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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.81 )
   
日時: 2012/04/02 14:20
名前: あづま ID:JfOvolJk

「あらエドゥアール…なあに、なんか御用?」
「マティー…分かってるじゃないか?お前に報告がいかないなんて考えられない。」
「ふふ、残念。遊ぼうと思ったのになぁ。」
「客人の部屋を、手配して欲しい。今はアリーの部屋にいて貰ってるが…。」
「アリーの?客人に相応しくないわねえ、それともその程度の人たちなのかしら?
 女三人でしょう、あなたが全員手篭めにしたらいいんじゃあなあい?私、あなたの力を信用しているわ。」
「それは信用する事柄なのか?……複雑だな。」
「ふふふ、それだけあなたが女を連れて来過ぎって事よ。やっと上層の女達が食われなくなったと思ったのに。
 戻ってきちゃって…いいわ、エドゥアールの頼みだし特別よ?母上には何とか言っとくわぁ…明日まで待ってね。」
「はいはい、ご苦労様。」
「じゃあねぇ、親愛なる我がお兄様…ふふ。」

わざと大きく音を立て、マティーの部屋から出る。
ひとまず三人の部屋の問題は解消されたが、それ以前に引っかかる物があった。
彼女の態度がいつもと違う。
人をおちょくり、それによって相手が振り回されるのを楽しむのがマティーだがそれは見られない。
いい事でもあったのだろうか、と予想以上に早く終わったそれに安心し自分の部屋に戻る。



「あ…戻ってきたか?」
「あぁ…大丈夫か?レイ、相当悪そうだ。アリーのあれよりも悪そうだし…というより症状が違うからなぁ。」
「そうか……。」

エドが部屋に戻ってきた音に反応し、レイがかすれた声を出す。
それにやんわりと応対し、これからの事を考えた。
エドは後数日のうちに任務へと行き、万が一集落の反乱が起きてもそれに三人が巻き込まれないようにこちらへと来た。
戻ってこれるのは早くても一週間後。ダイアナ、アルもいないとなるとこちらにいてもらう方がありがたいが…。
レイも今の状態では自衛も難しい。アリーは今、仕事でいない。
それにここにも短期間しかいられないだろう。マティーの気が変われば即、帰らなければならない。
頭を使うのが得意ではないエドはベッドに腰掛けた。

「痛え…踏んでる!」
「文句言うなって、俺の寝床だろ?俺今日寝れないじゃないか、お前が居るんだし。」
「はー…つかよ、なんで俺の部屋無いんだろ。アリーも、居なかったのは同じだし、評価も……。
 なんか酷え兄貴だな、弟と比較してよ。」
「さあな…そこは分かんないな。マティーもあん時はまだ小さいから仕切ってないし。」
「ま、俺が必要って思われてねえんだな…はっきりした。」
「……。」
「そんな顔すんじゃないよ、俺は俺を見てそう思ったんだからな。エドには関係ないだろ?」
「だな。俺がお前を最後まで守ってやるよ、兄だからな。」
「どうも、頼りにしてるぜ?」

そう言ってレイは微笑む。
それに返事を返し、ふと、隣が静かなのが気になった。
奏美と想良だけならば静かなのは頷けるが奏音が居れば確実に煩くなる。
レイにも聞くがずっと静かであり、特に気に留めていなかったが確かに変だと言われた。
隣を除けば三人が集まりとある一点を見ていた。

「おーい。」
「ひいいいっ!」
「え、エドさん!」
「何見てるんだー?…なんだこれ、絵?あいつにこんな趣味あったっけ。」
「ビックリしたぁ…姉ちゃんの声で特に。」
「すまないな。…で、これなんだ?俺らの小さい頃のもあるってころはお前達が描いたんじゃないと思うが。」

エドの言葉に三人墓を見合わせる。
これはどう見たって写真。自分達が生まれる数世紀前からあるものだ。
想良が口を開く。

「これ、写真じゃないの?」
「しゃしん?なんだ、それ…あぁ、この娘のか。」
「ん…?あ、知らない子の。」

そう言ってエドは写真を取ろうとしたがそれはならず、隣にかがんだ。
懐かしそうにその写真を指で撫でる。

「アリーとチームを組んでいた子達だよ。こっちの女の子が絵に優れた子。
 そうだそうだ、色々描いてたなぁ。早く正確に描かなきゃならないからよく訓練の絵を描いてた、懐かしい。」
「そうなんだ。でもウチ絵描かないから分かんないけどこんなにきれいに描くのって難しくない?」
「それが、この子の能力。よく分からないけど記憶して、それを紙に映し出す能力だった。」
「へえ…会ってみたいなぁ。私より少し年上くらいかな?アリーが確か十六だっけ。」
「あぁ……。」

急にエドが重い声で黙ってしまった。
奏美がどうしたのかといえばただ首を振った。奏音と想良が視線を交わす。

「彼女は一生十三歳だ。もう死んでいる。」
「え……?」
「戦に行って、仲間割れして、怪我して死んだ。良くある事だよ、仲間割れ以外は。」
「なんで死んじゃったの?よっぽどの激戦区とか行かせたの?」
「そうだな…邪魔になったんだ。彼女の能力とアリーが。この男の子は一番だったけど、
 二人を始末するためにはやむを得ない犠牲になるはずだった。結果、女の子だけが殺された…というか、うーん…。」
「何?あたしらが知るとまずい事?」
「いや…まあ、弟の信用を落としたくないけどなぁ。アリーが殺したんだ。事前に情報探って、女の子だけ殺した。」
「……。」
「マティーのふりをしたんだ。今でこそマティーが髪を染めてるから違うけど元は金髪だからね、彼女。
 それで、情報を取って。アリーはそれが評価されて、ブラックリストから外れたって感じ。」

淡々と言うエドに想良は寒気すら感じた。
いつもと雰囲気は全く変わらない。だが、あの牢での瞳と同じだ。
彼は、女の子の死を悲しんでいない。もしかしたら死に対してこちらは淡白なのか…。
今横に居る姉妹は彼のそれに気づいているのだろうか、と思うがそれも無さそうだ。
ほっと、なぜか胸をなでおろした。

「へえ、やっぱ世界が違うと色々違うんだねぇ。つう事は、え?アリーちゃん最初に人殺したの十三?」
「いや?八つぐらいだったと思う。訓練に出たくない、あんたより強ければいいんでしょって先生一人殺した。
 あと彼女があいつより二歳だったかなー…とりあえず年上だったから。アリーはこの時十一歳。」
「げぇっ!なんかもう、切れたナイフ?」
「んで、この男の子に怒られてめちゃくちゃ泣かされたのな。それでやっぱり訓練行きたくないーの繰り返し。
 まああいつの評価が低かったのって訓練行ってないせいだと思うんだけどね。」
「もしかしてアリーってサボり癖あるの?面倒くさそうな事はし無さそうだなって思うけど、ウチ。」
「まあな…早く抜け出したいってわざと攻撃食らって大量出血で抜けたりしてるし。あいつなんなんだ?」
「ぎょわああ!か、考えただけで体が痛い!」

奏音が体を抑えごろごろと床を転がった。
すると先ほどまであった写真が音も立てず消えてしまった。
それに驚き、奏美が後ろに下がったところで奏音に躓き二人が団子のようになる。

「まあ、俺も仕事では人殺すしあいつだけが特別人殺しって訳じゃないから。」
「そうなの?わんこも殺してるの?」
「レイはどうだろ…一回殺したのは知ってるけどそれ以降はやってないかな、諜報だけ。」
「…もしかしてこっちの世界みんな人殺しなの?ウチなんかショックだわ。」
「そうしないと生きていけないからな。でも戦がなくなればもっと死ぬだろうし…仕方ないんだ。」

そう言ってエドは寝転がった。

「でさ、あの女の子は死んじゃったのは分かるけど…男の子の方は?」
「あぁ、彼?生きてるよ。会おうと思えば会えるけどね。」
「そうなんだぁ、会ってみたいな。」
「アリーに聞いておくよ…彼の面倒見てるのあいつだからね。…あ、普段は人雇ってるからな?」
「そうなんだ。その人に尽くしてるね、アリー。」
「ああ…トリクシーが妬きそうなくらいにな。あ、ジルって言うからな、あの男の子。
 怒られたれらユリアーン…こっちが本名。」
「了解了解〜あたしも会って良いかなぁ?」
「…変な事しなければ良いんじゃないかな。」

大丈夫だろうか、不安を抱きながらエドは目の端で奏音を見た。
獣の目をしたような気がして、一瞬だけ言わなければ良かったかもしれないと思った。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.82 )
   
日時: 2012/04/02 14:24
名前: あづま ID:JfOvolJk

「ありがとうね、お姉さん。」
「いいよ別に。でもなんでカメリアなの?私も行く良いけどさ?」
「…捕まったの、妹が。助けに行きたいんだ。」
「……。」

ゆらゆらと気分の悪いゆれ方をする乗り物にアリーは乗っていた。
金を持っていそうなそれを選び声をかけたのだがこの具合の悪さはいただけなかった。
何も食べずにリキルシアを発ってよかったと思いながら目の前の女性を見つめた。
彼女の後ろには生まれたばかりと思われる赤子がゆりかごの中で穏やかな寝息を立てている。
ふっと目が合い、女性がこちらに手を伸ばしてきた。
なんだろうと思いながらもできるだけ反応しないように、できるだけ戦闘を知らないように思わせるようにしようと思った。

「えいっ!」
「な、ちょ!」
「やっぱり男の子だ。…これが。」
「や、やめてって…。」
「ばれたからって駄目よ?ナイフかな、うん。でもここだと出しづらくない?胸の辺りにつけるのって。」
「……。」

なぜばれた?アリーは目の前の女性を見る。
それを女性は笑い飛ばした。

「カメリアに行く…そりゃ、多少の心得はあるわ。んっんー。」
「ちょっと、触んないで。なんなら脱ぐから、武器も全部出すから、ちょっとー…。」
「そうねえ…まあもう少し触らせてよ。武器、どういう風に隠してるのか知りたいなぁって。」
「心得あるんならいらな、脇には隠さない!何、お姉さんどこの人?!脇は無理、っ何なの!?」
「あはは、そうねぇ。まあそういう油断が危険を生むものなの。」
「やめて、やだ…。お姉さんなんか…やだ、…。」
「そう?私は気に入った。仲良くしましょう…そうね、アンリ。」
「……。」

一瞬、何がなんだか分からなくなる。
しかし抵抗しながらでも考えようと拒絶を再開するも力が入らなかった。

「駄目よ、だぁめ。私のことも案内して頂戴な。カメリアまで長いわ、ゆっくり話して遊びましょ?」
「え、なんで…手離して。やめ!」
「んー…これ位かな、武器。じゃあ答え合わせしたいから脱いで、あなたが脱ぐって言ったもんね?」
「……。」
「あはは、上出来。さっさと脱ぐ。」

完全にペースに巻き込まれた、とアリーは思った。
そして彼女が誰なのか、されるがままで考えようとした。

「痛いっ、何…?」
「あら、痛いの?ふうん、そう…。」

だが、結論に辿り着きそうになるその瞬間にもたらされる何らかの感覚に邪魔されていった。
そして次第に意識はそれをいかにかわすかに持っていかれ、だんだんと散漫していった。





「あれ、寝てた?!」

ガバリと身を起こせば周りには誰も居ない。
ついさっきまで写真を見ていなかったかと思ったがいつの間にか寝ていたらしい。
自分はいつ寝たんだと唖然としながら奏音は周りを見た。
エドの部屋は鍵がかかっており、レイならいるかもしれないと期待した奏音は舌打ちした。
兵士に連れられここまで来た身としては下手に動いては迷子になると思い部屋に戻る。
そしていつのまにか敷いたらしい布団に横になった。

「携帯なぁ…。」

すっかり電池の切れてしまったそれを取り出し真っ黒な画面を眺めた。
雷系が使えればとは思ったもののそもそもどうやってああいうのができているのか知らない。
初日にレイが作ったと言い渡されたそれを眺めた。

「電気よ起これー。」

だが、なにも起こらず静寂のみが満たしていた。
虚しさに包まれ、寝返りを打つ。
と、その時扉を打つ音が聞こえなんとなく返事をした。誰かが入ってくる。

「んー…お、アル君じゃないか!久しぶりいつぶり?」
「?」
「あー分かんない?まいっか、どしたの?」
「……」
「何?」

意思の疎通ができないと判断したのかアルが胸元から紙を取り出した。
そして何かを書き奏音に手渡した。

「ん…あ、日本語だ。アル君書けるの?」
「……」
「そーなんだ、知らなかったわ。…下でご飯?分かった行く〜。」

立ち上がり、アルと共に進む。
だが階段を通り過ぎてしまった彼に奏音は声をかけた。

「アル君階段通り過ぎてるよ?」
「……」
「え…あ、全部平仮名になってる…え、階段関係ないの?」
「……」
「え、あたしらあの階段ここまで上ってきたんすけど…えー?」

ここまで階段を上ってきたと聞いてアルは驚いたような顔をしたがそのまま歩みを進めていった。
そして廊下の突き当たりにぼんやりとした円がある。
そこに二人で入り、ヒュッ、という音と共に下へ降り始めた。

「これなにエレベーター的な?」
「?」
「あ、エレベータを知らないのか。えっとまあ地球にある似たようなもんだよ。」
「……」
「うん、あたしやっぱり書いて貰わないと分かんないわ!」
「……」
「あ、着くの。」

小さな音を立て、とある一角にそれは止まった。アルが降りたのを見、奏音も続く。
そしてすぐ行ったところにもう皆そろっており食べ始めていた。
ただレイはまだ本調子ではないのかこの場にはいない。想良曰く向こうで食べているそうだ。

「待っててくれてたって良いじゃん!」
「だって姉ちゃん寝てるし。残しておけば良いかなって思ったんだけどね。」
「そうそう、アル君がでも連れてくるみたいな事でね。奏音さん良かったね、アル君が気遣ってくれて。」
「お、おうとも…。」
「……」
「アル君も食べ始めてる?!ええ、なんか酷くない?!」
「ほら、奏音も座って。無くなってしまうぞ?」
「あ…はい。」

奏音が席に座り、自分の皿に物を取り分けていく。
そして皆がある程度食べ、ペースも落ちてきたところで口を開いた。

「実はな、俺はもうすぐ仕事に行く。それで何日か分からないがここに滞在してもらう事になった。」
「そうなんだ。別に向こうでも良かったんじゃないの?」
「ん…まあ、その諸事情だ。ほら、お前らの実力もこっちに見せなきゃならないからな。」
「そう!」

同意の声と共に扉が開く。
一同が振り返るとそこにはダイアナとマティーが立っていた。

「私もどういう風に成長したか興味あるからね。奏美と想良は一つこなしたって言うし。
 それに奏音は兵長だっけ?一本取ったって言うじゃない。意外だけどね。」
「意外て。まいいけどさ、うん。」
「エドゥアールの行ってた客人があんた達だったとはねえ…まあ構わないわぁ。
 とりあえずどれくらい使えるのか見せて頂戴?少しくらいは働いてもらうし二人には一件の報酬を払うわ…。」
「え、そんな!私は集落の人たちに協力ってだけで仕事じゃないんですよ!奏美だけです、貰えるのは。」
「ウチも足手纏いだったし…貰える様な働きしてないから…。」
「じゃ、手付金って事にしましょう。なんだかんだで働いてもらうわぁ。
 でも仕事を割り振るには実力を知らなければならないし…そうね、食事が終わったらすぐやりましょう。」
「待て!三人は今来たばっかりなんだ。別に明日でも構わないだろ?そりゃあ俺いなくなるけどお前らだけで判断できるはずだ。」
「黙って。とりあえず食べたらすぐ来てね…屋上よ。」

そして二人は出て行こうとした。
だが、想良が大きな声で呼び止め二人が振り返った。

「あの、トリクシーはどこですか?こっち来てから会ってないんです。」
「ベアトリクスの事?彼女なら今帰省中よ…向こうにも顔を出さないと同盟している意味が無いし。」
「え?なんか急じゃないですか?」
「仕方ないのよ、あれでもいわば人質みたいなものだから。娘をやるから攻撃してこないで…てね。
 まあ一番は子供産んで向こうに居てくれればいいんだけど…こればっかりはアンリにも責任はあるし責められないわぁ。」
「そ、そうなんですか…。」
「そう、納得していただけたかしら?とりあえず待っているわ…ふふ。」

そうして今度こそ二人は出て行った。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.83 )
   
日時: 2012/04/02 14:28
名前: あづま ID:JfOvolJk

「ねえ、逃げちゃ駄目かなぁ?」
「逃げてみるか?でもマティーは見つけるの早いし無理だと思うぞ。」
「まじかよ。ダイアナがマジ天使に見えるレベル?」
「救世主に見えるレベルだな。怖いぞ、マティーを怒らせると。」
「…姉ちゃんサボらなきゃ意外と強いんじゃない?」
「そうだね。男の人には精神的攻撃が素でできるしね。どうなんだろ?」
「想良ちゃんあたしを今すぐぼこって!戦闘不能にして!!」
「駄目だぞ、俺が傷治せるから。」
「オーマイガー!やっだあああ、胃が痛い…。」
「ははは…まあ、もしマティーに勝ったら俺からも補助具をあげるよ。レイからのはあいつが作ったからね。
 個人でやる分のにはどうしても限界があるからちゃんと職人が作ったのをな。」
「え?どれも同じって訳じゃないの?ていうか何個も持つもの?」

当たり前に浮かぶ疑問を奏音が口に出す。

「あ、そういえば。レイさんはブレスレットだけどエドさんは腕輪だよね。」
「あぁ。まあ好みっていうのが大きいが…ほら、俺の場合腕輪は目立つだろ?これしか付けてなかったら
 腕を切り落とされたら終わりだ。だから普通は何箇所かに付けていて、メインとサブって感じだ。」
「へー…。」
「じゃあ、運動。」

食後の運動だといわれ一同は階段を上っていた。
アルはレイの様子を見に行くと伝え抜けており、かわりに奏美と奏音を案内してくれた兵士が付き添っていた。
度々ダイアナの事をネタにしているエドと奏音を横目で見ているが口を出せないようだった。
かわりに奏美と想良に屋敷の説明をしながら屋上を目指していた。

「この階段を上れば屋上でございます。」
「そうなの?意外と短かったねえ。」
「想良?!疲れないの…ウチ結構疲れたんだけど。」
「体動かすの楽しいし。…奏音さんは大丈夫じゃ無さそうなんだけど。」
「…エドゥアール様、奏音様のことは…?」
「大丈夫だ、俺が引っ張っていくから。最初に二人を入れててくれ。」
「了解しました。ではお嬢様方…。」

兵士が扉を開け、風が吹き抜けた。
遥か下とはいえ草と土の香りをその風は運び、住む世界の違いをはっきりと実感させた。

「あら早かったじゃない。もう少しかかると思っていたわ。」
「どうも。」
「あぁ、あんたはそこらへんの隅っこに居て頂戴ね。何があるか分からないし一応。」
「了解いたしました。」
「そう。で、あの無礼な女は?」
「姉ちゃんなら…その、階段でばててます。」
「あらそ。じゃああんた達からやりますか。どっちでもいいわ、かかって来なさい。」
「え。」
「あ、あなたと?!」

意外な申し出に二人は驚いた。
誰かと戦うだろうとは予想していたが次期当主とも聞いているマティーとはだとは思わなかった。
そういえばダイアナの姿も無い。
戦うしかない、そう二人は視線を交わし、頷いた。

「ウチがやります。」
「あなたは…確か私が行った時はいなかった人かしら。…となるとあの女の妹ね。いいわ、そちらからどうぞ?」
「…はい。」
「ああ、想良だっけ?離れてなさい…そう、お利口さん。」

両者が向かい合い、空気が張り詰めた。





「ん…あ、アルか。どうしたんだい?」
「……」
「飯?悪いな、今は欲しく無えのさ。なんか飲むべきかもしれねえけど…うん。」
「……」
「悪いな、わざわざ。」

こくりと頷き、アルはそのまま部屋の隅で本を読み始めた。
できれば出て行ってくれればとレイは思ったが自分のせいで彼に迷惑をかけているのだとぐっと堪えた。
そもそもレイは何故アルが言葉を喋らなくなったのかを知らない。
小さい頃、敵国に捕虜となったときにアリーの仲介で出会った。そうだ。
だがその頃はまだ小さい声ではあったが喋っていた。覚えている。

「アル、なに読んでるんだい?」
「……」
「日本語?熱心だねえ、別にあいつ等はそのうち居なくなるだろうしこの世界の物食えば言葉は通じるじゃねえか…。」
「?」
「そういうもんらしいぜ、なんでも共通の言語じゃないと疎通が取れねえ。でも皆が他国の文化を学ぶのを拒否した。
 それでそういう風に作ったらしい。すげえなあ、創世期の皆々様方は。」
「……」
「あぁ、筆談…。よかったな、俺らの婆様が日本人でよ。」

筆談でコミュニケーションを取るという意思を見せたという事は本当に喋れないのだろうか。
だが、彼の話で自分達は脱出したといっていい。
コツコツとレイは自らの義眼を触り、片方の目で彼を見た。
脱出のショックで喋れなくなった…だが、この世界では殺人など誰もが経験してしまう事である。
何故だ…そもそも彼の出身はどこなのか…。目の前の人物を改めて知らな過ぎると思い、溜息をついた。

「あぁ、どうぞ。」

ノック音が聞こえ、扉のほうも見ず答える。誰だろうかと考えていたその時、冷気を感じた。そして、風。
だるく、動くたびにまだ痛みを感じる体をできるだけ早く動かそうとすれば立っているのは、子供。
アルがその子供の槍を掴み、防いでいるが間に合わなかったらしい。槍を血が伝う。
冷気はその子供から感じる。もしかしたら、いつかエドが言っていた侵入者だろうか。
自分はずっと部屋にいたのだろうから違うだろうと言った過去を少しだけ呪う。

「あれ…まだ……?」
「誰だい?ここに忍び込むっていい趣味だねえ?」
「……」
「あ…ここじゃ、……。」
「悪いけどこっち来な。お前は侵入者だ。」
「ごめんなさい……あぁ…また……。」

子供が槍を離した。アルもそれを受け離し、カラン。無機質な音が鳴った。
アルが子供の腕を掴み、逃げられないようにと抱き上げる。
子供は抱き上げられ、アルの目を見た。

「綺麗…。そう、あの…あの死なない目の人……会わせてみたい。」
「?」
「分からなくていい…誰も、知らない……。そう、うん…。」
「何訳の分からない事言ってるんだい?アル、そいつ連行しておくれ。」
「…あ、お兄さん…。」
「?!」

子供はアルの腕から流れるように抜け出し、レイの元へ歩いてくる。
抜け出すとは思っても居なかった二人は次の行動へ移ろうとするが体が凍ったように動かない。
子供はレイと目線を合わせ、抑揚のない声で言った。

「偽物……目が。」
「…そうだ。お前には関係ない…俺のヘマでこうなった。」
「違う…生きてる目が……偽者…。」
「はぁ?」

子供はレイの義眼を触る。
特に感覚も無く見えないが、目であるものを触られるのはあまり良い気分ではない。
手を離させようと手首をつかんだら、その手を包まれてしまった。

「楽しいね…それとも、哀しい?……お兄さんには、似合う。」
「……」
「アル、動け!捕らえろ、このガキ!」
「!」

レイの言葉に反応しアルが動く。
だが子供はするりと抜け出しレイの後ろに立った。
感情のこもらない声と瞳を尚、子供は二人に向けた。

「あなたは…大きいあなたは……無理、してる。」
「…?」
「分かってる…辛い。お気の毒……、でも、戻らない。」
「……」
「そうだよ…どんなに、願って、後悔して、謝って、嘆いて、泣いて!…戻らない……。」
「おい。お前は何を言っているんだい?全部知ってるような口ぶりだな。こいつを知っているんだったらお前は同胞か?」
「……」

アルは首を振った。彼もこのような子供は知らなかった。
子供はじっとアルを見ていた。

「諦めない…それでも。……戻らないのに、もう…。一途…本当に、会わせてみたいなぁ…。」
「……」
「……そして、お兄さん。もっと…自分を。」
「俺が何だ。」
「もっと…素直に。…気持ちは、……大事、だよ。」
「…お前に言われたかねえ。お前を知らねえけどそう思えるな。」
「ああ…そう。でも…もう、無理。……あなたには、そう。キッカケ……。」

子どもはレイから離れた。
相変わらず感情は見えず、ぼんやりとした雰囲気を漂わせていた。
ぐるりと部屋の中を見回し、部屋を照らしているランプを見た。

「ばいばい…。」
「は?」

緩く、手を振りその子は一瞬の後に消えた。
今まで見たことがない能力に彼等はただそれを見送るしか術がなかった。
レイは起こした体をゆっくりとベッドに寝かした。
あの子供は何かを知っているような口ぶりだった…。だが、いったい何を知っているのだというのだろう。
レイには目が偽者だと言い、アルには無理をしており気の毒だと言った。
やはりアルには何かがあるのだろうかと思う一方、自分に対する偽者とは何か。
それを探ろうとしたがレイには全く分からなかった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.84 )
   
日時: 2012/04/02 14:33
名前: あづま ID:JfOvolJk

「どうしたのかしら?いいわよ、いつでも。」
「……構えとかは。」
「いらないわぁ、だって、ねえ?」
「……。」
「ふふふ、怒らない怒らない。乱れてるわよ、ふふっ。」

奏美は依然、マティーと向き合っていた。
ダイアナの試験のように時間制限は無いものの、生み出されるのは焦りのみだった。
深呼吸をし、落ち着こうとするが目の前の人物を視界に入れるとまた動悸が早くなる。
いつまでたっても行動を起こさない奏美に嫌気がさしたのかマティーが言った。

「私がやっても構わないかしら?」
「…どうぞ。」
「ふふ、了解。行くわよ、避けてね?」
「え、うわっ!」

何かがおかしい…だが、感じたことのある違和感に体を動かせばそこにはつむじ風が発生していた。
そして違和感の正体は初めてアリーに会った時のあの風と同じものだと語っていた。
体が覚えていた事にぐっと自信を強めた奏美だったが次の瞬間、体が浮き上がったのを感じた。
ぐんぐんと高度を増し、髪が顔の周りで暴れる。
下のほうではマティーが笑みを浮かべて立っており、危ない、そう思った。
ギュン、と耳元で風がうなり落下を始めた。

「、…!」
「受け身を取ってねぇ、私も無意味な殺生は避けたいの。」
「!…!」

空気の抵抗で喋る事もできずただ衝撃に身構えた。
そして次の瞬間には体全体に痛み。ただすぐに動き始めた事で成功を意味していた。

「痛…。」
「そりゃそうよぉ、落ちたんだもの。でもお見事よ。」
「次は、ウチが…。」

速く動けるように。確実に攻撃が当たるように。
奏美は小さな武器を大量に創造する。
マティーは彼女の作れる多さには驚いた。そして楽しみが増えたと口の中で笑う。
向かってくる彼女を見て、ダイアナの報告を思い出した。
彼女は、フェイント――そしてダイアナもそれを活かす教育をしたらしい。

「そうねえ、あなたはこれを見たこと無いかしら。威力は劣るけど…。」
「何、?!」
「ふふふ…たっぷり味わって頂戴…奏美。」
「氷…え?」

ビキビキとマティーの目の前に十個ほどの氷が出来上がる。
だがその氷の中では赤や緑の何かがうごめいていた。
遠目にも確認できるそれに想良は呟いた。

「何、あれ…?」
「知らないのですか、お嬢様。」

隣にいた兵士が口を開く。

「あれはいわゆる能力の複合ですね。」
「能力の複合…?なんですか、それって。」
「私達は個々に得意とする一つの能力があります。エドゥアール様なら炎、マティルド様なら風。」
「うん。レイさんは氷、アリーはマティーさんと同じで風。そういう事だよね。」
「はい。しかし得意とする能力意外にも皆基本的に全てを使えます。ただし、威力が落ちる。
 威力のカバーに二つ以上の能力をあわせて使う事もできるのです…その分疲労が蓄積されますが。」
「そうなんだ…。」

兵士の言葉を受け、不安な気持ちで想良は奏美達を見た。
マティーはまだそれで攻撃する素振りを見せない。だが、奏美の警戒を楽しんでいるようだ。
事実、奏美も警戒し迂闊にマティーに近づけなかった。
せめてあれが何なのか知りたいと思ったが近づかなければ相手も攻撃する意思は無いようだ。
仕方が無い…奏美は相手に踏み込んだ。

「え…。」
「残念、ふふ。そう簡単に見せないわ…お馬鹿さん。」

何かが破ける音と共に奏美は膝をついた。
マティーが奏美の上着を破り、首元にナイフを当てている。
少し切れてしまったのか一筋血が流れた。

「負けた…。」
「そうね。そもそもあなたが勝てるわけないでしょう?」
「そうだね…。」

手当てをしなければ、そう思い想良が駆け寄ろうとした時扉が大きな音を立て開いた。
見れば奏音が立っており、横でエドは苦笑している。

「奏美!ちょっとあんたね、やって良い事と悪い事があるんだから!」
「あら…へえ。」
「な、何その反応…。とにかく次はあたしが行くかんね!想良ちゃん、トリ宜しく!」
「えっ…。」

奏音は妹を想良のほうへ連れて行き手当てを頼み、マティーと向き合った。





「…うぇうぇ。」
「何なの?さっきの威勢はどこに行っちゃったのよ。」
「多分燃え尽きちゃったわ。」
「分かんないわねえ…。」

威勢よく名乗りを上げた奏音だったが、それもマティーと向き合うまでで急速にしぼんでいってしまった。
何を仕掛けようにも彼女は武器を作れた事は無く、あの植物も今は没収され苔のものしか手元に無い。
試合以前の手詰まりに奏音は内心号泣していた。

「やべえよ。全裸で一騎打ちに飛び込んじまったよ。」
「あ、あなたねえ!もう少し羞恥心とかないの?!そういうのは口にするべき言葉じゃないわ!」
「だってマジだもん。…あれ、ひょっとしてあんた、ウブ?」
「…知らないわ。判断するのは周りよ。」
「へー…。」

しかし未だ赤みを残すマティーの顔に奏音は意地悪く笑った。
一度笑ってしまえばそれは止まらずむせ返り、腹を抱えてしまった。
マティーはそれを気を散らせるための物だと思ったが奏音はただ純粋に笑っていた。

「痛い、お腹痛…っぎゃー!!」
「少し頭を冷やしなさって!」
「おわ、飛んでる!すげーあたし空飛んでる!」
「……えー…。」

おびえるのかと思えば興奮する奏音にマティーも呆れた声を出した。
だが落下し始めてからは態度を変えた。
希望通りのその反応にマティーもやっと、落ち着きを取り戻した。

「ちょ、無い無い無い無い!落ちて、うぉえええ!」
「もう少し色気のある声を出せないのかしら…?」
「うるせー色気の無い身体しやがってぇ!思いっきり子供の身体だからねあんたー!
 年はオッケーでも見た目でロリコン扱いされるわ、あー相手がお気の毒、ああああ落ちてる!速くなった!」
「……。」

「怒ったな…奏音もなんでああ言うんだ。」
「姉ちゃんは余計なこと言うのがあれなんで…。」
「怪我の手当てってそれだけで足りますかね?」
「私にはなんとも…取って参りましょうか。」
「どうだろうなあ…まあいらないだろう。」
「そうですか…?」

首の手当てが終わり、兵士が破れた上着を縫っている横で彼等は話を続けた。
ぐんぐんと落ちる速さが増し、いつ激突してもおかしくない奏音を心配そうな目で見守る。
エドは激突する寸前に威力こそ弱いが風を使い速さを弱めようと思っていた。

「ふっふふ、行けえ我が娘よ!」
「何を…?!」

だが、奏音が胸元から何かを取り出しそれが一気に膨れ上がった。
深緑のそれに奏音は落ち、数秒後それは消え奏音は立ち上がった。服はあちこち緑色に染まっている。

「成る程…苔ね。そういえばあなたが兵長を縛った人だったっけ。」
「ん?ああそうだよ。あの人元気〜、よければ今夜の深夜貸してよ。あの人あたしが料理したい。」
「料理…?駄目よ!あの人有能なの、食べられたら困るわ!あなたカニバリズムなの?!」
「いや、食事的な料理じゃなくて…ね?」
「なぁっ、あなた、少しは恥らいなさい…!」
「無理。だってこっちきてからそういうのが無い。色々溜まる。仕事無いのにできないって死ぬ。」
「死んでなさい!大体、そんな…恥じらいも無く、そういう事を!」
「やだ生きる。だから貸してよ。いいじゃんよ。あっ、君が来る?二人でも良いよー。」
「え、巻き込まないでください!」

突如話題を振られた兵士が大声を上げた。
エドは奏音の態度に頭を抱えており、奏美は無関係を装おうとしていた。
奏美の焦点のあっていない目を想良は覗き込む。
いまいち事態が理解できていない想良は兵士に語りかけた。

「どういう事?」
「その…なんて言えば良いのか、…語り合ってみないかって事ですかね。」
「ようするに歓迎会?だったらほら、兵長さんと…ミラーさん?あの人も行けば良いんじゃない?」
「あの…。」
「多いほうが楽しいよ!多分お酒とか飲むんでしょ、私と奏美は未成年だから遠慮するけど、ねえ奏美?」
「え?…あぁ、そうだね。お酒飲めないもんね…。」
「ねーミラーって誰ー?!」
「なんかこの人と仲よさそうな人ー!」
「ま、巻き込まないでください!私もミラーさんも!」

兵士の悲痛な声が屋上に響いた。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.85 )
   
日時: 2012/04/04 18:17
名前: あづま ID:AfG52.e6

「なんかもう…いいわ。勝手になさい…次、想良。」
「え?あたし勝ち?負け?」
「どっちでも構わないわぁ。あんたが好きなほう選びなさい。」
「そーぉ?じゃ負けで良いや。勝ってたら具合悪くなりそう。」

負けで良いと言った奏音にマティーは驚いたような顔をした。
具合が悪くなるとはどういう事か問いただそうとしたが既に奏音は妹の元へ行っておりそれは叶わなかった。
こんな人間は初めてだ、と少ないながらも興味を抱きながら口を開いた。

「じゃ、最後は想良よ。どうぞ、かかって来なさい。」
「はい!」
「あら…お辞儀。まあ、あんたには注意するわ…洞察力と咄嗟の判断が武器だものねぇ。」
「評価、ありがとうございます。」

想良は一言言い、ぐっと構えた。
今、目の前の人物が言っている事から推測するとダイアナの訓練により身につけたことはほとんど報告がされている。
近距離からの攻撃…主に柔道の技だがそれも相手の懐に入れなければ意味を成さない。

(遠距離はあの風と氷…近距離は今の所、無い。)
「どうしたのかしら?あなたも焦らす作戦?でも時間制限無いのよ、大丈夫かしら?」
「どうですかね…。」
「……。」
(補助具も…無い?隠してるのかな。…勝負は、近距離。)

奏音と違い何かクッションになるようなものを作れない想良はあの風を受けてしまえば不利になる。
だからといって今までマティーの身体に触れた人はいない…?

「行きます!」
「あら、宣言しちゃって…。」

想良はマティーに向かって全速力で走った。
元々足は速くない。すぐに風が自身の身体を掬い、足が地を離れた。
下ではマティーが想良のことを小ばかにしたような顔で見上げていた。

「今は戦じゃないし教えてあげるわ。そんなにまっすぐに走っちゃ駄目。ダイアナがあんたは合格したって言ったけど
 まぐれだったのかしら?」
「……。」
「口も出ない?じゃあ、落ちて頂戴。」
「ぅあっ!」

糸が切れたように身体が落下し始めた。
だが、想良は意外と時間がかかるなとのんきな事を考えていた。柔道に比べて咄嗟の判断は必要としなかった。
来る、と思い息を詰め、ガンッと身体に衝撃を感じ、起き上がる。

「あら、受身上手いのね。奏美よりもいいわぁ…でもね。」
「何ですか?」
「ふふふ、内緒。」
「そうですか。」

身体に鈍い痛みを感じながらも想良は相手の様子を見る。
何か仕掛けてくる様子は見えず、試すような笑みを浮かべていた。
口を開き、もう一方では小刀と、何か投げられる武器を作り始めた。

「似てるね…アリーと。」
「そう?不本意だけど双子だから仕方ないわ。」
「一卵性?二卵性?」
「さあね。何を言いたいのか分からないけど…その手、ふふ。私には通用しないわぁ。」
「…でしょうね。」

ばれてしまってはと想良はマティーに向かい武器を投げた。
彼女はそれを簡単にはじく。
何度かそれを繰り返し、想良はじりじりとマティーに近づいていった。

「…駄目よぉ、それ、奏美の模倣ね。」
「ひっ!」
「想良…がっかりさせないで頂戴。期待してたのよ?ほとんど経験が無い状態でアルベールに勝ったって聞いたのに。
 何をやるかと思えば奏美の真似。同じことをやるのが通用すると思って?」

風を切る音が聞こえ、想良の目の前にマティーが立っていた。
襟を握られたのを感じ、想良は動いた。

「ぐはっ!」
「同じ手が通じると思いますか?」
「あら…けっこう良いわ、ね。」
「…上手く入ったと思ったんだけどなぁ。」

どこかに当たれば、と動かした拳はちょうどマティーの腹に入ったらしい。
よろよろと二、三歩後退したマティーは想良を見つめた。
何を考えているか良く分からないが、的確な判断…もしくは強運を持っているようだ。

「でも。」
「な、うあっ!」
「止めを刺すべきね…勝ちたかったのなら。」
「うぐ、がっは…。」

押し倒され、お返しといわんばかりに思い切り腹を踏まれる。
途端に催す吐き気を何とか想良は耐えた。

「まあ、一本入れた事は評価するわ……おやすみなさい。」
「うっ…は、はい……。」
「どうぞ、お嬢様。」

いつの間にか近くにやってきていた兵士の肩を借り想良は立ち上がった。
そしてマティーを残し屋上を後にする。
戸が閉められ、一人残ったマティーは思った。
あの三人、三者三様だが使い道はあるかもしれない…少し、遊んでみようか、と。





「お姉さんさ、どこの人?」
「知りたい?教えないけどさ。」
「…この赤ちゃん何?」
「娘よ?」
「そう。カメリアには何の御用。」
「ちょっとね。」

既に暗く、月明かりしかなくなった。
アリーと女性、それに赤子は今日はもう動くのは危険だと言って森の中で野宿している。
むしろこのような森の中でとどまるのが危険だとアリーは言ったが女性は聞き入れなかった。
それどころかアリーに荷物と娘を押し付け意気揚々としている。

「あのさ、もし敵かもしれないって言うんだったらそうそう入れないんだけど。」
「そりゃそうでしょ。でも私が本当の事言ったってどうせ疑うんだから同じ。」
「まあね。でもさ、荷物少なすぎるよね?近い国?」
「どうでしょ。」
「なんで僕を知ってた?」
「聞いたからね、あんたの近い人に。」
「しばいてやろ。」
「はははは、お手柔らかにね。あぁそうだ、名前くらいは言おう。ミシェルだよ。」

アリーの質問も適当にあしらい、明かされたのは名前のみ。
奔放に振舞うその様子から恐らくどこかのお嬢様だと推測を付けた。
もしかしたらあの軍師も外に出たら途端に子供のようになるのではと胸の中で笑い、軽く走る女性を目で追った。
敵の気配も無い。

「あ、ねえこれ水音?」
「ん…そうだね、川が近くにあるかな。」
「そっか、よし水浴びしよう!あんたもする?」
「いや…いいよ。」
「そう?」

川辺まで歩き、ぐずり出した腕の中のそれを軽く揺らした。
女性が水に入る音が聞こえ、もう顔を上げても大丈夫かと思った。
赤子は静かな寝息を立て、寝入った事を確認したアリーはそっと小さな籠に寝かせた。
寒くないようにと荷物で壁を作る。

「何?なんか用?」
「……。」

後ろにミシェルが立ったのを感じ声をかけるが返事はない。
もしや敵か?と毒針に手をかけ振り返った。

「服着て!」
「いやさ…。」

だがすぐにアリーは振り返った事に後悔した。
ミシェルは何も着ておらず、恥らう様子も見せずにアリーの目の前に立っている。
逆に自分がおかしいのかと一瞬思ったが濡れた手で肩をつかまれ意識を女性にやる。
ニコッと笑みを浮かべ、次の瞬間ミシェルはアリーの服を脱がせにかかった。

「何?!止めて武器の確認もうやったでしょ!見たでしょ!」
「そうだね。でもやっぱり身体洗わないと不潔。」
「じゃああなたが服着たら浴びるから!止めてこの子どうするの!誰も見てないと危ないから!」
「じゃこいつも一緒に入れよー。」
「今寝かせたのに…それにほら、水だよ?赤ちゃんの身体に危ないから!」
「気遣ってんだ、優しい。でもほら、自分の身体がおろそか。」
「だぁっ、やめて!本当に止めて!」
「ほらほら、一緒に洗おうねー。」
「いやだあああ!」

結局下着以外の服を剥かれ、アリーはミシェルに川に投げられた。
川底に思い切り体を打ちつけ、その衝撃で水を飲んでしまい慌てて顔を出す。
むせているアリーをミシェルは面白そうに眺めた。

「あんた意外とドジだね。パベーニュさん。」
「はあ…喉いたい…。でも何?ちょ、来ないでよ!」
「傷つくー…ていうかパベーニュはもう少し性知識つけた方いいんじゃない?
 長男だっけ?あれの噂はよく聞くけど。女子を戦場跡には連れ出すな、なんてあんたの兄貴の名前で言われてるよ。」
「知らないってば!」
「ふーん…まあ奥さん大事にしなよ。」
「お気遣いどうも…本当どこまで知ってるの…。」
「骨の髄までかね?」

そう言い残し泳ぎ始めたミシェルをできるだけ視界に入れない様に心がけながらアリーは手早く体を洗った。
そもそもそういう予定が無かったので一着しか持っていない服を再び着る。
未だ泳ぎ続けるミシェルを良く分からないままアリーは隣の吐息を感じていた。
メンテ

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