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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.86 )
   
日時: 2012/04/04 18:18
名前: あづま ID:AfG52.e6

「お、レイ良くなったか。アル、見てくれててありがとう。助かったよ。」
「……」
「うん、じゃあな。なんか疲れてるみたいだし休めよ。」

アルはエドが戻ってきたため部屋から出て行った。
何も喋らないレイに少々疑問を抱きつつ、エドは自分がどこで寝るべきか考えていた。
布団などは向こうにやってしまったのでソファでいいか、と心を納得させた。

「なあ、あれどこにあるか知ってるか?」
「……。」
「レイ?目を開けたまま寝てるのか?」
「…違えよ…乾くだろうが。」
「起きてたのか。なあ、あれ知らない?あのほら、あれ。」
「何言いてえんだよ。」
「あー…。」

仕事に必要なもので、どこにやったか分からない物の名前が出てこないエドは困っていた。
用途を説明してもレイは知らないであろう物なのでどうしたものかと頭を抱えた。

「なあ…。」
「ん?ああ、ここにいる間は俺の部屋使っていいからな。」
「どうも…あー…。」
「どうした?言い辛いことか?」

あの謎の侵入者の事を伝えようとするもなかなか口が思うように動かない。
捕獲できたであろう距離で、実際手も触った。
なのに捕まえ損ねた。それをエドに言うのは、兄弟とはいえはばかられた。
言えば何故捕まえなかったのかと言われ、責められるかもしれない。
だが、そんなレイの心情を知る由も無いエドは探すのを諦めソファに座った。

「いいや…買おう。そういえばさ、ジルってどこにいるんだっけ?」
「ジル?誰だい、それ。」
「ほら、アリーの…。」
「あぁ…あいつ。俺は知らねえよ。そもそもあいつ処分命令出てたんだろ?それをアリーが止めてるだけ。
 …アリーって意外と金持ってるな……上を止めてるし変な施設の維持費もあるし。」
「一番動いてるからな…そっか、知らないか。じゃあアリーが帰ってくるまで待つしかないか。」
「なんでまた。今まで話したりしなかったじゃねえか。」
「俺の気まぐれ。あーあ…いいや、現地調達で。面倒くさい…寝る。明かり消す?」
「ん。」

エドは片手を挙げ何かを打つような動作をした。
すると徐々に暗くなり、間もなくほとんど見えないくらいの暗さになった。





「姉ちゃん…。」
「寝るー…。」
「かーのんさーん?」
「ぅー……。」
「駄目じゃない?寝かしておこうか?」
「いや駄目でしょ。色々あるでしょ。姉ちゃんなんで起きないかなーもう。」

既に起き朝食も済ませた二人は未だおきる気配の無い奏音をどうするべきか悩んでいた。
事情を話しサンドイッチを作ってもらったとはいえいつまでも取っておけるものではない。
昨日、結局兵士達の宿舎に突撃したらしく明け方赤い顔をした二人組みに抱えられて戻ってきたのだった。
そのため朝食に間に合わないでもとは思ったもののもうすぐ昼時となった今、起こそうと格闘していた。
奏音の携帯は既に電源が切れているので目覚ましは使えず、どうやったら起きるのか思案に暮れていた。

「そーだ。奏美、ちょっと待ってて。」
「え…いいけど。」
「うん。あと髪留めの紐貸してね。」
「あ、だったら荷物入れの中に切ってない奴あるからそれ適当に切って使ってよ。」
「本当?ありがとー。」

想良が立ち上がり奏美の荷物入れから紐を取り出して部屋を出た。
向かった先はエドの部屋。ノックをし、目当ての人物がいるのを確認した。
案の定中からはレイの声が聞こえ、いてよかったと思いながら部屋に入った。

「想良か…どうした?エドならもう行っちまったよ。」
「うん、朝ごはんの時に聞いた。もう体大丈夫なんだね。あのさ、奏音さんが起きないんだよ。」
「寝かせておけばいいだろ?どうせ働かねえんだ。」
「ううん、なんか具合悪いのか分かんないけどね、ずっと唸ってるんだ。」
「な、そ、それ…!」

動揺した。想良は思った。
レイ自身は否定しているものの彼は少なからず奏音に対し好意を持っている。
いつからレイが奏音に好意を持っていたのか想良には分からないが、確か氷で攻撃したときにも心配していた。
やはり来て良かった、と想良は心の中で思った。

「うん。でも私達はこっちの世界の病気とか知らないじゃん。だからレイさんに見て貰おうかなって。」
「ああ、そういうことなら。」

そう言って立ち上がろうとするレイを想良は一旦止めた。
彼女はレイが座っているベッドに乗り、彼の後ろに立ち髪を結ぶ。

「なあ、俺髪くらいは自分で結べるんだけど。」
「うん。でも私がやりたいって思ったから。ダメ?」
「いいけど…。結び方変じゃないかい?なんでそんなに紐長いのさ。」
「地球ではこういう結び方が流行ってたんだー。でも私柔道だからあまり伸ばせないんだよ。
 いいなあ髪の毛伸ばせて…ゴムとかいっぱい選べるんだろうなー……。」

レイの髪を結び終えた想良はベッドから降り、扉を開けた。
彼女の後ろから来たレイは、普段結ばない髪の毛を変な風にされなんだか違和感を感じていた。
解こうにも善意でやってくれたというそれがレイの意思を邪魔していた。

「ただいまー。どう、奏音さん起きた?」
「全く。ウチ姉ちゃんと一緒にくら…?!」
「なんだよ。俺がどうかしたか?」
「…え?レイ、…ううん、なんでもないや。」
「……?おい奏音、具合悪いのか?」

レイの具合悪いという言葉に口を開きかけた奏美を想良は無理矢理に引っ張った。
その不自然な行動も今は神経を奏音に向けているレイは気づいていなかった。
少し離れたところで小声で二人は会話する。

「何、姉ちゃん具合悪いって言ったの?」
「まあね。」
「言っとくけど姉ちゃん酒強いよ?あの連れて来られたのも酔ったっていうよりは睡魔に負けただけだろうし。
 二日酔いもあの人全然無いからね?」
「知らなければどうってこと無いよ。」
「えー?」
「はい、おしまい。」

一方的に想良は会話を打ち切りレイの方にいった。
奏美はなんだか意味が分からず、ただカメリアに来てから想良がなんだか積極的になったとしか思わなかった。
しかし姉を起こすのになんか良い案があるのかと信じ見守る事を決めた。

「なあ、これただ単に寝てるだけじゃねえのかい?」
「そうかな、私がレイさんの所に行くときは結構苦しそうだったんだよ。」
「そうか?でも俺が知ってる限りこんな病気はねえな。専門じゃねえから分かんねえけどよ。」
「そっか。だったらあれだね、奏音さんレイさんが来たから落ち着いたんだねえ。」
「は?」
「ほら、心を許した人と一緒にいると落ち着くっていうじゃん。奏音さん結構レイさんのこと気に入ってるみたいだし。」
「ば、馬鹿…。」
「レイさんも結構奏音さんの事気に入ってるよね。一緒にいるとなんか楽しそうっていうか嬉しそうだし。」
「……。」

二人と寝ている姉の様子を見ていた奏美はなんとなく違和感を感じていた。
確かに、姉といるときのレイはなんとなく生き生きしているような気がした。
でもそれは奏音のセクハラに彼が精一杯対応しているようなだけだと思っていた。
だが、今のレイの様子を見ていてそれが揺らぐ。
もしかしたらレイは奏音の事がすきなのか?ふと、それが浮かんだ。
そして自分達姉妹とレイ、アリーの関係が泥沼に陥っている気がして密かにため息をついた。
何も知らない、もしくは関わっていないエドと想良がなんだかまぶしく見えた。

「奏音さーん?」
「…ー、ぅ、ん…。」
「完璧に熟睡じゃねえか。…良かった、病気とかじゃなくてよ。」
「うん。そうだよ。奏音さん、少しで良いから目開けてー、目の前の人見てー。」
「…な、に…?」
「そうだよってなんだよ!」
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.87 )
   
日時: 2012/04/04 18:19
名前: あづま ID:AfG52.e6

にこりと笑った想良がレイを見る。だがレイはその笑みの意味が分からず首をかしげた。
想良が息を吸い、声を低くして叫ぶ。

「起きて下さい!締め切り今日までですよ、ちゃんと終わったんでしょうね、先生?!」
「っ、ぎゃあああ!キシ?!キシが?!」
「終わったから寝てたんでしょう、さぁ、原稿ください!全くメールで送ってくれれば良いのに…。」
「ひいいいいいいっ!」

ガバリと飛び起き本能的に人のいないほうへとワタワタして行く奏音を想良は目で追った。
その反応で今までのそれが全て嘘だったと思ったレイが想良に怒鳴る。

「想良、お前、謀っただろ?!」
「えへへ、私からのプレゼントー!」
「はぁ?別に俺を呼ばなくってもいいじゃねえか!お前の良く分かんねえ低い声で飛び起きたじゃねえかよ!」
「ぷ、プレ…?そっか、ここにキシいねえ…わ……。」

意識が完全に覚醒した奏音が言い合っている――正確に言えばレイが想良に突っかかっている―――二人を見た。
しかし目の前の光景にしばらくついて行けなかったのか黙り込む。
いつもならグズグズと起こした事に文句を言う奏音が何も言わないのを不思議に思ったレイがそちらを見た。
数秒後、脳の処理が追いついたのかぱぁっと顔を輝かせた奏音がレイに飛び掛る。

「わあありがとう想良ちゃん!プレゼントだ、確かにプレゼントー!」
「ぐぁっ、んだよ!プレゼントって何だよ、俺は物じゃねえっ、て、うがっ!」
「いやいやご冗談を〜。真っ赤なおリボン付けちゃってー。何、あたしに貰われたかった?」
「は、っリボ、っおい想良ぁっ!」
「だからプレゼントー。」

そう言って想良は二人から離れ奏美の元へ行く。
奏美は想良の担当のまねにも驚いたが、なにより目の前の光景にも驚いていた。
本気で抵抗すれば逃げられそうな気もするレイがそれをしない。
むしろなんとなくそれを受けているような…良く分からない光景だった。

「奏音さん起きたよ。」
「うん。…想良ってあんなに低い声でたんだ…。」
「たまたまだよー。」
「そっか…そう。…姉ちゃん、レイの腹に肘当たってる。」
「ん?おっとごめん。ねえねえ、本当嫁においでよ。養うよ、あたし。」
「うるせ、そんなのごめ、んっ…。」
「幸せそうだねー…二人とも生き生きしてるよ。」
「え。」

想良は二人とも生き生きしているといっていたが奏美には姉しかそれに当てはまらない気がしていた。
レイは奏音に乗られ呼吸自体が苦しそうである。
奏美は想良に腕を引っ張られ、彼女のほうを見た。

「私達は下行こうよ。探検したいし。」
「え、でも…。」
「大丈夫、捕まんないようにエドさん直筆の書類があります。これを見せれば兵士さんなら案内してくれるそうです。」
「うん…じゃああの人に頼む?ウチら案内してくれた人。」
「見つけたらね。そういえば名前なんていうんだろ。奏音さん知ってる?」
「ん?あの奏美の服縫ってくれた人?」
「そう。」
「ミゲルって言われてたよー。」
「ありがと。じゃあねー。」
「待て!んだよ、プレゼントって!俺だけ災難じゃねえか、ぁっ!」

扉を開け、部屋から出かかった想良が振り返る。
後ろにいた奏美は想良の雰囲気になんとなく驚いた。試合のときの、それのような…?
ふっと笑った想良は一言、レイにかける。

「奏音さんと二人きり。嬉しいでしょう?」
「は、いや…。」
「なにそれ、あたしと二人きりが嬉しいて。」
「じゃあね、探検してくる。行こう、奏美…ね?」
「え…う、うん。」

想良の雰囲気に逆らってはいけない、それを感じながら奏美は従った。
残った二人には気まずい雰囲気が流れる。
レイの上に乗っていた奏音はどけ、逃げられないように手を握り言った。

「何?あたしと二人きりが嬉しいって。」
「……。」
「今までの復讐?…精一杯抵抗させてもらうかんね。」
「そうじゃねえ…。」
「じゃあなんなのさー。わんこ最近なんか変じゃね?あ、リボン解くね。貰ったプレゼントは開けないと。」

奏音はレイの髪の毛を結んでいた紐を解く。

「お前さ…。」
「なに?」
「元の世界の…地球、で…。」
「うん。」
「……。」
「わんここそ病気?また口移ししてあげよっかー?」
「……。」
「ちょ、反応してよ。」

いつもなら怒るであろう言葉も無視され、奏音は戸惑う。
地球でも友人や担当には適当に流される事はあっても無言で済まされる事はほとんど無かった。
むしろなんらかの攻撃が来ていた様な記憶がある。
ぼんやりとしか思い出せず離れると一気に忘れていくな、と片隅で思った。

「華凛っていうのは…?」
「あれ、前も聞かれたような…。いや、婿の事は言ってないか。」
「婿…婿って…。」
「女だからね?婿こと華凛はあたしの同級生で婿。ホームステイのショタと暮らしてるイケメンお姉さま。
 胸の大きさ気にしてるけどそんなに小さくないと思うんだよね…手にぴったり位だし…大きすぎるより…うん。」
「べ、別に大きくても構わねえんじゃねえか?」
「食いついたな、わんこは巨乳派か。」
「そ、そういうんじゃ…ただ俺は、その、お前が自分の事言ってんのかと、大き過ぎるって。」
「なかなかにセクハラじゃね?あたしじゃなかったら訴えられてるよ。
 でもあたしのは贅肉だろ痩せたらしぼむだろうからね。コスプレ自主制作だから痩せる気ないけど。」
「……。」
「努力すれば痩せるんだからね!してないだけだから、痩せる気無いだけだから勘違いしないでよねっ!」

だが、反応が鈍いレイに奏音はいよいよ何が言いたいのか分からなくなった。
漫画ではこういうとき何と言うか、主人公はどういうことを考えていたか必死に思い出そうとする。
だが思い当たるそれがなかなか無い。
趣味のものばかり読んでいた自分を呪う。そういえばあれらは完成系だった。葛藤が無い。

「ショタは小さい…サクソルっていう多分小学校の三年生くらいの男の子。キシはあたしの担当の悪魔、既婚者。
 レオンは編集長の知り合いで臨時の担当…多分未婚。沼川君…は、婿の同僚で婿の事が好きっぽい?」
「……レオン。」
「うん。臨時君ね。でもさ、前話したと思うけどあれ以上は知らないんだよ。あ、外国よく行ってたのかな?
 色んな国の言葉喋れたと思う。…わんこ何なの?会った事無いレオン敵視しすぎじゃ……。」
「いいだろうが!俺は標的騙して情報貰うんだ、疑うのが当然だろうが!」
「何怒ってんの…。」
「うるせえ!元はといえばお前が…お前が!」
「あたしが?」
「お前が……。」

だが奏音の顔を見、レイは言葉が続かなくなる。
自分がなにを言いたいのか、なんのためにこんな感情を持っているのかが全く分かっていなかった。
混乱し、次の行動をどう取るべきか分からないまま時間だけが過ぎていく。
奏音はレイが何をしたいのか分からず、二度寝したくなっていた。
レイの手をとる。

「なんだよっ!」
「わんこはさぁ。」
「離せっ!」

手を引かれ、繋がりが切れる。
だが奏音は気にする様子も無く、再びレイの手を取った。

「エドも言ってた気がするけど身を固めれば良いんじゃないかな。なんか不安定だよ。」
「俺は……。」
「不安な時とか、どうすれば良いか分からなくなった時とか。支えてくれる人がいればそれだけで結構気が楽だよ。」
「……。」
「味方がいれば…自分を信じてくれる人が一人いるだけで違うからね。周りが否定してもその一人に救われる。」

奏音はレイの手を離した。小指には赤い紐が結ばれている。
それの意味が分からないレイはじっと見つめた。

「運命の赤い糸。結ばれる人同士は小指で繋がってるんだってさ。」
「赤い…。」
「伝説みたいなもんだけどね。本当にあるわけじゃないけどみんなこういうのどっかで聞いた事あるんだ。」
「へえ……。」
「見つけなよ、その先に結んである人。あたしもう一回寝るわ、眠い。」

そう言って奏音は布団に包まり丸くなった。間もなく、規則的な息遣いが聞こえてきた。
レイはぼんやりと赤い紐の結んでないほうを見た。
それから奏音を見て――布団で姿が見えないのが残念に思えた―――もう一度紐の先を見た。
自分は持っていても仕方が無いので結び目から切り、布団からはみ出ている奏音の足にそれを結び部屋から出て行った。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.88 )
   
日時: 2012/04/04 18:21
名前: あづま ID:AfG52.e6

「想良さ。」
「何?」
「姉ちゃんとレイをどうしたいの?なんかくっつけたいように見えたけどさ。」
「そうだよ。奏音さんはどう思ってるかわかんないけどレイさんは奏音さんのこと好きだからね。」
「そういうの良くないよ。」
「え?」

奏美は立ち止まった。数歩先で想良も立ち止まり、互いに見つめ合う。
誰もおらず、音もしない空間。

「ウチは戻るんだからね。ここの世界の人じゃない。想良、分かってる?
 好きになっても…好きになってもさ、どうせ離れ離れなんだよ。なら、片思いのままでも良いじゃん。」
「うん…でもさ、伝えないまま離れ離れになるよりは良いんじゃない?」
「そんなの理想論でしょ!」
「奏美…?」
「怒鳴ってごめん…でもさ、ウチだったら絶対に伝えない。別れ別れになるのに、片思いなのに…絶対、言えない。」
「…片思い、ね。」

想良が奏美のほうに歩く。
なぜか…想良に対し恐怖心を持った奏美は彼女が近づいてきた分後ずさった。
だが、壁際まで追い詰められ、逃げ場をなくす。
頭一つ分ほど小さい目の前の人物が、今の奏美には逃げられないものに見えた。

「何で片思いなの?奏音さんがレイの事好きじゃないってなんで分かるの?」
「それは…。」
「奏美こそ理想論じゃないかな。お姉さんを取られるのが悔しいのか奏美が好きな人いるのかわかんないけど…。
 多分後者だね。あ、探ろうとは思わないよ。」
「……。」
「探検、しよ。色々知りたいからね。」

想良が歩き出す。
手形は想良が持っているので離れたらまた捕らえられるかもしれない。
後を追いながらも、想良に対し拭いきれない恐怖を持ったのを自覚した。





「助かるな、荷物持ってもらって。もう見えてきたなぁ、カメリア。」
「せめて娘さんは抱こうって思わないの?」
「思わない。だって手が疲れる。」
「僕がこの子をさらうかもよ?お姉さん結構良いところの人だよね。身代金、要求するよ。」
「無理だよアンリ。私はあんたの身元知ってるんだから。それにあんたは仕事以外ではそういうのできる子じゃないからね。」
「は?なにそれ…?」
「戦闘狂なのも知ってるけど。あぁ、明かしちゃうか。あんたが取り次いだ同盟国の娘。」
「え?」

だが、覚えの無いそれにアリーは黙る。
こんなに印象に残るような人を忘れるだろうか。
記憶をできるところまで遡るが当たる人は見つからない。

「まあ、覚えてないだろうけど。…私の弟もいるはずだけど、カメリアに。」
「え?」
「知らないかな?」
「うーん…思い浮かばない。」
「そう?そいつがあんたの事教えてくれたんだけどね。」
「処分してや」
「ダメダメ、私がさせない。むしろできないよ、カメリアじゃ。」
「…お姉さん、大戦の人だね。」
「当たり。」

あっさりと肯定した女性を見る。
隠すつもりが無いのか、カメリアごときに隠すことではないと思っているのか。
大戦の国からの人物…それを順繰りに思い出す。

「あぁ、ミゲルか。」
「そう。やっぱ知ってた。ミシェルとミゲル。語源は同じ。」
「ふーん。そっか…ミゲル。なるほど…確かに処分できない。だから情報流してるのか。」
「私だけにだからお気にせず。」
「本当だかねぇ?」
「疑うだけ疑いな。でも疲れると思うよ、私。」
「そう。確かに僕は金貰って命令どおりに動く種だし…疑うのは嫌かもね。」

歩みを進め、カメリアの領域に入る。
番兵に呼び止められたがミシェルが国を言うとすぐに通された。それで本当に大戦の国の人物だと思い知らされる。

「おい、案内しろよ。」
「え?なん…。」
「ミゲルんとこ。使命あるとはいえ弟に会いたいって思っても良いでしょ。」
「あ…うん。お姉さんがね、望むなら。」

アリーは兵舎へと案内しようとした。
だが、腕の中の女の子が泣き始め中断する。

「…あの。」
「あやしてあげて。私子どもって良く分からない。」
「その態度でよく母親になれたね?!…オムツ濡れてない、……。」
「あぁ、腹減ったってことか。よろしく。」
「出ないよ!」
「頑張れ。大丈夫よ、うん。あんたならできる。私信じてるよ。」

ミシェルは手を振り歩き始めた。
あやすにしても荷物があるのでできる事が限られている。
仕方が無いので早めに荷物を降ろし、泣きやむように仕向けようと後を追った。
ふらふらと興味に引かれ道からそれるミシェルを兵舎に誘導する。

「ここ…。」
「おー。大きいね、うん。」
「ミゲルは…A棟の…八号。行く…?」
「うん。案内して。」
「了解しました。……泣き止んでよ。」





「申し訳ありません…その、兵士が大体倒れてしまって。」
「ああぁぁあぁぁ姉が、姉が申し訳ありません!」
「いえ…止められなかったのは私共ですし…。」
「それでも!こんな、影響出るまで色々と!ごめんなさい、姉が!」
「奏美、ここの人って土下座分かるの?」

奏美と想良は兵舎まで行き、ミゲルに案内を頼もうとやってきた。
しかし昨晩奏音が酒を飲み比べなどしたらしく二日酔いなどの体調不良に苛まれる兵士が多数。
本来休暇日だった兵士を駆り出し警備に当たっているという。
ミゲルは本日来客がありらしくシフトからは外れているらしい。

「まあ、次から気をつけていただければ構いませんので。」
「すいません…迷惑しかかけていなくてすいません……。」
「お気になさらず。奏音様のおかげで普段言葉を交わさないような人とも交流をもてましたから。
 それに意外な一面を見れたり。楽しかったですよ。」
「へえ。やっぱりお酒ってすごいね。酔わせて襲撃するなんてのもあるし。飲んでも飲まれるな、って言うもんね。」
「想良、なんかやっぱりずれてる様な…いつもそうだけど。」
「…来客が来るまでの間、間取りくらいならば説明いたしましょうか。」
「あ、本当?お願いします。」

ミゲルは部屋の隅の鍵つきの棚から一枚の紙を出す。
それを指の端で叩くと茶色い線が現れ、間取りが完成していく。
奏美と想良は地球では見たことが無い技術に感心した。
だが、こちらの世界では当たり前のそれに対する反応にミゲルは顔をあげ二人を見た。

「珍しいでしょうか。」
「うん。私達は見たこと無いかな。」
「…お嬢様方は来訪者で?地球、ですか?」
「そうです。…でもエド達からたまに地球から人が来るって聞いたんだけど。あの人達のおばあさんもウチらと同じだって。」
「慶長とか言ってたよね。」
「ケイチョウ?私には良く分かりませんが…ならばお二人は可能性を秘めていますね。」
「可能性?ウチら、結構足手纏いになってる気がするんだけど…。」
「ねえ…同じ位の人が当たり前にできてることができないし。」

ミゲルは首を振る。

「いえいえ…ここまでの文明を築いたのも元は地球から来た人々です。
 そしてパベーニュの方々を見て頂ければ分かりましょうが地球から来た人物はその代で何らかの功績を残します。
 私が見たところあなたのお姉さんは才能がありますよ。」
「え?姉ちゃんが?あの人全然働かないし駄目なんだけど。」
「しかし力は持っていますね。彼女は創造性に優れています。それにあの短期間で苔…でしたっけ?
 あれを支配下に置くというのは難しいのですよ。」
「そういえば…。」

想良が口を開いた。
奏美とミゲルがそちらを向く。
想良は何かを思い出すように眉間にしわを作り、言った。

「補助具貰って…練習してる時。私達は形が保てなかったり切れないナイフしか作れなかったのに奏音さんは鎌を作った。」
「ああ…そういえばあったね。中二病みたいなの作りたいって言ってたっけ。」
「うん。自爆したけどちゃんと切れた。それに奏美がエドさんを呼びに行く間に消えちゃったけどしばらくは残ってたよ。
 そう考えるとやっぱり奏音さん才能あるのかな。」
「証拠が出たじゃありませんか。彼女は磨けば光り輝きますよ。」
「姉ちゃんが輝いたらなんか世界中といわず全宇宙の男の人が危ない気がする…。」
「それにさ、作り出すのっていわば想像力じゃん。奏音さん漫画家…と小説家もだっけ?
 とりあえず想像力はあるよね。伊達に大ヒットしてないよ。」
「まともな想像力なら良いんだけどね。」

奏美はため息をついた。想良は笑う。
ミゲルも微笑を浮かべ、二人に塔の内部を説明していった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.89 )
   
日時: 2012/04/09 15:48
名前: あづま ID:7H.bxSCk

「だいたいお分かり頂けたでしょうか。」
「すっごく分かりやすかった。ありがとうございます。」
「お客さん来る前に退散したほう良いかな?そういえばミゲルさん今日オフだもんね。
 ゆっくり羽休みしたかったと思うのにごめんなさい。私達、もう行きます。」
「いえ、当然の役目でございます。御用があればまた来て下さい。」

奏美と想良が立ち上がり、部屋から出ようとした。
ミゲルも見送るために紙をしまってから、立ち上がる。
想良がドアを開けようと、ノブに手をかけようとしたときに勝手に周った。

「え?」
「やっ、久しぶ…?」

扉が開き、女性と赤子の泣き声が聞こえた。
女性は想良と奏美を交互に見つめ、それから奥のミゲルを見た。
奏美は突然現れた女性にポカンとし、想良は奥の人物を見る。

「あ、アリー。浮気?隠し子?」
「違うよ。その前になんでお前らここにいるの。」
「友達?」
「違う。なんかいつの間にか来てる厄介者かな。」
「やっか…!」
「す、座ってください…。アンリ様、お荷物お預かりいたします。…姉さんのじゃないか。」





五人が部屋にいると流石に狭く感じた。
ミシェルの娘は泣きつかれたのか眠ってしまった。

「ねえ、これ虐待じゃないの?僕この子おなか減ってるんじゃって言ったような…。」
「いやぁー寝ちゃったら逆に起こすの可哀想でしょ。」
「そういえばこの子の名前は何?名前で呼ぶのが気楽で良いんだけど。」
「あぁ、ないよ。」
「え?」
「無いって。わざわざ名前付けないから。」
「ちょっと!この子どんだけぞんざいに扱われてるの!なんでお姉さんは母親になれてるの!」

アリーがミシェルに突っかかる。
ミゲルは姉のその行動に頭を抱え、奏美と想良は顔を見合わせた。
今、ベッドで寝息を立てている小さな命は生まれてから少なくとも数ヶ月たっている。
その間名前が無かったと言われ、常識ではありえなかったことに驚愕した。

「何故、名前が無いのですか?」
「だって私等名前で呼ばれる事ないじゃん。統治者ってさぁ、当主様とか国名とか。
 名前で呼ばれる事なんてほとんど無いじゃん。だからあるだけ虚しいよ。」
「え?でもさ、近い人とかは呼んでくれるんじゃないの?私の勝手なイメージだけど。」
「分かってないね。みんな国名様だよ。それか役職とかね。名前なんて上のほうは持ったって無意味。」

そう言ってミシェルは寝転ぶ。
二人は名前の価値をほとんど見出さない彼女に圧倒された。
しばらく無言が続いたが、アリーが立ち上がった。

「僕行くよ。報告したいから。お姉さんの事は言おうか?部屋も準備…できる、と思う。」
「ん?そうだね、頼もうか。あ、ミゲルも一緒とかできる?兄妹水入らずで話したいじゃん。」
「…ミゲル、お姉さんに色々流してたそうじゃないか。」
「あ、それは…!すいません、処分なら…。」
「いいよ、内緒にしとくから。不利になったら困るしね。じゃあ一応お姉さんの事も言っておく。」
「よろしくなー。」
「…あれ。お姉さんなんか使命あるって言ってたよね。それは?」
「ん?ああ適当に済ますから。」
「本当適当だね!」

アリーはそう言って出て行った。

「ミシェルさん?…あの、使命は放棄するべきじゃないかと…。」
「呼び捨てで良いよ、敬語も面倒だし。まあ私の国では敬語使ってもらうけど。
 あと大丈夫よ、カメリアは私んとこ口出しできるくらいの国じゃないから。ちょっと位ね。」
「あ、どうも。…なんだろう、姉ちゃんと気が合いそうな。」
「姉さん、この人達にも用事がありますから。お嬢様方、足止めしてしまって申し訳ありません。」
「ん?いて貰って良いじゃん。なんか不都合あんの?」

だが、ミゲルはそれには答えず顔を少し赤くした。
息を吐き、扉を開ける。

「申し訳ありませんでした、お嬢様方。私の姉が足止めしてしまい…変わらないお付き合いをお願いいたします。」
「あ…はい。」
「気にしてないからね。あと、ミゲルさん敬語じゃなくて良いよ。なんか偉い国の人みたいだし。またね。」

半ば追い出されるように奏美と想良は兵舎を出た。
ミゲルに教わり、塔の構造はだいたい覚えたので迷わずに自分の部屋に戻る事ができた。
だが、ほとんど見張りがいないのがなんとなく気になり、今度機会があれば質問しようと思った。

「姉ちゃん、また寝てるの?ちょっと!」
「奏音さん…私達あんまり外出てないよ。三十分くらいだよね?」
「うん、一時間はないね。そういえばレイどうしたんだろうね、あ。」
「ぅ…あ、お帰りー。」
「姉ちゃんおきた?なんで一時間くらい起きてらんないの。」
「眠かったからねー。」

人の気配を感じたのか奏音がもそもそと起き上がる。
想良が取っておいたサンドイッチを奏音に渡し、奏音はそれを頬張った。
奏美は姉が蹴散らかした布団を整頓する。

「でさ、レイさんとどうだった?」
「んー?わんこ?なんか不安定ぽいなって。」
「想良…。」
「いいじゃん。で、なにかやったの?」
「何かって…何だろ。あぁ、早く結婚すれば見たいなこと言った。支えてくれる人がいれば結構安心だよって。」
「えー。」
「何、あたし選択ミスった…?想良ちゃん、え、何その反応。」

明らかに失望した想良の反応に奏音もなんとなく不安になる。
奏美はやはり姉だ、と妙な納得をしていたと同時にレイが哀れに思えた。
自覚が無い…そう思うと影が浮かび首を振る。
それを想良が見ているのに気づき顔をしかめた。

「だから、想良ちゃん赤いリボンわんこに付けてたじゃん?で、ちょうど赤だからわんこの小指に結んで
 この先にむすばってる人見つけなよって。あ、赤い糸伝説は話した。」
「姉ちゃんらしいよ。…足に結ばれてるけど。」
「足?え、うわ、きゃあああ!」
「想良ちゃん?!なんかかつて無く想良ちゃん?!」
「大丈夫、え、水?想良!!」

黄色い声を上げ、想良は奏美が整頓した布団にダイブした。そして無言でそれをバンバン叩く。
いつも少しずれた発言をするものの、行動は常識の範囲内だった彼女の行動に奏美は目を見開いた。
そして姉の暴走を脳の片隅で思い出しそれを振り払う。
無言で腕を噛み細かく震える想良を二人は呆然と見つめていた。

「…!っ、!」
「想良ちゃん…?何、大丈夫?」
「大丈夫…かなぁ?姉ちゃんと似てる反応でウチ物凄く心配なんだけど。」
「なにそのあたしが大丈夫じゃないみたいなの。大丈夫だとは思ってないけどさ。」
「〜〜!」





「ダイアナ。」
「何?」
「あなたが興味を持ったの、分かるかもしれないわ。」
「そうか。それだけを言う為に私の部屋に来たわけ?」
「可愛くないわね、もっと喜びなさいな。」

マティーはダイアナの部屋に無言で入り、何かを一生懸命に書いていた主に声をかけた。
ダイアナは顔も上げず、マティーの言葉を淡々と受け流す。
塔の中とはいえ、この部屋はとても質素なものであった。
外部を知らない人間が見たら少し金を持っている一般市民の家だと答えただろう。
柔らかさのないベッドに腰掛けたマティーが面白そうにダイアナを見る。

「あら、パウエルから?それともパウエルに?」
「関係ない。安心しな、カメリアの情報は流さないから。私の近況だ、あ!」
「ふーん…。」

力を使いダイアナの書いていた紙を取り上げる。
取り返そうと踏み出したダイアナをあざ笑うようにマティーは壁をよじ登り、天井近くまで行った。
僅かな凹凸に足を掛け、書きかけのそれを読む。

「あら本当…近況ね。」
「言った通りだったでしょ。返して、まだ書くから。」
「相変わらず雑な字ねぇ…私が代筆してあげようかしらぁ?」
「いらない。」
「そう?私だったらこんな手紙貰っても読む気起きないわぁ…返事きてるの?」
「……。」

ダイアナは黙る。マティーは予想していた通りのそれに笑った。
ベッドの上に柔らかく着地し、手紙をそっと返した。

「帰りたいって言う嘆願…いつまでたっても受け入れられないわねぇ。もう忘れられてるんじゃなあい、あなたの事。
 出て行った人はそれこそ信用されないわ。」
「…パウエルの何を知っている。」
「大戦の勝利者側の国。黒人の来訪者…私と同じくらいの女の子だったかしら?伝承だから分からないけど。
 そして謀反…何年だったかしら。それでリキルシアとは不仲よね。」
「……。」
「大戦は常識じゃない。大陸全部使ったのよ?それ位、次期統治者としては知っておかないと。」
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.90 )
   
日時: 2012/04/09 15:52
名前: あづま ID:7H.bxSCk

「でも、今のパウエルは?」
「そうねえ…ちゃんとした血筋の人が一人抜けているけどちゃんと成り立っているわね。
 それだけ人材が豊富なのか…それとも抜けた人が必要とされてないのか…分からないわ。」
「……。」
「でもパウエルはそれこそリキルシアなら脅威になるでしょうけどその他なら簡単に潰せるんじゃない?
 誰も恐れて手を出さない国、パウエル…。リキルシアは敗戦国だけど個人的などれそれでああなったらしいし。」
「…知らない。」
「あら、変なの。それとも張子の虎かしら。長年攻められてないもの…対抗する術を失っているかも。
 私が統治者になったら攻めてみようかしら…あぁ、その前に跡継ぎ生まないとねえ…。」
「出て行け!侮辱するな!」
「面白いわぁ…自分から出て行った国なのに。」

口元に笑みを浮かべ、マティーは出て行った。
そして外に出、風の力で塔の自分の部屋まで舞い上がる。
ダイアナと話し、パウエルのもしもを知ることができて安心した。
強い国だからと皆争いを避け、パウエルは独立を保っている。
だがしかしカメリアと同じくパウエルは閉鎖的な国…どことも同盟していない。
カメリアはトリクシーの出身と同盟…一時的なものだが結んでいる。

「早く手を切らないと…損害ばっかり。」

だが、トリクシーの国へはメリットはあるもののカメリアへはない。
それどころかごく少数ながらも無駄な犠牲まで出ている始末だ。
あの国は隣国なので防衛線として、と思っていたがもう使う必要もないだろう。
パウエルは仕掛けられなければ戦をしない。文明の停滞もうかがわれる。
だが停滞していないことも考え、少数の…数日持ちこたえられる人材をおけばいい。
あの何にも役に立たない民族をいつ、攻め滅ぼそうか。

「楽しみねえ…ダイアナを使ってみようかしら?それとも、ふふ…アンリもいいかも。
 少なからずトリクシーの情はあるわよねえ…でしょう?」

扉を開け、中に双子の兄招き入れる。

「……気づいてた?」
「ええ。どう?滅ぼしてみる?好きでしょ、戦うの。」
「……。」
「顔怖いわぁ…それでなあに、私になんか用?」

じっと睨むアリーをマティーは笑った。そして目の前の人物が口を開くのを待つ。
だが、なかなか開きそうにない。
ふっと笑いアリーの手をとりマティーは自分の胸に当てた。動揺が見え、脳が愉快になる。

「だって、そうでしょう?あんたとベアトリクスの間に子供はいない。
 守るべき絆もないわぁ…なんのための政略婚だか。子供が生まれなきゃ意味ないのに。」
「…それは、僕、が……。」
「あんたが何?そんなに攻められたくなければ子供作っちゃいなさい。
 政略なんだから子供作ってベアトリクスは向こうに返しちゃってもいいのよ。逆でもいいけど。」
「無理だよ…。」

弱々しくつぶやいた向かいの人物にマティーは眉をひそめる。
小さいころから、それこそ、家やしがらみなんて知らなかった時代から…。
なんだかんだで殺すくせに、小さく心の中で呟いた。

「ふうん…あんた一回心許せばなんでもいいものねえ。ユリアーン、アリア、ローレンスもかしら?」
「それは、違う…!」
「違わないでしょ?あ、アリアはユリアーンが好きだったから大事なんだっけ。殺したものね、あんたが。
 …なんか男ばっかりね、あんた。ベアトリクスもよく考えれば男っぽいし…まあ構わないわ。」
「違うって…ジルは…。」
「お父さんみたいだっけ?同い年の父がいるか、ばぁか。早くお得意の殺しをしてあげなさいよ。
 彼、待ってるんじゃない?」
「……。」
「ふふふ、いい顔ね。私もそういう顔、できるのかしら。」

無言になったアリーを椅子に座らせる。
もう少し遊びたかったが報告を聞けなければ困るので一旦取りやめにする。
俯き、顔を見せない状態でアリーは喋った。

「軍師様…リキルシアの、フェビアン…が。同盟…を考えるって…。」
「そう?条件はなあに?」
「資源…。でも、僕分からないから…詳しくは、こっち来て、決めるからって…近日中に…。」
「そう。あらぁ、意外と軽い条件ね。」
「あと…部屋を…ミゲルのお姉さん来てるから。」
「ミゲル?…あぁ。いいわぁ、そうね。あとで案内させとく。」
「そう…うん。じゃ……。」





「移動?そっか、ここアリーの部屋だもんね。奏音さん、起きてー。」
「おう…なんか想良ちゃんいきなり切り替わったね?」
「姉ちゃんとは違うんでしょ。あ、これエドの部屋に入れなきゃなんないかな?」
「それは俺がやろう!女…それ以前に客人にやらせるなどあり得ない!」
「はあ…っどうも……。」

部屋が用意できたので移動するようにと告げてきたのは、想良に獲物を向けたあの兵士だった。
ミラーと呼ばれていたその男性は要件を告げ、布団をテキパキとたたむ。
手伝おうと駆け寄った奏美を制止し、扉を指差したのだった。
奏美はその反応に首を振り、二人の元へと歩いていく。

「でもさ、あなたお酒強いね?あたしが覚えてる限りではずっと飲んでたけど。二日酔いしてない?」
「はい!毒や酒などが効き辛い体質なんで!さぁ、案内させていただきましょう!」
「…お願いします。」

一々声が大きく、奏音は少々頭に響くと心の中でため息をついた。
だが、自分が押しかけ酒やもろもろをやったのであまり文句は言えなかった。
意気揚々と前を進むミラーを三人は数歩後でついて行った。

「さぁ、ここが部屋になります!分からないことがあったら青い突起に補助具をかざして下さいませ!
 誰かしらが参りますから、ではどうぞごゆっくり!」
「ありがとうございましたぁ。…ふぅ。なんかミラーさん元気いいねえ。」
「なんか想良ちゃんおばあちゃんみたいだねえ。」
「そんなあ、私奏音さんより年下なのに。十三なのに。」
「若いなぁ…あたし今年で二十三なのに。冬になんかプレゼント待ってるよ。」
「姉ちゃん?想良?」
「年下からプレゼントたかるんですかー?」
「あたしより想良ちゃんのほう絶対頭いい。だから要求すんの。」
「ちょっと二人とも!」

自分をおいていき内容の無い話を進めていくのを声を大にして奏美は止めた。
二人は予想外のそれに奏美を見、口を開いた。

「だってさぁ…。」
「何?ウチなんか間違った事した?」
「いや、奏美はしてないよ。たださぁ…その……。」
「豪華すぎない、この部屋。なにこれ?金持ってんなぁ…あたしなんか悲しい。
 三階建ての事自慢した気がするけどこれ見るとなんか悲しい。駄目だよこれ…あたし田舎者。…うぇ〜い!」
「姉ちゃん靴!靴ー!」

奏音はボスッとベッドに飛び込んだ。
ベッドは彼女の体を包み込むようにふわりとした。奏音はそれではしゃいでいる。
奏美に言われた事で思い出したのか靴を無理矢理脱ぎ、布団カバーに包まり無言で笑っていた。
想良が苦笑いをして奏音の靴をそろえるついでに脱げかけている靴下を引っこ抜いた。

「あ…柔らかい…。」
「でしょでしょー!やっべうはあぁあぁぁ…!」
「姉ちゃん顔キモい。せっかくのベッドの感動が消えた。」
「ひでえ…なんかやっぱあたしの扱い悪くない?」

奏音が口を開くが二人は答えなかった。無言の肯定。
一瞬むっとした顔をしたが奏音はそのままベッドに横たわり布団に包まった。
また寝るのか、と奏美がいったがそれを気にせず沈んでいった。

「なんでそんなに寝れるんだろうね。」
「さぁ…物凄い不摂生な生活してるからかな、って思うけどこっち来て今一ヶ月位?仕事もないしなぁ。」
「残ってる本能がわりと規則正しい生活させてくれるよね。」
「うん…あれ、でも姉ちゃん割と本能に従って生活してる気がする。生存競争で間違いなく滅びる。」
「あはは…でも奏音さん強いと思うなぁ。」
メンテ

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