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[1097] 御伽草子
   
日時: 2013/03/19 22:54
名前: はるか ID:8fCupdNk


 僕の世界はずっとこのまま

   しあわせで、ゆっくり、

 
  過ぎてゆけばいい。







古風なものが好きです。
少年と少女が好きです。

たぶん、ものすごく短いものばかりです。
みなさんと、自分の暇つぶしになればと思います。
児童文学風、修正ばっかり、暗い話や同性愛があったり、話の最後にどうでもいい小話があったり。
日記みたいに更新します。
のんびりとマイペースで、ゆるいものを、
メンテ

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夏、戻れない日々と大人になることへの抵抗の話 ( No.5 )
   
日時: 2013/02/22 13:17
名前: はるか ID:sG9WVUxI


  ◇ 曹達水


高く澄明な碧落に、埠頭のほうから低い呻り声が響く。船笛の咆哮だ。
昼日中の陽射しが、じりじり熱する地面に反射して白く閃く。
そこに染みる緑々(あおあお)とした木の葉の影を踏み、二人の少年が笑いながら走り過ぎた。
手には、その存在を誇示するかのように陽射しに瞬く、曹達水の壜が握られている。
水滴を纏い、ひんやりと瑞々しく輝いていた。彼らはそのまま埠頭へ腰かける。

ぬるい風が吹き抜ける。真上からの照射は、夏の存在を大きく実感させた。
今まで楽しそうに笑っていたのが嘘のように、二人の少年は会話を終わらせ、
足をぶらつかせながら神妙な面持ちで坐っている。
「ぼく、大人になるのは厭だ、」
少年は駄々をこねる子供がするように幼い表情をみせた。
もう一方の少年は困ったように、やさしく微笑いかける。
「ぼくも、厭だと思う。けどさ、仕方のないことだよね、」
唐突な話題に、ふたりはそれぞれの思いを胸に馳せ、遠くを見詰めた。
成長してゆくことを拒む幼稚な反抗心を持った目つきで、
水平線の向こうを、食い入るように見詰めていた。
しかし、いつまでもここに留まって足踏みしていられないことを、
どこかで認めなければいけないのはわかっているようだ。

「でも、これを飲んでると、いつまでもこどものままのような気がするよ、」
先刻、落胆した少年を慰めていた少年が、明るさを取り戻して云う。
少し微笑みながら、片手に持っていた淡青色の壜を掲げて振ってみせた。
彼の友人も同じように、淡青色の壜を持ち上げて振る。
中で、泡沫が生まれては消える。
二人同時に壜に口づけ、傾けた。咽喉の奥を、心地よい刺激がくすぐる。
ふう、とひと息ついて、
「それにほら、」
少年たちは、壜口に顔を寄せ、耳を傾けた。

パチン、パチン、

「聴こえるだろう、」
少年が、嬉々として云う。彼の友人も、嬉しそうに大きく頷いた。
「これはこどもにしか聴こえないよね、」
「ぼくたちの、音だ。」


  ◇

炭酸の弾ける音。
耳許で膨らんではちいさな爆発を繰り返し、いつの間にかふっと消えてしまう。
けれど、少し淡青色の壜を振りさえすれば、また聴こえだす。
少年たちの笑い声や埠頭の咆哮、澄明な碧落を旋回する白い禽たちの啼き聲や、
緑々とした樹々の葉同士の擦れる音に混じって、
今日もちいさな泡沫は生まれ、はじけては消えてゆく。







ソーダ水の漢字表記は、大好きな作家さんのものです。とても素敵です。
夏が背景の話はだいすきです。特に夏の終わりなんかは、物悲しくてすごく良い。
あるアーティストの歌詞で、
“少年の日々を回想(おも)う時、不思議なほど幸福な気持ちが僕を包む”
という箇所があって、その曲を聴く度にその部分がとても強く心に刺さります。
いつの間にか大人になっていて、もう戻れない少年時代だけど、夏に、
ソーダ水を飲んであの音を聞くと、懐かしい思いと同時に、
当時に戻ったようななんとも言い難い気持ちになれます。
そういうのが、ちいさいですが大人にとっての幸福なのかなと思いますね。
子供と大人の狭間で苦しむって、誰にでもありますよね。成長は苦手です。
メンテ
二人の少女の陰の苦悩とフェミニズムの話 ( No.6 )
   
日時: 2013/02/27 16:25
名前: はるか ID:1P454qmU

 

  ◆ 少女、フェミニスト


「ねえ、あたし、性別なんていらないと思うのだけど、」
ふぅ、と物憂げなようすで、指先に挟んだ煙草をくゆらせ、頬杖をつきながら彼女は云う。
こちらに向けられた睛は、秋波を帯びていた。
一人部屋の狭い空間で、堂々と煙草を吸う態度はもはやすがすがしく、潔ささえ感じる。
ほぼ下着のような格好で、象牙色のベッドに肘をついてうつ伏せている。
しかしそこに下品さはない。
私はそのベッドを背凭れにして、絨毯の上に坐ってコーヒーを傾ける。
「煙草なんて吸ってたら、すぐ老けちゃうよ。」
彼女も私も今年で16歳。彼女は学校では普通の生徒だけれど、こうして影ではメランコリックな姿を見せる。
きっとだれも、こんな姿の彼女は知らない。
「あんただって、ブラックコーヒーなんて飲んで、大人ぶってるじゃない、」
彼女は鼻で笑って皮肉った。そんな態度をとっても様になるから、容貌がいい人はずるいと思う。
「ねえ、知ってる?煙草の残り香と苦いコーヒーって、相性がとてもいいんだって、」
そう云いながら、彼女はソファーから滑り降りてきて、煙草を硝子の灰皿に押し付けた。
そして顔を近づけてくる。
「ちょっと待って・・・、」
顔をそむけると、拒まれるのを予想していてたのか、俊敏に私の両手首を掴んで牽制してきた。
「学校で云われたこと、気にしてるの?」
つい先日学校で、別に私たちに対してではなかったけれど
そういう界隈の人を揶揄する言葉を、同級生が云っていたところに出くわした。
彼女は気にしてないふうを装っていたけれど、きっと私と同じように思ったのはわかってる。
私が頷くと、彼女は慰める気があるのかないのか、甘ったるい声で云う。
「可愛い子。」
そして、より一層愛嬌のある笑顔を浮かべた。
「どうせ、人生見世物よ、」
彼女は棒読みで云い放つ。
「これはね、少女椿っていう作品の言葉なの。これ聞いたとき、あたし、はっとしちゃった。」
「・・・どうせ人生見世物なんだから、好きなようにすればって?」
「うん、そう。」
大きい睛を細めて、微笑む。そのまま瞼を閉じて唇を重ねてきた。
やわらかい感触が、彼女との境界を曖昧にする。
「苦いね、」
彼女は私を掴んでいた手を放して、苦笑した。そんな顔も、やっぱり可愛いと思ってしまう。
抱擁はもはや形だけ。私は寂しくてたまらないからひとの暖かさが欲しくて依存する。
彼女も平気そうな顔をしているけれどきっと、おなじ、だよね。

「・・・ねぇ、私、あなたのこととっても好きよ、」
頬を擦り合わせて耳元で囁いてみる。
「あんたって、ほんと、フェミニスト、」
彼女はそう云って、女らしい、色っぽい声で笑った。







同性愛って、腫れ物に触れる扱いを受け、侮蔑のまなざしを向けられるのがとてもかなしい。
やはりマイノリティではあるので堂々と公言するようなことでもありませんが、
陰で静かにしているのであれば誰に文句を言われる筋合いはないよねという話。
何かを訴えたいのかただ単にそういう話が好きなのか、同性愛ものばかりでごめんなさい。
けど、もし周りにそういう人がいると知っているなら、少し考え方を変えてみてほしいと思ったり。
少女椿は読んだことはないのですが絶対にいつか読みたい。エログロアングラらしい。
そして私の「どうせ人生見世物」の解釈はきっと違う。
フェミニスト=女性解放論者、女性拡張論者、女性尊厳主義。
という感じらしいのでちょっと意味が違ってくるかもしれないけど、
「少女、フェミニスト」という響きが気に入ったので細かいことは気にしない。
少女は18歳までという持論があるので、煙草を吸ったりはしてるけど未成年です。
悪ぶって吸っているわけではないので自分的にセーフ(?)です。
メンテ
少年と少女の迂回する下校の話 ( No.7 )
   
日時: 2013/03/04 12:25
名前: はるか ID:EfBBOyLY



  * 迂回して、また明日



下校時間になり、僕は窓辺から外を眺める。
もう少しで桜の咲きそうな、少し肌寒さの残る季節。
夕方特有の、眠気を誘う穏やかな風が心地良く頬を撫でてゆく。

隣接する女子校から、あの子が出てきた。
上品な紺のジャンパースカートに胸までの二つ結びがよく似合う。
僕は急いで昇降口へ向かう。別に、約束をしているわけではない。
他生徒の視線を集めるほどでもなく、僕の学校の正門の前にさりげなく立つ少女。
睛と睛が合って、彼女は俯く。
その紅い頬が、僕にも伝染した。顔が熱い。
とくに合図のないまま連れだって歩き出す。

僕たちは最近、一緒に下校するようになった。
別れ際の会話はいつも同じ。
「また明日。」
僕が云うと彼女も笑って、
「うん、また明日、」
隣の彼女がいなくなると、なんだか寂しいから、この瞬間は好きじゃない。
だから少しでも長く一緒にいたくて、僕も彼女も遠回りで家に帰る。
そんな、誰にも邪魔をされない少しの時間を、僕たちは共有している。
それがなんだか云いようのないほど嬉しい。

彼女は僕の三歩後ろを歩いている。今日は何か話したいな。
そう思いながら彼女のいる左の方を向くと、赤い花をつけた木が立っていた。
昨日はなかったはずだ。鮮やかに、風に揺れている。
「桜が咲いてる。」
たどたどしくなってしまった。彼女も同じ方を見て、小さく微笑んだ。
「これは梅の花だよ、」
あぁ、なんて可愛らしい笑顔だろう。
彼女は今日咲いたばかりのそれに見とれていたが、僕には彼女しか見えない。
「そっか、これは梅なのか、よく知ってるね、」
彼女は頬を染めて、おかしそうにくすくす笑う。僕もつられて笑う。
こんな毎日が、僕には何よりも幸福なんだ。
そしてまた、明日も会える。

なにを話すでもなく、少し離れて。
僕たちは今日も、まわり道の帰路につく。






もうすぐ卒業式です。あぁやだなぁ。大人になるのが嫌で嫌で。
いつも登下校してた同級生ともさよならで、「また明日」はないんだと思うと寂しすぎる。
私も迂回して大人になるまでの時間稼ぎをしたい。
題名から考えたら難しかった。中学生か高校生かな。
メンテ
少年と年上の女性の出逢いの話。 ( No.8 )
   
日時: 2013/03/18 00:42
名前: はるか ID:offAMib.

 
 * 桜の咲く季節に、


無数の花びらが地面に埋め込まれて、茶色く濁った桃色。
その不恰好で雑多な絨毯の上で、あなたと出逢った。

木々の間をくぐって紅さす夕まぐれ。
まだ小奇麗な木のうえの桃色が、朱に染まる時刻。
花びらが散って、誰かの飲む酒盃に静謐に浮かぶ。

―わたし、お友達と来てるの。
 だけど、みんな騒いで桜なんて見てやしない。
 ちょっと疲れたから、散歩中なのよ。

あなたは笑って、僕との距離を詰める。
赤らんだ端正な顔。飲酒からして、年上だとわかる。

―僕は家族と。
 毎年なんだ。

僕が云うと、あなたは微笑んで、

―そう、
 めんどうな行事ね。

と僕の心を云い当てた。
そして、僕の手を引き、どこかへ歩き出す。

―・・・どこへ行くの、

―やぁね、ただの散歩よ、

そうして桜並木を一周だけ。
いろいろな話をした。

いつかの春の、美しい思い出。
僕と、年上のあなたと、ふたりだけの。

別れ際手を離して、あの笑顔であなたは云う。
―わたし、手紙を書くわ。
あなたもきっと、返事をちょうだいね。





それから手紙は、来なかった。





お花見のあの雑踏の中で出逢いとかあると素敵だなぁと思います。
少年は少し期待していただろうけど所詮年下のお子様には興味ないのよ、
という年上女性の優雅さと華麗な狡さを書いてみたかった。
メンテ
赤は血のいろ、白は天國 ( No.9 )
   
日時: 2013/09/15 22:27
名前: はるか ID:fVJ8x2mI

 ■死について考えてみた時、恐怖するのは当然で、


彼はsketch-bookを広げて一頁目の、旧い夕日を眺めた。
褪せた暁色の空。薄く刷く雲は掠れてより一層深みを増しているように思える。
下部には全体に緑青が塗られている。空との対比がきれいだ。何時頃の絵だろう。
紙は風化して、四隅が捲れ上がっている。
それでも、絵の具の使い方と云い筆先の器用な軌跡と云い、見劣りする処は決して無かった。

その時刻を矩形に区切り、切り取り、意の侭に仕舞っておける。
彼は其れが快感で、筆を握る。其の瞬間だけは、とらえた景色全てが自分の物になるのだから。

甘い薫りのする煙を吐き出す。咥えた煙草をくゆらせながら、彼は僕の肌に触れる。
鎖骨辺りに触れた筆先からは、深緋の絵の具が垂れる。
水を含み過ぎた其は、僕の裸の胸から腹へ、線を引いて流れ墜ちた。
下にゆくに連れて色は薄く。身を捩って筆先から逃げてもなお追ってくる。
頸を撫で、胸を撫で。一筋だった紅玉色が途端に拡がる。

「くすぐったい、」
僕が堪らず筆を持つ手を掴み牽制すると、目の前の男は不敵な笑みを浮かべて甘い煙を吐いた。
「御前は死んだら如何為る、」
彼は全てが唐突である。
もう慣れたつもりで居たが、全く調子を合わせる事が出来ない。
僕がこの画廊に来て何日経っただろう。彼に己の躰を委ねて何日目だろう。
そう短い関係でもない筈だ。
否、彼の絵に描いたような、断然とした黒曜石のような睛からは、彼の意思が読み取れない。

「僕は死んだら、またあなたと居たいです、天國で。」
苦し紛れにそう云うと、牽制していた僕の手を払って微笑った。憐れむような睛だ。
「天國なんて、御大層な事を、」
紅く染みた筆を置いて、煙草の火を消す。
「あなたは、如何為るのです、」
投掛けた疑問は返って来ないことが解った。彼は沈黙した。

静謐の中、sketch-bookをぱらぱらと捲って、僕の頁を開いた。
再び筆を取り、其処に、真紅の絵の具を零す。
「嗚呼、折角綺麗に描いて下さったのに、」
僕が大袈裟に悲観すると、彼は口の端を吊り上げて、狡猾な表情をして見せた。
「御前は、絵で無くとも綺麗ぢゃないか、」
表情と言葉から感情を汲取れない。
怪訝な顔を悟られたのか、彼は柔らかく微笑して、僕の両の頬に筆を滑らせ紅をさした。
「何だ照れているのか、」
無邪気な子供のするように、筆で遊ぶ。
「あなたが描いたのでしょう、」
僕も愉しく為って、一緒に微笑った。

「御前は、まだ若いから本当に解らないかも知れない。
 だけれど大人は、俺みたいな輩を厭って社会不適合だと罵って淘汰しようとする。」
さっきまでの愉快なのが嘘のように、まなざしを床に落とした。
涙を流している筈はないが、肩が慄えている。
「あなたはじゅうぶん素敵な人です。
 そんな、他人の小云を聴いていちゃあ不可ません。だって僕はあなたの絵が好きだもの、」
そう云うと彼は力なく微笑って、椅子に深く、深く沈んだ。
「俺は情けない。御前みたいな子供に愚痴を云って、爽快になって、心配をかけてみたくなったのだ、屹度。
 嗚呼本当に情けないな、俺は全く大人でないな。御前の方が余程賢くて偉い。」
彼は小さく為って云う。
籐の立派な椅子の上で、虫網に捕えられた蜻蛉の如く、
大人しくしている他はないといった容貌で、いつになく憔悴していた。
「だけれどなあ、御前、大人なんて、全く子供とおんなじなんだ。
 少し周りと違えた奴が居ると、取り立てて嘲笑う。
 如何してそうしなくちゃ不可ないのだろな。御前は、ずっと、ずっと、少年のままで居て欲しい。
 御前は今迄俺が見てきた中で、一番上等だよ。
 俺が御前と話しているのも、俺が御前を意のままにして絵にしているのも可笑しいくらいに、」
終始、俯きがちだったが最後の方は、僕の目をまっすぐに見詰めていた。

僕は先刻から云い知れぬ不安を抱き始めていた。彼は屹度、もうこの世界に居たくはないのだろう。

「僕は、あなたが云うほど良い人間なんかではないのです。
 僕は、僕が苦手です。けれど、あなたが描いてくれる僕は好きなのです。
 可笑しいでしょう、僕はあなたが居ないと、僕を好きになれない、だから、」
俄に、彼が声を立てて笑った。呆気に取られている僕を余所に、愉快そうに僕の頬を撫でる。
「おい、御前、折角の綺麗な容貌を、そんな深刻な思いつめた顔に変えるな、勿体ない。」
余りの変貌に、狼狽を隠せなかった。
しかし、彼の睛の奥で、笑っていない、哀しみに暮れた彼を見逃せなかった。
「だってあなたは先刻、死んだら如何為る、と僕に質問しました。
 あれはあなたの本心でしょう。あれは僕に聞いたのでなくって、自分に聞いたのでしょう、」
「・・・御前は本当に聡明で快活な奴なんだなあ。」
彼は静かに微笑って、溜息をひとつ。僕と視線を交叉させる。

「俺は、此の侭生きていても仕様がないと思っている。
 けれど、死ぬのが如何しても厭なのだ。俺は、御前を俺だけの物にした。
 描いて、描いて、其の時々の御前を矩形に区切って、切り取って、俺だけの物にして仕舞ったのだ。
 其れなのに御前を置いて、俺が先に逝くなんて悔やまれる。
 其の侭誰か別な奴に御前を描かれるのが俺は如何しても厭なのだ、」
彼の言葉で僕は、嬉しいような困ったような、
なんとも形容し難い感情でいっしょくたになってしまって、真面に返事を思い浮かばなかった。

「しかし御前、」
僕が思案しているうちに、彼が口火を切った。その姿は一転して穏やかだった。
「先刻、御前は死んだら、天國でまた俺と居たいと云ったな、」
僕は彼と、何かが通じたのだと解った。
如何云う訳か解らないが、兎に角今の少しの間で解り合えたのだ。
「はい、」
僕が頷くと、彼は深く、深く息を吸って、また吐いた。
そして煙草を咥えた。僕が火を点けると、途端に煙がもくもくとあがった。甘い薫がする。


「天國って、どんな場処なのでしょうね、」
「御前は本当に素直な奴だな、」
そう云って微笑う。僕も、一緒になって微笑った。
「天國に、画材は持って行きますか、」
「嗚呼、勿論。」
「では、また僕を描いて下さいね、」
「御前には、立派な純白い羽翅があるのだろうな。白を沢山買っておこう、」

「そうですね、白を、たくさん。」







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