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[1371] MH共同小説《元老院》 【奪還計画・第一次クエスト投稿開始】
   
日時: 2015/01/03 21:55
名前: 竜野マナ◆6NYt3yxTts ID:nEb9d7N.

共同小説では、物語の進行や、問題の改善等を円滑に行なう為、二週間に一度、土曜の夜にチャットにて会議を開いております。
共同小説参加者の方々には、なるべく多く参加して頂きたいと思っておりますので宜しくお願い致します。
もしご参加いただけない方がいらっしゃいましても、決定事項等はこちらにレス致しますのでご安心下さい。




会議予定日  ‐月‐‐日

 会議の開始時刻は原則20:00、終了時刻は延長込みで1:00となっております。
 場合によっては緊急会議として日程外の開催がございますので予めご了承ください。
 なお、奇数週の土曜日に『アウフヘーベンオールスター座談会』が有志によって開催されます。
    ↑もちろん例外もあります

 現在会議場が使えませんので、会議は無期限延期となっています。
 議題等ありましたら元老院への投稿をお願いします。

http://dqm.s198.xrea.com/patio-s-boshu/jump.cgi?http://www19.atpages.jp/ryuno/
こちら会議の議事録です、参加出来なかった方ご確認ください

※現在の議題


 元老院の一新に伴いまして、時間を大きく飛ばし物語を新たに展開していく事とします。
 同様に管理者もHIJIRI様に代わり竜野マナが務めさせていただきます。未熟で荒が目立ちますが精一杯やらせていただきますので、よろしくお願いいたします。


 新章開幕編のエピローグを投稿させていただきました。
 ですので、新章開幕編に属する全ての話の投稿をお願いいたします。
 (もちろんその頃パラダイム辺りは書き足してもいいんですよ?)

発表【予定】作。


 新章開幕編

>>91【×劇開幕】
>>118【流れた先】

>>119【×劇 第一幕 躍動】
>>126【奇妙な三人組と一匹の一歩目】
>>175【駆け抜けろ、アウフヘーベン】前
>>196(タイトル未定)
>>176【駆け抜けろ、アウフヘーベン】後
>>204【×劇 二幕へ向けての打ち合わせ】
>>285【UM2.5 透明な毒】
>>228【MISCAST】
>>271【好きこそ物の上手なれ】
>>273【×劇二幕 実行】

>>246【不穏な影】

ジュリコ・ウヴング・アリス隊
>>253【by oneself】
>>278【スローダンス】
ハイド・オルガ・シャルト・ワンフェ隊+イーサン
>>267【その声は、誰が為に】
>>275【要注意危険人物】
上記2隊、合流
>>302【Black and White,Red or Blue】
ラクウェル・プリメラ・アヴァランチ隊
>>291【道程】
上記3隊、合流
>>322【ラクウェル・リーフレスの頑張り】
>>334【Quorthon】
>>340【目標確定。作戦名未定】

その頃パラダイム
>>337【笑みに雪解け】
>>345【ノイラーツ】

>>418【ラットレース】

アリス・グリゼルダ・アヴァランチ・シャルト隊
>>356【混ぜるな危険】
>>366【燃える炎はただ蒼く】
>>369【猫の手と鎮魂歌】

ハイド・オルガ・ジェリコ・ウヴング隊
>>378【In Motion】
>>405【薄明】
>>440【ARIA】

ラクウェル・ワンフェ・プリメラ隊
>>379【BAD END】
+バイン
>>383【Sugar Face】

作戦後
>>385【蛇さんは、言いました】

>>432【嗚呼、メテオールよ永遠なれ】
>>441【reconnaissance】

>>463【戦いの礎】

>>477(タイトル未定)

ワンフェ・ジャン・アヴァランチ・ジェリコ隊
>>479【化物】
−ジェリコ
>>493【竜王vs三本槍】

オルガ・プリメラ・ウヴング・ハイド隊
>>500【アウフヘーベンの外周から】
+ジャン・アヴァランチ・グリゼルダ
>>521【内部争闘】

>>529【刻む一歩目】

 新章開幕編、終了!


>>414【敗者復活戦【序】】

>>516【知恵者】

>>496 時系列順に、全部、見たい人はこちら

>>7 【WANTED MONSTER】一覧



>>264 議題挙げテンプレ
    水無月様作です。ちょっと心に引っ掛かった事でもどんどん話し合っていきましょうw

>>2 キャラクターの現住所一覧です。執筆の一助としてお使いください。
>>3 『アウフ平原』についての説明です。

 ※水無月様作・新章の助けです。ご活用ください。
>>93 【アウフヘーベン奪還計画書】
>>130 現在アトレナ達が拠点としている街『パラダイム』
   及び開拓計画の裏側
>>210 元老院が新たに始めた別の開拓都市プラン
>>326 今の所決まっている話の【書き手募集&確認】
>>193 アウヘベ……というか、共同小説における言語について

>>401 無記名様による常駐モンスターの一覧です。ご活用ください。 更新しました
>>331 同じく無記名様による奪還組一覧です。ご活用ください。

>>346 鳳様によるノイラーツ・元老院の思惑まとめです。
    ネタ募集中だそうです。ご活用ください。

>>387 HIJIRI様による元老院からのアンケートです。

>>188 『アウフヘーベン悲喜交々』 瑠璃色様管理の新企画です!

http://www49.atpages.jp/clingapathy/
 水無月様作、キャラクターステータス一覧です
 参加したい方はこちら→ >>270

   *アンケート一覧*

【とても重要なアンケート】


【実は気にしなくてもいいアンケート】現在募集なし
>>199 【回答期限切れ・結果集計済み】

*アンケートの回答期限は次回会議まで。期限は原則、延長しない。
*回答人数の目安は8人とし、それ以下の場合のみ「元老院の総意と言えるかどうか」と期限時の会議で決定する。



未発表の作品については、皆様意見を求めておりますので、こうしたらどうだろうか、ここに誤字がある、などの指摘、注意等して差し上げてください。



>>1 キャラ投稿用テンプレート


新章より参入&帰ってきた方々  !投稿をお願いします!

>>112 アヴァランチ・ウィンザー
>>129 紗綾・フローベル
>>151 ハイランド=リード=サンベルト
>>212 J・D・ボールマン
>>251 イーサン・バートリ
>>332 アイリス・デンファレ・スターチス
>>336 ツキミ・シャウト
>>428 ココネ・ジェファーソン
>>352 ロット・エィポス
>>534 夜

>>301 寿 飛燕 (とアウヘベ住人達の話)


 素晴らしい絵師様達のサイト

http://knightp.take-uma.net/

http://ruriirogallery.hanamizake.com/
メンテ

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Re: MH共同小説《元老院》 【奪還計画・第一次クエスト投稿開始】 ( No.531 )
   
日時: 2014/05/22 17:57
名前: HIJIRI ID:YAOqHhuQ

 
「今度は私の番だな」
岩場を登り、隙間に身を躍らせて落下するという派手な登場を果たした私は、全身に力を込め、後ずさりしないように踏ん張りながら言った。
 

「……何の話だ?」
触れ合うくらい近い距離から、囁くような声が聞こえた。今にも消えてしまいそうな声だが、消えていない。生きている。
 

「メタ発言ではないぞ、順番の話だ。今度は私がお兄いを助ける番。ということさ」
大口を開け、牙を突きたてようとしている眼前のドスゲネポス。その牙に今にも貫かれそうだった真後ろの飛燕兄。
間に立っている私は柄にもなく力技で敵の攻撃を受けている。
 

「お前を助けたことなんてねーよ」
ドスゲネポスが押す力を弱めた。私にこの場所を教えてくれた夜が、背後から矢を三本放ったためにだ。
背中に矢を三本射られたドスゲネポスは怒りのままに振り返り、隙だらけになった首筋を私のゴールドマロウに切り裂かれ、
派手に血を噴出しながら地に崩れ落ちた。
 

「飛燕兄からすればそうだろうが、私としては助かったんだよ。それとも何か、俺は助けたつもりがないからお前に助けられる理由もない。
などと冷たい事を私に、妹に言うのか? そんなことを言われては泣いてしまうぞ」
 

振り返る前に顔に付いた血だけは拭いて、兄に笑いかけた。飛燕兄は右の目をタオルで隠している。
そこにはかなりの量の血がにじんでいて、出血の多さを物語っていた。更に左足が不自然に腫れている。
貧血を起こしているのか顔色は悪くやつれても見える。しかしそれでも表情は笑顔だった。
 

「いや、そんなことはない。後丸一日は誰も来ないと思ってた。助けてくれてありがとう」
お礼を言われたので、私は満足してうんうんと頷いた。岩場の外ではゲネポスの群れによる怒号や悲鳴が聞こえる。
夜が戦ってくれているのだろう。最初のドスゲネポス以降ここに侵入してくるゲネポスはいない。
 

「竜車の用意もある。飛燕兄は歩けなくて構わないのでとりあえず傷の手当だ」
武器をしまい、言いながら飛燕兄の頭に手を伸ばす。軽く抱きしめてからタオルを解くと、
右目に大量の血が入ってしまった為にか、眼球が真っ赤になっていた。即頭部にも擦過傷があり、耳の辺りが腫れている。
 

「男前が台無しだな、脚も折れている」
「両手が無事なら脚も目も仕事に関係ねえよ」
「隻眼片足の鍛冶屋か、まるで妖怪だな」
傷口に薬を塗り、上からガーゼを張る。眼帯の用意はなかったので汚れたタオルの代わりに右即頭部から右目にかけて包帯を巻いた。
折れた脚は装備品のレギンスがそのまま添え木代わりとなるので包帯で固定し、水を飲ませ処置終了。
 

「らしくもなく狩場などに来るからこんな目に遭うんだ」
「説教するなよ。お前だってらしくもないことしてるじゃねえか」
「私が人助けをする事がそんなに意外か? 私は本来心優しい女の子だぞ」
「それは知ってるよ、そっちだ」
 冗談で言ったことを当たり前のように肯定されてしまい、少し照れる。照れながらも振り返ると、そこには確かに私らしくもないものがあった。
 

「そうだな、お蔭で体が重くてしようがなかったよ」
そこに立てかけられていたのはゴールドマロウの盾。デッドウェイトであると、身に着けることを拒否していたものだ。
しかし、あれのお蔭で先程のドスゲネポスの牙を受け止める事が出来た。
 

「私一人でクエストに出かけるのであれば今でも必要がないものなのだが、今日は仕方がなかったのさ。
昔、盾だけでも剣だけでも人は守れないとどこかのお人よしに言われたことを思い出したものでね」
そう言うと、飛燕兄がへらへらと笑った。腕を伸ばし、私の頭を撫でる。私はそれに抵抗しなかった。
 

「さて……」
 

取り合えず発見保護までは終わった。次はこれからどうするかだ。夜は早くもゲネポス達を追い散らしたようで、戦闘音は無くなった。
しかし、それ以外に近づいてくる音がある。
 

「先程のディアブロスが近づいてきた」
戻ってきた夜が、そう端的に報告する。猫どもはと訊くと、全員が岩場の前に集合しているとの事。
 

「上空に飛竜の姿は見えたか?」
「一頭。旋回して地上の様子を伺っていた」
頷く。猫の半分を岩場の上に登らせ、残りの半分にはディアブロスが現われた時の足止めを頼むと、夜は何も言わず岩場を出て行こうとした。
 

「助かった、ありがとう」
そう言ったのは飛燕兄、それでも夜は無言だったが、一度だけ振り返り、投げナイフでも放つような手つきで飛燕兄に何かを投げて寄越した。
 

「何を渡された?」
「携帯食料だな」
 覗きこんでみるとそこには確かに、飾り気のない携帯食料があった、食べやすいように袋が破られている。
 

「夜も相当可愛いな」
「異存はないよ。今回も唯一、私が何か言う前に協力してくれた。私と同じで一皮向いてしまえば単なる女子ということだろう」
言いながら、ゴールドマロウの盾を飛燕兄の尻の下に敷いた。
両端に紐を結びつけ、その紐を咥えて岩場をよじ登る。よじ登ったところに猫が十五匹ほどいた。
 

「ゆっくり引き上げろ、丁寧にだぞ」
指示を出してから再び岩場に身を投げ、着地する。飛燕兄は何が起こるのか理解したようで紐を両手で掴み上を見ていた。
ゆっくりと、兄い兄いの体が浮く。それと殆ど同時にディアブロスと夜達の戦闘が始まった。
とにかく飛燕兄がこの場を離れるまでの時間が稼げればいいので、五分ほど釘付けにしてくれれば十分だ。
 

万一飛燕兄が落ちてしまった時の為に、下から追いかけるように岩場をよじ登る。無事運び出しが終了し、上空を眺める
。少し曇ってきたようで、空に何か生き物の姿を見つけることは出来なかった。私はたいまつを取り出し、火を点け、空に8の字を書くように振った。
 

「これからどうするんだ?」
「竜車を呼ぶ。飛燕兄は安静にしていてくれればいい」
「呼ぶっつっても岩場には登れないだろ」
「登れなくても降りては来れるさ」
 

空に、何かが見えたような気がした。私が点を確認した直後にはその点は輪郭を確かにし、
数秒後には、それが飛竜、リオレウスであることをはっきりと認識できるようになった。
 

「……おま、たせ」


アウフヘーベンが誇る運送屋シャルト・ユグナリアが、自らの使役するリオレウス、アロンから降りてきた。
四人程度なら人間を乗せて移動できることも既に実証済みだ。私達は私達が乗ってきた竜車に乗って帰るので、乗客は二人、
加えて、兄が大怪我をしてまでかき集めた鉱石。アロンならば余裕だろう。
 

「ごめん、なさい……見つけ、られなかった」
降りてくるなり、シャルトは申し訳なさそうに私に頭を下げた。釣られてアロンが神妙な表情をしているのがいささか滑稽で面白い。
 

「とんでもない。アロン君が見つけられないということは、直接上空から見つけられる位置にはいないということだ。
お蔭で私達は洞窟や木の下などを重点的に探す事が出来た」
お世辞を言っているわけでも、慰めているわけでもなく事実を言う。
色々と協力者を募りはしたが、結果としてはシャルトとアロンの存在が一番大きかった。
 
「では、急いで連れ帰ってくれ、右即頭部と瞼、左足膝、脛、足首の辺りが患部だとシュシュ先生には伝えて欲しい。脚は恐らく折れている」
「わかった」
 
飛燕兄がアロンに乗せられ、砂漠を後にした。これでようやく目標達成。後は私達が無事に帰ればいい。
私達のうちの誰かが多少の怪我でもすればきっとあのお人よしの兄は悲しむだろうから。
 

「ん?」
「……終わった」
さっさと終わらせようと、気持ち的に腕まくりをしていると、夜が岩場を登って現われた。
「まだ戦闘が続いているようだが?」
質問をしている間に、他の猫どもも続々と岩場を登ってやってきた。全員が全員、既にクエストは終了したものだというような表情をしている。
 

「ジャン・ラウルが来た」
「ああ、成る程」
 

それはもう終わったも同然だと同意する。あのラングロトラを狩猟し、自分の足でここまで来て、
そしてディアブロスとの連戦を行っているのだと考えるとすさまじい体力と戦闘力だ。
ヘビースモーカーであるくせに、彼の体力が尽きたところを私は見た事がない。
 

「では撤収だな」
言ってから、私は親指と人差し指で輪を作り、指笛を吹いた。
音は乾燥した砂漠に響き渡り、私達が竜車を置いたベースキャンプにも届いただろう。


「暇つぶしに賭けないか? 竜車が来るのと、ディアブロスが逃げるのと、どっちが早いと思う?」
「後者……」
 

同じ意見なので、賭けは成立しなかった。
メンテ
Re: MH共同小説《元老院》 【奪還計画・第一次クエスト投稿開始】 ( No.532 )
   
日時: 2014/05/24 15:03
名前: HIJIRI ID:g7bp5MWI

 

「なるほど、謎解き編として、最後は私の番となるのだな。ああ、この発言はメタ発言というやつだ。
不満がある者は遠慮せず私に苦情の言葉を投げかけると良い。それで私が反省するかどうかは分からないが言うことは自由だ。 
確かに、今回のクエストでは幾つか不自然且つ、説明不足な点があった。それらを時系列順に説明することはあってもいいだろう。
単なる蛇足になってしまうかもしれないし、訊きたくもない話になるかもしれないので不要と思うものはここで話を終えるといいだろう。
 

まずはグリゼルダ・ウィガロがアウフヘーベンにおいて最初にしたことから説明を始めようか。
ああ、ここからは登場する人物全員を便宜上敬称抜きのフルネームで呼ぶのでそう思ってくれたまえよ。
そもそもグリゼルダ・ウィガロは寿飛燕がアウフヘーベンを出立する以前から不安を感じていたようだ。
それでも出かける先が街から近い場所であり、モンスターも大して強い固体はいないという理由から止めきれずにいたのだろう。


そのグリゼルダ・ウィガロが私のところに来たのは寿飛燕がアウフヘーベンを出てすぐだ。何故か? 
我々が実は深い友誼を暖めていたというわけでは勿論ない。私の能力を買ってのことだ。私のところには色々と情報が集まるのでね。
現在、寿飛燕が向かっている場所に現われる可能性のあるモンスターを、情報と私の経験とを照らし合わせ解析してみたのだよ。
結果はそうだな、予想していた最悪の少し上。といった程度だったかな。
それでも古龍が現われる兆しはなかったのだから幸運な方だ。と思う私は異常だと思うかな?
 

グリゼルダ・ウィガロがアウフヘーベン上層部の人間を鈍重であると判断したのはある意味で正しい。
とはいえ、それはアトレナ・フィー・クレアトルを始めとした諸兄が愚かという意味ではない。
責任があり義務を負う者はそうならざるを得ないのは世の常だ。その点私は権利だけを抱えて義務も責任もない立場であるからな。
自らの好奇心に従って行動が出来たわけだ。
 

それから私は幾つかの入れ知恵をした。まず正式にクエストを発生させ、正しく狩場に向かう体裁を整えること。
これに従い、グリゼルダ・ウィガロは工房へ行きジョウにクエスト依頼書を書かせることに成功したわけだ。
夜という探査能力に優れた仲間を得たのは僥倖であったな。そしてその間に、私は幾つかの手はずを整えた。


一つ目がアイルー及びメラルーの召集。二つ目が寿飛燕遭難地点の算定。そして三つ目はシャルト・ユグナリアへの協力依頼。
三つ目に関してはグリゼルダ・ウィガロ、ジャン・ラウル、夜の三人が出発した後に行ったことだ。
あの時、シャルト・ユグナリアはアウフヘーベンにいなかったので誰かが状況を伝える必要があった。
しかし帰って来さえすれば飛竜の移動速度はアプトノスの比ではない。
場所のみを教え、人間一人を連れて帰ることの出来る準備さえしてもらえばそれで事足りる。
都合よく沸いてきたアイルーや飛竜の理由はこういったところだ。他に何か質問はあるかな?
 

私が協力した理由? ああ、それは単純だ。先程も言ったが単なる好奇心さ。
中々に興味深い事案だったのでね、後で事の成り行きを全て私に話すという条件でもって手を貸すことにした。
寿飛燕がどのような状況で怪我をしたのかも、ジャン・ラウルがいかにしてモンスターを討伐したのかも知っている。
聞きかじりの知識で、実際に戦った人間が感じたものの何割、いや何分読み取る事が出来たかわかったものではないが、それでも満足しているよ。
 

話すべきことは終えたと思うので言わせて貰うが、私も同じようなことを思ったのだよ。グリゼルダ・ウィガロに対してね。
何故、君はそうまでして寿飛燕を助けたいのかねと。返ってきた答えは理解不能で、実にロマンチックだったね。
曰く『妹が兄を助けるのに理由が必要な世界に私は生きていない』だそうだ。君達は本当の兄妹ではない。
などと無粋なことは言わないが、なぜこうも短時間に強い繋がりを得る事が出来たのかは訊いておきたかったね。
夜とは話をする機会がなく、今後も訊けそうにない。ジャン・ラウルは友達ですし、一応報酬も貰っていますから、
と真っ当なことを言っていたな。意外と、と言っては失礼だが彼は実のところ大人であるな。
ジョウやシャルト・ユグナリアは心情がどうあれ生活の為に行ったことだ。訊くには及ばない。
 

さて、ここまでで私は君に訊かれた質問には答えただろう。ではこれから、私の質問に移らせてもらう。
その前に、又私から幾つかの補足説明が入るが必要なことなので良く聞いてくれたまえよ。


皆の甲斐甲斐しい働きのお蔭で寿飛燕の命は助かった。だが寿飛燕は右目の視力を失い、左足の機能もまた失われた。
精神的なショックも大きく、これによって我町アウフヘーベンの生産能力は著しく低下したと言える。
そもそも、このような事が何故起きたのか君に分かるかね? 鉱石の在庫が尽きたから。その通り。
ではなぜ鉱石の在庫は尽きたのだろうか? 入荷が滞ったから。そうだ。
ではなぜ、入荷が滞るような事が起きたのだろうか? 偶然。なるほど、嫌いではない答えだ。
 

アウフヘーベンの上層部が行っている行政は堅実かつ効率的なものだよ。陸路、空路を使って物資の輸送は確実にしている。
所謂インフラ整備というものだ。百万都市を目指すとしては脆弱極まりないが
現状小村程度の規模でしかない街にとっては十分の域を超えた物資の供給が行われている。
鉱石などといった基本的な資源の入荷が滞るなどということは有り得ない。
 

ここまで話したところで、アトレナ=フィー=クレアトルは合点がいったようだったよ。
ハイランド=リード=サンベルトやアリス・フォン・ルスクリア、グリゼルダ・ウィガロはもう少し早い段階で気がついた。
律・黎明は寿飛燕が鉱石を探す為にアウフヘーベンを出立した。という辺りで全てを理解し歯噛みしていたがね。
夜やジャン・ラウル辺りも既に事の真相に達しているかもしれない。
 

さて、質問を繰り返そう。偶然でなければ何故、今度のような事が起こったのだろう。偶然でない。つまり?
そう。必然。では必然に起きたことなのか、必然として起こされたことなのか、どちらだと思う? 答えは後者だ。
ここまではいいかな? ここまでの話と、これからの話を、君は理解しておくべきなのだよ。
時間が欲しいのならそこにコーヒーを淹れてある。一息入れると良い。私の分も注いでくれると尚良い。
 

ありがとう……ふふふ。美味くないな。香りも味も薄すぎる。私は客をもてなすことが不得手だ。
この話自体が一つのもてなしだと解してもらえるのならありがたい。
話を本筋に戻そう。今回起こった騒動が必然のうちに起こされたものであるのなら、自ずと二つの疑問が湧きあがる。即ち誰が、何の為に、行ったのかだ。
 

誰が行ったのか、これは個人の特定は出来なくとも立場を推定することは容易い。
アウフヘーベンに成長してもらいたくない。という者達だ。目的も今言ってしまったな。
アウフヘーベンの足を引っ張ること。それが目的だ。寿飛燕個人をどうこうするというところまでは考えていなかっただろう。
ただ一石を投じてどのような波紋が広がるのかを眺めていたのだ。
今回は、結果として工房の棟梁が再起不能という結果を生み出した。今頃黒幕は小躍りしているだろうな。
工房が使えなくなったとあればこの街のハンター達は武器、防具のメンテナンスを行うのにわざわざノイラーツまで出向かなければならない。


アウフヘーベンがノイラーツやパラダイム。ないしは元老に泣きつくような事があれば彼らは利権を要求し、
それを取っ掛かりに自らの肝煎りのアウフヘーベンを作り上げにかかるはずだ。鉱石の輸入を一時滞らせた。
という過程がもたらした結果が工房の無力化。であればこれは相手が期待していた以上の結果だったと予想が付く。
 とまあ、これが今回寿飛燕に大怪我をしてもらった理由なのだが、ここまで聞いて何か質問はあるかな?」
 

「結局俺は仕事してていいんですかいけないんですか?」
何言ってるのか大体分からん説明を受けて、俺はいつも通りこのおっさん話長い。
という感想を持ったけれど、聞きたいと思ったのはそれだけだった。コーヒーもクソ不味いし。
 

「構わない。寧ろ大いにやってくれたまえ。我々が行っているのは我々の敵に対してのミスディレクションの誘発だ。
アウフヘーベンは暫く鍛冶屋の機能を失うと思わせておければいい。
その間これまで以上に活発に君が仕事をしてくれればそれだけ敵は困惑するだろう」


ミスディレクションって何? と聞くとまた話が長くなりそうだったので質問はしないでおいた。後でグリゼルダあたりに聞いてみよう。
了解っす。と言って俺は立ち上がり、コーヒーを飲み干した。ジョウちゃんの淹れたやつが飲みたい。
 

「それは持っていかないのかな?」
部屋を出ようとしたら後ろから声をかけられた。松葉杖を忘れていた。
「骨折ではなかったのかい?」
「でももう痛くないんで普通に歩き回ってるんですけど、そうしてると怒られるから抱えて歩いてるんですよ」
 

絶対安静とか言われて、三日も仕事させてもらえなかったのは困った。死ぬかと思った。それと俺趣味なさ過ぎ。ってちょっと笑った。
「では、これもしておいた方がいいな」
 

イーサンがトントン、と自分のこめかみの辺りを叩く。ああ、と俺は頷いて礼を言う。
「教えてくれてありがとうございます」
「礼には及ばない。アウフヘーベンのおかれている状況は複雑だ。誰か有識者が説明をする事が」
「眼帯のことです」
 

他の話はよく分からなかったからいい。ポケットに無造作に入れていた眼帯を取り出し、左目にかけた。
これをしておかないと又皆に怒られるんだ。図体が成長しきってから怒られるのって割とへこむんだ。
 



「……ん?」
何か、間違ってるような気がした俺はそれから右の脇に松葉杖を抱え工房に帰った。



終わりです。感想などくれましたら嬉しいです。
メンテ
Re: MH共同小説《元老院》 【奪還計画・第一次クエスト投稿開始】 ( No.533 )
   
日時: 2014/06/01 11:12
名前: 無記名 ID:kliuS7kM

投下お疲れさまでした。

長いお話でしたが、すんなりと読む事が出来ました。
最後の方では飛燕の惨状に焦りましたがなるほどそう言う事かと。
イーサンは相変わらず話が長いとして、上手い具合に弄ばれてますなぁ。
それぞれの活躍やら暗躍やらがあり面白かったです。

改めて投下お疲れさまでした。
メンテ
Re: MH共同小説《元老院》 【奪還計画・第一次クエスト投稿開始】 ( No.534 )
   
日時: 2014/10/30 00:09
名前: 鳳◆MebFSLR8nQ ID:sgmj/lHc

・夜
2ndG及び3rd参照

キャラ位置:住処を求める渡り鳥


名前:夜 (姓は無い)


性別:女


種族:人間


年齢:21


職業:上位ハンター兼雇われ諜者、元暗殺者(隠れ蓑として測量士)


容姿:褐色の肌に黒耀石のような眼、深い紺色の髪、東洋人顔、身長160cm程で細身、胸小さい。
 私服はカーゴパンツとTシャツなど、動きやすいラフな服しか持ってない。ただし、私服になることはほとんどない。
 一筆書き六芒星が右肩甲骨に刻まれている。


性格:表情の変化がやや乏しい。少々ものぐさで気分屋なところがある。仕事や狩りには基本的に効率を重視する。常識云々よりも感情に忠実。
 笑うときは小さく。ヒトを信用・信頼するまでには時間を要する。口数は多くないが、話題によって変わる。頻度は少ないが毒の強い皮肉を吐くことがある。
 都合よく利用されるだけだった過去に見切りをつけて、自分のために持てる命を使おうと考えている。


武器:闇夜弓【影縫】


防具:ブラックピアス・他、ナルガSシリーズ 跳躍珠*1
   スキル:体術1・回避距離UP
   2ndGに準拠


好きなもの(こと):ナルガクルガ、古書、安眠できる場所、戦闘、スリル


嫌いなもの(こと):強い匂い、過去にこだわること、騒音、束縛、自己犠牲、信仰、ババコンガ


口調参考:1人称=私。2人称=アンタ(気に入った相手には「貴方」or「貴女」になる)、又は(名前)。
「夜よ、よろしく」
「依頼? つまらないモノなら他を当たって」
「死にたいの? 手伝ってあげる」


言動:攻撃的なスタイルの狩りをする。初見の敵のとき以外は攻撃を前提にした回避行動をしがち。弓師かつ近撃士。ただ、調子付くとアイテムの使用を忘れる。
 隠密行動時は、気配を周囲に同化させることができ、最も暗いところ、しかも明るい場所に隣接している場所を選んで移動するため見つからない。
 2人以上の行動がほぼ皆無だったため、連携の仕方が分からない。適応力はそこそこあるが、なかなか味方のことまで気にかける動きができない。味方がいても単独の際と同様に行動する。
 正面切った戦闘ではオンかオフかなのでペース配分が苦手。追跡のときなどの効率的な動きが、モンスターの前に立つと常にエンジン全開みたくなる。死ぬまで全力の勢いだけど、長期の狩りでは節々で疲れを見せる。


行動制限:コンガ・ババコンガへの接近、怒鳴る、樽爆弾の所持・使用、自身を盾にする、曲射


住所:未定


その他:幼い頃からナルガクルガの動きに基づいた暗殺術・体術を学び、改良し続けている。
 集落から裏切りの咎で一家追放になるが、影縫を盗み出して自ら脱出。右肩甲骨を中心に背骨に至るまで、裏切り者を示すクロウリィの一筆書き六芒星が刻まれている。
 ある時、ギルドナイトに拿捕されるが、特異な体術を評価されて暗殺の訓練を受けた。
 己の一番の能力は体術なので、時間をかけてナルガの行動を観察し研究することが多かった。また、それにより更に能力を高めようともしている。
 斥候として高い能力を持ち、対人戦に関してはエキスパート。奇襲攻撃を基本とし、複数の敵に対して撹乱して狩るのが得意。モンスターに対しても初撃は奇襲がほとんど。
 出身である集落ではナルガクルガを神の具現として崇める信仰があり、その影響で宗教的な考えに反感を持つ。目には両目を、見敵必殺、の二つを信条にしている。生け捕りが絶対条件なら別。
 都合良く利用されることに嫌気が差し、今は足を洗って普通の上位ハンター。しかし、相変わらず雇われの暗殺者や諜報員としても活動し、使われる立場にいる。
 測量士としては、元々は隠れ蓑。機能できるだけの知識と経験は積まされた。依頼があれば地形の調査やモンスターの行動を観察し、街への危険度査定などをする。ババコンガの場合は問答無用で抹殺指令。
 本が好きで、特に古書を読みたがる。
 個人主義で、団体行動が苦手。育った環境のせいで基本的に信用せず、頼ろうともしない。
 生まれつきの共感覚者で、音や匂いが可視化されるため便利。
 反面、咆哮の直撃を受けたとき等、聴覚以外の感覚に対する苦痛もある。天敵であるフルフルの咆哮を受けたときは前後不覚に陥った。
 毒に対する訓練をさせられていたので、飲む・浴びるなどしても動植物の毒、毒に汚染された水は効果が薄い。
メンテ
Re: MH共同小説《元老院》 【奪還計画・第一次クエスト投稿開始】 ( No.535 )
   
日時: 2014/10/30 00:10
名前: 鳳◆MebFSLR8nQ ID:sgmj/lHc


アパートのベッドの上でごろごろ。

「ひま」

何もすることが無くひとりでだらだら。

「ヒマ」

髪を整えてみたり、義手を弄くってみたり。

「暇」

決死隊のアウフヘーベン突撃に向けた準備期間ってことで休んでいろと言われ、休まされている。早朝だというのに何もやることが無い。
こんなんじゃ体鈍るし、逆に疲れちゃうわ。今すぐにでも行けるってのに……。
ふと思いついたことに口を歪めた。

「ひとりで先に行ってようかしらね」

返事は無い。独り言だし、誰もいないんだからあたりまえだけど。勝手に飛び出して行ったら、と想像して思わずにやける。勝手に飛び出して行ったら、ハイドは慌てるでしょうね。私を連れ戻しに駆けつけて……。帰ったらあのグラサン男の嫌味が待ってるのか……。気に食わない。悪知恵が働くだけのもやし男のくせに。ちらっとキッチンの方を見遣る。ああ、一人のときは使用禁止なんて、練習させる気無いのかしらあの女顔は。そういえば格闘戦……手も足も出なかったな。何としても鼻を明かしてやりたい……。特訓するにしても――。
そこまで考えたところで、跳ね起きて出かける準備を済ませる。相手がいない、と思った。でも良い考え、かどうかはわからないけど、適任がいる。夜だ。


【オルガ流花嫁修業】


対モンスターについては知らない。対人戦についても知ってはいないけど、最高の部類に入るだろうとは聞いていた。話を聞くよりも体験したほうが絶対に良いに決まっている。たぶん、これ以上に無いほどの経験になると思う。思い立ったが吉日、ということで早速街中へとでた。しかし、パラダイムは広い。人も多い。本当に見つけられるのかな。
とりあえず最初に事務所に向かう。すぐ近く、見える位置に事務所がある。ひたすらまっすぐ歩いて行けばもう目の前に着く。でも、ねぇ。扉の前で少し考える。嫌な物は取り除くか遠ざけるに限る。事務所を回り、窓を見つけた。注意深く辺りを見回し、転がっていた木箱を踏み台にして窓から覗き込んだ。中にはグラサン男が一人。見えるところに人はいないし、物音も聞こえない。ここにはいないか。別の場所を探そうと木箱から――。

「オルガさん?」

木箱から、落ちた。

「一体何やってるんですか」

差し出された手を掴んで立ち上がる。声の主はワンフェだった。二重に驚いたことと恥ずかしいとで、小さく悪態を吐いた。

「何やってるんですか?」
「夜を探してるの、何処にいるか知らない?」

さぁ、とワンフェが答える。

「知りませんねぇ、特別ミッションとやらに出かけたのでは?」

そういえば打ち合わせのときグラサン男が夜に言っていた。
ワンフェと別れて再び夜を探し始める。夜が行きそうな場所を考えてみても、私は夜のことをほとんど知らない。知っていることといえば、ハイドから聞いた話くらい。暗殺専門のチームに、ギルドの最も暗いところにいたらしいということだけ。
職業暗殺者なんて、実際にいるもんなのかしらね。アウフヘーベンには測量士として来たという話だったはずだけど。もし見つけられたら、その辺のこと聞いてみようか。教えてくれるかどうかは、また別問題ね……。
ワンフェと別れて街中へ向かう。
特別ミッションとかには行っていない、と思う。何をするにしても準備は必要だし、グラサン男も夜も準備を怠るような馬鹿じゃないはず。一先ずよろずやあたりを探すことにしよう。

歩いているといろんなものが目に入る。
人が多いってのがまずあるけど、食材を売り歩く行商人、おもちゃ箱をひっくり返したように物を骨董品を広げる露天商、身を清める聖水などと怪しげな宣伝をしている修道女。
こんな場所で人一人を見つけようったってムリじゃない?
時折声を掛けてくる呼び込みをかわし、近所の知り合いと挨拶したりしながら街の中心部へと進む。
適当に雑貨屋に入ろうと近付くと、特徴あるピンクのツインテールが引き戸から出てきた。

「ありがとうございましたー!」

店の中に向けて元気良くお礼を言ったアレは、確か、サラクルン・アロディ?

「はい!」

名前を呼ぶとまたも元気良くこちらに振り向いた。

「えーっと、オルガさん?」
「ええ、オルガよ」

良かった、合ってましたー、と満面の笑みを見せるサラ。
かわいい。
思わず頬が緩む。
笑いかけるとサラは勢い良く頭を下げた。

「こんにちは!」
「こんにちは。何していたの?」
「律さんから頼まれたお仕事で、買い物です!」

背負っていた重そうな荷物を抱きかかえてサラは答えた。

「オルガさんは何してるんですか?」

……聞かれるまで本来の目的を忘れていた。

「夜を探しているの。見かけなかった?」

サラはあー、と声を漏らしながら思い出すように空を見上げた。

「あ、ちょっと前にすぐそこの服屋に入っていきました!」
「そう、ありがとう」

どういたしましてー、と言って事務所へ向かっていった。ずっと元気なままで、荷物を背負う後姿も生き生きとしている。
かわいい。
また目的を忘れる前に服屋へと入る。特別広くは無い、服屋というより仕立て屋らしい店だった。見回すまでも無く、奥のカウンターに袋を持った私服姿の夜がいた。
砂色のチュニックに白のロングスカート……何というか、垢抜けない感じのファッションね。
夜は店員に礼を言って振り返る。

「夜」

突然声を掛けたというのに特に驚くでもなく近寄ってきた。

「オルガ?」

そういえば、いつもなら着けているはずのピアスが無い。
外したからだろうけど、なんでわざわざ外すんだろ。

「何か用?」
「いきなりで悪いんだけど、ちょっと特訓を手伝ってもらえない?」

特訓? と夜は小首をかしげる。
単純な狩りの腕だけじゃなくて戦う実力を身に付けたいと説明する。
何を言ってくるか全く想像もつかなかったけど、意外なことにあっさりとOKしてくれた。



仮宿のすぐ近くにある闘技場へと夜を案内する。
部屋を借りて更衣室に入った。

「武器防具はそこの棚にあるのを自由に使えるわ」

夜はただ頷いて着替え始めた。チュニックとインナーを脱いだときに見えた、一筆書き六芒星の刺青。右の肩甲骨に刻まれたそれは背骨に届きそうなくらい大きい。よく見ると刺青なんかじゃなくて、黒焦げた火傷の痕だった。切り開いたように溝ができていて、ところどころ引き攣れて歪な形をしている。痛ましい傷跡に見入っていると、T シャツが覆い隠した。スカートを脱いで籠に放り込み太くてゆったりしたバギーパンツを穿いた。スカートを脱いだ褐色の両脚にはナイフが三本づつベルトで括り付けられていた。腕を下ろしたとき丁度柄に届くくらいの内腿の位置。そういえばナルガの脚防具には切れ込みがあったはず。判りやすい暗器はそれだけで、他にはあるのかも判らない。なんかプロの殺し屋ってのに真実味が……。

「何?」

こちらに振り向いて夜が言った。じっと見すぎたかも。

「同じね」

何のことかと問うように夜が首を傾げる。

「ハイドとあなた、選ぶ格好が似てるわ」

そう、と興味無さそうに応えて夜は更衣室をでた。扉が閉まる。早くしないと。訓練用の服に替え、上から皮製の防具を着た。待たせたかな? 幾つかの武器を持ち屋内訓練所へと入る。前に使った場所とは違い、ここは全面マットが敷かれている。あまり使われていないのか、所々剥がれかかっていたりして整備されてないように見えた。夜は部屋のど真ん中でナイフを片手に立っている。周りには木刀や棒がばら撒かれている。自由に使えってことなのかな。

「何から始めるの?」
「まず実力知らないと」

それだけ言って夜は黙った。もしかして――

「え? いきなり模擬戦から?」

頷く夜。しかし構えるでもなく、突っ立ったまま動こうとしない。

「いつ始めるの?」
「いつでも」

どうもやりづらい。
少し待ってみても、何をするでも何を言うでもなく動きもしない。
あくまでも私から仕掛けさせるつもりね。
大剣だけ持って他の武器を捨てる。
全く動かずにこちらを見つめる夜を睨み返して構えた。
構えて見せても、ただ突っ立ってこちらを見るだけ。

「いくわよ」

一気に詰めて押し切る。
そのつもりで低く構えて駆け出す。
一歩踏み出すその瞬間、夜が動いた。
床が迫ってくる。

「ぅぇ」

踏み潰されたカエルみたいな声を上げてしまった。
倒れた?
倒された?
訳判らない。
片脚と身体に押し潰された腕が痛い。
わけもわからないまま立ち上がろうとしたところ、冷たい手が首に触れた。
一回、と夜がカウントして手を離した。
一体何があったのか。

「何故わざわざ隙を教える?」

夜の言ったことが理解できなかった。
隙を教える? そんなことしていない。
私の足許に転がるナイフを拾って夜が離れる。
痛む脚をさすりながら立ち上がる。
辛うじて見えたさっきの動きを思い出す。
私が動き出す瞬間、夜はこっちに身体を伸ばした。
たぶんそれでナイフを投げた。
下手投げで、しかも棒立ちからで鎧を避けて当てるなんて……。
鼓動が強い。温めたはずの手が冷たい。これが実戦だったら、何も判らないまま死んでいた。敵に回したら、本当に恐ろしい。
でも彼女は味方だし、仲間だ。
もしかしたら、特訓にはかなり良い相手かも。
良い感じに予想外で思わずフッと笑みが出る。

「もう一度!」

夜は元いた位置に立っていた。
一撃入れる、そう決めてまた構える。
頷いた夜がゆっくり近寄る。
危険を感じさせない、自然な歩き方なのが余計に恐ろしい。
一歩、一歩と完璧に一定の歩き方で寄って来る。
無闇に動けない。
気を抜けない。
動きを見張る。
間合いに、入る!
踏み込んで一気に斬り払う。
大剣が空を斬る。
あと半歩というところで夜は留まっていた。
マットに落とした切っ先を返す。
肩を抑えられた。
崩されそうになるが腕に力を込める。
動かない、動けない。
夜は手を肩に当てているだけ。

「もういい、わかった」

そういって夜は手を離す。
ようやく体制を直すことができた。

「もういいってどういうことよ」

睨みつけても夜は気にした様子はない。
ナイフややら木刀やら、色んな武器をこっちに放ってきた。

「対人に於いて、大剣はただの的。鈍い、単調、死角が大きい。やる気があるならそこのどれかを使いなさい」

夜が投げ寄越した中から棒を拾って振ってみる。
しなやかな棒は片手でも両手でも振りやすい。

「これでいくわ」

続けて何度か戦う。
立ち回りで負け、封殺され、擦れ違い様に首を斬られ、ひたすら負けを刻む。
負けるたびに教えを請いながら何度も戦った。

「休憩」

引き倒され、抑えつけられる。
何敗目かなんて忘れた頃にようやく休憩することになった。なんとか身体を引き摺って、倒れるように壁にもたれる。どれくらいの時間だったかなんてもうわからないけど、徹底的にしごかれた。疲れて腕が上がらない。壁に支えてもらってようやく起きている。遠くなんて見えないし、目の前がゆれている。
強かった。何をしてもあしらわれて届かなかった。
ちょっと離れて隣に座った夜を見る。疲れた様子は無く、汗かいているようにも見えない。

「ねぇ」

ようやく喋るだけの体力が戻ってきた。声をかけると夜がこちらを見る。

「どこで、どうやってそんな強さをつけたの?」

夜は私を見据えたまま何も言わない。
まずい、ちょっと軽率だったかも……。
問いかけてからそう思った。
少し間を置いて夜が口を開く。

「ハイドに勝てなくても当然」
「え、あ、あいつは今は関係無いじゃない。夜のことを聞いたんだけど」
「部署によって違うけど、配属からの研修期間で地獄を見る。ハイドの部署なんかは特に。追いつきたければ数年は覚悟して訓練するといい」

予想外の方向に話しが飛んでしまった。
どもりながらも、何とか冷静さを取り戻して言った。隠せてないだろうなぁ。
いま喋ってもまた突かれるきっかけになりかねないね……。

「ハイドからは何て?」
「え?」

夜が聞いてくる。

「私のこと、何て聞いている?」

やっぱりバレバレだった。情報源も、質問の内容も、たぶん意図も。

「ギルドの暗殺専門チームにいたって聞いたけど」

そう、と言って夜は一口水を飲んだ。

「少し違う。暗殺だけではないし、そういうのはほとんど単独行動だから」
「つまり本当なの? そういう仕事をしてたって、そういうものがあるんだってのは」
「どんな組織にも影はある。大きければ尚更のこと」

答えになっていない言葉だった。でも実際にそれがあるということを指している。
たぶんこういったことは聞くべきじゃない、聞いてはいけないことなんだろうと思う。でも夜は教えてくれる。普段は誰にも自分のことを語らない人なのに。ここまで聞いてしまったんだから、最後まで聞いてしまおう。

「暗殺だけじゃないって言ったけど、他にはどんなことをやったの?」
「何でもやった。けど役割は主に諜報と暗殺。諜報としては、情報を扱う部署がギルドにあるけど、そこに情報を届ける」

なるほど、ある種フィールドワークを担当している面もあるわけね。
それにしても暗殺、人を殺す?

「暗殺……何でそんなことが……」
「私にとっては産まれたときからそれが日常だったけど」

こともなげに夜は言う。
彼女はそのような毎日を受け入れてしまっている。”普通”からかけ離れすぎていて、想像もつかない。
それからも色々と話した。
地図士・測量士としては隠れ蓑だったこと、その肩書きは常駐せずに機動として動くには都合が良かったこと、隠密行動の技術、仕事の内容。
ほんとんどは私が質問攻めにしているようなものだったけど、少しでも夜のことを知りたかった。

「他には誰が知っているの? 夜が、暗殺者だってこと」
「アリス、アトレナ、律、それ以外は知らない、多分」

彼等は立場上知っておく価値がある、と夜は付け加えた。
それはつまり、今後も汚れ仕事を請け負うかもしれないってことなんだろう。律の言う特別任務がそれかもしれない。

「今更だけどこんなに話してもいいの?」
「ギルドの奴等に忠誠を誓った覚えはない、義理も無い」

相変わらず疲れきって重いからだを何とか起こし、道具を拾う。もう外は暗くなっていた。随分長いこと闘技場にいたらしい。
夜も立ち上がり、道具を片付けた。

「今日はここまでね」

今日は? と夜が首を傾げる。
そう、今日はね。

「ありがとう、またよろしく」

----
かなり久々!
鳳です。
やりたいことすべてに手を出していたら金が……

オルガメインと見せかけた夜のお話。
時系列としてはハイド・オルガ達がアウヘベに行く直前辺りですね。

>無記名さん
相変わらずボリュームたっぷりで楽しませてもらってます。
あとウヴング動かすの面白そう
状況を完全に忘れてしまいましたが、概ねお掃除終わったんですかね。

>マナさん
アウヘベ奪還後、ということでしょうかね。
いい感じにスタートとなるよう纏められていてありがたいです。
これまで通りの展開では面白みが薄れることが迷いどころですねぇ。

>HIJIRIさん
キャラ同士の関わり合いがいいですね。
どれか一人でなくそれぞれのキャラに活躍させるところが流石です。
HIJIRIさんの話を読んで若干夜の口調参考プロフィールを更新しました。
>>534
メンテ

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