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[1078] 吐き出し場
   
日時: 2011/12/16 11:00
名前: 春姫 ID:e/5nCrcI




 溜めた小説を吐き出す場所。
 関連性のない、小説(?)みたいなものしかないです。
 それでも宜しい方は、へぼい小説ですが拝見いただけると、とても嬉しいです。



メンテ

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Re: 吐き出し場 ( No.10 )
   
日時: 2012/09/30 21:19
名前: 春姫 ID:eHQd.FkM

泥。




 水面に写る私の顔はまるでおぞましきモンスターのよう。目は二つ、鼻は一つ、口は一つ、けれどおぞましい私の顔を、私はこれ以上見なくて済むように片手でかき回した。冷たい水の感触はすぐにぬかるんだ泥の感触へと変わった。透き通っていた水面は泥に濁り、私の顔を写すことはなくなった。冷たい泥は少しの間、螺旋を描くように舞い上がり、数分もしないうちにまた底へと沈んだ。安堵した。私は確かに安堵の息を漏らした。そうか――どんなに澄んだ物の底にも泥はあるのか。
 私の泥は沈まず、永遠と水面に渦巻いている。私は身の内に泥がたまらぬようかき混ぜ続ける。水面に顔を写せば、おぞましモンスターがそこにいるのだけれど、私はもうそれを恐ろしいとは思わない。誰にも泥はあるのだ。誰もがおぞましさを抱えているのだ。ただ皆その泥を自身の底に沈めて荒らさぬように平静を装ってるにすぎないのだ。


 水面に写る私の顔は泥にまみれて汚ならしい。
メンテ
Re: 吐き出し場 ( No.11 )
   
日時: 2012/10/19 23:42
名前: 春姫 ID:WLupAuYs

質疑応答


「今何歳なの」「家から近いの」「学生?」「高校はどこだったの」「休日は何してるの」「兄妹は?」「免許は持ってるの」「ねえ――」
 馬鹿の一つ覚えだってもっとマシなことを聞いてくるんじゃないだろうか。出会う人間が誰一人漏れずに狂ったスピーカーのごとく同じ事を繰り返し、繰り返し私に問いかけてくる。プロフィール表でも書いてきて壁にはっつけてやろうか、それかみんなで私の情報を共有してくれればいいのに。会話の広げ方をそれ以外みんな知らないんでしょうね。可哀想に、あはは(棒)。
 どいつもこいつもおんなじ事をなんべんもなんべんも聞きやがって、うるせえんだよ、関係ねえだろうが、個人情報だボーケ! てめーらにも同じ事を聞いて差し上げましょうか? そんで「答えは結構、興味ないので」って切り捨ててあげましょうか、あはは! バーカ!
 私も大人だから逐一、逐一ばっかみてーに応えてあげるけど、これってなんていうの、大人の嗜みってやつなの? あー、ますます大人になりたくなくなるわ。大げさにため息を付いてお手上げのポーズを取る。みんなの通信簿の興味関心の項目は二重丸どころか花丸をあげましょーね、うふ。
 私は他人への関心が薄い。その人に好かれたいという感情はあって、嫌われたくもないとも思う。でもその人と親密になりたいだとか、その人の秘密を知りたいだとか、その人と感情を共有したいとは思わない。だって人は夜通し語り合って手を握り合って眠りあったって別の夢をみるんだよ……て、これは受け売りだけどね。でも私はそれに納得、というか安心したのです。私だけが別の夢を見ているんじゃないか、私だけが違う世界を見ているんじゃないか、私だけが違ういびつな人間なんじゃないか――異常者じゃないかって。
 心に引いた境界線を超えようとする人間が苦手だ。私の心を勝手に詮索する人間が嫌いだ。簡単に好きになって、簡単に嫌いになる人間が嫌いだ。そんな人間の内の一人でもある自分も嫌いだ。人間って生き物が嫌いだ。汚い、すごく汚いと思っちまうのだ。
 興味ないよ。あんたらなんて興味ないよ。
 どこでなにしてようが、野垂れ死のうが、殺されようが、興味ないよ。ニュースに出てくる事故死したどっかの誰かの死の方が万倍心を痛めるよ、あはは(悲)。――なんで、みんな他人の一挙一動を見なきゃ気が済まないの?
 私がどんな存在ならあなた方のお眼鏡にかなうの? ねえ? ねえ? ねえ? ねえ? ねえ? ――鬱陶しいよ。

「お嬢さんはとっても気立ての良い、美しい人だねぇ」
 使い古された社交辞令に私はにっこり微笑んで「そんなことありませんよぉ。でもありがとうございますぅ」と猫なで声で返す。ばっかみたい。気立ての美しい人が平気な顔して嘘ついたりする? しないでしょ? バーカ! バーカバーカバーカ! 汚い私の本性を見せたら、みんな手のひらを返して糾弾するくせに!! ダイッキライ!
 それでも私はガラスの仮面を外すせない。醜い私は分厚い扉の向こうに閉じ込めて、たくさんの鍵を掛けて出てこれないようにしてあげる。わかってる、全部私が悪いのだ。
メンテ
Re: 吐き出し場 ( No.12 )
   
日時: 2013/01/17 09:47
名前: 春姫 ID:3DlJa45A

 君を刺した。
 君のお腹に小ぶりだけど鋭く尖ったナイフを突き立てた。大した抵抗もなく、なんなくナイフは胸に滑りこんでいった。血が隙間から静かに溢れてきた。君の口からも血が流れてきて、僕はなんとなくその血を舐めた。
 君が好きだった。
 優しい笑顔が好きだった。僕だけに見せる冷たい表情が好きだった。どんな人にも優しいところが好きだった。僕だけに見せる暴虐武人さが好きだった。いつも完璧で完成されている姿が好きだった。僕だけに見せる耐え切れずに溢れる涙が好きだった。
 僕だけに見せる――本当の君がとても好きだった。
 だから僕は刺した。傷だらけの君に更に傷を作った。最低で、下劣で、愚かで、とにかくとんでもない過ちを僕は犯した。でもそれでいい。それで君が解放されるなら、僕はいくらでも罪を背負おう。
 決別の言葉を僕は口にした。


「君が好きだよ、優しくなくて、笑顔が素敵じゃなくて、完璧じゃなくて、完成品じゃない……君が好きだった」


 そして僕は君に突き入れたナイフを、自分の胸に突き刺した。暗転。でもそこに君がいて同じように横たわっているのなら、こんなに幸せなことはなかった。
 サイレンの音がどこからか聞こえてきた。君の言うとおり事前の準備は本当に大切だ。これで安心して眠れる。






「……わた……し……も……」







 そんな都合のいい言葉は僕の耳に届かなかった。
メンテ
Re: 吐き出し場 ( No.13 )
   
日時: 2013/04/12 22:40
名前: 春姫 ID:L7xIz30k

※罵詈雑言の嵐注意






 親切は断っちゃいけませんって法律でもあるんですか?


「送ってたげるよ」

 はい、上から目線! 何その上から目線? 感謝でもして欲しいのか、有難がって欲しいのか、さっぱりわかりませんけど、全然嬉しくないですから! 迷惑ですから! 大きなお節介ですから!
 だいたいあなたシートベルトはしないわ、携帯電話で通話しながら運転するわ、タバコは吸うわでもう最悪なんですわ! 最低なんですわ! 死んで? マジで迷惑だから死んで? そんな運転で私を送っていくだなんてふざけないでくださる? あっはっは! 死ね!
 というかこんなこと考えてる自分に嫌悪しちゃうからほんとやめたげて。罪悪感なんて抱いちゃうからやめたげて。断る方だって辛いのよ? わからないでしょ? だってあなたは『親切』で言っているんだもんね。それを断る私が悪いんだもんね。そうだよねえ。悪いのは私なんだよねえ。いみわかんねえ。
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ死ね!
メンテ
Re: 吐き出し場 ( No.14 )
   
日時: 2013/12/10 00:46
名前: 春姫 ID:Xc5haKgs


「いつまで寝ているつもり」

 カーテンの向こうから差す光が眩しくて手で覆うと、聞き覚えのある声が窘めるように囁いた。すぐ近くに感じる人の気配にのろのろと瞼を上げると、まだ下着姿のチヅが手鏡を持って化粧をしている最中だった。チヅの手に握られたグロスを見ていると、チヅは僕が起きたことに気づいたのか、鏡の中の自分から目を離さずにうんざりした声を出した。

「あのね。私はこれから出かけなくちゃいけないの。とっとと支度して。出て行って」

 一言一言区切るようにチヅは言った。チヅは普段はとても優しくて温かい女性だけど、僕の前ではとてもつっけんどんな態度をとった。本人からも言われたことがある。僕は最低にだらしなくて、節操なしの変態野郎だって。罵るようにそう言われたことを僕はまだ覚えていた。なのに僕たちは昨日同じ布団の中で絡み合ったのだから不思議な話だ。

「チヅ」
「なに」
「ちーづー」
「だから」
「ちーづーるーちゃーんー」
「なに」

 ずるずると這いずるようにチヅに近づいていって、剥き出しの腰に抱きついた。温かくて柔らかいチヅの体からはおひさまみたいな香りがして心地よかった。チヅはそれ以上怒らなかった。文句もなかった。抵抗も否定もなかった。ずっと昔からの付き合いだというのに、僕はチヅのことを何も知らないなと何故か今気づいた。思考する僕の傍らでチヅは黙々と化粧を続けていた。ノーメイクのチヅも可愛いよと褒めてあげようとしたところで、僕はチヅの体が震えていることに気づいた。

「チヅ?」
「……あんたなんて死ねばいいのに」
「酷いな」
「何で抱くのよ。私なんて女じゃないって、あんたが言ったんじゃない」

 それは、別に大した意味も意思もなかった言葉だった。なぜならチヅは僕にとってはもう女なんて領域を軽く超えていて、そういう対象からはかけ離れていた。だからチヅがそのことで思い、悩み、苦しむなんて思わなかった。僕は知らず知らずにチヅを傷ついていたみたいだ。そのことが分かっても僕にはどうしようもなかった。僕はチヅを抱けるし。チヅは僕に抱かれてしまった。僕は時を巻き戻せる神様じゃないからチヅにしてあげれることなんて何もない。

「責任とろっか」

 ちょっぴり本音の僕の言葉だった。
 チヅは幼い頃から側にいて、一緒に大人になった人だ。この先も多分一緒だろうから、関係性が変わるだけにすぎないと僕は思った。だけどチヅは震えたまま沈黙してしまった。僅かな嗚咽と鼻をすする音だけが部屋に響いた。外は少しずつ騒がしさを増していくのに、僕達の周りはあまりにも静かだった。不意に嗚咽が止み、最後だと言わんばかりに豪華な鼻をすする音がした。

「離して。服が着れない」
「あ。うん。というか普通、化粧をする前に服を着るべきだよね」
「うるさい」

 余計なことだとは思ったがつい言ってしまった。案の定叱られた。

「とってね」
「ん」
「責任とりなよ。たまには」

 後ろを向いたまま洋服棚から服を取り出すチヅの声はいつも通りだった。だけど僕には分かった。チヅがとても緊張して、とても覚悟をしていることに気づいた。僕のとる行動はきっと一つだ。今すぐ起きてチヅを後ろから抱きしめる。そしてそっと耳に囁くんだ。

「愛してるよチヅ」

 きっとそれが正解だ。






 寝起きのプロポーズ
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