々人と関わる事を嫌っていたのか分からないが身内以外にはずっと押されぎみの彼を知っていたからだ。

「なんかさぁ。」
「なんだ?」
「わんこといいアリーちゃんといいなんか…本当にエドと兄弟?なんか雰囲気違う気がするや。」
「わんこ…?」
「レイさんの事だよ。奏音さんにペットみたいにされてる。」
「ありゃー…。兄弟は兄弟だけど俺とレイたちは父親が違うな。というより俺だけ兄弟で違うんだ。」
「まひえ?わへあいへー?」

タルトを頬張ったまま奏音が口を開く。
もごもごと聞き辛い声ではあったがなんとか察したエドはただ「別に。」と答えた。
ただエドの父親が戦死したため跡継ぎがいない母親は新たな男を探しただけ。それだけの事だった。
説明するに及ばないと考えての発言だった。

「あれ?別々に食べちゃうの?」
「あ?」

しばらく皆が食べている様子を笑顔で眺めていた想良だが不意に口を開いた。
それはアリーとトリクシーに向けられた言葉で二人はそれの意味を理解していない。
できるだけ離れようとしているアリーとそれを押さえているトリクシーは互いに顔を見合わせた。

「何?…こんなくっ付いてるじゃん。別々って?」
「あーんしないの?するもんだと思ってた。」
「ぶっ!そ、想良ちゃん…!やめて!あたしにそんな、いやあああ!」
「あーん…?」
「なんだよそれ。おい地球組、そこだけで勝手に納得してねえであーん話せよ。」
「ひっひゃあはは!真面目!真面目な顔で言っちゃぁ、ダメだよ!はははは!」
「なんか…絶対僕はやらない。」
「オレも…なんか奏音がそう興奮するのって危険な気がするぜ…。」

笑う奏音と引く夫婦。
自分の発言により場の空気が一変してしまった事におろおろする想良と周りを気にせず食べ続けるエドがいた。





「あれ…?」

目を覚ました奏美は自分の体の血が落ちていて服装も変わっていることに気がついた。
周りを見ればあの山小屋ではなく自分たちがこの世界に来てしまってからの活動場所である事も分かった。
頬の傷も触れば痛むがすでに塞がっている。

「…ウチ、なにやってんだろ……。」

下のほうからは姉である奏音の笑い声が聞こえてきた。
奏美は自分がどれくらい寝ていたかは分からない。あまり寝ていないかもしれないし、何日も寝ていたのかもしれない。
ズシリと重い両腕に眠る前のことがフラッシュバックする。
人を、殺した―――
前の晩、奏美は覚悟があると皆の前で言った。
それは本当のことで、どこにも偽りの意識などなかった。血を見る覚悟、これから戦っていく覚悟。
ただ、殺す覚悟だけはしていなかった。レイの言葉が思い出された。
いきなり実践の場は辛いのでは、と確かに言われた。そしてそれを奏美自身が否定した。
いつか通る門ならば、と……。

「いたい…なぁ。」

一人でいるのが怖く、皆のいる下に行こうと思い立ち奏美は立ち上がった。
すでに笑い声は聞こえない。姉が勝手に笑っていたのだろうなと思い、少しだけ心が晴れた。
いつもと変わらない…周りだけ、は。
扉を開け、階段に足をかける。すると、今度は想良の声が聞こえた。

「あ、そういえば帰ってきたんだし締め切りかぁ…。」
「そうだよ。はい、発表。」

アリーの声。奏美はおりるのが躊躇われた。
このまま部屋に戻って、もう一度寝ようか。誰かが来るまで寝たふりでもしていようか。
だが、想良の声に興味を持ってしまいそのままの体勢で耳を澄ませる。

「もっと遅ければなぁ…色々聞けたかもしれないのに。」
「へぇ…なんかやったの?」
「技術者のところに弟子入りしたの。」
「へえ…まあラリーでしょ。あのお人好し…使えるけどね。」
「アリーまでそういうこと言うの?」
「まあ。事実だしね。」

奏美は想良の非難を帯びた口調にチクリと心が痛んだ。その理由はなんだか分からない。
続けられる想良の言葉に耳を澄ました。

「今回は反乱。時期はよく分からないけど一月以内だって。」
「……反乱?」
「そう。…え?間違ってるかな?」
「いや。ただ僕の口調だけで揺らぐって事は自信は少ないんだね。」
「だって帰ってくるの早いんだもん。あ、あと女二人がいない時って言ってた。」
「そっか。」
「うん。あと一番目は炎でナタリーって人と女衆が相手。二番目は氷で捕らえて本家とのパイプ…と薬漬け。
 三番目は風で自分の周りは無風空間だからそこを狙う。大きい人はふらふらしてる。だから多分勘定外。
 …これってあれだよね、エドさん、レイさん、アリーにアルだよね。」
「うん、よくできました!合格したのは想良だけだよ。」
「本当?やった、嬉しい!」
「すげ、アル相手にしたときも想良ちゃん合格だったよね。あたしすげーと思う。」

ゆっくりと、戻っていった。
『合格したのは想良だけだよ。』たった一言。それが重かった。
音を立てないように扉を閉め、目が覚める前と同じように倒れ付す。違うのは、うつ伏せだという事だった。
悔しさで涙が流れてくる。
自分は人を、殺した。想良はただ情報を集めてきただけ。
自分は実践の場に行った。想良は、集落の人たちの協力で危険は無かった。
自分のほうが何倍も危険な事をしたのに、より安全な道を行き本人は不十分だと思っていた内容で合格。
それに自分の味方でいてくれるだろうと思っていた姉も想良をほめた。

(ずるい…ウチの方が頑張った。ウチの方が辛かった…!)

止まらない涙と悔しさ。恨みのようなどろどろとした物。
そして素直に友達の実力を認められない自分への憎悪。
今までに感じた事の無い感情が一度にやってきて奏美は混乱していた。
声を漏らさぬよう服の袖を噛み、奏美は一人涙を流し続けた。





「ところでさ…トリクシー、なんでいるの?」
「良いじゃねえか。オレの第二の故郷みたいなもんだぞ、ここはよ。」
「えー?」
「はは…大方アリーがいつも逃げてるからだろ?」
「それもあるな。んでマティーが行くっていうから付いてきたんだ。」
「ようするにアリーがここに腰を落ち着ければいいんじゃない?夫婦なんでしょ、一緒にいなきゃ。」
「簡単に言ってくれるね…。」

タルトを食べ終え、今は食後の談笑だ。
アリーは下がりたがったがそれはトリクシーが許さず今彼はホールドされ逃げ場を失っている。
結婚という事を知らない奏音と想良は二人に質問し続けていた。
トリクシーが答え、たまにアリーが相槌を打つというスタイルが短時間で形成された。

「でもよかったぁ。合格かぁ、嬉しいよ本当。でも集落の人たちには私負けるよ?キルシ君には騙されたし。」
「そう?僕は合格した事なんて無かったし分かんないなぁ。…キルシが、そっか。なんかあげないとね。」
「え?アリーちゃん強そうじゃんよ。何?外の世界はもっと強いのがうじゃうじゃしてるの?」
「そういう訳じゃないけどね。…エド、寝なよ。運ぶの面倒だし。」
「オレがいるじゃん。エドなんて軽いぞ。」
「トリクシーにはそうかもしれないけど…でもほら、苦労掛けられないから…。」
「アリー…やべえ、超嬉しい!」
「やめて!抱きつかないで!」
「…寝てくるよ。お二人で幸せにな。」
「というか常に後ろから抱かれてるのに今更だよ。」
「想良ちゃんてズバッと言うよね。」

緊張が解けたのか舟を漕ぎ始めたエドは上に行ってしまった。
それを手を振り見送った奏音が口を開く。

「でもアリーちゃんすごいわ。想良ちゃんには諜報、子供達には演技、んで自分らは弱点を知る。
 あたしだったら思いつかないわ。」
「そう。…うん、そうかな?」
「受けとけよ、悪い気はしないだろ?」
「そうかもね。あと想良、集落とはこれからも接していってもらって良いかな。」
「いいよ。でもなんで?」
「依頼はしたけど期間までは言ってないんだ。それに演技と知っている人をいかに間違いだったと
 思い込ませるようなのをできるようにならないとね。」
「私既に騙されてるけどなぁ。うん、いいよ。」
「どうも。頼りになるよ、色々とね。」
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.63 )
   
日時: 2012/03/07 14:15
名前: あづま ID:OQcm08Vs

「おはよ。…ここ、どーこだ。」
「……。」
「もうちょっと怯えるかと思ったけど…ふーん。」

アリーは笑った。一緒に来てもいいといったエドは寝てしまった。
レイも寝ているしトリクシーはあの人らと一緒にいる。
薄暗く、決していい環境とはいえない湿った建物。まだ、誰にも見せた事の無い秘密の場所だった。
微かな呻き声、救いを求める弱々しく恐れを抱かせる声。

「はじめまして。…っはは、今日から僕が君のご主人様だ。」
「……。」

アリーが手を引くとジャリ…という音と共に男が身を乗り出した。猿轡にと噛ませた鎖が引かれたためである。
身体を縄で縛られた男――医者と騙したあのスパイの身体を眺める。
対象の様子を観察する。反応を見るため軽くつまめば、必要以上に身体を震わせた。

「へぇ…そっか。君にはそうだね、麻痺薬の実験体になってもらおう。君みたいな敏感なサンプルはなかなかいないし。
 大丈夫…死にはしないからね。」

死にはしないというアリーの言葉に安心したのか男は身体の力を抜く。
薬を取りに行くため男をつないだそれを天井近くに結びつけ、小部屋を出て行った。

「すぐにはね。…はは、内臓まで麻痺…あはは、どうなるんだろ。」

この世界に動物は少ない。貴重な食料源となっており、薬の実験のために殺すわけにはいかない。
仕事の補助として、薬は大変役に立つが効果が分からない限りなかなか使えない。
はじめは自分で飲んでいたが意識を失う事もあり効率が悪かった。そこで、罪人を買った。
今ではどこか国のほうから厄介者を売りつけてくる事もある位だ。
苦しさに縋る声を無視し、アリーは暗闇へと消えた。





「あれ?アリーどこいった、いねえ。」
「んえ?あら本当だ。でもしょっちゅうフラフラしてるしさ、あたしも分かんないわ。」
「レイさんとエドさん、奏美は寝ちゃってるしねー。」

談笑を続けていた三人はアリーが席を立ったのには気づいていたがこの家からいなくなっている事には気づかなかった。
トリクシーが部屋を見てまわった様だがどこにもいなかったらしい。
ため息をついて戻ってきた。

「なんでいっつもいねえのかなー…。」
「そういえばさ、二人の馴れ初めっていうの?それってどんなんだったの?」
「あたしも聞きたい。んで新刊のネタにしたい。」
「新刊?」
「あたしこれでも元の世界で字書きなのよ。でもマンネリするじゃん?
 だからこう、ね。なんかネタにできりゃあ嬉しいなぁって思ったのよ。駄目ならいいけど。」
「別にいいけどよ。でも元の世界って言うな。そこがあんたらの帰る場所なんだぜ?
 ただでさえこっちに来ると戻れないって言われてんだ。」
「げ。…同人誌処分できてないんだけど…末代までの恥じゃん。」
「奏音さん結婚してないから奏音さんが末代じゃない?で、馴れ初めってどんな感じ?」
「いやー…。」

顔を赤くして視線をそらしたトリクシーに想良が小さく悲鳴を上げる。
奏音はその様子をぎょっとした顔で見た後なにか呟いたが誰にも分からなかった。
想良に促され、トリクシーはやっと口を開いた。

「オレがまだ小さいころにな、複数の国が同盟して攻められた事があって。
 そん時に親父と一緒にここの本家に行って同盟頼みに行ったのよ。で、年近いから遊んでろってアリーといたわけだ。」
「へー…じゃあ幼馴染とかではないんだね。」
「政略だからな。で、たしか一週間位いたんだよな。ただ最初の三日が辛くってよ、あいつの態度が本当癪にきて…。」
「喋り方とか?なんか生意気だなって思ったよ。」
「生意気なのはあたしも思った。でもミスって言ってくれてるし敬意的なのはあるのかな?」
「多分それ皮肉じゃない?」
「えー…。」

奏音は納得いかないようだったがそれはおいておく事にしたらしい。
話を聞く姿勢を見せた。
トリクシーははじめ嫌がったものの一度話してからはむしろ楽しいらしい。

「話し方もあるんだけどな、一番はちょっかい掛けられる事だったんだよ。
 やっぱ同盟を頼む側だから大人しくしてろって言われてたし。ただ四日目にきて限界来てふっ飛ばしたんだよ。」
「ありゃー…やばいんじゃない?」
「まあな。親父に大目玉食らったよ…本当、腕折られちまったからな、そん時。」
「うげ…え、怒られて骨折られんの?何この世界怖い。」
「いやいや、オレ等が特殊なんだよ。怪力衆って言われてて肉弾戦の力押しの国だから。
 ただ力加減が苦手でなー…はずみてポッキリ。まあ日常って言ってもいいくらいだ。」
「な、なにそれ?骨折がデフォの家…なんつうフルボッコの…。」
「まあその日のうちに治せたから。オレらは色々使えるだろ?それでだからな。自力じゃ一日では無理だぜ?
 で、次の日も来たけどこっちは親父に色々言われるから無視したんだよ。
 ただそれで調子乗るからマジ切れしちゃってなー…泣かせたんだよな…そうだそうだ。」
「アリーが泣くってなんかよっぽどな気がするんだけど。泣かなさそうだよ?」
「というか過程を詳しく。」
「なんか奏音が怖いんだけど。」

身の危険を感じたのかトリクシーは少し椅子を引いた。
しかしその行動を気にする様子も見せず、むしろ奏音は身を乗り出してきた。
これには想良も硬直したが一瞬の後に目に生気を戻した。

「奏音さんは落ち着いて、逃げちゃうよ。」
「何が?あたしは今捕獲体勢なんだけど。」
「トリクシーが逃げそう。」
「…困るわ。」

そういって奏音は椅子に深く座りなおした。

「…話して平気か?」
「もちろん、さあ、その過程を!」
「過程ってなぁ…ただ両足折って逃げられないようにして左肩はずしただけだけど。」
「うあー…痛くない?先輩で大会で肩はずれた人いたけど物凄い痛がってたよ。」
「えげつない…でも、いい…。」
「こんな馴れ初めがか?なんか本当、奏音って変わってるな。」
「まーね、悪口言われたりはしてたし。で、続きは?動きを封じてその後。」
「ぶん殴ったりとか軽く刺したり体に虫這わしたりとか。自然豊かだから虫多いんだよなー。」
「虫ぃ…?え…。」
「まあ口に入ったときに泣いてたな。息詰まるし毒虫だったし。
 というかぼこって血が出た所に虫の毒が来てそれもあったかもな。」
「虫はやばいよ!あたしの天敵じゃないか!!」
「そこ普通は毒じゃない…?」

奏音の着眼点に想良が突っ込む。それをみてトリクシーは笑っていた。
その時階段を下りてくる音を感じ、振り返ってみればレイがおりて来た所だった。
いつも梳かしてある髪は少し乱れており、寝起きだというのが窺えた。
だがまだ眠そうでどこかフラフラしている。
それに気づき、いち早く反応したのは奏音だった。

「おっしゃあ、隙あり!」
「は、なん、またか!!」
「なにやってんだよ…レイ、お前もいい具合に遊ばれてるな?
 本当に奏音の犬になったらどうだ?結構似合いだと思うぞ、オレは。」
「ふざけないどくれ、よ!ったく、いっつもいつもなんでこの訳分かんねえのが俺に絡まってるんだよ!」
「でもエドさんは千切って脱出してるよ?アル君も最近逃げる様になってた。」
「うるせ、俺はあいつ等ほど力がな、い…っは、あ……。」
「えへ…そう聞いたらますますわんこに仕掛けるよっへへへ…楽しいわぁー。」
「…奥深いな、奏音。あー…でもこんなんだったな、虫。」
「ワッツ?まじワンモアセー!」

奏音が何を言っているのか分からなかったらしくトリクシーは首をかしげた。
視線で想良に訴えかけるが彼女も分からなかったらしく帰ってきたのは力ない笑みだった。
二人の様子でどうやら伝わらなかったらしいと判断したらしく奏音は再び口を開いた。

「いや…もう一回聞こうかとね。」
「What?One more say!かな?」
「そー!すんげえ想良ちゃん発音いいわ、何塾?」
「別に行ってないよ、ただ同じ部に帰国子女がいるの。それで教えてもらってるから。」
「まじかー、赤点の代名詞でも理解できるのかな?」
「分かんない…。」
「はや、く解け!」
「やです。犬は繋いでおかないと迷惑になるでしょ?勝手に種付けしたりゴミ食い荒らしたり。」
「俺は、あ、犬じゃねえっ!食われちまうのかよ、俺ぇ!」
「あぁ、こっちは動物は基本食用なんだ。貴重な肉でな、虫とかも食うんだよ。毒以外な。」
「そなんだ。で、我が愛する娘とアリーちゃん泣かせた虫との関係は?」
「ただ単に形が似てるだけだ。んで毒もってるからちょっとひんやりうねうねってだけ。」
「そっか。アリーちゃんにも仕掛けよう。」

その発言にレイが叫びに近い声を上げる。

「そんなことすんなよ!あいつ、っあれトラウマ化、してるかも分かんねえだろ!
 やんならぁ、俺だけ、に…!」
「なんという独占欲…!うん大丈夫、あたしは二人を平等に扱うからね?」
「違え、そうじゃ、ねえんだよぉ!」

二人から離れるように想良とトリクシーは外に出た。
仲から楽しそうな奏音の声が聞こえ、ふたりは恐怖に顔を見合わせしばらく家に入らない事を無言で誓った。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.64 )
   
日時: 2012/03/07 14:22
名前: あづま ID:OQcm08Vs

「なんかよ、すげえな…欲望のままにしか見えねえ。」
「うん。奏美も苦労してるんだろうし、奏音さんの同級生もよく巻き込まれてるんだよ。」
「大丈夫なのか?その同級生もそのうちぶっ壊れるんじゃね、あれに付き合うと。」
「華凛さんなら大丈夫だよー、あの人色々心のうちでは楽しんでそうだし苦労人だし。
 むしろ担当さんのほうが奏美から聞く限りやばいね。家庭も守らなきゃだし。」
「うわ…なんか精神攻撃に使えそうだよなぁ。」
「あはは、それ失礼だよ。」

想良とトリクシーは家から出た後どこへともなく歩いていた。
想良は奏美を置いてきてしまった事が気がかりだったが、彼女は奏音の実の妹だ。
なんとかなるだろう、むしろして欲しいと思って二人で歩いていた。
木の枝で道を作りながら進んでいく。
時折小さな虫が驚いたように飛び跳ね、また草の中へ消えていくのを見送った。

「でもさ、私達今までこういう風にして歩いてこなかったんだけど。」
「そうみたいだよな。でも毒虫とかあと動物とかが潜んでたりするからやるべきだぜ。」
「動物…食べるんだっけ?」
「そう。虫も毒が無いやつは基本食うな。崩れるまで煮付けたりすりゃ見た目も気になんねえし。」
「へー…。」

もう一ヶ月近く暮らしているこの世界の事も知らない事が多い。
事実、トリクシーが来てから三人を受け入れてくれた人等の像が見えてきたりもした。
道を作る彼女の後を追いながら想良はふわふわとした気持ちでいた。

「うわ、」
「いて!」
「わりぃ…。戻る、戻るぞ!」
「なんで?」
「いいから!」

突如止まったトリクシーに想良はぶつかった。
だが彼女は低い凄みのある声で語りかけ、想良の手を取り走っていった。
訳が分からず手を引かれるまま行き、あの家が見えたところでやっと止まった。
日々走りこみを続けている想良とはいえ、あのような距離を走ったのは初めてだった。

「な、なに?何が見えたの…?」
「いや…お前には関係ねえ…今のところは。」
「秘密?」
「そう、だな…。戻るか、声もしないし。」

何か意味ありげな余韻を残し、トリクシーは中へと入っていった。想良もそれに続く。
レイも奏音もおらず、ただ格闘したようなあとがはっきりと残っていた。
直せる所だけ直し、見渡す。

「なんかオレも一休みする…アリーもいねえし。」
「そう?なんかごめんね、付きあわせちゃったみたいでさ。」
「いいよ、楽しいし。女が周りにいないから結構新鮮だったぜ。じゃ。」

軽く笑ってトリクシーは上へ上がっていった。
今自分以外は寝ているという状況に陥った想良は集落に行く事にした。
仕事について教えてもらおう、ただそれだけの思いだった。





「分かるかしら?この国を少しだけ、ね?時期は私が指示する。」
「……。」
「マティー、私らを呼んだと思ったらただ単に疲弊させるだけなの?
 これくらいだったらあんたお抱えのでなんとかなるんじゃない?」
「私は次期当主…まだ母がいるから上手く動かせないのよ。」

ダイアナは顔をしかめた。一方、アルはマティーから言われた事に頷いた。
高い塔の頂点に近い部屋…ここがマティーの部屋だった。
この部屋の主は気だるそうに髪の束を指で弄んでいる。

「領地を取るでもない、同盟を結ぶでもない…なんで私らを使うんだ。」
「いいじゃない。そもそも私の家は補佐しかできないのよ?ダイアナ、あなたのところとは違うの。
 ごめんなさいね?なり上がり者で。」
「そこは問題にしていない。そもそも私はあそことはもう関係ない。縁を切った。」
「パウエルから逃げるあんたの心理が分かんないわぁ…名門中の名門、敵無しじゃない。」
「たまたま古い家ってだけでしょ。それに言うならね、パウエルも補佐の家だ。」
「そ、下克上のね。そして主家乗っ取っちゃうもの…同じなり上がりの家よ。」

マティーは面白そうに笑った。そしてダイアナは既に縁が切れているとはいえ家を貶された事に拳を握る。
理解できていないというようにアルが首をかしげる。
広げられた紙の上に浮かぶ国。
愛おしそうに勝手に書き込まれてゆく戦略を眺めていたマティーがやがて、口を開く。

「でも、あなた達に拒否権は無い。ダイアナはパウエルにいれば私が命令できる身分じゃないけどもういないんでしょ。
 それにアルベールは出自不明だし…まあ捕らえられてたんだし結構いい所の人だとは思うけど。
 どっちもこっちが面倒見てるんだから働いてもらうわ。」
「仕方ない…やろうじゃないか。で、具体的なのは?」
「ただ混乱させりゃいいわよ。アリーがやったんだけどねぇ…本当、あの馬鹿が。」
「なんかしたのか?」
「ええ、混乱させただけよ。しかも連絡線を絶たなかったからすぐ編成されちゃうし。
 あそこの軍師は回転も速いし、何より運に恵まれてるわ。」

立ち上がり、紙をまとめ隅へと放り投げた。先ほどまで書かれていたものはすべて消えただの白い紙となっていた。

「まあ、とにかく戦力を秘密裏に壊していって欲しいわけ。一部隊じゃなくって…もっと、沢山。」
「まあいいけど。アルもいいよな?」
「……。」
「いいよなもなにもアルは最初から同意してくれてたわ。じゃあ、ヨロシクね。」

マティーが手を振ると、ダイアナとアルは強い力に引かれ部屋から出された。
そしてその扉は既に閉ざされ、もう開ける事はかなわなかった。
二人はあきらめ、塔の階段を下りてゆく。
腕を組み先を進むダイアナをアルは追った。





微かな声と、金属音。時折響く叫び声。
蹲り荒い息をする男を見下ろす影。
男に剣が振るわれ、それが肌を薄く切り裂き血がにじんだ。
呻き声。

「声、出していいんだよ。」
「…っ、は、……。」
「強情だなぁ…ま、そういうの僕は大好きだよ。」

アリーは屈み、先ほど付けた傷に指をねじ込む。
緩やかだった出血は増し、男も叫びをあげるが抵抗は示さなかった。
いや、できないのだ。

「麻痺薬は上々…。見せしめにいいかな、これ。悪趣味な輩に売ろうかな。」
「あっ、ぐ、…。」
「堪えてると辛いよ?もっと、声、出して。
 声を出す…特に笑うと力が入るし、なにより気持ちに余裕が出てくるんだって。」

さらに指を深いところへとやれば、男の声も比例し大きくなる。
男の口をこじ開け、子袋に入っていた錠剤を押し込む。
そして男の手を取り針を突き刺した。そして指に何かを結びつける。
しばらくし、男が手を動かし始める。それを確認し、アリーは男を壁に寄りかからせる。

「おー、やっぱり効いた。毒虫もいいね…ははは。」

そう言ってアリーは今しがた男に自分で付けた傷を手当し始める。
男はそれを怪訝そうな目で見つめた。

「ねえ…僕にさ、復讐したい?」
「…どういう?」
「あは、まあどうでもいいや…。君の意思は無関係だ。」

男の前に座り、先ほどまでそれを斬りつけていた剣でアリーは自分の足を刺した。
深く刺したため血が止まらない。
男は目の前で起きた事にただ呆気に取られていた。だが、さらなる衝撃が襲う。

「っ、ったあ…はは、痛あ…ははは。」
「なにを…。」
「はは、これっ…大好き、は、は…う…。」

アリーは自ら傷口に指を挿しいれ中で動かす。
痛いはずの行為も、彼の口からもれ出る声で悦に入っている事が男には理解できた。
それを理解した瞬間、男を恐怖が襲う。動かせるようになった手で目の前の人物を突き飛ばした。
だが、それにも楽しげな声を上げ手を取られた。

「触るな…!」
「あは…。」
「なっ…!」

アリーが男の手を傷口に添えればそれは勝手に動き出した。
正確に言えば指に巻きつけられた何かが動いている。
手から伝わる温かみと肉の感触に男は悲鳴を上げた。

「あっ…吸血、植物ぅっは、あはは、君の顔も、いいな、ぁ!」
「お前…なんなんだ。」
「あは、捕虜ごときが!答えるわけ、ないじゃ、あぁ、痛い!」

男は思った。とんでもない人物に囚われてしまったと。
やっかいな人物が標的だとは効いていたがこれほどだとは思っていなかった。

(異常者め…!)

傷口の中で自分と、そして相手の指が肉を抉るのを感じながら男はただ目の前の人物を観察していた。
痛みを楽しむ人物は少なからずいるが…男は思った。
涙を流すのはいただろうか―――?
喘ぎながら涙を流す目の前の異常者を男はただ、見つめ指を動かした。
メンテ
Re: Differences in Peace【42修正】 ( No.65 )
   
日時: 2012/03/09 10:32
名前: あづま ID:7H.bxSCk

集落におり、一段楽した仕事に汗をぬぐう大人達に声を掛ける。
皆笑顔で返してくれ、子供達はもうすぐ帰ってくるだろうという事も教えてくれた。
一人の気のいい女の人に今日は私の家で遊んでいきなさい、と想良は案内された。

「じゃあ、何かあったら呼んでね。私はもう少し仕事をやるから。」
「あ、私も手伝います!」
「いいのいいの、あなたにはそんな事させられないわ。」
「え?」
「隠したって無駄よ。どこか高い身分の娘様でしょう?素性も明かさないもの、皆分かってるわ。」
「いや…そういう訳じゃあ…。」

口ごもる想良に女の人は微笑みかける。
彼女の声に何か思い当たるものがあるはずなのだが思い出せない想良はただ曖昧に微笑み返した。
相手も疑問に思わなかったらしい。言葉を続ける。

「それにね、こう言うのは失礼かもしれないけど子供達がいると仕事に邪魔なのよ。
 かまってやりたいけど仕事しなきゃ今日の食料なんて無いからね。」
「あ…。」
「ふふ、だからあなたがあの子達の面倒を見てくれて助かってるの。よろしく頼むわ。」
「あ、はい、行ってらっしゃい。」
「ふふ、じゃあね。」

手を振って離れていく女の人を見て想良は思い出した。
あの盗み聞きした集会の…ナタリー、という女だ。
ただ声もやわらかく優しそうな見た目で想良は今の今まで分からなかった。
こういうのを気をつけるべきなのだ、見た目に惑わされてはいけないと想良は硬く決心する。

「何しようかな…。」

だが待つ間とはとても暇なものである。
紙は子供達が持ってくるものでしか使えない。そもそも、どこにあるのかが分からない。
感覚ではあと数十分はしないと子供達は解放されないはず。
想良はこっそりと家の裏へと周り例の仕事場へと行く。
そしてこっそりと廃材をいくつか拝借しいそいで戻った。
誰も戻ってきていないようで元の場所へと腰掛けた。

「そういえば建物日本的だなぁ…縁側。」

自分が今座っている所を見て呟く。
だが気にする事ではないだろうと思って小刀を作り上げ、木を削り始めた。





重たいものが背中に乗っている。
それを除けようと手を回せば温かくやわらかい物に手が当たった。
重たいまぶたを開けてみればそこには姉の体があり触ったものは腹だという事が分かった。
そして乗っているものは足らしい。
起こさないように気を使いながらゆっくりと抜け出す。
寝てしまったのか。
周りには姉以外誰もおらず、温かい日差しが部屋の中に入ってきていた。
やる事も無く部屋から出ようとしたが体が、特に腕が重い。

「筋肉痛か…。」

久しぶりのそれに気を沈ませつつ無理に動かす。
扉を開けて下に下りれば誰かが座って外を眺めていた。

「ん?あ、起きたか。」
「……?」
「不信がんなって。オレはトリクシー。聞いたことくらいあるんじゃないか?」

その言葉で一瞬にして奏美の体が熱くなった。
理由は分からない。ただ、声を聞きたくなかった。それだけだ。
だが、そんな気持ちとは裏腹に勝手に言葉が口を出てきた。

「あぁ、アリーの結婚相手の。…あれ、アリーて男だったんだ。」
「そうだぜ。なんだ、お前もそう思ってたんだ。お前の姉貴も友達もそう思ってたよ。」
「まあ…アリーってどっちかっていうと女の名前かなって。」
「ま、男らしさのかけらも無い事はオレも認める。むしろ性別逆転した方がいいかもな、イメージ的に。」
「そんな事無いよ。ウチも男っぽいって言われてたし。」
「そうか?普通に女だと思うけどな。」

しかしトリクシーの様子はどこか嬉しそうだ。ふっと緊張が切れたように感じた。
それからまた彼女は外を眺め始めた。奏美も隣に座りそれを問う。

「ん?いや、アリーいなくなっちまって。」
「え?それって駄目じゃん!」
「オレが来ると大抵いないんだ。まあ今回は見れただけ良い様な気もするけど。
 ただオレ戻れないからさぁ…。」
「戻れない?」
「あぁ。お前ら能力あるだろ?オレはそれがほとんど無いんだよ。つっても一族がだけどな。」
「そうなんだ…結構辛くない、それ。」
「ただ結構タフだから大抵のモンなら跳ね返せるぜ。それに馬鹿じゃねえのってくらい力も強いし。」
「ふーん…色々な、なんて言ったらいいんだろ…種族?がいるんだね。」
「あぁ。改造して人体がほとんど残ってないのや、特定の期間に身体を変えるのもいるぜ。」

トリクシーは笑い、外に出た。奏美もそれの後を追う。
追いかけてきたのをトリクシーは意外に思ったようだが何も言わなかった。
二人で、何も喋らず歩き続ける。
太陽の光を遮る物は無く、緩やかな風に草木が揺れるのをなんとなく奏美は眺めていた。
下のほうでは人が集まっている。だが、奏美にはなにに集まっているのか分からなかった。
また、無言で歩き続ける。

「お前さ。」
「…え?」

突然トリクシーが口を開く。奏美は油断していて返事が一瞬遅れた。
相手の顔は逆光によりよく見えないが真剣な雰囲気をまとっている。
ただ、背後の森――三人が初めて出た場所からの雰囲気も余計に空気を固まらせたように感じた。

「アリーのこと、結構好きだろ。」
「え、え?!」
「図星だな?…いいぜ、別に隠さないで。」
「…ごめん。」
「別に謝んないでいいって。」

奏美は思わず俯いた。好きなのかもしれない、そうは思ったが相手は既婚者。
それに今目の前にいる結婚相手にそれを悟られているとは思いも寄らなかった。
顔を伏せたままの奏美に対しトリクシーは口を開く。

「オレらは元々政略なんだ。同盟が終わればオレも戻る。」
「うん…。」
「それにオレが勝手に執着してるだけ。アリーはオレの事なんとも思ってないだろうし…。」
「それは…。」
「ん?まぁ、オレらはそれだけの淡白な結婚だから。別にアリーがだれと恋愛しようと…うん、構わねえよ。
 あいつも十六だし…そういうのしたいだろうからな。」
「……。」
「悪いな、こんな話しちまって。隠したい事だろうけどなんとなく言いたくなったもんで。
 忘れても忘れないでもいいよ…。」

それだけ言うとトリクシーは振り返らず走って行ってしまった。
奏美はそれが見えなくなると糸が切れたように座り込んだ。
言えなかった…と心の中で思う。
レイにトリクシーが嫌いなのかと聞かれたとき、アリーはすぐに否定していた。
なぜ否定するのかを分かっていなかったような記憶がある。つまり、自分の感情を自覚していないという事だ。
だが、助かったと思う心も同時に存在している。

「最悪…ウチ、馬鹿。最低…。トリクシーも、嘘つき……。」

構わないと彼女は言ったが、それを言うのはひどく辛いのが奏美には分かっていた。
奏美の顔も見ず走り去ってしまった。それが唯一の確固たる証拠といっていいだろう。
まだ高い日差しの中、身体を擽る風を受けながらも奏美はずっと座っていた。





「いって、何だよ!」
「まぁまぁ、ちょっと内緒の話。」
「あいつ等がいると出来ねえ話かい?だったら聞こうじゃないか。」

窓には布が掛けられ限られた光しか入ってこないレイの部屋。
レイはエドに無理矢理に起こされ不機嫌な声を出すも雰囲気を読み気を引き締めた。
なかなか口を開かないエドの手を握り早く喋るよう訴えかける。

「実はな、仕事の依頼だ。」
「俺らこなしたばっかりなのにか?へえ…近く何かあるのかねぇ?」
「……。」
「言っとくれよ、俺は察せるほどいい頭してねえんだ。」
「はぁ…俺にだ。ただしばらく帰ってこられそうに無い。」
「そうかい…行って来いよ、俺はあんたを信頼してる。俺と違ってへまもしねえだろうよ。」
「あぁ…うん、そうなんだ。そうなんだが…。」
「んだよ。」

なかなか本題に入ろうとしないエドに思わずレイも声を強くする。
しかし彼の様子は変わることが無い。珍しいな、とだけレイは思った。
メンテ

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