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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.71 )
   
日時: 2012/03/19 19:05
名前: あづま ID:CQ5RuU2c

「出来たよー。ねえいつまで喧嘩してるの?話聞いてるとずっと同じ事しか言ってないよ。」
「俺も自覚してるんだがなぁ…レイ、頼むから納得してくれないか?お前はそういうところだけ強情すぎる。
 仕事に関しても向いてないって言われても諦めないでやってて欲しいんだが、駄目なのか?」
「駄目だね。人様に迷惑かけらんねえだろう。」
「アリーも最初評価されてなかっただろ?むしろお前よりも低かったじゃないか。
 マティーとの比較もあったし正直、俺はあいつのほうが辛かったと思う。でも今じゃ結構な稼ぎ頭じゃないか。」
「あいつは素質あったんだろ…ただサボってただけじゃねえか……俺は毎回泣きながらやって、それでも上達しなかった。」
「人には素質があるからね。気にする事無いと思うよ、レイさんは今のを続けられてるって事は向いてるし
 素質があるって事だからね。私はそういう風に思ってるよ。」
「俺はそれ嬉しくねぇ!あれで認められるのもお断りさ!」
「想良にあたるな。でも投げ出さないでやってるんだし俺もいいと思うぞ。
 あ、想良トリクシーと奏音とアリー呼んできてくれ。奏美はそうだなぁ…十分もすればいいだろうし。」
「うん。トリクシーはどこにいるの?アリーは?」
「多分三階の奥。お前達の部屋の何個か抜かしたところな。それかアリーの部屋。レイの部屋の隣。
 アリーは自分の部屋か武器庫…三階の方かな。三階の奥。向かいがわな。」
「分かった、待っててね。」

そして想良は三人を呼ぶために離れた。
階段を少し上れば中断されていた口論もまた再開されたようで自然のため息がこぼれた。
しかし、一人っ子の自分にはどこか惹かれるものもある。
喧嘩自体、想良は幼稚園のときのおもちゃの取り合い位しか浮かんでこない。
いつか誰かと言い争ってみたいなんて思いつつ、はじめに三階へあがった。
奥の部屋…どちらがどちらか聞いてくるのを忘れたがノックをしてみる。返事は無かった。
悪いと思いつつ開けてみればずらっと刀や鎧が並んでいるが人がいるようには感じられない。

「アリー、いるー?ご飯できたよー?」

しかしその声は暗い部屋に飲み込まれていった。
ならばアリーの部屋だろうと思い、奏音を起こしに行くがそこにも居なかった。
そういえば探検をするのだといって意気揚々としていたのを思い出した。
仕方なく二階におり、アリーの部屋と思われる場所をノックする。
すると中から返事が聞こえ、数秒とたたないうちにトリクシーが顔をのぞかせた。
それと同時に甘く香ばしいようなにおいもあふれてくる。

「おう、想良。どうした?」
「ご飯できたんだ。ねぇ、アリーはいる?」
「あぁ、いるぜ。オレが引っ張っていくから先行っててくれ。」
「そっか。あ、あとさ奏音さん知らないかな。いないんだよね。」
「奏音?」

口を開こうとしたトリクシーの後ろからアリーが顔をのぞかせた。
いつも下ろしている前髪を上げており、見た事も無い何かを片手に持っている。
思わずそれを見てしまった想良にアリーは説明した。

「これ?簡単に言えば僕の武器かな。剣とかじゃあ限界があるし。」
「そう…あ、これから甘いにおいするんだ。」
「鼻利くね…あまり嗅がない方がいいよ、ちゃんと判断したいんならね。
 奏音はレイの所じゃないかな、さっきレイよりも軽い足取りが入っていった気がするから。」
「アリー、そこまで分かってたのか?すげえ、オレ全然分かんなかったぜ。」
「はいはい。僕はもう少し調合してから行くよ。トリクシーもさ、想良と一緒に行ってて。
 ここにいるのあんまりいいとは言えないし。」
「おう。じゃ、行くか想良。」
「あ、うん。ご飯冷めないうちに来てねー。」

そしてアリーは軽くトリクシーを突き飛ばし部屋にこもってしまった。
だが彼女は気にする様子も無くレイの部屋に向かっていった。想良も後を追う。
扉を開け、中を覗いた。

「あ。」
「何やってんだ…?」
「いやね、いやーほら、年上のお姉さまとしては年下の男の子…しかも青春時代よ?
 エロ本持ってるかとかさー、気になるじゃない?」
「奏音さん?!それでも部屋を荒らすのは良くないでしょ!」
「犬の部屋を片付けて何の問題があるだろうか。いや、問題あるはずがない。」
「漢文だ…じゃなくって、私も前来た事あるけどこんなに汚くなかったよ。」
「想良、気にしたらもう負けだろ。行こうぜ、なんならレイは黙らせりゃいいんだ。」
「おー!トリリン分かってるー!」
「と、トリリン?…あだ名?」
「まーそんなもんかな?嫌なら言ってね、呼び続けるけど。」
「嫌じゃ…ねえな。」
「…良かったね、トリクシー。」

奏音とトリクシーが楽しそうに話す少し後ろで想良は思った。
レイの扱い、なんだかみんな酷くないかと―――





「だいたい、」
「うるせえな、もういい。俺が悪いのさ、才能も何も無くってなぁ!」
「レイ…お前の気持ちも分かるぞ?でもな…。」
「分かるわけ無いだろう?お前はいつでも上位だったじゃねえか、俺とは真逆だった!」
「もーまだやってんのー?」
「うわ、殴ろうとするな。危ないじゃないか。」
「危ない?本気でそう思ってるかい?俺の攻撃なんて大体見切れるくせによお…。」

口論から取っ組み合いに発展しかけている二人に想良はあきれた声を掛ける。
それに一斉に二人は抗議し、また言い争いを始めた。
思わずため息をつき、トリクシーに声を掛ける。

「二人ってさ、いつもこんな感じなの?」
「オレはあんまり見た事無いからなぁ…でも本家の方にいたときは…いや、分かんねえ。」
「修羅場、修羅場。うっはいいくね?」
「そういう訳にいかないでしょ…これどうやったら止まるの?」
「オレには分かんねえなー…。なあ奏音、火に油覚悟でなんかないのか?」
「え、あたしの行動火に油なの?それ確定なの?」

奏音の問いに二人は目を逸らせた。無言の肯定。
だが当の本人はそれを察せ無かったのか気にしていないのか表面上真剣に考え始めた。
ほんの数十秒にも満たない間沈黙し、そして叫んだ。

「レッツゴーマイ娘!」
「なっ!」
「またか!」
「そこってドーターとかチャイルドって言えば…。」

うねうねとした物を口論する二人に向かって投げつけたのだった。
命令に従っているそれは獲物につくと嬉々として蔓を伸ばし絡み始めた。
ギチギチと二人を締め上げ、身動きを封じる。
だが、奏音は不満気だった。ひとつため息。

「どうしたんだよ。」
「いやね、あたしがこれを使えるようになってから結構経つ訳よ。」
「そうだよね。試験のときにやったのが初めてだったから…もう来てすぐできたんだよね。」
「そうそう、あん時は焦ったわー、制御効かないであたしまで巻き込まれたよね。参ったよ、本当。」

当時を思い出し奏音は楽しそうに笑った。
荷物がいい、といって実際今はその通りである。一人だけ何もやっていない。

「うふふふ…そういえばアル君どん位で戻って来るかな?」
「アル?マティルドの依頼が終わったらだろ。結構金やるみたいだし長期間だろうな。」
「そうなんだ…いい筋肉だったんだけどなー、しっとりして手に吸い付くみたいな…。
 化粧品の宣伝文句があれで理解できたね。ただアル君は天然物だけどねー。」
「は…お前、何で?」
「あぁ、試験のときにアル君と一緒に蔓にやられたんだよ。しかもどさくさにまぎれて結構触ってたよね。」
「それはあっちが攻撃してくるからでしょ!目には目をだから肉体をだった訳よ!」
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.72 )
   
日時: 2012/03/19 19:07
名前: あづま ID:CQ5RuU2c

「なにやってんの。」
「…いや、これはな。」
「トリクシーには聞いてないよ。僕が聞きたいのは奏音に。」
「無理だと思うなー、今の奏音さんは怖い。」
「ただ何かを書いてるだけじゃん。」
「見てみろ、分かる。」

調合を終えたアリーは階段を下りてきた。
てっきり皆は食卓を囲んでいるものと思っていたのだが実際は異なっていた。
まだテーブルには何も並んでおらず、エドとレイが蔓に遊ばれている。
それを近くで奏音が気味の悪い笑いを纏い、せっせとどこからか出してきた紙に何かを書いていた。
その様子をトリクシーと想良は遠巻きに眺めている。

「僕結構おなか減ったんだけど。」
「あ、食べる?待ってて、準備するから。その間にあの三人を何とかしてくれると嬉しいな。」
「…せめて何が起こっているのか教えてくれてもいいんじゃない?」
「奏音さんの趣味爆発。」
「オレの理解を超越した趣味だっつうのは理解した。」
「何それますます分からないよ。」

想良はそう言い残し台所へと消えた。
何か起こっているのか分からないアリーは絡んでいる二人と生き生きしている一人の所へと向かう。
奏音は気づかないのか、はたまた気にしている余裕が無いのか筆を走らせている。
どうやら目の前の二人のデッサンらしい。

「すごいね、絵上手い。」
「ふへへへ、うん。伊達に同人誌描いてないわ。アリーちゃんも混ざる?」
「絶対にお断り。ねえ、僕早く食べたいんだよ。この二人さっさと解いてくれない?」
「条件付。アリーちゃんも混ざる、あたしがそれをデッサンする。おーけー?」
「嫌だよ…でも奏音の趣味って何なの?」
「ただ単に純粋に不純に男好きってだけだよ。」
「ああそういう…。とりあえずはい、お終い!」
「あー!何やってくれてんの、ちょ、萌えは?あたしの萌えは?」
「はあ…手を封じられたのは痛かったな…。」
「……。」

ぶすりと蔓に何かさすとそれは途端に動きを止めた。その隙に二人は脱出する。
ただいつものように核を取った訳でもないのでそのままの長さである。

「麻痺薬だよ、これ結構効くんだね…植物にまで効くとは……。」
「ちょっと一か八かであたしの娘をこんな目に…!」
「いいじゃん別に。」
「なんでみんなあたしの趣味を否定するかな、受け入れてくれてもいいじゃんよ。なんなの?襲うよ?」
「いいよ別に。でも最初にご飯食べさせてよ。想良、まだー?」

アリーは奏音を適当にあしらい台所に行ってしまった。
それを見た二人の兄はあることに気づく。自分達は奏音に構いすぎていたのではないか―――
事実、なにかと反抗していた記憶しかない。

「おい、襲うなよ?オレの旦那だぞ?」
「まあ…場合によるよ。好みの反応だったらちょいちょいやるわ。
 でも未成年には手を出さないから安心を。二十歳からよ、リアル戦線は!」
「そうか?なんか信用できねえんだけど。」
「犯罪者にはなりたくないもん。あたしだってそれくらいの分別はあーりーまーすー。」

舌を出し面白そうに笑った奏音にトリクシーは安心したような複雑なため息をついた。
だがそれに納得いかないとばかりにエドは口を挟む。

「好みとかそういう問題ではないだろう。」
「そっかなぁ…でもエドも結構女好きじゃんよ。」
「それは否定しない。だが既婚者や相手が本当に好きな人がいる場合は俺は手を出さない。」
「いや、まあ既婚者とかは色々面倒だし…。それに本当に好きな人がいるんだったら乗ってこないっしょ。
 あなたがいなくて寂しかったの…本当よ!これは過ち!!どこのくそ女、それ。」
「俺はそこまで言ってないが…でも同意はちゃんと取ってるのか?」
「ええ。エチケットもちゃんとしてますよーだ。」

二人の会話についていけなくなったレイとトリクシーは離脱する。
そしてそのままテーブルに着いた。

「しかしよ、奏美遅くないかい?服取りに行っておそらく水浴び…もう帰ってきてもいいような気がするんだけどよ。
 やっぱ女だと色々あるのか?」
「さあ。」
「素っ気無えなぁ。まあそのうち戻ってくるだろうし。」

二人が言葉を交わしている間に料理が運ばれてきた。
想良がそれを取り分けていく。
料理が運ばれてきたのを見て、エドと奏音も席に着くが互いにどこか納得していないようだった。
するとその時奏美も戻ってきた。

「ただいまー。ごめんね、遅くなって。」
「いいや、今から食べる所だ。…奏美、お前の姉はこうも節操なしなのか?」
「え、何いきなり。」
「それ後ででいいよ。僕さっさと食べて休みたい。」
「休ませないよ…襲ってやる……!」
「うん、待ってるよ。」
「キター!うん、覚悟しててよね!」
「姉ちゃん何やるつもり?!」
「うえへへへへへ…十八になったら教えてあげる…。」
「…エド、なんか話すことがあったんだろ?」

料理も全て分け終えたところでトリクシーが口を開いた。

「あぁ…。その、本家に一度行って貰おうかと…。」
「は?何で?あたしニートしてたい。」
「いや…別にな。いいだろ、別にさ。」
「僕は軍師様の所行くから行かないよ。行くなら勝手に行ってよ。」
「うー…。」

それぞれの反応にエドは言葉を詰まらした。
それを察したのかレイが助け舟を出した。

「俺らも自由に行動してるとはいえ、上には従わなけりゃならないのさ。
 今は勝手に引き入れてる。だから一応報告しとかなきゃならねえだろ、礼儀として。」
「でもマティーさん来たから向こうは分かってるんじゃない?彼女が報告してるでしょ。」
「あっ…。」

想良の言葉にレイも口を詰まらす。
マティーは奏美以外には会っているし、報告も恐らくしているだろう。
しかし、それまで黙っていた奏美が口を開いた。

「ウチらは世話になってる身だよ。どこに行けって言われれば行く。そういうもんじゃない?」
「まあそうだけど…でもさ、なんでいきなりって思って。」
「それは…明かせないな。でも悪いようにはしない!これだけは約束する!」
「っ、あぁ。俺みたいな出来損ないでもこの年まで生かしてもらってるんだぜ?損にはならねえ。」
「もう…本当の事言えばいいのに。」

突然、黙っていたアリーが言葉を発した。
元はといえば、集落の反乱の疑いがありこういう状況に陥っている。
本当の事、という混ざり気の無い言葉に三人は注目した。

「…。本家から依頼が来てるんだよ。お前達の実力が見たいって。」
「え?あ、アリー?」
「マティーから報告が行ったのはこれで確かでしょ?それで使えると思ったら多分自分等が使いたいんだね。」

何かを考える様子も無く次々と紡がれる嘘に一瞬、エドは反応が送れた。
しかし気を取り直し、アリーの言葉の後を続ける。

「実はそうなんだ。でもさ、やっぱり本家とか言うと変にプレッシャーかかるだろうと思ってな…。」
「…それマジ?」
「あぁ!奏美、俺が嘘をつく必要があるか?ここで嘘をついても全く意味をなさないだろう?」
「そうだね…でもなんでだろうね?」
「戦力不足なんだよ。産めよ増やせよでも限界はあるしね。優秀な子が生まれるとも限らない。」
「そっか…でも私がなんかの役に立つかな?」
「それなら心配いらねえ。向こうの世界から来た人は何らかの素質を持っている。」
「でもな、血は薄まっちまうから何代かするとな…。」
「トリク、」
「お前の事じゃねえって、レイ。むしろオレの事だよ。ほとんどなんにもできねえし。」

一度紡がれたならば、後は考えないでも次々と続きが出てくる。
その事実に驚きながらも、膨らんでいく話にもう終止符は打てなくなった。
戻る事のできない時間を誰も気がつく事はできなかった。

「じゃあ、みんな頑張ってね。僕は準備して、軍師様のところに行く。」
「は?少し休んでいくんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったけど…でもこいつらが動くんならね。」
「そうか。働き者だな、アリー。じゃあ、俺らは明日発とう。食べ終わったら準備するように。」
「おっけー!…ニートは駄目な雰囲気だなぁ…。」
「姉ちゃん、あのねぇ…。」
「まあいいよ。頑張ろうね、みんな。」
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.73 )
   
日時: 2012/03/19 19:09
名前: あづま ID:CQ5RuU2c

「じゃ、僕は行くからね。」
「早くないか?それにその態度はやめるように、付け込まれたらどうする。」
「大丈夫だよ、僕は一番大切なものがあるからね。じゃね。」

夕食を終え数時間の後にアリーは出て行った。
どこかに遊びに行くような軽い雰囲気をエドは咎めたが彼は聴く耳を持たずにさっさと行ってしまった。
家の中に入り、ため息をついた。その様子をレイは見て言った。

「また自分勝手に走って行ったか?」
「あぁ…直らないだろうな、あれは。マイペース過ぎだ。」
「迷惑かけなきゃ止める事もできねえしなぁ。」
「だな、直して欲しいんだが。レイ、あいつ等の準備は進んでるか?」
「さあな、女の部屋に入るなって追い出されちまってよ。」
「そうか。まあ、何が起こるか分からない。今は、寝ておこう。」
「あぁ…何も起こらないのが理想だけどな。」

静かに、呟くように行ったレイの言葉をエドは笑い飛ばした。
予想していなかったのだろう、レイは驚いて兄の顔を見る。
心の底から楽しんでいる、そういった表情で気持ちよさそうに笑っていた。

「何も起こらないのはつまらないな!退屈してしまう。」
「確かに。まあ、楽しめる事が起こるように願っておこうか…。」
「はは、お前の楽しみはなんだろうな、レイ。」
「さあなあ…あそこにはあんまりいい思い出ねえし…。」
「そうか?ま、俺は戦いたいな。殺しもしたい。」
「殺し…?!」

まさかの告白にレイは動きを止める。
女好きという欠点こそあれど、その他はまともの部類に入っていると思っていたからこその反応だった。
レイの反応を見て、エドは口の中で笑う。
だが、それも短い間の事ですぐに口の外へと出てきてしまった。
殺しを望み、笑う。

「だってな、そうなんだ。俺は戦って、殺す事を教えられた。貰った仕事の中で境界線を越えないでやる。
 それで褒められた。殺さなきゃ褒めてもらえない…簡単なすり込みだな。」
「分かってやってんのか…エド?」
「あぁ。まあ、今は褒められたいとかでやってる訳じゃないが…。でもな、その点俺はお前が羨ましい。」
「は?…俺のどこがだい?全部、エドのほうが優れてるだろ?どこに、そんなもん…。」
「今は戦の世とはいえ、本来殺しは世に背く行為だと俺は思ってる。それに、俺は喜びを感じる。
 おかしくなってんだなぁ…お前はそれが無いじゃないか、なぁ…レイ。」
「……。」
「そういう顔するな。それとも、どっかで悦びを感じてるか?まあ、お前のほうが真人間だろう。」
「俺は…。」
「答えを出す事じゃない。これは感じる事だな。…準備してくるよ、俺。」

エドは足取りも軽く自分の部屋に消えた。
一方、レイは糸の切れた人形のようにがっくりとその場に座り込む。
殺す事を自分自身はどう思っているのだろうと。
彼の殺しの概念は本来やるべきではない事、ただ生きるためには必要な事だという認識だ。
だが、あの三人の国ではもう戦は無いのだという。それからは推測されるは殺しも無いに等しい行為だろう。
奏美の反応を見ても、分かる。

「俺、どう思ってるんだ…?」

声に出し自問する。
だが、浮かんでくる答えは分からない。





「終わったー!よっしゃ終わり、あたし自由!」
「姉ちゃーん、自分でやった人がそれ言えるんだよ?」
「うへへ、あたしはニートだからな。」
「奏音さんそれ威張る事じゃないよ。もうちょっと協力してくれてもさぁ。」
「まーま、ジュース代のお返しってことで、ね?」
「あーこっち来る前の…う、ここで使われるとは…!」

反論できなくなった想良が戦線を離脱した。
終わりしだい寝ていいという事だったので布団に潜り込んでしまった。

「奏美も寝ないの?」
「そうだね…いつでるか分かんないし。姉ちゃんは?」
「んー?あたしはもう少し起きてるわ。」
「そっか…寝坊しないでね。おやすみー。」
「あいあい。明かりつけっぱでいい?」
「うん。むしろ消して踏まれたら困るしね。」
「なんかさぁ、想良ちゃんて妙に酷いよね…。いいけどさ。おやすみ。」

できるだけ音を立てないように奏音は部屋から出て行った。
携帯もとっくに充電が切れてしまい、電気の無いこちらの世界ではもはやお荷物と化していた。
文字も読めないのでこちらの世界の娯楽は無いに等しい。
ふらふらと習慣になっているように下に行けばレイが座り込んでいる。

「…?椅子に座らないのかな。よし。」

こっそりと、自分の相棒を解放する。コロコロとレイに向かって転がっていく。
そして奏音自身も音を立てないようにゆっくりと確実に階段を下りていった。
今回はただ脅かしてやろうと、拘束もゆるめになるように念をかける。

「あ、…あっ?」
「つっかまーえた!何やってんのー?椅子に座らないと体冷やさね?腹下すよ。」
「……そうかもな。」
「えちょ、え。抵抗とかしない訳?縛られてるよ?」
「…別に、俺は逃げらんねえから、しても無駄だろ。」
「そすか。えー、なんかつまんね。よっと…。」

拘束を解き、核を腰のそれに入れた。
レイは一瞬意外そうな顔をしたが、縛られた事により乱れた服を戻してから顔をそらした。
奏音は今までに見た事が無いその反応に興味を抱く。

「どーしたのさ、いっつもなら何すんだよーみたいな事言うのに。」
「別にいいだろうが。…終わったのか、準備。」
「奏美と想良ちゃんがやってくれた。あ、二人はもう寝てるよ。」
「……。」
「せめて椅子座ってくれ。あたしが腹下してしまうわ。」

それでも動かないレイを奏音は無理やり座らせる。
体格の違いや、本人の意思の動きもあり乗せるのに苦労したが。
何があったのか聞くがレイは反応を示さない。
むしろ聞けば聞くほど心を閉ざすようで最後には奏音の声など耳に入っていないような素振りさえ見せた。
普段は自分の扱いも適当に流す奏音だったが流石にここまで無視されるとむかついたらしく声を荒げる。

「なんなの?あたしレイになんかしたぁ?!そりゃ褒められるような事やった覚えは無いよ?
 でも無視って酷くね?それ一番辛いんですけど、何イジメ?変な紙でも周ってきた?」
「…別に。」
「じゃ何。あたしが原因?それともなんか別?どっち。」
「関係ない。」
「……。」
「……。」
「………。」
「………?」

急に黙り込んだ奏音を疑問に思い、レイは顔を上げた。だが、彼女の顔からは何も読み取る事ができない。
しかし一拍おいて乾いた音が響いた。
頬の痛みを感じ、手を当て、そこが熱を持っているのが分かった。
叩かれた。どこか他人事のようにそれを感じ、目の前の奏音を見た。

「もうちょっとさ、言ってくれていいじゃん?」
「…叩いた。」
「っなんなのもー!マジ何、これ外国人との壁?でも言葉通じて、はああああ?!」
「奏音、どうしたんだよ。」
「えー…やっべ、そういやレオンは日本語喋ってたな…。」
「レオン?」
「…、あー睡眠学習してたしなぁ。あ、ショタも日本語喋ってたわ。すげえさすがオタの国日本。」
「おい、レオンとかショタって…。」

だが今度は奏音が自分の世界に入り込んでしまったらしい。
レイが"レオン"と"ショタ"についてを何度か聞くが彼女は無視を続ける。
しまいにはレイが差し出した手を振り払う始末だった。
これに彼の何かが触れたらしく大声を出す。

「んだよ、無視しやがって!俺がなんかしたってのかい!」
「……別にぃ?」
「なんだよその態度!」
「だってレイに関係ないことだし?」
「はぁ?」
「……。」
「なに黙るんだよ、原因なんだよ?!」
「っくふっ!何、理解でき、はははは!痛い、腹痛ぁっははは!!」
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.74 )
   
日時: 2012/03/19 19:11
名前: あづま ID:CQ5RuU2c

突如笑い出した奏音にレイは呆気にとられ、固まった。
だがそのうち笑いすぎて発作のようになった奏音を見て慌てて手助けをする。
しかしそれは逆効果だったようで更に奏音の症状は悪化した。
ヒィヒィと腹を押さえながら蹲る奏音をレイはどうすることもできずにただ隣に座っていた。
こういう時に使える知識も無い自分に腹を立てるが、見守っておく事にした。

「あぁー…もしかして気づいてなかった?」
「気づくってなんにだよ。」
「あれあたしがレイにやられたのとほとんど同じ行動だかんね?」
「はぁ?俺はあそこまで感じ悪くねえよ、どうかしてんじゃねえか?」
「いやいや、あたしの方がライトだったって。ちなみにさ、レオンとかショタのこと気になる?」

体を起こし意地悪そうに笑った奏音が聞く。
それにレイは素直に頷いた。その素直な反応に奏音は満足気に笑った。
レイもいつもの、自分の知っている彼女の反応に笑みを零す。

「何だよ可愛いなぁ。ショタは婿のところにホームステイしてる外国人。っとサクソルって言ってたかな。」
「サクソル?ショタっていう愛称につながらなくないか?」
「あー、ショタっつうのは少年って事で。で、レオンってのは仕事のパートナーよ。
 いつもはキシっていうちくしょーなんだけどね、倒れちゃったからさ。臨時の担当。
 ちなみにあの子は可愛い嫁です。私が夫です。」
「嫁?…それっ…!」

奏音の言葉を受けたレイは途端に顔を赤くした。
そして言葉を発そうにも中々出てこないらしくただ魚のようにパクパクとしただけだった。
それにまた奏音が笑う。

「なにその反応ー。あたしが地球でどんな生活しててもいいでしょうが。」
「いや、構わねえ、そりゃ構わねえけどっ!」
「まー考えてる事は当たってるだろうね。そういうのでもありますよって事で。
 でもちゃんと仕事との線引きはしてるからご心配なく。つかその反応ウブいねー、レオンもそんなんだったよ。」
「俺はレオンじゃねえ!一緒にすんな、馬鹿!」
「嫉妬?かあいいなぁ、本当。」
「ちげえ、嫉妬じゃねえ!なんでおまえ、に…。」

奏音が突如自分のほうに身を乗り出し、耳元に口を持ってくる。
いきなりの事に反応が遅れ、奏音からレイは離れようとしたが背中に回された腕がそれを許さなかった。

「かわいいね…。」
「そんな耳元で言う事かっ!離せ、離れろ好色…!」
「別にさ、あたしはちゃんと、線引きできるからね?」

仕上げといわんばかりにフッと耳に息がかけられた。
本能的な危機感と、それに対する別の感情もレイの中で同時に生まれた。
奏音はレイの背に回していた腕を放し、それから彼の様子を見た。
信じられない事を言われたような、驚きに満ちた顔をしている。
だが、先ほど赤くなったときのそれがまだ抜け切っていなかった。

「なんてね。」
「……、は?」
「いやぁ、反論されると思ったんだけどね?もしかして意味分かってなかった?」
「いや…。」
「まどっちでもいいや。本当なんか、純粋に育てられたんだねぇ…。」
「……。」
「まぁ元気出たみたいでよかったわ。なにかとあたしに突っかかってくれないとレイじゃないしね。」

奏音は立ち上がり、レイを見下ろす。
未だ状況を理解できていないようで、その様子にやはりおかしく感じた。
地球での親友や臨時の仕事のパートナーの自分の趣味に対する反応が思い出され、笑う。
その声でいくらか気を取り戻したのかレイが口を開く。

「わ、わんこって…言わなかったな…。」
「そこ?まあ気分だしなぁ、こだわって呼んでる訳じゃないし。まああたし基本あだ名とかで呼んでるし。
 っつか本名レイモンなんでしょ?レイも既にあだ名みたいなもんじゃね?」
「さあ…?いや、それ愛称?」
「まああたしにとってはあだ名も愛称もイコールみたいなもんだわ。そいやレオンの愛称無いな…でも短いしなぁ。」
「……。」

奏音はレオンに対する愛称を考え始めた。
いつもの彼女からは考えられないほど真剣に思案に暮れているようでレイは新たな一面に驚く。

「ねえ、レオンに対する愛称って無い?三文字だと省略も微妙っつうか…嫁かな、やっぱ。」
「嫁…?俺にもそれ、言ってなかったかい?」
「ん?あ、言ったねそういや。やっぱ嫁でいいかなー、二人きりなら別に世間的にも大丈夫だな、よし!」
「嫁……。」
「まーなんだ、ゆっくり寝なよ。何に悩んでんのか分かんないけどさ。じゃ、おやすみ〜。」

また嵐が過ぎていくように、奏音は気分も軽く階段を上がっていった。
残されたレイはそれを目で追った。見えなくなっても、彼女が消えたところをずっと見ていた。
それからしばらく経ち、自分も部屋に戻ろうと立ち上がった。
戸締りを確認し、自分の部屋に戻る。

「なんだってんだ…なんなんだ……。」

部屋に入り、一息ついてからも自分の中で消化しきれていない何かを感じ小さく悪態をつく。
頬に手を当てそれが何かを考えようとするが、なんだか熱っぽいと思い叩かれたほうの頬だったと思い出す。
逆の方で頬杖を突こうとすれば耳に手が触れ、ばっと手を離した。
奏音の声と、息を思い出す。

「……分かんねえな、人って…。」

小さく、自分に聞かせるだけのために呟いた。





「さて。」

真っ青に晴れ渡り、雲もうっすらとしかない空。
肩に必要最低限の荷物を下げたエドが皆を見回す。

「レイはなんでこんなに気落ちしてるんだ?奏音、なんかやった?」
「ちょっとなんでド直球にあたし?!なんもやってないよ。失礼だなぁ。」
「火の無い所に煙は立たないだろ?奏音、オレ誰にも言わねえよ。なにやった?」
「だっからトリリンもなんであたしがやったの前提?!やってないって、信用してよぉ!」
「姉ちゃん…。」
「奏美もその哀れむ声やめてー!姉妹でしょ、信用してー!」
「……。」
「目逸らさないで!」

奏音の叫び声がこだました。
あまりの必死さに本当に奏音は関係していないのか、と周りが思い始めたとき想良が口を開いた。

「奏音さん、狼少年って言うじゃん。嘘をつく子供…ね?」
「……想良ちゃん、あたしのメンタル、ごっそり持ってった。」

がくりとひざを突き、泣き真似をする奏音を皆は笑った。
気を取り直すようにエドが大きな声を出す。

「まあ、レイは色々不安定だし。奏美は知っていると思うが俺達は。」

そう言うと、あの機械は目の前に三台現れた。
初めて目にする想良と奏音は驚きの声を上げ、それに近づいた。

「これで移動する。運転はなぁ…トリクシー、できるか?」
「んー…まあ、人並みにはできるんじゃねえかなぁ。」
「そうか!じゃあ奏美と乗ってくれ。」
「え。」
「スペース的にな。それでレイは奏音と。想良は俺と。いいな?」
「良くねえ!」

今まで黙っていたレイが悲鳴といってもいい位の声で叫ぶ。
予想外の言動に皆、彼に注目した。

「ちょ…ひどくね?さすがに傷つくよ?」
「レイ、本当にどうしたんだ。奏音だって移動中にあの蔓使うほど非常識じゃないだろう。」
「だったらさ、ウチと姉ちゃん交換ってのは?」
「いや…奏美も頭ぶつけてたし分かってるだろ?これ結構狭いんだ。だから身長から言えば奏美とトリクシーがいいだろうし。
 それにもし奏美がレイとだったら余計狭いと思うぞ?」
「…そっか。」

納得したようで奏美は引き下がる。
だがレイはそうも行かなかった。哀願といってもいいような口調で訴えかける。

「頼むよ、俺は絶対に奏音とは嫌だ。絶対、俺……。」
「でもなぁ、文句言うなよ。アリーがいれば良かったんだろうけどあいつにはあいつの事があるし。納得してくれ、な?」
「……。」
「そんな顔するな。……なあ奏音、本当に何にもやらなかった?」
「失礼だなぁ…やってないよ。ナチュラルってるよ、あたし。」
「うーん…まあ不満もあるようだが、納得してくれ。じゃ、乗るんだ。」

皆が機体に乗り、それぞれに飛び上がった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.75 )
   
日時: 2012/03/23 20:58
名前: あづま ID:/vOkSpZk

「つ、着いた…?」
「あぁ。ようこそ、って所だな。」
「へえ…人多いねぇ。でも何回か死んだなって思ったよ。」
「悪い悪い。俺はこういうのが本当に駄目で。じゃ、行こうか。」

大きく高い建物の前でエドと想良は話をしていた。
ここは彼等の故郷でもあり同時に仕えている国――カメリアだった。
既に他の四人は着いているらしく、なにやら手違いで姉妹は捕らえられてしまったらしい。
レイも半ば監禁状態にあり、トリクシーのみが塔の中に入れたのだと門兵が言った。
エドは門兵に礼を言い、想良と共に中に入って行った。

「しかしなぁ…もう少し待ってくれて良かったのに。おかげで手間が増えたぞ。」
「でもエドさんの運転が遅かったんじゃあ…。」
「確かに想良のほうが上手かったなあ。器用すぎないか?」
「いや…どうだろ?」
「まあ俺も教えられるくらいの技術はあってよかった。とりあえずレイを探すか。
 あぁ、結構見るに耐えないものもあるだろうが一緒に来てくれ。捕らえられないとも限らないし。」

そういってエドは階段を下りていく。
石造りのそれは明かりが差し込んでいない事もあって冷たい雰囲気を作っている。
しばらく進むとほとんど何も見えなくなり、恐怖を感じた想良はエドに話しかけた。

「ねえ、レイさんもここの国の人なんだよね?なんでこんな所に?」
「あぁ…まあなんて言えばいいんだろうな。境遇の違いって奴かなぁ。」
「でもこんな湿っぽいところにやるの?」
「ま、下は結構快適に近いんじゃないかな。止まって、扉開けるから。」

エドの声に従い想良は足を止める。
すると小さな金属が触れ合う音が聞こえ、光があふれた。
そこは想良の母親が以前動画で見せてくれたような座敷牢を思わせた。
何人か老人や幼い子供がそこにいた。
想良は思わず、この小さい子は何をしてこんな所にいるのかと聞こうとした。
だが、エドの顔を見た途端それも消え失せてしまう。冷たく、楽しむ、目。
その子供が彼に気づいて出してくれるように懇願する声も聞かず、奥のほうへと歩いていった。
するとその子供は想良のことをエドの仲間だと思ったのだろう。声をかけてきた。

「ねえお姉ちゃん!こっから出して!お願い、出して!」
「え…あの。」
「お願い!私何も知らないの!お願い、出して!パパとママに会いたい!」
「エド…。」
「煩いなぁ、全く。」
「痛、あああぁああぁぁあぁっ!!」

立ち止まった想良を気にかけ戻ってきたエドが差し出された子供の腕を蹴り上げ、焼いた。
炎に包まれた腕をその女の子は恐怖の叫び声で飾る。

「エド!ひどいよ、なにやってるの!」
「想良、こいつはスパイなんだ。小さな子供が、って思ってるかもしれないけど彼女はもう十二。子も産めるよ。」
「え…?」
「彼女は長期間監禁に近い状態で暮らして、情報を得るためだけの教育をされてるんだ。
 背が低いのは監禁状態の影響だよ。本当は罪人用の牢でもいいんだけどね、一回こいつが脱出を扇動した事があるから。」
「……。」
「信じられない?でも事実だからね。75、一々喚くな。そんな炎、お前なら何とかできるだろ。」
「……。」
「そんな顔をしても無駄だ。ほら、熱がって痛がって泣き喚かないから想良は信じないぞ。」
「チッ」

すると目の前の子供は腕を一振りした。纏わりついていた炎が消え、蹴られた所が赤くなっているだけだった。
想良は目の前で起こったことが分からないかのようにただ成り行きを見つめる事しかできなかった。
エドに促され、奥へと進む。
すると特に広い牢が並ぶところに出て、奥の明かりが灯っているところにレイが座っていた。
エドと想良がやってくるのを見つけるとレイが声を上げる。

「良かった!来てもらえねえと思ってたよ!」
「まあ俺の都合できて貰ってる様なもんだしな。それに弟が囚われてるってのも気分悪いし。」

そういってエドは牢の鍵の部分を軽く叩いた。
鍵のあく音が聞こえ、レイが出てくる。

「あぁ居心地悪かった!で、奏音たちは?」
「これからだな。」
「はぁ?!なんで助けて来ねえのさ!」
「だってあっちまで行くの面倒だし。というよりお前なんでここいるんだよ、門兵から聞いて驚いたぞ?」
「いや…なんか問答無用でよ。」
「抵抗は?」
「しようとしたさ!でも…やっぱり駄目だった。」

レイは肩を落とした。それをエドは慰め、姉妹の救出計画を話すために自室に行こうと提案した。
だが、レイはそれよりも助けに入るべきだと言う。
また言い争いになるのでは、と危惧した想良が二人に向かって話しかけた。

「まあまあ、レイさん見つかってよかったよ。」
「…でも、あいつらはまだ無事かどうか分からねえ。特に奏音とか戦闘技術皆無に等しいぞ?大丈夫じゃねえ…。」
「なんかレイさんいきなり奏音さんのこと気にかけるようになったねぇ、好きになった?」
「は、ばっ!」
「レイ…否定してたけどやっぱりそうなのか?やっぱりお似合いだったんだな。」

そういってエドは歩いていく。
想良もついて行ったのを見て、レイも歩いてきたがその声には明らかに否定をにじませている。

「大体!なんであれを好きになんなきゃいけねえんだ?俺言っただろう、積極的な女はお断りだってよ。」
「うーん…まあ奏音さんは華凛さんの事好きだしねえ。」
「華凛…?誰だよ…また俺の知らねえ人?」
「どうだっけ。奏音さんはいっつも婿って呼んでるよ?」
「あぁ、確か女友達だな。でも奏音は結構男好きじゃなかったか。」
「あー、でも華凛さんは別格みたいな感じだよ。なんだかんだで一番長い付き合いみたいだしね。」
「そっか…女か……。」
「やっぱり結構気にかけてる?」
「は?いや気にかけてねえよ、なんでそうなっちまうんだ!」
「…想良、あまり言わないでやってくれ。無自覚と葛藤は結構いいからな。」
「分かった。」
「だからなんで俺が好意持ってることになっちまってんのさ!」

先を歩くエドと想良にレイは突っかかるが、二人は互いに笑いあっただけだった。
その反応が気に食わないレイは更に色々言うが、想良に大好きなんだねと言われ黙ってしまった。
更にエドが笑うのに釣られ、想良も笑う。

「っんとに…でも俺少し安心したぞ。レイには全く女っ気がないからどうしようかと…。
 二十一で初恋か、そうか。色々頑張れよ、奏音は経験豊富みたいだしな。」
「でもそれって二次元限定って感じじゃないかな?奏音さん彼氏いたって話は聞いたこと無いなー。」
「それ本当かい?」
「うん、何かあれば奏美が言うだろうし。」
「そっか…いねえのか……あ?」
「と言う事はあれだな。一夜だけってのが多いのか!」
「なんじゃそりゃ。キャバクラ的な感じなの?」
「キャバクラ?」
「えっとー…。」

キャバクラの説明をする想良とそれを受けるエドの後をレイは追う。
ぼんやりと彼女等が来た日の事を思い出した。
曲者と言われ飛び出したらそれは勘違いで、羞恥を紛らわすためにも半ば自棄で奏音を連れ去った。
そして家に入って下ろしたらいきなり上着を剥かれたのだった。

「ひぃっ…!」
「レイさん?どうしたの?」
「なんか踏んだか?」
「え…俺、なんかしたか?」
「無自覚なの?なんかひいって言ってたからなんかやったのかと。」
「大丈夫なのか、やっぱり奏音といるとなんか辛かったか?」
「いや…まあ……。」

返事に困り俯いた事で垂れてきた髪をかき上げようとした時に指が耳に触れ、一気に昨夜のことを思い出した。
そのまま足が止まってしまう。
レイのおかしい様子にエドも何かがやばいと思ったのか階段を下りてきて様子を伺う。
だが、がくがくと震えるレイはそのまましゃがみ込んだ。
メンテ

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