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[9] 第六回短編コンテスト【結果発表】
日時: 2012/03/01 00:00
名前: 管理者 ID:95eDmd.o

●第六回短編コンテスト
 今月の管理者:仁井田

 短編コンテスト、リニューアルして早くも六回目となりました。ツイッターで告知してきたように、今回は規約に大きな変更があります。主な変更点は、ひとつきのスケジュール、制限枚数(文字数)です。規約を再確認した上で、作品を投稿してください。
 ただ作品を競い合うだけではなく、作品を通じた交流の場として。そしてまた、あらゆるタイプの作品が分け隔てなく集う場として。今年の短編コンテストはこれまでの基本方針により忠実に、多くの人に開かれたコンテストでありたいと思っています。沢山の参加、お待ちしています!

 こちらは短編コンテスト、作品投稿スレッドです。短編コンテストに参加される方はこのスレッドに作品をご投稿ください。
 執筆・投稿される前に、規約・企画説明スレッドを絶対にお読みください
 今回は通常コンテスト回になりますので、以下に発表されるテーマを取り入れた10000字以内の短編を執筆するようにしてください。
 なお、ご質問等がございましたら、談話室の方にお願いいたします。


<スケジュール>
1日〜15日……投稿期間(定員30名)
16日〜25日……投票期間(こちらの該当記事コメント欄にどうぞ)
26日〜31日……決選投票期間(同じく記事を設けます)


●今回のテーマ 『道』
 また三月がやってきました。一年の総決算の時期です。これまで歩んできた道を振り返り、新しい道を行く人もいれば、今歩んでいる道をもっと先まで歩んでいこうとする人もいる。その中で一緒の道を行ったり、別々になったりして、別れと旅立ちの時がやってきます。だけどそれぞれの道にはまた新しいそれぞれの出会いがあり、道は一つになったり枝分かれしたりを繰り返しながらどこまでも続いていきます。
 というわけで、今月のテーマは「道」です。それぞれの人生に関わる「道」もあれば、具体的に実在する「道」もあり、そして人々が行き交い、すれ違い、時には出会う、そんな場としての「道」もあります。道、路、途、径、一口に「みち」といってもこんなに沢山の漢字があり、一つ一つ意味が違う。きっとどんなドラマが生まれても不思議ではないところ、それが「道」なのだと思います。どんな「道」でも構いません。あなたの思い、感じた「道」を、短編コンテストにぶつけてみてください!

●提出作品(敬称略)
>>1 春姫『僕の道』(4987字、13枚)
>>2 natsunomiz『恋は盲目。〜Love is blind〜』(6872字、18枚)
>>3 62『TANPEN』(8930字、23枚)
>>4 ピクシー『その雄たけびを聴け』(8528字、22枚)
>>5 夜猫『かつて知ったる道』(4742字、13枚)
>>6 屍『白い体に不吉な音を奏で、赤い光をまき散らしつつ走るあの車に向かわずに』(9115字、23枚)

>>9 結果発表
>>10- 投票詳細
>>16 総評
メンテ

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Re: 第六回短編コンテスト【結果発表】 ( No.13 )
日時: 2012/03/26 00:08
名前: 屍(投票) ID:veOTgtmw

・恋愛小説に関する若干の考察
 今回の短コンは恋愛小説と分類すべき作品が三つ投稿された。全作品が六つであるから、実に半分を占めることになる。したがって、恋愛小説に関する考察をまず提示し、採点基準を明確に示すことは決して無益なことでなかろう。というわけで、いわゆる”純愛”を軸として、若干の考察を述べることにする。
 1.いわゆる”純愛系”とでもいうべき物語には、感情があまりにも静的になりすぎるという、よく陥りがちな落とし穴がある。もっと端的にいえば、愛の純粋さを示さんとするがあまり、運命の男女同士の”好き”という気持ちが動かしがたい宇宙の真理のようなものと化してしまっていることだ。こうなってしまってはどうしても物語が盛り上がりに欠けるものとなってしまう。なにしろお互いの”好き”が前提されているのだから、そのまま進めば男女がイチャイチャして終わりになる。男と女が出てきた瞬間に、どうせこの二人は惹かれあって好き好きと言い合うのだろう、などと思わせてしまうようではつらい。
 2.そして作者もそれがわかっているから、盛り上がりを持たせるためになんとか死別などを入れてセンチメントな雰囲気にするわけだが、結局のところ無条件の”好き”による感情の変化のなさを克服できていないし、この手法も典型中の典型であるために読めてしまうわけだ。ごく大雑把にいえば、「単に純愛を描いただけじゃつまらないぞ」ということだ。
 3.さて、言いっ放しでは無責任なので、上に示したような落とし穴を回避する道を僭越ながら提案させていただこう。あまり繰り返すようで恐縮だが、この問題は感情の変化のなさにあると思われる。したがって、簡単な話、感情に変化をつければよい。たとえば”好き”という感情を疑ってみるのはどうだろうか。これは私見だが、恋愛とはそもそも何かの間違いから始まるものではなかろうか。とすると、”好き”という感情も何気ない瞬間に生まれたり、消えたりするものであるはずだ。こういった感情のダイナミズムに注目する、もっと具体的には複数対複数の恋愛模様を描いてみるとよりいっそう深みのある物語になることだろう。

 以下レビュー。

○春姫『僕の道』
 “みち”を登場人物名に取り込んで、それが断たれたとは上手いことをいったなあ、というのが第一印象。陰ながら春姫さんの短コン作品は全て読んでいるのだが、今回か第二回の作品のできがいちばん良いのではないかと思う。なにしろ今回は、失礼ながら毎度の懸案であったと思われる「過去」についての書き込みが濃かった。この書き込みがあったからこそ、主人公の語り以外では登場すらしていない人物を「道」として物語の中心に据えることも無理なくできた。断たれたように見える道、しかし歩いていくしかない。このメタファーに向かってしっかりと一貫性を保っていた。大切な人間の死に対してどう誠実であるか。その問題に対するひとつのありかたがよく描かれていたと思う。陳腐な言葉で言えば、「あの人は死んでいない。だって僕の胸の中にいるのだから」となるだろうか。
 とはいえ不満は残る。前掲の考察を参照してほしい。今回の作品もこの罠を逃れておらず、小奇麗という印象は受けても、骨のある小説だとは思えなかった。3番はあくまで提案なので、受け入れるかどうかは春姫さん次第だ。あくまで純愛にこだわるというのなら、もう何も言うことはあるまい。
 ただし、隠喩の使い方は上手くなっているし、書き込みもしっかりしてきたし、失礼な物言いになるがずいぶんと上達した。その点、自信を持っても良いと思う。

○natsunomizu『恋は盲目。〜Love is blind〜』
 悪い意味で頭を抱えたくなるような作品。決して配置されている要素のそれぞれが悪いというわけではないのだが、どうも全体に散漫とした雰囲気がある。つまるところ、一つ一つの要素が噛みあっていないのだ。例えば「桜」「ワシントン」「盲目」といった諸要素だが、これらの間になんの統一性も見出せず、雑談にまぎれて単に空気を形作るにとどまっている。仮に統一性を見出せるとしても、考察1のように”好き”という感情が基本的に変わらないため、そこにこじつけたようになってしまうのがつらいところ。失礼ながら、もう少し冷静に自らの作品を反省されてはいかがだろうか。綺麗な恋愛を書きたい気持ちはよく伝わってくる。その気持ちは大切だと思うのだが、気持ちが空回りしていると言わざるを得ない作品だった。

○62『TANPEN』
 話自体はすごく、ものすごくどうでもいいのだけれど、そのどうでもいい話から複雑な感情が生起していく過程が快い。なんとなーく惹かれあって、離れていって、最終的にそれぞれの位置へと収まっていく。”好き”という感情は、実にあいまいで移ろいやすいものだ。大きな理由は無くても心は変化していく。この登場人物自身ですら把握できない心のダイナミズムがどうしようもなくリアルだ(これが考察3で言いたかったことだ)。登場人物たちの感情の変遷が、それをよく物語っている。
 全体を俯瞰してみると、「道」というテーマにもしっくりくる。ふらつきながら、よろめきながら辿った一人の人間の「道」、そしてありえたかもしれない別の道を丁寧に示している。決して大きいことは書かず、身の丈にフィットした言葉なのもよい戦略である。永遠やら純粋やらの形而上学的な言葉よりも力があると思わせる勢いがあった。方言を混ぜてくるあたり、憎いほどよくわかっている。
 ただしタイトルはどうにかならなかったのか。そこだけ残念。そこ以外には指摘する点がみつからない。脱帽である。

○ピクシー『その雄たけびを聴け』
 アツい、これはとにかくアツい! そう叫ばずにはいられない作品だ。ピクシーさんのボクシング愛を感じる。この主人公のモデルはファイティング原田だろうか。たまたま彼に関するノンフィクションを読んでいたのだが実にアツい生涯で、なるほどこれは小説にもしたくなると思った。しかし取材していたにしても、事実の間隙を埋める圧倒的な心理描写が実によかった。そして絶妙な省略と時系列の配置は試合描写の鑑といっても過言ではないだろう。読んでいるこちらまでが「なにくそ負けるか」と手に汗を握ってしまった始末である。そして主人公が勝つ試合展開は読めていたものの、チャンピオンからタイトルを引き継いで歩いていく様子はまさに「道」という印象を受けた。
 ただ、欲を言うようであるが、試合だけに終始してしまった点がやや物足りないところ。あと1000字ほど余っている。主人公周辺の人間模様や練習の様子が盛り込めていたらもっと良い作品になれたと思う(チャンピオンの人格や風見さんとの関係は非常に気になる! 加筆してほしいくらいだ)。
 ただし、これはこれで非常に良い作品であったと思う。タイトルも良い。拍手を贈りたい。

○夜猫『かつて知ったる道』
 なにがやりたかったのか正直よく分からない。実は誰かが幽霊なのではないか、などと勘ぐったが違ったようである。田舎の風情とか伝統の継承だとか、そんな寒々しい言葉も浮かんでくるが、しっくりこない。というより、面白くない。いくらなんでも田舎にお墓参りする、ただそれだけの小説ではつらすぎるだろう。非情なようであるが、” おっ母から理香への、世代に渡る引継ぎだった”とうそぶいてみたところで、面白くないのではどうしようもない。
 端的に言って、問題点は内容の薄さにあると思われる。こまごまとした雑事はあるものの、基本的に墓参り以外の話がない。人物設定も非常に薄っぺらく、ただの記号の領域を脱していない。あるテーマを中心に据えることと、書く内容がそれしかない、というのは似ているようでも全然違う。もっとダイナミックにエピソードを配置するところから始めてはどうか。
 タイトルは上手いが、逆にいえばそこしか評価できるところはない。

・自作解題
 実に変な小説を書いてしまった。読んでもらえているかどうか心配である。肯定的な言及が一つもない、つまるところ何も語っていないという意味不明な文章だが、それでも何かを語っているように見える。精神病的な文章でやりたかったのはこれだった。つまるところ「それはただの文字だ」というわけだ。小説とは何か、我々は文字を書く事によって一体何をしているのか。そういう問いかけのつもりである。同時に神経症的描写もやりたかった。人間は他人の心を絶対に知りえない。だからこそちぐはぐな会話・行為の水面下で奇怪な心の動きがあるかもしれないのだ(このあたりは筒井康隆の影響が濃い)。この二つの狙いを同時にやるとどういうことになるか試した試作品ともいえるだろう。低評価ならそれはそれでしかたがないと覚悟している。「無意味だね」と言われたらそれでおしまいだ。誰かの狂気を呼び起こせたら幸いである。

 さて、以上を踏まえて、順位付けするなら以下の通りだ。

1位(3pt) 62『TANPEN』
 2位ときわどいところであるが、物語としての完成度はわずかにこちらが上だ。いい作品であった。
2位(2pt) ピクシー『その雄たけびを聴け』
 1位と入れ替わっても全くおかしくなかった。試合だけ、という物語の若干の弱さでこの順位となったが、正直心苦しい。両方に3ptあげたいが、しかたのないところである。
3位(1pt) 春姫『僕の道』
 課題はまだまだ残るものの、小奇麗にまとまった作品であった。確実に実力は上がっている。
メンテ
Re: 第六回短編コンテスト【結果発表】 ( No.14 )
日時: 2012/03/26 00:10
名前: 62(投票) ID:veOTgtmw

1位 『かつて知ったる道』
2位 『白い体に不吉な音を奏で、赤い光をまき散らしつつ走るあの車に向かわずに』
3位 『その雄たけびを聴け』

1位と2位は好みの差です。
3位は迷いました。


春姫『僕の道』
・二時間ドラマにしやすそう

natsunomiz『恋は盲目。〜Love is blind〜』
・題名が面白い
・読んでいる人を楽しませようというのが伝わってきた

ピクシー『その雄たけびを聴け』
・最後の文が良かった


夜猫『かつて知ったる道』
・好みだった
・作品に流れる空気がやさしい

屍『白い体に不吉な音を奏で、赤い光をまき散らしつつ走るあの車に向かわずに』
・笑った、面白い
・やったもん勝ちなかんじだけど、面白い
・笑った
メンテ
Re: 第六回短編コンテスト【結果発表】 ( No.15 )
日時: 2012/03/26 00:11
名前: ピクシー(投票) ID:veOTgtmw

どうも、ピクシーです。
サッカーを見に行ってきました! 千葉の蘇我まで行ったんですけど、えらい寒かったです。お陰で1週間くらい喉が痛いわ鼻水が止まらんわで散々でした。楽しかったけどね。今度からは防寒対策をきちんとして行こうと思います。就活中なのに何やってんだw

さてさて、レビューとかをやっていると常に辛口になってしまうのが世の常です。「何この小説」「亀田は偽チャンプ!」「で、前回の反省を踏まえているの?」「亀田は偽チャンプ!」など、アンチ亀田の方々が喜びそうな批評がズラリと並んでおりまする。まあ、あんまり厳しいことを言ってもねえと前回反省しました。はい。今回はバファリンより優しいをテーマにしたレビューをしていきます。絆だよ! 人と人とのつながりだよ! きっと日本人は優しさに飢えているんだ!

■春姫「僕の道」
きちんとテーマにそって小説を書いていますね。素晴らしい! 道のない少年が大好きだった女の子が自分をかばって事故って死んじゃったんだという罪に駆られながらも忘れ去ることのできない彼女への思いを雪と上手くマッチングさせているところなんてきれいだなあと思いながら読んでおりました。
多分、ここが話の核なのでしょう。女の子の詳しいことや、家庭科部とは何かとか、女の子のご両親を説得するところとか、服飾の道をがむしゃらに突き進んで行くプロセスとかはどうでもいいんですね。要は主人公の罪の意識がテーマとなっておられるのですからそんなことはどうでもいいのは当然のことでしょう。 

■natsunomiz「恋は盲目。〜Love is blind〜」
なんか映画とかでありそうなタイトルで、なんだかとってもかっこいいと思います。少女マンガみたいな展開で思わず花より男子を手に取りたくなりました。持ってないけれど。♪とか、――とか三点リーダを一つしか使わないとか斬新な手法で小説を作っているのがとっても格好良く映りますね。わざわざ分かりづらい漢字にルビを振ってくれるなんて、何と親切なのでしょう。
内容に関しては、目の見えない女の子のことを大切にしている明雄くんが格好良くてお兄さん惚れてしまいそうになりました。道というテーマが見えづらくなっているのは、きっとぼくの読解力不足なんでしょうね。

■62「TANPEN」
きつきつに詰めて書いてあって、作者様からはとてもこの小説に対する意気込みというものを感じました。やはり読みやすさどうこうよりも作者の熱意がなければ小説なんて書くことはできませんものね。それでいて実際は17の道、20の道、26の道という風に分けて読みづらくしていないなんて! 読者に対する愛を感じますね。どこの方言なんだよ!とか文章作法とか主人公の名前が絵里菜というのが分かるのが一切無視なんですね。そりゃあそうです。だって、小説にとって大事なのは面白いことなんですから!
武富君がすごくかわいくて、一途な男と言う感じですごく好きでした。何かわざわざ3つに分ける必要性があったのかなーなんて感じもものすごくするのですが、絵里菜さんの年齢の視点から描いているのだからわざわざ分ける必要があったのでしょう。恋というのは切ないものです。言葉にして伝えなければ相手には伝わらないものなんですよねー。初恋のあの子はお元気かしら。

■夜猫「かつて知ったる道」
実家に帰省されたことを実に丁寧に描いていると思います。40目前にして結婚したお嫁さんと2度目の帰省。それでお墓参りに行くというお話。最後の最後に詰め込むようにして道というテーマを明確に見せてくれたことで、なんかグダグダしているなーと感じた内容が一気にしまった感じがしました。
人はいずれ死んでいきます。その中で通っていく道は誰もが引き継いでいくものなのでしょう。その情景が凄く丁寧に描かれていてそこは凄く好感が持てました。

■屍「白い体に不吉な音を奏で、赤い光をまき散らしつつ走るあの車に向かわずに」
62さん以上に詰め込んで書かれてあったので、詰め込んで書くというのはブームなのかなーと思いながら読んでおりました。
いちいち文章を否定形なんかにして読みづらい小説だなと。そんなこと思いながら読んでいたのですが、終わりに向かうにつれてホラーチックになって行く文体というか、テイストというか。物語の迫力、盛り上げ方はすごいと思いました。健康であっちゃいけないというか、なんか重たい病気に俺はかかっているんだみたいな思想は中学校2年生くらいの時に持っていたので、すごく共感を持った。


というわけで順位発表。もう優しさなんていらない。ちなみに私は亀田ファン。

1位屍「白い体に不吉な音を奏で、赤い光をまき散らしつつ走るあの車に向かわずに」
1つ残念なことをあげるとしたら、ちょっとテーマの「道」は分かりづらかった。それが致命的。それでも1位にする理由はこの作品以外に1位と推せるものがないから。

2位62「TANPEN」
消去法。やっぱりわざわざ3つに分ける必要があったのか分からない。

3位春姫「僕の道」
消去法パート2。こっちが一番読みたいと思う部分を消化しきれていないところが痛すぎる。この前言いたかったところはそこなんだよねー、おんなじことは言いたくないんだよねーと。

4位夜猫「かつて知ったる道」
連続テレビドラマの第○話とかそんな感じ。いや、そこだけ切り取って提出されても、と。もっと書いてほしい。広げられるお話だと思うから。

5位natsunomiz「恋は盲目。〜Love is blind〜」
致命的かつ根本的なミスが二つ。小説の基本作法ができていない。テーマがない。小説の基本作法はともかくとしても、テーマが見えてこないってのはマイナスにするしかない。

ピクシー「その雄たけびを聞け」
テーマを入れることができなかったこと、内容ももっと煮詰められたなーと思いました。ボクシングをテーマにして小説を書くことができたことは良かったのかなーと思いながらも、やっぱりもうちょっと煮詰められたなと。うわー、人のこと言えねーなー。
今までで最も感動した長谷川穂積―ウィラポンの試合から着想を得て書きました。

総評。
道と聞くと、誰もが人生を連想するのはなぜだろう。ぼくもだけど。
まあ、そんな感じです。
メンテ
総評 ( No.16 )
日時: 2012/03/26 00:12
名前: 仁井田 ID:veOTgtmw

 と、いうわけで皆様お疲れ様でしたー。今月の管理を担当しました仁井田です。今回は新規の参加者が増え、これまでとはちょっと違った雰囲気の中進められたコンテストとなりましたが、今年はこうした常に新鮮なコンテストでありたいと思っています。新人が増えれば、ベテラン勢もその中でどんな作品を書くのか? という面白さがありますし、とにかく見ていて楽しい、楽しめる雰囲気を作っていけたらなあと。
 作品は、恋愛小説が三編。それからまったくジャンルを異にするものが三編。いずれにせよ完成度の高い作品が多く、読んでいて楽しいコンテストでした。恋愛小説三編がそれぞれ全然違う作風なのが、面白い。優勝された春姫さんの『僕の道』は真っ当な純愛小説で、さわやかな読後感があります。natsunomizさんの『恋は盲目。〜Love is blind〜』は、会話のテンポが良くて楽しげな雰囲気に引きこまれます。62さんの『TANPEN』は二人の男性の間で揺れ動く気持が素敵な文章で表現されていて、方言も味がありました。
 ボクシングを題材にしたピクシーさん、墓参りという形で真正面から道を消化しにいった夜猫さん、ちょっと不思議な読みにくさで読者の目をくらませた屍さん、と非恋愛勢もそれぞれ素晴らしい作品ばかりでした。今回新規参入された方も、以前からのベテランの方も、次回は参加者としてご一緒できたらと思います。では、以下総評です。


春姫さん『僕の道』
 ちょっと書き方がふらふらしているというか、出来事の部分がダイジェストという感じで薄味に過ぎるかなあと思います。後半で怒涛の独白があるけれど、それまで積み重ねてきた出来事を上手く読者が共有できていないから、空回りした印象になってしまう。最後の道を見つける下りも、ちょっと唐突過ぎるかな。全体として筋は悪くないだけに、もっと書き込んで欲しかったです。
 感傷的に過ぎる文体はこの場合○。これぐらいのやり過ぎがこの小説の場合は相応しい、と感じました。それから、これは多分意図してやってることではなく、春姫さんの自然な感覚で出てくる部分だと思いますが、語り手の向いている方向が絶妙で面白いです。例えば「不味い(正直に書いてしまった)」という部分、普通に書けば(正直に書いてしまった)という文章が挿入されることはないと思うのですが、この一文が入ることでふわりと柔らかい雰囲気が出ている。独特のユーモア感覚というのか、悪い意味ではないくすぐったさが味になっていると思います。
 結末も道にきれいに結びついているし、好きです。ただやっぱり「過程が大事」な物語かなあ。この部分ももっと色々書いて、僕がそこに至るまでどんな経験を積んできたのかとか、アシスタントが憧れるほどの成功についてだとか、それぞれの生に重みが出たら感動ももっとはっきりとしたものになると思います。今の時点では、ちょっと読者を置き去りにして勝手に感動しているという感じも残ります。

natsunomizさん『恋は盲目。〜Love is blind〜』
 見えない人間を書くのに、それがオンオフ可能な設定でしかないというのは非常にマイナスだと思います。設定上は一応盲目なのに、この少女はどう読んだって「見えている」。「見えていない」と書いたら見えなくなるわけではなく、書き手はどう「見えていない」のかを書かなければ、折角の設定も死んでしまうでしょう。それが一人称の語りであるなら尚更。「――私は、生まれた時から目が見えない。」という告白は、あまりにも不用意。盲目であることが当然で自分の一部である、という彼女の世界をもうちょっと大事にして欲しかった。
 物語的にも内容に乏しいと思います。この小説の核は二人の会話シーンにありますが、書き手が少々耽溺し過ぎている。テンポも良く掛け合いそのものは悪くないのですが、展開とまったくリンクしないダベリは少なくともこの小説の場合は抑えるべきだったのでは。後半、明雄が一度は恋の思いを拒絶する、というシーンがありますが、ここからもうちょっと物語を動かして欲しかった。すべてを会話で構築する難しさがここに出てしまったように思います。明雄も恋も自己完結した自分のキャラクターの内でだけしゃべっているから、彼らは揺れ動くことがない。ただ自分がしゃべるべき台詞をしゃべっているだけで、それは徹頭徹尾想定内に収まってしまっています。これでは折角の豊かな無駄(会話というのは概してそういうものだと思います)も、それを支えるだけの芯を欠いてしまいます。
 あとは、恋愛そのものの特別な感じをそのまま小説に持ち込んでも、その特別な感じをどれくらい共有できるか怪しい、ということも感じました。その齟齬を解消するのは、やっぱりこの場合小説的な仕掛けなんじゃないでしょうか。ちょっと戦略性に欠けるかな。感性と技術どっちが大事か、みたいな泥沼に踏み込む話ではなく、ごくごくあたり前の話として、どんな書き方をすれば自分の表現したい世界が拓けてくるか、ということにもう少し気を遣えば、それこそテンポの良い会話シーンも生きてくるのだと思います。色々と惜しい作品でした。

○62さん『TANPEN』
 修正の件、本当に残念でした。実は当作が新人賞内定作品でした。ただ、失格ではありますが、一度は内定した作品でもあるため、今回は特別措置として選評を用意することになりました。今回は残念でしたが、次回以降の参加を、またお待ちしています。

(仁井田)
 語りのテンポが抜群に良い。方言混じりの会話もリズミカルで、しかも地の文からの移り方も凄く自然で、揺れ動く感情もうそ臭さがまったく無くて、楽しんで読めました。うるさいぐらいの「あたし」の使い方が巧みだなあ。段々と「あたし」が減っているように感じましたが、それが自然と16、20、26という年齢の移り変わりとも対応しているし、さりげなくずらしていく技術には何度も舌を巻きました。物語そのものは典型的だ、という指摘も最後の会話の巧みさで言わせない。素直に感動しました。
 弱さがあるとしたら、それぞれの場面を繋ぐ時に力技が見られるところでしょうか。時系列のカットの仕方がところどころ唐突過ぎて、雑な印象です(章分けの部分ではなく、章の内部での飛ばし方)。とはいえこれは枚数の規定もあるから、一概に弱いとは言い切れない。こんなものだろう、という感じもします。要田くんはもっと書かれた方が良かったかなあ。都合の良い役を引き受けさせられている感じがありました。ブラックボックス的な立ち位置の相手と結婚するというのは、ちょっとだけ説得力に欠けるかもしれない。
 それぞれに些細なことでしかないけれど、それが決定的に重みを持ってしまって、すれ違いが起こる。すれ違いの取り返しのつかなさも、持ってしまった重量も、そしてまたその些細さですらも、まっとうに描かれた作品だったと思います。ベタだけど個人的にはこれ、すごく好き。ただそれだけにこのタイトルはもっと何とかして欲しかった。読む前は期待値思いっきり下がりますし、読んだ後には勿体無いという気持になりますし、誰も幸せにならないと思います。それ以外は本当に良い小説でした。面白かった。

(雨野)
 読み終えた瞬間、これは新人賞間違いなしだろうと思いました。細部のディティールもさることながら、物語の密度が濃かったです。この濃さの由来として注目すべきは、物語に含まれる二つの人間関係でしょう。つまり絵里菜―要田と絵里菜―武富の二つです。この両者、どちらか一方と単に抜き出してみると、成就するかしないかの差はあれど、非常に陳腐な恋愛小説なのですが、これらが同じ小説で展開されるところに大きな意味があります。それは「絵里菜―要田と絵里菜―武富の恋愛はどちらが成就すべきだったか」というように問いを立ててみれば明白でしょう。絵里菜と要田が最終的に結婚に至ったのは全くの偶然であって、武富と結婚していた可能性は十分にあったことがわかります(「20の道」での出会いがいかに偶然的であったか思い出していただくと、より明白です)。この偶然的に成功が左右されてしまう二つの恋愛が並べられていることによって、恋愛の恣意性が明らかになるのです。言ってしまえば「恋なんか気の迷いだ」というわけです。しかしその気の迷いのために、一方とは将来を誓い合い、一方とは互いに気持ちを隠しあわねばならない。絶妙な構成です。恋愛小説を書く者は、この複数の関係による構造を常に意識しておくべきでしょう。ほとんど唯一の難点として、成功者の立場に位置するがために、要田のキャラクターがいささか平板気味なことが指摘できますが、これは逆に武富の人間的魅力を引き立たせることになり、前述の恣意性の演出としてよかった面もあります。できれば肉付けしてもらいたいところではありますが、字数制限上、最適戦略だったのではないでしょうか。あとはタイトル。短編をローマ字にしただけではあまりも安直で本当に残念(意味付けがあるならすみません)。内容の魅力とは全く別ですが。
 これだけ魅力的な作品だっただけに、投稿期間後に修正してしまったのは残念です。本当は賞をあげたいところですが、規約は規約ですので。

(葵)
 よく見る系統の話ではあるのですが、こうも美しくまとめられると完敗です。非常にレベルの高い作品でした。二十三枚の中にものすごい密度でエピソードが詰め込まれていて、読み終えた後しっかり満足できました。年齢の経過に伴って主人公の内面が変化していくのがとても印象的で、切なさをかきたてるラストも大変魅力的でした。武富くんの心中を思うとやり切れません。皆さん仰ってますが、締め切り後の修正が残念でなりません。また、こちらの方も皆さんよく仰ってますが、タイトルももう少し何とかならなかったのかと思ってしまいます。場面が飛ぶたび説明的になってしまったところも少々残念でしょうか。短い文章で端的に示すにはこの形が適していたのかもしれ ませんが、もう少々自然に読ませてもらえればとわがままな要求を残しておきます。
 次の作品もぜひ読ませていただきたいと思います。

ピクシーさん『その雄たけびを聴け』
 ボクシングの魅力を小説で書く、という一点集中型の作品であるだけに、読みとしてはその気迫に飲まれるか否かに重点を置くのが誠実であると思うのですが、一方であまりに表現そのものに夢中になりすぎている部分が、短編全体の完成度を落としてしまってるのが少し残念でした。たしかにここで描かれる試合のシーンは緊張感と迫力に満ちているのだけど、その試合を支えるドラマの部分が淡白で、例えば風見さんとの関係ももう少し書くべきだったんじゃないかと思います。悪い言い方をすれば、ドキュメンタリー番組の試合のシーンだけを取り出したようなもので、しかしここでの文章は生の迫力にはどうしても届き得ない。生の迫力にかなわないことは承知でそれを超えてやろうとすれば、多分書き方からして全然違うものにならざるを得ない。細部がこれだけ書きこまれ面白いのに、全体を見ると雑な印象になってしまっていて残念でした。
 それから試合の描写ではなく運びについても、展開らしい展開が感じられず、やはり描写を核にしているところがこの場合弱点になっているかな、とも思います。これが長編であれば話は別で、下地があって「これが最後のクライマックスだ」という前提が共有されていたなら、この描写はかえってリアリティがあって良い、ということにもなるのかもしれませんが、どうしても広がりが制限される短編では、この手法は無理がある気がします。邪道になるかもしれませんが、もっと作為があっても良い。それは風見さんのところとも繋がります。意味の繋がりでカタルシスに持ってくるような意図的な操作が、ここには欲しかった。
 わざとらしさを排したゆえの作風だ、とも言えますが、しかしわざとらしくない作為を持ち込むのも小説の技法です。もちろんこの小説自体は小説的技法に無頓着なものではなく、意識しているからこそこの迫力でもあるのですが、言ってみれば目配りみたいなものが欠けていたのかなあと。目配りのいい小説が褒められたものではないとされることもあるにせよ、ある程度の目配りはあった方が面白いのもまた事実で、書こうとしているものに合わせて使い分けていければベストでしょう。そしてこの小説は、もっと目配りがあって良かった。短編漫画的な牽引力があるだけに、その牽引力をエンターテイメントするところまで行き切れば、本当に傑作になったのではと思います。

☆夜猫さん『かつて知ったる道』
 今回の新人賞はこの作品になります。おめでとうございます。

(仁井田)
 エピソードが不足しすぎているし、数少ないエピソードの魅力に乏しい。書き込み不足、ということも大きいのかな。核となる墓参りのシーンがあって、その核を中心にそれぞれのエピソードが動く、という構成になるべきところ、動くエピソードを書けなかった。そのために結末が取ってつけたようなものになってしまった、という印象です。自己申告による前提の告白(ここでは妻である理香がこの土地を好きだ、と語るシーン)はどうしても不自然になってしまいがちだし、悪く言えば行き当たりばったりで書いたように見えてしまいます。理香がどのような妻であったのか、という前提が先にあれば、主人公の思い込みもリアリティを持つだろうし、最後のシーンはちゃんとエピソードとして形になるはずです。
 実はあらゆる物語は「いないいないばあ」の変奏だ、という理論があるらしいのですが(あるものが失われ、そして元に戻る、というのが最も基本的なパターンだというのです)、そう考えると、この小説は「いないいない」の過程を書かずに、「ばあ」とやった時にそういえば「いないいない」していたんだよね、と後から付け足すような感じで、それでは赤ん坊も笑わないし、何をやっているかわからないでしょう、ということになってしまう。そして実際にこの小説はその陥穽にはまっていて、13枚という枚数ながら非常に読みにくいものになっているように感じます。文章は簡素なのに、うまく掴めない。言い換えれば情報の出し方がひどく不親切で、読者はなかなか適切に処理できず、クライマックスのシーンも読み流してしまいそうになる。話そのものは複雑ではないのだから、一工夫が欲しかった。
 理香が途中まで殆どしゃべらないというのも不気味で、私はひょっとして理香って幽霊なのか、とまで思ったのですが、そうではなかった。こういうところもやはり情報の不足、悪い意味での雑さだと思います。おっ母との会話、雪解けの山道、シチュエーションは魅力的で、どうにかすれば理香の言葉だって非常に活き活きとした台詞になりそうだっただけに、もったいなかったです。しかし魅力の部分を引き出すだけの雰囲気ある文章が書けていて、読後感は悪くなかった。長々と書きましたがここで挙げた難点はすべて「書き込み不足」という一点で説明できる。秀でた作品とは言い切れないのが苦しいところですが、物語を魅力的に構築するという点ではかなりのものがありました。「道」というテーマをここまで真っ当に、しかも変化球的なシチュエーションで消化してくる独創性も面白い。選考では最後まで一名が受賞に反対していたのですが、作品の持つポテンシャルを評価しての受賞となりました。新人賞、おめでとうございます。

(雨野)
 「新人賞、おめでとうございます」と言いたいところですが、僕は正直、あまり納得していません。現実的問題として、62さんと比べると差は歴然です。なぜならば、この小説は「妻と帰省し、田舎で墓参りをして世代間の引継ぎを果たす」という以上の内容をほとんど持たないからです。良い小説とはしばしば要約不可能性のあるものであって、要約しようとすると細部の迫力が零れ落ちてしまうものです。たしかに先ほどの要約はあまりにも乱暴ですが、この小説には十三枚も使うような内容はなく、人によっては二、三枚で書けてしまうでしょう。実際、そのほうが間延びせずにまとまったと思います。失礼ながら、現状だと無い内容を無理やり伏せて枚数稼ぎをしているような印象をどうしても拭いきれません。そのために、最後に核心が明かされても、全くの拍子抜けになってしまいます。
 この状況を打破する方策は、口で言えば至極簡単で、「歴史性を付与すること」です。つまり登場人物の過去をしっかりと描写すること。その人がどんな人で、どんな歴史をたどってきて問題の場面に辿り着いたのかがはっきりすれば、自然と物語の魅力も増します。典型的ですが、過去の葛藤や対立が盛り上がる場面で解消される、というような展開があるとカタルシスを生むこともできるでしょう。この歴史性を付与する過程というのは、料理でいえば仕込みのようなものです。これをなしに物語を盛り上げるのはそうとうな才覚が必要です。まとめると、目指しているところは悪くはなかったのですが(というより、目指している方向が悪いなんてことはそうそうないと思っていますが)、やり方が悪かったのです。
 というわけで、僕は新人賞を与えることに反対だったわけですが(ぶっちゃけていうと、繰り下げ受賞みたいなところも気に入りません)、受賞理由は他の管理者の二人が語ってくれることでしょうから、僕は夜猫さんがこの評を読んでさらなるレベルアップをされることを期待し、筆をおくことにします。

(葵)
 作中に出てくるコーヒーのような温度の雰囲気がとても好きです。真摯にテーマと向き合っている姿勢にも、大変好感が持てました。理香におっ母、そして店のおばちゃんに至るまで良い人揃いだったのにも、なんだかほっとしました。とても優しい物語ですね。
 書こうとしたものに関しては、大変面白い題材だと思いました。が、見せ方には少しばかり工夫が必要だったかなとも思います。始めから終着点を見据えて、計画的に一つ一つのエピソードを書いていれば、もっと最後が映えたのではと思いました。現状では意味を持たせにくいものも多く、無駄に見えてしまうのはもったいないことです。削るというよりも、やはりもう一歩作品をまとめるための工夫がほしかったか なと。主人公と物語の距離が離れてしまっていたのも少々読みにくかった原因の一つかなと思います。もっと積極的に物語りに介入させると良かったかもしれませんね。
 書き方さえ変えられれば、数段違って見える作品ではないかなと感じました。それだけに今後の作品に期待が持て、今回新人賞を受賞されるにふさわしい作品だったのではと考えています。今後の夜猫さんのますますのご活躍を祈ります。

屍さん『白い体に不吉な音を奏で、赤い光をまき散らしつつ走るあの車に向かわずに』
 タイトル○。もう少しイメージと距離が遠いタイトルだったら◎になった気がしますが(ちょっと考えたら読まなくてもすぐ何のことかわかってしまうので)、何はともあれ「一体何が語られるのか」と興味を引くには十分なインパクトがあるし、何と言っても字面が良い。
 この作品を語る場合、まずその特異な文体について語られなければいけないと思いますが、これについては良くも悪くもあった。良い点。ない、の連続の中で、「本筋と関係がない」ことを示す表現だけが結果的に肯定表現として浮かび上がり、本筋がそもそも「ない」という自己言及的な効果を生んでいること。これはユーモアという観点から面白い。実際のところ効果として機能していない部分もあるから、果たして狙ったものであるかどうかは疑問なのですが、それでもこの嫌気がさすほど強迫的な「ない」の連続の中で、どこかふざけた印象を与えることに成功している。そしておそらくそれは「ない」を用いた動機とも繋がってくる。自己言及的に、語りつつ語る内容を打ち消す。ここには文字の自己言及だけがある。だからそれは「また別の話ではない」と語られる時、内容そのものは「別の話」に追いやられながら語る行為だけは「別の話ではない」ものとして扱われる。「ない」という形式によって語られている内容は宙ぶらりんになって、にも関わらずここに溢れているのは尚物語なのだ、という意味と無意味の重ね合わせみたいなものが出来上がっている。この試みは面白いと思って読みました。ただ困ったことにそれが読んでいる最中はあまり面白くないのであって、これが良くも悪くもの悪い点にあたります。
 それはおそらく内容と形式があまり上手く噛みあってないことに起因するのだと思います。内容は、この場合つまらなすぎるか面白すぎるかのどちらかであった方が良い。形式が前景化している作品において、つまらなすぎる内容は前景化の意図を明確にするでしょうし、面白すぎる内容はそれが自己言及的な語りによって無内容に貶められることである種のユーモアになり得る(言ってしまえば無駄遣いのギャグ、ということなんですが)。そこそこの内容があって、それがそこそこ面白いというのがこの場合は弱点になってしまうのであり、それがさきほどの「狙ったものであるかどうかは疑問」という読解の難しさ、あるいは煮え切らない感じにも繋がってくる。こうした作品に要求されるのは、過剰さ、やり過ぎ感です。形式はやり過ぎが内容のやり過ぎとも響きあった時、この作品は「良くも悪くも」という評価を脱却できるのだと思います。もし、次また似たようなことをやるのであれば、そこに気を遣って欲しいなと思いました。なんだかんだで読解そのものは楽しめるものだったと思いますが。
メンテ
懇親会について ( No.17 )
日時: 2012/03/26 18:54
名前: 仁井田 ID:veOTgtmw

 第六回短編コンテストの懇親会を3月30日(金曜日)午後8時よりコンテストチャットにて行います。
 参加者の方はもちろん、それ以外の方も気軽に参加して、作品についてわいわいとお話できたらと思います。
 皆さんどうぞお気軽にご参加ください。
メンテ

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