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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.96 )
   
日時: 2012/04/15 00:31
名前: あづま ID:A3byF9ug

「想良…あの、あのさ?」
「ん?なあに?」
「間違いだったら…間違いで良いんだからね?あのさ……人、殺した…?」
「殺してないよ。」
「そう…?」
「奏美、どしたの?あたし的に今の少し失礼だよ。…本当に大丈夫?」
「…ちょっと、ごめん。」

奏美も立ち上がり、想良のそばに行く。
進むに連れだんだんと確信に変わって行くそれが悲しかった。
自分だけではなく、という強い気持ちが奏美を支配する。

「やっぱりにおいがする…想良の馬鹿。」
「におい?あたしは別に分からないけど。」
「……。」
「姉ちゃんは知らないんだよ。想良、仕事あったの?それとも正当防衛?」
「…殺してないよ、奏美の馬鹿。」

だが、言った後で想良ははっとした。
目の前の奏美が悲しい顔をしている事、そしてなにより自分の声色が楽しんでいるように取る事ができた事。
自分も感化されてきているのではと心の内で思うがそれを振り払い、真っ直ぐに見た。
目の前の友人は自分の事を信じていないような目で見ていた。

「本当に殺してないから。私だけ仕事貰えなかったんだよ?もっと頑張らなきゃね。」
「頑張って…頑張って想良は人を殺すようになる訳?!どうやったらそう割り切れるようになるの!」
「奏美…私は……。」
「想良は良いよね!安全な中で、自分じゃ納得できないのに認めてもらえてさ?
 ウチは死ぬかもしれない、っていう中で頑張って実際斬られたし殺したのに認めてもらえない!」
「ちょっと奏美、一回落ち着こう?」
「姉ちゃんは黙ってよ、この腐れニート!」
「なんてこった。レッツゴーマイ…えっと…娘!」

奏音は自分に飛び掛ってきた妹をあの蔓で絡め取る。
足を取られ転んだ奏美をうつぶせにし、そのまま馬乗りになった。
自分の体の下で暴れる妹を無理矢理押さえつけ、蔓を操り首を絞める。

「やめて!奏美が死んじゃう、奏音さん!」
「…大丈夫、妹を殺したりしないから。」
「奏音さん!」
「大丈夫だよ。あたしは奏美が大事だからね、奏美を守れるんならある程度はやるよ。」

必死にもがいていた奏美の動きも鈍くなり、やがて動かなくなった。
奏音はすぐに拘束を解き、妹をベッドに寝かせようと抱えあげた。
すると数本のナイフとくないが彼女の手から滑り落ちた。ナイフは床につく直前に消え、くないが転がった。
踏まないように注意を払い奏美をベッドに横たえ、奏音は想良の目の前に座った。

「ごめんね。」
「うぅん…奏音さんが悪いんじゃないし。奏美、大丈夫かな?」
「どーだろ、あたしら大体十歳違うじゃん?あたし中卒でその後同人やってたからなぁ…。
 十六の時に漫画の作画依頼されてその時に一人暮らし始めたから…大体小一だね、奏美は。」
「そっか…じゃあ奏音さんあんまり奏美とは関わってないの?」
「でも家こっちの方に買ったからそれからは会ってるよ。でもあたし変な青春送ってたし分かんないかも。まじやべ。」

楽天的に奏音は笑うと寝転んだ。
電源の入らない携帯を弄び、ただ何をするでもなかった。
想良はその様子を見て、なんとなく口を開いた。

「多分ね、奏美が私が殺したって思うのは死体がある所に居たからなんだよね。」
「え、想良ちゃ…!」
「だから私は何もやってないよ。」

ガバリと飛び起き目を見開いた奏音を想良は笑みを浮かべながら見た。
もしかしてこう笑うのがいけないのかとふと思ったが想良は話し続けた。

「ジルに会ってきたの。」
「え、なんで!想良ちゃんの裏切り者!抜け駆けは駄目って言ったじゃない!」
「二人が行って…多分そんなに時間たってないと思うんだけどアリーが来たんだ。それで会いたいか?って言われて。
 それでついて行ったの。」
「そーなのか…。で。」

奏音は想良の方へと詰め寄った。
詰め寄って初めて、奏美の言ったとおりに良く分からないにおいがするのが分かった。
これが戦場のにおいなのかと奏音は頭に叩き込んだ。

「どんな子?」
「んー…髪の毛が何色って言うんだろうね。茶色に少し白を混ぜたみたいな色。」
「ふーん。ま、外国人の髪の毛の色ってどう言っていいか分からないもんね。金髪でも茶色じゃね?って位のもあるし
 白髪じゃね?ってのもあるしねー。」
「うん。それで動けない人だった。なんか毒でやられたって言ってた。腕も片方は火傷で見てられなかったし…。
 もう片方は傷だらけだったよ。あとなんか喋り方がちょっとムカッときた。」
「まじで?なんかアリーちゃんと似てるんだ。あたしも初めて会った時すごいムカついたし。
 変態さんって言われたし、まぁそれは事実なんだけどなんか小ばかにしたみたいな…!」
「それ私も似たような事言われた。変態女って。あと不細工って言われた…。」
「えー!想良ちゃん変態じゃないし不細工でもないじゃん。うわぁ…ジルは見る目がないのかぁ。」

想良は奏音が慰めているのか分からなかったが、彼女の本心に触れたようで嬉しかった。
なんだか良い気分だったのでそのまま話し続けた。

「でも、けっこう気遣いは出来る人かなって思ったよ。多分優しい人。」
「へー…。じゃあ二人は案外似てるのかね?あたしも会えるかなぁ?」
「んー…機嫌が良い時に来い、って言われたからなぁ。どうだろう、アリーはジルが私の事気に入ってるって言ってたけど。」
「じゃ行って良いんだよ。あたしも連れてってね、約束だぁ!」
「うん、奏美も一緒に行けると良いね。あーでも…ジル五体満足の人嫌いみたいだし…。」
「嫌い?」
「うん、吐き気がするって言ってた。」
「そっかー…あれ?じゃあアリーちゃんも結構好かれてないのかな?」
「それは無いみたいだよ。私も聞いたけど特別な奴だって。お互いにそう思ってるらしいよ。」
「え、とくべ、がうあぁあっ!」
「か、奏音さん?!」

奇声を上げ、転がりまわる奏音を想良はあきれた顔で眺めていた。
やがて奏音は頭をベッドの柱に打ちつけ、痛みに身体を震わせながら静まった。





「セルジュさん、あんたも篭ってばっかは疲れるだろ?少しくらい遊んでいきな、って!」
「あぁ。でも約束したからもう戻らないと。悪いな、折角だが。」
「あの連中は少し固すぎんだよ、折角馬鹿領主が倒れたんだ。少しくらい浮かれた方が良いぜ?」
「だが俺は金貰ってやってるからな?でもそうだな、ちゃっちゃと切り上げてもう一回来れるようにするよ。」
「待ってるぜ、あんたも俺らの仲間だからよ!」

陽気に手を振る男達に別れを告げ、エドは館への道を歩いていた。
酔っていたのだろう、男達からしていた酒のにおいは風に乗ってまだこちらへとやって来ていた。
門の前まで歩いてくればあの女がエドの事をじっと睨んでいた。
そしてふっと笑うと彼女はエドとは反対に宴のほうへと歩いていった。
彼女の行動に疑問を持ちながらも座敷に入れば、重臣となる人々は額をつけ合わせ話し合っていた。
しかし、エドが中に入っていたのに気づくと何事も無かったように彼を迎え入れた。

「どうした?何を話していたんだ?」
「いえ…我等の方針でございます。…セルジュ様、何か収穫はあったでしょうか?」
「あぁ。堀を作るといっていたあの大河、あれについてなんだが。」
「はい。」
「危険じゃないか、と思う。あれは大国側から流れているから、大国があそこから船で攻めれば堀の意味は無い。」
「なるほど。やはり、あなたを向かい入れて正解でした。」
「いいや。」
「セルジュ様?」
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.97 )
   
日時: 2012/04/20 18:26
名前: あづま ID:KcT9yEBw

周囲の人達は否定したエドのことを見た。
みなの人見に疑問の色が移っている。
エドはこれは別に隠す事ではないと考え、口を開いた。

「男装している女がいただろう?あの娘が言っていたんだ。」
「あ…申し訳ない。あれはふらりとやってきた女でして…彼女と小さな男の子が指揮をし、我等は勝利できたようなもので…。」
「そうなのか。…男の子?」
「はい…なんでも彼女が旅の途中に出会ったらしく、以後行動を共にしていたとか。」
「ですが…最後の激戦にて姿が見えなくなり……おそらく。」
「そうなのか。」
「男の子が消えてから…彼女は男の格好をするようになりまして。」
「じゃあ、あの格好をするようになったのはごく最近なのか。」

これ以上、女と小さな男の子に対しての話題は出ず皆は設計図を見ながら案を出し合った。
大河には水門を作り、それにより相手方の進軍を遅らせる。
山側には強固な門を作る。最終的に決まったのはそれくらいだった。
穴だらけのサク…これならばカメリアも攻める事ができるだろうとエドはひとまず安心した。
案がまとまり、各自解散した時にはあたりは暗くなっていた。
エドは立ち上がり下を見下ろせば、遠くに火が見えていた。
周りでは影が動いている。まだまだ、民衆は浮かれているらしい。
隣に音もなく仕切っていた人物がやってきて、口を開いた。

「彼等は…革命がなったという事実に酔いしれ、先を見ようとはしていなくて。」
「あぁ…俺も篭っているのはよせ、と言われた。」
「あなた様の言葉を伝えられれば良いのですが。中には既に隠密がいるかもしれない。
 マリー…あの男装の女ですが、彼女も言っていましてね。既にスパイは入っている、警戒しろと。」

あの女が警戒を呼びかけている。それを知ったエドは一瞬体を強張らせた。
しかし相手はそれに気づく様子も無く、話を続けている。
相手が世界を知らない馬鹿でよかった、と安心しエドは適当に相槌をうった。
向こうは自分の話を聞いて貰えるという事に気分が良くなっているのか色々な事を話していた。

「待った。俺がスパイかもしれないだろう。あの娘が言うように警戒するべきだ。」
「いいえ、あなたはスパイではありません。我等の為に知恵を絞ってくれたではありませんか。」
「言っただろう、浪人は最も疑うべき存在だと。」
「疑った結果、これなのです。我等はあなたを疑うべき存在ではないと判断いたしました。」
「そうか…。ならば、あの…マリー、はどうなんだ?」
「彼女もあなたと同様です。むしろ彼女には詫びなければならない。
 大切な者を失わせてしまったのですからね。我等の為に、小さき命を消しました。」

相手が目を細めたのを見て、これは使えるだろうと思った。
そもそも彼等は一度信じれば疑う事はしないのだろう。
マリーが男の子を失った事を彼等は悔いている。ここを揺さぶれば何とかなるかもしれない。

「そういえば…小さな男の子と言っていたな。」
「ええ。」
「どの位なんだ?言っておくが十歳くらいならば立派なスパイだからな。
 激戦の混乱に乗じて抜け出したと言う事もありえる。子供だと油断しやすいだろう?」
「それならば平気です。あの子は五つにも満たないような子供でした。
 多少ませていましたけどね…ただ着眼点の良い、子供だからこそ分かるような事を言う者でした。」
「五歳…すると、うん。難しいな…。今日はもう下がるよ。明日、また起こしてくれ。おやすみ。」
「はい、お休みなさいませ。」

エドは軽く手をふってその場を後にした。
セルジュという偽名にむず痒さを感じ、なかなか力を抜けない状態が続いていた。
やっと休めるという事に気を取られていたエドは、さっきまで話していた男の隣にマリーが現れたのに気づいていなかった。





薄く差し込んだ陽光がぼんやりと部屋の中を照らしていた。
マティーは部屋の中にアリーがいるのを見て取り、彼に近づいた。
ベッドからは落ちたのか、それともベッドまで持たなかったのか床で丸くなっていた。
何度か呼びかけるも反応せず、わき腹を体重をかけて踏むと呻き声と共に起き上がった。

「夜だよ…まだ暗いよ……。」
「でも陽は見えてるわぁ。はい、さっさと起きる。」
「兵士達に頼んでよ…僕眠い…。」
「兵士達は良く働いてくれるじゃない。たまには労わらないとねぇ?」
「僕は?」
「なんで労わらなきゃなんないのよ?あんたは勝手に動き回って寝不足になってるだけでしょ。」
「だって、ジルの身体とかー…。」
「薬の開発も進むしそれは支援するわよ。でもねぇ、傷掘らせるのは明らかに余計でしょ?
 はい、目も覚めたわね。だいたいあんたがえぇと、フェビアン?だかに取り付けたんだからあんたが準備なさい。」
「えー…寝る……。」
「まったく…。」

床で寝ていることに気づいたのかのそのそとベッドに上がろうとしたアリーの足をつかんだ。
ガンッと脳に響く音と手の中の足に力が入った事で狙い通りにいった事が確認できマティーは微笑んだ。
十秒ほど後、荒い息とともに座ったのを感じマティーは口を開いた。

「完全に目は覚めたわねぇ?」
「ばっ馬鹿じゃないの?痛い…口が、舌が…!鉄の味しかしない!」
「血の味でしょう?ほら、さっさと、処理、する!」
「いだ、痛い痛い痛い!やめっ、目覚めたっ覚め、たっ!」
「あら?だったら早くその口なんとかなさい?ダラダラじゃない、さっさと出し切ったら?」
「マティーが僕の足、いやだっもう!っ、あ…う…痛い……なに刺した?」
「ちょっとした薬よ。早く目を覚ましてもらいたいからね。」
「もう覚めたよ…。」

少々息の荒いアリーを無理矢理急き立て、カメリア本家へ向かう。
相手はリキルシアという大国であり、失礼があってはならないという事でまだ夜も明け切らない内に向かうことにしたのだ。
少し肌寒い風にあたりアリーも目が覚めたらしく大人しくついてきた。
ただ部屋で刺された部分を時折気にしており、それがマティーを楽しませた。

「遅効性よぉ。大丈夫、朝日が昇るまでは確実に効かないわぁ。」
「何入れたの…?毒薬じゃ…ないよ、ね…?」
「んっんー…まああんたは気に入るんじゃなあい?
 私だったらごめんするけど…あんたはなんだかんだで癖になるんじゃないかしら。依存しないようにね。」
「本当に何?」
「だから気にする事じゃないわよお。」

後に起こるであろう事を予測し、マティーは一人笑った。
アリーは自分の知識の中で遅効性であり、かつ針程度のそれで効くものは何かと頭を巡らせていた。
その時、どこから嗅ぎつけたのか、小さな子供が二人に対し手を伸ばした。見た目からして訓練を受けている年代である。
マティーはその子供を目の端で捕らえただけでそのまま進んでいった。
土と血の臭いが鼻につき、かつて自分も似たようなそれを漂わせていただろうがそれでも不快だった。
少し進みアリーがついて来ないので振り返れば彼は自らが着ていた上着を与えていた。
ため息をつき、子供と別れて駆け足で進んでくるのを見てあきれた声で言った。

「なにやってるのかしら?」
「なんかあんまりお金ないって言ってたから。僕が着てたの売れば少しはお金になるんじゃないかなって。」
「まあそりゃあ生地が良いしお金になるかもしれないけど。」
「ちょっとでも楽してもらいたいもんね…寒い……。」
「お馬鹿さん。自業自得よ、その薄いので過ごしなさいな。」
「ええぇぇぇ…。」
「帰れば服あるんだから我慢したら?あんた無駄に服多いじゃない。レイモンよりもあるわよね?」
「うん。服ってやっぱり実用性あるじゃん。買っちゃうんだよね…。」

笑みを浮かべるアリーをマティーはただ眺めた。
双子でもこんなに違いが出てしまうのかと思うと、一瞬にして目の前の彼が憎く感じた。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.98 )
   
日時: 2012/04/20 18:28
名前: あづま ID:KcT9yEBw

「良いわねぇ…。」
「何が?」
「……。」

ふと、口をついて出た言葉にマティー自身驚いていた。
むしろアリーの問いかけにより自分が言葉を発していたのだと理解した。
ただ曖昧に首を振り、尚も追及したがる雰囲気を出す片割れを視線で封じ込めた。
アリーはそれに慣れており、これを無視し追求した場合を知っているため諦める事にした。

「あ…つまり僕が軍師様の世話するの?カメリアの人はやってくれないって事?」
「さあ。ただ向こうがあんたを望むんじゃない?一応知ってるのあんただけなんでしょ。」
「多分……。」
「服ぐらいなら持って行かせるわよ。安心なさい。」
「労わるんじゃなかったの?」
「あんたのお仲間?に行かせるわよ。多分あの大木になると思うわぁ。」
「大木?」

いまいち大木というワードに人物が結びつかないアリーにため息をついた。
それと同時に結びつかないほど候補がいるのかもしれないと疑いも向ける。
道は舗装されていない、ごろごろと石が転がる所までやってきた。

「あの無駄に煩い女よ。働く意欲が見えない髪が二色の女。」
「あぁ、奏音。そういえばなんで髪の毛二色なんだろうね?全然髪伸びてないみたいだし。」
「知らないわよ。でもああ目立つ頭してるんだしちゃんとした働きすれば異名みたいなのが付くんじゃないかしら。
 それが抑止になればこっちとしても助かるんだけどねぇ……。」
「パベーニュ当主にやって頂けばいいじゃん。マティーが苦労する事じゃないよ。僕もやれる範囲で手伝うし。」
「あんた…実の親に敬語使うのはよしなさいよ。なんかむず痒いわ。」
「でもマティーが当主になったら僕は敬語使わなきゃいけないでしょ?
 なんか大変だね。みんなが…あぁ、カメリアの人以外は敬語になるんだ。そっかぁ…双子なのにね。」
「……。そうね…。」

アリーは特に気にしていないようだが、それがマティーに引っかかった。
悔しくないのか、と。
いつも比較され、蔑まれてきた。そしていずれは自ら膝をつかなければならない。
アリーが知らないはずがない。マティー自身、母を母と呼べなくなった時に気づいた。
兄弟や国を保つ要とも言える軍を支配下に置く日がやってくる。
そう遠くないであろう日々を描き、首を振った。

「とりあえず、まずは成立を目指しましょう。リキルシア。…ふふふ、こっちが利用するくらいに。」
「うん。…利用ねえ。向こうは名前が知れた軍師様だよ?」
「大丈夫よ、あんたがいれば。すぐに一本取れるなんて思ってないわ、ただしばらぁく…ね。」
「そう。……?」

アリーは左手に僅かな温もりを感じ、それを確認してから首をかしげた。
マティーは悪戯に笑い、互いに頷いて道を進んでいった。





「おい、起きろ。」
「……」
「…アル、こいつら死んでんじゃねえだろうな?」
「……」
「いや、冗談だ。そんな必死な顔すんじゃねえ、俺が悪いみてえじゃねえか。」

兵士から三人が朝食を食べに来ないと言われ、ぼんやりとしていたアルを誘い部屋に入ればまだ寝ていた。
奏音なら起きてこないのもありえると思っていたレイだったが他の二人もという事には驚いた。
アルはベッドから落ちている奏音の口と鼻をふさぎ起こそうとしているらしい。
息苦しさにもぞもぞしているのを確認した。

「あ?」
「?」
「いや、別に。」
「おい想良、俺を見てその反応は何だ。」
「えへ。おはよう。」
「あぁ…。」

想良は肩を数回叩けば気の抜けた声とともに目を開けた。
まだ眠たそうに瞼をこすっているが起き上がり伸びをしている。
次に奏美を起こそうと彼女のベッドに近づこうとした、その時だった。
アルがレイにぶつかり、二人そろって転がった。

「レイさん?!アル君も大丈夫?」
「……」
「ってえ!んだよ、なにし…。」
「…誰だ。」
「は?」
「誰?!あたしの眠りを妨げる愚民は、死ぬの?」
「奏音さん…どうしたの、キャラ違うよ。」
「むしろあたしが死ぬの!」
「……」
「寝た。レイさん、今の何?」
「俺に聞くんじゃねえよ。」

二人は起き上がり、ぶつけた所をさすった。
特にアルは出血箇所もあり小さく息を吐いた。そこに手を当て、力をこめ治す。
それを見た想良は息と共に言葉を発した。

「それ何回も見てるけどすごいよね。私もやれたら便利だろうなぁ。」
「……」
「俺でもできるぐれえだし…出来るんじゃねえか?
 他人にやってもらってもいいんだけど疲労がな。皆生きるか死ぬかだから大体は自分でやるし。」
「そうなのかぁ。じゃあさ、レイさんの氷みたいなのは?」
「それも練習すりゃあできるようになるさ。特に想良は機転も利くし…まぁ、奏美を起こしてからな。」
「奏音さんもねー。」
「……。」
「?」
「アル君にも後で教えてあげようか。」
「教えんじゃねえ、馬鹿!」
「ね?」
「……」

アルが頷いたのをレイは見た。
勝手に話が進んでいくことに重いものを抱えながらも奏美を揺り動かす。
だが、奏美は一瞬顔を歪めはしたものの寝返りをうってしまった。
なぜこんなに寝覚めが悪いのか、そう想良に問おうと口を開きかけたときある事に気づいた。

「想良…。」
「何?」
「夜…侵入者とか…そういうあれ…。」
「んー、私が分かる限りではないと思うよ。どうして?」
「?」
「こっち来い、じゃあ。」
「何、奏美がどうか…?」

レイの手招きに想良も従った。アルも気になったのか彼女の後ろから顔を覗かせる。
奏美の首元を指差した。薄い輪が首を彩っていた。

「な?…奏美が進入に気づいて、それを気絶させた。だがこれはあまり手馴れてねえよ。
 力任せにやったな。痕にぶれがある…薬盛られたりしてねえよな。今アリーいねえからわざわざ呼ぶの面倒だしよ。」
「……」
「あ、あぁ…。」

奏美を見て、想良は思い出した。
真実を言おうにも今目の前の二人は真剣に対処法を考えている。
犯人は足元で眠りこけているそれだとは思っていないらしい。

「あの…。」
「んだよ、なんか思い出したのかい?」
「……」
「あぁあ顔が、顔が怖い。…あの、奏美の首、でしょ。」
「そうさ。口封じとはいえなぁ…痕残ったらどうすんだ。顔は幸い消えてきたみてえだけどよ。」
「その…奏音さんです。」
「はぁ?」
「…?」
「奏音さんです。」

周りの空気が凍ったのを想良は感じた。二人は想良を見て、奏音を見、そしてまた想良を見た。
二人のシンクロされた動きに想良は内心笑いながらも気を引き締め頷いた。
途端、アルには呆れの色が、レイには怒りの色が見えた。
レイの表情を見たアルはまだ眠っている奏美を抱え、想良の手を取った。
それがなんなのか良く分からないまま導かれるままに部屋を出た数秒後、レイの怒鳴り声と奏音の悲鳴が部屋からあふれ出た。

「あらら…アル君は察知したの?すごいねえ。」
「……」
「…ん、あれ…。」
「奏美、おはよ。」
「おはよ。…うわぁあっ、何で?!アル、下ろして!」
「……」
「ありがと。…なに、どうしたの。何で姉ちゃん怒られ…形勢逆転した。」

だが、軽く目をそらした二人を奏美は不思議そうな目で見つめた。
扉の向こうの声で推し量れるかと耳をつけたが姉の愉しむ声とレイの悲鳴が聞こえただけだった。
後で直接聞こうと決意し扉から身を離した時チリリと首筋に痛みを感じた。
首を触り、昨日の出来事を思い出そうとし、途切れた。

「…想良。」
「なあに?」
「ごめんね、昨日。ウチ少しおかしかった。
 信用しないで自分の意見押し付けて。想良はそんなことしないよね、ごめん。」
「ううん、いいよ。ただそれ向こうの二人にも言ってね。色々哀れだから…特にレイさん。」
「うん…そうだね。」
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.99 )
   
日時: 2012/04/20 18:31
名前: あづま ID:KcT9yEBw

「ねえねえ。」
「なんだ?」
「最近ソラがいない。なんで?」
「おれにきかないで欲しいなぁ。
 でもいないのはここ三日くらいじゃないか?向こうにも事情があるだろうし。」
「でもさ、お前ちょっと寂しそうじゃん。」
「そりゃあ初めての弟子かもなぁって思ってたから。」
「ふーん…。」

技術者が暮らす家の屋根の上。キルシはラリーと共に抜け出していた。
下から自分を呼ぶ父親の濁ってしまった声を聞いたがそれを風と共に流した。
ラリーは抜け出したことに対し負い目を感じていたがキルシが戻る事を許さない。
子供特有のそれでラリーを縛り付けていた。

「おれ怒られるし戻りたいんだけどなぁ。」
「ラリーは俺の事嫌い?」
「嫌いじゃないよ。でもそろそろ戻らないとさぁ…。」
「駄目、ラリーは俺の子分だ。へへへ…願い、叶うかなぁ。」

そう言ってキルシは左腕に結びつけた色とりどりの輪を眺めた。
鮮やかなそれは白い肌に良く映え、人の目を引き付けさせ離さなかった。
陽を浴び、キラキラと笑顔を輝かせるキルシにラリーは口を開いた。

「それは?」
「ん、ミサンガって言うんだって。なんかこれが自然に切れた時に願いが叶うお守り。ソラから教わった。」
「子供が皆つけてるからなにかなって思ってたけど…そうか。想良もすごいなぁ、色々な事知っている。」
「うん、すごいよなぁ。難しいのも作れるし、俺達にもできるミサンガも作れるし。」
「紙一枚のあれ、あれは未だに失敗するなあ。上手くできるようにはなったんだけど。」
「無理だね。ソラより上手くなれないしソラと同じ位になれないよ。ラリーだしね。
 俺も早く願い叶いたいな…周りみんな切れてる人多いんだよ。」
「おれだしって。…どんな願いが叶ってるんだ?」
「んー…なんか訓練に合格したいとか。頑張って夜練習してる時に切れて、次の日に合格だって。
 いいなぁ、俺滅多に訓練できないし…あの人達いるとなんで出来ないんだろ。」

ラリーは言葉に詰まった。
だが、自分で頭を働かすキルシは気づかなかった。暫く考えるが諦めたように寝そべった。
キルシの鼻を香ばしい草の匂いがくすぐる。

「そういえばキルシは何を願ったんだ?」
「俺?」
「そう。やっぱり一流の技術者?」
「それもあるよ、この黄色。でも一番…ソラに教わって初めて作ったこれ。」

キルシは青いミサンガを指差す。それは一つだけ右腕に結ばれていたものだった。
彼が言った通り初めて作ったものらしく少々不恰好だ。だがよほど頑丈に出来ているらしくまだ切れる様子は無い。
ほつれが多い自分達の服を思い出し、想良という人はどこまでの技術を持っているのだろうとラリーは思った。

「これが一番のお願いのミサンガなんだ。」
「へえ…。どんな願いを?」
「知りたい?」
「まぁ…言いたくないなら、いいけど。」
「へへへ…。」

笑みを浮かべ、キルシはラリーを見た。
キルシにはラリーが何を思うのか分からなかったが、自慢したいという思いがあった。
ただ、焦らしたいという思いもある。
結局自慢したいという方が勝ち、自信満々に答えた。

「母さんと姉ちゃんに会いたい。」
「…それって。」
「うん、もう死んでるのは知ってる。でもさ、俺が一流になって、人を生き返らせるくらいすごい力が使える補助具を作る。
 そうすれば母さんにも姉ちゃんにもまた会えるし、姉ちゃん結婚できる。」
「そっか…。」
「そう!見てろよ、俺が一流になったらラリーは俺の召使な。」
「今でも子分なのに?」
「もっと子分になってもらうよ。まあ…俺よりすごいのになったら俺が子分になってやる!」
「じゃあ頑張らなきゃなぁ。」
「頑張んなよ!ラリーは俺の子分になるんだから!」

二人は笑った。
だが、その笑い声で二人の居場所を感付かれてしまったらしい。
キルシとラリーを呼ぶ怒鳴り声が迫り、二人は困ったように顔を見合わせた。

「なぁ、逃げようよ。」
「……一流になるなら、修行も必要なんじゃ。」
「うっ…父さん、俺ラリーが呼ぶからここにいたんだ!」
「キルシッ?!おれを売るのか?!」
「子分なら親分の身代わりになれよ!」





「……、いや、まじごめんね。でも奏美を心配してくれたのは嬉しいよ。」
「あぁ…。」
「もーむくれないでよー。うん、まじごめん。」
「……。」
「姉ちゃん、なにやった。」
「奏音さんだから性的な方向?それとも性的な暴行?」
「想良ちゃん?!あたしイコール性的などれそれは間違ってる!あたしだって性以外のこと考えたりする!」
「レイのその格好から説得力ない。」
「えー…。」
「……」
「あ、行っちゃうの?ダイアナさんとお仕事かあ。頑張ってね、またねー。」

アルは空気に耐えられなかったのか想良にメモを渡し、部屋から出る。
そのメモにはダイアナとの仕事があるのでもう行くという内容だった。
そういえば彼はトリクシーと入れ違いに去っていったのだと思い出しまだ仕事が終わっていなかったのかと想良は思う。
が、ふと視線の中心に目を向けそういえばレイは月単位で仕事をやるといっていたような記憶も蘇り思い直した。
そして、不満ではあるが空気を共有する。

「まず一個。なんでレイの服が脱げているんですか。はい、姉ちゃん。」
「え、あたし?…なんか眠かったのに起こされた。」
「…そういやアル君の事も蹴ったんでしょ?レイさんと激突したときのあれ。」
「激突…ってもしや二人の身体が重なった系?!」
「まあ、そんなかんじ?」
「うわああああっなぜ起きなかったあたし!グッジョブだけどなぜ寝ていた!」
「姉ちゃん?」
「すいません。」

奏美の剣幕に奏音ですら素直に頭を下げた。
想良はそれを見ながら奏音には姉としてのプライドがどれくらいあるのか考えつつレイの服を回収する。
そしてそれを持ち主の隣に置いた。
その時、レイがほとんど音が聞こえないくらいに鼻をすすったのが分かったが彼の表情は分からなかった。
もごもごと口を奏音は動かし、三人は一向に目が会う事はなかった。

「ねえ奏美…その、あの…。」
「想良、何も言えないんなら黙って。レイも、男でしょ?初めて会った時言ったよね?
 力関係は分かっているかって。本気出して良いよ、姉ちゃんも一回痛い目見ないと分かんないから、絶対。」
「それは惚れた弱みじゃない?…あ、ごめんね。」

奏美の睨み、そしてレイからの殺気のような物が想良を黙らせる。
今、部屋の中にいる中で奏美が一番背が高い。その事実が余計、彼女に威圧感を与えていた。
だが、奏音が口を開く。

「惚れた弱み?んえ、あたしに?レイが?」
「……。」
「あっ…あくまで私の予想だからね、うん。真実はレイからで…、はい。」
「想良はまたそういう事!…、そういうのはウチらが住む世界違うから…無理って。」
「レイさん、どうなの?」
「…嫌いだ。」
「え?」
「嫌いだっつったんだよ!お前みてえな屑な女はよ!」
「…そっか。」
「…そうだ。」

奏音はただ笑みを浮かべていた。
レイの声は怒りに染まっており、三人を睨みつけていた。奏美は突然のそれに驚き唖然とし、想良は黙り俯いた。
三人が言葉を発さないのを良いことにレイは喋り続ける。

「だいたい、俺は言っただろう?積極的な女は嫌いだって。お前ら覚えてるか?」
「…うん。エドさんに言ったんだっけ。」
「お前ら…お前ら全員積極的すぎんだよ!んで結局、奏音の事を好き?
 ふざけてんじゃねえ!なんで俺が滅茶苦茶被害を受けてる奴を好きにならなきゃいけねえんだい、えぇ?」
「ごめん…私調子乗ってたよね。うん…レイさんのこと考えてなかった。本当にごめんなさい。」

そう言って、想良は頭を下げた。
それがレイに伝わるかは全く分からなかったが、それが想良の出来る精一杯の事だった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.100 )
   
日時: 2012/04/20 18:34
名前: あづま ID:KcT9yEBw

「な…なんでそう謝んだよ!」
「なんでって…レイ?なんか疲れてる?」
「奏美も昨日こんな感じだったよ。わんこ、それは想良ちゃん言ったじゃん。悪いと思ったって。」
「…うん。私はレイさんの事考えないで自分が楽しいからってやってた。ごめんなさい。」
「……。」

それ以上、誰も言葉を発さなかった。
レイは自分の服を小脇に抱え、何も言わず部屋から出て行った。
取り残された三人も互いの顔を見ることができなかった。
気まずい沈黙と、鉛のような空気が流れていた。
どれくらいそうしていたか、遠慮がちなノックの音に奏美が返事をした。

「…あの、…。」
「あれ、また新しい子が。」
「……あなたが、えっと…奏音さん?」

少女は奏音を指差しそう言った。
奏音はそれに答えると少女は一礼した後部屋に入り奏音の手を引いた。

「ちょ、何?」
「あの…マティルド様があなたに頼みたいことがって…。」
「…まさかなんか毒薬の実験体になぁれ、とか?」
「それはないです…。あの、ただ御使いって。」
「奏美達じゃ駄目なの?」
「あなたをご指名で…はい。」
「そっか。…行って来やーす…。」

奏音は一歩踏み出したが少女はそれを制した。

「あの…本当に冷え込むんで…あなたも服を持って行って下さい…。」
「え?今日暖かそうじゃん。秋って感じだよ?」
「あき?…とりあえず、日が上れば寒くなりますので…。」
「そうなの?しゃーねーや。」
「待って姉ちゃん、ウチが出すからいじらないで。」

奏美が衣類をつめた棚から適当に服を出し姉に渡す。彼女はそれを腰に巻いた。
だるそうな空気を漂わせながら奏音は少女と共に出て行った。
奏美と想良は顔を見合わせ、ため息をついた。
思いがけないきっかけだったが、緊張した空気が僅かにほぐれたのが分かった。

「どう謝ろう…絶対怒らせちゃったよね。図星だったのかなぁ…。」
「また想良はそう言う…でもウチもなんだかんだ面白そうって思ってたかもしれないし…。
 二人がくっ付けば…うん、姉ちゃんが彼氏とかさ。男好きだけど彼氏までは姉ちゃん今までなかったし。」
「そうなんだ。確かに彼氏とか高校生位からが本番って感じだもんね。」
「確かに。姉ちゃん高校行かないんだもん。二次元が彼氏になっちゃってるからね…。」
「奏美はそうならないようにね。」
「ならないよ。姉ちゃんを反面教師にするからさ。」

互いに少しだけ笑った。
窓からは既に高く上り始めた光源から光が差し、既に涼しくなり始めた日を暖かくした。





「つまり、服を持って来いと。」
「はい…。」
「服くらい自分で持っていけなかったのかねー?」
「今…その、マティルド様とアンリ様で同盟締結の…で。」
「あぁそういう。…あれ、この家っていわゆる補佐じゃないの?」
「補佐です。…だからこそ、で。」
「ふーん、いわゆる下請け的な。でもさ、まだ暖かくない?九月くらい?」
「いきなり冷え込むんです…この地域。ついこの間まで暖かかったのに、っていうのが多くて。
 雪原期が…長くて。暖かいのは本当…二ヶ月あれば良いんです。」
「マジかぁ。じゃあ暖かめの…君は入らないの?」
「私は…一兵士ですから。入れないんです。」
「そう。じゃあ適当に選んでくるよ。」

奏音は少女にそう言い、案内された部屋の中に入って行った。
整頓された部屋の中のほとんどは服が場所を占領しており、奏音は頭を振った。
こんなに量があれば絶対着ない服がある…そう確信を持ちながら見て周った。
どうせなら着なさそうなのを、という心から奥の方にある薄い色の服を持ち出した。
布の厚さも程よくあるが一応上に羽織るものをと袖のない物を引っ張る。
部屋から出ると少女は奏音が最後に見た格好と寸分違わず立っていた。

「それ…!」
「ん?じゃ行こうか。あたしとしてはさっさと用事済まして帰って寝たいから。」
「ぅう…はい……。」

二人は歩みを進めたが、奏音はちらちらと少女が選んだ服を見ているのが気になっていた。
そんなに合わない色だろうかと二つを重ねてみるがそうでもない。
もしかしたら価値観が違うのかもしれないとその視線を解釈した。
エレベーターのような物で下まで下り、外に出た。
奏音には寒いとは感じられなかったが隣の少女の体が心なしか強張った様に感じた。
寒さに対し弱いのだろうと思い、進んでいく少女を追った。

「すご、あれが目的地?なんか大きい。」
「あなたは客人ですから…車のようなものがあれば良かったんですけど。
 …相手国の方が上ですから…万一、それを見られると……察してくださいますか?」
「うん。何威張ってんだこの無礼者ーみたいな感じっしょ。」
「ええ…よかった、分かって貰えて。それから、裏の方を通りますので十分位…です。」
「あいよ。…でもさぁ、ここいら本当に豪華だけどいわゆる一般市民はどうなの?
 あたし普段から篭ってるから分かんないんだよね。」
「私達ほど良い、とは言いません。…でも、それこそ…大国みたいに極端な差がある訳じゃ…。」
「じゃ、極端な差があるね。」
「え……。」

少女は自分が言った事と正反対な事を行った奏音を見た。
自分が言った事を理解してもらえなかったのかともう一度同じ事を言うが返ってきた答えもまた、同じだった。
納得していない少女の顔を見て、奏音は言った。

「君はさ、出身どこ?詳しくなんていらないから、せめて階級とか。」
「私…は元は他国の貴族の娘…です。…祖母の代に没落し、それで、えっと…私を身篭っていた母が……逃げました。
 姉や兄がいたそうですが…おそらく……。貴族の家系…だったからか、こちらで…補佐の家の兵士……です。」
「じゃあつまり一般市民の体験はしてないわけだ。」
「はい…。」
「じゃ、差がある事は間違いない。君が例えばスラム出身だった場合は…もちろん親が、でもね。
 親だったら特にこんな思いさせたくないとか自分を正当化させるためにスラムではこうだったって言うんだよ。」
「はぁ…でも、それが…。」
「つまり、多少なり一般市民の感覚を持つ訳なんだよ。でも君は貴族。一般市民の苦しみなんて分かんないよ。
 だから、あたしは差があると思う。」
「そうなんですか…勉強になります…。」

少女は頷いた。言われる事も尤もだと感じた。
奏音といえば悪くなった道に足を取られ何度か躓き、その度に石を蹴るというのを繰り返していた。
そのまま五分ほど歩き、石造りの門が顔を出す。
深緑の苔と蔓で長い間使われていないように見えるそれを、少女は軽く叩いた。

「…マティルド様の使いです。」
「…入れ。」
「行きましょう…早く。」
「うん…ってそっちが開くの?この門じゃないの?!」

門の隣の小さな囲いが開く。
そこを頭を屈め通ればカメリアの国主が住む所の裏へと出た。
奏音がそれを眺め、景色を脳に焼き付けているうちに少女は先ほどの門兵と話していた。
マティー達がいる階層を聞き、準備の進行具合を予測する。
それからぼんやりと眺めている奏音を引っ張り、中へと入って行った。

「え…やっぱり階段な訳?!」
「あの…あまり大きな声を…。」
「あ、ごめんご。…え、あの飛ぶ奴は?」
「ここでは客人も階段を使うんです…我慢、して?」
「はい。」

少女の言葉に奏音はすばやく頷いた。
なぜ今の今まで不満そうだった奏音が頷いたのか少女には分からなかった。
だが、これで行動に移せると思い嬉しく思った。


階段を上がり、奏音が息切れで煩くなって来た頃に目的の場所へと到着した。
中では十名ほどが会場を設営しており、その中心にマティルドが立っていた。
少女が軽く礼をして入っていくとマティーも気がついたらしい。
場所を適当に任せ、こちらへとやって来た。
メンテ

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