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[13] 短編コンテスト最終回【結果発表】
日時: 2013/02/28 19:30
名前: 管理者 ID:Z2SPIZTs

●短編コンテスト最終回
 今月の管理者:葵

 こちらは短編コンテスト、作品投稿スレッドです。短編コンテストに参加される方はこのスレッドに作品をご投稿ください。
 執筆・投稿される前に、規約・企画説明スレッドを絶対にお読みください。
 今回は通常コンテスト回になりますので、以下に発表されるテーマを取り入れた10000字以内の短編を執筆するようにしてください。
 なお、ご質問等がございましたら、談話室の方にお願いいたします。


<スケジュール>
3月1日〜22日……投稿期間(定員30名)
23日〜4月1日……投票期間(こちらの該当記事コメント欄にどうぞ)
2日〜7日……決選投票期間(同じく記事を設けます)


※日程が変更されています。ご注意ください。(詳細は>>1をご覧ください)

●今回のテーマ 『ゲーム』
 短編コンテスト最終回となります。管理側の私的な都合で、たった十回でコンテストに幕を下ろすことになってしまい、大変申し訳ありません。最終回は私が責任を持って最後まで運営させていただくので、よろしければご参加いただければと思います。
 テーマはゲームとしました。スポーツの試合やテレビゲーム、カードゲームなど、世界にはたくさんのゲームが溢れています。人生や恋愛をゲームにたとえる人もいますし、工夫次第で様々な取り入れ方ができるのではと思います。少し難しいテーマかもしれませんが、たくさんの方の参加をお待ちしております。

●提出作品(敬称略)
 >>2 Raise:星々
 >>3 バーニング:三月は浮遊する
 >>4 春姫:LOVE PARADE
 >>5 宮塚:この世界の総和
 >>6 軽伸辺 柿太:さくらのなまえ
 >>7 鮭:すべてを
 >>8 朱空:眠りの夢のあかつきの花
 >>9 ポンチョ:黄昏ゲーマー
 >>10 8823:闇に降るひとひらの初雪のように
 >>11 かに:我ら五ツ星高校電算部
 >>12 しじま:水を結ぶ

●結果発表 >>14
●投票詳細 >>15-
メンテ

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Re: 短編コンテスト最終回【投票期間】 ( No.21 )
日時: 2013/04/02 00:34
名前: しじま(投票) ID:v/eFxYX2

投票

 ベスト・ワースト共にテーマ消化を中心にしています。それに加えて、文章や構成などを見ております。ここでは、各順位ごとにどうして差がついたのかを書き、個々の作品自体の評価はレビューに示しております。

ベスト一位 朱空さん
 レビューの通りです。テーマ消化及びそれ以外も含めて全体的な作品の完成度が高かったです。文句なしの一位です。

ベスト二位 鮭さん
 テーマ消化が挑戦的でよかったのですがどうなのだろうということと、誤字のひどさから正直二位にはしたくなかったです。とはいえ、文章や物語のレベルは他のベスト候補(一位を除く)に対して抜きん出ていたこの順位に。また、テーマ消化に関しましてはまがりなりにもレビューのように読んだ限りはそのように評価すべきだろうということもあり、やっぱりこの順位だと思います。

ベスト三位 バーニングさん
 テーマ消化に関しましては、おそらく二位か三位です。二位の作品とはテーマ消化においてはそれほど差はないと思いますが、段落下げや誤字のひどさはほぼ同じで、テーマ以外の部分ではやはり差をつけられてしまったと思います。個人的には一番好きな作品でした。


ワースト一位 ポンチョさん
 テーマ消化も何のひねりもない上に全く消化できておらず、物語としても非常に雑な構成です。全体的にとにかく練るということことが足りません。

ワースト二位 軽伸辺さん
 テーマの目の付け所は悪くはないのですが、そこで終わってしまっています。「効率」という言葉を使っただけで、ほとんど練れていないと言ってもいいです。また、字数をオーバーしているうえに、作品をほとんどまとめきれていないのも問題です。

ワースト三位 春姫さん
 発想自体は悪くはないですが斬新とまでは言い切れず、しかも発想した段階で終わって練れていない。ただ、発想があってそれを書こうとしたところは評価したいです。ワースト二位との差は、作品を一応でもまとめられていたことと、こちらの方が文章が丁寧だったからです。なお、ワースト四位との差は、テーマ消化のレベルはほぼ同じでしたが、ワースト四位の作品の方がより意欲的に書こうとしていたことです。
 


以下、レビューです。
基本的に、テーマと良い点、悪い点という順で書いております。
良い点と悪い点はわりと文章と話が中心になっております。
なお、順番はレビューを書いた順番となっております。

春姫さん『LOVE PARADE』

 私の読んだ限り、テーマはあくまでも「人生ゲーム」という着想にしかないように思われました。はっきり申し上げまして、これだけであるならばテーマは全くとまではいいませんが消化できていないでしょう。ゲームをテーマにしたのではなく、「人生」をテーマにした小品集でしかありません。「ゲーム」はあくまでも各小品に対してちょっとしたアクセントや統一感を出すためのラベルにすぎません(ちょっとしたというのは、玉を貫く糸のように個々の小品を束ねる、ということができていなということです)。個々の小品にもゲーム的要素が一つも感じられません。
 そもそも問題は、「人生」と「ゲーム」に分けず「人生ゲーム」と見てもやはり厳しいものがあるからなのだろうと思います。私は人生ゲームをあのルーレット(作中だとサイコロになっていましたが、それだとすごろくっぽいかなあと思います)を回して進んでいくボードゲームであると認識しておりますが、そのゲームと重ねることも難しいように思われます。あのゲームはあくまでもマスが進むごとに、ゲーム内部の時間が進みますが、春姫さんの作品ではマスが進んでいっても時間は進んだり戻ったりしています。この点からも、「人生ゲーム」として見ることは難しく、「人生」がテーマと見えてしまう原因があります(「ゲーム」であるならば、くじ引きのように引いた番号の人生が見えるのようなものの方が特質的には近いものがあるように思われます。あるいはすごろくの方が作品とは近いものになったのではないでしょうか)。あと、各小品のマスの説明文ですが、文章自体は実際のゲームのような「命令」的なかたさもなく、また内容も人生ゲームを感じさせるものであり、この点に関しては良かったと思います。
 良かった点としましては、かつての作品をどんどん詰め込むという発想がとにかく良かったです(私は短コンの作品をほとんど読んでいなかったので五マス目でようやくもしやと思い、過去のコンテストの目次をみて確信にいたりました)。最後だからこそ誰かこういう遊びのような要素は入れて欲しかったと思っていました(あくまでもこの発想は真剣な「遊び」であって、春姫さんの「ゲーム」的挑戦と見たいとしても、それはこじつけだろうと思っています)。個々の小品もそれぞれもとの作品を読んでいなくとも(私もレビュー量が多いので正直当たる余裕がありません、ごめんなさい)、十分読みうるものになっていたと思います。作品全体を通じて流れる優しい目線はたいへん素敵です。各小品が個々の作品からタイトルをつけられているだけか、並べていくと非常に面白いです。同じようなものが並ぶのではなく、様々な味のあるものが並んでいて目を引かれます(ただし一方では小品の内容とかみ合わないところが出てきますが、これは仕方ないのかもしれないと思います)。タイトルと共に世界観なども変わっていき(特に固有名詞のつけ方から四マス目と五マス目が大きいでしょうか)、多少混乱しないわけではないのですが、文章がしっかり地に足がついていて読みやすさは決して損なわれていないです。総評でも書いておりますが今回は無理にテーマに絡めようとする文章が多いように感じられておりましたが、春姫さんの作品は数少ない無理のない落ち着いた文章で本当によかったです。比較的端正(細かなところで多少ひっかかりはありますが)でかつ叙情的と表現してもいいと思います。素直な心理的描写に、やわらかな動作の描写がかみ合ってとても効果を上げているように思います。「つう、と一枚の写真をなぞる」から「私の心は冷えていた」などはとても印象に残っています。またこういった文章を書く一方で、最後の方はややコミカルな軽やかなタッチにしたり、(あくまでも緩やかな幅の中の)落ち着いた文章の変化もまた良かったと思います。統一感があったと言ってもいいでしょう。
 悪かった点としましては、前述いたしましたテーマがまずは一点。次に、各マスの説明文です。ここは文章自体は良いのですが、作品の中にはめ込んだ時にあまり効果的には感じることができませんでした。「闇の魚」などがそうですが、ちょっとこれは小品を表した文章とは思えません。これに関しては、過去の短コンの作品を振り返って読みましたが、それでも小品とは合っていないと思います。主体(マスに止まった人物)と「あなた」の不一致(主体=「私」、あなた=祖父と捉えております)が混乱を呼びますし、また「心ここにあらず」をはじめとして祖父への「私」の印象を総合するとかなり無理があります。
 全体としましては、とにかくテーマ消化に尽きると思います。文章や発想に関しては、今回のコンテストの中では高い位置にあると思いますが、それをもっても補うことは無理だと思います。ただ、全体を人生ゲームとして括っていこうとする、最後の最後でも挑戦する姿勢があったことは非常に喜ばしく、そこは高く評価したいと思います。


宮塚さん『この世界の総和』

 テーマに関しましては、何らかのゲーム(この場合はゼロサム/非ゼロサムゲーム)を引き合いに出してそれを世の中や生活に重ねていくというテーマ消化に関しては比較的オーソドックスと言っていいでしょう。ただ、これは正直かなり分かりにくいです。どうしても世の中をゼロサムゲームとしてみなすことができません。「アメリカの中流階級程度」の生活水準を基準とし、その基準に対して一定期間内において分配された富の量を得点とする(分配にかかるコストは無視)。私にはこのような考え方でないと、まず世界をゼロサムゲームといえる方法が分かりませんし、ちょっとこれはまわりくどいように感じます。なんにせよ、良峰の発言に「その総和(サム)を調整しなければ」とあるように、そもそも総和が調整しうるものである限り世界はゼロサムゲームとは言えないのではないでしょうか(私はあくまでもゼロサムゲームは総和はゼロで固定されているものであると考えます)。他にも終盤でガンドルフが「非ゼロサムな取引ではない」「メリットだけ」と言っていますが、これはプラスサムではないでしょうか。このように、ゼロサムゲームという観点においては、ちょっと無理があるように感じました。しかしながら、最後にマグニにテストケースを学ばせるという発想は面白かったです。囚人のジレンマの非ゼロサムゲームが下地になっているのだろうとは思いましたが、ゼロサムゲームと非合理性(非ゼロサムゲーム)を混ぜていこうとする試みに思えまして、単に世界はゼロサムゲームだという言説から一歩進んだゲーム観を作中に取り入れられていると思います。ゼロサムゲームをきちんととらえ直した上で、ここをさらに発展させれたら良かったのにと思います。
 良かった点としては、わりと「頭でっかち」(宮塚さんの言を借りるならですが)の文章ではなかったところでしょうか。内容的にはそう考えてもいいようなものなのですが、比較的上手に会話文に落とし込んでいて、良かったと思います。今回のコンテストの中では、評価できる方だと思っています。セリフ回しも平板なものではなく面白味のある切り返しなどができていて、なかなか会話らしくまた面白くなっていたと思います(場面的な点からは多少冗長とも言えそうですが)。ただ、「ちょくちょく叩きますね」というセリフはあまりにも不適切でひっかかているというのはあります。ともかく、会話の巧みさからは人物の魅力も出ていて良かったです。また、ところどころ細かな配慮のようなものを感じたのもよかったです(もちろん逆もありますが、それは全体的な説明不足に起因するように思われるので、ある意味では仕方ないようにも思っております)。たとえば、ガンドルフが一時間も早く来たところなどは、ガンドルフの異様性が端的に感じられました。ヴィルヘルムというとドイツ系かという偏見が働くのですが、むしろ無国籍的・偽名的印象が浮かび上がってきます。また、構成員のそう言ったところから、結社の異常性も出てくるように思われます。
 悪かった点としては、主に文章の点が多く、一つは描写の省略が多すぎることです。雪村ガンドルフを撃つ場面がまさにそうですが、撃った後の省略がひどすぎます。何が起きたのかが全く分からない。同様に、最初の拡張現実の場面なども分かりにくい(拡張現実についての説明を求めているわけではなく、研究者が消えたという一連の眺めが分かりにくいのです)。描写の混乱というよりも、最低限書くべき情報の欠落による混乱が随所に起きているように思います。地の文になると、場面のどこを印象付けようとしているのかが分からずどこか散漫な印象も受けます(マグニなどはもっと印象付けてもいいと思います。次に再登場した時とか、すでにどんなものかが記憶に薄れがちでした)。この程度にとどめておきますが、全体的に設定や描写において書くべきところと削れるところのバランスが怪しいかと思いました。ゲームの説明に手いっぱいで、人物などの説明まで手が回らなかったという印象です。
 全体としましては、とにかくテーマの論理性と構成不足(字数制限に引っかかりすぎている)に尽きると思います。他の作品と比べるとテーマ消化が「くどく」なくて良かったとは思うのですが、いかんせん世界はゼロサムゲームという中心的なものが多分に怪しいところを含んでいるために、相当大きなマイナスになっています。明らかに字数制限に引っかかったという構成不足の問題もあり、世界観や雰囲気など見せられていたはずのところも大きく損なわれてしまったという印象です。


ポンチョさん『黄昏ゲーマー』

 テーマに関しましては、正直物足りないところがあります。ゲームセンター及びそこでのゲームを書いただけで、それが作品においてなんの効果も上げていないように思われます。あくまでゲームセンターで遊んでそれがきっかけになっただけに思われます。さらに、「僕」と相沢の関係において、ゲームはそれ以上の役割も果たせていない。特に中盤以降は「ゲーム」から離れていき、人間関係やカテゴライズ(リア充、オタクなど)の方に意識がいっているように思います。むしろ、そういった人間関係やカテゴライズがゲームを取り込んで、こちらが中心になってしまっているような印象さえ受けてしまいます。「ゲーム」をするグループの僕らみたいな感じで。物語だけでなく、キャラクターにも生かされていません。「僕」はゲーマー的な思考回路というよりも知識が覗く場面もありますが(たとえば、「根本ができてないんだよ、この手合いは」というセリフ)、こういったゲームにかかわる部分が「僕」に深い影響を与えているわけではありません。ゲームセンターでの場面においても、あの空間は「ゲーマー」の空間であって、ゲームがあったということはできません。このように、あくまでも「ゲーム」に該当させるものを作中に登場させただけで、テーマ消化はできていないと言っていいでしょう。
 良かった点としましては、結局テーマ性が低いために起きてしまっただけのようにも感じられますが、文章に無理がないことです。無理やりこの作品がゲームをテーマにしているというのを主張するような文章ではないということです。表現自体は無理がないです。文章に用いる言葉ではなく、口語とりわけネットスラング的な要素を持った単語(クラスヒエラルキー、リア充、オタク)のような言葉を多く取り込んでおり、わりと自然体(自然ではありません)っぽく崩した感じであり、無駄な堅苦しさやなじみにくさはなかったように思います。それは作品全体を通して共通していることで、少なくとも変に分かりにくいところもなく読みやすくはありました。ステレオタイプ的なきらいはありますが、作品内容にあった文章を選択し、等身大のような「僕」あるいはその周辺を描こうとした姿勢は評価したいなあと思います。ストーリーの流れ自体もまっすぐで、読みやすいです。正直アクセントか何かが欲しかったところではありますが、無難にまとまっています。
 悪かった点としましては、ストーリーの起伏がおかしいように思います。どこが中心なのかが分からない。おそらく、「僕」が陰口を叩かれているのを聞いてから相沢との友情を確認するまでがストーリーの中心になるのにもかかわらず、あまりにもあっさりと流されています。この場面よりもむしろ、ゲームセンターで遊んでいる場面の方がよほど丹念に描かれています。しかし、あくまでも枚数を割いて丁寧に書いているだけであって、作中において果たしてどれほど重要かということになると疑問が残ります。全体的に場面が他の場面にそれほど効果を及ぼしていないともとることができるかもしれません。特に、ゲームに関することと人間関係やカテゴライズに関するものが、後者に前者が含まれるような形で切れてしまっているような印象を受けてしまいます。ストーリー自体がありきたりな分(別にそれ自体ではマイナスだとは思っておりません)、バランスを上手に取らないとストーリーで見せ場を作るのは難しいと思います。また、キャラクターがちょっと類型的すぎるように思います。ネットスラング的(と私が解しています)な世界を打ち出しすぎていて、型にはまりすぎています。むしろ偏見が過ぎていて、リアリティが必要以上に失われています。そう言ったものを持ち出すのは悪くはないですが、ちょっと露骨すぎますし、新しいものを何一つ打ち出せていないのは問題です。
 全体を通しましては、とにかくテーマに尽きると思います。もちろん他にも気になる要素はいろいろとあるのですが、テーマを深めていくことで大きく変わっていくはずなので、やはりテーマをどうするかの方が大事です。「ゲーム」というテーマが作品においてどのような機能を持っているのか、ストーリー、場面、人間関係などと絡めたりしても何でもいいのでもっと意識して欲しいです。


かにさん『我ら五ツ星高校電算部』

 テーマに関しましては、非常によかったと思います。かなり良くテーマ消化ができていると思います。漠然とゲームとして考えるのではなく、ゲームとはどんなものかというのをきちんと考えているところが好感を持てますし、それが作品の出来をかなり高めています。まさに「ゲームはアクションとレスポンスよ。面白いゲームは報われること」という最初の一言が生きているわけです。ゲームの中でも「アクション」と「レスポンス」に目を付けたところも面白かったですが、非常に物語とマッチをしているあたりがテーマ消化とよく結びついていると思います。「ゲーム」に重ね合わせたことをしていく(人生や生活等をゲームにたとえる)という点では一見かなりオーソドックスではありますが、ポイントを絞ったことで独創性が感じられます。最後の礼藤を殴る場面のような大きな「アクション」が用意されていますが、作品全体を通して細かな「アクション」が意識されている(「レスポンス」はどうしても「俺」の意識が働く以上、「アクション」よりは弱くなっているように思います)ところも良い。ただ、「IF」や「フラグ」のようなゲーム的要素(おそらく一般にはゲーム的な認識が強いのでいいのですが、プログラミング的要素ですし、電算部ということで多少意識してしまいます)は登場人物という点ではプラスですが(後述します)、テーマ的にはむしろ中途半端な挿入であり統一感を損なっています。いずれにせよ、「ゲーム」を漠然としてではなく要素としてとらえストーリーの中に巧みに取り込んだ手腕は見事だったと思います。
 良かった点としては、まず書き出しから最初の空行までの一場面がとても丁寧だと思います(最初の段落はちょっと入りにくい気もしましたが)。言葉の選び方が良く、いかにもライトノベル的な部活の様子が浮かんできます。「ポニーテールの髪が馬の尻尾のように喜びに跳ねている」なんて部長の無邪気な人柄と学生的な幼さが表れていますし、そう言ったものを見ている「俺」の人間性も垣間見ることができるように思われます(「馬の尻尾」という単語は果たして必要かとも思いますが)。他にも、ようやくジャンプアクションを実装するもたった一言でやり直しになる流れなど、比較的なじみのうすいはずの「電算部」を活動も人(部長と「俺」)を感じられるのはとても良かったです。「和装のウサ耳少女戦士」なんかもいかにも高校生だなあなんて思いました。それと、部長の動きから「俺」との距離感が自然と感じられたのも良かったです。これがなかったら部長の「ライトノベル的」な人物像が浮いてしまったのではと思います。また、一人称がよく機能していたと思います。「ウサ耳少女」の動きを見るところなどの生き生きとした感じもそうですが、「一滴の黒いインクが頭の中に広がって、じわじわと塗り潰されていく」のあたりなど、意図的に描写を省略しながらも強烈な自意識が描かれているのは上手いと思いました。あまり書かないのに、一方で「俺はレイプされていた」と強い文章を持ってくるのもまたすごい上手いと思います。ストーリー自体は多少安易にも感じられましたが、書かないことでそれをあまり感じなかったようにも思います。
 悪かった点としましては、まずタイトルでしょうか。これだと同名の長編があって、そこから一部を抜粋したようなそんな感じがします。少なくとも「我ら」の物語ではないですね。ただ、タイトルの雰囲気と作品の雰囲気はそれなりに合っているようには思います。また、全体的に物語が駆け足ですね。意図的に描写を切ったりしているところはいいのですが、それを差し引いてもやはり早いです。最初の場面のていねいさがもっと欲しかったです。緩急をつけているにしても、ちょっと極端です。結局「文吾」に関してもほとんど描けていないために、後付けのようなかなり唐突な印象を受けてしまいます。猪国の「稲津部長とは中学のころから仲がいい」という設定も、「文吾」の話をするために後から付け足したのではと思ってしまいます。最後の最後でこの展開は正直失敗だと思います。
 全体的にはストーリーにはやや難が見受けられるものの、テーマ消化や文章がそれを補ってあり余るレベルであったと思います。登場人物に関しては多少好き嫌いが出そうな気もしますが、(地の文も含め)言葉選びがしっかりしており個性が出ており、そこも良かったです。勢いでなんとか乗り切ったとも言えるかもしれません。


8823さん『闇に降るひとひらの初雪のように』

 テーマに関しましては、正直消化しきっていませんが、意欲的に消化しようとする姿勢は見えました。ただ、時間不足により作品が未完成に近い状態になってしまったのか、テーマ消化も不十分になってしまっているのが残念です。ゲームの感覚を現実に重ね合わせていくということに関してはどなたか書くのだろうと思っていたのですが、むしろ現実の感覚を中心にゲームと重ね合わせていくという逆の発想には正直驚かされました(作中だと「エネルギー」などの表現が用いられていますが、私の言葉に直しますと感覚・感性という風に感じました)。相当難しいことのように思われますが、それを感じさせないところがすごいです。ゲームセンターのゲーム及び「呪いのゲーム」に関しましては、正直もっと書き込んで欲しい気持ちがあるのですが、あくまでも現実の感覚をゲームの感覚と引き合わせるという点に絞られていたのは良かったと思います。本当はもっと字数を増やして「ゲーム」についても作品の中に落とし込んでいくほうが良かったでしょうが、今の字数であればこの方がいいでしょう。ただ、「呪いのゲーム」はわざわざ名前まで付けて小道具とするのであればもっと生かさなきゃならなかったと思います。あまりにもフラットに流れてしまって、何だったんだという気がしないでもないです。それと、感覚に関して皮膚感覚的なものは良く書けているのですが、人間関係における感覚は正直中途半端でバランスが悪いとは思いました。もちろん「ゲーム」の感覚は前者を中心として書かれているので逆であるよりはよっぽどいいのですが、物語における深みが出ないのがもったいないとは思いました。あと、ちょっと理屈っぽいところはもっと排しても良かったのではないでしょうか。これももったいないです。
 良かった点としましては、テーマにも関わることではありますが、感覚を描いていこうとしており事実一定の効果を上げていることでしょう。多少理屈に流れたのは正直残念ですが、あくまでも感覚の方が中心ではあったのでまあ良かったなと。その感覚ですが、色彩・皮膚・音など様々な感覚に訴えかけるものでありながらも、散漫でないあたりは丁寧に書かれていると思います。一番最初に極めて感覚的な場面を二つも続け、第三場面も多少は現実に引き付けながらも同じようにやっていくという構成の大胆さも、おそらくは評価の分かれるところだとは思いますが、私は良かったと思います。あと、最後の方の物語の起伏もきちんとついていて、締め方としてはまとまっていたと思います(ただし、内容面に関しては後述)。
 悪かった点としましては、まず人間関係はもっと書き込む必要があったと思います。ここを書ききれていないからテーマを消化しきれず、また物語自体も散漫な印象が出てきてしまいます。特に「このわけの分からなさが最高なのだ」というこの一文は、生き生きとした感覚を取り戻した象徴的な文章としてさっぱりとしていて非常に良いと思っているのですが、聡太の人間性が描けていないせいで活かせていないです。そしてここから最後までの流れも、ちょっと飲み込めないです。ちゃんとまとまっているように感じる一方で、首をひねざるを得ないような感じです。ちょっと主人公が一人で浮き足立ちすぎです。平板な人間関係を出すことと中途半端に書き込むことはまた別問題です。理屈で平板さを説明をつけすぎで、もっと動作などから演出しなければいけないと思います。「無関心」などの直接的なワードよりも、「笑うだけなら呼吸するより簡単だ」というセンテンスの方がずっとドライな感じが出ていていいのにもったいないです。それと、もうちょっと場面のつながりが意識されても良かったと思います。ちょっと場面感が切られすぎていてテンポが悪い上に、展開も速くなっているので、全体を通してみた時に散漫な印象を受けてしまいます。あと、タイトルは言わんとすることは分からないわけでもないですが、少々観念的すぎて合わないような感じがしました。
 全体としましては、テーマ消化が良かったものの、それ以外になると加点できそうで加点できないもどかしさがありました。ざっと読むとやや平板気味で何を書いているのか分からない感じです。感覚が重要になる作品だからこそ、もっと文章はていねいに書き込んでいけたらと思います。ただ、体感的な感覚に関しましては今回のコンテストの中でもかなり良かったと思います。オーソドックスのようで全然そんなことはない挑戦的な作品であり、このような作品書いてくる作者の姿勢に関してもたいへん好感が持てました。


軽伸辺 柿太さん『さくらのなまえ』

 テーマに関しましては、ゲームから「効率」という要素に注目して書いていこうという姿勢は評価したいと思っていますが、テーマが消化できていたかというと、言葉だけが空回りしており不十分です。主人公は「効率」という言葉を多く口にするものの、それが具体的行動には特に反映されてはいないですし、さくらが「非効率」な存在として描かれているわけでもないように思います。「効率/非効率」というよりは「常識/非常識」とかの方がしっくりきます。そもそも、あまりにも「効率」という言葉を使いすぎて、本来の「ゲーム」から遠ざかってしまっています。あくまでもテーマは「ゲーム」です。最後に思い出したように「ゲーム」という言葉を出していますが、ここまでに「効率」と乖離しすぎていて説得力はないです。将棋はテーマを消化する小道具としてなんら機能していません(おそらく最初からそんなつもりもなかったとは思いますが)。
 良かった点としましては、(マイナス要素もかなり大きいですが)セリフ回しです。作風と引き合わせても冗長ではありますが、意欲は感じられました。ありきたりな受け答えではなく、「回す」ということができていたのは良かったです。登場人物も個性を持たせようとしており、それが幾分かは成功していたことも評価できます。また、場面場面のつなぎ方は良かったです。今回は場面が切れすぎている作品が多かったのですが、全く気にならなかったです。
 悪かった点は、まず設定がどれも中途半端で消化しきれていないです。その上、ご都合主義的な粗も目立ちます。字数が足りなかったとはいえ、ちょっとひどいですね。明らかにエピソードがいくつか抜けてしまったように見えますが、そうだとしてもカバーできるレベルではありません。「夢遊病」は結局なんだったのかよく分からないですし、香歩が新しくマンションに越したばかりかどうかはわかりませんが、空き家だと思っていたのも物音などで気づかないものかと思ってしまいます。生徒名簿や住所録が一般家庭にあるというのも実に奇妙ですし、交通事故のくだりはいかにも後付けめいていて、なんのひねりもありません(さらに言うならば、交通事故が果たしてどれくらいの出来事なのか、さくらは主人公や香歩と同年代なのかなどが気になります。生徒名簿を調べるあたりはほぼ同い年に見えるため、事件も比較的最近のことだったのでしょう。それならそれで、どうして事件のことが知られていないのかもやはり気になります)。それらの設定等々の何が重要なのか漫然と書き散らしていては分かりません。また、一つ一つの行動が行き当たりばったりなのもこのあたりに拍車をかけていると思います。鞄を投げて枝を折ろうとするなんてとっさにやることとは思いませんし、さくらが急に打ち明け話を始めているような印象を受けます。さくらと香歩の行動や発言に大した差が見られないので混乱を生じてしまうというのにも問題があったと思います。睡眠薬を飲ませたり、GPSを仕掛けたりという突拍子のない行動自体は、このようなライトノベル的作風においてはマイナスだとは思っていませんが、登場人物の書き分けがないのであれば致命的です。こういう無茶苦茶なことは個性と結びついて支えられるものではないでしょうか。さくらという個性的な登場人物自体は評価したかったのですが、個性的とは言えなくなってしまっているのが現状です。さくらと香歩の個性だけではなく、主人公との関係性も書き分けが欲しいです。正直ここもほとんど同じように感じます。どちらも変なことを言って主人公を振り回しているだけというような。だんだん三人とも何を考えているのかがあまりにも分からなくなってきてしまいました。早い話が、きちんとていねいに書き込むところとそうでないところのバランスが取れていないために、単なるその場の勢いしかない作品にしか見えません(セリフ回しなどは面白くなるように練っているようには感じるのですが)。
 全体的には、テーマ消化ができていないうえに、丁寧さが足りません。確かにライトノベル的なセリフ回しや動作などには評価すべき点がいくつもありますが、それでもやはりもっとできたはずだという印象はぬぐえません。正直に申し上げますと、ここまでマイナスのことばかり書くことになるほどひどい作品という印象はなかったのですが、結果としてプラスに評価できることが少なかったです。


バーニングさん『三月は浮遊する』

 テーマに関しましては、とても良かったと思います。何かをゲームとたとえる発想自体は何のひねりもなくありきたりではありましたが(ただ、免許の取得をゲームにたとえるというのは意外性があって良かったです)、きちんと文章と通じてゲームの感覚(「現実との境界」)が表現されていたのは好感が持てました。それだけではなく、自動車の教習(「限られた時間のなかで学科と運転の科目をこなして、最終的には運転免許っていうクリアーの証明をゲットする」ことであって、「私」が運転する感覚などではないです)との両立がきちんとはかられています。一応自動車の教習が表面上はテーマ消化の中心のような感じで、ゲームの感覚の方はそこから引き出されたもののように思えました(タイトルや本文内容などから、やはり後者の方を意識しているのだろうと思いました)。しかしながら、実際よくできているのは前者ではなく後者なので、贅沢をいうとここのバランスをもっとよくできたら良かったのにと思いますが、決してだめなわけではありません。どちらの「ゲーム」も最低限は書かれていますし、決して無関係なものではなくきちんとつながっているという点でよくできていると言ってもいいです。あえて後者は前面に打ち出さないようにしたのかはわかりませんが、下手に押し付けがましくなるよりはよっぽどいいでしょう。
 良かった点としましては、なによりも「浮遊」感が出ていることです。大学一年の春休み、三月などの設定も浮遊感を出すうえでは非常に良い選択だったと思いますが、やはり文章によるところが大きいです。作品内容やテーマとの相性という観点では、相当質の高い文章だったと思います(「浮遊」感を出さないのであれば、もう少しすっきりさせるべきだと思いましたが、この場合はむしろプラスに働いています)。ともすれば冗長になりそうなところを辛うじて抑え込んでいますし、今回多くの人の作品においてマイナス要素となった理屈っぽさが比較的強くなく、むしろ「不安定さ」を出しているように思いました(「浮遊」という言葉よりはよりネガティブな雰囲気なので、あえて「不安定」と表現しました)。なんにせよ、大学生らしいちょっとふわふわした瑞々しい文章です。書き出しから非常に丁寧です。自分の身の回りの環境を、呼吸や建物などを配しながら丹念に見つめることができています。自動車の運転は二つのコントローラーの操作というたとえも、同じように綺麗に描けています。会話が凝られていないのは非常に残念ではありますが、「私」と七海との距離感も非常に心地よく描けています。漢字とひらがなの書き分けもバランスが良いですし、文章に関しては本当に良かったと思います。物語としては悪く言えば単調で見せ場もないのですが(ゲーム感覚でずっとふわふわしてて、教習が終わった途端ちょっと変わったみたいな取り方もできるでしょう)、一つ一つの教習の場面を、その内容に合わせてきちんと様々に描きつつそれをきちんとつなげていたので、十分引き付けるだけのものはあったと思います。
 悪かった点としましては、まず明らかな推敲不足が目につきました。疑問符・感嘆符の使い方や三点リーダの使い方、漢数字での統一の不徹底などは評価の対象外としましたが、いくらなんでも段落下げがここまでできていないのは投稿時間を踏まえなくとも論外です。述べるチェッカーで字数を測った際にも分かったことなのに、最後の方は一切直されておりません。あと、段落下げができてなくて無意識に粗探しみたいに見てしまったのかもしれませんが、誤字も気になりました。とにかく、この推敲不足は論外です(ワードでスペースを表示しないとしばしこのようなことは起こりますが、ノベルチェッカーで字数をチェックした段階か、投稿した段階で気づくべきです)。それと、きちんとまとめられすぎているとも言えるかと思います。全体的に穏やかで淡々としており起伏や緩急に欠けています。着地点も非常に無難です。減点がないと言えばないとも言えるのですが、やはり最低どこか一か所はもっと見せ場などを作っても良かったと思います。あと、「浮遊」感の原因がともすれば単なる「退屈」のようなものであり、ステレオタイプ的ともとれることでしょうか。このために、地の文や会話がところどころ非常にフラットです(特に会話)。もっと「浮遊」に挑戦しても良かったはずです(なじみがもてるという長所もありますが、最低限なにか個性のある感性を生かして「浮遊」して欲しかったです)。
 全体的にはかなり良い出来だったと思います。悪いところに関しては、他の作品であったならばプラス要素さえになりうる程度には良かったです。ただ、ステレオタイプ的な思考はもっと抑えてよくできたはず。非常に質の高い文章であっただけにもったいないです。物語に関しては多少人を選ぶところがありますが、個人的には評価したいと思いました。


Raiseさん『星々』

 テーマに関しましては、「遊び」と「ゲーム」が果たして区別できているのかという疑問が残ります。他の作品と比較すると特にそうなんですが、この二つが接近している領域で書いているというのは挑戦と評するのに値するものの、それが成功しているかというのはまた別問題です。もちろん私自身の「遊び」と「ゲーム」の認識がまず最初にあることは否定しえないのですが、それを差し引いてもこの作品の中に両者を分けるだけのもの、あるいはそうしようとする意識があったようには感じられません。さらに言うと、あくまで私の認識に照らし合わせた場合ですが、これは「ゲーム」よりも「遊び」に近いと思います。私は、少なくとも「ゲーム」は必ず最低限の秩序を要求し、一方で「遊び」は無秩序でも成立しうるものという認識があるのですが、「ゲーム」となりうる秩序を読み取ることはできませんでした。したがって、テーマに関しましては、「遊び」と「ゲーム」の混同があったと思いました。混同したものを無視したならば、よく消化できていたと思います。かつてのかくれんぼを作品の底にしっかりと沈めた上で、全体で丁寧に描き直されています。しかしながら、この繰り返された「かくれんぼ」はかつてのものとは変質しており、より無秩序で空をつかむようなものである以上、より「ゲーム」と遠ざかってしまっているように思いました。作品としての面白さはむしろここにあるとは思うのですが、テーマとしてはマイナスでしょう。
 良かった点としては、構成に安定感があったことです。凝っているわけではありませんが、かといってつまらないというほどでもなく、無難で読みやすい。この文章で構成まで凝っていたら逆に読めなかったかもしれないですし(ただし、内容自体はむしろ悪いと言ってもいいと思います)。オチが最初の場面でだいたい読めてしまうのもありますが、場面の見せ方などから安定感と読みやすさに関してはマイナスするほどではないです。緑の不在というものが、現在から過去そして現在という、ある種オーソドックスな構成の中で常に響いていて、ある種の統一感があったのも、安定感を生み出しているのだろうと思います。また、書き出しの二文の滑り出しの良さは非常によかったです。相当すっと作品に入れました(それなのに、最初の場面が全体で最も回りくどくごちゃごちゃしているのは不親切でしょう)。
 悪かった点としましては、まず一段落が長いです。ためしに文庫本と同じ文字数・行数にしましたが明らか長いです。長い以上に基準が分からないです。場面にしても意識の流(一番感じたのは「家賃を払っているのは両親だ」と「私は解剖学の〜」の接続でしょうか)れにしても、私の感覚と違うのかもしれませんが、違和感がぬぐえません。「私」の語り口もやや安定を欠いていて、時々違和感を感じました。一番の原因は、やっぱり語彙の違いでしょうか。前半や具体性の高いあるいは現実性の高いものから、後半へと一般性の高いものへと変わっていったからかと思います(あと、よく分からないたとえも前半から後半に欠けて減っていたりしているように思います)。単語選択などが安定していないせいで、特に「私」の人間性が安定していないです。緑もとんでもなく部屋を汚すようなだらしなさと、文章を書いたり朗読したりする様子と、失踪する様子がどうにも頭の中でうまく結びついてこないです。それと、持って回った言い回しをやたらするけれども、きちんと相手の動作を描写したりというのも少ないかなあと。「父は余裕のない微笑みで黙らせた」なんかは非常にいいのに、あまりにも全体を出来事として描写しようとしすぎに思いました。また、「私」があまりにも受け身的で、かつそれが徹底しているわけではなく妙にゆらゆらと語られている空間に出たり消えたりしているような感じです。最後になって急に「私」を浮かび上がらせてくるのに違和感を覚えました。妙に観念的ないしはイメージ先行になってきている。文章が変に詰め込みすぎていて分からないだけかもしれませんが、ここに来るまでの動きがあまりないです。回想の比重が大きくて、あくまでも現在だけで考えてみるとほとんど動きがないです。回想のための物語ではない以上、やはり現在はもっと作っていかなければならなかったのではないでしょうか。
 全体を通して思うのは、とにかく文章が強いように思いました。良くも悪くもです。物語の構成を変にぼかすなどの悪影響を出している一方で、作品を読ませているのはあくまでも文章であるという側面があります。文章があまりにもほかの要素に影響を与えすぎていて、そのバランスをどうするかというのが問われたと思いました。


鮭さん『すべてを』

 テーマに関しては、「ゲームのような」という形で消化しようとしたのかなあと思いました(「ゲームのような」という表現は「ゲーム」っぽいという中途半端なものという意味ではなく、ゲームと重ねあわされているようなという感じのものだと思ってください)。あくまで「私」も君彦もゲームをしているわけではなくて(「サバイバルゲーム」ではない)、でも環境は「ゲームのような」ものであるし、時に「私」と君彦の間には「ゲームのような」緊張感がある(二人の営み全体が「ゲームのような」ということは全然ないのでしょう。ただ、この奇妙な関係を成り立たせるんはそれ相応の緊張感と秩序がやっぱり存在していて、そこを「ゲームのような」ものにも感じられはします)。それはゲーム的なフィクションだとかリアリティのない世界という意味ではなくて、その点ではむしろリアリティは高い、説得力があると言ってもいいと思います。「私」と作品世界の関係が「ゲームのような」もの、緊張感のようなものを孕んでいるように感じました。あるいは歪みだったり、形容しにくい形で存在しているように思ったのです。少なくとも、決して「遊び」には傾かないような。正直に申し上げまして、はっきりとテーマがこうだと感じたわけではないのですが、「ゲームのような」であるならば確かにそれは書けていると思うので、私自身がそのように読んだ以上それなりにプラスかなあと思っております。そして、そうであるならば「挑戦的」に感じられますし、そのためそこを評価したいと思います。
 良かった点は、とにかく上手いし面白いと思ったことです。文章も非常にきれいですし、物語もとても楽しめます。まず、最初の一文がすごい。言葉もリズムも綺麗ですし、実際に情景も想像できます。最初に限らず、全体的にリズムや表現が綺麗と言わざるを得ないです。「私」の感覚にしても、「海と雪の〜郷愁を誘わない」のように、ステレオタイプ的ではなく丁寧に描かれていると思いました(決して奇をてらっているというわけでもないです)。決して必要以上に書き込んでいないというのがすごいです。中途半端に心情吐露をさせないでも、感じるものがありました。会話文も安直すぎるところに流れずかつ自然で心地よかったです(ただ、「一つは君と〜トイレ付のものだったということ」という極めて印象的かつ面白いセリフから得られた君彦のイメージに釣り合うようなセリフは一切出てこなかったという点で、もっとセリフは凝っても良かったのではないかとは思っています)。また、人物の描き方もよく、特にがんじいは良かったです。名前の付け方や決してしゃべらないというのはいかにもありそうですし、暴れたり身を投げたり一つ一つの行動に説得力がありました。説得力ということに関しましては、がんじいだけではなく、温暖化による水没など様々なことに感じられて、だからこそリアリティのある物語として読めたと思います。設定を説明・正当化しすぎない非常に巧みなレベルで、「遺産金や保険金」のようにそれを補強するだけのものを引っ張ってきているというのはかなり大きいでしょう。
 悪かった点に関しては、とにかく誤字が多いことです。投稿時間からしてももっと修正できたと思います。総字数に対する誤字の量が、おそらく今回のコンテストにおいて群を抜いてます。基本誤字はマイナス評価したくないのですが、さすがにこれはマイナス評価をせざるを得ないです。あと、好みの問題もあるのですが、正直最初の場面は評価したくないです。もちろん全体を見渡せば綺麗にまとまっているとは思いますが、それを考慮しても最初の場面は評価できないです。前述しましたように書き出しの文章は素敵で惹き込まれますが、場面全体として、あるいは読み返すとなるとやっぱり辛いものがあります。観念的な場面がどうも作品とは合っていないような気がします。この作品はあくまでもきちんと地に足がついたものですし(単にイメージだけで書かれているわけじゃなくて、きちんとリアリティや物語がある)、面白さもそっちにあると思うのです。それだからこそ、最初の場面はやっぱり悪い意味でふわふわしているしぼんやりしているし、文章としては素敵であろうと全体的には面白くないと思いました。
 全体としては、とにかく質の高い作品だったとしか言いようがないです。文章が本当に素敵でした。きちんと物語として読ませるものになっています。テーマに関しては、正直に申し上げて分かりにくいというよりほとんどわからなかったので、そのことに関しては大きな加点ができなかったというのがありますが、少なくともマイナスにはならない。最初の場面や誤字の多さも十分補ってあり余る物だったと思いました。


朱空さん『夢見の後のあかつきの花』

 テーマに関しましては、おそらく正統派の方向性でありながらも丁寧に作品に織り込まれていて非常に高いレベルで消化されていたと思います。まず、単純に「ゲーム」としてカジノと「ぼく」の行動の賭けという二つが登場しており、しかも二つのゲームは賭けという点で近いところがありよく噛みあっていると思います。しかも、同じ賭けでありながら「勝ち負けを生み出すもの」と「引き分け」という全く違うものとして描いたところは本当にすごいと思いました(しかもそれが同一人物の口から語られている)。この作品の「ゲーム」の消化は「ルール」が中心となっていて、漫然とあるいは固定的に「ルール」を書くのではなく、二つの賭けで書き分けたように「ルール」に対する意識が非常に高いと感じられました。しかも、多くの作品において「ゲーム」という単語がとってつけたような白々しさをある程度はらんでしまう中で、この作品が最も気にならなかったです。香港・マカオという舞台や他の会話などから立ち上る(良い意味での)飾った感覚と非常にマッチしています。「外交ゲーム」なんて他の作品なら間違いなく鼻白んだと思いますが、「必要なものは〜それで私は満足」みたいな言い回しと同じような響きを持って感じられ、浮いたところがない(良い意味で全部が浮いているとも取れます)。これだけでもうテーマ消化は相当高いレベルでなされていると思うのですが、「ゲーム」の「ルール」が作品全体に織り込まれていて、さらに高められています。まず、「ぼく」と優の関係はやはりルールが守られなければ成り立たなかった、一つのゲームになっています。それにこの状況は「ぼく」にとってはまさに「配られたカードで勝負するしかない」ものでもあったわけで。「バチェラー・パーティー」でさえ、結婚というものを前にした男の一つのカードの切り方なのでしょう。「ぼく」と優あるいはもっと別の他人の間には(たとえ当人たちの間には存在しなくとも、他者から見てなどどこかにおいて)否応なしに勝ち負けが出てしまうというのは穿ちすぎかもしれませんが。ともかく、テーマ消化という点に関しては、「ルール」を中心に様々なものを調和させていて圧巻の一言でした。
 良かった点としましては、作品と文章が非常に良く合っていることです。最初の店では雑多な街並みが浮かんできますし、そのあとホテルに行ったところから自然にかつ急に虚飾的な浮世離れした世界が現れてくるように感じます。場と文章が非常に高いレベルで噛みあっています。それは会話も含めてそうで、抜き出せば鼻白むような会話が見事に場と噛みあって機転の利いた面白くなっています。内容の面白さもそうですが、受け答えとして本当に会話らしい、ありきたりな定番の挨拶を回しているようなものとは全然違う、生き生きとしたものになっているのが本当に良かったです。地の文も会話文も書いてあるということを感じさせないと言いますか、無駄がなくて読みやすい。書くこと書かないことを良く考えて寝られた文章だと思いました。それは物語としてもそうで、やっぱり無駄な場面がない。起伏もあれば緩急もあり、場面の流し方が実に巧みです。
 悪い点としましては、ちょっとタイトルは合わない気がしました。全体にまで響くようなものでもないですし、なにより「あかつきの花」も「夢見」もどちらの単語も作品全体の文章からするとやや異質な単語に感じられます(特に「あかつきの花」が。「夢見」はまだあのある種虚飾的な世界に合うのかもしれませんが)。あと漢詩に関しましては、物語としては非常に面白かったのですが、テーマとは正直つながりが感じられず、できればそこともっと絡めてほしかったです。もっというと、「中国語は歌のように聞こえる」という素敵な視点がこの漢詩を絡めたエピソードと前半くらいでしか生かされていないことです。正直、最初の店をでてからは中国語の美しさを感じられるようなものがないです。作品舞台にも、「ぼく」と優との会話にも美しさや響きがないです(ある種浮世離れしたような世界を書いてしまっているから仕方ないのかもしれないのですが)。中国、香港、マカオの三つを書こうとしたために、一つ一つは書けていたとしても、すべての世界を完全にまとめあげるところまではいかなかったのだろうと思いました。
 全体としましては、ほとんど減点がない上に大きな加点がある非常に完成度の高い作品でした。テーマ消化も申し分ないですし、文章から物語までよく練られています。奇をてらったわけではなく、正面から「ゲーム」に取り組み見事に書き上げた作品です。


総評

 最終回で全体的に、みなさんのやる気は感じられましたが、それほど出来のいい回ではなかったと思います。とにかくテーマ消化ができていない、できていたとしても振り回されている作品ばかりでした。レビューではプラスに書いていますが、比較的相対評価気味になってようやくプラスになったという感じです。ほとんどが「ゲーム」それ自体を登場させるか、ゲームの「感覚」を利用したものか、ゲームの「要素」に目をつけたものでした。その中で目を引くのが春姫さんとRaiseさんです。春姫さんは人生ゲームを作品の構造として取り入れ、Raiseさんはかくれんぼを物語の中で反復させるという形をとっていますが、どちらも不十分なところがあったのが非常に残念です。その中で群を抜いているのが朱空さんの作品でした。上の三つすべてを取り入れ、非常に高いレベルでまとめあげています。次いでバーニングさんとかにさんで、バーニングさんは「ゲーム」と「感覚」を、かにさんは「ゲーム」と「要素」を織り込み調和させていました。一方でテーマ消化が不十分な作品は三つの観点のうちどれか一つだけを取り上げ、しかも深めきれず失敗していたという感じを受けます。
 そもそも、テーマを消化するとはどういうことなのかを考えていない作品があまりにも多かったように思います。「ゲーム」という単語を出そうとしているあるいはそこでほぼ終わっている作品があまりにも多いです。ですから、作品に「ゲーム」があると説明するのに躍起になって文章が妙に理屈っぽくなってしまい、作品全体が見失われてしまっています。物語や人物や文章などに魅力のある作品が少ないです。
 また、「ゲーム」とは何かを考えた人も少なかったのではないでしょうか。私はもっと「ゲーム」と「遊び」の区別のない作品が出てくることを危惧したのですが、それに関してはほとんどなかったので良かったと思います。しかしながら、「ゲーム」の名前・種類に頼るだけでそれを作品の中に取り込めていなかったり、「ゲーム」とは何かと自分なりに答えを出してもその答えの単語に頼りがちだったように思います。
 ゲームというテーマは確かに難しかったと思います。多分、初代短編コンテストの「小説」と同じ種類の、そしてほぼ同じ難易度があったのではないでしょうか。ただ、それでももっと挑戦して欲しかったと思います。スポーツの「ゲーム」や「ゲーム」世界、「遊び」と「ゲーム」みたいなものが出るかと思ったのですが、意外と穴になってしまったのも、もっと飛び込んでよかったのにと思ってしまいます。
 なにはともあれ、初代の頃から執筆者としてあるいは管理者として参加なさった方もいらっしゃれば、今回が初めての方もいらっしゃると思います。私は単なる一参加者としてのみの活動で、しかもここ数年はほとんど参加できてはおりませんでしたが、実に多くの方にお世話になりました(そして、お世話になりっぱなしでした)。なのでこの最終回に参加できて本当によかったと思っております。今回は、長年お世話になった方も、初めて知り合った方も、いろんな方とご一緒させていただきとても楽しかったです。ありがとうございました。
 今後もみなさんのご活躍を期待しております。
メンテ
Re: 短編コンテスト最終回【投票期間】 ( No.22 )
日時: 2013/04/02 00:34
名前: かに(投票) ID:1WKY2K1I

時間ないです。ぎりぎりで申し訳ないし、レビューもろくにできない。

>>2 Raise:星々
きめ細かい文章は相変わらず。AVのブスとか笑ってしまう。弟のキャラづけが細やか。
「緑」という名はちょっと分かりにくいかもしれない。弟の名前を出す必要があったのだろうか。
最後の文章、「星の女」の抜粋かな。これにインスピレーションを受けて書き起こした話って感じがする。
弟が結局どうなったのかわからない。残された主人公と隣の住人が緑を待ち続けてロマンスを繰り広げるシチュは素敵。ってかこのシチュがやりたかっただけじゃないのか。
やっぱり弟がどうなったか(帰ってきたのか死んだのか)書いてほしかったな。納得できる結末を導き出してほしかった。

>>3 バーニング:三月は浮遊する
空気感のある文体がいい。すらすら読める。
題材が自動車教習ってのに惹かれる。けど、教習のディティールがちょい足りないか。
金メッキ免許取得者の私の体験では、自動車教習の最初ってゲーセンにあるような運転ゲームみたいな感じでシミュレートするんだけど、こういうエピソードも挟んでほしかったな。テーマがゲームなだけに。それとMT車って、あのギアのガチャガチャが楽しいので、そこも書いてほしかった。と、わがまま。私ならこれを書く。
それはさておき。ふわふわ。逃げてる自由がふわふわかな。
少し縛れば達成感。充実感。教習は適度な緊張があってよかったと。いいんじゃないでしょうか。

>>4 春姫:LOVE PARADE
評価不能カテゴリなのでベストにもワーストにも入れない。
短コンへの愛が伝わりました。
私も短コンに参加できて、春姫さんをはじめとする参加者のみなさんと出会えてよかったです。

>>5 宮塚:この世界の総和
世界観がSFで数学的でカッコイイ。
ガンドルフの、物腰は柔らかだけど人を見下すようなキャラが面白い。敵幹部っぽい。
そんな強敵を倒した主人公だが、真のラスボスが弟って展開も熱い。
でもラスボスに敗れるのは残念だ。倒せばよかったのに、なぜバッドエンドに持っていったんだろう。
持論ではあるが、よほどの意図がない限りバッドエンドにするのは怠慢だと思っている。

>>6 軽伸辺 柿太:さくらのなまえ
キャラが個性的で楽しい。ラノベ的。
桜の木で首吊り自殺をするシチュは強烈。そんな冒頭の展開に惹かれ、あっという間に読み終えた。枚数オーバーの長さを感じさせないテンポの良さ。
さくらのめんどくささがいい。物語を引っ掻きまわす中心人物。
香歩が登場してからは、会話シーンがちょっと混乱した。誰が喋った台詞なのか。
三人で会話させるのは難しい。香歩の口調を特徴づければよかったかもしれない。

>>7 鮭:すべてを
がんじいのエピソードには胸がつまりそうな思い。
がんじいを助けるためには縛るしかない皮肉さ。解放したらがんじいはいなくなった。なぜがんじいは故郷を離れなかったんだろうな。故郷が好きだったんだろうな。
沈む故郷。銀世界。誰もいない静謐な町で主人公と君彦だけが息をしている。この冷たい感じがなんともいえない。

>>8 朱空:眠りの夢のあかつきの花
香港とマカオに旅行に行ったような気分。ハードル高いのに書けているのはすごい。没入感と臨場感がある。会話もしゃれてる。
なんかこう、全体的にしゃれた空気がいいね。
主人公が友人の策略で昔の恋人と会わせられるという裏は面白い。賭けていたのか。一緒に寝るけどやらないというユーモアもいいなあ。

>>9 ポンチョ:黄昏ゲーマー
青春だ。ゲームで青春。
近づきがたい不良が実はいいやつで、仲良くなる。
卒業してからは疎遠になったけど、ゲームで遊んだいい思い出。
テンプレどおりの「いい話」なので、もっと工夫がほしかった。

>>10 8823:闇に降るひとひらの初雪のように
滝口くんも誘って三人でプールに行くってのはどうかと思う。
彼氏いるのに別の男と仲良くするってどうなんだ。普通に聡太を彼氏にしてもいいじゃんか。それとも聡太を彼氏にできない理由ってあるのか。
滝口くんと一緒にいてもつまらなそうにしているし、主人公は滝口くんと合わないんじゃないのか。
抽象的な表現はなんかすごい。退屈な授業が物凄く大げさに書かれている。

>>11 かに:我ら五ツ星高校電算部
ラストがやっぱり駆け足だなあ。文章が粗い。語彙力足りない。もっと練りたかった。
書くのに精いっぱいで、書ききるのに精いっぱいで、テンパってました。提出時間ギリギリ。
「ゲーム」はまあ、いじめもゲームだという暗喩もあるけど、気づく人は多分いない。
キャラ名はレベルファイブが元ネタ。タイトル(高校名)もあれですし。

>>12 しじま:水を結ぶ
それで終わり?って思った。ユキが帰ってきてからが本番でしょうに。ユキが離れていった理由とか知りたかったのに。そこまで書く時間はなかったのかな。
百科事典の告白は唐突に感じられた。話から浮いている。伏線がもっとほしい。
三角関係はいい感じ。絶妙な距離感。ハナが可哀そう。
タイトルが素敵。


以上のレビューから投票。

ベスト1位 朱空:眠りの夢のあかつきの花(3点)
ベスト2位 鮭:すべてを(2点)
ベスト3位 バーニング:三月は浮遊する(1点)

ワースト1位 しじま:水を結ぶ(-3点)
ワースト2位 8823:闇に降るひとひらの初雪のように(-2点)
ワースト3位 ポンチョ:黄昏ゲーマー(-1点)

時間ないよー。
メンテ
Re: 短編コンテスト最終回【結果発表】 ( No.23 )
日時: 2013/04/02 00:44
名前: 宮塚(投票) ID:1WKY2K1I

 相変わらず批評は苦手です。

BEST1 朱空:「眠りの夢のあかつきの花」
 ギャンブル。
 悔しい。悔しいけど面白い。ゲームと言うお題の消化の仕方はギャンブルと言う至極真っ当なものであり、奇をてらった作品ではないの

に独特の世界観があって、読んだあとにちょっぴり心地よさが残るような、そんな小説でした。
 マカオでギャンブルって何かそんなエッセイみたいなの有ったなと思ったら、深夜特急か、案の定元ネタが出てくるのが親切。ラストが

分かりにくい作品が多かった中で、上手く締めてあるしすげえなあと感服しました。ただ、何か物足りない感じがするのはなんでなんだろ

う。多分描写が薄いってことなんだろうか。

BEST2 バーニング:「三月は浮遊する」
 運転免許。
 ほんのちょっとの日常を切り取った、ああそういえば短編コンテストの作品ってこんな感じだっただった、みたいなことを思い出した小

説。車の教習がゲームみたいだと言い、ふわふわモラトリアムを疎ましく思ってる春香と、自分に正直に生きている七海。使い尽くされた

二人組の構図なのかもしれないけれど、やっぱり僕はこう言うのが好きなんです。
 目新しさは感じなくてもほんのり優しさを感じるこの作品は安心して、そして楽しんで読みました。けど、春香がふわふわしてるのは良

いとしても、物語そのものがふわふわしてる(ちょっとエピソードに力が足りない)のはマイナス点。それでも2位に推すんですけどね(

笑)
 悪い所はほかにもあって、推敲が足りないこと。『車を運転し。学科で勉強し、また車を運転する。』と句読点のミスがあったり、ラス

ト『曰く、あなたの申請は承認されました、と。その二文字が、わたしにはとても心強く感じる。』の二文字がどの二文字なのかわかりに

くかったり。
 こうして見ると結構悪い所多いですね、でも誤字やらで評価を下げるってのも何か(妥当にはちがいないんだけど)揚げ足取りのような

気もしてあまり自分の中ではあまり大きな減点対象にはならなかったこともあり、この順位。

BEST3 春姫:「LOVE PARADE」
 人生ゲーム。
 まさにラブパレード。ある意味で短編コンテスト最終回に最も相応しい作品だったのがめちゃくちゃ高ポイントでした。昔、旧短コンが

終わったときも某参加者が似たようなことをしていて、その時も俺三位に入れてたっけなあなんて懐かしいことも思いながら(笑)
 本来はそこは評価点に入れるべきではないのかもしれないけれど、小説という人生ゲームを演じてくださった登場人物たちの幸せな様子

を見事に表現していたので、これはベストに入れる価値はあるな、と。
 本当にそれだけです(笑) ありがとうございました。そしてお疲れ様。

次点
鮭:「すべてを」
 逃避行。
 読んでいて複雑な気持ちになりました。帰るところに帰れなくなると言うとどうしても東北の地震を思い出してしまうわけで。多分、そ

れも意識しながら書いたのでしょうけど。
 がんじい、良いですね。ちょっと頭に残る登場人物です。行き成り話の中に入ってくるものだから、何か物語に絡んでくるんだろうと思

うと案の定だったのもマル。
 朱空さんの欄で今回ラストが分かりにくい作品が多かったと書きましたが、これはその中の一つですね。「きみ」が指すのが誰なのかち

ょっと考え込んでしまいまして。ただ、このあたりは狙ってやってるんだろうなと思うのでマイナス点にもしにくいですが、もうちょっと

描写が細かくても良かったものと思います。最後を幻想的な雰囲気にしたかったのかもしれないけれども、今まで澄んでいたスクリーンが

急ににごりだしたみたいな感じで、僕はあまり好きではありませんでした。でも、作品全体の雰囲気は流石に作り上げるのがうまかったの

で次点。春姫さん越えるまでのインパクトがあれば3位だったんですけど、それもなかったのでー。
 とは言え、複雑な気持ちながらも面白く読ませてもらいました。お疲れ様です。

Raise:「星々」
 かくれんぼ……かな?
 何かいつものことだけど、テーマの消化率が不具合。特に今回はかなり上手くテーマを使っていた人が多かったので目立ってしまった。

投稿順に順当に読んでいったので、一番最初に読んだときは「これはベスト入り間違いなし」と思っていたんですが、他参加者の影に隠れ

てしまいました、ごめんなさい。純文学な情景描写は流石で読み物としてとても楽しいんですが(いつか音読が楽しいみたいなことを言っ

たことありますけど、これもなかなか楽しい)緑の疾走癖が結局本当に只の疾走癖で、姉貴振り回されてるだけじゃあんと言う何か妙なガ

ッカリ感が。いや、お前何を期待してたんだよと言われても困りますが(笑)
 『緑の失踪癖は、はじめは遊びの見かけをしていた。〜』の下りの段落が好きです。

かに:我ら五ツ星高校電算部
 電算部。
 全作品のなかでも、テーマに真っ向勝負してきた感じ。だからこそベストに入れたかったんですけど、これもちょっとインパクト足りん

かったあああ。稲津部長いいですね、こう言う人いる。弟と壇くんを重ねちゃって入れ込んじゃってる部長。この小説の主役は部長です、

異論は認めない! みたいな。
 私事ですが、俺ノートは高校の時クラスで晒された経験を持っているので心臓になんかチクチクしたものを感じながら読んでおりました



軽伸辺 柿太:さくらのなまえ
 ゲーム感覚。
 ラノベだー、ライトノベルだー。これは文字数を削りにくかったのも頷ける。とは言え、同じく文字数に苦戦して色々削りまくった僕と

しては減点です。私怨(笑)
 ていうか、ラノベチックな話が今回少なかったですよね、何か意外。そんな中でこれを投下した柿太さんは独創性と言う点で評価しても

いいんだけど、他の参加者の影に(以下略
 個人的に『自殺道具のデパート』って表現がツボった。自殺道具のデパート、うん、これどっかで使わせてもらおう(笑)
 あと、のらくら。のらくらー。
 さくらもそうだけど香歩ちゃんがラブコメヒロイン過ぎる。やべーこの子すげー。そしてのらくら主人公を嘲笑ってやりたい。
 そしてさくらのキャラがガハラさん思い出して辛い(知ったこっちゃない
 死と外が似てる、とかいい感じの言葉遊びもあり、嫌いじゃないですこの小説、や、ラノベ。けど、もうひと押し欲しかったかな。次点。


WORST3 しじま:「水を結ぶ」
 恋人ごっこ。
 設定と話の道筋はホラーなのに、青春物って言うギャップにやられた。これも多分Raiseさんと同じで最初の方で読んでたら「ベスト行

きや!」と思った作品。けど、他の参加者の(略
 さっきも言ったようにホラーな設定なんだけど、青春物なので描写とか科白のバランスが結構難しかったと思うんですが、そのバランス

が取れてなかった感じ。や、本人はホラーなんて意識してないのかもしれないけれど、個人的にはハルの異世界の設定のそれがファンタジ

ーと言うよりホラーチックに思えたんです。本人がホラー意識してないとしてもファンタジーとしても未熟な点では減点せざるを得ない。
 今回の投稿作品の中では一番世界観が掴みにくかったですかね。

WORST2 ポンチョ:「黄昏ゲーマー」
 ゲームセンター。
 「ゲーム」のイメージを最も正直に描いた点で評価出来る作品。
 だけど他の参k(ry
 オタクでひっこみ思案がちな主人公くんと、不良でゲーセンにたむろるけど心の優しい不良くん。これもオーソドックスで、僕好みの話

の筈なんだけど、ちょっと流石にオーソドックスすぎた。因みにクラスヒエラルキーを引き合いに出してくれたけど、これは「とりあえず

書いてみた」感が半端ないので、正直なくても良かった描写だったと思います。
 とは言えラストの再会の描写は涙する人は涙するような美しい終わり方なので、構成そのものに問題があるわけではないんですよね。二

人が仲良くなっていくエピソードもこれで充分なんだけど、やっぱりオーソドックスな話だから独特の情景描写や心情描写がないと物足り

ない。故にこの順位です。
 しかし面白かったです。乙!

WORST1 8823:「闇に降るひとひらの初雪のように」
 これもゲームセンターまたはビデオゲーム。
 惜しい!
 モチーフは良かった。しじまさんの作品をホラーチックと言ったけれど、これもなかなかにホラーチック、だけど青春。
 夢に見るゲームと、その手がかりの呪いのゲーム。関連性をさがそうとちょっぴり躍起になる「わたし」の心情はすごく理解できる。け

ど、理解できる故に小説として読むことが難しくて、ちょっと何だろう、小説というよりブログか日記を読んでるような感じ。日記文学な

るものもあるんだから、別に構いやしないんだけどけど別にこれは日記として書かれているわけでもないし、それにこの構成で読まされる

メリットもあまり感じなかったので申し訳ないけれど、最下位と言う結果に。

自作:『世界の総和』
 ゼロサムゲーム。
 確実に構成ミスです。これはワースト行きでも仕方ねーと諦めているところ。
 書きたかったのは世の中はゼロサムゲームと言う主張とその否定。あと、主人公が親しい人に裏切られハメられる、と言うのが書きたか

った。その二つを融合させるのに失敗した例ですね。
 主人公行き成りガンドルフ撃ってるけどどうしたお前! 何が有った!(笑)
 ホントはもっと描写あったんですよね。1万字に入りきらず、ばっさりと色々切った結果何か構成がおかしなことに。てな言い訳。
 「この失敗何度目だよ…」と落ち込んでいますが、これもある意味では短コン最終回らしかったのかもしれません、なんてことを思いな

がら。
 皆さん、長い間お疲れ様でした!
 また何処か別のイベントでもお会いしましょう。
メンテ
Re: 短編コンテスト最終回【結果発表】 ( No.24 )
日時: 2013/04/02 00:46
名前: 朱空(投票) ID:1WKY2K1I

 お疲れ様でした。自作についてのアレやコレは、何かの機会にやれればと思いますが、今回は割愛。

 投票において、今回は純粋に小説を楽しみ、なるべく重箱の隅に目をつぶって読みました。「テーマ消化」や「誤字脱字」などに減点はつけてません。ついでにいうと、加点もしてません。
 あと、感想は「書いてあることを読んだ」というよりも「私はこう読んだ」ということを書いています。読み解きをやっているわけではないので「そんなつもりで書いてない!」ということも多々あるかと思いますが、書く⇔読むというのは双方向のコミュニケーションだと個人的には思っているので、ご勘弁ください。
 ベスト1を除き、順位をつけるのが非常に難しかったです。率直に言えば、ワーストを設定するのは本当にイヤだった。こんなにイヤだったことは、かつて一度もありませんでした。
 それでもルールだから順位をつけましたし、感想もなにひとつ遠慮せずに書きました。ただ、今回の参加者全てが私にとって尊敬するべき人たちだったということは、まったく疑う余地がありません(投票を棄権したひとがいたら、それは除きます)。たとえレビューが酷評だったとしても、私はすべての作品から何かを受け取りました。みなさん、素晴らしい作品をありがとうございました。
 とても良いコンテストだったと思います。運営の皆さんも、お疲れ様でした。

 以下、全作への感想です。その後、順位を。

Raise「星々」
 不在の物語。物語は緑が失踪して一ヶ月が経過したところからはじまる。失踪癖がある彼にしても長い。部屋は綺麗に片付いている。たぶん、緑はもう戻らないのでしょう。
 すべてが手遅れからはじまる。それが自覚されているから、家族でさえ彼を探すことはしない。しかし、彼の「不在」は圧倒的な存在感をもって、がらんどうの部屋に残っている。
 緑のことが嫌いだった。でも、彼女の人生に彼はあまりにも大きく存在していた。好悪にかかわらず、あったものがなくなるというのはそれだけで虚しい。
 緑の不在を埋めるために、彼女はその部屋をたびたび訪れる。それは緑になろうとしての行為ではなく、単に緑があけてしまった彼女の空白を満たすための行為にすぎない。もちろん、そんな行為はどこにも結びつかないのに。
 そう、どこにも結びつかない。どこにもたどり着かない。それがこの小説がつまらない理由です。何も得られない。何も戻らない。何一つ、この小説は乗り越えない。死であれば、はじめからなければ。それにくらべて「あったものがなくなる」というのは、複雑な「私」を見せる。けれども、それだけのことです。
 そうである、という事実は私にとってべつに面白くない。すでに手遅れなのは緑であって彼女ではない。なのになぜ、としか私には思えなかった。「感傷に意味はない」のだというのなら、この小説こそが無意味なのだと。
 一方で読んでいて楽しいカタルシスもない。主張はわかるし構成もしっかりしていたけれども、エンタメ性も文学性も私には見出せない小説でした。
 なお、文章も非常に読みにくかった。見苦しいだけの比喩、読みにくいだけのディティールが多すぎる。冗長で無駄が多いだけの、面白みのない文章。変なだけで魅力のない緑という人物で引っ張ろうとしても、それは読者に酷というものでしょう。
 必要な情報とそうでない情報の峻別を。詳述とユーモアの区別を。半分の文章量で書くと、逆にいかに中身が空疎がわかるのではないか、という気がしました。神は細部に宿るかもしれないけれども、物語は宿らないと私は思う。

バーニング「三月は浮遊する」
 狭間にいるという贅沢。狭間にいるという所在なさ。自由であることの怖さ。自由であることの気楽さ。そのすべてを自覚的に選択することの、なんと難しいことか。
 彼女は地元を愛している。地元に帰ってきたことに安らぎを感じ、地元に住んでいる新しい友人に好感を抱く。でも彼女はもう方言を話さない。
 東京の生活に息苦しさを感じる一方で、東京の大学の甘さに心地よさを覚えている。せっかく安らげる地方に帰ってきたのに、彼女はまたカリキュラムを詰め込んで自分の選択肢を殺す。
 主張はすでに文中で十分すぎるほど、直接的に語られている。自分ひとりで決断することは難しいから、ひとは束縛を求める。それは無責任であることとは違うし、隷属を良しとするわけでもない。
 責任とは選択をすることだ。自分の意思で。そのための材料をひとつひとつ拾い上げていくための長い道のりを、彼女は自覚している。まだ遠いゴールにたどり着くための、大切なピースを。
 新しいつながりを獲得して、彼女はまた日々に戻る。ひとつひとつ、彼女には鎖がついていく。そうして彼女は「彼女の生活」を作り上げていく。「私」とは決して「私」のなかだけに芽吹き、根ざすものではないのだ。
 しかし物語において七海のなすべき役割が、ただの立場と台詞でしか表現されていないのは、小説的な退屈を呼び込んでしまっている。対話と気づき、出会いと別れを演出しておきながら、実はほとんどすべて「わたし」の自問自答でこの小説は構成される。
「わたし」に対する作者の深い理解に対して、七海という人物の奥行きのなさは、悲しくなるほどだった。対立も軋轢も理解も共感もなく、ただ彼女に道しるべを渡すだけの役割では、七海が哀れだ。小説の面白さとは、ままならぬ人物たちの衝突にも宿るはずなのに。
 文章、構成ともにわかりやすく優しさに満ちているけれども、芸と味がなかったのは残念なところ。

春姫「LOVE PARADE」
 よく、わからなかったです。正直に言って、まったく読み取れなかった。私の読解力が不足しているのか、なにか大事なセンテンスやルールをどこかで読み落としたのか……。
 もっとも単純に解釈するなら、これは「恋・愛をテーマにしたいくつかの掌編の、特に前後のつながりやキャラクターの共有のない集まり」なのでしょうか。であれば「三マス目」がないのはただのミスなのか……。
 ちょっとレビューのしようがないのですが、とりあえずそうとしか読めなかったので上記の解釈で合っている、という前提の上で書きます。
 さすがに「ひとつの物語」が不親切すぎて、それぞれの背景をここから推察して、それぞれの面白さや醍醐味を理解して、それを評価しろ、というのは乱暴にすぎるような気がしました。まだしもわかりやすくオチがある「一マス目」「二マス目」はぎりぎりで理解が及びますが、それ以降はかなり注意深く読んでも面白いという感覚にたどり着くまでの道が長すぎるように思われました。
 全体に「縛り」は感じましたが、テーマというべき何かを拾い上げることも、私にはできなかった。きっと何かしらの意図や主張や、作者のなかでのこだわりのようなものはあるかと思うのですが……。
 私にはあまり楽しむことのできない作品でした。すみません。

宮塚「この世界の総和」
 経済学の問題とされた根源的なことがらを、SF的な仕掛けによって突破しようとする。反則といえば反則だけど、思考実験、理想論のもてあそびとしてはおもしろい発想でした。
 歴史上、富の完全な再分配がなされなかった最大の理由は「それを可能とする方法論がなかったから」ではない。人類の利己性が富を再分配するという行為そのものを拒否したからです。89年に決着のついた話ですね。
 これを完全に実現するためには伊藤計劃の『ハーモニー』のような、人類そのものの利己性を排除する精神改革が必要でしょう。たとえばそれをマグニに学ばせるために今回の話があったとしたら、私としては非常に面白かったのかもしれない。が、そうではなかった。
 ひとは合理的には動かない。それが経済学が常に「あとづけの学問」のそしりを免れ得ない最大の原因のひとつです。だが、その不合理までを計算しきることができれば、経済は完全に把握される。その上で適切なインセンティブと法的整備を繰り返せば、ユートピアの現出は可能になる、ということでしょう。
 それは十分に面白い。が、その思考実験の答え自体は、多少なり経済学をかじったことのある学生程度であれば導き出すことができる。小説的な想像力の雄飛はその先にあるべきではないかと、ちょっと残念には思いました。
 書かれている内容の、スケールの大きさに見せかけた浅さは、読み終わってからの失望にはつながってしまいます。なまじ舞台装置だけが華美だっただけに、その感想は私においてはさらに顕著ではありました。
 話の展開や謎の小さな提出とこまめな回収はエンタメ的な仕掛けとして功を奏していたと思います。センテンス単位の文章の巧拙ではなく、小説を読ませる技巧という意味ですぐれた作品だったと思います。リーダビリティが高く、サービス精神に満ち溢れている。
 SFだったり経済だったりと好きな題材が書かれていたことを含めて、私は楽しく読みました。

軽伸辺柿太「さくらのなまえ」
 オリジナリティという言葉にはいかがわしさを感じますが、この作品に関してはちょっとたしかに、作者の存在を疑わざるを得ないかもしれません。個人的に悲しいことではありますが、悪いことではなさそうです。
 小説の作法。キャラクターの作り方とその配置、会話文の運び、語彙、文体の作り方、カタルシスの準備とそのフォロー、主人公の立ち位置、オープンニングからエンディングまでのストーリーライン、イベントの配置。
 春樹チルドレンという悪ふざけのようなレッテルがありますが、この作品に関しては上記すべてが少なくとも私の目には西尾維新の影響下(特に『化物語』かな)にありすぎるように見えて、純粋な創作物として楽しめるレベルまでコーティングがされていない、という印象でした。
 そして当然のことながらあらゆる面で西尾維新にははるかに及ばないために、コンテストでさえなければ私はこの小説は読まない。なぜならこれを読むなら西尾維新を読むからです。まずはじめに、私にとってこの作品がそういうものであるとは言っておかなけれならなかった。
 さて、純粋な創作物としてではなく、西尾維新のエピゴーネンであるという前提の上で読めば、小説として楽しむことは可能でした。つまり、真似はうまい。真似の練習をしたわけではなさそうですから、一定以上の実力があってこそでしょう。そこは素直に感嘆します。
 私の目から見て作品が西尾作品にことさら大きく見劣りする点は2点で、掛け合いのユーモアセンスのなさと、ラスト近くの主人公の気持ちの盛り上げでした。小説的な欠点を言えば、主人公の行動原理がシーンによって揺れてしまっているのはちょっと読みにくかった。
 地力は感じますので、もう少し、自分の小説のあり方というものを出せるように心がけたほうがいいと思います。もったいない。

鮭「すべてを」
 小説として抜群にうまい。文字通り、群を抜いてうまい。自分を含めて。いつの間にこんなに差をつけられたのだろう……。もう一生追いつけないんだろうなあ。すこし、寂しい。
 彼女は往復切符を買わなかった。彼は町へ買い出しにいって、戻った。何もかもを受け入れることができなかった。その土地で失われたものがある。失われたものがあるからこそ、縛り付けられる。逃亡はどこにもたどり着かない。
 残っていた人間と帰ってきた人間が触れ合う。それぞれに違うことを夢見ながら、そこに縛られ続ける。望んでいたのではない。彼らは出られなかった。出たかったのに。
 生きることに不感症であることの難しさは、万人にある日、唐突に訪れ得る。そうなればもう、生きるという行為の粋を集めることしかできない。二度目はないだろう。きっと下手をすれば、もう会うこともない。
 すべてが沈んでいれば生きることに理由はいらなかった。死んでしまえば風邪をひく心配もいらなかったのに。生きるということにうんざりしながら、山に登ったり物語を書いたりして彼らは生きていかなくてはならない。
 それでも、すべては予感されていた。電車で会ったときに。きみに会えて良かったのだと彼が言ったときに。
 綺麗な文章でした。特に文句をつける必要がない。素晴らしい作品だったと思います。

ポンチョ「黄昏ゲーマー」
 もうずいぶん前、ビールを飲んでピーナッツを食べてピンボールばっかりしている主人公のことを描いた小説がありましたね。やりたかったのはそういうことなのかもしれないな、と思いました。
 時の流れを実感するのは、鏡の前に立ったときでもないし、むかしの写真を眺めているときでもない。むかしの自分を知るひとに会ったときだという気がします。ひとは個人では何かを感じることが難しい。関係性のなかにこそ、生きている人間の肖像は生まれるからかもしれません。
 あのころ、垣根はまだ低かった。勝手に作っていたヒエラルキーを軽々と飛び越えてくれるヒーローがいて、そんなヒーローに出会うための偶然が、箱庭にすぎない学校のなかには溢れていた。
 相沢くんは気持ちのいい奴だったし、あり得るかもしれないギリギリのところで起こる、とても嬉しいハプニングもよかった。主人公の自発的な行動がそのラッキーを呼び込んだわけではないところは、エンタメとしてはちょっと惜しかったけれども。
 その後の別れも、実によくある。非常にリアリティのある描写ではあります。でも、それがなんだろう、と私なんかは思ってしまう。たしかにそういうことはあるかもしれない。失われてしまう。我々は高校生であり続けることはできない。
 それは、当然のことです。
 誰にだってそういうことはある。そういうノスタルジーは共感され得る。その当たり前を描出することに、私はエンターテイメントを感じないし、もちろん文学的な試みも見出さない。
 途中までは面白かったのに、最後にただのノスタルジーにまとめてしまったのは、私には残念なことに思われました。

8823「闇に降るひとひらの初雪のように」
 質量のない夢とゲームを結びつけることによって、乾いていた現実が輪郭を取り戻し始める。なるほど、おもしろい逆説だと思いました。それは皮肉ではあるけれども、妙に思弁的でつまらない女子中学生にはあり得そうな転倒です。
 思弁的でつまらない、と書きました。それはこの小説のリーダビリティが異様に低いことにもつながっていきます。一読、頭に意味が入ってこないのですが、それはでも文章がまずいわけではない。彼女の思考を追う文章が、あまりにも意味を持たないからでしょう。
 空気を、彼女は大切します。彼女は言葉によって世界や自分を定義することをしないし、もっといえばぜんぜんできない。プールも授業も映画もレストランも、彼女を取り戻すことはできない。
 その間、読者は何を読めばいいのか。何を期待して、何を感じ、何を考えて彼女の思弁に耳を傾ければいいのか。
 もっといいましょう。どうすれば彼女のこの、あまりにも幼稚な思弁を、興味深く聞き続けることができるのか。
 彼女の考えていることは実にくだらない。そして、それがくだらないことであると、おそらく作者は理解している。でなければここまで透徹した視点と文章は、たぶん生まれ得ない。それを延々と読まされる私は、退屈でしかなかった。
 それでも、この作品には救いがある。
 現実を取り戻した彼女は、というよりも、夢と現実の転倒からかえってきた彼女は、それでも安易に夢を破棄したりしない。最後に三人でプールに向かう光景、その両者を結びつけた終わりを迎えるところに、彼女の明るい前途を見ました。
 それは、私にはとても快い光景でした。

かに「我ら五ツ星高校電算部」
 すべての作品のなかで、もっとも「ゲーム」への愛を感じました。道具としてではなく魂として、作品のなかに溶け込んでいる、血肉になっていることが読んでいて感じられました。実に好感が持てる。
 どこからどこまではアクションで、どこからどこまでがレスポンスなのか。ゲームのなかのプログラムでははっきりと区別できるそれが、現実となるとそうはいかない。行動と反応は連鎖する。それは小説全体にしてもいえることです。
 アリストテレスは『詩学』のなかで、「良い悲劇は筋が数珠つなぎになっていて断絶していない」というようなことを書いています。これはまさに、誰かの行動が誰かの反応を呼び、その連続が物語を作っていくことを示しているように、私には思われます。
 この作品において、序盤はその通りに非常に丁寧に作られている。伏線や仮定を挟みながら、アクシンデントさえ制御下において美しく構成されていた。それだけに後半の駆け足展開、自動的とも言える結末は残念でした。
 先輩の行動は弟を亡くしたことへのレスポンスであり、そこから先へ進むためのアクションでした。ではその後の主人公の行動は、本当にアクション足りえたのか。私にはあれは先輩の行動へのレスポンスでしかなかったように思えます。あれでは報われるべきアクションを起こしたのは先輩だけだったのではないか。
 主人公は、ただ彼を殴るのではなく、ただ黒板にウサ耳を描くのではなく、もっともっと先輩に踏み込んだ「アクション」をするべきではなかったのか、そこで起こるだろう意外性こそがエンターテイメントの質を担保するのではないでしょうか。
 常にマイノリティであることにおびえていた彼が、できればマイノリティであることに誇りを持つような、そんな結末を見てみたかった。それはきっと美しかったのに。

しじま「水を結ぶ」
 物語不在の童話。
 言葉でしか語りえない存在の描出、というのは古来、小説において何度も試みられた挑戦です。たとえばカフカであり、ゴーゴリといった作家が先達であるいうことも、あるいはできるかもしれない。
 しかし、それは彼女の世界の紹介であって、彼女という世界の紹介であって、決して誰かの物語ではない。「実は現在、こうなっています」「実は彼女はこういう存在です」というのは、物語ではあり得ないのです。
 大切なのはそこから先、存在を定義し、存在の輪郭を瞭らかにし、その存在を認識させてあげたあとで、彼や彼女をどのように救い、どのように生かし、どのように傷つけ、どのように着地させてあげるのか。
 それは誰によってなされるのか。どうして成され得るのか。どうしてなされねばならなかったのか。そういったところに、物語の真価があるのではないか、と私は思います。
 もちろん、小説にとって物語が不可欠であるわけではない。物語を喪失しても小説としての結構を損なわなかった幸福な例外は存在します。でも、これはそういう例外にも至ってはいないように思われます。
 ひとつのアイディアだけで小説を結ぶことはできない。ひとつの存在を描くだけでは我々は何も得られないのではないでしょうか。それこそ、彼女が本の外の世界を永劫に得られないと思っていたように。
 ユキという外部が観測者であり、そこに希望があるのかもしれない。しかしその扉は閉ざされたまま、すべてはまるで幽世の出来事であったかのように質量を持たないまま置き去りにされる。
 読後、私には彼らが、どうしても哀れに思える。


ベスト1位 鮭「すべてを」(3点)
 これの順位だけが、まったく悩む必要なく決まりました。
 小説に格や品位というものがあるのなら、2つ3つの段階を飛ばしてこれだけが輝いていたと思います。

ベスト2位 宮塚「この世界の総和」(2点)
 文章の巧拙を超えたエンターテイメントとしての仕掛け、読ませるという意識の高さに敬意を表して。
 読んでいる人を楽しませるものとしては、これがもっとも優れていたのではないかと思います。

ベスト3位 バーニング「三月は浮遊する」(1点)
 娯楽を軸とする作品郡の中で映えたのが2位の作品だとすれば、娯楽を越えた「主張」を軸とする小説郡の中で映えたのはこれでした。
 この作品は実にリアルな問題を鮮やかに飛び越えて進む彼女たちの未来を私に予感させてくれました。

ワースト1位 春姫「LOVE PARADE」(-3点)
 この場所にこの作品名を書かねばならないことを、非常に心苦しく思っています。
 誠実に書かれた小説だと思いますし、作者の方と十分にコミュニケーションが取れていない自覚もあります。
 それでも、私にはわからなかった、という意味ではこれを選ぶしかなかった。すみません。

ワースト2位 しじま「水を結ぶ」(-2点)
 読み終わって私がもっとも、決して良い意味ではなく悲しく思ったのがこの作品でした。
 道具ではないはずの人物たちの、悲鳴が聞こえてしまったように思われます。
 が、やはり本来であれば「ワースト」という地位がふさわしい作品ではない。やむにやまれず。

ワースト3位 軽伸辺柿太「さくらのなまえ」(-1点)
 小説として不出来だったわけでは決してありません。他の作品と同様に。
 文字数の問題、あるいはレビューに書いたような問題、その2つを理由に挙げるのは誠実ではないと思いますが、それ以外にこの場所に置く作品を見つけられなかった。
 繰り返しますが、作品として不出来だったとは、決して思っていません。ご勘弁ください。
メンテ
Re: 短編コンテスト最終回【結果発表】 ( No.25 )
日時: 2013/04/07 02:06
名前: ID:aQ6o9DgM

レビューが大変遅くなってしまって申し訳ありません。また、開票作業を代行してくださった雨野さんに感謝を。
今回に限らず、至らぬ管理で多大なるご迷惑をおかけしたこと、大変申し訳ありませんでした。
最終回になってしまいましたが、このようにたくさんの方にご参加していただいて、とてもありがたいです。参加してくださった皆さん、お忙しい中、本当にありがとうございました。

なお、今回新人賞は選考いたしませんでした。ごめんなさい。

【全作レビュー】
>>2 Raiseさん:星々
Raiseさんの書かれるお話は、いつも「ああ、Raiseさんだなあ」と思わせるものに出来上がっていますね。文章や登場人物たち、それから話の進め方に独特の統一感があります。
Raiseさんのお話は、物語の起伏というか展開自体は控えめな傾向にある気がしますか、さりげない事件や(今回は弟の失踪ということで、さりげないと言ってしまっては問題になりそうですが)比較的日常的な出来事を細かく深く見ていくことで、新しい発見や感動を呼ぶように仕上げられているなあと感じます。
それって本当はとても難しいことで、でもどの作品も退屈させずに最後まで読ませる力を持っているのは本当に羨ましいというか、憧れます。やはり筆力の違いなのでしょうね。今回の文章もとても読みやすく、たくさん勉強させていただきました。
それから、小道具の使い方が上手なのも、実にRaiseさんらしかったと思います。今回はタイトルにもなっている星や、本、解剖学、ほろ酔いだったり、そのほかにもたくさん。一見一貫性がないそれらの物を、少しずつ繋げていくような流れが読んでいて心地良かったです。

>>3 バーニングさん:三月は浮遊する
丁寧にまとめられた美しいお話だったと思います。最初から最後までぶれずに、わたしを取り巻く外側の環境と内側の心の動きを書ききっておられて、感心しきりでした。
個人的な感想になっていて申し訳ないんですが、最近私は「ふわふわしていた自分」と決別し、「窮屈さ」を感じるような日々に急に投げ込まれてしまったところで……なんというか、ものすごくわたしが羨ましくてならないです。そういう状況でしたから、とても移入して読んでしまいました。そして、少し元気付けられたりもしました。ありがとうございます。
展開も文章も雰囲気も、何もかもが先述したように本当に綺麗にまとめられていて、私から申し上げられることはありません。少々テーマを意識されすぎたような気もしましたが、それも少し気になるかなあといったくらいでした。
コンテストを継続できなかった私がこんなことを申し上げるのもなんですが、バーニングさんの作品をもっと拝読したかったです。もしまた機会があれば、ぜひストテラで執筆なさってくださればと思います。

>>4 春姫さん:LOVE PARADE
まずは、この短編コンテストに長い間参加し続けてくださって、本当にありがとうございました。結局十回で終わってしまうことになりましたが、これまで続けてこられたのは、春姫さんの参加あってこそだったと思います。
お話のほうも、これまでのコンテストを振り返るようなものになっていて、これだけたくさんの回参加してくださった春姫さんだからこそ書ける形式のものだったと思います。私のほうもこれまでの作品を思い返しながら、楽しく読ませていただきました。
こうして振り返ってみて改めて思うのですが、春姫さんの作品には切なかったりもするんですが、どれにも優しい温かさがあって、いつも微笑みながら読んでしまいますね。
過去作品を読めていない人にも話の流れが分かるよう配慮して書かれていたのもよく分かりました。すごろくに見立てた進め方も発想としてはとても面白かったです。
ただ、少しもったいない感じもしてしまいました。一つのお話をじっくり読みたかったなという気持ちもあります。せっかくなので、『九マス目』でもお話を書いて欲しかったかなと思うのは、時間の関係もあって贅沢なお願いなのかもしれませんが、やはりもう少し読みたかったです。

>>5 宮塚さん:この世界の総和
以前から宮塚さんの書かれるお話には、どこか洋画風のイメージが漂っているような気がします。中コン時代から感じていたことなのですが、最近はますますその雰囲気を強く感じるようになりました。宮塚さんの作風が前よりもぐんと確立されつつあるのかなあ、と思ったりします。
お話のほうですが、登場人物の使い方が上手かったなあと感じました。良峰を最初に出しておくのは本当に成功していたと思います。ちょうどラストを読むときには頭から抜けていて、そこで使ってきたかととても驚きました。
序盤は静かめで終盤が忙しいといった感じで、徐々に展開が混んでくるのは、読んでいて心地良かったです。読むたび先が気になってきます。
SFということで、少々難しい部分もあったのですが、短編で書ききってしまわれたのには本当に感心しました。結末を一文で簡潔に述べていたのもよかったと思います。

>>6 軽伸辺 柿太さん:さくらのなまえ
じっくり丁寧に書かれた作品だなあと感じました。展開をすっ飛ばすことなく、一つ一つ全て拾い上げて書き込まれたのだと思います。
始まり方が面白かったです。最初は文字数がぎゅっと詰まっていたので、読むのに少し気後れしてしまったいたんですが、そんなこと全部忘れてしまうくらいによかったと思います。
登場人物も三人が皆個性的に書かれていて、特に女の子二人がしっかり作られていました。交わされる会話も面白く、ところどころでくすりと笑ってしまいました。
ただ、文字数を削られたということもあるかもしれませんが、話が途中で終わってしまっていたような気がしてしまいます。あれからどうなったのか、もう少し読みたかったなあと思うのは贅沢かもしれませんが、やっぱり読みたかったです。

>>7 鮭さん:すべてを
鮭さんの小説はとても読みやすいのに決して軽すぎず、同じ書き手としていつも感激します。どうしたらこんな風に書けるようになるんでしょうね。
第一回のテーマを使われるとは……テーマはここで消化されたんでしょうか。沈む町、がんじいの選択、そして残された私と君彦。寂寞としたような雰囲気で統一されていて、話も面白く、大変楽しんで読ませていただきました。
ただ、今回は少しばかり薄味だったかなあという印象はありました。特にがんじいのことを全て謎にしてしまったのは、ちょっともったいなかったかなと思います。もうちょっと読みたかったです。
もちろん全体のまとまりは申し分なく、一つの物語としては大変綺麗に仕上がっていました。

>>8 朱空さん:眠りの夢のあかつきの花
朱空さんの作品は久し振りに読ませていただきましたが、やっぱり大好きです。お忙しいこととは思いますが、もっと読みたいです……って、今回で短コンを締めてしまう私が言えたことではないんですけれども、やっぱりそう思います。
冒頭から、もう本当に上手いです。少しも説明はしていないのに、必要なことが全部読めてしまいます。文章も分かりやすくて読みやすいのにすごく綺麗で、どうしたらこんな風に書けてしまうのだろうと同じ書き手としてつい思います。
話の方もさすがの出来です。特に最後の、「再見」は反則です。少し切ないですけど優しくて、読後感もとても良かったです。短編としても綺麗にまとめられていました。テーマの使い方もよかったです。

>>9 ポンチョさん:黄昏ゲーマー
特別新しい話ではなかったとは思いますが、終始退屈することなく、大変楽しく読ませていただきました。面白かったです。さっぱりとした簡素な文章ながら、主人公の感情を漏らさず書いてくださって、きっとそれが強く影響したのだと思います。
ただの青春物語のような形で終わらせることなく、結末に切なさを書いてみせたのもよかったです。全体のまとまりもよく、ほとんど突っ込みどころのない、とてもよくできた作品だと感じました。
何か指摘するとしたら、多少ベタさを感じてしまったところがあるかもしれない、というところくらいでしょうか。相沢くんが教室で女子たちと話すシーンにそのベタさを一番感じてしまったのですが、盛り上がる場所でもあったので、少しもったいなかったような気がします。
それでも心は十分に動かされたので、全く問題ないとは思いますが、ベタさを気にさせないくらい引き込む文章にするか、展開を別のものに差し替えてしまうかすれば、そのベタさをなくすこともできたかもしれません。やはり面白かったです。

>>10 8823さん:闇に降るひとひらの初雪のように
8823さんのこのような小説は初めて読んだかもしれません。いつもは話で読ませるタイプの物語を多く書かれていたイメージだったので、少々驚きました。こんな風に雰囲気を作り上げる力もお持ちだったんですね。
主人公のどうしようもないような空虚感が繰り返し言葉を尽くして語られいて、その点に関しては本当によく表現できていたと思います。分かるなあとつい思わせてしまう強い力がありました。
ただ、展開が少し大人しすぎたかなと思います。主人公の内面に重きを置きすぎてしまったのかもしれません。もう少し外側を賑やかにしてみせてもよかったかなと思います。聡太や滝口くんに関してはもっと突っ込めたんじゃないかなあと思います。
タイトルは素敵ですが、ちょっとリズムが気になってしまいました。

>>11 かにさん:我ら五ツ星高校電算部
かにさんの書かれる物語の面白さには、ずいぶん前からすっかり虜にされてしまっています。どうやってお話考えられているんだろう。
今回もとても面白かったです。登場人物はちょい役まで皆キャラが立っていて、短編なのにそれぞれに愛着がもてました。
物語もしっかり動かされていて、流れもありましたし、先へ先へとどんどん読めました。ところどころくすっと笑ってしまうようなところもあって、全く退屈しませんでした。
読後感もよく、文章も流れを少しも阻害せず流れていて、大変読みやすかったです。

>>12 しじまさん:水を結ぶ
タイトルが本当に綺麗で素敵です。物語の中身とも上手くリンクされていて、響きも意味も美しく完璧なタイトルだと思います。
設定の方もしっかり考えられていて、興味深く読むことができました。特に水を飲ませるところのものはロマンチックでよかったです。
おそらく時間の関係かと思いますが、少々物語が静か過ぎたかなという印象が否めません。大半が会話で構成されていて、もう少し何か出来事があればなとも感じてしまいました。
また、冒頭、一気に人の名前が三人出てくるのに少し混乱してしまいました。その部分は時間を掛けてゆっくりと進めて欲しかったかなと思います。
文章の方はとても読みやすかったです。


今回で短編コンテストは最終回となってしまいましたが、またどこかで皆さんの作品をお読みさせていただく機会があればなあと心から思います。コンテストはなくなってしまいますが、どうか小説を書くことはおやめにならないでくださいね。
短い間でしたが、本当にありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。
メンテ

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