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[12] 第九回短編コンテスト
日時: 2012/11/01 11:42
名前: 管理者 ID:AMFhTdk.

●第八回短編コンテスト
 今月の管理者:雨野

 こちらは短編コンテスト、作品投稿スレッドです。短編コンテストに参加される方はこのスレッドに作品をご投稿ください。
 執筆・投稿される前に、規約・企画説明スレッドを絶対にお読みください。
 今回は通常コンテスト回になりますので、以下に発表されるテーマを取り入れた10000字以内の短編を執筆するようにしてください。
 なお、ご質問等がございましたら、談話室の方にお願いいたします。


☆お知らせ
 まずは9月期のコンテストを突然中止してしまい、申し訳ありませんでした。もう薄々気づかれている方も多いと思いますが、このところ管理者側にコンテストを運営する余裕がなくなってきております。というわけで、誠に勝手ながら、次回あるいはその次の回を短編コンテスト最終回とさせていただきたいと思います。詳細についてはまた連絡します。

<スケジュール>
1日〜15日……投稿期間(定員30名)
16日〜25日……投票期間(こちらの該当記事コメント欄にどうぞ)
26日〜31日……決選投票期間(同じく記事を設けます)



●今回のテーマ 眠り
 秋です。読書の秋、食欲の秋、睡眠の秋の秋です。本当はそんな言い方はしないと思いますが、googleでは6,280,000件もヒットしました(11/1現在)。みなさん睡眠にご執心のようで。かくいう僕も相当に寝る方で、睡眠にはかなり親しんでるはずなのですが、改めて考えてみると人はなぜ眠るのでしょうか。その神秘に驚かざるを得ません。
 というわけで、今回のお題は「眠り」です。個性豊かな作品をお待ちしております!

●提出作品(敬称略)
>>1 しじま『乗り越し電車』(2438字)
>>2 春姫『音に溺れて』(4770字)
メンテ

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音に溺れて ( No.2 )
日時: 2012/11/15 10:19
名前: 春姫 ID:au72OoR6

 音が雪崩込んでくる。
 スピーカーから溢れるように溢れてくる音は、床に寝そべる私の上に振り落ちてくると、そのまま床を弾くように跳ねて飛んでいく。ここには私と音楽しかない――そろりと瞼をおろして優しい夢を描いた。

 IPODに差したイヤホンから流れてくる音楽に神経を集中させながら電車に運ばれていく。気に入りの曲を何度も何度もリピートするだけで、私は一人じゃないような気分に浸れる。軽快な音のリズムが心地よくて、そこに電車の振動が合わさるとまるで別世界に落ちたみたいに錯覚させる。
 コロコロ、チャカチャカ、トントン、ズンズン――音が頭の中を響く、揺らす、埋め尽くす。
 ここには私と音楽しかない。

「     」

 途端に景色が一気にリアルに引きずり込まれていった。さきほどまで私の耳にあったイヤホンは、今は目の前の男らしき人間の手の中にあった。突然の出来事に対応出来ずにいると、男はよそ行きみたいな嘘くさい声音で声をかけてきた。
「音、漏れてますよ」
「はあ」
「電車ん中なんでもう少し音量下げたほうがよろしいですよ」
「す……いません」
「いいえー」
 返されるイヤホンをぼんやりと受け取ると、男はそのままそこにいた。
 折角自分の世界に浸っていたのに、台無しだ、恥ずかしい、なんでいちいちそんなこと言うの、お節介、偽善者、そもそも私が悪いのかもしれないけど、いきなり失礼だ、恥ずかしい、音が――聞こえない。

 慌てて耳にイヤホンを戻して言われた通りに音量を下げる。これなら音漏れはしてないはずだ。窺うように男を見上げれば、男は大丈夫ですよ、とでも言いそうな笑顔で返してきた。エセ紳士だ。使い道がこれで正しいかは謎だけれど。
 流れてくる音楽はいつもと同じなのに、目の前に人がいるだけでまったく集中できなかった。心音が邪魔をしているのかもしれない。ドッドッドッ、うるさいこの音が全てのリズムを乱していく。
 あ――泣きたい。
 泣きそうだ。
 停車駅を確認もせずに私は電車を飛び降りた。目的地があったはずなのに、私はその目的地が思い出せなかった。一刻も早くここから離れたい、ここじゃなければどこでもいい、そう思って飛び降りて――逃げた。

「それで帰ってきたの、あんた馬鹿やねえ」
「うるさい」
「なんか絵、見に行く言ってたのに。良かったの?」
「いい、まだ期間あるし、別の日に行く」
 テレビを見ながらみかんの皮剥く母親は私のことをひとしきり馬鹿にした後に、思い出したようにややみかんに侵食された両手を胸の前で叩いた。母は私と違ってなんだかいつも元気に見える。それが、少しばかり羨ましい。
「買い物いかんと」
「……いってらっしゃい」
 軽い調子で見送ろうとすると、母は困ったようにその両手を頬に持っていく。定番の、私困ったわポーズだ。
「あんた行ってきなさい」
「なんで、嫌」
「これね、お醤油と、ネギ、それと豆腐! これだけでいいから、あー、待って、後キッチンペーパーも買ってきて! メモしたるから」
 母のダダくさな字で書かれたメモを渡される。冗談じゃない、とそれを突き返そうとするが、母は有無を言わさぬ雰囲気で私を無視する。
 このたぬきババアと心の中だけで罵倒してみる。

 今日は本当に散々だ。
 私には寝そべれるくらいのスペースと、気に入りのCDと、それを再生するためのCDプレイヤーさえあればいい。狭い室内で音に浸って入れたらどんなに幸せだろう。
 いつもポケットに忍ばせているイヤホンを取り出して耳に差す。ポケットの中で機械を慣れた手つきで操作すれば、音が――溢れて決壊する。

「――」

 確かに世界にはたくさんの音があるはずなのに、今はもうそれらはどこか遠いところに押しやられて私にまで届かない。
 車の走行音も、周りを通り過ぎる人の靴音も、空を飛ぶ鳥の声も、おしゃべりな女の子の声も、今はもう随分遠い。私にはそれがとても気持ちいい。私だけ切り取ったように世界からいなくなるから、色んな煩わしさからこの時だけは解放された気になる。
 ほとんど無意識に音量を上げている、と――また音が私から離れた。
「音楽聴きながら歩くと危ないですよー」
「……また」
「それに周りを見てないと人にぶつかったり、車にぶつかって危ないですよー」
「はあ、すいません。……あなたって正義感が強いんですねぇ」
 イヤホンを受け取りながらつい嫌味を言ってしまう。相手はそれに気づいたのか鈍感なのかへらへらと笑っている。嫌な人、嫌味な人、いけ好かない人!
「いつも何聴いてるんですか」
 嫌味は無視ですか、ほんとにいい性格してる。
 というより他人とこうやって道の往来で立ち話をするなんて初めてかもしれない。それも男の人だ。前代未聞だ。――あ、買い物行かないといけないの忘れてた。
「すいません、用事があるので失礼します」
「今日はどちらに行くんですか」
「……スーパーですけど」
「僕も行きます」
「何故ですか」
「そんなのあなたとこのままお別れしたくないからです」
 まるで少女漫画から抜け出してきたような台詞に顔に熱が集まるのがわかる。片方にだけ差したイヤホンから聞こえてくるはずの音が随分遠くに行ってしまった。
「少し、意味が分からないんですけど」
「そのままの意味です」
「お買い物の後でいいですから、時間があったら少し僕に付き合ってもらえませんか」
「全然意味が分かりません」

 スーパーについても私の後を付いてくる男にそろそろうんざりしてきた。こういう時に警察を頼るべきなのかしら。でもそこまで悪い人じゃないだろうし、鬱陶しいだけで害はない、はずだ。
 母のメモにざっと目を通して目当ての商品をかごに入れて会計を済ます。
「持ちますよ」
「いえ、結構です」
「どっか店に入りますか?」
「……帰ります。母も待ちくたびれてるでしょうから」
「じゃあ送ります」
 結局スーパーの袋も奪われて、男は隣を歩いている。イヤホンはもう差していても意味がないような気がしてポケットにしまった。
「あの、ここまでで」
「分かりました。あ、これ電話番号とメアドです。よければ連絡ください」
「……貰うだけになりますけど」
「それでいいですよ。また会えるような気がしますから」
 勝手な人だ。
 男は思ったよりもあっさりと帰っていった。その背中をなんの気なしに見送ってから家に戻る。もう会うこともないだろう、いや、絶対会わないようにしよう。
 母は私から買い物袋を受け取ると「今日はお鍋だから」と簡潔にそれだけを述べた。ああ、ネギと豆腐を買い忘れたのね。私もそれだけ思って二階の自室に引っ込んだ。

 部屋に戻ると真っ先にプレイヤーの再生ボタンを押した。少しの間を置いて聞きなれた音楽が流れてきて、私はやっとそこで息を吐くことが出来た。
 音が気持ちいい、と、昔から思っていた。どんな煩わしい感情も、音楽を聴いている時だけは身を潜めてくれた。音だけに身を寄せればいい、そうすれば私はとても安定した気持ちになれる。
 冷たい床に寝そべって目を瞑る。音が壁や床に反響して、涙が出そうになる。
「君と二人でこのまま死にたい」
 歌詞はいつも聞き流しているのに、ここの歌詞だけはいつも頭に残る。私も死にたい、君と、死にたい。
 感傷に浸れるこの時間が一番好きだ。そのまま誘われるままに、私は眠りに落ちる。意識がなくなり、死にゆくこの瞬間が一番の救いだった。

 人のざわめきは不快だ。どこに行っても人は集団を作って騒々しいお喋りを繰り返している。どこぞの田舎みたいに排他的で、余所者は淘汰されるばかりだ。だから、私は、音で彼らを追い出した。音の壁で自身を取り囲んだ。

 仕事を終えた帰り道。憎たらしいことに男の言葉は現実になった。
 つい音楽に集中してしまい前方から歩いてきた人にぶつかってしまった。咄嗟に謝罪するために顔を上げれば、ほら僕の言うとおりでしょ、と言わんばかりの笑顔を浮かべた男がいた。
 もう歩いている時に音楽を聴くのはやめようかな。
「滋賀 潤二です」
「……はあ」
「ここまできたら名前くらい教えてください」
 どこまできたんだ私たちは。
「須賀 博子です」
「よろしく博子さん」
「……あの、なんでそんなに私に関わるんですか。電車のことなら謝ります、以後気をつけますので」
「えー、と」
 男――須賀は困ったように頬を掻く。
「そう取られちゃうのか。その、これでも結構アプローチしてるつもりなんです」
「はあ?」
「これ言っちゃうと引かれると思ったから言わなかったんですけど、前からあなた、博子さんのことは見てたんです」
 ざざっ、と後ろに下がると、須賀は尚更困ったように笑った。困っているのは絶対私の方なのに、須賀を見ているとこっちが加害者のような気分にさせられる。
「最初は危なっかしい人だな、と思って」
 しかもいきなり語りだした。なんなんだこの人。
「でもいつも楽しそうに幸せそうに音楽を聴いてて、あの人何をそんなに一生懸命聴いてるんだろうって気になって」
「……」
「帰り道が被ってて、その内目で追うようになって、あの日電車で博子さんを見つけた時には――運命だなって、思って、喜びました」
 こういう時、普通なら喜んだり、慌てたり、照れたり、怖かったり、怯えたり、呆れたりするんだろうか。でも、私はただ一刻も早くここから逃げ出したくなった。初めの頃のように走って飛び出したくなった。
「私は、一人がいいんです」
 音楽と、君と、二人でいい。そうすれば寂しくないし、恥をかかなくて済む。
 幼さ故の残酷さに私は負けたまま大人になってしまった。

 音楽を聴いている時だけ私は安らぎを得ることができる。音楽を聴いている時だけ私は安心して眠りにつくことができる。音が私を守る壁だった。
「……」
 本当は――誰かに心を開いてみたかった。
 誰かと自分の好きなものを共有してみたかった。誰かと笑い合ってみたかった。それらを無理やり遠ざけたのは他でもない自分だったけれど。
 音量を上げる、これ以外の何も聞こえないように、耳を塞ぐように、世界から遠ざかるために。
「……っ」
 なのに私の手は携帯を掴んでいた。
「はい、どちら様ですか」
 弾んだ声は電話の相手を知っているみたいだった。もしかしたら私は騙されているのかもしれない。冴えない女を何日で落とせるかっていう賭けなのかもしれない。
 でも馬鹿にされてもいい。
 誰かが私を見ていた。そんな素敵な出来事を前にこのまま目を逸らすのは勿体無いじゃないか。
「須賀です」
「あ、博子さんだ」
「私は音楽が好きです。音楽を聴きながら冷たい寝転んで眠るのが好きです。でも――誰かと一緒だとその世界が壊れるんです」
 音が雪崩てくる。
「……」
 煩わしいほどの音が溢れてる。

「僕は――あなたの世界を壊しません」

 瞬間、部屋のドアは鬼の形相の母親によって開けられた。そのまま母は勝手知ったる様子で停止ボタンを押すと、無言でドスドス足音を立てて下に降りていった。
「ぷ」
「あは」
 どちらともなく笑い声を上げた。
「まだ僕もあなたを好きなのか確信はないんです。でも、あなたとおんなじものを見たり、聞いたりしたら面白いだろうなって思ったんです」
「期待には応えられそうもありません」
「では手始めに一緒に寝てみませんか」
 ……!?ぽげろげ!
「僕はまだあなたの好きな音楽も知らないんです。だから知りたいんです」
「面白いものじゃないですよ」
「はは、十分です」
 軽快な音のリズム、コロコロと鈴の音のような可愛らしい音楽、人の笑い声、私の心音、どこまでも――鳴り、響く……。
 なんだか無性に、君と二人でこのまま死んでしまいたい気分を味わった。このまま時が止まれってやつだ。

 後日、冷たい床に二人で寝転んで一番の気に入りのCDを流した。
 音が二人の周りを踊るように跳ねて、ああ、これが恋なのかもしれないと雰囲気に流されてみた。触れた手をどちらともなく握りしめて、瞼を閉じて優しい夢を描きながら、二人で眠りについた。
メンテ
Re: 第九回短編コンテスト ( No.3 )
日時: 2012/11/16 20:56
名前: 管理者 ID:bHVMA9WE

 今回は残念ながら提出者が二名ということで、投票はありません。余力がありましたらお互いの作品について感想を書き合うと良いかと思われます。月末あたりに管理者からも感想を書かせていただきたいと思います。
メンテ
Re: 第九回短編コンテスト ( No.4 )
日時: 2012/11/24 03:32
名前: しじま ID:LEb8vTTw

 感想の投稿場所がどこかよくわからなかったのですが、多分ここだろうとこちらに投稿させていただきます。
多分25日までに投稿できそうなのが今日くらいしかないものでして、確認せずに投稿させていただきました。間違っていましたら申し訳ありません。

 批評期間はこの日にまとめてやると大分前から思っていた日に思いっきり寝込んでしまったせいであんまり時間が取れず、感想が雑になってしまいました。しかも、中途半端に感想というよりもレビューみたいな感じで、厳しめのものとなってしまいました。すみません。そんなわけですから、反論や説明不足など何かありましたら、雑談所なり座談会(今月はあるのでしょうか?)なりでお気軽に仰ってくださったらと思います。

春姫さん『音に溺れて』
 眠りの感覚と音楽の感覚がどことなく近いということは私自身すごい感じていた時期がありまして、この作品で描かれている音楽と眠りに対する感覚はもちろん私のものとはずいぶんと異なるのですが、なんとなくわかるといいますか納得のいくように思いました。この作品のテーマは、この音楽と眠りの関係にあるというのは、音楽にこれほどまでに筆が割かれていることと、音楽が眠りと結び付けられていることから誰もが思うことではあると思います。具体的には、眠りが私自身で完結してしまう一つの世界を作り出すように、音楽も私だけの世界を作り出すというような感じでしょうか。音楽がずいぶんと攻撃的で排他的なところがどうも眠りとは違うように書かれていたりして、単純に似ているということはできないのですが、音楽が私にとってある種の眠りであるという風には感じます。ただ、音楽を強く書き出していこうとするのは、音楽による世界をより強く描くことができる、音がどんどん入り込んでくるそういった空間が生まれてくるその一方で、「眠り」というテーマに対してどこか距離を生じさせてしまうという長短があります。実際問題、ラストは音楽としても眠りとしても中途半端で曖昧に混ざり合っているという印象がありました。今まで書いてきた音楽と眠りが噛みあっていません。無理やり眠りに寄せようとした印象があります。もちろんこれは、そういう風に書いたのかもしれないので強くは言えませんが。ともかく、多少問題はあるにしても、音楽をモチーフにこのテーマにあたっていったのは良かったと思います。あくまで私の読みが的外れでなければの話ですが、もう少し自分のイメージしている眠りがどんなものを意識して音楽について書いていくべきだったように思います。発想自体はとても好きですし、音楽を一人で聞いていくシーンは作品の中でも一つの見せ場として引っ張っていってくれるものがありました。
 良かった点としましては、上記のテーマ消化の発想が一つ。次に、「私」が強く音楽による世界を作っている/作り出そうとしているというところが描かれているところでしょうか。個人的には「音が――聞こえない」が一番良かったです。大切が音楽が聞こえない戸惑いやどうしようもないという悲嘆などの感情が、ここは特に強く伝わってきます。この後の逃げる行為につながっていくのも無理はないと思ってしまうほどです。そして、展開の速さなど表現に問題はあるものの、「私」と男の人の関係性が面白かったところでしょうか。何度も「私」の世界を壊しながらも、「あなたの世界を壊しません」という言葉が出てくるとき、男の人が「私」に本当に耳を傾けている、理解しているというのが伝わってくるような気がします。もちろん、直前の言葉を受けてというのもあるのでしょうけれども、その後の「一緒に寝てみませんか」というところに、「私」の世界への配慮を感じるのです。最後の二人で眠るシーンは非常に印象的で、私自身はとても好きなところでもあります。テーマ的に少しどうなのだろうと思うところがあるのは前に述べたとおりですが、もろい「私」の音楽の世界の中で優しく二人が眠っているところは本当に好きです。
 次に悪い点としましては、上にも通ずるところはあると思いますが、ところどころ詰めが足りないと思わされるところがありました。まず、登場人物のの名前が間違っているんじゃないかと思われる場面があります。次に「私」の人物像が曖昧な印象を受けました。書かないなら書かないでいいと思ったのですが、急に仕事という言葉が出てきてしまったために、正直妙な気持ちになりました。母とのやり取りなどから、勝手に私自身は高校生〜大学生くらいのイメージを抱いていたものですから。個人的には仕事という単語は使わずに、単にある帰り道程度にぼかされている方が落ち着くような気がします。それと、音楽に対する「私」の考え方と「いつも楽しそうに幸せそうに音楽を聴いて」いるというのも少しイメージしにくく思います。あと、タイトルが生かし切れていないところでしょうか。すごく良いタイトルだけにもったいないです。「音楽」に関しては「溺れて」と言えると思いますが、「音」に関してはそこまではいかなかったように思います。たとえ「音楽」を「音」と書いても、音楽とは別の音がある以上、「音」としてとらえるのには無理があるように思います。
 全体的な評価としては、発想に対して文章が追い付いていないという印象が強いです。イメージを文章に表し切れていなくて、ストーリーとかももっと丁寧であるべきところがやっぱり駆け足になっていたのは残念です。音楽を聴いている場面や最後の場面などはとても素敵なので、そのあたりの感覚をもっと突き詰めてテーマの「眠り」に近づけていければ何よりだと思います。
メンテ
Re: 第九回短編コンテスト ( No.5 )
日時: 2012/11/26 20:06
名前: 春姫 ID:OQRk91hA

すいません、遅くなりましたヽ(;´Д`)ノ

私のほうも評価というよりはレビュー、感想です。
もとより評価できるほどの力量がないので申し訳ないです。


しじまさん『乗り越し電車』

私も一度だけ乗り過ごしたことがあります。
学校の帰りでもう眠気がMAXだった私は、気がつけば終点である目的地から遠ざかり、三駅向こうで目を覚ましました。
その時思ったのが「なぜ、誰も起こしてくれなかったの!」という責任転嫁の怒りでした(笑)まあこれ一度きりだったんですけど、眠い時はほんと要注意です。
作中での、今が夢なのか現実なのかが曖昧になるところは私としましては「あるある〜」と頷いてしまうところで、私もたまに起きてから夢で見ていたことを引きずって、よく分からないことを口走ったりしてしまいます。
妹が「お姉の寝言変」と感想を述べてくれたこともありまして…あはは。
それに電車で寝ているときに隣の人にもたれちゃうのもありますよね。作中では夢だったのか現実だったのか曖昧でしたが、私はよくもたれられる方です。
若いお姉さんだったりするとハッピーですが、禿げたオジサマだった時はそっと体をずらします。ごめんね。
最近ではあまり電車に乗らないのでこういうことはめっきりなんですけど、あれってなんか人が暖かくてこっちもつられて眠くなります。
ちっさい小学生くらいの子がもたれてきた時は、可愛かったのでそのまんまじっとしてました。
しじまさんの文章はすごく情景が浮かんできます。おかげさまでちょっぴり眠くなってきました。
しじまさんの作品に対する感想にしては、なにやら自分語りが多くなってしまいました。ううん、反省です……。


次くらいで最後の短編コンテストですが、最後まで尽力をたいと思います。
ああ、時間が欲しい。
いらないってなるくらい時間が欲しい。
メンテ
Re: 第九回短編コンテスト ( No.6 )
日時: 2012/12/15 22:21
名前: 管理者 ID:qgkvoS3Y

しじま『乗り越し電車』
 フロイトは「眠り=安定」という図式を打ち出し、「安定=快」という快感原則から睡眠欲を説明しようとしました。この作品はその意味でまさに安定・不安定の二極がテーマとなっているといっていいでしょう。つまり、眠り=安定に向かう衝動と周囲の状況が織りなす妨害のせめぎ合いとしてこの作品は読めます。
 この作品において「眠り=安定」なのはいくつかの描写から読み取れます。列挙するならば、疲労感と体の重さ、現実感の喪失、体の膨張感がこれに当たるでしょう。これらは全て外界との接続を断ち、眠りという静けさへと走る衝動としてとらえられます。また、ほとんど場面で語り手が座席に座っており、静かに描かれていることからも安定への指向が読み取れるでしょう。
 むろん、こうした単なる安定を描くだけならば、面白みは生まれがたかったでしょうが、この作品ではそうした「眠り=安定」を妨害する要素が面白さを演出しています。ここでも列挙するならば、向かいの学生の視線、隣の乗客、そして何よりも電車内という状況そのものが眠りの妨害になっています。つまり、眠っていながらも常に到着駅という現実を意識しなければならないが故に安定を得られないということです。そして現実に乗り過ごし、終点から一往復して挙句の果てにまた乗り越すというわけで、家に辿り着くという仮定がひたすら遅延されているのも不安定と安定の緊張によく貢献しています。
 こうした着想的な面もさることながら、技術的な面でも描写が安定していて良かったです。言い回し一つ一つが細かくかつ手堅く、自然にテンポを形作っています。
 気になった点としては、些細な点ですが「二十にもいかぬ」割には地の文が老成しすぎていてちょっと違和感がありました。また、よく言えば直球勝負、悪く言えば普通過ぎという印象を受けました。一読した直後は実験的に感じましたが、よく検討してみると前述の通り遅延が根幹を占めていて(というか、遅延しかない)、手法としては昔ながらのものです。そうした手垢がついた手法を使った割には着想自体が面白くはありながらも単調すぎるように思います。少なくとも何らかの話の筋が欲しかったところです。
 ただ、全体としてみると良い点が気になる点を補って余りあり、短いながら力量を感じさせる良い作品だったと思います。レビューにも気合が入りました。ご参加、ありがとうございました。

春姫『音に溺れて』
 音楽は眠りに似て「私だけの世界を作り出す」としじまさんが指摘していましたが、この作品におけるテーマの一面はまさにここにあるでしょう。しかし、音楽というテーマを考えるとき、もう一つ注目しなければらないのは音楽の共有性です。すなわち、祭の太鼓を人々が囲むように、オーケストラを聴取が囲むように、音楽とは元来多くの人に共有される性質を持っているものといっていいのではないでしょうか。もっと現代的例を出すならばライブでの一体感なども音楽の共有性の一例でしょう。
 しかし、この作品が表現しているように、ウォークマン以来音楽の個人性も高まっています。つまり、本作のように耳にイヤホンを挿し込むことによって外界とのコミュニケーションをシャットアウトする効果が生まれてきています。この効果が眠りとつながっているというのが本作の主眼の一つでもあるでしょう。
そのように考えると、この作品のテーマは音楽の個人性と共有性の二項対立で捉えられるのではないでしょうか。すなわち、神経症的に音楽の個人性を強調する主人公に対し、外界・共有性へといざなう滋賀という構図が見えてきます。
 とすると、しじまさんの指摘のようにやはり眠りと(滋賀の)音楽という組み合わせが中途半端に感じてしまいます。つまり、眠りという個人性に対し音楽の共有性が不協和音を生んでしまっているのです。
 また、技術的な面でも粗さが残っていると言わざるを得ないでしょう。表現するのが難しいのですが、テンポが軽すぎて、描写の重厚さが足りない感じがします。また、登場人物二人の関係性に最初と最後で落差が大きすぎる感じがあります。というよりも二人だけの関係性に集中しすぎな感じがありますね(毎回のことですが、個人的には春姫さんのそういう作風は好みではありません)。
 とはいえ、全体的に話がうまくまとまっていて、そつなく良いです。実力に安定感が出てきたのではないかと思います。

○総評
 今回は参加者ふたりにより投票なしという、残念な結果に終わってしまいました。私情によりレビューも遅れてしまってすみません。
 作品のレベルはいつも以上に高かったように感じます。しじまさんの作品は短いながら完成度が高く、すっかり常連の春姫さんの作品も安定した良さが出ていました。この短編コンテストも残りわずかですが、次回もよろしくお願いします。
メンテ

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