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[3476] Differences in Peace
   
日時: 2018/10/01 13:30
名前: あづま◆8kXyVF1umQ ID:1fl2iO3A

※更新鈍足!






◎はじめに
 この小説は、私が小学校高学年〜中学二年生位の間に書いたものを
 再編集したものとなっています。
 再編集とはいっても、ころころ変わる視点を統一(三人称化)したり、発見できた誤字を
 修正する程度であり、矛盾等は修正しきれていません。
 サイトに掲載するときに更なる修正や伏線の為に完全ではありませんが書き足したりしております。

 ジャンルはおそらくファンタジーです。
 常識の無い自分勝手な人物との共同生活のような内容が主となっております。
 この物語らは時代が前後していたり、複数の舞台が出てきますが
 世界観は全て同一となっています。
 稚拙な説明で申し訳ありませんが、どうぞお付き合いください。

◎次回予告
 更新は113話まで完了。
 次回114まで予定。いつ更新できるんでしょうか。
 
◎つぶやき
 取り急ぎ一話だけ。
 無事!内定をもらえました!!2年もかかった!
 本当に面接は万死に値している。
 データが本当に見つからないんだけど、どうしよう。

◎注意
 作品の中には流血や暴力、更には殺人描写があります。
 舞台となっている世界が地球の場合は特にありませんが、それ以外の場合は注意してください。
 また、一部エロのような物もあります。
 修正こそしていますが、考えれば推測可能なので苦手な方はご了承ください。

◎サイト
ブログ
 たまに更新予定なんかが書かれています
 
◎一覧
 Strange Friends      >>1-40
  かなり適当な設定   >>41-42
 Differences in Peace  >>43-

◎絵
 レイと奏音。このコンビは動かしやすい。
 スマホでも描けるもんですね。マウスが書きやすいけど、筆圧ではこっちに軍配。
 サイズがバカデカイかも。
メンテ

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Re: Differences in Peace ( No.101 )
   
日時: 2012/04/25 18:14
名前: あづま ID:Ees/k.XA

「ありがとう、もう下がっていいわ。」
「はい…失礼、致します。」

少女が部屋から出て行き、それを奏音は目で追った。
マティーは奏音の手の中にあるそれを見て、面白そうな顔をした。
そして発された言葉にも楽しむものが隠れていないのが分かった。

「あらぁ…それ。」
「服。…割りと厚着じゃね?え、あんたこれより寒がりな訳?」
「私は平気よ。というより着るのは私じゃないからねぇ?」
「…アンリちゃんすか。」
「そうよ。あぁ、そこの奥の部屋にいるから…あと、向こうが帰るまで出ないでね。」
「なんで?!」
「向こうにスパイだと思われてひっ捕らえられるわよぉ…厄介者がいなくなるから私としては嬉しいけどねぇ。」
「…あそこの部屋?」
「そう、行ってらっしゃぁい。」

しくじったと思いながら奏音は準備をしている人達に軽く声をかけ、進んでいった。
マティーにしめされた扉を開けると此方では皆かしこまった服を着ていた。
その中ではアリーを探すのは容易な事だったが、声を出すのには幾分か憚られる雰囲気だった。
呼びかけようか一瞬躊躇しているとアリーが気づき、奏音の元へやって来た。

「やっぱり奏音か。あ、ここもう出るよ。」
「そっすか。」
「うん。奏音ってさ…登れるかなぁ?」

アリーが進み、それを奏音も追いかける。
と、勢いをつけたと思ったら壁を駆け上がり通気口のような物の中に入った。
それに奏音が唖然としているとアリーが左手を出した。

「はい、僕に掴まって良いから。」
「いやいやいやいや!え、何メートルよ?」
「んー…2メートル位来て貰えれば引き上げるよ。はい。」
「あのさ、あたしさぼり魔だったよね。ダイアナのあれもほとんど行かなかったのよ。」
「大丈夫、補助ならするから。早く、来られたら困るし寒い。」
「え。」
「はい、飛ぶ!」

仕方ないと奏音が一歩踏み出すと身体がふわりと浮いた。
そのままアリーが奏音の手を取り引っ張る。
通気口の向こう側へと着地すると寒さが波となって襲ってきた。

「……。」
「寒っ!ほんとだ、つかなんで?!」
「僕が何でだよ!よりによって女物!」
「いやなんかどうせなら着なさそうなの持ってこうと思って…。」
「…仕方ない、とっ捕まるよりいいか。あーあ…。」

不満をそのまま表しアリーは袖を通した。
そして部屋の隅に座り腰の武器を磨いていた。

「ねえ、あたしがここいる必要あんの?」
「監視。なんか男狩りに行きそうで僕は怖い。」
「失礼な…ちゃんとわきまえはある!」
「あったら襲わない。レイに突っかからない。以上。」
「ちえー…。」

論破されたように感じ奏音は寝転がった。
すると背中に違和感を感じそれを取り出すと携帯だった。
もしかしたらという期待感で電源を入れようとするがやはりつかない。
意味も無くぱかぱかと開閉するがやがて虚しさを感じやめた。

「それさぁ、似たようなの持ってたよね。」
「ん?あー…何個か持ってるしね。でもダイアナが帰るまでに使い切っちゃったから本来の役目は知らないでしょ。」
「なんだ、気を紛らわすものかと思ってたよ。使い道あるんだ。」
「ありますー。…あ、そういえば。」

奏音はアリーの正面に座った。
そして今でも数個携帯しているうちの一つ…同人用のを取り出した。
壊れても一応サイトのほうにバックアップが取ってあるという保障があるためだ。
バッテリーを抜き取り、アリーに渡す。
アリーは渡されたそれを今しがた磨いていた獲物で斬ろうとするので奏音は慌ててとめた。

「やめて!一応高いんだから!」
「あぁそう…。で、なにこれ。ごみ?」
「この子の命をごみ呼ばわりとか…あのさぁ、それに電気か雷って流せたり?」
「…できなくはないと思うよ?でも僕はそれ得意じゃないんだよ。
 薬作るのに強制的に融合させるのに使うくらいで実戦で使えるほど強いのは無理だよ。エドじゃ駄目なの?」
「エドって火じゃないっけ。」
「一番得意なのが火ってだけ。それ以外にもエドはすごいから平均以上にはできるんじゃないかな。
 僕もできなくはないけど得意なの以外は平均かそれよりちょっと劣るだろうし。」
「で、できる?」
「まぁ…弱くて良いなら。」
「あ、むしろ最初弱くしてさ、そんで駄目そうだったら強くって事で…。」
「弱くね…これ位?」

アリーが奏音の左腕を握る。
何も感じない。そう思った瞬間バチンッという音がして反射的に腕を抜き取る。
何も変わりが無いが確実に痛みを伴う左腕をさすった。

「なに…いってぇんですけど。」
「あぁうん…どれ位かなってさ。」
「一応それより弱めで。」
「はいはい。ここ触れば良いのかな…。」

アリーはぐっとバッテリーを握り、数十秒後奏音に渡した。
それを受け取ったとき、確かなあたたかさを感じた。
充電の終わったときのそれを思い出しすぐさま携帯に入れる。
ボタンを押せば、画面が白くなった。

「やったー!二つ!電源二つただし圏外!つうか三十秒くらいで電源二つ!すごくね?」
「へぇ…どんなのがうつ…っ…。」

何が映っているのか気になったのかアリーも携帯を覗き込んだ。
だが、この携帯は同人用である。
ついたという事に喜ぶ奏音はそれを暫く見せていたが反応が無いアリーを見てはっとした。

「あ。見〜た〜な〜。」
「……否定はしないよ。でも拒絶させて。」
「理解は求めない!でも…染めてあげるから…覚悟しててね、アリーちゃん。」
「なんでよりによってこれに染まるの…架空によってて楽しい?」
「煩い!あたし一応これで食ってるんだからね!
 さぁ見るが良い、わが栄光の数々を!民が平伏し我が栄光を求める様を!」
「見ないよ!」

その後しばらく、見せる見ないの無言の戦いが続いていた。





「そういえば仕事らしい仕事って奏音さん今回が初めて?」
「いやー…あれはおつかいじゃん。しかも保護者同伴…あれじゃないかな、なんとかちゃんお荷物持ってーくらいの。」
「幼稚園くらいだね、そうすると。で、持ったご褒美ってお菓子とか貰うの。」
「あー貰った貰った。ちょっと豪華なの貰うんだよ、お菓子でもチョコとか!」
「チョコくらい普通に貰えないっけ。」
「いやー板チョコ丸々一枚!ウチそれに釣られて手伝い行ってたからさ。」
「そうなんだ…。」
「うん、想良は何貰ってた?」
「えっと…。」

思わぬところで家庭環境の違いが出てきた想良はあせった。
板チョコなどは普通に貰い、むしろご褒美として大袋のものを貰っていた身としては言いづらかった。

「私はおつまみ!」
「え…。」
「ピーナッツとか、アーモンドとか!おいしいよね!」
「あ…うん、おいしいよね。」

咄嗟にあまり好きではなく父にあげていたものを言う。
今でこそ食べる事に抵抗はないが昔はあごが疲れるとごねたものだった。
奏美と想良は妙な空気になったがそれも楽しんだ。

「レイに謝りに行かないとなぁ。ウチもね、やっぱり…。」
「エドさん帰ってきてからじゃあ駄目かな?前…来たばっかりのときだっけ?
 レイさん起こって上行っちゃったけどエドさんが連れてきたんだし…それで補助具貰ったじゃん。」
「いや…あれはレイにも後ろめたい何かがあったんでしょ。今回のはウチらが全面的に悪い。」
「でもレイさんの性格だと気にしてそうだけどね。私がレイさんだったらすごい気にする。」
「ありえなくは無いけど…でも謝らなきゃぁ。」
「んー…どうしようね。レイさんデリケートだもんね、女々しいし。」
「想良ぁ…あんたもう、はぁ。」

奏美は思ったことをずけずけと言う想良に頭を抱えた。
想良は布団のはしを弄びながら、息を吐いた。
この問題はなかなか解決できそうにないというのが二人には分かった。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.102 )
   
日時: 2012/04/25 18:23
名前: あづま ID:Ees/k.XA

「あぁ、アル。…そうだな、帰り…か?」
「……」
「誰が来るのか分からないけど…まぁ、同盟締結だし。お偉いさんが来るのは枯葉でも分かる。」
「……」
「あーうん、枯葉は喋んない。比喩だよ、比喩。」

ダイアナとアルは国境付近までやって来た。
出来るだけ丈夫な木の枝に立ち、遠くを望む。
青い木々が風で揺れるが、それ以外は地の果てまで動きはなかった。
空の淡い青と木々の深い色が互いに相手を映えさせている。
そのような景色もただ退屈なだけで、思わず思考を飛ばしかけては戻す。

「……」
「あぁ。分かってる。」
「……」
「私は来たのを知らせに。アルはお手並み拝見に。じゃあ、よろしく。」

ダイアナが枝から飛び降りる。
それを感じたのか、車の周りを囲う兵士が音源にそれぞれの獲物を向けた。
だが、攻撃される様子も無い。
それに息をつき、だが警戒は持ったまま国境に近づいていく。
アルは音を立てぬよう、ゆっくりと時間をかけおりた。
それからゆっくりと、向こうの足音にあわせできるだけの距離を進む。
あと、国境まで数百メートルだろうか。
アルは一団の目の前に踊りだした。

「……」
「なんだ、お前は!」
「……」
「…。間者でしょうか?」

車に一番近い兵士が中の人物に話しかける。
その人物は何か指示したようだが、アルにはそれが分からなかった。
読唇されないよう、口元を何かで隠している。
車の人物が中に隠れた。
風が切られる音が聞こえ、それは身を斬る。

「……」
「避けたか。」
「…、…」

頬に幾筋かの紋様が出来たのをアルは感じた。
そこは熱を帯び、自然と集中力を削ぐ。
だが、削がれたのはあくまで集中力。
次の瞬間には身体が勝手に動き、痛みを置き去りにした。

「……」
「ぐぁっ…!」
「貴様ァッ、わが国に楯突くが何を意味するか分かっているか?!」
「……」

攻撃をする。防がれる、反撃される。防ぐ、そして攻撃。
何度も繰り返すがそこには数の壁があった。
向こうは十人程度が攻撃を続けるがアルはたった一人。
例えこの十人を倒したとしてもまだ車を数十人が守っている。
勝ち目は存在しない。

「っ…。」
「な、お前…殺られたのでは……?」
「いや…っつ…!」
「……」
「あぁっ軍師殿!」

頭を殴られ気を失っていた一人が目を覚まし、仲間は一瞬の油断を生む。
アルはそこをなぎ倒し、力任せに何人かを車にぶつけ、投げ込んだ。
一介の兵士が車に乗れるような人物と場を共にする。
先程中の人物と話していた者の怒号と、兵士の情けない声。
アルは重要人物を直接足蹴にしないのは情けだ、と思い兵士をける。
何かが割れる音がし、兵士が向こう側へ行くのを見届けたアルは屋根の上へと飛び乗った。
そして向こう側へと着地すると身なりが一番良い男を無理矢理起こす。
夕焼け色の髪をしており、どこかプライドが高そうだとアルは思った。
車の上にその人物と共に乗る。ぐらり、車体が揺れた。

「どこの、スパイだ。」
「……」
「口を割らないのは懸命ではない。お前は見たところ腕っ節がある。現に私がこうやってお前に捕まっているんだ。
 雇われてみないか?報酬も出そう、まずはお前が仕えるところを裏切るんだ。」
「……」
「…何か、言ったらどうだ?」

だが、言葉を発さない相手に疑問を持った軍師はその顔を覗き込む。

「そうか、お前。」
「…、…!」
「口が利けないか。成程…。しかも、先天的では無さそうだ。なにか言葉を発そうと口が動いている。」
「軍師殿……。」
「少し待ってくれ。それにリキルシアの兵士が倒れたまま入国と言うのもな。
 冷水とか、そういうのを作り目を覚まさせろ。」
「はぁ…。」

戸惑いがちな部下の言葉を聞き、軍師は目の前の人物を見る。

「何か言いたい事があるか?言って良いぞ。
 信頼を得るにはまずは話を聞き、適切な判断を下さなければならない。さぁ、話してくれ。」
「……」
「どうした?遠慮する事は無い。必要なのは金か?名声か?」

キッと睨んだアルを見て、軍師は笑みを浮かべた。
自らの服をつかむ手に力が加わり、重心がぶれ始めたのを感じさらに愉快になる。

「あぁ、そういえば口が利けなかった。忘れていたよ。」
「……」
「うーん…確かにお前から情報を聞き出すのは無理だろう。だが…。」
「!」
「目は口ほどに物を言う。…聞いた事は無いか?お前は確かに潜入に向いている。
 口が利けないから情報は引き出せない。…二流はね。」

今度はアルが捕獲される番だった。
軍師が自身とアルを結びつける。そして、今度こそ隠そうとも思わずに笑みを浮かべた。

「目を、抉り取ってみようか。」
「!…、…!」
「何を驚いているんだ。目が無ければもう私はお前の感情が分からない。
 それに…声、欲しいだろう。堪えるな…苦しみの叫びかもしれないが…出るかもしれないよ。」
「……!」
「そう、こっちを向いて。目が無ければお前は更に良い潜入が出来るんだ。
 怖がるな…褒めて欲しいだろう。お前はまだ、精神が子供だ。欲しくないか?」
「!!」

顔を背け、自分を突き飛ばそうとした目の前の人物を軍師は笑った。
こんな国境付近で戦えば両国から板ばさみになるのは目に見えている。
それがないという事はこの人物はカメリアの人間。
軍師は拘束を解き、やられたように足蹴にする。
多少は恐怖感でリキルシアの力が大きく知られると良いのだが。
丁寧に脇道に消え、だがその場から離れたいあまりかまっすぐにカメリアに向かう足音を軍師は聞いた。

「そうだな。報告され、対策に慌てる時間くらいあげよう。
 リキルシアは大国だ。余裕が無い、なんて思われないようにゆっくり行こうか。」
「しかし…。」
「あまり急ぐのは良くないからね。気を失った者、しっかりとするまで待とうじゃないか。」

軍師は車の中に戻り、腰を落ち着けた。
先ほど掴まれた所が変に皺になっている。そこを直し、車に投げ入れられた人物が謝るのを聞く。

「軍師様、よろしいのですか。」
「うん?」
「同盟、締結する必要が…?」
「どうだろう。ただ、言えるのは一つ。あの男がカメリアの人間で、独断で動いたのならば同盟は無い。
 それだけだな。資源は魅力だからある程度は譲歩するつもりだよ。」
「しかし…。」
「もういいよ。」

未だ渋る重臣を下がらせる。
軍師はため息をつき、狭い車の中で精一杯背伸びをした。

「私にも、楽しみがあるんだ。」

フェビアンは呟いた。それはフェビアン意外には聞こえなかった。





カメリア領主の館の中では、アルが伝えた物により目に見えて動揺が広がっていた。
その動揺が更に尾鰭をつけ館の中を泳ぎまわる。
そういう事に切り離された空間にいる奏音とアリーの元へもおせっかいに兵士が知らせに来た。

「大丈夫?顔青いよ、見る?」
「奏音は見せなくて良い!」
「あぁ…それで…なんでも…。」
「落ち着いて。ちょっと待って。」

今にも泡を吹き倒れそうな兵士を戒める。
アリーの言葉にすら過剰に反応し、それにため息をついた。

「多分…軍師様だ。来れたのか…そっか。」
「へ?アリーちゃん知り合い?」
「まあね。軍師様は人を動揺させるのが好きなのかな。」
「アリーちゃんも似たようなもんだよね。あたしの事打ったりさ。」
「あーはいはい。女装位ならするから黙ってて。」
「はい、チャック!」

当たり外れは関係ない、動揺を取り除くために口を開く。

「君。」
「ひぃっ!」
「…伝えるんだ。これは相手側の策だ。恐怖を煽る報告をさせ、こちらを怯ませる。
 これなら強気に出ればまず、要求は飲んでしまう。分かる?」
「はい…。」
「だが。今回は力による支配ではなくこちらは資源の提供。あちらは力の提供…かな。そして両国は情報の共有。
 もし、リキルシアがそれこそ最低限の条件しか提示しなかったらどう?リキルシアの好感があがるでしょ。」
「はいっ…。」
「うん。カメリアは外では…言うの嫌だけど領主は国民の言いなり、とも言われている。
 国民がリキルシアに好感を持てば、カメリアもイコールで好感を持つ。それが狙いだと思う。」
「へ…。」
「現状維持とか…笑わせてくれるよ、軍師様。結局はカメリアが欲しいんじゃないか。
 内部からの支配を望む…って事。アルからの報告は無視…心苦しいけどね。」
「はい…では、いって来ます。」
「うん。動揺を取り除くように。」

部屋からさって行く兵士を見送る。
これで一難去ったかとアリーは思ったが肩に手を置かれた。
本能的な予感に固まる。
目が血走り、携帯の画面を見せる奏音に後ずさった。
難はまだ、去っていない。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.103 )
   
日時: 2012/05/03 08:19
名前: あづま ID:K3IWWju6

「お嬢様方、宜しいでしょうか。」
「ミゲルさん!どうしたの、お姉さん?」
「想良…。」
「いえ、姉は元気ですよ。娘も食事を与えていますし今は女性兵が面倒を見てくださっています。」
「そっか、よかったー。」

ミシェルの娘が無事だと聞き、想良はほっとした。
奏美もをそれを聞き同じく安心したのだが、ミゲルの雰囲気に疑問を持つ。
戸惑いを隠しきれていない。
想良もそれを感じ取って、ミゲルに続きを促した。

「その…はじめに耳に入れておこうと思いまして。今、要には動揺が広がっています。
 適切な判断を下せる人間は一人でも多く欲しいですから。」
「え、国家が大混乱?」
「そのような物で…。」
「ウチら足手纏いになるんじゃない?早急に出て行ったほうが…。」
「今はまだ平気です。ただ、これが民に伝わってしまった場合は考えなければならないでしょう。」

ミゲルは伝えられた内容を二人に伝える。
二人には嘘だとしか思えない内容でも、それを口に出せばミゲルはある程度はやってのける。
これを見せられると二人は伝わってきているものは本当だとしか思えなくなった。
だが、想良がふと思い出したように言う。

「それ信じなくて良いかも。」
「へ?想良、今ここでミゲルも出来た事だよ。」
「そうじゃなくって…伝わってるのは噂。ミゲルさんは出来るけどそれが全ての人が出来るものかは私には分からない。」
「……。」
「想良、それはウチらが出来ないだけかも。」
「という事は簡単な、それこそ初歩って事かもよ?そうしたらこんなに…ミゲルさんの話を聞く限り
 慌てるのは変だと思う。どんな大きさかは分からないけど尾鰭がついてる。」

想良の確信を持った言い方に奏美も押し黙る。
ミゲルは真剣な顔で聞いており、想良は続きを話した。

「あのね、内部崩壊のために噂を流すってことがあるんだよ。国をまとめるのはほんの少数。
 でも、領民は少なくとも倍以上でしょ。」
「うん。…で?」
「例えば領民のみが国に対して蜂起したとする。でも、押さえ込まれてしまう。この押さえ込むのは軍隊。」
「そうだね。日本で言うと警察とかかな?軍じゃないけど。」
「でも、この軍隊にも噂が広がれば離反者が出る。そうすると領民にだんだん勝利が傾いていく。」
「へえー…想良、物知り。」
「軍隊も領民だからね。もちろん国を治めている人も。」

想良はからからと笑った。
この状況で笑えるのをミゲルは見て取った。
奏美はただ、想良がもたらすそれに呆然とし感服していた。

「噂ってさ、しかも正反対のは流しちゃ駄目なんだよ。ちょっと考えれば噂をもみ消そうとしてるって分かるし。
 そうすると余裕無いなって余計心は離れてくし最初の噂は噂じゃなくなっちゃう。」
「お見事です。」
「へっ?」
「想良様、貴女ならばどんな時でも冷静に対処できそうですね。」
「そんなこと無いよ、私が知ってた事だっただけ。当たってるかは分かんない。」
「先程まで要は生簀のようになっていました。魚は大きくなり、別の魚も泳ぎだし始めています。」
「そうなんだ。大変じゃない?ウチよく分かんないけど…。」
「平気ですよ。一人の兵士がこの噂の意図を説いていました。正誤は分からない、と前置きしていましたが。」

ミゲルは微笑を見せた。

「今、それに縋るしかないと一気にそれが広まっています。会談の前に落ち着きと余裕がやってくれば良いんですけどね。」
「そっかぁ、すごいね、その兵士さん。」
「いつもは愚鈍な奴なんで誰かが入れ知恵したんでしょう。」
「でも良かったと思うよ。ウチもそういうのだったら縋りたいし。」
「…正反対、じゃないよね?その噂。」
「どうでしょう…?私は又聞きですから…それも尾鰭をなびかせ泳ぎ回っているのに変わりは無いですけどね。」
「あらら…。」

想良は気の抜けた声を出した。
ミゲルはいざとなった時の通路を教え、それを二人に覚えこませるとまだ客人に伝えるといって出て行った。
数分たち、完全にいなくなっただろうという時になり想良が噴き出した。

「絶対!絶対お姉さんのところ行った!ミシェルさんの所!」
「想良…?大丈夫?」
「うん、平気平気。すっごいお姉さん好きなんだねミゲルさん。」
「そりゃ…姉弟だし愛情はあるでしょ。ウチと姉ちゃんもまぁ…うん。ね…。」
「そうなんだぁ。やっぱ一人っ子だと分からないなぁ。」

想良は呟いた。
二人は安心し、場の空気もほぐれ、少し肌寒いのを感じていた。





(成程…結構落ち着いている。だが、完全には拭えなかったようだ…。)
「軍師様、これより会談となります。」
「うん、条件は任せてくれ。悪いようにはしない。」

ここまで来るのに幾度と無くこの館を守る兵士とすれ違ったが、その目には恐怖が残っている者がいた。
単純に大国を相手にするという緊張からもたらされるそれとは種の違うそれ。
もみ消すのには時間が足りなかったのだろうというのと同時にあの男がカメリアの人間と確定する。
それから、なにかしらの伝達方法を持っている。
おそらくは筆談だろうが…無礼を働いたと言って腕を切り落としてしまおうか。
だが、その光景を思い描くとどうも吐き気がする。
最後の扉を守る兵士がそれを解くと、中には小柄な女とそれを守る数人の護衛。
自らの護衛と数を比較し、まあいいだろうと軍師は足を進めた。

「この度は…。」
「その堅苦しい挨拶はいらない。私も長旅でね、早く休みたいんだ。」
「承知いたしました。それでは、こちらがカメリアが求める条件にございます…。」

渡された紙を眺める。
条件は簡単だった。互いの国が攻められたら依頼され次第救援を出す。カメリアは見返りに…もし侵攻が無くとも資源を出す。
そう簡単に資源を提供していいのか。その思いも軍師の手の仲にあるそれを見ると急速にしぼんでいった。
貴重品である紙を使う。これには驚かされたが同時に文明が遅れているとも取れる。
裕福である、ととるか文明が遅れているととるか。
もしくは紙などあふれかえるくらいに文明が進んでいるととるか。
あとでカメリアを検分しようと軍師は心に決めた。

「条件、飲ませて頂きましょう。リキルシアが求めるものは資源と相互の不干渉のみ。」
「承知いたしました。それでは、これに名を…。」

女の後ろに控えていた男が立ち上がり、軍師の前に紙を置く。
ここでも紙を使うか、とそれを眺めた。
筆を執り、条件とともに署名をする。
それを渡し、相手側の紙も受け取った。
確認し、条件に相違が無いがふと目にとまった相手の名が気になった。
全権、ヒチョウ=パベーニュ―――
目の前の人物を見る。パベーニュ、補佐の家のもの。

「この名前は何でしょうか?」
「私の本名にございます。ヒチョウ…そう読みます。」
「ミドルネームか?」
「いいえ。私共の家では通称がミドルネーム。名の所は滅多な事では使いません。」
「そうですか。…それでは、この辺りで。互いに協力して行こう。」

立ち上がり、部屋を後にする。
ヒチョウ…どの国の…どの星の名前なのだろうか。
リキルシアに伝わる歴史を思い出していくがそれのような名はあっただろうか…。

「あぁ、そうか。」
「軍師様?」
「いいや、私の中でのことだ。」

古い時代…リキルシアが出来た直後。
雰囲気こそ違うものの似たよう名なの女がいたのを思い出した。
歴史の波に飲まれ、名と数行の業績が書かれたのみの人物。
同国…もしくはそれに近い国を祖に持つ人物が彼女だろうと目星をつけた。





「ねえ!ねえ!あれが軍師さん?!」
「そうだよ…ねえ下ろして良い?」
「やだ!わりとカッコいいじゃん!王家ってイケメン多いよねー。」
「知らないよ…ねえ僕片付けに行かなきゃなんないし。」
「えーうぉおっ!」

未だ反対し続ける奏音を強制的にに下ろす。
突然の事だったがしっかりと着地した彼女を見てアリーはつまらなく思った。
今度は通気口を通らず正規のルートで向こうに行こうとすると腕をつかまれた。

「いたっ!何…?」
「うわーアリーちゃん手ぇ硬い。やっぱ武器とか握るとそうなるの?」
「離してよもう!」

奏音の手から右腕を引き抜き庇う。
それをどう思ったか分からないが奏音はアリーに抱きついた。

「何!」
「いや…採寸。布もちょうだいね、女装。」
「これ女物だから女装だよ、はいばいばぁっ!」
「スカートじゃない!」
「スカート?いや、僕本当に行かなきゃ。マティーに怒られるから!」

だが、ぎっちりと掴んでいる奏音を引き剥がすのには労力が必要だった。
やっと引き剥がせると思った所に奏音は自分ごと蔓で拘束する。
初めて拘束されたとはいえ、蔓の気色悪さに力が抜けた。
所々についている葉が肌を引っかく。
アリーはため息をつき、少しの辛抱だと身体を奏音に任せた。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.104 )
   
日時: 2012/05/03 08:23
名前: あづま ID:K3IWWju6

「はい…終わりだからね、もう。」
「ういっす!アリーちゃん細いねー。ウエストあたしより無いんだねー死ね。」
「奏音が死んでよ。採寸ってこんなに時間かかるっけ?」
「うん、かかる。でも婿は手際良いから短時間だよ。五分くらい。」
「それが普通。ねえ、ミス?採寸するのに身体を触る必要あるかな?」
「触らないと採寸できないじゃん。」
「服の中に手を入れる必要性は?」
「より正しいサイズをはかるのに必要。」
「採寸が終わってても必要?」
「あたしの萌えのために必要。」
「…駄目だ、こりゃあ。」



埒が明かないと判断したアリーは奏音から離れその小部屋から出る。
奏音もそれに従おうとしたが、鼻の先で扉を閉められた。
チィッっと舌打ちをしたがすぐにそれは隠れた。
彼の服に忍ばせた携帯。

「なにっ…!」

壁一枚隔てた向こうで会談が行われている間充電させた携帯を入れて驚愕する。
GPSが機能していない。
なぜ機能していないのか…分からなかった奏音は慌てて部屋から出て、アリーを追った。





「…なんだ、これ。」
「分からないか?スパイめ。これからは私が兄さんを監視する。」
「いや…ここまでついてこなくて良いぞ?」
「それで仲間と連絡を取るわけか。へーぇ、そう。」
「あのなぁ…。」
「私は周りの目を気にしない。男だ女だこの国は関係ない平等な国だ。」
「……。」

マリーが手を振る。
それにつられエドの手も引っ張られ、二人の間には鎖が小さな音を奏でた。
今朝、エドが人の気配に目を覚ませばマリーが彼の枕元で笑っていた。
はっとして起きると右手には鎖が付けられ、それはマリーの左手へと繋がっていた。
頭が回らずそのまま会議の場へと行けば周りの人間には驚かれた。
そして一人が彼に耳打ちをし、この時になってエドはようやく重大さに気づいたのだった。
仲間と連絡を取ることが出来ない。
これはまだいい。もし囚われた場合の手段もあちらとは決めている。

「なあ、気にしないのはそっちの勝手だ。ただお前…分かってるか?」
「何を。」
「お前は男装しているとはいえ女。そして、俺は男。」
「ふん、私を襲うか。いいよ、別に。」
「あのなぁ…もう少し自分の身を大切にするとかないのか?」
「無いよ。」

あっさりと言った彼女にエドは黙った。
返す言葉が見つからず、ただ沈黙が続いていた。
マリーはそれを見て疑問を感じた。

「なにその反応。兄さん、こんなご時勢じゃ身を切って生活しなきゃなんない。
 あんたが浪人だとすれば戦の後に金品盗りに行ったりするだろ…よっぽど高いご身分とプライドが無い限りさ。」
「そうだな…。」
「な?私は女…金を貰うのにそう苦労はしない。ある意味私の戦が。」

二人の間の鎖が音を立てた。

「これだ。」
「……。」
「あの子が…あの子がいる時はやり辛かったけど。本来は、これが私の生き方だ。」

芯の通った強い声でマリーは言った。
そしてエドに微笑みかける。
彼の元へ一歩寄り、そして二人の間には赤が流れた。





「畜生…。」

戦のために使う道具、形だけ置いてあり新品同様の書物。
今使うとしたら小さすぎる武器。
記憶の中に、それを血で汚しながら誇らしげに語っていた兄を思い出した。
やはり殺しは好きなのかと思う。

「おい、入るぞ。」
「…ダイアナ。」
「お前なぁ、少しくらい敬ってくれても良くない?お目付け役だぞ、私。」
「はー…。」

誰が来たのかと顔を上げたものの、それがダイアナだと分かるとレイはすぐに横になった。
その態度を戒めるためにちょいと突いても、返って来たのは小さな呻き声だけだった。
相手側が来た事を伝え、とりあえず部屋に戻って国へ手紙でも書こうと思ったときだった。
見回りの兵士が客人が騒いでいる、と相方に愚痴っているのを耳にした。
なんでもあの三人のほかにレイも混ざっていたという。
詳しい内容こそ聞き損ねたが、その真偽を確かめようと部屋までやってきたのだった。

「どうしたの。あんたがここまで落ち込むって…あれ以来か?」
「知らねえ…関係ないだろ、出てってくれないかい。」
「そうだね、なんでそうなってるのか分かったら出てく。」
「お節介だ!あんたも想良も!なんで俺がここまで苦しまなきゃなんねえのさ!」
「何、想良と喧嘩?あんた年上だろ、少しくらい譲ってやんな。」
「俺は悪くねえ、あいつが勝手に口出して滅茶苦茶にしていきやがったんだ。」

くぐもった声で吐き捨てたレイを見てふっと笑いがこみ上げてきた。
だが、ここで笑うとどうなるか分かっているダイアナはそれを飲み込み、彼を見る。
枕に顔を押し付け、呼吸で僅かに身体が上下する意外には動きが見られない。
刺激してはいけない、と言い聞かせ口を開いた。

「じゃ、私が師として一言言ってくる。何が不満なんだ?」
「別に…。」
「そんなんじゃ駄目。嫌だと思ったら当り散らさないでちゃんと相手に言う。」
「いいよ…別に。あいつ、謝ってきたし。」
「ふーん…要するにお前が許せてないと。頭じゃ分かってても意識が許してくれないか。」
「しらね。」

レイは短く言い切りもう話す事は無いといった雰囲気だ。
大方図星でも疲れたのだろうとダイアナは推測し、そろそろ冷えてくると伝え部屋を出た。
彼の口ぶりからは何が原因か探る事ができず、想良に話を聞きに行こうと歩き出した。


「やあ。」
「わぁっ、ダイアナさん!びっくりした…どうしたの?」
「ん、ちょっと話しようと思って。奏音は?」
「姉ちゃんならお使い行っちゃったよ。」
「そうなの。動かないのに動いたのかぁ。」
「う…姉ちゃんのイメージがとことんニートになってる…。」
「でも奏音さん自称してるし良いんじゃないかな。」
「そうだけどー…やっぱニートはなぁ。」

奏美は姉に付きまとう妙な評価に苦笑した。
家族の中では稼ぎ頭になっているとはいえ真面目にやっている訳ではない。
はっきりと肯定できないがかといって否定も難しいので曖昧に笑っておいた。
ダイアナはニートと言う言葉は良く分からなかったが、ろくでも無い物なのだろうと目処をつけた。

「それでダイアナさん、話って何?奏音さんいないと出来ない?」
「いや、出来ない訳じゃない。まああいつには私が言うか、なんか恐れられてるみたいだけど。」
「あー…。」
「心当たりあるだろ。で、話。レイがなんかぼしゃってるけどなんかやった?」
「あ、それ私かな…。」
「うん、想良がーって言ってたな。」
「やっぱり?あー…もう一回謝りに行かないと…。」

想良が気まずげに顔をそらした。
その目は戸惑いを隠せておらず、罪悪感があるのを見て取れた。

「なにやったの?」
「えーと…レイさんは奏音さんの事好きなんじゃないかなぁって思ってね。
 それでくっついたらいいなぁ、なんて行動したら物凄い傷つけちゃったみたいで。謝らないとなぁ。」
「あぁ…そうなの。」
「あれ、思ったより驚かないの?ウチだったら凄い驚くんだけど。」
「そうだねぇ、でもダイアナさん結構冷静だしカッコいい大人って感じだよね。」
「ありがと、想良。何もでないけど。」
「期待してないですから。」

笑みを浮かべながら言った想良にふと思い当たった。
想良は思ったことを隠さず言う。その割りに奥に隠した心理を言い当てたりする事が多い。
それが彼女の持って生まれた才能なのか分からないがこれが原因だろうと思った。
ダイアナが話しかけないからか目の前で奏美と談笑する想良を見て、
彼女の才能と同時に最大の欠点であろう物を手に取った事が分かった。
自分はもちろんマティーが興味を持ったのも頷けると思い、奏美のそれはなんだろうという探求心が首をあげた。
メンテ
Re: Differences in Peace ( No.105 )
   
日時: 2012/05/12 05:08
名前: あづま ID:hC4E5Wt2

「ま、あいつは頭では分かってるみたいだし気にしないでいいよ。」
「え?でもやっぱり私が色々やっちゃったから…。」
「想良…まあ、姉ちゃんと付き合ってもそうそう良い事無いと思うし。
 漫画のモデルやらされたり感想聞かれたり、もし本当に好きなら浮気に耐えなきゃいけないだろうし。」
「あぁ、レイさん潔癖っぽいし浮気なんてされたら死んじゃうかもね。」
「想良…縁起でもない…。」
「まあまあ、他人から見たほうが案外正しい事もあるもんだよ。
 レイだって死にゃあしないだろうけどいつまでたってもぐちぐちしてるだろうなっつうのは予想できる。」
「やっぱりそう思う?レイさんなんか女々しいなぁって思うし。
 あ。そういえばダイアナさんはあの人達とどれくらいの付き合い?なんかえっと…絵、みたんだけど。」

前半に毒を忍ばせつつ話題を切り出した想良に一瞬言葉に詰まる。
言って良いものかと考えるが、想良の隣に奏美を身を乗り出してきたことで逃れられないなと判断した。
といってもいつからというのはあまり覚えていない。

「あーとね…もう十五年前か?うん…多分そんくらい。私の出身国を脱走して…で、ここに流れ着いたってだけ。」
「え?」
「まあ、元が良い国だったからかここに置いて貰ってるけど。」
「そうなんだぁ。でも多少は放浪したんでしょ?私も一人旅ってやってみたいけど怖くてねー。
 ここの世界だと日本で一人旅ってなんでもない気がしてきたけど。」
「想良、ここは自給自足じゃん?日本だったらお金ないと駄目だから辛くない?」
「理想論、理想論。で?」
「でって?」
「だから、放浪中にはどんなことしてたかなって。」

想良の声色からは期待が溢れていた。
先ほどの彼女等の話から言うのには相応しくないのではないかと一瞬躊躇が生まれる。
だが、この世界を知ってもらうには仕方が無いだろうとすぐに結論が出た。
ダイアナが躊躇う必要は無く、それをどう受け取るかは目の前の二人に任せることだった。

「人斬りしてたよ。」
「え…。」
「何驚いてんのさ、奏美。この世界はそういう奴だよ。ま、斬るだけで殺したかどうかは分かんないけど。
 金品盗って、退散。それを闇業に売って生活が主だったなぁ。」
「な…なんか盗賊?」
「あー…まあそんなんかな。で、マティーらの母親…に、斬りかかろうとして逆にやられた訳。
 ただ私が出身国言ったら特別にカメリアに仕えるのを条件に許してもらえたって感じ。」
「や、やっぱりみんな殺すんだ…。」
「……。」

奏美の顔には影が写った。
一瞬のことではあったが、人の生命に関することでは必ず浮かぶ。
想良は奏美とは反対に顔には希望を浮かべ、ダイアナの話に聞き入っていた。
同じように見えて正反対な二人をダイアナは見た。

「奏美、ショックな事かもしれないけどよく聞いて。この世界はみんな、それこそ小さい頃に死なない限り殺人をする。
 よっぽど上流階級の人…戦に出ない人でもだよ。」
「うん…。」
「私は脱走して生きる為に初めて人を斬った。十二歳だったと思う。…奏美と想良と同じくらいだね。」
「じゃあ…あの、他の人も……。」
「そう。エドは八歳、レイは…十六だったかな。アリーは八歳、マティーは九歳。」
「あれ、エドさんも八歳だったんだ。」
「想良は知ってたの?」
「知ってたっていうか…エドさんがアリーが初めて人を殺したのは八歳くらいだよって。」
「そうなの。どういう脈略でそうなったかはいいけど…。」

浮かない顔をしたままの奏美に苦笑し、ダイアナは部屋を後にした。





「あんれぇー?」
「どこの者だ、お前。」
「いや、この縄は?」
「言ってくれ、お前はどこの人間だ。」
「へー…?」
「間者、か?そうなのか?」
「あの…そういう目で見てもね、君既にあたしを縛ってるよね。」

アリーを見失い、勘のみを頼りに歩いていた奏音は突如、捕えられた。
部屋に引き込まれ、何かがはじけるような音と次の瞬間には後ろ手に縄で縛られていた。
腕を軽く動かすだけ重く感じるそれをただ憂鬱に見ていた。

「スパイ…なんだろ!」
「あたしは違うと思うけど。一応、あそこ…ま、マティ…マティルド?の所にいるし…。」
「パベーニュか?」
「なにそれ。いやよく分かんないけど。」
「茶色い髪の女…ここで条約を結んだ女のところか?」
「あぁ、うん。マテーちゃん。」
「そういう呼ばれ方は初めて聞いた。…失礼をした、解くよ。」

目の前の青年は奏音の後ろに…という事はせず指を鳴らした。
すると今の今まで奏音の腕を拘束していた縄が生を失ったように解ける。
それで先程のはじける様な音はこれだったのかと奏音は納得した。
血が止められていた事により少し痺れが残る腕を軽く振り、奏音は青年を初めてじっくりと見た。
今まで…こちらの世界に来てから、多くの人と出会ったと思うが彼は誰にも似ていないようだった。
ただ、整頓されながらも高貴なものを漂わすその部屋。
そして栄養が行き渡っていると見える彼の身体から、一般市民ではないだろうというのが窺えた。

「えと、君は誰すか。」
「僕…か。なんだろうね、僕は僕…てしか言えない。」
「いや…名前とかさ。」
「名前なんて無いよ、僕は人でいられないから。」
「はいぃ?」
「そ、そんな顔しないで!本当なんだ、仕方ないんだ!」

人でいられないという意外な発言に思わず奏音は凄むような声を出してしまう。
それに青年は過剰に反応し、つい先ほどまでの健康そうな顔色から一気に青白くなってしまった。
自然な動作ではあるものの、倒れないようにとテーブルに添えた手が震えている。

「いやま、訳有りってことでいいけどさ。」
「そ、そう…?よかった、信じてもらえないって思ったよ。」
「そう?まああたしが疑った所で嘘を見破れないと思うしさ。」
「ふーん…あ、あ…。」
「ちょ、ちょちょちょ!大丈夫?」

緊張の糸が途切れたのか青年は膝から崩れ落ちた。
奏音が助け起こそうとするも腰が抜けてしまったのか立つ事は出来なかった。

「仕方ないなぁ、君細いし平気っしょ。」
「え?何?」
「失礼〜。」
「なに、な、うわああ!」

青年を抱え、一番近くにあったのがベッドだったのでそこに下ろす。
とりあえず一仕事終えたと一息ついた奏音が顔を覗くと、青年は顔を背けた。
だが、一瞬とはいえ見えた顔に奏音は愕然とする。
頬は赤く染まっており、目には涙を浮かべていたのだ。
なぜそうなってしまったのか理解できない奏音はその場に立ち尽くしていた。

「…の。」
「はい?てか何そのはんの」
「無礼者!僕が、僕が何者か知っててやってるのか?知らないでやってるのか?」
「えー?」
「僕がいつ女を、っ!いつ嫁が欲しいと言った?」
「はい?」
「大体!僕はもう嫌なんだ!…っ、その身体で…おと、男を!」
「あー…?」
「何人?!」
「いや…まじ何?あ、シャメ…いや、動画かな。」
「ぎゃあああぁぁぁぁ!」

青年が叫んだのと、何かの小瓶を倒したのと奏音が構えた携帯から電子音が鳴ったのは同時だった。
画面の中でがくがくと震えている青年が映っている。
じわじわと色が変わっていく布団とその原因を作った青年を同時に映しながら奏音は口を開いた。

「大丈夫?それ、着替え…。」
「うるさい…いや…僕は死にたくないんだ……。」
「いや、殺さないですけど。いや、ホント着替え平気?」
「え…僕を、殺さないのか?」
「いやだって殺す理由ないし。」
「本当か…?よか、あぁ…ぅぁ……。」
「泣かれるとか…あたしどんだけ男に泣かれてんの?いや、泣かしてるのか?」

言葉になっていない物をもらしながら顔を覆っていた手を下ろした。
奏音は布団を濡らし、もう空になってしまった小瓶を立てた。
それを目の端で見ていた青年は初めて自分の惨状に気付き、顔を伏せた。
メンテ

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