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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.76 )
   
日時: 2012/03/23 20:59
名前: あづま ID:/vOkSpZk

「なあ、大丈夫か?」

そういってエドは手を差し伸べた。
だが、その手を取らないレイの事をよほど具合が悪いのだろうと立たせようと肩を抱くと彼は叫んだ。

「触んないどくれよぉっ!」
「あ、おい?」
「レイさん?え、大丈夫…じゃなさそうだよ。」
「るせえ、俺は平気…!」

心配かけまいとしたのか、はたまた触られるのが嫌だったのか。
おそらく後者のほうが割合が高いのだろう、壁に寄りかかりながらもレイは無理やり立ち上がった。
だが、体の震えまでは治っていない。
立っていられたのもほんの十秒にも満たない間でまたしゃがみ込んでしまった。

「レイ、ここに入れられるとき何かされなかったか?飲まされるとか色々…。」
「されてねえ、されてねえっ!あ、だから触んないでって…。」
「駄目だ。いつまでもここにいる訳には行かない。俺の部屋に行こう、それなりにきれいだから…多分。」
「それなりなの?」
「しばらく戻ってないからなぁ…。」
「下ろせよ、さ、触るなって、あぁ…。」
「ねえ、エドさん。レイさんなんか薬やられたんじゃあ。」
「だろうな。感覚が異常なまでに過敏だな。」

レイを無理やりに担いだエドは想良を先に歩かせた。
レイ自身は抱えられていることに抵抗を見せたものの、体を動かす事もだるくなったらしくいつのまにか止めていた。
階段を上りきったその時、想良の目の前には無数の兵士が現れた。
皆、彼女にさまざまな武器を当てている。

「そこの女!いますぐ我等に従って頂こう!」
「え?私が?」
「おいおい…。」
「エドゥアール様、どうか離れてください。この女、なにをしでかすか分かりませぬゆえ。」
「あぁ…こうやって捕らえられたのか……。」

心の底からのあきれた声をエドは出した。
自分と行動しているのになぜこうまでやられなければならないのか。
それに今はレイの事も気になるのだ。おそらくは毒か何かを盛られ、本人も警戒心皆無でそれを口に入れたのだろうが。
手っ取り早く解決しようとエドは想良を抱き寄せる。

「この子はなぁ、俺の今のお気に入りだ。それで来て貰ったんだ、だからお前達に渡す訳にはいかない。」
「しかし…!」
「なんだ?俺のことを信用していないか?」
「近頃、間者が紛れているのです。エドゥアール様、その者の特徴は十五に満たないほどの女にございます。」
「…十五に満たない女など俺も何度か連れて来た事があるじゃないか。」
「え…?!」

思いがけない発言に想良はエドを凝視する。
法律が…と口を開きかけたがここは日本ではない。もしかしたらそういう法律なんて無いのかもしれない。
アリーとトリクシーも確か結婚自体は早かった気がすると思い、ぐっと疑問を飲み込んだ。

「ならばいいです…。はぁ……。」
「落ち込まないで、ミラーさん。エドゥアール様、他の女子達は西の牢でございます。
 あなた様の部屋にお連れいたしましょうか?」
「あぁ、頼む。…なあ、少しいいか?」
「はい。」
「一人…胸が大きいほう。あれはどうみても十五以上だろ?なんで牢に?」
「それは…。」

兵士が言いづらそうにする。
やはりなにか危ない目にいあってしまっているのでは、と危機感がつのる。
だが次の言葉でそれは簡単に崩れ去ってしまったのだった。

「はじめは…その、お待ち頂いていたのです。もう一人、トリクシー様とご一緒だった方も妹だと言うので…。
 ただ…兵長殿を見た途端奇声を上げなさって何やら訳のわからない蔓が…。」
「それって…。」
「それで兵長殿はお怒りになりあの方たちを牢へ、と。」
「そうか。なんか余計な労力を使わせてしまったなぁ、すまん。じゃあ、連れて来てくれ。」
「はい、しばしお待ちを。」

エドと話していた兵士が一歩引き下がり、道を開けた。
他の取り囲んでいた兵士達もそれに習い、ザッと両端に避ける。
エドはそれらに軽く労わりの言葉をかけ、想良を連れて自分の部屋を目指していった。





「姉ちゃんの馬鹿。」
「いやしゃーねーでしょ。あんないい男だよ?どれそれあれこれ見たいと思わない方が可笑しいわ。」
「可笑しいのは姉ちゃんでしょうが!あーあ…誰か助けに来てくれないかな。」
「どうだかねー…でもさ、このまま牢獄暮らしでも別に良くない?日本でも牢屋に入ればあとは税金暮らしヒャッハー!
 てかまじで変じゃね?なんで悪人って言ってるのにあたしらが養うのよ。」
「それは分かんないけどさぁ…。」

湿っぽい、ある光は燃え続け尽きる事のない炎のみ。
仕切られた牢の中で奏音と奏美はもうしばらく会話を続けていた。
向かい合った牢、できるのは会話くらいのものだった。
大きな建物の前に降り立った彼女等とレイ、トリクシーは門兵による歓迎を受けた。
そしてエドと想良を待つためにしばらく待っていると答えて数分。

『はじめまして、ようこそカメリアへ!』
『ん?誰ですか、えっと…自己紹介するべきかな?』
『どうだろうなぁ…別に長い間いる訳じゃねえだろうしいらねえだろ。それとこいつは兵長。』
『兵長さん?あれ、名前は?』
『お嬢様、私めは国を守り、それの為に果てる存在にございます。名などいらない物なのです。』
『そうなの…?』

想良は意外な事実にレイに問いかけた。彼は黙って頷き、それから顔をそらしてしまった。
納得いかない想良はトリクシーにも同様の質問を投げかけるが返ってきた返事は同じだった。

『想良、そういうもんなんだ。名前を残せるのは一握りの上流階級。それ以外は名もなき兵士。
 オレの所もそうだ。名前で呼ぶ事さえ、少ない。』
『そっか…やっぱり世界が違うんだなぁ……。奏音さん?』
『キタアアア!!』
『かの、おい!』

奏音が奇声を上げ、兵長に向かい何かを投げる。
それはあの蔓で瞬く間に兵長を縛り上げてしまった。周囲からは動揺の声が上がる。
地に倒れ付した兵長が怒りの声を上げた。

『この者らを直ちに牢に捕らえよ!無礼者!』
『あ、トリクシー様はこちらに。』
『ちょっと牢?!まじかよお!』
『姉ちゃん楽しんでない?!えー…ウチも?』
『おいてめえ!なんで俺まで引っ張ってくんだよ!俺もなんかやったってかい?』
『あ、おい!なんでレイまで連れて行くんだ?彼ここの人だろ?』
『トリクシー様、それはこちらの事情です。どうぞお気になさらず。』

にこやかに一人の兵士がトリクシーに話しかけ、他の三人は各々引っ張られていった。
心配そうにトリクシーは目で追い、あの兵士と共に奥へと消えていった。
そして彼女等はこの牢に入れられ現在に至っている。
見張りもおらず簡単に抜け出せるのではと思ったがどうやらあの不思議な力が働いているらしい。
抜け出そうという意識の元で行動をおこすと即金縛りのようになってしまうのだった。

「まじねえわ。っつかトリリンも助けてくれてよくない?なんで傍観してたんだか。」
「ウチに言わないでよ…まぁ、うん。大丈夫かなぁ…。」
「それってあたし等が?それともトリリンとレイ?」
「二重にかな。」

すぐに答えが返ってくるものだと思っていた奏美は沈黙の返事に奏音を見た。
何をしているのか分からない、ただ蹲っている。

「まぁトリリンは強いみたいじゃん、アリーちゃんぼこったんでしょ。でもわんこは良く分かんないわ。
 箱入りっぽい気がするし…でも大丈夫っしょ、あたしを運ぶくらいの力と持久力あるし。」
「そうかなぁ…。」
「あれー、もしかして信用してないの?あたしは結構いいと思うけどねぇ。」

そこでまた会話が途切れた。
奏音は床の何かを一心に見ているようで奏美の問いかけにも全く反応を示さなくなった。
あきらかに脱出しようと言う心の見えない姉に奏美はため息をつき、何か方法は無いものかと周りを眺めた。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.77 )
   
日時: 2012/03/26 23:53
名前: あづま ID:IcGxi/EE

「おし。でーけたでけたっと。」
「はぁ?姉ちゃん何やってた訳?」
「いやね、愛娘が拉致されたので次女を生みました。」
「あーあ。姉ちゃん狂った。」
「ひっで!まあ見てなさい、あたしの実力にひれ伏すがいいわ!」

そう言い、奏音はすっくと立ち上がり意識を集中させ始めた。
なにをするのか、そう重い気を引き締めた奏美も黙って見守る。
その時コツコツと足音がし、奏美が振り返ると一人の兵士がいた。トリクシーと共にいなくなったその人だった。
人の好く笑みを浮かべ、二人にお辞儀をし口を開いたその時だった。

「そこのお嬢さんがぁっ?!」
「ぎゃああ兵隊さーん!なんでいるの、ちょ、ああああ!」
「姉ちゃん…。すいません…本当に姉がすいません…。」
「い、いえ…それより、っこれを!」
「あーはいはい。」
「なぜ、残念そうっ、なんですか…っ。」

湿り気を帯びたそれが落ち、丸くなった。ゆっくりと転がり奏音の手にそれは収まる。
それを兵士は目で追い、それから二人の牢を開けた。
牢を開けてくれた事に対し驚きを見せる二人に兵士は説明する。

「エドゥアール様よりあなた方を案内するように仰せつかりました。どうぞついて来て下さい。」
「え、まじ?釈放されたの?」
「よかったー…でも本当にすいません。姉がこんなですいません。」
「いえいえ、私共も何も説明せず牢に入れてしまい申し訳なく思っております。
 これにて相殺…という事にして下さいませ、お嬢様方。」

兵士は静かに笑い、先に立ち二人を案内した。
あまり怒っている様子も見られなく奏美は安心したがふと気になった事を口にする。

「姉ちゃん、ところでそれ何?」
「あぁこれ?苔から作った次女だよ。」
「へ、へえ…。」

淡々と、しかし良く分からない言葉を紡ぐ姉にしばし困惑する。
だが次女と称しているのでおそらくはあの蔓の後継なのだろうと奏美は思った。
あの蔓はここに入れられる際、没収されてしまっている。
無言で歩みを進める兵士の後を追いかけるが、日の当たる所に出、そして階段をひたすらに上っていく。
地球ではバスケットボール部、こちらに来てからはほぼ毎日走り込みを続けていた奏美には造作も無い事だったが、
運動と言えば担当からの逃亡劇でこちらに来てからはそれも無くただぼんやりとすごしてきた奏音には辛い事だった。
二人からだいぶ遅れ息切れをしながらも何とか上っていく奏音を奏美は哀れな目で見つめた。

「姉ちゃん練習しなよ?」
「う、うるぜー…。」
「はいはい、口より手を動かしてね。」
「大丈夫ですか?力を貸しましょうか…?」
「うー…いえ、自分で、ゴホッ…!」

兵士の申し出を断り、奏音は顔を火照らせながら上っていった。
ひゅうひゅうと彼女の息が煩くなった時に兵士が階段を上るのをやめ、廊下のほうへと進んでいった。
彼の髪の毛も汗で顔にへばりついており、僅かながら肩も上下している。
赤い絨毯の敷かれた廊下を一番奥まで進み、扉をノックする。
するとエドの声が聞こえ、兵士は一言奏音と奏美を連れてきた旨を言い彼女らに礼をして下がって行った。
扉を開け、エドが顔を覗かせる。

「なんだなんだ、大丈夫か。酷く息切れしてるじゃないか。」
「あぁ…なんか、階段ここまで上ってきたもので…。」
「み、水〜…。」
「うわ、とりあえず中に入ってくれ。」

奏音を見、一瞬言葉に詰まったエドだがすぐに彼女らを通した。
中には想良が座っており、レイはベッドに寝かされていた。
エドから受け取った飲み物を一気に飲み干し一息ついた奏音がそれを不思議そうに見つめる。

「わんこはどったの?」
「俺も良く分からなくてな…感覚が異常に過敏なんだ。なあ、何か見ていないか?」
「えー…なんかあったっけかなぁ。奏美、なんか見た?」
「うぅん、ウチ達急に連れて行かれた様なもんだし。」
「そうか…俺はこういうのからっきしだし、トリクシーは元々タフだから薬はほぼ効かないからあんまり知らないだろうなぁ。
 アリーは今いないし…どうすっかなぁ…。」

悩ましげにエドが呟く。
薬の知識などほぼ無いに等しい三人も黙り込んでしまう。

「とりあえず水を飲ませるくらいじゃないかなぁ…イメージ的には。」
「想良、なんか分かるのか?」
「え、いや…ただ単に体に毒物があるなら水飲んでそのまま出すのが一番かな…て…。」
「まあ、それもそうだな。仕方ない…レイ、飲めるかー?」

先ほど二人に渡したのと同じと思われる飲み物を部屋の隅の箱を蹴り上げてから出した。
部屋の中に飲み物を出す機械があるということに二人は驚いた。
枕元に行きレイと話しているがどうやら喋るのも辛いらしく、飲むのも拒んでいるのが微かに分かる。
それを察知した奏音は彼等の元に駆け寄った。

「口移し!やっちゃえ、口移し!」
「そ、それって俺とレイが…?」
「おーとも!そーれ、口移し!」
「い…や、だ…。」
「俺もちょっとなぁ……。」
「姉ちゃん……。」

戸惑い拒絶する二人を奏音は強硬な態度で攻め立てた。
苦笑するしかないエドはだんだんと押されて行くが、レイは弱々しい口調で頑なに拒否する。
傍観を決め込んでいた想良がふと浮かんだ悪戯心で口を挟んだ。

「だったらさ、奏音さんやればいいじゃん。」
「え?なにゆえ。あたしは別に構わないけどこの二人が口移ししてるのを見たいんだけど。」
「想良…?何でいきなり…そりゃ姉ちゃんに貞操観念求めるのは馬鹿だけど。」
「まあま、いいじゃん。奏音さん構わないんでしょ?エドさんも…いいよね、奏音さんとレイさんが口移ししても?」

そこで想良の真意を汲み取ったエドが頷く。
快く了解の返事をし、押さえ切れない笑みを浮かべながらレイを見た。
レイといえば想良の突然の発言とそれが了承された焦りで顔が見る間に赤くなって行った。
感覚に響かない程度に首を振るがそれは本当に僅かであり、拒絶の声も打ち消されてしまった。
想良がエドからカップを受け取り奏音に渡す。理解できていない奏美は想良の意外な積極性にただ圧倒されていた。

「ほら、じゃあよろしく頼む。まあ男の俺にやられるよりはレイも幸せだろう。」
「アイアイサー。まああたしは男同士でやってんのが見たかったんだけど。」
「やめ、……。」
「失礼なー、歯ぁ磨いてるから。」

そう言って奏音は渡されたカップの中身をある程度口に含みレイに覆い被さる。
数秒後彼女は体を起こした。レイの口元には幾筋かの雫がこぼれ、彼は息も荒く奏音とエドをにらんだ。
それを見た奏音は肩をすくめ、エドに話しかける。

「なんか暴れやがってさぁ、ちょっと零したわ。ごめん、汚した。」
「構わないさ、洗濯させればいいんだし。」
「うわーお、お坊ちゃまだ。でさ、これまたやるの?あたしの口も無限大じゃないから結構これ時間かかるわ。
 あたしとしては大歓迎なんだけどね、わんこ甘いにおいがするし。」
「そうだな…毒を抜くためにはな、ってレイ!泣くなよ、ちょっと!」
「うる、せぇ…。」
「ええちょ、泣くとかあたしに失礼じゃね?!あたしも結構傷つくんですけど口移しして泣かれるって。
 何、ファーストキス?今時そんなのって乙女かよ、ってあぁあぁぁまじちょ、泣かないでって、泣かないでってばぁ!」

エドと奏音がレイを宥めているのを見てなんとなく想良も申し訳無くなったが離れた所にいる事にした。
奏美は今までに無い想良の態度になんとなく引っかかるものを感じたがその正体は分からなかった。
姉に妙な羨ましさを感じつつ、それが何に対してか分からない彼女は友人と並びその様子を黙って見ていた。





「ほら、ここを進めばリキルシアだ。あの塔が見えるだろう?なんなら送って行くかい?」
「うぅん、ありがと。助かったよ。」
「そうかい。それにしてもリキルシアになんのごようだい?君みたいな小さな子が…。」
「ふふ、秘密。じゃあね、ありがとオジサン!」
「あぁ、頑張れよー。」

アリーは先ほどまで乗っていた荷馬車から飛び降り、礼を言って歩いていった。
ぽってりとした余裕のある華やかな色の衣服。
スースーとしてなんだか落ち着かないが潜入のための最低限の武器を隠すため、それに女の格好は怪しまれづらいので我慢する。

「なんか裸で歩いてる気分だ。」

ぼそりと呟いた言葉がちょうど反対側から歩いてきた通行人に聞こえてしまったらしく慌てて笑みを浮かべる。
しかしそれで余計に怪しまれてしまったらしく心の中でため息をつき、口を開いた。

「ねえねえお兄サン、一緒に遊ぼうか?」
「…いや、今は金が……。」
「お金なんていい、今その気分なんだ。ちょっと、行こうか…。」

男の有無も聞かずアリーは無理やりに森の中へと入って行った。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.78 )
   
日時: 2012/03/26 23:56
名前: あづま ID:IcGxi/EE

「さーて…僕は男でした。お兄さん、分かるね?」
「……!」
「はは、情報を頂戴?なんでもいい、リキルシアの情報。」
「何…を?」
「そうだね…うん、塔の鍵が閉まるのはいつ?」
「ゆ、夕方…日が暮れる前、喇叭が、鳴ります…。」
「そっか。へえ、ありがとね、オニーサン。」
「ぐ、あっ!」

アリーが服を脱ぎ、体中に武器を仕込んでいるのを見て硬直した男。
足の腱を切り、動きを鈍くしたところで情報を聞き出す。
塔の鍵が閉まる…そして警備が強くなるであろう時刻を聞きあとは始末をした。
血に濡れない様服を脱いだのは正解だったと頷き、軽く葉で拭ってから再び着る。
変わらず着ている感覚の無いそれに不安を覚えながらアリーは門をくぐった。





リキルシア――最古にして最大の国。
元は違う名だったらしいがこの国を整えた人物が亡き人物を悼むためにつけた名である。
そのため通常、統治者の姓名で呼ばれる国とは違う異色のものだった。
パウエルとは戦こそ起こしていないものの険悪な国である。
賑わう人々と、高らかな楽器の音色を下に聞きながら男はため息をついた。
この国の統治者の四男、そして軍師でもあるフェビアンだった。
なにかがこの軍をかぎまわっている…それはつい先日もたらされた情報だった。
いつもならばすぐにあぶり出そうとする彼だったがそれをできずにいた。

『ファビー、探さないのか?いっつもなら探すのによぉ。』
『待ってください…考えが、ありますので。』
『そうかい、お前さんに間違いは無いからな、ハハハハ…!』

豪快に笑い飛ばした兄を苦しい気持ちで彼は見送った。
敵を欺くため、国のための嘘ならば身内にも数え切れないほどついてきた。
だが、今回の嘘は私用だ。一週間ほど前だろうか、自分に策のありようを説いてきた人物がいたのは。
目の前で自分の予想外の殺害が起き、混乱していた所に自らの策を批判された。
確かに自分の策で味方も殺しているとは自覚していなかった、と軍師として自嘲したものだった。
あぶり出してしまっては、もしかしたらその人物に支障が出るかもしれない。
もしかしたら本物のスパイであり、国を滅ぼす一大事が起こるかもしれないが今のフェビアンにそれは重要な事に思えなかった。
それを自覚しまずいと思いながらも、その人物の去り際に浮かんだ一つの願いを胸に軍師は現れるのを待った。
その願いは、国に帰りゆっくりと時間を楽しんでからより一層、強いものへとなっていった…。





「さぁてご覧に入れまするは遠き国の珍しき…」
「さーあ、とれたての野菜だ!どこよりも安いよ、買っていきな!」
「なんか凄いなぁ…都会だ。」

四方八方から声が聞こえる大広場。
こんなに人がいるならば女の格好をしてくる必要が無かったのではとアリーは後悔した。
どこか着替えられる場所が無いかと見回すが見つからない。諦めて時間をつぶす事にした。
まだ日の入りまでは時間があり、無駄に時間を過ごすのもいかがなものかと歩き回る。

「入っちゃおうかなぁ…。」

一番高い塔を見て呟いた。あそこが王族達が住んでいるという塔である。
皆王族は高いところに住むものなのだろうかと思いながら塔への門をくぐった。
庶民との交流が盛んなのか、はたまた大国と言う余裕があるのかある程度なら身分国籍を問わず入れるらしい。
自分と似たような衣類の家族連れに紛れ、内部へと侵入する。

「お嬢さん、どうした?一人かい?」
「ん?」

肩を叩かれ、振り返れば男が立っていた。
赤い髪の、大柄な男。
さわやかな笑みを顔に飾りつけ、アリーの返事を待っている。

「そうだよ。」
「へえ…どうだ、俺と一緒にまわらねえかい?何回か来てるから案内できるぜ?」
「そうなの?よろしくお願いしまーす。」

男の申し出にこちらも笑顔で答える。
案内をしてくれる、と言う事はなにか情報がつかめるかもしれない。
ただ、男の体がいやに気になった。危険だ、と心の隅で思う。
だが男はそんなことも全く知らないのかずんずんと進んで行き建物の説明を始める。
今は財政の要とも言って過言ではない建物のようだ…。

「大きい…すごいな、貯めこんでる。ちょっと貰っていきたいなぁ。」
「駄目だよお嬢さん、んなことしたらあっという間に牢獄行きだ。」
「へえ…なんで分かるの?」
「そりゃ、この国の整備がそこまで行き届いてるって話さ。塔に入ろうものなら即、分かるね。」
「すごいねぇ、物知りなんだ。」
「いやいや、弟には遠く及ばないね。」
「弟…。」

ポツリ、呟いたアリーの言葉に男が一瞬硬直する。それから事をごまかすように曖昧に笑った。
この男の体は健康状態がいい。
リキルシアのように主要都市が潤っている国ならばまず水準は高いだろうが…頭の中で男の正体を探る。

「っとな、俺の弟、学者なんだ。国にも認めてもらってんだからすげえよなぁ。」
「へえ、じゃあ…この塔の警備も弟さんが考えてるとか?」
「……。」
「どうしたの?」
「いや…なんかお前すげえよ、当てちまう!なあお嬢さん、会って行くか、俺の弟。」
「えっ!」

予想外の申し出にアリーは立ち止まる。
そしてそれと同時にこの男が軍師の兄…何番目かは分からないが年があまり変わらないように見える…だと言うことが分かった。
だが、事が上手く運びすぎている。
一般的な反応とは何か…アリーは考えをめぐらせる。

「でも…身分、低いから。お兄さんにも、こんな口調で話してちゃ、駄目だね。」
「あ、気にしたか。別にいいよ、俺がお嬢さんを招待するってんだからな。」
「だけど…。」
「いいっていいって。第一リキルシアはそんなのあんまり気にしてない。行こう、な?」
「うん…お兄さんが言うなら、いい、かな?」
「よっし、じゃあ行こうぜー。」

男が手を取り、番人にも軽く挨拶をしてそのまま通り過ぎて行く。
番人はアリーのことを暗い目で見たが、口を開く事はなかった。
まるで女を連れてきたエドに対する反応だ、と口の中で笑う。

「なー、上!フェビアン所によろしく頼む。」
「了解いたしました。こちらの女子は?」
「あぁ、俺の個人的な客。」
「あ…はじめまして。よろしくおねが」
「ほら来た、乗ってくれ!」
「……。」

床に青い紋様が浮かび上がり、男と共にそれに乗る。
一拍間が空き、それから薄い膜のような物が二人を覆うと突然周りの景色がすべて下に流れた。
風かな、とアリーは心の隅に思う。
一気に全てのものが下に流れていき思わず感嘆の声を漏らす。

「すごぉい…。」
「はは、だろ?こんなに早くいけるのはココだけだからな。パウエルもここまで早いのはまだ開発されてないな!」
「そうなんだ、本当にすごいよ!」
「褒め過ぎだって、いい気だけどな。ほら、着いたぞ。」

男の声と共に周りを覆っていた膜も無くなる。彼が一歩踏み出したのを確認し、アリーもついて行った。

「ファビー!」

男が大きな声を出すと近くの部屋から軍師が顔を覗かせる。
アリーに気づき、一瞬はっとしたような表情を見せたがすぐにそれは消えうせた。
男がアリーについてを話す。

「あぁ、すげえな。とにかく洞察力があるみたいだ。」
「それはあなたがなにか情報となりうる何かを言ったのではないのですか?」
「お前さん煩いな…お嬢さん、こいつが弟だ。」
「はじめまして、アリアと申します。」
「アリア…?」
「へえ、アリアって言うのかお嬢さん。ファビーはもしかして知り合い?疑問に持ってる声だな。」
「いや…。」
「そうか?」

だが男は納得しきっていない。フェビアンとアリーを交互に見ている。
偽名を名乗ったところで調べがついているであろう事位アリーも分かっている。
だがもし本名を名乗った場合、ここにいる二人以外も敵に回す事になるだろう。それだけは避けたかった。

「…私はこの、アリアだったかな。二人で話してみたく思います。」
「そうか?まあいいけどお嬢さんにも都合があるだろうし帰るって言ったら即帰らせろよ。」
「それは分かっております。わざわざありがとうございました。」
「ああ、じゃあな、お嬢さん。」
「ばいばーい、またご縁が合ったらよろしくお願いします。」

男に対して笑いながら手を振る。
郡市の視線を後ろに感じつつも完全にその男が見えなくなるのを待った。それは相手も同じらしい。
完全に見えなくなり、間合いからも外れたと思えるようになったとき、軍師が口を開いた。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.79 )
   
日時: 2012/03/26 23:58
名前: あづま ID:IcGxi/EE

「驚いたね、まさか兄を誑かして来るとは。それと女だったか?」
「いや、男だけど。あと誑かしたんじゃないよ、お兄さんが声をかけて来ただけだからね、軍師様?」
「まあいい、本来は招かれざる客だ。とりあえず入れ。」
「えー…ま、いいや。」

フェビアンが一歩下がり、彼の部屋にアリーを通す。
私物は無に等しく、国の情勢がリアルタイムで表示される画面が窓を覆っていた。
椅子を勧められアリーが腰掛けるとフェビアンが口を開く。

「まさか来るとは思わなかった。それに来るならば夜だろうと思っていた。
 警備は厳重だが、その厳重さによる甘えもあるはずだから。お前の侵入で叱咤しようと思っていたのに。」
「はは、残念でした。まあ僕も夜に入るつもりだったんだけどお兄さんが声をかけてくれてね。運が良かったよ。」
「ほお……。」

フェビアンはアリーを品定めするように頭からつま先まで眺める。
女物のゆったりとした服を身にまとった小柄な人間。
何を企んでいるのかまでは分からなかったが、落ち着き払った雰囲気から他国への潜入は初めてでないことが窺えた。
もう一度窺い見るがその視線に動じる様子は無い。

「そうだな…まずは服を脱いでもらっていいか?その服装、武器を隠しているだろう?」
「あらら、やっぱり分かる。ま、今回の目的は契約。いいよ、でも攻撃しないで欲しいな。」
「そちらが仕掛けなければ構わないぞ。この部屋で流血ごとは避けたいしな。」
「おやさしい事で、軍師様。」

軽く笑って、脱ぎ始める。
完璧には拭いきれていなかった血を見たとき、フェビアンが身をこわばらせたのを感じ微かに優越感を感じた。
武器をすべて取り、彼に向き直る。

「…なんだ、その血は。」
「あぁこれ。これはまあ君のお兄さんのせいで無駄死にしてしまった男の人の最期。」
「殺し、」
「これが僕の策だよ、軍師様。」
「はあ…アリアというのは何だ?あの偽名、あまり使っていないだろう。」
「別に。過去のお仲間の名前。もう死んでるから探っても無駄だよ。」

教える必要は無い、と雰囲気だけで相手に伝える。
彼も探る必要は無いと判断したのか、話題を切り替えた。

「さて、私の望みだ。叶えてくれれば頭くらいは貸しても構わない。」
「うん。僕も、命をかけないでいい事なら何をしてもいいよ、国のためだ。」
「…熱心だな。私は外に出たい。」
「は。」
「外に出て、一民として触れ合ってみたい。生まれてからほとんどをこの塔で過ごしているんだ。」

予想外の要望にアリーは黙る。
戦力や金、なにか国の情報を引き換えにするのではないかと考えていたためだ。
だがリキルシアは大国。戦力や金もあるだろう。
もう少し考えを巡らせておくべきだったと舌打ちした。それに気づいたのか相手も笑う。

「駄目かな。」
「良いけど…そんなで良いわけ?お金とか戦力とか、情報とか。」
「お前は意外と頭が回らないんだな。金はある、戦力も人がいるからある。情報はこれを見てくれれば分かるだろう?
 それに技術だって兄と上ってきたあれを見てくれれば分かるはずだ。」
「うん…反省する。」
「しおらしいな。それに頭を貸す事になれば必然的に情報は手に入る。私はこの国は現状維持で良いと思っているからな。
 世の統一や他国侵略を考えず、与えられた土地の存続だけを目標にする。」
「ふーん…その割には戦をしてるね。」

アリーの一言にフェビアンは笑った。
さも愉快そうに、人の目をはばからず笑っているのが分かる。
一方、笑いを生み出したアリーは何がなんだか分からずむくれる。それを見、フェビアンは更に笑った。

「それはフェビアン=カンターがあまり世に出られないからさ。戦となれば臨機応変に指示を出さねばならない。
 私はよく野戦をやるだろう?僅かな時間とはいえ外に出られるのは嬉しい。」
「んー…。」
「納得してないな、でも実際そうなのだ。あとそのむくれ方は似合わないぞ、せめてアリアの時にやるべきだった。
 というよりアリアの喋り方は可愛らしいな、普段からそう喋れば男を手玉に取れるのではないか?」
「はぁ?!僕男なんだけど!それに小さいけどね、一応十六なんだよ、もうすぐ十七!」
「悪かったな、栄養取るようにするといい。なんなら観光して行くかな、手形を書いてあげようか?」
「うるさい!!」

アリーの様子を見、フェビアンは喉の奥で笑う。
それをキッとにらみ付け、アリーは武器を元通りに身につけ服を着る。

「まあ、契約は成立という事でいい。」
「まだ外に連れ出してないよ!」
「なに、お前の仕える国とリキルシアが同盟すればいいのだ。そうすれば私も外に出られる。」
「…そこまで考えてた?」
「どうだろうな、そのうち分かるかもしれない。ところでお前の国はどこだ、何かメリットを考え出さなければ。」
「カメリア。」
「成程。」
「あ、でもあれだからね?僕が仲介ってだけで本当に同盟結ばれるか分からないから、ね?」
「あぁ、そんな事か。別に私は外に出られれば良いからな、成立で構わない。」
「…ご大層な。」

フェビアンは額に手を当て考え始めた。彼の癖なのだろうか、とアリーは心の隅で思う。

「新興国。今は五代目、戦を嫌う領主が統べる国。勢力は主な者は他国の貧困層や孤児を取り込みそれからなっている。
 自国では複数の兄弟がいる場合は兵役が課せられ、それも大きな力となっている。――間違いないな?」
「正確には兄弟皆受ける。そして家を継ぐ人のみ戦に出ない。」
「へえ、新たな情報だ。そして同じく新興勢力で領主の補佐がパベーニュ。
 領主以外で姓を名乗る珍しい一族だがその始まりは来訪者の女。勢力も彼女の指導が生かされている。」
「当たり。こんなに知ってるならはっきりいうけど同盟いらなくない?僕らにはメリットありそうだけど
 そっちにはあるかな?」
「魅力は資源。リキルシアは他国からの商人を受け入れ商売をするための土地を与え、それからの収益も大きな財源だ。
 競売方式だからね、自然と代は上がって行く。」
「ちょっと待って。」

アリーが言葉を遮った。おかしい、と思う。国の情報を軍師はなんの戸惑いもなく話している。
下の賑わいを見ているアリーのは彼の話がフェイクだとは思えなかった。
何か裏があるのでは、と心の隅で警戒する。
そもそも相手が知っているからといって国の上についても同意してしまった。
なにか、重要な事を間違ったかもしれないと焦る。

「おかしいって思ってるな。私はカメリアのことを知っている。だが君はあまりリキルシアを知らなそうだな。
 だから互いにフェアに行こうとね。嫌ならやめるよ。」
「いいや…僕も大国リキルシアを知れるのは良いと思う。いつか、乗っ取るかもね?」
「怖い怖い、楽しみにしている。そしてカメリアの利点が資源だな。領主の方針かは知らないが閉鎖的。
 国内のみとはいえ資源もいつか尽き果てるだろう。だが私にはカメリアが滅んでもどうでも良いからな。
 ただ、資源が欲しい。まあ、極端に弱体化したら手を切らせてもらうよ。」
「まあ、それならいいかな。ただ毒虫には気をつけること、泣くよ?」
「経験談か?…閉鎖的で、戦のかく乱や暗殺、そして資源に定評のあるカメリアと最古で最大の大国リキルシア。
 仲良くして行こうじゃないか、結ばれた手が自由になるまで。」
「そうだね。伝えておくよ、さよなら、軍師様。」

そう言ってカメリアの人間は部屋から出て行った。
軍師は息を吐き出し、思案に暮れる。
この同盟、どれくらい生かせるか。そしてあの人間はどれくらい賢いのか。
使いどころを考え、そっとまぶたを閉じた。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.80 )
   
日時: 2012/03/26 23:59
名前: あづま ID:IcGxi/EE

「はー…なんとならないものかな、レイ。」
「知らね…。」
「うん、何で泣いたかな。あたしに失礼。」
「分かんねえよ、俺。もう全部…。」
「分かんないで泣かれんのかよ。なにそれ生理的に拒絶されてる?」
「さぁ…もう寝たい、疲れちまった。」
「あぁそ、エド、あたしらどこ行けばいい?さすがにずっと居座る訳にはいかないっしょ。」
「そうだな…アリーの部屋にとりあえずいるか?荒らしたりしなければ怒らない…というより怒らせないが。」
「な、それ強行すぎない?!別にさ、ウチ的には野宿とかでも、厄介になってる身だし。」
「いいや、客人だ。ちょっと掛け合ってくるけど二、三日経たないと承認されないんだ。
 とりあえずアリーの部屋にいてくれ、こっちだ。」

エドはそう言ってレイに布団をかぶせてから部屋の外へと出た。三人もそれに従う。
アリーの部屋はエドの部屋の隣であり、中も物が必需品以外ほとんど無いという点でしか違いは見受けられなかった。
それを見たエドは苦笑し、自分の部屋からとりあえず布団の代わりになりそうなものを数組持ってきたのだった。

「何にも無いね。あまりここにいないのかな。」
「アリーはただでさえ俺ら兄弟の中で仕事が多いし、ふだんはあっちで生活してるからな。
 こっちに戻る事なんてほとんどないしなぁ…トリクシーと会うのが嫌らしい。」
「そうなんだ、結婚してるのに勿体無いね。私だったら好きな人と一緒に…って政略なんだっけ?
 でもアリーはトリクシーの事嫌いには見えなかったけどなぁ。」
「そうなの?やっぱりそうなんだ…。」
「奏美?なんで残念そうなの?」
「い、いや!たださ、なんかこう…仕事優先みたいなイメージあったから!」
「ははは、たしかに仕事優先になってるかもな。ここらへんに敷いとくか?」
「いいよ、寝るときになったら私たちがやるから。」
「そうか、じゃあちょっと掛け合ってくるからゆっくり寛いでくれ。」

エドは部屋を出て行く。そして足音がふつりと消えたのを三人は感じた。
想良はそのまま窓辺に陣取って高いところから眺める景色を楽しんでいた。
奏音はアリーの私物をいじっては戻している。なにか発見があるのではないかと考えているようだった。
壁に寄りかかって座った奏美は、もやもやしたものを胸に抱え込んでいた。
アリーに少なからず好意を抱いている。それはトリクシーに指摘されはっきりと自覚した。
だが、それと同時に申し訳なさが心を支配する。
トリクシー自身もアリーのことは好きだろうに、自分のことを気遣ってくれたような気がする。
本当に申し訳なく後ろめたいと同時に、自分のそれはそんなに分かりやすく態度に出ていたのかと思った。

「はあ…。」
「どうしたの?ホームシック?」
「ううん…帰りたいのもあるけどね。こっちはこっちで楽しいけど色々あるなって…。」
「あぁ…私もびっくりだよ。こういう事があるなんて思わなかった。」
「うん…ウチも思わなかった。…まさか人、殺すなんて。」
「あ…なんかごめん。」
「いいよ、でもこれが夢だったらな、って思っちゃうけどね。殺したのも、全部、夢ならって……。」

奏美は力なく笑って見せた。
案外、辛いときに笑うのは難しいし相手には頼りなく無理しているように見えてるだろうな、と冷静な部分で思う。

「私には、まだ分からないけど。でも、夢だったらちょっと寂しいかな。」
「え?」
「私はまだ本当に辛い事を経験してないから…したくないけどね。
 でもここで不思議だけどいい人たちに会えたし、いろんな事が起きてる。全部夢だったら寂しいな…って。」
「あぁ、そういう。うん、まあ全部夢だったらちょっと残念かも。」
「おぉ!?なんだこれは!」

突然、奏音が大きな声を上げる。
黙々とアリーの私物を弄っていたため、話にも交わってこなかったので二人はびくりと体を震わせた。
奏音のほうを見ると先ほどまでは布がかけられていた、ただそれだけの物に凹凸ができている。
そして彼女の手の中には小さな機械が握られていた。

「姉ちゃん!」
「いや…機械握ったらいきなり布の下に何か現れたんですけど。というかこの布の下は何も無かったはずなんだけど。」
「そうなの?隠しダンジョン的な感じなのかな?」
「多分この仕掛けかな。つか埃も無いってすごいよね、あたしの家三時間以内だけでごたごたするから。」
「それ姉ちゃんが片付けないで積み重ねるから崩れてんじゃん。」
「分かってます、でもレオンが片付けてくれたから少しはマシよ?夏の陣前に来なさい、分かるから。
 はい、ご開帳〜。」
「あちょ、弄っちゃ駄目ってー……。」

奏音が布をめくるとその下にはずらりと額が並んでおり、それに入っているのは写真だと言う事が分かった。

「カメラあるのか!あたしも欲しい…というか充電切れなきゃ取りまくるのに。」
「あ、だったら奏音さん電気使えるようになればいいんじゃない?」
「おぉ!でも練習嫌だなぁ、目覚めよ我が秘められし能力!」
「無理でしょ、練習頑張ってね、姉ちゃん。」
「けっ!…あ、これもしかしてあの子等の小さいころ?!やーなにこれ、かわいいー!」

そう言って奏音はもっとよく見ようとその額に視線を合わせた。二人もそれにつられ腰を落とす。
写真はアリーが撮っているのか彼が写っているのは他と比べると極端に少ない。
だいたいはエドとレイが映っており、いわゆる訓練風景だと言う事が分かった。

「てかわんこ泣きすぎじゃね?だいたいが戦ってるの泣いてるんだけど。」
「あー…でもまじ痛そうじゃん。顔内出血してるよ?ウチらより小さいんだし大体泣くでしょ。」
「まあそうかもしんないけど、でも反対にエドはキリッとしてるね。
 というよりこのころから周りと比べて筋肉質だねー、逆三角形だ。何歳ごろだろ?十五歳くらい?」
「まあアリーと同じくらいじゃないかなぁ。あ、これダイアナさん?若いなぁ…私怒られそうだけどね。」
「あぁほんと!すげえ、服ぴちぴち。胸無いけど。」
「姉ちゃんすごく失礼。自分がでかいからってそれ失礼、殺されるよ。」
「あたしだって好きででかくなった訳じゃないよ!遠くのもの取ろうとすると近くのもの倒すんだから!
 原稿にコーヒー零したときは死のうかと思ったぐらいだからね?!」
「それは奏音さんの不注意でしょー…。」

想良は立ち上がり背伸びをすると奥の方に伏せられている額が二つ、あるのを見つけた。
褒められる行為ではない、そう自覚しながらもそれを起こしてみる。
よく見えないので手に取ろうとしたが、それはできない様になっているらしく顔を近づけて見たのだった。

「……?」

一つ目の額には三人が写っていた。
アリーと、年は同じくらいと思われる男、何歳か年上と思われる女。皆、まだ小さく十に満たない年だろう。
もう一つは、どこかの戦場である。ただ、兵士達の鎧や武器などがただ転がっている。
戦場だと分かったのは地面に血の痕があちこちに残っていたためだった。
この写真に意味するものが分からず想良は首をかしげる。

「んあ?何これ、想良ちゃん。」
「なんか伏せてあったから見ようと思ったんだけど…。」
「うっふっふ、お主も悪よの〜。てかなにこれ?アリーちゃんと誰か達、んで…?」
「あ、戦場かなぁ。ウチ行った時もこういう所で戦ってたよ。何にも無い場所とか、山のふもととか。」
「そーなんだ、初陣とかかな。」
「あ、あの二人誰?男のほうはアル君?って思ったけど違うみたいだし。」
「分かんないや。でも勝手に見たのばれるとあれだから黙ってよう、ウチばれたらやばいと思うし。」
「そだねー、あたしだったら泣かせるけどね、ふふふ。」
メンテ

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